特許第6093713号(P6093713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6093713-ナノ鉄型酸素除去剤 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093713
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】ナノ鉄型酸素除去剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20170227BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20170227BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20170227BHJP
   A23L 3/3436 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C08L101/00
   B22F9/24 C
   B22F1/00 S
   A23L3/3436 501
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-547382(P2013-547382)
(86)(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公表番号】特表2014-506301(P2014-506301A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】PL2011050055
(87)【国際公開番号】WO2012091587
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月24日
(31)【優先権主張番号】P.393511
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】PL
(31)【優先権主張番号】P.393512
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】PL
(31)【優先権主張番号】P.397499
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】513165780
【氏名又は名称】ウニーヴァラスィテッツ エコノミッツニィ ス ポズナーニョ
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】フォルトノーヴィッツ,ゼノン
(72)【発明者】
【氏名】コーザック,ヴォイチェフ
(72)【発明者】
【氏名】ストインスカ,ヨアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ザワツカ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ウルバインスカ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】エモッツェ,カロラ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニアック,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】クブリツカ,カタヅィナ
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−289813(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0069197(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/128599(WO,A1)
【文献】 特開2004−084047(JP,A)
【文献】 特表2005−536634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00−101/14
A23L 3/00−3/54
B22F 1/00−1/02
9/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素除去のために、以下の条件を保持しながら行われる反応における水素化ホウ素ナトリウムでの鉄塩の還元反応において得られるナノ鉄を使用することを特徴とする包装内の酸素を除去する方法であって:
・前記鉄(III)または(II)塩:NaBHのモル比が、1:3±5%であり、
・試薬濃度は、
−前記鉄(III)または(II)塩が0.01〜0.05Mであり、
−NaBHが0.04〜0.2Mであり、
・前記NaBH溶液が、0.6〜1.1質量部/100g.a.Fe/分に相当する速度で前記鉄(III)または(II)塩溶液中に滴下され、
・前記反応が、脱酸素中性ガス雰囲気下で行われ、
・前記反応が室温で行われ、次いで、前記水素化ホウ素ナトリウムの全量が注入された後、70℃〜90℃になるまで加熱され、冷却され、
前記ナノ鉄を含有する酸素除去剤が、前記包装内の化学量論的遊離酸素含有量および保存中に前記包装材料に浸透することができる量に対して5〜50%の過剰に相当する量で使用される、方法。
【請求項2】
酸素除去のために、0.01〜10%の量のホウ素でドープされたゼロ価鉄を使用することを特徴とする、高分子ナノ複合体に基づき包装内の酸素を除去する方法。
【請求項3】
酸素除去のために、以下の条件を観察しながら行われる反応における水素化ホウ素ナトリウムでの鉄塩の還元反応において得られるホウ素でドープされたゼロ価鉄を使用することを特徴とする、請求項2に記載の方法であって:
・前記鉄(III)または(II)塩:NaBHのモル比が1:3であり、前記鉄塩に対する水素化ホウ素ナトリウムの化学量論的過剰量が30〜50%であり、30%を超えて過剰のNaBHが使用され、
・試薬濃度は、
−鉄(III)または(II)塩が0.01〜0.05Mであり、
−NaBHが0.04〜0.2Mであり、
・前記NaBH溶液が、3.5〜5.5質量部/100g.a.Fe/分に相当する速度で前記鉄(III)または(II)塩溶液中に滴下され、
・前記反応が、脱酸素中性ガス雰囲気下で行われ、
・前記反応が室温で行われ、次いで、前記水素化ホウ素ナトリウムの全量が注入された後、70℃〜90℃になるまで加熱され、冷却され、
前記ホウ素でドープされたゼロ価鉄を含有する酸素除去剤が、前記包装内の化学量論的遊離酸素含有量および保存中に前記包装材料に浸透することができる量に対して5〜50%の過剰に相当する量で使用される、方法。
【請求項4】
ホウ素でドープされたゼロ価ナノ鉄が、以下の試薬濃度での還元反応において得られたことを特徴とする、請求項3に記載の方法:
−鉄(III)または(II)塩が0.02Mであり、
−NaBHが0.2Mである。
【請求項5】
NaBH溶液が4.5質量部/100g.a.Fe/分に相当する速度で前記鉄(III)または(II)塩溶液中に滴下される還元反応において、ホウ素でドープされたゼロ価ナノ鉄が得られたことを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
酸素除去のために、重合体およびナノ鉄またはホウ素でドープされ、前記ホウ素含有量が0.01〜10%であるゼロ価鉄を含有する高分子ナノ複合体を使用することを特徴とする、包装内の酸素を除去する方法であり、
酸素除去のために、以下の条件を順守しながら行われる水素化ホウ素ナトリウムでの鉄(III)または(II)塩の還元反応において得られるナノ鉄を含有する高分子ナノ複合体を使用することを特徴とする、包装内の酸素を除去する方法:
・前記鉄(III)または(II)塩:NaBHのモル比が、1:3±5%であり、
・試薬濃度は、
−鉄(III)または(II)塩が0.01〜0.05Mであり、
−NaBHが0.04〜0.2Mであり、
・前記NaBH溶液が、0.6〜1.1質量部/100g.a.Fe/分に相当する速度で前記鉄(III)または(II)塩溶液中に滴下され、
・前記反応が、脱酸素中性ガス雰囲気下で行われ、
・前記反応が室温で行われ、次いで、前記水素化ホウ素ナトリウムの全量が注入された後、70℃〜90℃になるまで加熱され、冷却される、
または、
以下の条件を順守しながら行われるホウ素でドープされたゼロ価鉄を使用することを特徴とする、包装内の酸素を除去する方法:
・前記鉄(III)または(II)塩:NaBHのモル比が1:3であり、前記鉄塩に対する水素化ホウ素ナトリウムの化学量論的過剰量が30〜50%であり、
・試薬濃度は、
−鉄(III)または(II)塩が0.01〜0.05Mであり、
−NaBHが0.05〜0.2Mであり、
・前記NaBH溶液が、3.5〜5.5質量部/100g.a.Fe/分に相当する速度で前記鉄(III)または(II)塩溶液中に滴下され、
・前記反応が、脱酸素中性ガス雰囲気下で行われ、
・前記反応が室温で行われ、次いで、前記水素化ホウ素ナトリウムの全量が注入された後、70℃〜90℃になるまで加熱され、冷却される。
【請求項7】
前記高分子ナノ複合体が、シリコーンゴム、ポリシロキサン、修飾酢酸酪酸セルロース、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンテレフタレート)、セルロース誘導体、化工デンプン、および生分解性重合体、またはこれらの重合体の混合物からなる群より選択され、または、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリオキシメチレン、またはこれらの重合体の混合物からなる群からの生分解性重合体を含有することを特徴とする、請求項6に記載の包装内の酸素を除去する方法。
【請求項8】
前記高分子ナノ複合体が、重合体マトリックスに分散した、ナノ鉄または前記重合体に対して1〜50%の質量比の量のホウ素でドープされたゼロ価鉄を含有することを特徴とする、請求項6または7に記載の包装内の酸素を除去する方法。
【請求項9】
0.01〜10%の量のホウ素でドープされたゼロ価鉄を含有することを特徴とする、
包装内の高分子ナノ複合体に基づく酸素除去剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ナノ鉄型の酸素除去剤である。
【背景技術】
【0002】
包装内酸素の存在は、製品の貯蔵性を制限する要因である。食品の酸化は、風味、色、および香味の変化を引き起こし、食物栄養価を低下させ、好気性細菌、かび、および虫の増殖を促進し、他の場合には、包装内の酸素の存在は、腐食、薬剤の腐敗、材料の劣化等を引き起こし得る。包装内部ならびに液状食物および飲料の溶媒からの酸素の除去は、それらの寿命を延長し、酸素との接触の悪影響から保護する方法である。
【0003】
調整された雰囲気内または真空パック内に食物を包装する既知の方法が存在する。しかしながら、それらの技術は、包装から酸素を完全には除去するものではなく、製品包装に浸透する。包装を満たし、包装材料に染み込むガスから酸素残留物を除去し、かつ包装された製品内で生じるプロセス中に包装内で生成される酸素を除去するために、酸素吸収剤、すなわち、酸素を固定するか、または酸素と反応する物質が使用され、包装された製品に対して中性な不変の化合物を作成する(1)。
【0004】
酸素を固定する有機化合物、特に、容易に酸化する共重合体を使用する様々な酸素吸収剤の形態が知られているが、通常、紫外線放射を使用してそれらを活性化することが必要とされている。酸素固定物質として、比較的低い吸収能力および遅い吸収速度を有するエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のポリヒドロキシルアルコール等のアルコールを含有する吸収剤も知られており、他方では、不飽和脂肪酸および不飽和炭化水素を含有する酸素吸収剤は、通常、不快な臭気を有する化合物に酸化し、そのため、臭気を除去するさらなる化合物の使用を必要とする。
【0005】
無機化合物も酸素吸収剤として使用される。鉄およびその化合物は、多くの酸素吸収剤において使用される。そのような吸収剤において、反応を誘導するために様々な触媒と結合される粉末の酸化第一鉄、炭酸鉄、および他の第一鉄化合物等の鉄化合物が使用され、鉄微粉末も使用される(2)。
【0006】
しかしながら、鉄およびその化合物を使用するすべての既知の酸素吸収剤は、鉄酸化反応が以下の反応に従って水の存在下で起こるため、少なくとも少量の水が包装内に存在する場合に使用することができる:
Fe+1/2HO+3/4O→FeOOH
【0007】
酸素吸収剤は、二価鉄化合物に基づいて、以下の反応に従って起こるプロセスによって、酸素を固定する:
Fe→Fe2++2e
1/2O+HO+2e→2OH
Fe2++2OH→Fe(OH)
Fe(OH)1/4O+1/2HO→Fe(OH)
【0008】
三菱ガス化学社は、鉄型のAgeless(登録商標)吸収剤を1970年代に導入した。現在、Multisorb Technologies Inc等の多くの企業によって製造されているそのような吸収剤は、例えば、FreshPaxTM、FreshMaxTM等の他の名称で入手可能である。すべての既知の吸収剤において、鉄またはその化合物、例えば、酸化第一鉄は、少なくとも少量の水の存在下で酸素と反応する(3)。
【0009】
水が存在しなければならないという要件は、水が存在しない包装において第一鉄吸収剤を使用すべきではないという事実につながる。包装内の無水環境は、少量の水でさえも製品劣化を引き起こす場合に特に重要である。そのような製品の例は、薬剤、乾燥食品、電子素子、およびはんだ付け粉末または乾燥発泡性製品である。
【0010】
既知の第一鉄吸収剤の活性は、鉄と反応するため、周囲大気中のCOの存在によって悪影響を及ぼされ、酸素を吸収するのに必要とされる第一鉄吸収剤の量を減少させ、生成された炭酸塩は、鉄表面を不動態化する。
【0011】
鉄化合物および誘導体に基づく吸収剤は、現在、最も効率的で効果的な酸素吸収剤であり、包装の不可欠な要素であるが、それらの適用範囲は水を有する包装または水の存在が許容される包装に限定されている。
【0012】
酸素固定物質は、酸素が容易に浸透する材料から作製される小袋内に配置される。その小袋は包装内に配置され、小袋内の活性化合物は酸素を吸収する(4)。
【0013】
金属のナノ粒子を合成する既知の方法が存在する。一般に使用されるナノ粒子合成方法の1つには、溶液中の金属塩の化学的還元がある。鉄ナノ粒子は、鉄塩を還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって合成される(5)。
【0014】
米国特許出願第2007/0044591号において、鉄塩の化学量論的量に対して、鉄塩を溶液に滴下する間、6〜10倍の過剰量の還元剤が使用され、鉄塩をそれに滴下する間、4〜10倍の過剰量の還元剤が使用された。
【0015】
この文献は、ナノ粒子の合成条件が、合成された生成物の特性に重大な影響を及ぼすことを示す(6)。プロセスの条件および手順に応じてナノ鉄沈殿で同一の基質を使用することは、完全に異なる特性または組成さえもを有する生成物をもたらし得る。
【0016】
包装から酸素を除去する既知の方法の1つに、容易に酸化する成分を含有する重合体複合体の使用があり、基本的な活性物質は、酸素を固定する良好な特性を有する1,2−ポリブタジエンである。それらの複合体は、コバルト、ニッケル、および鉄化合物等の重合体酸化プロセスを触媒する系を含有する。多層材料は、5%以下の酸素吸収物質を含有し、半剛性シートの形態、または熱的に形成されたトレイ、容器、およびボトルの形態を有し得る。その構造は、3つの基本的な層、すなわち、低酸素透過性の外層(1〜10mLのO/m/24時間)、酸素を吸収する中間層、およびガスを高度に透過させる内層から成る[1]。
【0017】
重合体または重縮合物および固体粒子から成る複合体を生成する既知の多くの科学技術が存在する。重合体または重縮合物への固体粒子の導入を、重合もしくは重縮合段階中、または準備の整った重合体への固体粒子の導入中のいずれかの時点で行うことができる。
【0018】
使用される科学技術の種類は、重合体および重縮合物の種類および特性、ならびに固体粒子の種類および特性に依存するが、複合体用途にも依存する。
例えば、
−コロイド金属溶液が単量体に添加されて、金属を含有する自己組織化重合体が生成され、
−重合体および固体粒子の粉末混合物を融解し、
−樹脂および固体粒子の混合物の溶液を乾燥させ、
−重合体および固体粒子の混合物を、例えば、押し出しによって形成し、
−金属粒子を重合体表面に適用するために蒸着させるか、または他の技法を使用し、次いで、その層を同一の重合体または他の重合体の別の層で積層する。
【0019】
酸素吸収剤として使用される鉄もしくはその化合物を含有する重合体または重縮合物の複合体はわずかしか知られていない。それらのすべての複合体は、水を含有する環境下でのみそれらの活性を示す。さらに、それらの大半において、酸素固定プロセス中に鉄を活性化する活性剤の使用が必要とされている。
【0020】
国際公開第2011/112304号は、酸素吸収剤として粒径1〜25μmのナノ鉄を含有する発泡体形態の包装材料を開示しており、鉄化合物は、吸湿性化合物、すなわち、塩化ナトリウムおよび重硫酸ナトリウムで活性化される。
【0021】
国際公開第2007/059902号は、とりわけ、酸素固定剤を含有する活性化鉄の形態の重合体包装材料を開示する。活性剤として、とりわけ、Au、Ag、および/またはCu、ならびにアルカリ化合物が使用される。
【0022】
米国特許第5274024号は、酸素固定剤として、銅および硫黄で活性化された鉄を含有する樹脂を開示する。
【0023】
米国特許第6908652号は、吸収剤として、とりわけ、鉄塩を含有する乳酸重合体由来の包装材料を開示する。
【0024】
米国特許第6899822号は、活性剤として、鉄および重硫酸ナトリウム、硫酸水素カリウムおよび塩化ナトリウムを含有するポリエチレン由来の包装材料を開示する。
【0025】
米国特許第7781018号は、FeClまたはFeClで活性化された活性ナノ鉄を合成する方法を開示する。
【0026】
米国特許第2007020456号は、ハロゲン化物またはハロゲン化物に加水分解する化合物、硫酸塩、および重硫酸塩で鉄を活性化する方法を開示する。
【0027】
米国特許出願第2011217430号は、とりわけ、活性化ナノ鉄を含有する包装発泡体を開示する。
【0028】
米国特許出願第2006177653号は、層上で酸素固定剤、とりわけ、鉄塩を含有する、高密度のポリエチレン、ポリプロピレン共重合体のポリプロピレン由来の多層包装材料を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、包装内の水分の存在または製品の水活性に関わらず作用する効果的な鉄型の酸素除去剤を得ることであった。
【0030】
予想外に、本発明に記載の方法を用いて金属鉄沈殿のプロセスを行うことによって、無水環境を含む任意の環境下で酸素を固定する能力を特徴とする形態でそれを得ることができることが判明した。具体的には、この方法を用いて得られたゼロ価ナノ鉄が、ある特定の量のホウ素の混合物を含有し、任意の環境下、さらには無水環境下でさえも、非常に高い酸素固定活性を示すことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、角度2θ=150度の範囲の合成された鉄粉末(放射線Co Kalpha)のX線写真を示す。
図2図2は、実施例1に従って合成したナノ鉄のTEM技法を用いて作製された写真を示す。
図3図3は、実施例6に従って合成したナノ鉄のTEM技法を用いて作製された写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る、例えば、無水環境下で酸素を積極的に固定する鉄の第1の形態は、例えば、以下の反応における水素化ホウ素ナトリウムでの可溶性鉄(III)または(II)塩、好ましくは塩化鉄(III)の還元反応に基づく方法を用いて得られるナノ鉄であり、
FeCl+3NaBH+9HO→Fe°↓+3HBO+3NaCl+10,5H
以下の条件を保持しながら、中性ガス雰囲気下で行われる:
●鉄塩:NaBHのモル比が、1:3±5%であり、
●試薬濃度は、
○鉄(III)または(II)塩が0.01〜0.05M、好ましくは0.05Mであり、
○NaBHが0.04〜0.2M、好ましくは0.2Mであり、
●NaBH溶液が、0.6〜1.1質量部/分/100g.a.(グラム原子)Fe、最も好ましくは0.8質量部/分/100g.a.Feに相当する速度で鉄塩溶液中に滴下され、
反応が室温で行われ、次いで、水素化ホウ素ナトリウムの全量が注入された後、70℃〜90℃になるまで加熱され、冷却される。
【0033】
ナノ鉄調製反応および生成物のすべての単離作業、その精製および保存は、脱酸素中性ガス雰囲気下で行われる。
【0034】
本発明の第1の変形例において、水素化ホウ素ナトリウムでの鉄塩、好ましくは塩化鉄(III)の還元反応は、還流冷却器下で、加熱された反応器内で行われ、その中で、0.6〜1.1質量部/分/100g.a.Feの水素化ホウ素ナトリウム導入速度を維持しながら、水素化ホウ素ナトリウムが鉄塩溶液に少しずつ導入される。0.8質量部/分/100g.a.Feの速度での水素化ホウ素ナトリウム導入が最も好ましい。
【0035】
溶液の濃度および水素化ホウ素ナトリウムの注入速度が、反応の全体的な効率およびナノ鉄残渣の形態に影響を与える。
【0036】
本発明に係る、例えば、無水環境下で酸素を積極的に固定する鉄の第2の形態は、例えば、以下の反応における水素化ホウ素ナトリウムでの可溶性鉄(III)または(II)塩、好ましくは塩化鉄(III)の還元反応で調製されるホウ素の少量の混合物を有するゼロ価ナノ鉄であり、
FeCl+3NaBH+(9−x)HO→Fe/FeB°↓+(3−x)HBO+3NaCl+(10−x)H
以下の条件を保持しながら、中性ガス雰囲気下で行われる:
●鉄塩:NaBHのモル比が1:3であり、鉄塩の化学量論的量に対する過剰量の水素化ホウ素ナトリウムが30〜50%、好ましくは30%であり、
●試薬濃度は、
○鉄塩が0.1〜0.5M、好ましくは0.2Mであり、
○NaBHが0.05〜0.2M、好ましくは0.2Mであり、
●NaBH溶液が、3.5〜5.5質量部/100g.a.Fe、最も好ましくは4.5質量部/100g.a.(グラム原子)Feに相当する速度で鉄塩溶液中に滴下され、
反応が室温で行われ、次いで、水素化ホウ素ナトリウムの全量が注入された後、70℃〜90℃になるまで加熱され、冷却される。
【0037】
ホウ素でドープされたゼロ価ナノ鉄調製反応および生成物のすべての単離作業、その精製および保存は、脱酸素中性ガス雰囲気下で行われる。
【0038】
本発明に記載の方法を用いて得られるホウ素でドープされたゼロ価ナノ鉄は、0.1〜10%の量のホウ素混合物を含有する。
【0039】
本発明の第2の変形例において、本発明に記載の方法を用いた水素化ホウ素ナトリウムでの鉄塩、好ましくは塩化鉄(III)の還元反応は、還流冷却器下で、加熱された反応器内で行われ、その中で、水素化ホウ素ナトリウムは、3.5〜5.5質量部/分/100g.a.Feの水素化ホウ素ナトリウム導入速度を維持しながら、鉄塩溶液に少しずつ導入される。4.5質量部/分/100g.a.Feの速度での水素化ホウ素ナトリウム導入が最も好ましい。
【0040】
溶液の濃度および水素化ホウ素ナトリウムの注入速度が、反応の全体的な効率および残渣の形態に影響を与える。
【0041】
第2の態様において、本発明の主題は、具体的には、無水環境下での酸素除去の方法であり、本発明に記載の方法を用いて調製されるホウ素でドープされたナノ鉄またはゼロ価ナノ鉄の適用を伴う。
【0042】
本発明に係るナノ鉄による酸素固定は、以下の反応に従って進行する:
5Fe+7/2O→Fe+Fe
【0043】
ホウ素でドープされたゼロ価ナノ鉄が使用される本発明に基づく方法の変形例において、酸素固定反応は、以下の様式で実行される:
3Fe/FeB+(2+3x)O→Fe+xB
【0044】
本発明に基づく方法において、除去される酸素の化学量論的量に対して5〜10%の過剰量に相当する量、かつ本発明に記載の方法を用いて調製されるホウ素でドープされたゼロ価鉄の適用の場合、5%の過剰量に相当する量のナノ鉄が使用され、酸素は、包装内に存在する酸素、及び包装された製品の予定保存期間中に包装材料への浸透が予測される酸素の両方である。
【0045】
第3の態様において、本発明の主題は、シリコーンゴム、ポリシロキサン、修飾酢酸酪酸セルロース(CAB)、ポリアミドPA、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンPE、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、セルロース誘導体、化工デンプン、および生分解性重合体(例えば、ポリ乳酸PLA、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリオキシメチレン(POM)を含む)、またはこれらの重合体の混合物から選択される重合体、あるいは本発明に記載の方法を用いて調製されるホウ素でドープされたナノ鉄またはゼロ価ナノ鉄を含有するナノ複合体である。
【0046】
第1の変形例において、本発明に記載の方法を用いて調製されるナノ鉄を含有するナノ複合体は、重合体の使用目的および種類に応じて、既知の方法を用いて生成され、具体的には、以下の通りである:
−シリコーンゴムの場合、鉄は、ゴムに直接添加され、混合後に硬化され、
−ポリアミドの場合、ナノ鉄は、試薬のうちの1つに導入され、ポリアミド合成反応が行われ、その結果として、ナノ鉄粉末のナイロンナノ複合体が得られ、
−ポリビニルアルコール(PVA)の場合、ナノ鉄は、例えば、アセトン中に展開されるPVAに導入され、混合後、硬化するために紫外線放射に供され、
−ポリエチレンの場合、溶解が困難であるため、ナノ鉄は、ナノ鉄粉末と重合体との機械的混合によって導入され、次いで、射出成形される。
【0047】
第2の変形例において、重合体の使用目的および種類に応じて、本発明に記載の方法を用いて得られる0.01〜10%の量のホウ素でドープされたゼロ価鉄(FeBx)を含有するナノ複合体は、既知の方法を用いて生成され、具体的には、以下の通りである:
−シリコーンゴムの場合、(FeBx)鉄は、ゴムに直接添加され、混合後に硬化され、
−ポリアミドの場合、(FeBx)鉄は、試薬のうちの1つに導入され、ポリアミド合成反応が行われ、その結果として、(FeBx)鉄粉末を有するナイロンナノ複合体が得られ、
−セルロース誘導体の場合、CABは、その障壁効果を改善するために変性され、FeBxがさらに導入され、
−ポリエチレンの場合、溶解が困難であるため、(FeBx)鉄は、鉄粉末と重合体との機械的混合によって導入され、次いで、射出成形される。
【0048】
ポリビニルアルコール(PVA)およびホウ素でドープされたゼロ価鉄(FeBx)を含有するナノ複合体の場合、その生成方法は新しく、水と混和可能な低分子有機溶媒中、具体的には、アセトン中でのPVAの展開に基づいており、次いで、ホウ素でドープされたゼロ価鉄(FeBx)が導入され、その後、ナノ複合体の自発的な架橋が生じる。この方法において、紫外線放射によって誘発される架橋は除外されている。
【0049】
本発明に基づく両方の方法を用いて生成されるナノ複合体、すなわち、ホウ素でドープされたナノ鉄およびゼロ価鉄(FeBx)を含有するナノ複合体は、重合体の種類および必要とされる機能特性に応じて、1〜50%質量部、好ましくは1〜20%質量部の量のホウ素でドープされたナノ鉄またはゼロ価鉄(FeBx)を含有する。
【0050】
第4の態様において、本発明の主題は、本発明に記載の方法を用いて得られる、除去剤が使用される包装内に存在し得る酸素の見込み量ならびに包装材料の予測される保存期間および障壁能力に応じて調節された量のホウ素でドープされたナノ鉄またはゼロ価鉄(FeBx)を含有する除去剤である。好ましくは、容器は、酸素透過性の紙またはプラスチックで作製される小袋の形態である。
【0051】
本発明に基づく除去剤は、除去剤を充填した小袋の形態、または別の形態において、包装された製品との微粉鉄の接触を阻止する小袋の形態で使用されてもよい。
【0052】
本発明において提供されるホウ素でドープされたナノ鉄またはゼロ価鉄(FeBx)を有する小袋は、その中でそれらが酸素を除去する包装に注入される前は、中性ガスを充填した金属化PEフィルムで作製される包装内に保存するべきである。
【0053】
行われた研究から、小袋の紙層の形態のさらなる障壁が、本発明に基づくホウ素でドープされたナノ鉄またはゼロ価鉄(FeBx)を含有する除去剤の酸素除去の有効性に大きな影響を与えないことが示唆される。
【0054】
本発明のこの変形例において、除去剤は、包装内に配置することを可能にする形態のナノ複合体、または包装の外側要素を構成するナノ複合体、具体的には、ラッピングフィルム、トレイ、容器、コップ、ボトル、ねじキャップ、ねじ蓋、シール、ラベル、挿入物の形態のナノ複合体である。特殊な形態は、活性酸素除去層として本発明に基づくナノ複合体を含有する積層体であり得る。
【0055】
活性度が高いため、本発明の両変形例に基づく除去剤は、それらが酸素除去剤として機能する包装内での適用の瞬間まで酸素を含まない雰囲気下で生成および保存されるべきである。
【0056】
本発明に基づく除去剤は、除去される酸素の化学量論的量に対して5〜10%の過剰量に相当する量であり、ゼロ価鉄を使用する場合、5%の過剰量に相当する量のナノ鉄を含有すべきであり、酸素は密封する時に包装内に存在する、および/または保存中にその生成物によって放出される酸素、及び予定保存期間中に包装材料への浸透が予測される酸素の両方である。
【0057】
活性度が高いため、本発明に基づくホウ素でドープされたナノ鉄またはゼロ価鉄(FeBx)を含有する除去剤のすべての形態、具体的には、容器、小袋、トレイ、ラッピングフィルム、種々のレセプタクル、コップ、ボトル、ねじキャップ、ねじ蓋、シール、ラベル、挿入物(特殊の形態は、活性酸素除去層として本発明に基づくナノ複合体を含有する積層体であり得る)は、それらが酸素除去剤として機能する包装内への配置の瞬間まで、酸素を含まない雰囲気下で生成および保存されるべきである。
【0058】
二酸化酸素濃縮雰囲気下での酸素除去についての研究は、COの存在が、本発明に基づくホウ素でドープされたナノ鉄またはゼロ価鉄(FeBx)の活性を著しく低下させないことを示している。
【0059】
本発明に基づく酸素除去剤の潜在用途は、具体的には、水感受性製品であり得る。
【実施例】
【0060】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、それらに限定されない。
【0061】
酸素を吸収する能力の測定に関するすべての実施例において、モデル包装が使用されており、それは、プラスチック(PA/PE積層体、酸素透過性(60cm/m/24時間、Folimat,Torun)で作製され、250mLの限度容量であり、包装層を溶接することによって密閉され、空気充填およびサンプリングのために包装壁上に配置された自己密封隔壁(Stylus(登録商標))を有する。吸収剤を有する試験包装内の酸素濃度は、分析器(酸素分析器、Teledyne9070、Teledyne Analytical Instruments)を用いて測定された。
【0062】
実施例1.塩化鉄(III)の反応におけるナノ鉄の合成
3dmの容積のバルブ内に1dmの0.05M水和塩化鉄(III)溶液を配置し、装置をアルゴンでリンスし、1dmの0.15M水素化ホウ素ナトリウム水溶液の注入を11cm/分の速度で開始した。黒色の綿状沈殿物への注入中、橙色の溶液の表面上の流動、ならびに集中的に放出された水素を観察することができる。NaBHへの滴下量の増加に伴って、溶液の色が橙色から黒色に変化し、沈殿した鉄沈殿物の量が増加する。水素化ホウ素ナトリウム水溶液の注入を完了した後、その全体物を溶液の温度が75℃に達するまで加熱した。
【0063】
温度上昇に伴って、移り変わる溶液の色変化が観察され、黒色から帯灰色になり、色が完全に消えて、透明な溶液を合成した。綿状物の加熱の最終段階において、反応生成物は、黒色の沈殿物の形態で底面に沈降した。冷却後、沈殿物を終始アルゴン雰囲気下で、シュレンク装置上で濾過し、沈殿物を脱酸アセトンで洗浄した。合成されたナノ鉄を、保護雰囲気下でシュレンク容器内に保存した。
【0064】
3.5gの生成物が合成され、効率は、理論値の75%であった。
【0065】
図1は、角度2θ=150度の範囲の合成された鉄粉末(放射線Co Kalpha)のX線写真を示す。2θが52.5;77.3;99.7;124の角度で視認できるピークは、αFe相に由来し、これは、合成されたナノ鉄がαFeの形態であることを裏付ける。
【0066】
図2は、実施例1に従って合成したナノ鉄のTEM技法を用いて作製された写真を示す。本発明に係るナノ鉄は、クラスター様の構造を有する凝集を形成し、その凝集は、約200nm(以上)の寸法を有し、10〜50nmのより小さい粒から成る。
【0067】
実施例2.ナノ鉄の酸素吸収能評価
実施例1に従って合成した質量約1gのナノ鉄試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで空気を充填した。酸素含有量を測定するためのガス試料を、1日目から30日目まで毎日収集した。包装内の最初の酸素濃度は、20.95%であった。それぞれの測定結果は、3つの包装からの空気試料を含み、それから空気含有量を測定し、平均値を計算した。空気サンプリング後のモデル包装はさらなる試験から除外した。表1は、所定の時間後の包装内の酸素レベルを示す。この生成物は、5〜6日後に包装から酸素を完全に除去し、最も高い吸収は、1日目に起こった。生成物は、全試験期間中、包装に染み込む酸素も固定した。理論上、単一の試験包装内に配置されるナノ鉄量は、300cmの酸素を吸収することができる。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例3.吸収剤の収着活性への水分の影響
手順は、実施例2の手順と同一であったが、包装には、実施例1に従って合成したナノ鉄試料に加えて、2mLの水を浸したタンポンも収納した。試験結果を、表2に示す。水分の存在は、ナノ鉄活性を有意に変化させなかった。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例4.吸収剤の収着活性へのCOの存在の影響
手順は、実施例2の手順と同一であったが、包装に、空気の代わりにガスの混合物(20.95%の酸素+20%の二酸化炭素+49.05%の窒素)を充填した。試験結果を、表3に示す。COの存在は、実際には、吸収速度に影響を与えなかった。
【0072】
【表3】
【0073】
実施例5.吸収剤の収着活性への水分およびCOの同時存在の影響
手順は、実施例4の手順と同一であったが、包装に、実施例3のように、2mLの水を浸したタンポンも収納した。試験結果を、表4に示す。COおよび水分の同時存在は、酸素吸収プロセスに悪影響を与えなかった。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例6.塩化鉄(III)の反応におけるゼロ価ナノ鉄とホウ素(FeB)混合物との合成
3dmの容積のバルブ内に250mLの0.2M水和塩化鉄(III)溶液を配置し、装置をアルゴンでリンスし、1000mの0.2M水素化ホウ素ナトリウム水溶液の注入を16.5mL/分の速度で開始した。
【0076】
注入中、沈殿物が激しく沈殿し、溶液の色は、橙色から黒色に変化した。水素化ホウ素ナトリウム水溶液の注入を完了した後、その全体物を溶液の温度が75℃に達するまで加熱し、この温度を1時間維持した。
【0077】
次いで、溶液を中性ガス流下で冷却し、約3時間留置した。
【0078】
沈殿物を、中性ガス雰囲気下で、シュレンク装置上で濾過し、脱酸アセトンで洗浄した。ホウ素混合物と合成されたナノ鉄を、酸素を含まない保護雰囲気下で、シュレンク容器内に保存した。
【0079】
発光分光器ICP−OES VISTA−MPX(Varian company)を用いた組成分析により、試料中に約3.5%のホウ素が存在することが判明した。
【0080】
ゼロ価Fe(FeB)を、磁気的方法を用いて同定した。合成された生成物は、反磁性であった。
【0081】
図3は、実施例6に従って合成したナノ鉄のTEM技法を用いて作製された写真を示す。本発明に係るナノ鉄FeBは、クラスター様の構造を有する凝集を形成し、その凝集は、約200nm(以上)の寸法を有し、10〜50nmのより小さい粒から成る。
【0082】
実施例7.FeBの酸素吸収能評価
実施例6に従って合成した質量約1gのナノ鉄FeB試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで乾燥空気を充填した。酸素含有量を測定するためのガス試料を、10分後、30分後、1時間後、次いで、6日間毎日、及び30日後に収集した。包装内の最初の酸素濃度は20.95%であり、包装内への空気の注入中の測定結果によって確認した。それぞれの測定結果は、3つの包装からの空気試料を含み、それから空気含有量を測定し、平均値を計算した。空気サンプリング後のモデル包装はさらなる試験から除外した。表5は、所定の時間後の包装内の酸素レベルを示す。この生成物は、1時間を超えた後に包装から酸素を完全に除去し、最も高い吸収は、最初の30分間に起こった。生成物は、全試験期間中、包装内に染み込む酸素も固定した。理論上、単一の試験包装内に配置されるナノ鉄量は、300cmの酸素を吸収することができる。
【0083】
【表5】
【0084】
実施例8.FeB生成物の収着活性への水分の影響
手順は、実施例7の手順と同一であったが、包装には、ナノ鉄FeBに加えて、2mLの水を浸したタンポンも収納した。試験結果を、表6に示す。水分の存在は、ナノ鉄活性を有意に変化させなかった。
【0085】
【表6】
【0086】
実施例9.FeB生成物の収着活性へのCOの存在の影響
手順は、実施例7の手順と同一であったが、包装に、空気の代わりにガスの混合物(20.95%の酸素+20%の二酸化炭素+49.05%の窒素)を充填した。試験結果を、表7に示す。COの存在は、実際には、吸収速度に影響を与えなかった。
【0087】
【表7】
【0088】
実施例10.FeB生成物の収着活性へのCOの存在の影響
手順は、実施例9の手順と同一であったが、包装には、実施例8にあるように、2mLの水を浸したタンポンも収納した。試験結果を、表8に示す。COおよび水分の同時存在は、悪影響を与えなかった。
【0089】
【表8】
【0090】
実施例11.シリコーンマトリックス中のナノ鉄
3.45gのナノ鉄粉末を4.4gのシリコーンゴムPolastosil(Silikony Polskie)に添加し、次いで、それら成分を完全に混合し、0.44gの架橋触媒OL−1(Silikony Polskie)を添加した。均一に触媒を分布させるために、その全体物をもう一度激しく混合した。合成されたゴム様の高密度の凝集を様々な寸法および厚さのディスクの形態に形成し、これを完全な重合のために20〜30分間留置した。ゴムの架橋を、最大50℃に加熱することによって加速させた。すべての作業をアルゴン雰囲気下で行った。
【0091】
実施例12.シリコーンマトリックス中のゼロ価鉄FeB
実施例6に従って合成した5.5gのゼロ価ナノ鉄を9.25gのシリコーンゴムPolastosil(Silikony Polskie)に添加し、次いで、それら成分を完全に混合し、0.95gの架橋触媒OL−1(Silikony Polskie)を添加した。均一に触媒を分布させるために、その全体物をもう一度激しく混合した。合成されたゴム様の高密度の凝集を、様々な寸法および厚さのディスクの形態に形成し、これを完全な重合のために20〜30分間留置した。ゴムの架橋を、最大50℃に加熱することによって加速した。すべての作業をアルゴン雰囲気下で行った。
【0092】
実施例13.ナイロン6.6中のナノ鉄
反応バルブ内で50mLのHO中25gのヘキサメチレンジアミン水溶液を調製し、これに実施例1に従って合成した5.0gのナノ鉄を添加した。点滴器内で50mLの1−n−オクタノール中の30mLのアジピン酸塩化物の混合物を調製し、次いで、バルブ内の溶液中に滴下し、これを終始混合した。
【0093】
反応が終了した後、生成されたナイロン上の鉄生成物を含有する溶液を排出し、これをわずかに加熱しながら保護雰囲気下で乾燥させ、次いで、合成されたナノ複合体を約1gの試料に分けた。すべての作業をアルゴン雰囲気下で行った。
【0094】
実施例14.ナイロン6.6中のゼロ価ナノ鉄FeB
反応バルブ内で50mLのHO中25gのヘキサメチレンジアミン水溶液を調製し、これに実施例6に従って合成した5.0gのナノ鉄FeBを添加した。
【0095】
点滴器内で50mLのトルエン中30mLのアジピン酸塩化物の混合物を調製し、次いで、バルブ内の溶液中に滴下し、これを終始混合した。すべての作業をアルゴン雰囲気下で行った。
【0096】
反応が終了した後、生成されたナイロン上の鉄生成物を含有する溶液を排出し、これをわずかに加熱しながら保護雰囲気下で乾燥させ、次いで、合成されたナノ複合体を約1gの試料に分けた。
【0097】
実施例15.PVA中のナノ鉄
結晶性ポリビニルアルコールを、5gのPVAをアセトンに浸すことによって膨張させた。1.5時間後、蒸留水(1:1)を添加し、その全体物を最大60℃になるまで徐々に加熱して透明な溶液を合成し、これをアルゴン流下で脱酸した。
【0098】
実施例1に従って合成した5.0gのナノ鉄生成物をPVA溶液に浸し、混合し、流延方法を用いて、薄フィルムの形態にした。次いで、その全体物を、紫外線ランプを用いて254〜360nmの波長(Λ)で20分間照射した。すべての作業をアルゴン雰囲気下で行った。
【0099】
実施例16.PVA中のゼロ価ナノ鉄FeB
結晶性ポリビニルアルコールを、5gのPVAをアセトンに浸すことによって膨張させた。1.5時間後、蒸留水(1:1)を添加し、その全体物を最大60℃になるまで徐々に加熱して透明な溶液を合成し、これをアルゴン流下で脱酸した。
【0100】
実施例6に従って合成したゼロ価ナノ鉄を濾過し、乾燥させることなく、5.0gの生成物をPVA溶液に浸し、混合した。迅速な架橋反応の結果、ゼロ価鉄を充填したPVAゲルを合成した。すべての作業をアルゴン雰囲気下で行った。
【0101】
実施例17.酢酸酪酸セルロース(CAB)中のゼロ価ナノ鉄FeB
250cmの容積の反応容器内に4gの酢酸酪酸セルロースを配置し、次いで、100cmのアセトンを添加し、その全体物を激しく混合した。均質な溶液を合成後、4.3cmのオルトケイ酸テトラエチルおよび0.72cmのフタル酸塩を添加し、激しい混合を維持した。次いで、1.4gのジブチル錫ジラウレート溶液を開始剤として添加した。均質な溶液を合成するまで混合を維持し、これに実施例6に従って合成した3gのゼロ価鉄FeBを添加した。次いで、溶媒を真空蒸発装置上で部分的に除去し、残渣をテフロンプラッター上に注ぎ、嫌気性チャンバ内に配置した。溶媒を完全に蒸発させた後(約8時間後)、修飾CABの箔を合成し、これを約1gの断片に分けた。すべての作業をアルゴン雰囲気下で行った。
【0102】
実施例18.PE中のナノ鉄
600gのHDポリエチレンをバルブ内に配置し、アルゴンで洗浄し、酸素を含まないチャンバに移し、実施例1に係る6.1gのナノ鉄をバルブに入れた。バルブを閉鎖し、パラフィルムで保護した。次いで、ポリエチレンおよびナノ鉄を有するバルブを完全に混合した。
【0103】
Fe/PE混合物から三次元立方体(cubicoid)を射出成形機内で作製し、箔の形態で押し出した。
【0104】
実施例19.シリコーンマトリックス中のナノ鉄の酸素吸収能評価
実施例11に従って合成したシリコーンマトリックス中の約1gのナノ鉄試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで窒素中5%の酸素を含有する混合物を充填した。ガス試料を3時間まで毎時間、次いで、注入日から30日目まで毎日収集した。包装内の最初の酸素濃度は5%であった。
【0105】
表9は、シリコーンマトリックス中にナノ鉄を含有する包装内の所定の時間後の酸素レベルを示す。生成物は、3日後に包装から酸素を完全に除去した。生成物は、全試験期間中、包装内に染み込む酸素も固定した。
【0106】
【表9】
【0107】
実施例20.シリコーンマトリックス中のFeBの酸素吸収能評価
実施例12に従って合成したシリコーンマトリックス中の約1gのFeB試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで窒素中5%の酸素を含有する混合物を充填した。ガス試料を1時間後および2時間後、次いで、注入日から30日目まで毎日収集した。包装内の最初の酸素濃度は5%であった。
【0108】
表10は、シリコーンマトリックス中にFeBの試料を含有する包装内の所定の時間後の酸素レベルを示す。生成物は、7日後に包装から酸素を完全に除去した。生成物は、全試験期間中、包装内に染み込む酸素も固定した。
【0109】
【表10】
【0110】
実施例21.ナイロン6.6中のナノ鉄の酸素吸収能評価
実施例13に従って合成したナイロン6中の約1gのナノ鉄試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで窒素中5%の酸素を含有する混合物を充填した。酸素含有量を測定するために、ガス試料を注入日から30日目まで毎日収集した。包装内の最初の酸素濃度は5%であった。
【0111】
表11は、ナイロン6中にナノ鉄を含有する包装内の所定の時間後の酸素レベルを示す。生成物は、6日後に包装から酸素を完全に除去した。生成物は、全試験期間中、包装内に染み込む酸素も固定した。
【0112】
【表11】
【0113】
実施例22.ナイロン6.6中のゼロ価鉄FeBの酸素吸収能評価
実施例14に従って合成したナイロン6中の約1gのゼロ価ナノ鉄FeB試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで窒素中5%の酸素を含有する混合物を充填した。酸素含有量を測定するために、ガス試料を注入日から30日目まで毎日収集した。
【0114】
包装内の最初の酸素濃度は5%であった。
【0115】
表12は、ナイロン6中にゼロ価鉄FeBを含有する包装内の所定の時間後の酸素レベルを示す。生成物は、5日後に包装から酸素を完全に除去した。生成物は、全試験期間中、包装内に染み込む酸素も固定した。
【0116】
【表12】
【0117】
実施例23.PVA中のナノ鉄の酸素吸収能評価
実施例15に従って合成したPVA内の約1gのナノ鉄試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで窒素中5%の酸素を含有する混合物を充填した。ガス試料の収集頻度およびPVA内にナノ鉄を含有する包装内の所定の時間後の酸素レベルを、表13に示す。生成物は、6日後に包装から酸素を完全に除去した。生成物は、全試験期間中、包装内に染み込む酸素も固定した。包装内の最初の酸素濃度は5%であった。
【0118】
【表13】
【0119】
実施例24.PVA中のFeBの酸素吸収能評価
実施例16に従って合成したPVA中のPVA内の約1gのFeB試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで窒素中5%の酸素を含有する混合物を充填した。ガス試料の収集頻度およびPVA中にFeBを含有する包装内の所定の時間後の酸素レベルを、表14に示す。生成物は、5日後に包装から酸素を完全に除去した。生成物は、全試験期間中、包装内に染み込む酸素も固定した。包装内の最初の酸素濃度は5%であった。
【0120】
【表14】
【0121】
実施例25.PE中のナノ鉄の酸素吸収能評価
実施例1に従って合成したPE中の(約1%のFeを含有する)約7gのナノ鉄試料をモデル包装内に配置し、これを完全に満たすまで窒素中5%の酸素を含有する混合物を充填した。酸素含有量を測定するために、ガス試料を注入日から30日目まで毎日収集した。包装内の最初の酸素濃度は5%であった。
【0122】
表15は、PE中にナノ鉄を含有する包装内の所定の時間後の酸素レベルを示す。生成物は、4日後に包装から酸素を部分的にのみ除去した。これは、酸素の低PE透過性と関連している。
【0123】
【表15】
【0124】
文献:
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図1
図2
図3