(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステアリングホイールに連結されるブラケットと、質量体として機能すると共に車両上下方向寸法より車両左右方向寸法が大きい横長に形成されるマス部材と、ゴム状弾性体から構成されると共に前記マス部材と前記ブラケットとを連結支持する複数の防振基体とを備えるダイナミックダンパにおいて、
前記マス部材は、車両左右方向の中央部に位置する中央質量部と、
前記中央質量部の左右両側に位置する一対の中間質量部と、
前記一対の中間質量部の左右にそれぞれ位置する一対の側部質量部とを備え、
前記ブラケットは、前記ステアリングホイールに固定される固定板部と、
前記固定板部の両側から互いに間隔をあけて延設され前記中間質量部と対向する一対の延設板部と、
前記一対の延設板部に連結され前記中央質量部と対向する連結板部とを備え、
前記防振基体は、前記中央質量部と前記連結板部とが対向する対向面を連結する第1基体と、
前記中間質量部と前記延設板部とが対向する対向面をそれぞれ連結する一対の第2基体とを備え、
前記第1基体および前記一対の第2基体は、車両左右方向および車両上下方向に互いにずれて配置されると共に、車両上方向および車両下方向から視認可能に構成され、
前記マス部材は、前記中央質量部および前記側部質量部に連結される連結質量部を備え、
前記中間質量部は、車両前後方向寸法が、前記中央質量部および前記側部質量部の車両前後方向寸法より小さく設定され、
前記連結質量部は、前記中間質量部と所定間隔をあけて前記中間質量部に対して車両後方側に位置することを特徴とするダイナミックダンパ。
前記中間質量部および前記側部質量部は、車両上下方向寸法が、前記中央質量部の車両上下方向寸法より大きく設定されることを特徴とする請求項1記載のダイナミックダンパ。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリングホイールにダイナミックダンパが組み込まれる。ダイナミックダンパは、ゴム状弾性体から構成される防振基体を介して、質量体として機能するマス部材をブラケットに弾性支持する部品である。ダイナミックダンパは、マス部材および防振基体によって構成される副振動系の固有振動数をステアリングホイールの固有振動数にチューニングすることにより、ステアリングホイールの振動低減を図ることができる。
【0003】
図6及び
図7を参照して、従来のダイナミックダンパ300について説明する。
図6(a)は従来のダイナミックダンパ300の正面図であり、
図6(b)は
図6(a)の矢印VIb方向から視たダイナミックダンパ300の底面図であり、
図7はステアリングホイール310の正面図である。なお、
図6及び
図7の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。これは後述する本発明の実施の形態において同じである。
【0004】
図6(a)及び
図6(b)に示すようにダイナミックダンパ300は、自動車のステアリングホイール310に連結されるブラケット301と、質量体として機能するマス部材302と、ゴム状弾性体から構成されると共にマス部材302とブラケット301とを連結する防振基体303とを備えている。マス部材302は車両左右方向(矢印L−R方向)に細長い形状に形成され、防振基体303は、車両左右方向両側および車両左右方向中央部でマス部材302を弾性支持する。
【0005】
図7に示すようにダイナミックダンパ300は、ステアリングホイール310のカバー311内に配設されるボス部312にブラケット301が固定される。ボス部312はステアリングシャフト313が貫設されると共に、スポーク314に固定される部材である。ダイナミックダンパ300は、ボス部312に固定されるブラケット301に対してマス部材302が車両後方側(矢印B方向)に配置される。
【0006】
ステアリングホイール310は、ホーンボタン等の可動部品(図示せず)がボス部312に対して運転者側(車両後方側)に配置されると共に、電気装置のワイヤーハーネス(以下「ハーネス」と称す)がカバー311内に配線される。ステアリングホイール310に配設される可動部品やハーネスとの干渉を避けるため、ダイナミックダンパ300は、ボス部312とカバー311との狭い間隙にマス部材302が配置される。
【0007】
ダイナミックダンパ300は、近年の自動車における高レベルの低騒音化の要求を満たすため、車両上下方向における固有振動数のチューニングだけでなく、車両左右方向における固有振動数のチューニングも要求される。このような技術として、例えば特許文献1に開示されるものが知られている。特許文献1には、ブラケット301とマス部材302とを連結する個々の防振基体303の車両左右方向寸法と車両上下方向寸法とを調整して、ダイナミックダンパ300の車両上下方向における固有振動数と車両左右方向における固有振動数とを同一に設定する技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して第1実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1実施の形態におけるダイナミックダンパ1の斜視図である。
【0021】
ダイナミックダンパ1は、ステアリングホイール310(
図7参照)のボス部312に取り付けられるブラケット10と、質量体として機能する金属製のマス部材20と、マス部材20とブラケット10との間に介在して両者を連結支持するゴム状弾性体から構成される複数の防振基体30とを備え、車両左右方向(L−R方向)に細長い形状に形成される。
【0022】
次に
図1及び
図2を参照して、ブラケット10について説明する。
図2(a)はブラケット10の正面図であり、
図2(b)は
図2(a)の矢印IIb方向から視たブラケット10の底面図であり、
図3(c)はブラケット10の側面図である。
【0023】
ブラケット10は、ボス部312(
図7参照)に固定されるための左右一対のボルト挿通孔11aが形成された平板状の固定板部11と、固定板部11の両側から延設される左右一対の第1延設部12と、第1延設部12に対してそれぞれ略垂直に折曲される第2延設部13と、第2延設部13に対して略垂直の階段状に折曲される連結板部14とを主に備えている。ブラケット10は、金属板のプレス成形により、それらの各部位が一体に形成されると共に、中心線Cに対して車両左右方向に線対称状に形成される。
【0024】
固定板部11は、車両左右方向に細長い形状に形成され、その上縁部の両側から固定板部11と同一平面上に一対の第1延設部12が延設される。第2延設部13は第1延設部12に対して直交する方向に折曲形成される部位である。ステアリングホイール310(ステアリングシャフト313)の軸方向(矢印F−B方向)と直交する向きに固定板部11を取り付けると、第1延設部12は車両上方(矢印U方向)に向かって延び、第2延設部13は車両後方(矢印B方向)に向かって延びる向きに配置される。なお、固定板部11の下縁部中央には、ステアリングシャフト313(
図7参照)との干渉を回避するため、円弧状の切欠き11bが形成される。
【0025】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第1延設部12及び第2延設部13は、ブラケット10の左右方向の中心線Cに対し線対称状に位置する。第1延設部12の略中央部に貫通孔12aが板厚方向に貫通形成される。貫通孔12aは第2基体32(防振基体30)が設けられる部位である。
【0026】
連結板部14は、第2延設部13が左右両側に連結されると共に車両左右方向(矢印L−R方向)に細長い形状に形成される部位である。連結板部14は、第2延設部13に対して直交する方向に折曲され、固定板部11と平行となるように形成される。ステアリングホイール310(ステアリングシャフト313)の軸方向(矢印F−B方向)と直交する向きに固定板部11を取り付けると、連結板部14は車両上方(矢印U方向)に向かって延びる向きに配置される。
【0027】
連結板部14は、貫通孔14aが板厚方向に貫通形成される。貫通孔14aは連結板部14の左右方向の中心線C上に形成される。貫通孔14aは第1基体31(防振基体30)が設けられる部位である。
【0028】
ブラケット10は、固定板部11の上縁部、第1延設部12、第2延設部13及び連結板部14の下縁部に囲まれてステアリングホイール310(
図7参照)の軸心方向(矢印F−B方向)に沿って貫通するハーネス受入孔部10aが形成される。ハーネス受入孔部10aは、ステアリングホイール310に配設される電気装置のハーネス(図示せず)をステアリングシャフト313側へ引き出すためにハーネスが挿入される部位であり、正面視して横長の矩形状に形成される。
【0029】
連結板部14は、一対の張出板部15が、連結板部14の車両左右方向の両側縁から車両左右方向および車両下方に向けて延設される。張出板部15は、連結板部14から離れて車両左右方向外側に向かうにつれ車両上下方向(矢印U−D方向)の長さが短くなるように、正面視(
図2(a)参照)して略台形状に形成される。
【0030】
張出板部15は、車両上方に位置する上縁部の2箇所から車両下方に向けて略平行に約1/2幅まで切込部15aが形成される。切込部15a間に、車両下方側が張出板部15に連設された爪部16が形成される。爪部16は、ハーネス受入孔部10aに引き込むハーネス(図示せず)の配置を決めるための部位であり、車両後方(矢印B方向)から車両上方に向かって張出板部15から突設される。
【0031】
次に
図3を参照してマス部材20について説明する。
図3(a)はマス部材20の正面図であり、
図3(b)は
図3(a)の矢印IIIb方向から視たマス部材20の底面図である。
【0032】
マス部材20は金属製のダイカスト成形品であって、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、正面視して(
図3(a)参照)凸に湾曲した上縁部を有し、車両上下方向(矢印U−D方向)の寸法より車両左右方向(矢印L−R方向)の寸法が大きい横長の形状とされる。マス部材20は、中央質量部21と、中央質量部21の車両左右方向外側に連設される一対の中間質量部22及び連結質量部24と、中間質量部22及び連結質量部24の左右外側に位置する側部質量部23とを備え、それらが一体に形成されると共に、中心線Cに対して車両左右方向に線対称状に形成される。中央質量部21、中間質量部22及び側部質量部23により構成される車両前方を臨む面(
図3(b)下面)は車両左右方向に延びる平面として形成されている。
【0033】
中央質量部21は、マス部材20の左右方向の中心線C上に位置する部位であり、車両上下方向の寸法(
図3(a)参照)より車両前後方向の寸法(
図3(b)参照)が大きく設定された略直方体状の部位である。中央質量部21は車両後方を臨む面に、車両前後方向寸法を小さくするため、略矩形状の窪み21aが凹設されている。
【0034】
中間質量部22は、中央質量部21の左右両側に位置する部位であり、車両前後方向(矢印B−F方向)の寸法が(
図3(b)参照)、中央質量部21の車両前後方向の寸法より小さく設定される。本実施の形態では、中間質量部22の車両上下方向(矢印U−D方向)の長さは(
図3(a)参照)、中央質量部21の車両上下方向の長さより大きく設定される。中間質量部22の車両上下方向の長さを大きくすることにより、車両前後方向(矢印B−F方向)の寸法の小さい中間質量部22の質量を確保できる。
【0035】
一対の中間質量部22は、側壁22aが所定の間隔をあけて対向する。側壁22aは、ブラケット10(
図2参照)がマス部材20に連結されたときに、ハーネス受入孔部10aの開口と重なり合わない位置に設けられる。ハーネス受入孔部10aに挿入されたハーネスとマス部材20(中間質量部22)との干渉を防止するためである。
【0036】
側部質量部23は、中間質量部22の左右に位置する部位であり、正面視において(
図3(a)参照)、車両上下方向(矢印U−D)の長さが、車両左右方向外側に向かうにつれて次第に小さく設定される。側部質量部23を先細り形状にすることにより、ステアリングホイール310(
図7参照)のボス部312とカバー311との狭い間隙にマス部材20を配置することができる。また、側部質量部23は、車両前後方向(矢印B−F方向)の寸法が(
図3(b)参照)、中央質量部21の車両前後方向の寸法と同一に設定される。これにより、先細り形状に形成された側部質量部23の質量を確保できる。
【0037】
一対の側部質量部23は、側壁23aが所定の間隔をあけて対向する。対向する側壁23aの間隔は、ブラケット10(
図2参照)の一対の第1延設部12の車両左右方向の幅より少し大きめに設定される。ブラケット10の第1延設部12を側部質量部22の側壁22a間に挿入して、ブラケット10の第1延設部12と中間質量部22とを対向配置できるようにするためである。
【0038】
連結質量部24は、中間質量部22と略平行に配置されると共に中央質量部21の左右両側に位置する部位であり、両端部が中央質量部21及び側部質量部23に連成される。連結質量部24は、車両前後方向(矢印B−F方向)の寸法が(
図3(b)参照)、中央質量部21の車両前後方向の寸法より小さく設定される。本実施の形態では、連結質量部24の車両上下方向(矢印U−D方向)の長さは(
図3(a)参照)、車両左右方向外側に向かうにつれて次第に小さく設定されている。連結質量部24が、中間質量部22に対して車両前後方向に間隔をあけて設けられているので、中間質量部22と連結質量部24との間に、車両上下方向に貫通する孔部25が設けられる(
図3(b)参照)。
【0039】
マス部材20は、中央質量部21の窪み21aの車両後方を臨む面(
図3(b)上面)とブラケット10(
図2参照)の連結板部14とが対向し、中間質量部22の車両後方を臨む面とブラケット10の第1延設部12とが対向する。また、マス部材20の側部質量部23の車両後方を臨む面とブラケット10の張出板部15とが対向する。
【0040】
次に
図4を参照して、マス部材20をブラケット10に弾性支持する防振基体30について説明する。
図4(a)はダイナミックダンパ1の底面図であり、
図4(b)はダイナミックダンパ1の平面図であり、
図4(c)は
図4(a)の矢印IVc−IVc線における第1基体31の断面図である。
【0041】
防振基体30は、マス部材20をブラケット10に弾性支持するための部材であり、ゴム状弾性体から構成される。防振基体30は、連結板部14と中央質量部21とを連結する第1基体31と、一対の第1延設部12と一対の中間質量部22とをそれぞれ連結する一対の第2基体32とを備えて構成される。マス部材20は、防振基体30によってブラケット10と連結されることにより、
図1に示すように、ブラケット10の第1延設部12、連結板部14及び張出板部15に対してマス部材20の中間質量部22、中央質量部21、連結質量部24及び側部質量部23が車両前方側(矢印F方向)に配置される。また、ブラケット10の第2延設部13に対してマス部材20の連結質量部24が車両上方前方側(矢印U方向)に配置される。
【0042】
防振基体30の第1基体31及び第2基体32は、ブラケット10に形成された貫通孔12a,14a(
図2(a)参照)の位置に形成される。
図4(a)に示すように、第1基体31は、一端がマス部材20(中央質量部21)に加硫接着され、ゴム状弾性体から構成される鍔状の第1鍔部31a及び第2鍔部31bが他端側に形成される。
図4(c)に示すように、第1鍔部31a及び第2鍔部31bは、貫通孔14a内でゴム状弾性体により連結されると共に貫通孔14aの孔径より大きく形成される。
【0043】
図4(a)に示すように、第2基体32は、一端がマス部材20(中央質量部21)に加硫接着され、ゴム状弾性体から構成される鍔状の第1鍔部32a及び第2鍔部32bが他端側に形成される。図示は省略するが、第1鍔部32a及び第2鍔部32bが貫通孔12a内でゴム状弾性体により連結されると共に貫通孔12aの孔径より大きく形成される点は、第1基体31と同様である。
【0044】
その結果、第2鍔部31b,32bは貫通孔14a,12aを通過して抜けることがないので、第1基体31及び第2基体32によるブラケット10とマス部材20との連結が確保される。従って、ブラケット10と防振基体30とを加硫接着する接着剤の塗布量が少なくても、ブラケット10と防振基体30とを連結することが可能となる。これにより接着剤の塗布工程の省略や接着剤の塗布量を削減できる。
【0045】
また、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第1基体31及び一対の第2基体32は、マス部材20を車両上下方向(
図4紙面垂直方向)に貫通する孔部25を通して、車両上方向および車両下方向から視認可能に構成されている。これにより、第1基体31及び第2基体32を成形するときには、マス部材20とブラケット10とを所定間隔をあけて成形型(図示せず)に固定し、車両上方向および車両下方向に相当する方向から、孔部25の位置で可動型(図示せず)を突き合わせることができる。孔部25の位置で突き合わせた可動型によって第1基体31及び第2基体32を成形するためのキャビティを形成できる。そのキャビティにゴム状弾性材を注入すると、ブラケット10に形成された貫通孔12a,14a(
図2(a)参照)を通して第1基体31及び第2基体32を成形できる。よって、防振基体30の成形を容易にできる。
【0046】
また、第1基体31が、中央質量部21と連結板部14とが対向する対向面を連結し、中間質量部22と第1延設部12とが対向する対向面を一対の第2基体32がそれぞれ連結する。これにより、車両前後方向と直交する平面上において、第1基体31に対し第2基体32が車両下側に配置され、車両上下方向と直交する平面上において、第1基体31に対し第2基体32が車両前側に配置される。
【0047】
次に、防振基体30に入力される荷重の方向とダイナミックダンパ1の固有振動数について説明する。中間質量部22は中央質量部21及び側部質量部23の車両前後方向(矢印B−F方向)寸法より車両前後方向寸法が小さく設定されるので、中央質量部21及び中間質量部22に連結される第1基体31及び第2基体32は、車両上下方向(
図4紙面垂直方向)から視て、車両左右方向に互いにずれて配置される。また、第1基体31及び第2基体32は、車両前後方向から視て、車両上下方向に互いにずれて配置される(
図1参照)。よって、第1基体31及び第2基体32は、車両上下方向および車両左右方向(
図4左右方向)の振動により、主に剪断方向に荷重が入力される。
【0048】
ここで、剪断方向に荷重が入力されるときの防振基体30のばね定数は、荷重の入力方向の防振基体30の断面積に依存する。即ち、防振基体30のばね定数は、車両左右方向の荷重の場合には、車両左右方向における第2基体32間の距離に依存し、車両上下方向の荷重の場合には、車両上下方向における第1基体31と第2基体32との距離に依存する。従って、これらの距離を調整することで防振基体30のばね定数を調整し、ひいてはダイナミックダンパ1の固有振動数を調整できる。
【0049】
マス部材20の中間質量部22は側部質量部23に対して車両左右方向(
図4左右方向)内側に位置するので、仮に側部質量部23を第2基体32が弾性支持する場合と比較して、第2基体32間の距離(車両左右方向)を小さくできる。その結果、側部質量部23を第2基体32が弾性支持する場合と比較して、防振基体30の車両左右方向におけるばね定数を小さくできる。従って、マス部材20の質量を変えなくても(大きくしなくても)、車両左右方向における固有振動数を小さくできる。
【0050】
なお、マス部材20は車両上下方向(矢印U−D方向)寸法より車両左右方向寸法が大きい横長に形成されるので、車両左右方向における第2基体32間の距離の調整代を、車両上下方向における第1基体31と第2基体32との距離の調整代より大きくできる。よって、車両左右方向における防振基体30のばね定数の調整範囲を、車両上下方向における防振基体30のばね定数の調整範囲より大きくすることができる。従って、ダイナミックダンパ1の固有振動数、特に車両左右方向における固有振動数の調整範囲を大きくできる。
【0051】
車両左右方向における固有振動数の調整範囲を大きくすることができれば、ダイナミックダンパ1の車両左右方向における固有振動数を小さくすることができ、車両上下方向におけるダイナミックダンパ1の固有振動数と近づけることができる。即ち、車両左右方向および車両上下方向における固有振動数のチューニングを容易にできる。ダイナミックダンパ1の車両左右方向における固有振動数と車両上下方向における固有振動数とを近づける若しくは同一にすることにより、近年の自動車における高レベルの低騒音化の要求を満たすステアリングホイール用のダイナミックダンパ1を提供できる。
【0052】
ダイナミックダンパ1は、中間質量部22の車両前後方向(
図4(a)上下方向)寸法が中央質量部21の車両前後方向寸法より小さく設定されているので、その分だけマス部材20の質量は小さくなる。側部質量部23の車両前後方向寸法を中央質量部21の車両前後方向寸法と同一に設定することにより、マス部材20の質量の減少分を小さくすることができる。その結果、マス部材20の質量が小さくなることにより固有振動数が必要以上に小さくなることを防止できる。
【0053】
また、マス部材20は中央質量部21及び側部質量部23に連結質量部24が連結されている。連結質量部24は、中間質量部22と所定間隔をあけて中間質量部22に対して車両後方(矢印B方向)側に位置するので、連結質量部24の分だけマス部材20の質量を大きくすることができる。また、中央質量部21及び側部質量部23が連結質量部24及び中間質量部21で連結されるので、連結質量部24がない場合と比較して、中央質量部21と側部質量部23との間のマス部材20の機械的強度を向上できる(剛性を向上できる)。従って、連結質量部24の分だけダイナミックダンパ1の固有振動数の調整範囲を大きくできる(固有振動数を小さくできる)と共に、マス部材20の機械的強度を向上できる。
【0054】
また、マス部材20は、防振基体30によってブラケット10と連結されることにより、第1延設部12、第2延設部13及び連結板部14に対して車両前方側(矢印F方向)に配置される。よって、ステアリングホイール310(
図7参照)の車両後方側に位置するホーンボタン等の可動部品とマス部材20との間に連結板部14を介在させることができる。連結板部14によって、可動部品とマス部材20とを干渉し難くできるので、マス部材20の振動が可動部品によって妨げられることを抑制できる。よって、制振効果の低下を抑制できる。
【0055】
また、ステアリングホイール310に配置される電気装置のハーネスを張出板部15の車両後方側の面に沿わせることで、ハーネスとマス部材20との間に張出板部15を介在させることができる。張出板部15によって、ハーネスとマス部材20とを干渉し難くできるので、マス部材20の振動がハーネスによって妨げられることを抑制できる。よって、制振効果の低下を抑制できる。なお、張出板部15には爪部16が設けられているので、張出板部15と爪部16との間にハーネスを挿入することで、爪部16によってハーネスを保持できる。
【0056】
マス部材20は、ステアリングホイール310(
図7参照)の軸心と直交する方向(矢印L−R方向)から視て、第1延設部12に対して車両前方側(矢印F方向)に配置される。よって、可動部品やハーネスとマス部材20との間に第1延設部12を介在させることができる。第1延設部12によって、可動部品やハーネスとマス部材20とを干渉し難くできるので、マス部材20の振動が可動部品やハーネスによって妨げられることを抑制できる。マス部材20を適正に変位(振動)させることにより、ダイナミックダンパの制振効果の低下を抑制できるので、有害振動を低減させるダイナミックダンパとしての役割を安定して発揮させることができる。
【0057】
また、マス部材20は、ステアリングホイール310(
図7参照)の軸心と直交する方向(矢印L−R方向)から視て、第2延設部13に対して車両上方側(矢印U方向)に配置される。よって、可動部品やハーネスとマス部材20との間に第2延設部13を介在させることができる。第2延設部13によって、可動部品やハーネスとマス部材20とを干渉し難くできるので、マス部材20の振動が可動部品やハーネスによって妨げられることを抑制できる。その結果、第1延設部12や第2延設部13(延設板部)によって制振効果の低下をさらに抑制できる。
【0058】
ブラケット10の連結板部14は、それぞれ車両左右方向外側に一対の張出板部15が張り出し、マス部材20の車両後方側(矢印B方向)に位置する。従って、マス部材20に側部質量部23を設け、車両左右方向に細長い形成にしたときにも、マス部材20の車両左右方向両側(側部質量部23)の車両後方側に張出板部15をそれぞれ位置させることができる。張出板部15によって、可動部品やハーネスとマス部材20の車両方向両側とを干渉し難くできるので、マス部材20を車両左右方向に延ばしてマス部材20の質量を大きくしたときにも、制振効果の低下を抑制できる。
【0059】
次に
図5を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、中央質量部21及び側部質量部23が連結質量部24によって連結される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、連結質量部24が省略される場合について説明する。なお、第2実施の形態は、連結質量部24が省略されている以外は第1実施の形態と同一であるので、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、以下の説明を省略する。
図5(a)は第2実施の形態におけるダイナミックダンパ101の底面図であり、
図5(b)はダイナミックダンパ101の平面図である。
【0060】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、第1基体31及び一対の第2基体32は、中央質量部21の側壁21b及び側部質量部23の側壁23aの間を通して、車両上方向および車両下方向から視認可能に構成されている。これにより、第1基体31及び第2基体32を成形するときには、マス部材20とブラケット10とを所定間隔をあけて成形型(図示せず)に固定し、車両上方向および車両下方向に相当する方向から、側壁21b,23a間の位置で可動型(図示せず)を突き合わせることができる。側壁21b,23a間で突き合わせた可動型によって第1基体31及び第2基体32を成形するためのキャビティを形成できる。そのキャビティにゴム状弾性材を注入すると、ブラケット10に形成された貫通孔12a,14a(
図2(a)参照)を通して第1基体31及び第2基体32を成形できる。よって、防振基体30の成形を容易にできる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例)
第1実施の形態(
図1参照)で説明したダイナミックダンパの固有振動数を測定した。固有振動数は、加速度センサを取り付けたダイナミックダンパを加振台に載せ、車両上下方向に相当する方向、車両左右方向に相当する方向のそれぞれについて±0.1Gの振動を加えることにより測定した。測定の結果、実施例におけるダイナミックダンパの車両上下方向における固有振動数は36Hzであり、車両左右方向における固有振動数は37Hzであった。
【0063】
(比較例)
背景技術(
図6参照)で説明した比較例におけるダイナミックダンパは、実施例におけるダイナミックダンパと同様に、ブラケットに対してマス部材を3点で弾性支持するものである。しかし、比較例におけるダイナミックダンパは、実施例におけるダイナミックダンパの側部質量部および中央質量部に相当する位置でマス部材が弾性支持されている。なお、比較例におけるダイナミックダンパのマス部材の質量は、実施例におけるダイナミックダンパのマス部材の質量と略同一に設定されている。実施例と同様の方法で固有振動数を測定したところ、比較例におけるダイナミックダンパの車両上下方向における固有振動数は39Hzであり、車両左右方向における固有振動数は74Hzであった。
【0064】
実施例におけるダイナミックダンパは、マス部材が「中間質量部」及び中央質量部で弾性支持されるのに対して、比較例におけるダイナミックダンパは、マス部材が「側部質量部」及び中央質量部で弾性支持される。「中間質量部」間の距離は「側部質量部」間の距離と比べて短くできるので、実施例は比較例に対し、防振基体の車両左右方向におけるばね定数を小さくできる。これにより、実施例におけるダイナミックダンパは、車両上下方向における固有振動数を車両左右方向における固有振動数と略同一にできる。実施例によれば、車両左右方向および車両上下方向における固有振動数のチューニングを容易にできることが明らかである。
【0065】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値や形状(例えば各構成の数量や寸法、形状等)は一例であり、他の数値や形状を採用することは当然可能である。
【0066】
上記各実施の形態では、ブラケット10の第1延設部12に対して第2延設部13が略垂直に折曲される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1延設部12と第2延設部13との間に傾斜面や湾曲面を介在させることは当然可能である。
【0067】
上記各実施の形態では、防振基体30(第1基体31、第2基体32)が3箇所でマス部材20をブラケット10に弾性支持される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、4箇所以上の複数箇所でマス部材20をブラケット10に弾性支持することは当然可能である。
【0068】
上記各実施の形態では、ダイナミックダンパ1,101のブラケット10がステアリングホイール310のボス部312に固定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、スポーク314に固定されるものとすることは当然可能である。