(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態の交流電動機駆動装置について、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態はいずれも、三相交流電動機を制御する交流電動機駆動装置の一例をとりあげて説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る交流電動機駆動装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示す単位インバータの構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に、機械(Load)5を負荷とする交流電動機41および42を駆動するためのシステムを示す。
図1に示すシステムでは、所定周波数の交流を供給する三相交流電源3と、三相交流電源3から供給される交流を駆動周波数の交流に変換する交流電動機駆動装置1と、負荷に接続される交流電動機41および42が備えられている。
【0020】
さらに、交流電動機駆動装置1は、
図1に示すように、入力変圧器2と、三相インバータ11および12とを備えている。
図1に示す交流電動機駆動装置1の構成では、入力変圧器2が1台設けられる。
【0021】
入力変圧器2は、一次側が三相交流電源3に接続される一次巻線20と、二次側が三相インバータ11および12に接続される二次巻線群21a〜21cおよび22a〜22cと、鉄心23とから構成される。
【0022】
さらに、二次巻線群21aは、二次巻線21ar、21asおよび21atから成る。また、二次巻線群21bは、二次巻線21br、21bsおよび21btから成る。また、二次巻線群21cは、二次巻線21cr、21csおよび21ctから成る。
【0023】
同様に、二次巻線群22aは、二次巻線22ar、22asおよび22atから成る。また、二次巻線群22bは、二次巻線22br、22bsおよび22btから成る。また、二次巻線群22cは、二次巻線22cr、22csおよび22ctから成る。
【0024】
以上のように、入力変圧器2の二次巻線は、二次巻線群21a〜21c、二次巻線群22a〜22cの6群から構成されている。なお、二次巻線の6群の構成の詳細については後述する。
【0025】
鉄心23には、一次巻線20と、二次巻線群21aおよび22aを構成する各々の二次巻線とが巻回されている。鉄心23は、二次巻線群21aおよび22aに共通な鉄心である。鉄心23に、例えば一次巻線20がY結線で巻回され、二次巻線群21aおよび22aにおける二次巻線がΔ結線などで巻回される。
【0026】
二次巻線群21aの二次巻線21ar、21asおよび21atは、例えば直列に多段接続された3台(N台、Nは正の整数、
図1はN=3の例)の単位インバータ11ar、11asおよび11atの入力に対応した3組(N組)である。その他の二次巻線群21bおよび21c、二次巻線群22a〜22cの各々の二次巻線についても、
図1に示すように、各々に対応する単位インバータの入力に対応した3組(N組)である。
【0027】
以上のように、入力変圧器2は変圧器が1台により構成されている。
【0028】
三相インバータ11および12は、入力変圧器2を介して入出力される交流を駆動周波数の交流に変換する。
【0029】
交流電動機41は、三相インバータ11で運転される。また、交流電動機42は、三相インバータ12で運転される。すなわち、交流電動機駆動装置1は、この2台の交流電動機41および42を2台の三相インバータ11および12を用いて運転する。
【0030】
機械5は、2台の交流電動機41および42で駆動される負荷(
図1に示すLoad)である。
【0031】
交流電動機41および42による動力伝達機構は、例えば機械5との結合軸に接続されるように構成されている。これにより、交流電動機駆動装置1により運転される交流電動機41および42が、機械5を駆動する。
【0032】
次に、
図1および
図2を参照しながら、三相インバータ11および12について説明する。
【0033】
三相インバータ11および12は、入力変圧器2と交流電動機41および42の間に設置される。
【0034】
三相インバータ11は、例えば3台(N=3台の場合)の単位インバータ11ar、11asおよび11atの各出力を直列に多段接続して、これを1相分の多段接続インバータ11aとし、さらに、この1相分を3組(多段接続インバータ11a、11bおよび11c)設けたものである。
【0035】
また、三相インバータ12は、例えば単位インバータ12ar、12asおよび12atの各出力を直列に多段接続して、これを1相分の多段接続インバータ12aとし、さらに、この1相分を3組(多段接続インバータ12a、12bおよび12c)設けたものである。
【0036】
単位インバータ11ar、11asおよび11atは、各々、三相交流を直流に変換し、この直流を交流逆変換して単相の交流を出力する。他の単位インバータ11br、11bsおよび11bt、11cr、11csおよび11ct、12ar〜12ctについても同様である。
【0037】
三相インバータ11と交流電動機41との接続について、多段接続インバータ11aの出力は交流電動機41のU相に接続され、多段接続インバータ11bの出力はV相に接続され、多段接続インバータ11cの出力はW相に接続される。
【0038】
また、三相インバータ12と交流電動機42との接続について、多段接続インバータ12aの出力は交流電動機42のU相に接続され、多段接続インバータ12bの出力はV相に接続され、多段接続インバータ12cの出力はW相に接続される。
【0039】
三相インバータ11および12は、所定の周波数の交流を任意の駆動周波数(インバータ周波数)の交流に変換する。
【0040】
図2に、単位インバータ11ar、11asおよび11atなどを代表して単位インバータ11arの構成を示す。
【0041】
単位インバータ11arは、
図2に示すように、例えば交流を直流に変換する整流器部がダイオード16a、直流部には整流された直流を平滑するコンデンサ16b、平滑された直流を交流に逆変換するインバータ部にはダイオード16dが逆並列に接続された自己消弧形電力素子(例えば、IGBT)16cを有する構成である。
【0042】
二次巻線の接続として、三相インバータの1相分を構成する3台、例えば単位インバータ11ar、11asおよび11atが、二次巻線群21aの3組、二次巻線21ar、21asおよび21atに接続される。
【0043】
さらに、単位インバータ11br、11bsおよび11btが、二次巻線群21bの3組、二次巻線21br、21bsおよび21btに接続される。また、単位インバータ11cr、11csおよび11ctが、二次巻線群21cの3組、二次巻線21cr、21csおよび21ctに接続される、
同様に、二次巻線の接続として、
図1に示す単位インバータが、二次巻線群22a〜22cの各々について3組の二次巻線に接続される。
【0044】
例えば、二次巻線群21a内の3組の二次巻線は、例えば出力電圧が互いに20°(360°/(6×N)、本例ではN=3の正数)の位相差を持たせるように巻回されている。二次巻線21asにおける出力電圧の位相を基準0°として、この基準0°と二次巻線21arにおける出力電圧の位相差は+20°とされ、この基準0°と二次巻線21atにおける出力電圧の位相差は−20°とされている。
【0045】
これらの位相関係は、二次巻線群21bおよび21c、二次巻線群22a〜22cについても同様とされる。
【0046】
三相インバータ11および12の一相分が、例えば3台の単位インバータ11ar、11asおよび11atなどで構成される場合、18パルス整流とよばれる整流方式となり、理論的には、入力変圧器2の入力電流の高調波は、
(18m±1)次の高調波
以外は消去されることになり、電源側に与える高調波の影響を抑えることができる。なお、mは正の整数とする。
【0047】
以上のような二次巻線の構成とすることによって、入力変圧器2の入力電流の高調波を抑制できる。
【0048】
前述の説明では、三相インバータの一相分の単位インバータを3台として説明したが、N台の構成とした場合、6Nパルス整流となり、高調波電流は、理論的には、
((6N×m)±1)次の高調波
以外は消去されることになる。
【0049】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、入力変圧器も2台の三相インバータに対して1台構成となっており、2台の入力変圧器を使った構成よりも、装置コストを抑えることができる。また、交流電動機駆動装置の設置場所での入力変圧器の据付面積の割合も小さくすることができる。さらに、入力変圧器における二次巻線の出力電圧を互いに所定の位相差を持たせる構成により、入力変圧器の入力側における高調波電流を低減することができる。
【0050】
[第2の実施形態]
図3は、本発明に係る交流電動機駆動装置の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0051】
図3に示す交流電動機駆動装置1xでは、
図1に示す交流電動機駆動装置1の構成の入力変圧器2の二次巻線を、二次巻線群21a、21bおよび21cと、二次巻線群22xa、22xbおよび22xcとの構成に置き換えたものである。
【0052】
以下、
図3に示す二次巻線の6群の構成について説明する。
【0053】
入力変圧器2xにおいて、2台の三相インバータ11および12に接続されるN個からなる二次巻線を1群とする計6群を、三相インバータ11の入力に接続される3群とする第1のグループと、三相インバータ12の入力に接続される第1のグループの3群以外の3群とする第2のグループにそれぞれ区分される。
【0054】
第1のグループは、二次巻線群21a、21bおよび21cを含む。第2のグループは、二次巻線群22xa、22xbおよび22xcを含む。
【0055】
例えば、二次巻線群21a内の3組の二次巻線21ar、21asおよび21atは、例えば出力電圧が互いに20°(360°/(6×N)、本例ではN=3の正数)の位相差を持たせるように巻回されている。二次巻線21asにおける出力電圧の位相を基準0°として、この基準0°と二次巻線21arにおける出力電圧の位相差は+20°とされ、この基準0°と二次巻線21atにおける出力電圧の位相差は−20°とされている。これらの位相関係は、二次巻線群21bおよび21cについても同様とされる。
【0056】
二次巻線群22xa内の3組の二次巻線22xar、22xasおよび22xatは、例えば出力電圧が互いに20°(360°/(6×N)、本例ではN=3の正数)の位相差を持たせるように巻回されている。
【0057】
さらに、第2の実施形態が第1の実施形態と異なるところは、二次巻線群21aの二次巻線の出力電圧と二次巻線群22xaの対応する二次巻線の出力電圧で、例えば位相差を10°(360°/(6×2×N)、Nは正の整数)持たせていることである。
【0058】
具体的には、
図3に示す例では、二次巻線21asにおける出力電圧の位相を基準0°として、この基準0°と二次巻線22xarにおける出力電圧の位相差は+10°とされ、この基準0°と二次巻線22xasにおける出力電圧の位相差は−10°とされ、この基準0°と二次巻線22xatにおける出力電圧の位相差は−30°とされている。
【0059】
これらの位相関係は、二次巻線群21bと二次巻線群22xb、二次巻線群21cと二次巻線群22xcの位相関係についても同様とされる。
【0060】
以上説明した入力変圧器2xの場合には、36パルス整流と呼ばれる整流方式となり、理論的には、入力変圧器2xの入力電流の高調波は、
(36m±1)次の高調波
以外は消去されることになり、電源側に与える高調波の影響をさらに抑えることができる。なお、mは正の整数とする。
【0061】
ここでの説明は、今、三相インバータの一相分の単位インバータを3台で説明しているが、N(正の整数)台構成にした場合は、12Nパルス整流となり、高調波電流は、理論的には、
((12N×m)±1)次の高調波
以外は消去されることになる。
【0062】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同じく、入力変圧器も2台の三相インバータに対して1台構成となっており、2台の入力変圧器を使った構成よりも、価格的に経済的となり、また、据付面積も小さくすることができる。
【0063】
[第3の実施形態]
図4は、本発明に係る交流電動機駆動装置の第3の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0064】
図1に示す交流電動機駆動装置1の構成では、1台の機械5を2台の交流電機41および42と2台の三相インバータ11および12を用いて駆動していたが、
図4に示す交流電動機駆動装置1は、交流電動機41および三相インバータ11と、交流電動機42および三相インバータ12とを用いて別々の機械6、7を駆動するものである。
【0065】
第3の実施形態によれば、2台の機械が同程度の負荷量であれば、第1の実施形態と同じ効果を得ることができる。また、2台の負荷量が異なった場合でも、それぞれの三相インバータの入力側はそれぞれ18パルス構成となっており、入力変圧器の入力高調波電流に関しては、18パルス構成の効果を得ることができる。
【0066】
[第4の実施形態]
図5は、本発明に係る交流電動機駆動装置の第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0067】
図3に示す交流電動機駆動装置1xでは、1台の機械5を2台の交流電機41および42と2台の三相インバータ11および12を用いて駆動していたが、
図5に示す交流電動機駆動装置1xは、交流電動機41および三相インバータ11と、交流電動機42および三相インバータ12を用いて別々の機械6、7を駆動するものである。
【0068】
第4の実施形態によれば、2台の機械が同程度の負荷量であれば、第2の実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0069】
また、2台の負荷量が異なった場合でも、それぞれの三相インバータの入力側はそれぞれ18パルス構成となっており、入力変圧器の入力高調波電流に関しては、18パルス構成の効果を得ることができる。
【0070】
[第5の実施形態]
図6は、本発明に係る交流電動機駆動装置の第5の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0071】
図1に示す交流電動機駆動装置1では、1台の機械5を2台の交流電機41および42と2台の三相インバータ11および12を用いて駆動していたが、
図6に示す交流電動機駆動装置1bは、1台の交流電動機43と2台の三相インバータ11および12を用いて機械5を駆動するものである。
【0072】
図6に示す交流電動機43は、例えば
図1に示す交流電動機41よりも大容量出力の交流電動機である。大容量出力の交流電動機を駆動可能なように、交流電動機駆動装置1bは、
図1に示す交流電動機駆動装置1の構成に加えて、三相インバータ11および12の出力U相、V相およびW相にそれぞれリアクトルを備え、それらの互いのリアクトルをつないだ中点(
図6に示すリアクトル8a、8bおよび8cの中点)から、交流電動機43に接続する構成である。
【0073】
以上のような構成により、交流電動機駆動装置1bは、リアクトル8a、8bおよび8cを介して、2台の三相インバータ11および12により1台の交流電動機43に電力を供給することができるため、大容量出力に対応することができる。
【0074】
第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果に加えて、大容量出力の交流電動機を駆動することができる。
【0075】
[第6の実施形態]
図7は、本発明に係る交流電動機駆動装置の第6の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0076】
図3に示す交流電動機駆動装置1xでは、1台の機械5を2台の交流電機41および42と2台の三相インバータ11および12を用いて駆動していたが、
図7に示す交流電動機駆動装置1xbは、1台の交流電動機43と2台の三相インバータ11および12を用いて機械5を駆動するものである。
【0077】
図7に示す交流電動機43は、例えば
図3に示す交流電動機41よりも大容量出力の交流電動機である。大容量出力の交流電動機を駆動可能なように、交流電動機駆動装置1xbは、
図3に示す交流電動機駆動装置1xの構成に加えて、三相インバータ11および12の出力U相、V相およびW相にそれぞれリアクトルを備え、それらの互いのリアクトルをつないだ中点(
図7に示すリアクトル8a、8bおよび8cの中点)から、交流電動機43に接続する構成である。
【0078】
すなわち、第6の実施形態では、
図7に示す入力変圧器2xにおいて、
図6に示す入力変圧器2の二次巻線側の電圧位相差を変えたものである。
【0079】
以上のような構成により、交流電動機駆動装置1xbは、リアクトル8a、8bおよび8cを介して、2台の三相インバータ11および12により1台の交流電動機43に電力を供給することができるため、大容量出力に対応することができる。
【0080】
第6の実施形態によれば、第2の実施形態と同様な効果に加えて、大容量出力の交流電動機を駆動することができる。
【0081】
[第7の実施形態]
図8は、本発明に係る交流電動機駆動装置の第7の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0082】
図1に示す交流電動機駆動装置1では、1台の機械5を2台の交流電機41および42と2台の三相インバータ11および12を用いて駆動していたが、
図8に示す交流電動機駆動装置1cは、1台の交流電動機44と2台の三相インバータ11および12を用いて機械5を駆動するものである。
【0083】
図8に示す交流電動機44は、例えば
図1に示す交流電動機41よりも大容量出力であり、多巻線交流電動機である。交流電動機44は、例えば固定子巻線が2組の三相巻線からなる2巻線交流電動機である。
【0084】
図8に示す交流電動機駆動装置1cでは、2巻線交流電動機(交流電動機44)を駆動するために、2台の三相インバータ11および12の出力が交流電動機44のそれぞれの巻線系統(2巻線構成)に接続されている。2台の三相インバータ11および12の三相出力が、交流電動機44の2巻線構成のうちの一の系統および他の系統に分離して接続される。すなわち、三相インバータ11が交流電動機44の一方の組の三相巻線(一の系統)に接続され、三相インバータ12が他方の組の三相巻線(他の系統)に接続される。
【0085】
以上のような構成により、交流電動機駆動装置1cは、多巻線交流電動機を駆動することができる。
【0086】
第7の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果に加えて、大容量出力の多巻線交流電動機を駆動することができる。
【0087】
[第8の実施形態]
図9は、本発明に係る交流電動機駆動装置の第8の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0088】
図3に示す交流電動機駆動装置1xでは、1台の機械5を2台の交流電機41および42と2台の三相インバータ11および12を用いて駆動していたが、
図9に示す交流電動機駆動装置1xcは、1台の交流電動機44と2台の三相インバータ11および12を用いて機械5を駆動するものである。
【0089】
すなわち、第8の実施形態では、
図9に示す入力変圧器2xにおいて、
図8に示す入力変圧器2の二次巻線側の電圧位相差を変えたものである。
【0090】
以上のような構成により、交流電動機駆動装置1xcは、多巻線交流電動機を駆動することができる。
【0091】
第8の実施形態によれば、第2の実施形態と同様な効果に加えて、大容量出力の多巻線交流電動機を駆動することができる。
【0092】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、交流電動機駆動装置は、多相(二相以上)交流電動機を制御することであってもよい。また、例えば各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。