特許第6093715号(P6093715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093715
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】免疫グロブリンドメインの工学的作製
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170227BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20170227BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20170227BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20170227BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20170227BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20170227BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C40B40/10ZNA
   C07K16/00
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 W
   A61P35/00
   A61P37/00
   A61P43/00 111
【請求項の数】18
【全頁数】90
(21)【出願番号】特願2013-550712(P2013-550712)
(86)(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公表番号】特表2014-506454(P2014-506454A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】CA2012000126
(87)【国際公開番号】WO2012100343
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】61/437,174
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500276482
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キム, デ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】タンハ, ジャムシッド
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212125(JP,A)
【文献】 特表2008−536490(JP,A)
【文献】 The Journal of Biological Chemistry,2007年,Vol.282, No.50,p.36489-36495
【文献】 Journal of Molecular Biology,2008年,Vol.377,p.478-488
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームワーク領域(FR)に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を含む免疫グロブリンスキャフォールドであって、
該FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含むヒトVスキャフォールドであって、該非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入されたシステイン残基間に形成されるヒトVスキャフォールド;または
該FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含むヒトVスキャフォールドであって、該非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入されたシステイン残基間に形成されるヒトVスキャフォールド、
から選択される免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項2】
前記スキャフォールドが、より大きな抗体タンパク質またはシングルドメイン抗体(sdAb)、scFv、Fab、F(ab)からなる群から選択される断片または成熟免疫グロブリンの一部である、請求項1に記載の免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項3】
前記成熟免疫グロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgEおよび/またはIgMからなる群から選択される、請求項に記載の免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項4】
前記免疫グロブリンスキャフォールドが、Vである、請求項1に記載の免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項5】
前記Vが、V3ファミリーのものである、請求項に記載の免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項6】
前記免疫グロブリンスキャフォールドが、Vである、請求項1に記載の免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項7】
前記Vが、カッパーまたはラムダファミリーのものである、請求項に記載の免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項8】
前記スキャフォールドが、多量体化され、得られた多量体が、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体または八量体を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項9】
前記スキャフォールドが、Fc断片、標的化配列、シグナル配列および精製タグまたはこれらの任意の組み合わせと融合される、請求項1〜のいずれか一項に記載の免疫グロブリンスキャフォールド
【請求項10】
前記免疫グロブリンスキャフォールドが、
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

からなる群から選択される配列またはそれと少なくとも90%同一の配列またはその断片(ただし、該少なくとも90%同一の配列またはその断片は、規範および非規範ジスルフィド結合の両方を保持し、CDR1、CDR2およびCDR3を含む残基は、任意の適切な配列となることができる)のフレームワーク領域を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の免疫グロブリンスキャフォールド。
【請求項11】
前記スキャフォールドが表面上に固定される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスキャフォールド。
【請求項12】
前記スキャフォールドがカーゴ分子に連結される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスキャフォールド。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のスキャフォールドを含む組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の免疫グロブリンスキャフォールドをコードする核酸。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の発現ベクターを含む宿主細胞または生物。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に定義されている少なくとも1種の免疫グロブリンスキャフォールドを含む組換えライブラリーであって、該免疫グロブリンスキャフォールドが、ライブラリー当たり少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10または10を超えるクローンの多様性を提供する多数の適切なCDR配列をさらに含む、組換えライブラリー。
【請求項18】
フレームワーク領域に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を導入するステップを含む、またはV免疫グロブリンスキャフォールドの安定性を改善する方法であって、
ヒトVスキャフォールドにおいて、1個の非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入されたシステイン残基間に形成される;または
ヒトVスキャフォールドにおいて、1個の非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入されたシステイン残基間に形成される、
方法


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2011年1月28日に出願された米国仮特許出願第61/437174号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、免疫グロブリンドメインの工学的作製(engineering)に関する。より具体的には、本発明は、免疫グロブリンの生物物理学的特性を改善するための免疫グロブリンドメインの工学的作製を対象にする。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
不安定なタンパク質は、可変的な治療有用性およびin vivoにおける予測不可能な生理学的効果をもたらすため、タンパク質安定性は、タンパク質治療法における重要な役割を果たす(Horwich、2002年;Wetzel、1988年;MitrakiおよびKing、1992年;WornおよびPluckthun、2001年;Hurleら、1994年)。抗体治療の分野において、ヒトの従来の抗体および抗体断片は、大き過ぎる、および/または低い安定性、不可逆的アンフォールディングおよび低発現等の貧弱な生物物理学的特性を有する。したがって、これらの臨床応用は限定的である。「天然に存在する」シングルドメイン抗体(sdAb)、例えば、ラクダ科の動物のVH、サメのVNARは、その非ヒト性質のために免疫原性ではあるが、上記の問題がない。
【0004】
完全にヒトのsdAb、例えば、VまたはVは、より低い免疫原性(または免疫原性を欠く)が予想されるため、ヒトの治療に理想的な分子となることになる。しかし、これは、その低い安定性および溶解性のために凝集する傾向がある(Wardら、1989年;DaviesおよびReichmann、1994年;DaviesおよびRiechmann、1995年;Tanhaら、2001年;KazlauskasおよびBornscheuer、2009年;HolligerおよびHudson、2005年;Hoogenboom、2005年)。この性質は、ヒトの治療法おけるその適用を限定する。治療分子としての安定な抗体の意義を考慮すると、より安定な/可溶性のシングルドメイン抗体を選択する試みがなされてきたのは当然のことである(DaviesおよびRiechmann、1996年a;Jespersら、2004年;Toら、2005年; Tanhaら、2006年;Arbabi−Ghahroudiら、2009年a;Arbabi−Ghahroudiら、2009年b;Arbabi−Ghahroudiら、2010年)。
【0005】
sdAbの安定性を改善する典型的な一方法は、1種のsdAbをスキャフォールドとして用いて、それぞれ独自の特異性を有する数億種のsdAb変種を含むディスプレイライブラリーを生成することである。次に、パニング技法により、標的抗原に対してバインダー(sdAb)が選択される。この方法に対するアプローチの一つにおいて、先ず、親スキャフォールドが、非凝集となるよう工学的に作製され、次に、非凝集スキャフォールドに基づきライブラリーが構築される。ライブラリーにおける後代(progeny)sdAbは、親スキャフォールドの非凝集特性を全般的に「受け継ぐ」ことが想定されるため、親和性判定基準のみに基づく従来のパニングが行われて、非凝集sdAbを選択する。第二のアプローチにおいて、親スキャフォールドは、非凝集であっても、そうでなくてもよく、そのライブラリーは、親和性と非凝集判定基準の両方に基づきパニングされる。アプローチに関係なく、凝集および非凝集sdAbは、頻繁に共選択(co−select)される。多くの場合、凝集sdAbは、選択過程において優位に立つ、あるいは、選択されたバインダーは、低い溶解性、安定性および発現レベルを有する。さらに、広範囲のアミノ酸置換が生じてVを不安定化し凝集をもたらす場合、いくつかのV抗体が、親和性選択の間に失われる(KazlauskasおよびBornscheuer、2009年;Bloomら、2006年)。これらの要因は、非凝集sdAbの選択を退屈かつ大きな労働力を必要とし、時に手ごわいものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本技術分野において依然として、非凝集性、可溶性で安定な抗体の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、免疫グロブリンドメインの工学的作製に関する。より具体的には、本発明は、免疫グロブリンの生物物理学的特性を改善するための免疫グロブリンドメインの工学的作製を対象にする。
【0008】
本発明は、フレームワーク領域(FR)に1または2以上の非規範(non−canonical)ジスルフィド結合を含む免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物ならびに該組成物を作製および使用するための方法を提供する。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、シングルドメイン抗体(sdAb)である。免疫グロブリンスキャフォールドは、Vとなることができ、Vは、V3ファミリーのものとなることができる。あるいは、免疫グロブリンスキャフォールドは、Vとなることができ、Vは、カッパーまたはラムダファミリーのものとなることができる。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、ヒトである。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドはヒューマニア化(humaneer)されている。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、ラクダ科の動物である。一実施形態において、ラクダ科の動物の種は、ラマ、アルパカおよびラクダからなる群から選択される。
【0009】
上に記す免疫グロブリンスキャフォールドにおいて、1または2以上の非規範ジスルフィド結合は、FR2およびFR3において変異により導入されたシステイン間で形成され得る。免疫グロブリンスキャフォールドがVである場合、本発明は、Kabatナンバリングに基づくポジション47〜49のうちいずれか1つおよびポジション67〜71のうちいずれか1つにCysが導入されていてよい、スキャフォールドを作製する方法を提供する。一実施形態において、Cysは、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入されていてよい。免疫グロブリンスキャフォールドがVである場合、本発明は、Kabatナンバリングに基づくポジション46〜49のうちいずれか1つおよびポジション62〜66のうちいずれか1つにCys残基が導入されていてよい、スキャフォールドを作製する方法を提供する。一実施形態において、Cys残基は、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入されていてよい。
【0010】
本明細書に記載されている免疫グロブリンスキャフォールドは、抗体可変領域のフレームワーク領域FR2およびFR3に導入された少なくとも2個の非規範Cys残基を含むポリペプチド配列を含むことができる。一実施形態において、ポリペプチドは、V sdAbドメインのV FR2領域の残基47〜49から選択されるポジションにおけるCys残基およびV FR3領域の残基69〜71から選択されるポジションにおけるCys残基を含む。一実施形態において、ポリペプチドは、V sdAbドメインのV FR2領域の残基46〜49から選択されるポジションにおけるCys残基およびV FR3領域の残基62〜66から選択されるポジションにCys残基を含む。
【0011】
一実施形態において、ポリペプチドは、Vドメインの少なくともポジション49におけるCys残基および少なくともポジション69におけるCys残基を含む。一実施形態において、本発明に係るVドメインは、sdAb断片を含む。一実施形態において、本発明は、多数のCDR配列を含む本発明に係るV sdAb断片を含む発現ライブラリーを提供する。一実施形態において、配列番号2、4、6および8の群から選択される本発明に係るV sdAb断片のCDR領域のポジションは、図1Aに提示されているポジションにあり、配列番号70〜83の群から選択される断片のCDR領域のポジションは、PCT公開、国際公開第2006/099747号の図2における対応する野生型配列に提示されているポジションにある。
【0012】
一実施形態において、ポリペプチドは、Vドメインの少なくともポジション48におけるCys残基および少なくともポジション64におけるCys残基を含む。一実施形態において、本発明に係るVドメインは、sdAb断片を含む。一実施形態において、本発明は、多数のCDR配列を含む本発明に係るV sdAb断片を含む発現ライブラリーを提供する。一実施形態において、配列番号10、12、14、16、18、20、22および24の群から選択される発明に係るV sdAb断片のCDR領域のポジションは、図1Bに提示されているポジションにある。
【0013】
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドのCDR残基は、任意の適切な配列であり得、図1Aおよび1Bに提示されている数以外の可変的な数の残基を有することができる。
【0014】
一実施形態において、本発明に係る免疫グロブリンポリペプチドは、
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
からなる群から選択される配列またはそれと実質的に同一の配列またはその断片(ただし、実質的に同一の配列またはその断片は、規範および非規範ジスルフィド結合の両方を保持し、CDRの領域における配列は、任意の適切な配列となることができ、CDR1、CDR2およびCDR3のそれぞれに適切だが可変的な数の残基を有することができる)のうち1または複数のスキャフォールド領域を含む。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22および24の場合、CDRを含む残基は、図1Aおよび1Bに提示されている通りのものである。配列番号70から83の場合、CDRを含む残基は、PCT公開、国際公開第2006/099747号の図2に提示されている対応する野生型クローンに提示されている通りのものである。
【0019】
本発明は、本明細書に記載されているとおりの本発明に係る非規範Cys−Cys残基を含むスキャフォールドのフレームワーク領域がその間を占める、多種多様な適切な配列および長さを含む多数のCDRを含む可変ドメインであって、多様な可変ドメインをコードする組換えライブラリーも包含する。一実施形態において、組換えライブラリーは、哺乳類配列を含む。一実施形態において、組換えライブラリーは、ヒト配列を含む。一実施形態において、組換えライブラリーは、ラクダ科の動物の配列を含む。一実施形態において、組換えライブラリーは、選択された後に、必要に応じて成熟化および/またはヒューマニア化される多様な配列を含む。
【0020】
本発明はまた、フレームワーク領域に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を導入するステップを含む、シングルドメイン抗体の安定性を改善する方法を提供する。
【0021】
本発明は、安定性を増強するようVおよびVドメインを工学的に作製するための方法を提供する。Cys対(複数可)を特定の位置に導入することによる、VおよびVドメインにおける追加のジスルフィド連結(複数可)の形成は、VおよびVを高度に非凝集性で可溶性、安定かつ発現可能なドメインに形質転換すると本明細書において示される。特に、Vについてのアミノ酸ポジション49および69ならびにVについての48および64(Kabatナンバリング)にCys対が導入されるよう、FR2およびFR3領域内の残基が置き換えられる場合、これらの有利な特性が得られる。Cys変異体において、導入された非規範残基間におけるジスルフィド連結の形成が質量分析により確認された。この様式で改変された、即ち、列挙されている非規範ジスルフィド架橋を含有するあらゆるCys変異体は、E.coliにおける有害発現を示さず、表面プラズモン共鳴(「SPR」)の結合測定により有害な高次構造変化を示さず、凝集減少または凝集欠如のいずれかを示した。その上、あらゆる変異体は、その野生型対応物よりも少なくとも11℃高い融解温度を有して、大幅により高い安定性を有していた。本データは、VまたはVスキャフォールドのいずれかまたはその両方へのこのようなジスルフィド連結の導入によるVおよびVドメインフレームワークの安定化が、そのプロテアーゼ抵抗性を改善できることを実証する。本発明の工学的に作製されたスキャフォールドに基づくVおよび/またはVライブラリーを調製して、特異的な標的分子に結合する安定かつ非凝集性のVおよびVを同定することができる。本技術分野で公知の種々のディスプレイライブラリーを用いて、本発明のVおよび/またはV構築物を発現させることができる。一実施形態において、ライブラリーは、シングルドメイン抗体(「sdAb」)ライブラリーである。
【0022】
本発明は、(i)凝集sdAbを非凝集sdAbに転換し、(ii)sdAbライブラリーから非凝集sdAbを得る効率を増大させ、(iii)sdAbの安定性、例えば、融解温度、リフォールディング効率、プロテアーゼに対する抵抗性および発現レベルをさらに増大させることのできる新規アプローチを提供する。これらの特徴を有するVおよびVスキャフォールドの提供は、抗体ライブラリーからより広い範囲の抗体の回収を可能にすることができる。高度な非凝集性および安定性の保持は、他の仕方では抗体選択プロセスの間に失われてしまう可能性のある新規抗体の単離をもたらすことができる。その上、生物物理学的特徴の改善は、VおよびVを、治療学および産業分野において広範に適用できるようにすることができる。
【0023】
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
フレームワーク領域(FR)に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を含む免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物。
(項目2)
項目1に記載の組成物であって、前記免疫グロブリン(immunoglobuin)スキャフォールドが、VスキャフォールドまたはVスキャフォールドから選択され、該Vスキャフォールドが、前記FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含み、該非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入されたシステイン残基間に形成され;該Vスキャフォールドが、該FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含み、該非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入されたシステイン残基間に形成される、組成物。
(項目3)
前記スキャフォールドが、より大きな抗体タンパク質またはシングルドメイン抗体(sdAb)、scFv、Fab、F(ab)からなる群から選択される断片または成熟免疫グロブリンの一部である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記成熟免疫グロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgEおよび/またはIgMからなる群から選択される、項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記免疫グロブリンスキャフォールドが、Vである、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記Vが、V3ファミリーのものである、項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記免疫グロブリンスキャフォールドが、Vである、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記Vが、カッパーまたはラムダファミリーのものである、項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記1または2以上の非規範ジスルフィド結合が、変異によりFR2およびFR3に導入されたシステイン残基間に形成される、項目1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記システイン残基が、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入される、項目5または6に記載の組成物。
(項目11)
前記システイン残基が、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入される、項目7または8に記載の組成物。
(項目12)
前記スキャフォールドが、多量体化され、得られた多量体が、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体または八量体を含む、項目1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
前記スキャフォールドが、Fc断片、標的化配列、シグナル配列および精製タグまたはこれらの任意の組み合わせから選択される第二の配列と融合される、項目1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
前記免疫グロブリンスキャフォールドが、
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

からなる群から選択される配列またはそれと実質的に同一の配列またはその断片(ただし、該実質的に同一の配列またはその断片は、規範および非規範ジスルフィド結合の両方を保持し、CDR1、CDR2およびCDR3を含む残基は、任意の適切な配列となることができる)のフレームワーク領域を含む、項目1〜13のいずれか一項に記載の組成物スキャフォールド。
(項目15)
項目1〜14のいずれか一項に記載の組成物をコードする核酸。
(項目16)
項目15に記載の核酸を含む発現ベクター。
(項目17)
項目16に記載の発現ベクターを含む宿主細胞または生物。
(項目18)
項目2に定義されている少なくとも1種の免疫グロブリンスキャフォールドを含む組換えライブラリーであって、該免疫グロブリンスキャフォールドが、ライブラリー当たり少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10または10を超えるクローンの多様性を提供する多数の適切なCDR配列をさらに含む、組換えライブラリー。
(項目19)
フレームワーク領域に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を導入するステップを含む、免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物の安定性を改善する方法。
(項目20)
前記免疫グロブリン配列が、非ヒト動物に由来する、項目1から14のいずれか1または複数項に記載の組成物。
(項目21)
前記非ヒト動物が、鳥類、両生類、爬虫類、哺乳類、ラクダ科の動物、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ、ウマまたは非ヒト霊長類から選択される、項目20に記載の組成物。
(項目22)
前記非ヒト動物が、ラクダ科の動物である、項目21に記載の組成物。
(項目23)
前記ラクダ科の動物の種が、ラマ、アルパカおよびラクダから選択される、項目22に記載の組成物。
(項目24)
前記免疫グロブリンスキャフォールドが、V領域、VまたはVH領域のうちいずれか1または複数から選択される、項目23に記載の組成物。
(項目25)
前記免疫グロブリンスキャフォールドが、ヒューマニア化されている、項目20〜24のいずれか一項に記載の組成物。
(項目26)
前記免疫グロブリン配列が、ヒトに由来する、項目1から14のいずれか1または複数項に記載の組成物。
次に、添付の図面を参照しつつ、本発明の前述および他の特色を例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1は、V、Vおよび対応するCys変異体の一次構造を示す。図1Aは、Kabatナンバリング方式(Kabatら、1991年)を用いたV(配列番号1〜38)のナンバリングおよびCDR表記を示す。システインに目下置き換えられている残基(Ser49およびIle69)は、灰色の陰影で示される。図1Bは、Kabatナンバリングを用いたVのナンバリングおよびCDR表記を示す。システインに目下置き換えられている残基(Ile/Val48およびGly/Ala64)は、灰色の陰影で示される。「FR」は、VおよびVのフレームワーク領域を示し、CDRは、相補性決定領域を示す。
図1B図1は、V、Vおよび対応するCys変異体の一次構造を示す。図1Aは、Kabatナンバリング方式(Kabatら、1991年)を用いたV(配列番号1〜38)のナンバリングおよびCDR表記を示す。システインに目下置き換えられている残基(Ser49およびIle69)は、灰色の陰影で示される。図1Bは、Kabatナンバリングを用いたVのナンバリングおよびCDR表記を示す。システインに目下置き換えられている残基(Ile/Val48およびGly/Ala64)は、灰色の陰影で示される。「FR」は、VおよびVのフレームワーク領域を示し、CDRは、相補性決定領域を示す。
図2A図2Aは、IMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)精製からのVの溶出プロファイルを示す。野生型および変異体Vは、それぞれ点線および実線(closed line)で示す。20mLの時点またはその後に溶出するピークは、精製Vを含有する。
図2B図2Bは、IMACにより精製された野生型および変異体Vの非還元SDS−PAGEを示す(例としてHVHAm302/HVHAm302SおよびHVHPC235/HVHPC235Sペアを示す)。矢印は、HVHAm302の二量体分子種を示す。SDS−PAGEゲルにおける「M」は、タンパク質標準をロードしたレーンを示す。
図3A-1】図3Aは、質量分析法による分析のためのVのトリプシンペプチド(配列番号25〜36、表2も参照)の概略図である。Cys対を接続するジスルフィド連結(disulfide linkage)を線で示す。黒塗りの点(closed dot)は、ポジション49および69に導入されたシステイン(C)を示す。規範天然(野生型および変異体に存在)または非規範工学的作製(変異体にのみ存在)ジスルフィド連結を有する主要ペプチドのみを示す。トリプシン消化部位(LysおよびArgのC末端)は太字で示す。還元SDS−PAGEプロファイルは、Vがトリプシンにより首尾よく消化されて、小型のペプチドになったことを示す(「+トリプシン」を「−トリプシン」と比較)。SDS−PAGEゲルにおける「M」は、タンパク質標準をロードしたレーンを示す。
図3A-2】図3Aは、質量分析法による分析のためのVのトリプシンペプチド(配列番号25〜36、表2も参照)の概略図である。Cys対を接続するジスルフィド連結(disulfide linkage)を線で示す。黒塗りの点(closed dot)は、ポジション49および69に導入されたシステイン(C)を示す。規範天然(野生型および変異体に存在)または非規範工学的作製(変異体にのみ存在)ジスルフィド連結を有する主要ペプチドのみを示す。トリプシン消化部位(LysおよびArgのC末端)は太字で示す。還元SDS−PAGEプロファイルは、Vがトリプシンにより首尾よく消化されて、小型のペプチドになったことを示す(「+トリプシン」を「−トリプシン」と比較)。SDS−PAGEゲルにおける「M」は、タンパク質標準をロードしたレーンを示す。
図3B図3Bは、HVHAm302Sのトリプシン消化からの、工学的に作製したジスルフィド連結したペプチド(disulfide−linked peptide)、GLEWVCAISSSGGSTYYADSVK(P1)(T44〜T64)−FTCSR(P2)(T67〜T71)(Cys49−Cys69)(配列番号29および30)のm/z964.04(3+)イオンの衝突誘起解離(CID)−MSスペクトルである。ジスルフィド連結を有する2種のペプチド(b6+P2およびy17+P2)は、MS(質量分析)ピークに注釈を付け、アスタリスクで示す。関連データを表2に提示する。
図3C図3Cは、LC−MSクロマトグラムの調査から観察される、ジスルフィド連結したペプチドLLCFAASTLQSGVPSR(P1)(配列番号43)、FSCSGSGTDFTLTISNLQPEDFATYYCQQSYS TPR(P2)(配列番号44)およびVTITCR(P3)(配列番号42)に対応するHVLP324Sトリプシンペプチドからの、m/z1042.66(6+)におけるジスルフィド連結したペプチドイオンのCID−MSスペクトルである。ジスルフィド結合(disulfide bond)による改変としてのP2とP3から、非常に情報価値のあるyフラグメントイオンを観察した。同様に、P1のほぼ完全なyイオンシリーズを観察した。ETDによる3種のペプチド断片のジスルフィド連結の解離後に、それぞれm/z691.47(1+)、1648.86(1+)および1956.85(2+)におけるインタクトP1、P2およびP3イオンが全て相対的に高い存在量で観察された、HVLP324Sの同一のジスルフィド−連結したペプチドから、m/z1250.99(5+)におけるペプチドイオン[M+5H]5+のETD−MSスペクトルにより、ジスルフィド連結をさらに確認した(データは示していない)。
図4A図4Aは、Vドメインおよびその対応するCys変異体バージョン(HVHAm302/HVHAm302S、HVHAm427/HVHAm427S、HVHAm431/HVHAm431SおよびHVHPC235/HVHPC235S)の分子ふるいクロマトグラムを示す。
図4B図4Bは、4種の追加のCys変異体Vドメイン(HVHP414S、HVHP420S、HVHP426SおよびHVHP429S)の分子ふるいクロマトグラムを示す。対応する野生型バージョンは、非凝集単量体であることが以前に示された(Toら、2005年)。
図4C図4Cは、ヒトVドメインおよびそのCys変異体バージョンの分子ふるいクロマトグラムを示す。図4A、BおよびCにおける各クロマトグラムについては、バックグラウンド吸光度を差し引き、100%に設定した単量体ピーク(矢頭で示す)に対して全ピークを正規化した。単量体ピークの左にあるピークは、凝集体ピークとして考えられた。
図5図5は、Vの熱によるアンフォールディングを示す。野生型およびCys変異体Vは、それぞれ黒塗りおよび白塗りの記号で示す(HVHAm302およびHVHAm302S(正方形);HVHAm431およびHVHAm431S(丸);HVHPC235およびHVHPC235S(三角形))。Vの計算されたアンフォールディング中点温度、Tを表4に記録する。
図6図6は、野生型(図6A)またはCys変異体(図6B)Vの熱によるアンフォールディングを示す。計算されたTを表4に記録する。図6Cにおいて、それぞれ最低および最高Tを有するHVLP389およびHVLP325の熱によるアンフォールディング曲線を、そのCys変異体バージョン、HVLP389SおよびHVLP325Sと並列で比較する。
図7A-1】図7は、固定したプロテインAに対するVのSPR結合解析を示す。次に、図7AにおいてμMで示す各Vの濃度は以下のとおりであった:0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5および3.35(HVHAm302);0.2、0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0および3.88(HVHAm427);0.5、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5および3.81(HVHAm431);0.01、0.01、0.02、0.05、0.25、0.25、0.5、1.0および2.5(HVHAmC235);0.4、0.8、1.6、3.2、5.4および8.22(HVHAm302S);0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.0および3.08(HVHAm427S);0.5、1.0、1.0、2.0、4.0、6.5、10.0および13.3(HVHAm431S);0.025、0.025、0.05、0.1、0.2、0.4、0.4、0.8、0.8、0.8、1.5、1.5、3.0、6.0および9.9(HVHAmC235S)。計算されたKを表4に記録する。RU、共鳴単位。図7Bは、野生型および変異体Vのアイソアフィニティー対角プロットによる運動速度図である。SPR解析により決定された運動速度(konおよびkoff)を、同じ対角線上に位置するVが、同一K値を有するように、二次元平面に対数スケールでプロットした。
図7A-2】図7は、固定したプロテインAに対するVのSPR結合解析を示す。次に、図7AにおいてμMで示す各Vの濃度は以下のとおりであった:0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5および3.35(HVHAm302);0.2、0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0および3.88(HVHAm427);0.5、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5および3.81(HVHAm431);0.01、0.01、0.02、0.05、0.25、0.25、0.5、1.0および2.5(HVHAmC235);0.4、0.8、1.6、3.2、5.4および8.22(HVHAm302S);0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.0および3.08(HVHAm427S);0.5、1.0、1.0、2.0、4.0、6.5、10.0および13.3(HVHAm431S);0.025、0.025、0.05、0.1、0.2、0.4、0.4、0.8、0.8、0.8、1.5、1.5、3.0、6.0および9.9(HVHAmC235S)。計算されたKを表4に記録する。RU、共鳴単位。図7Bは、野生型および変異体Vのアイソアフィニティー対角プロットによる運動速度図である。SPR解析により決定された運動速度(konおよびkoff)を、同じ対角線上に位置するVが、同一K値を有するように、二次元平面に対数スケールでプロットした。
図7B図7は、固定したプロテインAに対するVのSPR結合解析を示す。次に、図7AにおいてμMで示す各Vの濃度は以下のとおりであった:0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5および3.35(HVHAm302);0.2、0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0および3.88(HVHAm427);0.5、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5および3.81(HVHAm431);0.01、0.01、0.02、0.05、0.25、0.25、0.5、1.0および2.5(HVHAmC235);0.4、0.8、1.6、3.2、5.4および8.22(HVHAm302S);0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.0および3.08(HVHAm427S);0.5、1.0、1.0、2.0、4.0、6.5、10.0および13.3(HVHAm431S);0.025、0.025、0.05、0.1、0.2、0.4、0.4、0.8、0.8、0.8、1.5、1.5、3.0、6.0および9.9(HVHAmC235S)。計算されたKを表4に記録する。RU、共鳴単位。図7Bは、野生型および変異体Vのアイソアフィニティー対角プロットによる運動速度図である。SPR解析により決定された運動速度(konおよびkoff)を、同じ対角線上に位置するVが、同一K値を有するように、二次元平面に対数スケールでプロットした。
図8A-1】図8は、固定したプロテインLに対するVのBiacoreセンサーグラムを示す。図8Aにおける各Vの濃度は以下のとおりであった:0.2、0.5、0.75、1、2、3、5および10μM(HVLP389、HVLP351およびHVLP364);1、2、3、5、7.5および10nM(HVLP342);0.2、0.5、1、2、3、5および10μM(HVLP335);0.2、0.5、1、1.5、2および5μM(HVLP325)、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、3および5μM(HVLP3103)ならびに1、2、4、6、8および10nM(HVLP324)。プロテインLの低親和性部位に対するHVLP324およびHVLP342結合のセンサーグラムは包含されていないが、計算されたKを表4に記録する。図8Bにおいて、Cys変異体Vの濃度は、以下のとおりであった:0.05、0.1、0.2、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4および7μM(HVLP389S);0.1、0.2、0.2、0.4、0.6、1、2、4、6および8μM(HVLP335S);0.05、0.1、0.2、0.2、0.4、0.6、1、2、4および6μM(HVLP351S);0.1、0.2、0.2、0.5、0.75、1、2、4、7および10μM(HVLP3103S);4、8、8、16、32、64、120、240nM(HVLP324S);0.1、0.2、0.4、0.8、1.5、3、6、12μM(HVLP325S);2、4、8、16、16、32、64、120、240nM(HVLP342S)。計算されたKを表4に記録する。
図8A-2】図8は、固定したプロテインLに対するVのBiacoreセンサーグラムを示す。図8Aにおける各Vの濃度は以下のとおりであった:0.2、0.5、0.75、1、2、3、5および10μM(HVLP389、HVLP351およびHVLP364);1、2、3、5、7.5および10nM(HVLP342);0.2、0.5、1、2、3、5および10μM(HVLP335);0.2、0.5、1、1.5、2および5μM(HVLP325)、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、3および5μM(HVLP3103)ならびに1、2、4、6、8および10nM(HVLP324)。プロテインLの低親和性部位に対するHVLP324およびHVLP342結合のセンサーグラムは包含されていないが、計算されたKを表4に記録する。図8Bにおいて、Cys変異体Vの濃度は、以下のとおりであった:0.05、0.1、0.2、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4および7μM(HVLP389S);0.1、0.2、0.2、0.4、0.6、1、2、4、6および8μM(HVLP335S);0.05、0.1、0.2、0.2、0.4、0.6、1、2、4および6μM(HVLP351S);0.1、0.2、0.2、0.5、0.75、1、2、4、7および10μM(HVLP3103S);4、8、8、16、32、64、120、240nM(HVLP324S);0.1、0.2、0.4、0.8、1.5、3、6、12μM(HVLP325S);2、4、8、16、16、32、64、120、240nM(HVLP342S)。計算されたKを表4に記録する。
図8B-1】図8は、固定したプロテインLに対するVのBiacoreセンサーグラムを示す。図8Aにおける各Vの濃度は以下のとおりであった:0.2、0.5、0.75、1、2、3、5および10μM(HVLP389、HVLP351およびHVLP364);1、2、3、5、7.5および10nM(HVLP342);0.2、0.5、1、2、3、5および10μM(HVLP335);0.2、0.5、1、1.5、2および5μM(HVLP325)、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、3および5μM(HVLP3103)ならびに1、2、4、6、8および10nM(HVLP324)。プロテインLの低親和性部位に対するHVLP324およびHVLP342結合のセンサーグラムは包含されていないが、計算されたKを表4に記録する。図8Bにおいて、Cys変異体Vの濃度は、以下のとおりであった:0.05、0.1、0.2、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4および7μM(HVLP389S);0.1、0.2、0.2、0.4、0.6、1、2、4、6および8μM(HVLP335S);0.05、0.1、0.2、0.2、0.4、0.6、1、2、4および6μM(HVLP351S);0.1、0.2、0.2、0.5、0.75、1、2、4、7および10μM(HVLP3103S);4、8、8、16、32、64、120、240nM(HVLP324S);0.1、0.2、0.4、0.8、1.5、3、6、12μM(HVLP325S);2、4、8、16、16、32、64、120、240nM(HVLP342S)。計算されたKを表4に記録する。
図8B-2】図8は、固定したプロテインLに対するVのBiacoreセンサーグラムを示す。図8Aにおける各Vの濃度は以下のとおりであった:0.2、0.5、0.75、1、2、3、5および10μM(HVLP389、HVLP351およびHVLP364);1、2、3、5、7.5および10nM(HVLP342);0.2、0.5、1、2、3、5および10μM(HVLP335);0.2、0.5、1、1.5、2および5μM(HVLP325)、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、3および5μM(HVLP3103)ならびに1、2、4、6、8および10nM(HVLP324)。プロテインLの低親和性部位に対するHVLP324およびHVLP342結合のセンサーグラムは包含されていないが、計算されたKを表4に記録する。図8Bにおいて、Cys変異体Vの濃度は、以下のとおりであった:0.05、0.1、0.2、0.2、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4および7μM(HVLP389S);0.1、0.2、0.2、0.4、0.6、1、2、4、6および8μM(HVLP335S);0.05、0.1、0.2、0.2、0.4、0.6、1、2、4および6μM(HVLP351S);0.1、0.2、0.2、0.5、0.75、1、2、4、7および10μM(HVLP3103S);4、8、8、16、32、64、120、240nM(HVLP324S);0.1、0.2、0.4、0.8、1.5、3、6、12μM(HVLP325S);2、4、8、16、16、32、64、120、240nM(HVLP342S)。計算されたKを表4に記録する。
図9-1】図9は、VのGIプロテアーゼ(ペプシン、キモトリプシンおよびトリプシン)抵抗性を示す。図9Aは、異なる比率のプロテアーゼ対タンパク質における野生型V(白塗の丸)のプロテアーゼ抵抗性プロファイルを、Cys変異体V(黒塗の丸)のプロファイルと比較する。図9Bにおいて、野生型(白丸)対Cys変異体(黒塗の丸)のVについての%プロテアーゼ抵抗性対Tのプロットを示す。
図9-2】図9は、VのGIプロテアーゼ(ペプシン、キモトリプシンおよびトリプシン)抵抗性を示す。図9Aは、異なる比率のプロテアーゼ対タンパク質における野生型V(白塗の丸)のプロテアーゼ抵抗性プロファイルを、Cys変異体V(黒塗の丸)のプロファイルと比較する。図9Bにおいて、野生型(白丸)対Cys変異体(黒塗の丸)のVについての%プロテアーゼ抵抗性対Tのプロットを示す。
図10図10は、fd−tetV24Sベクターの概略図を示す。PCRを行い、ApaLIおよびNotI制限酵素で消化し、その後、ApaLIおよびNotI制限酵素で線状化したfd−tetGIIID(Tanhaら、2001年)ファージDNAへとクローニングすることにより、その3’端にリンカー配列を有するHVLP324S遺伝子を調製した。この操作により、ファージ遺伝子IIIリーダー配列と遺伝子IIIオープンリーディングフレーム配列との間にリンカーを有するHVLP324Sを配置させる。DNAリンカー配列は、GSGSKAAA(配列番号86)ポリペプチドをコードし、式中、リシン残基は、トリプシン開裂部位(矢印で示す)を提供する。この構成により、抗体ファージディスプレイライブラリーのパニングにおける結合ステップに続きトリプシンを添加することにより、標的抗原から結合しているファージの溶出を可能にする。
図11図11は、合成HVLP324Sライブラリーの構築を示す。ライブラリー構築のために用いたヒトVスキャフォールドであるHVLP324Sのアミノ酸配列(配列番号10)は、Kabat方式(Kabatら、1991年)に従ってナンバリングした。ランダム化されることになるCDR(1、2および3)におけるアミノ酸ポジションに下線を引いた。非規範Cys残基を点で示す。in vitro変異誘発のために選択したCDRにおけるHVLP324Sコドンを、その対応するランダム化コドンと共に示す。アミノ酸ポジション28(CDR1における)は、SerまたはGlyコドン(RGCとして示す)に制限され、ポジション54(CDR2における)は、ArgまたはLeuコドン(CKNとして示す)に制限された。CDR3変異誘発に対し、種々の長さを有する3種のオリゴヌクレオチド(V24−CDR3/3a/3b;表6、実施例8を参照)を用いて、9、10または11アミノ酸のCDR3長を作製した。IUPAC命名法に従い次の文字を用いて、オリゴヌクレオチド内の種々のポジションにおける縮重核酸を表記した。N:A、T、GまたはCヌクレオチド;R:AまたはGヌクレオチド;K:TまたはGヌクレオチド。
図12図12は、ヒトリゾチームと結合するVのファージ選択を示す。2種の異なる選択条件(室温および65℃−2時間)下におけるファージパニング(ラウンド3および4)から選択された抗ヒトリゾチームVの頻度(%)を、それぞれ灰色または黒色の角柱で示す。
図13図13は、抗ヒトリゾチームVおよび抗ヒト血清アルブミンVのアミノ酸配列を示す。HVLP324Sのアミノ酸配列(配列番号10)を、詳細な生物物理学的解析のために選択された8種の抗ヒトリゾチームVおよび1種の抗ヒト血清アルブミンVとともに整列する。CDRおよびFRは、Kabatナンバリング(Kabatら、1991年)により表記した。
図14図14は、抗ヒトリゾチームVの非凝集状態および熱安定性を示す。(A)抗ヒトリゾチームVおよび抗ヒト血清アルブミンVのSuperdex(商標)75分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)。クロマトグラム毎に、バックグラウンド吸光度を差し引き、全ピークは、100%に設定された単量体ピーク(矢頭)に対して正規化された。単量体ピークの左にあるピークは、凝集ピークとみなす。記載されているクロマトグラムの面積積分により、%凝集体値および%単量体値を計算した。(B)抗ヒトリゾチームVおよび抗ヒト血清アルブミンVの熱によるアンフォールディング転移曲線。以前に記載された通り、フォールディングしたものの割合対温度のプロットを得た。アンフォールディング転移曲線の中点(F0.5)に対応する温度を、融解温度(T)とした。T範囲を両矢印で示す。(C)T対%単量体の相関曲線。データをプロットし、Graphpad Prizm(バージョン4.02)により解析した。
図15-1】図15は、抗ヒトリゾチームVのSPR解析を示す。各センサーグラムに示された以下の多様な濃度範囲における、固定した抗ヒトリゾチームVとヒトリゾチームとの結合を示すBiacoreセンサーグラム。HVLHLAQについては、10、25、25、100、200、200、500、750および2000nM;HVLHLDSは、100、250、500、1000、1000、2500、5000、7500、10000および10000nM;HVLHLEMについては、750、1000、2500、5000、7500、10000、15000および20000nM;HVLHLNEについては、10、25、50、100、250、250、500、750および1000nM;HVLHLNNについては、50、50、100、250、500、750、1000および1000nM;HVLHLQIについては、100、250、500、750、1000、1000および2500nM;HVLHLRNについては、10、25、50、100、200、200、500、750および1000nM;HVLHLYSについては、50、100、250、500、1000、1000、2500、5000、7500、10000、10000、15000および20000nM。
図15-2】図15は、抗ヒトリゾチームVのSPR解析を示す。各センサーグラムに示された以下の多様な濃度範囲における、固定した抗ヒトリゾチームVとヒトリゾチームとの結合を示すBiacoreセンサーグラム。HVLHLAQについては、10、25、25、100、200、200、500、750および2000nM;HVLHLDSは、100、250、500、1000、1000、2500、5000、7500、10000および10000nM;HVLHLEMについては、750、1000、2500、5000、7500、10000、15000および20000nM;HVLHLNEについては、10、25、50、100、250、250、500、750および1000nM;HVLHLNNについては、50、50、100、250、500、750、1000および1000nM;HVLHLQIについては、100、250、500、750、1000、1000および2500nM;HVLHLRNについては、10、25、50、100、200、200、500、750および1000nM;HVLHLYSについては、50、100、250、500、1000、1000、2500、5000、7500、10000、10000、15000および20000nM。
図16-1】図16は、抗ヒトリゾチームVのIMAC精製およびSDS−PAGE解析を示す。(A)固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)による精製に続く、抗ヒトリゾチームVの溶出プロファイル。精製Vに対応する溶出ピークは、四角のボックスで示す。mAU、ミリ吸光度単位。(B)還元(+DTT)条件下における、IMAC精製VのSDS−PAGEプロファイル。SDS−PAGEにより解析する前に、精製Vをリン酸緩衝食塩水(PBS)において透析した。星印は、Hisタグの取れたVを表示する。タンパク質標準(レーンM)は、それぞれの分子量をkDaで標示する。
図16-2】図16は、抗ヒトリゾチームVのIMAC精製およびSDS−PAGE解析を示す。(A)固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)による精製に続く、抗ヒトリゾチームVの溶出プロファイル。精製Vに対応する溶出ピークは、四角のボックスで示す。mAU、ミリ吸光度単位。(B)還元(+DTT)条件下における、IMAC精製VのSDS−PAGEプロファイル。SDS−PAGEにより解析する前に、精製Vをリン酸緩衝食塩水(PBS)において透析した。星印は、Hisタグの取れたVを表示する。タンパク質標準(レーンM)は、それぞれの分子量をkDaで標示する。
図17図17は、抗ヒト血清アルブミンVのSPR解析を示す。センサーグラムに示された以下の多様な濃度範囲の、固定したヒト血清アルブミンに対する抗ヒト血清アルブミンVの結合を示すBiacoreセンサーグラム。0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.5、0.75、1、1、2および4μM。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、免疫グロブリンドメインの工学的作製に関する。より具体的には、本発明は、免疫グロブリンの生物物理学的特性を改善するための免疫グロブリンドメインの工学的作製を対象にする。組成物(composition of matter)ならびにこのような組成物(composition)を作製および使用する方法が、提供される。
【0026】
本発明は、フレームワーク領域(FR)に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を含むVまたはVスキャフォールドを含むポリペプチドを含む組成物であって、該非規範ジスルフィド結合が、該ポリペプチドの改善された安定性および非凝集性を提供する組成物を提供する。一実施形態において、ポリペプチドは、VまたはVスキャフォールドである。一実施形態において、ポリペプチドは、VまたはVドメインのsdAb断片を含む。sdAbは、本明細書に記載されているV領域、VH領域またはV領域に由来し得る。
【0027】
免疫グロブリンスキャフォールドは、重鎖可変領域(「V」)を含むことができる。一実施形態において、Vは、V1、V2またはV3ファミリーに由来する。一実施形態において、Vは、V3ファミリーのものであり得る。あるいは、免疫グロブリンスキャフォールドは、軽鎖可変領域(「V」)のものであり得る。一実施形態において、Vは、カッパーまたはラムダファミリーのものであり得る。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、非ヒト動物である。一実施形態において、非ヒト動物は、あらゆる脊椎動物、特に、鳥類、両生類、爬虫類、哺乳類、ラクダ科の動物、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ、ウマまたは非ヒト霊長類から選択される脊椎動物を包含する。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、ヒトである。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、ラクダ科の動物である。一実施形態において、ラクダ科の動物の種は、ラマ、アルパカおよびラクダからなる群から選択される。一実施形態において、ラクダ科の動物のスキャフォールドは、V領域、VまたはVH領域のうちいずれか1または複数に由来する。
【0028】
一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、「ヒューマニア化」(あるいは同様に「ヒト化」と言う)されている、即ち、ヒト被験体に投与されるsdAbとの関係において免疫原性または潜在的に免疫原性のアミノ酸残基を有していたが、免疫原性がより低いまたは免疫原性がないアミノ酸に置き換えられた、ヒト以外の種から生じたsdAbである。Kalobiosのヒューマニア化技術が挙げられるがそれに限定されない、ヒューマニア化抗体を作製するための本技術分野で公知のいずれかの方法が、本発明において企図される。スキャフォールドがヒューマニア化される場合、免疫原性アミノ酸残基は、保存されたアミノ酸変化を構成するか否かにかかわらず、他のいかなる免疫原性のより低いアミノ酸残基に置き換えてもよいことに留意されたい。本発明のヒューマニア化されたスキャフォールドは、本明細書に記載されている非規範Cys残基ならびに、任意の天然(規範)ジスルフィド結合を保持することが理解される。
【0029】
本明細書において、「VドメインまたはVドメイン」とも称される用語「V」または「V」は、本明細書において使用する場合、それぞれ抗体重鎖または抗体軽鎖の可変領域を指す。一実施形態において、VドメインまたはVドメインは、「シングルドメイン抗体」(sdAb)形式のものである。本明細書において使用する場合、「sdAb」は、免疫グロブリンフォールドを保持する単一の免疫グロブリンドメインを指す。即ち、これは、最大3個の相補性決定領域(CDR)が、最大4個のフレームワーク領域(FR)と共に抗原結合部位を形成している可変ドメインである。V可変ドメインまたはV可変ドメインのCDRは、本明細書において使用する場合、CDR1、CDR2およびCDR3と称される。V可変ドメインまたはV可変ドメインのFRは、本明細書において使用する場合、FR1、FR2、FR3およびFR4と称される。相補性決定領域の同定のために、種々のスキームが存在し、2通りの最も一般的なスキームは、KabatのスキームならびにChothiaおよびLeskのスキームである。Kabatら(1991年)は、Vおよび/またはVドメインの抗原結合領域における配列可変性に基づき「相補性決定領域」(CDR)を定義する。ChothiaおよびLesk(1987年)は、VおよびVドメインにおける構造的ループ領域の位置に基づき「高度可変ループ」(HまたはL)を定義する。これらの個々のスキームは、隣接またはオーバーラップするCDRおよび高度可変ループ領域を定義するため、抗体技術分野の当業者は、多くの場合、用語「CDR」および「高度可変ループ」を互換的に利用し、本明細書においても、この用語をそのように用いることができる。可変ドメイン(VまたはV)における配列可変性の大部分は、CDR/ループにおいて生じる。CDR/ループの外側の領域は、フレームワーク領域(FR)と称される。FRは、可変ドメインに構造的完全性を提供し、免疫グロブリンフォールドの保持を確実にする。FRおよびCDR/ループは、本明細書において使用する場合、Kabatナンバリング方式(Kabatら、1991年)に従って定義される。一実施形態において、本明細書に記載されているポリペプチドのFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4領域によるポジションのナンバリングは、Vドメインに関しては図1Aに提示されている通りのものであり、Vドメインに関しては図1Bに提示されている通りのものである。
【0030】
ヒトVドメインまたはヒトVドメインは、ヒトIg重鎖または軽鎖配列から得ることができる(HolligerおよびHudson、2005年;Holtら、2003年;Jespersら、2004年;Toら、2005年)。VドメインまたはVドメインを非ヒト種から得るための同様の技法は、本技術分野で公知である。さらに、本発明の本発明に係るVドメインおよびVドメインは、組換えにより産生されたVまたはVならびに、親和性成熟、安定化、可溶化(例えば、ラクダ化)または他の抗体の工学的作製方法による、このようなVまたはVのさらなる改変により生成されたVまたはVを包含する。本発明により、VまたはVの安定性および非凝集特徴を保持または改善するホモログ、誘導体または変異体も包含される。
【0031】
本発明は、非規範Cys残基(reside)を含むスキャフォールドを含む新規VまたはVドメインを提供する。本明細書で使用する「スキャフォールド」、または、代わりに「免疫グロブリンスキャフォールド」は、VまたはVのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)を含み、ここで、フレームワークは、種々のCDR(CDR1、CDR2、CDR3)のためのポリペプチド骨格を提供する。本明細書において使用する場合、用語「スキャフォールド」は、本発明の組成物のフレームワーク部分を記載するため、CDR領域を無視する。
【0032】
本明細書に記載されている免疫グロブリンスキャフォールドは、抗体可変領域のフレームワーク領域FR2およびFR3に導入された、少なくとも2個の非規範Cys残基を含むポリペプチド配列を含むことができる。一実施形態において、ポリペプチドは、V sdAbドメインのV FR2領域の残基47〜49から選択されるポジションにおけるCys残基およびV FR3領域の残基69〜71から選択されるポジションにおけるCys残基を含む。一実施形態において、ポリペプチドは、V sdAbドメインのV FR2領域の残基46〜49から選択されるポジションにおけるCys残基およびV FR3領域の残基62〜66から選択されるポジションにおけるCys残基を含む。本明細書において使用する場合、「導入された」または「導入する」は、特に組換え技術等、当業者に公知のいずれかの適切な方法を用いて、ポリペプチド組成物または該ポリペプチド組成物をコードするヌクレオチド配列に変化を取り込むことを意味する。一実施形態において、Cys残基は、遺伝子、コード配列および/またはmRNAにおける既存のコドンを、システイン残基に特異的なコドンで置き換えることにより、Vおよび/またはV構築物に導入される。
【0033】
一実施形態において、本発明に係る組成物は、VまたはVスキャフォールドから選択される免疫グロブリン(immunoglobuin)スキャフォールドを含み、ここで、Vスキャフォールドは、FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含み、ここで、非規範ジスルフィド結合は、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入されたCys残基間に形成され、Vスキャフォールドは、FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含み、ここで、非規範ジスルフィド結合は、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入されたCys残基間に形成される。
【0034】
本明細書において使用する場合、「発明に係る」V構築物またはsdAb断片は、少なくともポジション49におけるCys残基および少なくともポジション69におけるCys残基を含む、少なくとも1個の非規範ジスルフィド架橋を含む。
【0035】
本明細書において使用する場合、「発明に係る」V構築物またはsdAb断片は、少なくともポジション48におけるCys残基および少なくともポジション64におけるCys残基を含む、少なくとも1個の非規範ジスルフィド架橋を含む。
【0036】
一実施形態において、ポリペプチドは、Vドメインの少なくともポジション49におけるCys残基および少なくともポジション69におけるCys残基を含む。一実施形態において、本発明に係るVドメインは、sdAb断片を含む。一実施形態において、本発明は、本発明に係るV免疫グロブリンスキャフォールドを含む発現ライブラリーであって、ここで、免疫グロブリンスキャフォールドが、多数のCDR配列をさらに含む発現ライブラリーを提供する。一実施形態において、本発明は、ライブラリー当たり少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10または10クローンを超える多様性を有するライブラリーを提供するように、本発明に係るV免疫グロブリンスキャフォールドおよび多数の適切なCDR配列を含む組換えライブラリーを提供する。一実施形態において、配列番号2、4、6および8の群から選択される、本発明に係るV sdAb断片のCDR領域のポジションは、図1Aに提示されているポジションにあり、配列番号70〜83の場合のポジションは、PCT公開、国際公開第2006/099747号の図2における対応する野生型配列に提示されているポジションにある。
【0037】
一実施形態において、ポリペプチドは、Vドメインの少なくともポジション48におけるCys残基および少なくともポジション64におけるCys残基を含む。一実施形態において、本発明に係るVドメインは、sdAb断片を含む。一実施形態において、本発明は、本発明に係るV sdAb断片を含む発現ライブラリーであって、ここで、本発明に係るsdAb断片が、多数のCDR配列を含む発現ライブラリーを提供する。一実施形態において、本発明は、ライブラリー当たり少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10または10クローンを超える多様性を有するライブラリーを提供するように、本発明に係るV免疫グロブリンスキャフォールドおよび多数の適切なCDR配列を含む組換えライブラリーを提供する。一実施形態において、配列番号10、12、14、16、18、20、22および24の群から選択される本発明に係るV sdAb断片のCDR領域のポジションは、図1Bに提示されているポジションにある。
【0038】
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドのCDR残基は、任意の適切な配列であり得、図1Aおよび1Bに提示されている数以外の可変的な数の残基を有することができる。CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ、抗体技術分野の当業者にとって公知の指針に従って配列および長さが変動し得る。特定の参考文献のいずれか1報に限定されることは望まないが、本明細書に引用されているKabatならびにChothiaおよびLeskの刊行物において、例示的な指針が提供される。非限定的な例において、HVLP324Sスキャフォールドに基づくファージライブラリーの設計および構築を図11および実施例8に提示し、ライブラリーを実施例9において特徴付ける。
【0039】
本発明のVまたはV組成物は、追加のライブラリーまたは抗体の構築におけるスキャフォールドを提供する。一実施形態において、VまたはVのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)を用いて、種々のCDRを保有することができる、即ち、ここで、FRは、提示されている通りのものであり、ここで、CDR領域の配列および残基数は、提示されている通りのものである、あるいはCDR特異的残基の1もしくは複数または全てにおいて変動する。この様式において、合成VまたはVライブラリーは、ランダム化した配列を含む適切なオリゴヌクレオチドを挿入して、ランダム化したCDR/ループを提供することにより、単一スキャフォールド上に構築することができる。このようなライブラリーは、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイまたは酵母ディスプレイ等の、ディスプレイライブラリーであり得る。このアプローチは、本技術分野においてルーチンであり、多くの刊行物(例えば、Arbabi−Ghahroudiら、2009年aおよびその参考文献が挙げられるがこれらに限定されない)に記載されている。さらなる抗体工学的作製のため、またはin vitro親和性成熟のため、ライブラリーを必要に応じて用いることができる(DaviesおよびRiechmann、1996年b;Yauら、2005年)。あるいは、天然に存在するsdAbに基づく既存のライブラリーを用いて、スプライスオーバーラップ伸長(splice overlap extension)−ポリメラーゼ連鎖反応(SOE−PCR)(Arbabi−Ghahroudiら、2010年およびその参考文献;Hoら、1989年)または他の方法(Kunkelら、1987年;Sidhuら、2000年)により、ジスルフィド連結(複数可)をライブラリーの全メンバーへと工学的に作製することができる。
【0040】
さらに別の代替において、VまたはVは、特異的なCDR配列を取り込むためのスキャフォールドとして用いることができる。例えば、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、組換え技術を用いることにより、任意の非ヒト抗体からヒト化抗体が構築され、該抗体は本明細書に提供されている方法に従って非規範ジスルフィド架橋をさらに含むことができる。次に、この構築物は、適正なCDRコードセグメント(所望の結合特性に関与し、本明細書に引用され、抗体技術分野の当業者に公知の指針に従い、配列および長さが変動し得る)を、本発明によるヒト化抗体スキャフォールドに挿入することにより、特異的な標的と結合するようさらに改変することができる。当業者にとって公知の通り、これらの技法は、適正なベクターおよび細胞(哺乳類その他の細胞)内発現を用いた標準クローニングおよび組換えDNA方法により達成される。このような方法および技法は、当業者にとって周知のものであり、本明細書には記載されていない。
【0041】
本発明のVまたはVスキャフォールドは、フレームワーク領域に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を含む。ジスルフィド結合は、システイン残基間の2個のチオール基のカップリングによりタンパク質を安定化する共有結合力である(Betz、1993年)。「非規範」とは、ジスルフィド結合が、天然に存在するヒトVおよびVに見出されるものではなく、むしろ分子の工学的作製技法を用いて導入されるものであることを意味する。可変ドメイン内の2個のβ−シートを接続する天然に存在する(または「規範」)ジスルフィド結合は、VおよびVスーパーファミリーにおいて高度に保存されている(AmzelおよびPoljak、1979年;WilliamsおよびBarclay、1988年)。保存されたジスルフィド結合は、VにおけるCys22とCys92との間ならびにVにおけるCys23とCys88との間に形成され、ここで、これらの残基は、Kabatに従ってナンバリングされる(図1を参照)。本発明において、1または2以上の追加の非規範ジスルフィド結合が、VまたはVドメインへと工学的に作製される。好ましくは、工学的に作製されたジスルフィド結合は、免疫グロブリンフォールドにおける第一のベータシート由来のCysと、近傍の第二のベータシート由来のCysとの間に形成される。例えば、これは、発現して完全にフォールディングしたタンパク質においてジスルフィド結合を形成するフレームワーク領域における位置に、適正な数のCys対(複数可)を導入することにより達成することができる。Cys残基は、可変ドメインの三次元構造において隣接するフレームワーク領域に導入することができる。例えば、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、Cys残基は、FR2ベータシート領域およびFR3ベータシート領域に導入することができる。Cys残基は、チオール基のカップリング範囲内の位置にある隣接するフレームワーク領域に導入される。例えば、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、Cys残基は、それぞれのCys対が、ジスルフィド結合を形成するよう十分な近接内に存在することを条件に、Vについてのポジション47〜49(3ポジション)のうち1個およびポジション67〜71(5ポジション)のうち1個に、あるいはVについてのポジション46〜49(4ポジション)のうち1個およびポジション62〜66(5ポジション)のうち1個に導入することができる(Kabatナンバリングに基づく)。さらに非限定的な例において、Cys残基は、Vについてのポジション49および69、および/またはVについての48および64(Kabatナンバリングに基づく)に導入することができる。
【0042】
Cysは、本技術分野で公知のいずれかの適切な方法を用いてVまたはVドメインのフレームワーク領域に導入することができる。限定するものとなることは望まないが、Cysは、点変異または組換えDNA方法による挿入により導入することができる。例えば、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、Cysは、オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE)−PCRを用いて導入することができる(Arbabi−Ghahroudiら、2010年およびその参考文献;Hoら、1989年)。
【0043】
および/またはVスキャフォールドにおける1または2以上の非規範ジスルフィド結合は、抗体の安定性改善および非凝集に役立つ。非凝集は、単量体状態で存在する分子を指す。例えば、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、単量体は、分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)において基本的に1個のピークを生じる。凝集している分子は、二量体、三量体およびより高次の凝集体を形成する。抗体の安定性は、熱安定性、熱および化学的リフォールディング効率ならびにプロテアーゼ抵抗性等の生物物理学的特徴を包含する。本発明のVまたはVスキャフォールドを評価する場合に考慮すべき他の要因は、発現レベルおよび溶解性を包含する。本技術分野で公知の通り、溶解性は、沈殿前に液体に溶解され得る、体積当たりの分子数(例えば、容量モル濃度またはmg/mLにおける)を指す。sdAbの場合、そして本発明との関係において、単量体分子の数は特に重要である。
【0044】
非規範ジスルフィド結合の付加は、上記の生物物理学的特徴のうち1または2以上を改善し得る。例えば、理論による束縛は望まないが、VまたはVドメインへの非規範ジスルフィド結合の導入は、安定性(例えば、フレームワークの安定化による、より高い融解温度およびプロテアーゼ抵抗性)を改善し得る、かつ/または非凝集(分子間相互作用および凝集体形成の低下による)を改善し得る。
【0045】
非規範ジスルフィド結合が導入されたVまたはVスキャフォールドは、いかなる適切な生殖系列起源のものであってもよい。例えば、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、Vは、ラムダまたはカッパーファミリー、例えば、カッパー1またはカッパー3のものとなることができる、あるいは、その組成物は、VおよびJセグメント生殖系列配列の種々の組み合わせに由来することができる。別の一例において、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、Vは、V1、V2、V3、V4、V5、V6またはV7ファミリーのものとなることができる、あるいはその組成物は、V、DおよびJセグメント生殖系列配列の種々の組み合わせに由来することができる(Toら、2005年;MRCタンパク質工学センター(MRC Centre for Protein Engineering)のV BASEデータベース、http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)。一実施形態において、Vは、V3ファミリーのものとなることができる。
【0046】
一実施形態において、本発明のVまたはVスキャフォールドとして、
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
【0049】
【化7】
からなる群から選択される配列またはそれと実質的に同一の配列またはその断片(ただし、実質的に同一の配列またはその断片は、規範および非規範ジスルフィド結合の両方を保持し、ここで、CDRの領域における配列は、任意の適切な配列となることができ、CDR1、CDR2およびCDR3のそれぞれにおいて適切だが可変的な数の残基を有することができる)のフレームワーク領域を含むスキャフォールドを挙げることができるがこれらに限定されない。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22および24の場合、CDRを含む残基は、図1Aおよび1Bに提示されている通りのものである。配列番号70から83の場合、CDRを含む残基は、PCT公開、国際公開第2006/099747号の図2に提示されている対応する野生型クローンに提示されている通りのものであり、ここで、前記図2を本明細書において参考として援用する。実質的に同一の配列も、VまたはVの安定性および非凝集特徴を保持するまたは改善するはずである。本文章を通じて述べた通り、本発明に係るスキャフォールドは、本明細書に列挙するクローンのため図1Aおよび1Bに範囲を定めるCDR領域に列挙する残基に限定されない。
【0050】
実質的に同一の配列は、1または複数の保存的アミノ酸変異を含むことができる。参照配列に対する1または複数の保存的アミノ酸変異が、参照配列と比較して生理学的、化学的または機能的特性に実質的変化がない変異体ペプチドを生じ得ることは、本技術分野で公知である。このような場合、参照および変異体配列は、「実質的に同一」のポリペプチドであると考慮される。保存的アミノ酸変異は、アミノ酸の付加、欠失または置換を包含することができる。保存的アミノ酸置換は、本明細書において使用する場合、あるアミノ酸残基による、同様の化学的特性(例えば、サイズ、電荷または極性)を有する別のアミノ酸残基の置換として定義される。
【0051】
非限定的な例において、保存的変異は、アミノ酸置換であり得る。このような保存的アミノ酸置換は、塩基性、中性、疎水性または酸性アミノ酸により、同じグループの別のアミノ酸を置換することができる。用語「塩基性アミノ酸」とは、通常生理学的pHで正電荷を持つ、7よりも大きい側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸は、ヒスチジン(HisまたはH)、アルギニン(ArgまたはR)およびリシン(LysまたはK)を包含する。用語「中性アミノ酸」(「極性アミノ酸」とも言う)とは、生理学的pHで無電荷の側鎖を有するが、2個の原子に共通して共有される電子対が、原子の一方のより近くに保持された少なくとも1個の結合を有する親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸は、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、システイン(CysまたはC)、チロシン(TyrまたはY)、アスパラギン(AsnまたはN)およびグルタミン(GlnまたはQ)を包含する。用語「疎水性アミノ酸」(「非極性アミノ酸」とも言う)は、Eisenberg(1984年)の正規化コンセンサス疎水性スケールに従いゼロよりも大きい疎水性を示すアミノ酸を包含することを意味する。疎水性アミノ酸は、プロリン(ProまたはP)、イソロイシン(IleまたはI)、フェニルアラニン(PheまたはF)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、トリプトファン(TrpまたはW)、メチオニン(MetまたはM)、アラニン(AlaまたはA)およびグリシン(GlyまたはG)を包含する。「酸性アミノ酸」は、通常生理学的pHで陰性に荷電した、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を指す。酸性アミノ酸は、グルタミン酸(GluまたはE)およびアスパラギン酸(AspまたはD)を包含する。
【0052】
配列同一性は、2つの配列の類似性の評価に用いられる。これは、残基ポジション間で最大一致するよう2つの配列が整列したとき、同じである残基のパーセントを計算することにより決定される。任意の公知方法を用いて、配列同一性を計算することができる。例えば、配列同一性の計算にコンピュータソフトウェアが利用できる。限定するものとなることは望まないが、配列同一性は、Swiss Institute of Bioinformaticsにより維持される(また、http://ca.expasy.org/tools/blast/に見出される)NCBI BLAST2サービス、BLAST−P、Blast−NもしくはFASTA−Nまたは本技術分野で公知のその他いずれかの妥当なソフトウェア等の、ソフトウェアにより計算することができる。一実施形態において、パーセント同一性の計算は、フレームワーク領域の比較に限定され、CDR内の残基を無視する。一実施形態において、パーセント同一性の計算は、フレームワーク領域およびCDRの残基両方を包含する、ポリペプチドにおける全残基を比較する。
【0053】
本文章を通じて述べた通り、本発明に係るスキャフォールドは、本明細書において配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22および24として列挙されているクローンに対しては図1Aおよび1Bに範囲を定める通りの、また、本明細書において配列番号70から83として列挙されているクローンに対応する野生型配列に対してはPCT公開、国際公開第2006/099747号の図2に範囲を定める通りの、CDR領域において列挙される残基に限定されない。
【0054】
本発明の実質的に同一な配列は、少なくとも90%同一となり得る。別の一例において、実質的に同一な配列は、本明細書に記載されている配列に対し、アミノ酸レベルで少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100%(またはこれらの間のいずれかのパーセンテージ)同一となり得る。さらに別の一実施形態において、本明細書に提供されている本発明に係る組成物とともに整列した場合、実質的に同一な配列は、フレームワーク領域に1、2、3または4アミノ酸の差異を含有し得る。重要なことに、実質的に同一な配列は、安定性および参照配列の生物物理学的特性を保持する。非限定的な実施形態において、配列同一性における差異は、保存的アミノ酸変異(複数可)によるものであり得る。一実施形態において、実質的に同一な配列は、FR1、FR2、FR3およびFR4を含む残基からなり、CDR1、CDR2およびCDR3のうちいずれか1または複数を含む残基を考慮しない。
【0055】
またはVスキャフォールドは、非凝集性、安定性、発現レベルおよび溶解性等おn、これらの生物物理学的特性を増大させるために、より大きな抗体タンパク質または断片、例えばsdAb、scFv、Fab、F(ab)のうち1もしくは複数および/または、IgG、IgEおよび/もしくはIgMが挙げられるがこれらに限定されない成熟免疫グロブリンの一部として包含され得る。本明細書において使用する場合、「成熟免疫グロブリン」は、可変および定常領域を含む軽鎖と、可変および定常領域を含む重鎖とを含む。一実施形態において、成熟免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgEおよび/またはIgMからなる群から選択される。一実施形態において、このより大きな抗体構築物の導入された配列は、ヒトであるかまたはヒューマニア化されている。上記のアプローチは、毒素等の他のポリペプチドとVおよびVとの融合により作製された融合構築物、同じまたは異なる特異性を有するVおよび/またはV、Fcドメイン等、V誘導体およびV誘導体にも適用することができる。該アプローチは、溶解性、非凝集性、発現レベルおよび安定性等の、これらの生物物理学的特性を増大させるためのものである。
【0056】
本発明のVまたはVスキャフォールドは、また、組換え抗体またはその断片の発現、検出または精製を補助するための追加の配列と融合させてもよい。当業者にとって公知のこのような配列またはタグのいずれを用いてもよい。例えば、限定するものとなることは望まないが、抗体またはその断片は、標的化もしくはシグナル配列(例えば、ompAが挙げられるがこれに限定されない)、検出タグ(例えば、c−Mycが挙げられるがこれに限定されない)、精製タグ(例えば、HisもしくはHisが挙げられるがこれらに限定されない)、Fc断片またはこれらの組み合わせを含むことができる。別の一例において、追加の配列は、Cronanらによる国際公開第95/04069号またはVogesらによる国際公開第/2004/076670号に記載されているもの等の、ビオチン認識部位となることができる。同様に当業者であれば公知の通り、リンカー配列は、追加の配列またはタグと併せて用いることができる。
【0057】
本発明のVまたはVスキャフォールドは、多価ディスプレイにおいて存在してもよい。多量体化は、本技術分野で公知のいずれかの適切な方法により達成することができる。例えば、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、多量体化は、Zhangら(2004年a;2004年b)および国際公開第2003/046560号に記載されている自己集合分子を用いて達成することができる。記載されている方法は、本発明のVまたはVスキャフォールドおよびAB毒素ファミリー(MerrittおよびHol、1995年)のB−サブユニットの五量体形成(pentamerization)ドメインを含む融合タンパク質を発現させることにより、ペンタボディ(pentabodies)を産生する。五量体形成ドメインは、集合して五量体を構築し、これにより抗体またはその断片の多価ディスプレイが形成される。その上、五量体形成ドメインは、リンカーを用いてVまたはVスキャフォールドと連結することができる。このようなリンカーは、2つの分子の可動的な付着を提供するのに十分な長さおよび適正な組成のものとなる必要があるが、VまたはVスキャフォールドの生物物理学的特性を妨害すべきではない。
【0058】
他の形態の多価ディスプレイも本発明に包含される。例えば、限定するものとなることは望まないが、VまたはVスキャフォールドは、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体または他のいずれかの適切なオリゴマーとして提示することができる。これは、本技術分野で公知の方法、例えば、直接リンキング接続(direct linking connection)(Nielsonら、2000年)、c−jun/Fos相互作用(de KruifおよびLogtenberg、1996年)、「ノブイントゥホール(Knob into holes)」相互作用(Ridgwayら、1996年)または本発明に係るクローンのコード領域の反復単位および本技術分野で公知の適切な短いポリペプチドリンカーの逐次的クローニングにより達成することができる。
【0059】
多量体化のための本技術分野で公知の別の方法は、Fcドメインを用いてVまたはV組成物を二量体形成することである。in vivoで適用すると、単量体sdAbは、循環から直ちに取り除かれる(Bellら、2010年)。この問題を解決するため、また、VまたはVに、抗原結合後に免疫応答を誘導する能力を与えるため、VまたはVスキャフォールドを抗体定常領域断片(「Fc」)と融合させて、キメラ重鎖抗体を作製することができる(Bellら、2010年)。このアプローチにおいて、Fc遺伝子は、VまたはV遺伝子と共にベクターに挿入されて、sdAb−Fc融合タンパク質を生成する(Bellら、2010年;Iqbalら、2010年)。融合タンパク質は、組換えにより発現された後に精製される。このような抗体は、工学的作製および産生が容易であり(Zhangら、2009年)、VまたはVの血清半減期を大幅に延長させることができ、優れた腫瘍イメージング試薬となることができる(Bellら、2010年)。一実施形態において、Fc部分はヒトである。
【0060】
本発明は、本明細書に記載されている分子をコードする核酸配列も包含する。一実施形態において、核酸は、VまたはVスキャフォールドから選択される免疫グロブリンスキャフォールドをコードする配列を含み、ここで、Vスキャフォールドは、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入されたCys残基間に形成された、少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合をFRに含み、Vスキャフォールドは、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入されたCys残基間に形成された、少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合をFRに含む。一実施形態において、核酸は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および70〜83から選択される配列のうちいずれか1または複数をコードする。一実施形態において、核酸配列は、適正なアミノ酸残基をコードする縮重コードのうちいずれかのコドンを含む。一実施形態において、核酸配列のコード領域は、コドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、発現ベクターに存在する。一実施形態において、発現ベクターは、前記核酸を発現できる宿主細胞または生物に存在する。
【0061】
当業者にとって周知の通り、特定のアミノ酸をコードする核酸(即ち、コドン)を、宿主生物においてより良く発現される別のコドンで置き換えることにより、宿主細胞または生物における核酸配列の発現を改善することができる。この効果が生じる根拠の1つは、異なる生物が、異なるコドンに対して優先度を示すという事実による。特に、細菌生物および酵母生物は、植物や動物とは異なるコドンを好む。コドン優先度に基づきより良い発現を達成するために核酸配列を変えるプロセスは、コドン最適化と呼ばれる。種々の生物におけるコドン使用バイアスを解析するための統計的方法が生み出され、コドン最適化された遺伝子配列の設計においてこのような統計的解析を実行するための多くのコンピュータアルゴリズムが開発された(LithwickおよびMargalit、2003年)。一実施形態において、核酸配列は、哺乳類細胞における発現のためにコドン最適化することができる。一実施形態において、核酸配列は、種々の微生物における発現のためにコドン最適化される。一実施形態において、核酸配列は、E.coliにおける発現のためにコドン最適化される。一実施形態において、核酸配列は、酵母における発現のためにコドン最適化することができる。一実施形態において、核酸配列は、酵母における発現のためおよび抗体の表面ディスプレイのために、即ち、抗体ファージディスプレイと抗体酵母ディスプレイとの間のシャトルのためにコドン最適化される。本発明は、正に記載した通りの核酸を含むベクターも包含する。さらに、本発明は、記載されている核酸および/またはベクターを含む細胞を包含する。
【0062】
本発明は、種々の方法論を用いて表面上に固定されたVまたはVスキャフォールドをさらに包含する。例えば、限定するものとなることは望まないが、VまたはVスキャフォールドは、Hisタグカップリング、ビオチン結合、共有結合、吸着などを介して表面に連結またはカップリングすることができる。固体表面は、例えば、マイクロタイタープレートのウェル表面、表面プラズモン共鳴(SPR)センサーチップのチャネル、メンブレン、ビーズ(磁気ベースのもしくはセファロースベースのビーズまたは他のクロマトグラフィー樹脂等)、ガラス、フィルムまたは他のいずれかの有用な表面であり得るがこれらに限定されない任意の適切な表面となることができる。
【0063】
本発明は、カーゴ分子に連結した本発明に係るVまたはVをさらに提供する。抗体またはその断片は、カーゴ分子を所望の部位に送達することができる。カーゴ分子は、診断、処置またはバイオマーカー検出に用いることのできるいかなる種類の分子であってもよい。一実施形態において、カーゴマーカーは、標的化された細胞の成長を低下および/または阻害することのできる分子である。一実施形態において、標的化された細胞は、増殖性疾患に関連する細胞である。一実施形態において、増殖性疾患は、種々の型の腫瘍等の、がんであり、ここで、標的化された細胞は、本発明のVまたはVドメイン部分によって認識されるマーカーを発現する。よって、一実施形態において、カーゴ分子は、治療薬または診断薬である。一実施形態において、カーゴ分子は、治療薬または診断薬に連結する。
【0064】
例えば、いかなる仕方においても限定するものとなることは望まないが、治療薬は、放射免疫療法に用いてよい放射性同位元素;免疫毒素等の毒素;免疫サイトカイン等のサイトカイン;細胞毒;アポトーシス誘導因子;酵素;または他の本技術分野で公知のいずれかの適切な治療用分子となることができる。代替において、診断薬として、検出可能タンパク質ベースの分子と融合した放射性同位元素、常磁性標識、フルオロフォア、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジン等)またはイメージング方法により検出され得る他のいずれかの適切な剤を挙げることができるが、これらに決して限定されない。特定の非限定的な例において、抗体またはその断片は、FITC等の蛍光剤と連結させることができる、あるいは増強緑色蛍光タンパク質(Enhanced Green Fluorescent Protein)(EGFP)と遺伝学的に融合させることができる。
【0065】
抗体またはその断片は、本技術分野で公知のいずれかの方法(組換え技術、化学的コンジュゲーション等)を用いてカーゴ分子と連結させることができる。
【0066】
本発明はまた、フレームワーク領域に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を導入するステップを含む、シングルドメイン抗体の安定性を改善する方法を提供する。一実施形態において、方法は、対象とする免疫グロブリンのフレームワーク領域に少なくとも2個の非規範Cys残基を導入するステップを含む。一実施形態において、2個のCys残基は、抗体可変領域のFR2およびFR3における残基を置き換える。一実施形態において、方法は、V sdAbドメインのV FR2領域の残基47〜49から選択されるポジションにCys残基を導入し、V FR3領域の残基69〜71から選択されるポジションにCys残基を導入するステップを含む。一実施形態において、方法は、V sdAbドメインのV FR2領域の残基46〜49から選択されるポジションにCys残基を導入し、V FR3領域の残基62〜66から選択されるポジションにCys残基を導入するステップを含む。
【0067】
一実施形態において、方法は、Vドメインのポジション49に少なくとも1個の非規範Cys残基を導入し、ポジション69に少なくとも1個の非規範Cys残基を導入するステップを含む。一実施形態において、方法は、Vドメインのポジション48に少なくとも1個の非規範Cys残基を導入し、ポジション64に少なくとも1個の非規範Cys残基を導入するステップを含む。
【0068】
一実施形態において、方法は、ポジション49および69における非規範Cys残基間にジスルフィド架橋を含む本発明に係るV sdAb断片であって、多数のCDR配列を含む、本発明に係るsdAb断片を含む発現ライブラリーの作製を含む。一実施形態において、方法は、ポジション48および64における非規範Cys残基間にジスルフィド架橋を含む本発明に係るV sdAb断片であって、多数のCDR配列を含む本発明に係るsdAb断片を含む発現ライブラリーの作製を含む。抗体ライブラリー作製およびCDR配列の置き換えのための本技術分野で公知のいずれかの適切な方法を用いてよい。一実施形態において、CDR領域のポジションは、Kabatによって定義されている通りのものである。一実施形態において、CDR領域のポジションは、ChothiaおよびLeskによって定義されている通りのものである。一実施形態において、発現ライブラリーは、哺乳類細胞における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、発現ライブラリーは、酵母における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、発現ライブラリーは、E.coliにおける発現のためにコドン最適化されている。
【0069】
一実施形態において、変異は、SOE−PCRアプローチ(Arbabi−Ghahroudiら、2010年およびその参考文献;Hoら、1989年)または他の方法(Kunkelら、1987年;Sidhuら、2000年、Hussackら、印刷中(c))により導入することができる。あるいは、変異体の遺伝子は、そのままの状態で、または標的クローニングおよび発現ベクター内に入った状態のいずれかで商業的に入手することができる(Kimら、印刷中)。
【0070】
次の実施例において本発明をさらに説明する。しかし、これらの実施例は、例証目的のみのものであり、決して本発明の範囲の限定に用いるべきではないことを理解されたい。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
変異体VおよびVのクローニング、発現および精製
凝集および非凝集VおよびVドメインならびにそれらの対応物の二重システイン変異体をクローニングし、発現させ、精製した。利用したVおよびVならびにそれらの対応するCys変異体を表1に列挙し、図1に示す。
表1.構築したVおよびVならびに変異体
【0072】
【表1】
*本明細書において、「野生型」と称される。配列番号が提示されていない場合、野生型配列は、PCT公開、国際公開第2006/099747号に、特にこの刊行物の図2に示されるとおり、提示されている。
【0073】
Arbabi−Ghahroudiら(2009年b)に記載されている通り、野生型V、HVHAm302、HVHAm427、HVHAm431およびHVHPC235を調製した。Tanhaによる国際公開第2006/099747号に記載されている通り、14種の追加の野生型V、HVHP44、HVHB82、HVHP421、HVHP419、HVHP430、HVHP429、HVHM41、HVHM81、HVHP428、HVHP420、HVHP414、HVHP423、HVHP413およびHVHP426ならびに野生型Vを調製した。これらの野生型ドメイン(14種の上記のVは除外する;後述を参照)の遺伝子を含有するプラスミドを鋳型として用いて、SOE−PCRにより対応する変異体バージョンを構築した。
【0074】
オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE)−PCRにより、本明細書において「Cys変異体」とも称される、発明に係るVおよびVの構築物(HVHAm302、HVHAm427、HVHAm431およびHVHPC235)を作製して(Hoら、1989年;Kimら、投稿済み、Arbabi−Ghahroudiら、2010年)、Kabatナンバリング(Kabatら、1991年)に定義され、Vドメインに関しては図1A、Vドメインに関しては図1Bに提示されている通り、ポジション49および69(V)またはポジション48および64(V)にCys対を導入した。要約すると、V変異体を生成するために。これらクローンのCys変異導入された細断片(sub−fragment)を調製し、次にSOE−PCRにより集合させて完全長Cys変異体を形成した。例えば、HVHAm302Sの場合、DNA鋳型として野生型HVHAm302遺伝子を含有するプラスミドと、以下のプライマー対を用いた標準PCRにより、細断片302S−1および302S−2を別々に作製した:
M13RPa(5’−TCACACAGGAAACAGCTATGAC−3’)(配列番号37)および
KT131(5’−ACCACTACTACTAATAG CGCAGACCCACTCCAGCCCCTTC−3’)(配列番号38)(302S−1細断片用)ならびに
M13FP(5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC−3’)(配列番号39)および
KT129(5’−GCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCTGCTCCAGAGACAATTCCAAGAAC−3’)(配列番号40)(302S−2細断片用)。
【0075】
第二に、鋳型として302S−2を用いて、以下のPCRプライマー対を用いたPCRにより断片302S−2−2を作製する:M13FPおよび
KT130(5’−TGCGCTATTAGTAGTAGTGGTGGTAGCACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCG−3’)(配列番号41)。
【0076】
このステップは、302S−2にオーバーラップ領域を付加した。その後、プライマー対M13RP aまたはb/M13FPを用いたSOE−PCRにより、細断片302S−1および302S−2−2を集合させて、Cys変異を有する完全長V断片を作製した。同じ手順およびプライマーを用いて、他のV変異体をその対応する野生型Vプラスミドから生成した。異なるVL遺伝子特異的なPCRプライマーおよび対応する野生型Vプラスミド鋳型を用いた以外は、V変異体に対する手順と同じSOE−PCR手順を用いてV変異体を生成した。DNA2.0(米国カリフォルニア州メンローパーク)により、14種の非凝集V、HVHP44、HVHB82、HVHP421、HVHP419、HVHP430、HVHP429、HVHM41、HVHM81、HVHP428、HVHP420、HVHP414、HVHP423、HVHP413およびHVHP426のCys変異体バージョンを合成した。これらは、それぞれHVHP44S、HVHB82S、HVHP421S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP429S、HVHM41S、HVHM81S、HVHP428S、HVHP420S、HVHP414S、HVHP423S、HVHP413SおよびHVHP426Sと称される。これら14種の構築物に関し、フレームワーク領域およびCDR領域は、PCT公開、国際公開第2006/099747号に、特にこの刊行物の図2に示されるとおり、提示されている対応する野生型配列のものと別の方法で同じである。
【0077】
次に、他の文献(Sambrookら、1989年;Toら、2005年;Arbabi−Ghahroudiら、2009年a;2009年b;2010年)に記載されている通りに完全長Cys変異体を発現ベクターにクローニングし、発現させ、精製し、その濃度を決定した。
【0078】
追加のジスルフィド連結は、Cys変異体VおよびVの発現収量に対して有害な作用がなかった。野生型および変異体sdAbは、ミリグラム量での匹敵する収量を有した。実際のところ、一部の発現試行において、HVHAm302SおよびHVHAm431Sは、その野生型対応物よりも有意に高い発現収量を有した(図2AにおけるIMAC溶出プロファイルを参照)。
【0079】
非還元SDS−PAGEゲルにおいて、変異体VおよびVは、その野生型対応物よりも遅く移動した(図2B、HVHAm302/HVHAm302SおよびHVHPC235/HVHPC235S Vペアについて示される例)。移動の差は、還元条件下で消失した。VHの場合にもこのようなSDS−PAGE移動度パターンが観察され、Cys変異体に形成されたCys49/Cys69ジスルフィド連結の兆しとして示唆された(Hussackら、2011年)。野生型/変異体ペアは、基本的に同じ分子量を有するため、野生型Vと変異体Vとの間のゲル泳動の差は、変異体における特別な(extra)工学的に作製されたジスルフィド連結の結果生じた、その高次構造の差によるものである(KimおよびTanha、2010年)。加えて、野生型V HVHAm302は、凝集体(図2Bにおける二量体バンドを参照)を形成し、これは、抗His抗体を用いたウエスタンブロッティングによりさらに確認された(図2B、およびデータは示していない)。対応する変異体V、HVHAm302Sにおいて、二量体バンドは消失する(図2B)。これは、工学的に作製されたジスルフィド連結が、V非凝集を改善することを示し、分子ふるいクロマトグラフィーの知見(後述および図4Aを参照)と一致する。
【0080】
(実施例2)
Cys変異体のジスルフィド連結マッピング
およびV Cys変異体に導入されたジスルフィド連結は、この抗体にとって自然なものではないため、VおよびV変異体のさらなる特性評価の前に、変異導入ポジションにおけるジスルフィド連結の存在を検証した。
【0081】
野生型Vにおいて天然ジスルフィド連結を形成する2個のCys残基(Cys22およびCys92)(AmzelおよびPoljak、1979年;Williams & Barclay、1988年)および変異体の変異導入された残基の知識に基づき、ジスルフィド連結の位置を予測することができた。Vにおける予測ジスルフィド結合間に数個のトリプシン開裂部位が存在したため、Cys変異体をトリプシン処理し、質量分析を利用して工学的に作製されたジスルフィド連結の存在を検証することが可能であった。
【0082】
他に記載されている通りに(Hussackら、印刷中(b);KimおよびTanha、印刷中;Wuら、2009年)、VおよびVについてのジスルフィド連結の決定を行った。KimおよびTanha(印刷中)に記載されている通り正確に、HVHAm302およびHVHAm302Sについてのジスルフィド連結の決定を行った。要約すると、biomax−5メンブレンを有するUltrafree−0.5遠心分離フィルターデバイス(MWCO5000;Millipore、カナダ、オンタリオ州ネピアン)を用いて、0.1M Tris−HCl、pH8.5中にV Cys変異体を濃縮し、0.1M Tris−HCl、pH8.5中の0.5mg/mL濃度のトリプシン消化(Roche Diagnostics Canada、カナダ、ケベック州ラヴァル)に付し、トリプシン消化の成功についてSDS−PAGEにより解析し、その後、ペプチドを質量分析による分析に付した(図3および表2)。
【0083】
結果は、用いた質量分析方法により、Vのトリプシン消化により生じたジスルフィド連結したペプチドを同定できたことを示した(図3Bおよび表2)。組換えタンパク質の全分子量は、インフュージョンESI−MSを用いて40ppmの質量精度以内であると決定された。nanoRPLC−MSとDDA(データ依存解析)を用いた、そのトリプシン消化の解析からの各タンパク質の同定適用範囲(coverage)は、30%を超えた。ジスルフィド連結したペプチドイオンは、DDA実験のサーベイスキャンにおいて突出しているように見えた。Vからの予想されるジスルフィド連結したペプチド配列は全て、手作業のde novo配列決定により確認した。
【0084】
表2.質量分析によるVのジスルフィド連結の決定。ジスルフィド連結を含有する主要なトリプシンペプチドを示す。接続したシステインは、太字および下線で表し、Vの残りの配列は、トリプシン処理により失われる。ペプチドダブレット内のスペースは、配列の中断を表示する。
【0085】
【表2】
MWforとMWexpとの間の非常に密接なマッチは、Cys49−Cys69ジスルフィド連結の存在を示す。MWfor:式(から予想される)分子量;MWexp:MSによる実験により決定された分子量;ΔMWを次のように計算する:(MWfor−MWexp)。MWfor、MWexpおよびΔMWはダルトン(Da)で示される。
【0086】
HVHAm302Sの場合、m/z964.04(3+)における顕著なイオンを、ジスルフィド連結した
【0087】
【化8】
として配列決定し(図3Bおよび表2)、ジスルフィド連結を含有するペプチドフラグメントイオン、y17+P2およびb6+P2が、それぞれm/z1153.85(2+)およびm/z649.78(2+)において明らかに観察された(図3および表2)。これにより、HVHAm302SにおけるCys49とCys69との間の工学的に作製されたジスルフィド連結の存在が確認された。HVHPC235SにおけるCys49とCys69との間の工学的に作製されたジスルフィド連結の存在も決定した(表2)。しかし、HVHAm427SおよびHVHAm431Sのジスルフィド連結は、それがプロテアーゼ(トリプシンまたはペプシン)消化に対し高度に抵抗性であったため、質量分析により確認できなかった。しかし、それらそれぞれの野生型形態と比較したHVHAm427SおよびHVHAm431Sの劇的なT増大(表4)ならびにSDS−PAGE移動度シフト(図2B)は、HVHAm427SとHVHAm431Sの両方における工学的に作製されたジスルフィド連結の存在を示す。
【0088】
別の代表例として、14種の変異体Vのうち1種(HVHP426S)もCys49/Cys69ジスルフィド連結形成の決定のために選んだ。他のVの事例として、MS結果は、HVHP426Sが、Cys49とCys69との間にジスルフィド連結を形成したことを示した(表2)。
【0089】
変異体Vにおける同様の質量分析による分析により、全VにおけるポジションCys48とCys64との間における工学的に作製されたジスルフィド連結の存在が確認された(表3)。
【0090】
表3.質量分析(MS)によるVのジスルフィド連結の決定。ジスルフィド連結を含有する主要なトリプシンペプチドを示す。接続したシステイン同士は、同様の下線(および斜体)および太字で表す。HVLP324S、HVLP342S、HVLP351SおよびHVLP3103Sの場合、接続したシステインの別の対を斜体で示す。Vにおける残りの配列は、トリプシン処理により失われる。ペプチド断片間のスペースは、配列の中断を表示する。
【0091】
【表3-1】
【表3-2】
MWforおよびMWexp間の非常に密接なマッチは、Cys48−Cys64ジスルフィド連結の存在を示す。MWfor:式(から予想される)分子量;MWexp:MSによる実験により決定された分子量;ΔMWを次の通り計算する:(MWfor−MWexp)。MWfor、MWexpおよびΔMWはダルトン(Da)で示される。
【0092】
結晶構造解析は、検査した発明に係るVおよびV構築物の全てにおける規範Cys−Cys残基間のジスルフィド架橋に加えて、非規範Cys−Cys残基間のジスルフィド架橋の存在を確認した。
【0093】
(実施例3)
分析的分子ふるいクロマトグラフィー
分子ふるいクロマトグラフィー(またはゲル濾過クロマトグラフィー)は、タンパク質を分子サイズおよび流体力学的容積により分離する(PorathおよびFlodin、1959年)。したがって、この方法は、溶液におけるタンパク質凝集状態の評定において有用である。Superdex(商標)75を利用する分子ふるいクロマトグラフィーを用いて、V(またはV)ドメインの凝集状態を評定する。非凝集V(またはV)は、単量体V(またはV)に予想される溶出体積で、単一の対称的ピークのクロマトグラムを生じる筈である。対照的に、凝集Vのクロマトグラムプロファイルは、単量体ピークに加えて、より早く溶出する追加のピーク、例えば、大きな凝集体、二量体凝集体からなる。パーセント単量体は、ピークの面積積分により計算し、V(またはV)凝集傾向の定量的尺度として用いることができる(V(またはV)の%単量体が高い程、その凝集傾向は低くなり、逆に、V(またはV)の%凝集体が高い程、その凝集傾向も高くなる)。
【0094】
以前に記載された通りに(Sambrookら、1989年; Toら、2005年;Arbabi−Ghahroudiら、2009年a;Arbabi−Ghahroudiら、2009年b;Arbabi−Ghahroudiら、2010年;KimおよびTanha、印刷中)、VおよびVならびにそれらの対応するCys変異体の分子ふるいクロマトグラフィーを行った。要約すると、Superdex(商標)75分子ふるいカラムを、ポンプ速度0.5mL/分にて50mLの濾過・脱気済ddHOで洗浄し、その後、50mLの濾過・脱気済PBSで平衡化した。試料は、0.22μm使い捨てフィルターユニットを通して濾過し、その後、Superdexカラムを用いたAKTA FPLCにおいて製造業者の指示の通りに、流速0.5mL/分のPBSバッファーによる分子ふるいクロマトグラフィーに供した。チューブ当たり0.5mLの画分体積のAKTAフラクションコレクターを用いて、ピークに対応する溶出液を収集した。分子ふるいクロマトグラフィーの後、グラフ作成ソフトウェアGraphPad Prism(Windows(登録商標)用バージョン4.02;GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてA280対溶出体積をプロットした(図4)。単量体ピークおよび凝集体ピークを積分して、%単量体または%凝集体を得た。
【0095】
分子ふるいクロマトグラム(SEC)における吸光度の値(A280)を正規化し、溶出体積に対してプロットした。次式に従い、吸光度の正規化を行った。
%A280=(A280N−A280B)/(A280M−A280B)×100
(式中、%A280は、正規化された吸光度であり、A280Nは、任意の溶出体積における吸光度であり、A280Mは、最大吸光度であり、A280Bは、ベースライン吸光度である)。
【0096】
結果(図4A)は、3種の凝集Vである、HVHAm302、HVHAm427およびHVHAm431の全てにおいて、変異によりタンパク質非凝集性が大いに改善されたことを示す。野生型Vは、単量体ピークに加えて凝集Vに典型的な早い溶出ピークを示したが(HVHAm302およびHVHAm427については約22%、HVHAm431については25%)、これらの早い溶出ピークは、対応する変異体において消失し、その変異体は基本的に単量体ピークからなっていた。この結果は、ジスルフィド連結の工学的作製が、凝集Vを非凝集Vに転換したことを示す。その分子ふるいクロマトグラフィー(図4A)に示す通り、HVHPC235SへとCys変異導入した場合、非凝集Vである、HVHPC235は、その非凝集特徴を維持した。図4Bは、Vの14種のV変異体である、HVHP44S、HVHB82S、HVHP421S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP429S、HVHM41S、HVHM81S、HVHP428S、HVHP420S、HVHP414S、HVHP423S、HVHP413SおよびHVHP426Sの代表的SECプロファイルを示す。試験した4事例(HVHP414S、HVHP420S、HVHP426SおよびHVHP429S)の全てにおいて分かる通り、変異体は、これらの親野生型Vと同様に非凝集のままであった。この結果は、非凝集Vの場合、ジスルフィドの工学的作製は、Vの非凝集特性を損なわない一方で、下に示す通り、その安定性を大いに改善することを再度実証する。
【0097】
野生型Vは、基本的に凝集体がなく、対称的単一ピークを示した。僅かな凝集(11%の二量体凝集体)を示したHVLP364Sを例外として、V Cys変異体も単量体型であった。よって、一般に、工学的に作製されたジスルフィド連結は、Vの非凝集特性を損なわなかった(図4C)。
【0098】
(実施例4)
円二色性(CD)分光法による熱安定性の測定
変異体VおよびVにおける追加の工学的に作製されたジスルフィド連結が、タンパク質安定性を改善するか評定するため、CD分光法による融解温度(T)の測定により熱安定性を評価した。
【0099】
全Vおよび変異体Vについて、Peltier熱電性型温度制御システムを備えるJasco J−815分光偏光計(Jasco、米国メリーランド州イーストン)を用いて実験を行った。路長1mmのCDキュベットを用いた。スキャンスピード50nm/分、デジタル積分時間(DIT)4秒、バンド幅1nm、データピッチ1nmおよび積分時間1秒で、波長範囲180〜260nmにわたりスペクトルを記録した。融解温度またはT(Greenfield、2006年a;2006年b)を測定するため、温度範囲30℃〜96℃にわたりCDスペクトルを記録した。全CDスペクトルは、バッファースペクトルに相当するブランクから差し引いた。100mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4中の50μg/mL V濃度を用いて測定を行った。楕円率の変化により、210nmにて全Cys変異体VならびにHVHAm431、HVHAm431SおよびHVHP419Sについての;205nmにてHVHAm427、HVHAm427S、HVHAm302、HVHAm302S、HVHB82、HVHP421、HVHP426、HVHP428、HVHP429、HVHP420S、HVHP429S、HVHM81S、HVHP430S、HVHP421S、HVHP426S、HVHP428S、HVHM41およびHVHP414Sについての;220nmにてHVHPC235についての;200nmにてHVHPC235S、HVHP430、HVHP413、HVHP423、HVHM81、HVHP419、HVHP420およびHVHB82Sについての;202nmにてHVHP44、HVHP414およびHVHP423Sについての;208nmにてHVHP44Sについての;ならびに209nmにてHVHM41Sについての熱誘導性タンパク質変性をモニターした。記載されている式(Greenfield、2006年a;2006年b)により、フォールディングしたものの割合(ff)を得た。
ff=([θ]−[θ])/([θ]−[θ]) 式I
(式中、[θ]は、任意の温度におけるモル楕円率であり、[θ]は、30℃における完全にフォールディングしたタンパク質のモル楕円率であり、[θ]は、90℃におけるアンフォールディングしたタンパク質のモル楕円率である)。グラフ作成ソフトウェアGraphPad Prism(Windows(登録商標)用バージョン4.02)を用いた非線形回帰曲線あてはめ(BoltzmanS字状方程式)により、アンフォールディング曲線(フォールディングしたものの割合(ff)対温度)の中点として融解温度(T)を得て、表4に記録した。
【0100】
野生型Vについては、NESLAB RTE−111バスアクセサリーを備えるJasco J−810分光偏光計を用いた。路長0.02cmの円形セルを用いた。スキャンスピード100nm/分、バンド幅1nmおよび積分時間1秒でスペクトルを記録した。温度範囲25℃〜85℃にわたりHVLP342、HVLP351およびHVLP3103についての、25℃〜80℃にわたりHVLP324、HVLP325、HVLP364およびHVLP389についての、25℃〜90℃にわたりHVLP335についてのCDスペクトルを記録した。203nmにてHVLP325およびHVLP389についての、218nmにてHVLP324、HVLP335、HVLP342、HVLP351、HVLP364およびHVLP3103についてのモル楕円率の熱誘導性変化をモニターした。リン酸ナトリウムバッファーにおいて4.1×10−5M〜5.7×10−5Mの範囲の濃度で測定を行った。全CDスペクトルは、バッファースペクトルに相当するブランク(the blank corresponding buffer spectra)から差し引き、以前に記載された通りにVおよび変異体Vについての融解温度(T)を得た。
【0101】
表4.V、Vおよび対応するCys変異体の親和性定数、Kおよび融解温度、T。Vについて、KはプロテインLに対するものであり、VについてはプロテインAに対するものである。
【0102】
【表4-1】
【0103】
【表4-2】
より小さいK値は、プロテインLにおける高親和性部位に対するHVLP324、HVLP324S、HVLP342およびHVLP342Sの結合に対応する。
Arbabi−Ghahroudiら(2009年b)における表1を参照されたい。
2つの非常に近いKが得られた。
括弧内の値は、より高濃度の単量体で得られた。
そのように限定されない(not−so−defined)より低いプラトーのため、推定の最小Tを表す(図5Aにおける融解曲線プロファイルを参照)。
2つ組で行った。
Toら、2005年から採用したK
【0104】
変性への急激な転移に対応する観察された変性曲線に一致する、二状態系を想定する楕円率データに基づき、V(HVHAm302およびHVHAm302S、HVHAm427およびHVHAm427S、HVHAm431およびHVHAm431S、HVHPC235およびHVHPC235S、HVHP44およびHVHP44S、HVHB82およびHVHB82S、HVHP421およびHVHP421S、HVHP419およびHVHP419S、HVHP430およびHVHP430S、HVHP429およびHVHP429S、HVHM41およびHVHM41S、HVHM81およびHVHM81S、HVHP428およびHVHP428S、HVHP420およびHVHP420S、HVHP414およびHVHP414S、HVHP423およびHVHP423S、HVHP413およびHVHP413SならびにHVHP426およびHVHP426S)ならびにVの融解温度(T)を決定した(図5および6ならびに表4)。フォールディングしたものの割合(ff)対温度のS字状変性曲線の中点にT値を取った。HVHAm302およびHVHC235とは異なり、HVHAm427およびHVHAm431は両者共に、相当により高いTを有しており、これは恐らく、可能性のあるCDR1−CDR3間ジスルフィド連結の存在によるものであろう(図1Aおよび表4)。HVHAm302およびHVHAm302S、HVHAm427およびHVHAm427S、HVHAm431およびHVHAm431S、HVHPC235およびHVHPC235S Vの場合、本発明者らは、変異体Vが、その対応する野生型対応物と比較して、有意により高いTを有したことを見出し(表4)(対応のあるt検定、両側、p=0.0008)、この結果は、工学的に作製したジスルフィド連結の安定化効果を示した。野生型Vは、52.8℃〜70.9℃のTを有していたが、これは変異体Vでは65.4℃〜84.6℃へと増大した。これは、12.6℃〜16.5℃のT増大(ΔT)に相当する。HVHP44およびHVHP44S、HVHB82およびHVHB82S、HVHP421およびHVHP421S、HVHP419およびHVHP419S、HVHP430およびHVHP430S、HVHP429およびHVHP429S、HVHM41およびHVHM41S、HVHM81およびHVHM81S、HVHP428およびHVHP428S、HVHP420およびHVHP420S、HVHP414およびHVHP414S、HVHP423およびHVHP423S、HVHP413およびHVHP413SならびにHVHP426およびHVHP426S Vの場合、同様のパターンが観察され、野生型Vは、54.2℃〜72.5℃のTを有し、一方、変異体対応物は、64.7℃〜82.7℃のTを有した。これは、変異体Vについての8.9℃〜16.8℃のT増大(ΔT)に相当する(表4)。変異体対野生型Vのジスルフィド連結パターンを比較することにより(表2)、T増大が実際に、特別なCys49/Cys69ジスルフィド連結の存在によるものであることが明らかとなる。理論による束縛は望まないが、HVHAm427Sにおけるジスルフィド連結は、高次構造の変化をもたらして、ベータ−シート等の、高次構造モジュールを互いに近づけ(短または長距離接触のいずれかにより作用する)、疎水性相互作用または塩橋等の、特別な化学力を誘導し、そのレベルで構造をさらに安定化し得る。
【0105】
のTは、49.3℃〜64.6℃の範囲であり、他のsdAbにおいて観察される範囲であった(Jespersら、2004年;Tanhaら、2006年)(図6および表4)。変異体Vの場合と同様に、全変異体Vについて、そのTは、野生型VについてのTと比較して、平均17℃まで大幅に増大した(範囲:11.2℃〜21.1℃)。変異体VのTは、野生型Vの49.3℃〜64.6℃と比較して、63.8℃〜82.5℃の範囲であった。よって、熱安定性が最も低い変異体、HVLP342SのTは、熱安定性が最も高い野生型、HVLP325に匹敵した(図6C)。HVLP325Sは、最高のT(82.5℃)を有した一方、HVLP342Sは、最低のT(63.8℃)を有した。Vの安定性におけるジスルフィドの工学的作製の効果は、その生殖系列配列起源にかかわりなくラムダとカッパーの両方の型のVを安定化するため、この効果は普遍的であるようである。
【0106】
(実施例5)
表面プラズモン共鳴(SPR)
それぞれVおよびVのプロテインAおよびプロテインL結合特性をSPR結合解析において用いて、V変異体およびV変異体における工学的に作製されたジスルフィド連結によるあらゆる可能性のある微細な構造変化を精査した。プロテインAは多くの場合、Vの高次構造完全性のモニターに用いられる(Starovasnikら、1999年)。VおよびVのSPR解析のための、標準手順を行った。
【0107】
BIACORE解析前に、VおよびVをHBS−EPバッファー(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005%P20サーファクタント)において流速0.5mL/分で、Superdex(商標)75 10/300(GL)分子ふるいクロマトグラフィー(GE Healthcare)に付し、凝集した材料の証拠が全くなくても、収集した単量体ピークを精製した。BIACORE3000バイオセンサーシステム(GE Healthcare)を用いたSPRにより、プロテインA(Pierce、カナダ、オンタリオ州ネピアン)とVおよびプロテインL(Pierce)とVとの相互作用についての結合動態を決定した。
【0108】
である、HVHAm302、HVHAm302S、HVHAm427、HVHAm427S、HVHAm431およびHVHAm431Sのため、それぞれ540RUおよび1350RUのプロテインAおよび卵白アルブミン(参照タンパク質として)(Sigma、カナダ、オンタリオ州オークビル)を、研究用グレードのCM5センサーチップ(GE Healthcare)に固定した。製造業者(GE Healthcare)により供給されたアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファー、pH4.5における50μg/mLで固定を行った。HBS−EPバッファーにおいて流速50μL/分、25℃で全測定を行った。ランニングバッファーで洗浄することにより、表面を再生させた。
【0109】
HVHPC235およびHVHPC235Sのため、それぞれおよそ1,100RUおよび1,000RUの組換えプロテインAおよび卵白アルブミン(参照タンパク質)を、研究用グレードのセンサーチップCM5に固定した。製造業者により供給されたアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファー(それぞれプロテインAまたは卵白アルブミンに対しpH4.0またはpH4.5)における50μg/mLで固定を行った。それぞれHVHPC235またはHVHPC235Sのために流速20μL/分または40μL/分で、HBS−EPバッファーにおいて25℃で全測定を行った。
【0110】
変異体V(HVHP44S、HVHB82S、HVHP421S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP429S、HVHM81S、HVHP428S、HVHP420S、HVHM41S、HVHP423S、HVHP413S、HVHP426SおよびHVHP414S)のため、それぞれおよそ1,170RUおよび1,240RUの組換えプロテインAおよび卵白アルブミン(参照タンパク質)を、研究用グレードのセンサーチップCM5に固定した。製造業者により供給されるアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファー(プロテインAと卵白アルブミンの両方に対しpH4.5)における50μg/mLで固定を行った。それぞれHVHB82S、HVHP421S、HVHP429S、HVHM41S、HVHM81S、HVHP423S、HVHP413S、HVHP426SおよびHVHP414S、またはHVHP44S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP428SおよびHVHP420Sのために流速20μL/分または40μL/分で、HBS−EPバッファーにおいて25℃で全測定を行った。野生型対応物のプロテインA結合特性は、以前に決定された(Toら、2005年)。
【0111】
野生型Vのため、600RUのプロテインLまたは800RUのFab参照タンパク質を、研究用グレードのCM5センサーチップ(GE Healthcare)に固定した。V変異体のため、およそ400RUの組換えプロテインLまたは卵白アルブミン(参照タンパク質)を固定した。製造業者(GE Healthcare)により供給されるアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファー、pH4.5における20または50μg/mLのタンパク質濃度で固定を行った。流速40または50μL/分でHBS−EPバッファーにおいて25℃で全測定を行った。ランニングバッファーで洗浄することにより、表面を再生した。全データは、BIAevaluation4.1ソフトウェア(GE Healthcare)を用いて評価した。
【0112】
SPR解析は、圧倒的多数の変異体V(HVHAm302S、HVHAm427S、HVHAm431S、HVHPC235S、HVHB82S、HVHP421S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP429S、HVHM81S、HVHP420S、HVHM41S、HVHP423S、HVHP413S、HVHP426SおよびHVHP44S)が、その野生型対応物と比較してより高いK値により表わされるより低い親和性でプロテインAと結合したことを示した(図7および表4)(2種の変異体V[HVHP428SおよびHVHP414S]のみが、その野生型対応物とある程度同じK値を示した)。プロテインA結合の低下(K値の増大)は、HVHM81/HVHM81Sペアについての1.6倍からHVHPC235/HVHPC235Sペアについての10倍に及ぶ(図7Aおよび表4)。この結果は、工学的に作製されたジスルフィド結合が、Vの高次構造を若干変えることを実証する。理論による束縛は望まないが、VのFR1およびFR3内に存することが公知のプロテインA結合部位(Starovasnikら、1999年;RiechmannおよびDavies、1995年)は、FR2およびFR3のベータ鎖における2個のCysの導入により損なわれた可能性がある。興味深いことに、変異体Vは、その野生型対応物と比較して、解離速度定数(koff)の一貫した増大を示し、これは、平衡結合定数(K)の上昇をもたらした(図7B)。
【0113】
Cys変異体が、その野生型対応物と同様の親和性でプロテインLと結合したことが判明し(図8および表4)、この結果は、ジスルフィド結合が、Vの全体的な構造に影響を与えないことを示した。
【0114】
(実施例6)
プロテアーゼ安定性
主要GIプロテアーゼである、トリプシン、キモトリプシンおよびペプシンを用いて、VおよびVのプロテアーゼ安定性における工学的に作製されたジスルフィド連結の効果を評価した。GIプロテアーゼによる消化反応後に、SDS−PAGEおよび質量分析により、酵素による開裂の出現に関してVおよびVを試験した。基本的に記載されている通りに(Hussackら、2011年)消化を行った。
【0115】
のため、6μgのVを有する総体積30μL中、37℃で1時間、酵素対sdAb比、1:200、1:40、1:20および1:10(トリプシン/キモトリプシン)または1:200、1:20、1:10および1:4(ペプシン)で消化実験を行った。配列決定グレードの酵素(Hoffmann−La Roche Ltd.、カナダ、オンタリオ州ミシサガ)を用いて製造業者の指示に従い、トリプシンおよびキモトリプシン消化実験を行った。適正な体積の400mM HClを添加することによりpHを調整して、約pH2.0でペプシン(Sigma)消化反応を行った。対照実験において、酵素を等体積の反応バッファーに置き換えた。等体積のSDS−PAGEサンプルバッファー(0.2Mジチオスレイトールを含有)を添加し、混合物を95℃で5分間煮沸することにより、反応を停止させた。その後、試料をSDS−PAGEによる解析に付し、Hussackら、印刷中(a)に記載されているとおりスポット密度解析により、プロテアーゼ消化後のインタクトsdAbのパーセントを決定し、対照と比較して、プロテアーゼ消化後にインタクトな構造を有するVのパーセンテージを計算した。
【0116】
のため、6μgのVを有するおよび並列式にその変異体V対応物を有する総体積30μL中、37℃で1時間、酵素対sdAb比、1:20で、2回の独立した試行により2つ組で、トリプシン/キモトリプシン/ペプシンによる消化実験を行った。Vに関して記載されている通り、消化および解析を行った。
【0117】
結果を図9Aに示す。トリプシンまたはキモトリプシンに対する抵抗性に関して、野生型と変異体Vとの間に有意差は観察されなかったが(Wilcoxonマッチドペアt検定、両側P値=0.2969[トリプシン]および0.0625[キモトリプシン])、ペプシンに対する抵抗性における差は、有意であった(Wilcoxonマッチドペアt検定、両側P値=0.0078)。検査した変異体Vは、ペプシンに対する抵抗性の改善を示し、そのうちの1つ、HVLP3103Sは、0%抵抗性(野生型)から、ほとんど90%抵抗性(変異体)へと劇的な増大を示した。ペプシン抵抗性の平均値は、ペプシン対V比、1:20において変異体Vについての51%に対して野生型Vについての11%であった。同じ比において、ペプシン抵抗性の中央値は、変異体Vについての54%に対して野生型Vについての1.5%であった。よって、sdAbのジスルフィド連結の工学的作製は、そのトリプシンおよびキモトリプシン抵抗性特性に影響を与えることなく、そのペプシン抵抗性を有意に増大させた。
【0118】
プロテアーゼ抵抗性(%)対Tをプロットすることにより、熱安定性とプロテアーゼ抵抗性との間の相関をさらに探索した(図9B)。一般に、より高いTを有するVは、ペプシンに対しより高い抵抗性を示した(両側、P値=0.0012、R(Spearman)=0.7344)。トリプシンおよびキモトリプシンの場合、このような相関は観察されなかった(両側、P値=0.5245、R(Spearman)=−0.1719[トリプシン];両側、P値=0.5407、R(Spearman)=−0.1653[キモトリプシン])。
【0119】
表5に示すVの場合、差は有意ではなかったが(Wilcoxonマッチドペアt検定、両側P値=0.0899[トリプシン]、0.7896[キモトリプシン]および0.7832[ペプシン])、変異体Vは、3種のGIプロテアーゼの全てに対してより高い抵抗性(%中央値)を示した(それぞれ野生型および変異体Vに関し、77%および82%[トリプシン]、69%および75%[キモトリプシン]ならびに96%および98%[ペプシン])。変異体Vの大部分は、ペプシンに対し未変化のまたは僅かに改善した抵抗性を示したが、2種の変異体V(HVHM81SおよびHVHP423S)は、100%(HVHM81とHVHP423の両方について)から53%(HVHM81Sについて)および68%(HVHP423Sについて)へと減少した抵抗性を示し、なお、スポット密度解析ツールは、タンパク質バンドを適正に認識できないため、HVHM81Sのペプシン抵抗性は過小評価されたようであった。興味深いことに、2種の変異体V(HVHP44SおよびHVHP413S)から、トリプシン抵抗性に関して大きな改善が示され、これらのトリプシン抵抗性は、5%および29%(それぞれHVHP44およびHVHP413)から57%および100%(それぞれHVHP44SおよびHVHP413S)へと改善した。総合すると、変異体は、野生型対応物と同じ程度プロテアーゼ抵抗性である。
【0120】
表5.VのGIプロテアーゼ抵抗性
【0121】
【表5-1】
【0122】
【表5-2】
ペプシン抵抗性は、過小評価である。
【0123】
(実施例7)
間およびV間の配列同一性
間ならびにV間の配列同一性を決定した。解析において、FR配列のみを含めた、即ち、CDR配列を除外した。
【0124】
ClustalW(Thompsonら、1994年)を用いてVペアまたはVペアの配列を整列させ、BioEdit Sequence Alignment Editorを用いてVペアまたはVペア間のパーセンテージ同一性を計算した。
【0125】
についてのポジション49および69ならびにVについての48および64におけるCys対置換の生物物理学的意義は、その配列、生殖系列起源ならびにCDR長および組成にかかわりなく普遍的であることが示される。Vは、多様な生殖系列起源ならびにCDR長およびアミノ酸組成を有する。特に、CDR3長および組成は、より多様である。そうであるにもかかわらず、これらの構造的変動とは無関係に、ポジション49および69におけるCys対の導入は、Cys49/Cys69ジスルフィド連結を形成し、その発現収量を損なうことなく、VHの非凝集性、熱安定性およびプロテアーゼ安定性における有意な改善をもたらす。国際公開第2006/099747号に記載されている32種のVは、多様である。これらは、カッパーおよびラムダファミリーの両方に属し、多様なVセグメントおよびJセグメント生殖系列起源ならびにCDRアミノ酸組成および長さを有する。特に、CDR3の長さは、6〜11アミノ酸の範囲に及ぶ。異なるクラスを表す8種の非凝集V図1B)を、上記の32種から選び、Cys48/Cys64置換の生物物理学的意義を評定した。Vの場合と同様に、8種のVおよびそれらのCys変異体バージョンの並列解析は、構造的変動と無関係に、ポジション48および64におけるCys対の導入は、Cys48/Cys64ジスルフィド連結を形成し、その非凝集状態または発現収量を損なうことなくVの熱安定性およびプロテアーゼ安定性における有意な改善をもたらすことを示した。
【0126】
(実施例8)
ジスルフィドにより安定化されたVファージディスプレイライブラリーの構築
HVLP324S Vファージディスプレイライブラリーを、Hussackら(印刷中(c))に記載された方法により二段階で構築した。先ず、HVLP324S Vスキャフォールドに基づきランダム化されたCDR3を有するライブラリーを構築した(図10)。次に、CDR3がランダム化されたライブラリーをスキャフォールドとして用いて、全3種のCDRがランダム化された最終ライブラリーを構築した。
(i)CDR3がランダム化されたVファージディスプレイライブラリーの構築
ssDNA調製に用いたファージがfd−tetV24Sであったこと以外は記載されている通りに(Hussackら、印刷中(c))、チミジンの代わりにウリジンを含有するファージssDNA(dU−ssDNA鋳型)を調製した。fd−tetV24Sは、そのゲノム内にファージp3遺伝子と融合したHVLP324S V遺伝子を有するfd−tetGIIIDファージ(Tanhaら、2001年)である(図10)。ファージssDNAへのウリジンの取り込みは、記載されている通りに(Hussackら、印刷中(c))、TG1およびCJ236 E.coli細胞に対するファージの力価測定により確認された。ddHO中の総計75μgのfd−tetV24S ssDNAを調製した。記載されている通りに(Hussackら、印刷中(c))、プライマーV24−CDR3、V24−CDR3aおよびV24−CDR3bを用いたCDR3の同時ランダム化によるヘテロ二本鎖DNAのin vitro合成を行った。プライマーをリン酸化し(Hussackら、印刷中(c))、アニーリング反応において用いた。8.2μLの121.5ng/μL fd−tetV24S dU−ssDNA、0.33μLのリン酸化プライマーV24−CDR3、V24−CDR3aまたはV24−CDR3b、1μLのミックス(2μLの10×TMバッファー[500mM Tris−HCl、100mM MgCl、pH7.5]、2μLの10mM ATP、1μLの100mM DTT、15μL ddHO)および1.5μLの10×TMバッファーを有する総体積15μL中で、93℃5分間、50℃15分間、20℃20分間の、3通りの別個のアニーリング反応を行った。記載されている通りに、共有結合により閉環した環状DNA(CCC−DNA)を合成した(ddHO中の総計100μgのCCC−DNAを調製し、SpeedVac(商標)により、255μLにおける82.5μg(323ng/μL)となるまで濃縮した)。23通りの形質転換(11μLのCCC−DNAプラス350μLのエレクトロコンピテントE.coli TG1)を記載されている通りに行った。SOC培地におけるインキュベーション後に、形質転換材料を力価測定し、1Lの2xYT/テトラサイクリン(12.5μg/mL)において一晩37℃、180rpmで成長させた。翌朝、細胞を収穫し、記載されている通りに凍結ライブラリーストックを作製した。A600nm測定値により、凍結ライブラリーストックの細胞密度を推定した。増幅させたライブラリーファージを上清から精製し、力価測定し(Hussackら(c)を参照)、最終ライブラリー(セクション(ii)を参照)を構築するための出発材料として用いた。形質転換材料(上記を参照)における力価測定実験から、ライブラリーサイズ(形質転換体の数)は、2.3×10であると決定された。
(ii)CDR1/CDR2/CDR3ランダム化Vファージディスプレイライブラリーの構築
ライブラリー構築の第二のステップにおいて、CDR1およびCDR2をランダム化した。上記の4×1012cfu CDR3ランダム化ライブラリーファージ(Hussackら(c)を参照)から出発して、dU−ssDNA鋳型を調製した。2mLのファージ(2×10/μL)から200μgのssDNAを得た。ファージssDNAへのウリジンの取り込みを上記の通りに確認した。変異原性オリゴヌクレオチドのV24−CDR1およびV24S−CDR2を用いた変異誘発の第二ラウンドにおいて、dU−ssDNA鋳型を用いた。アニーリングおよびCCC−DNA合成ステップは、上に記すステップと基本的に同一であった。1mLのddHO中の総計300μgのCCC−DNAを調製した。記載されている通りに77通りの形質転換(13μLのCCC−DNAプラス200μLのエレクトロコンピテントE.coli TG1)を行った。SOC培地におけるインキュベーション後に、形質転換材料を力価測定し、3Lの2xYT/テトラサイクリン(5μg/mL)において一晩180RPM、37℃で成長させた。凍結ライブラリーストックを作製し、その細胞密度を上に記す通りに推定した。最終体積20mLのPBSにおける上清からライブラリーファージを精製し、TG1に対し力価測定し、インプットファージとしての将来的な第一ラウンドのパニングのため、500μLアリコートにおいて−80℃で凍結して貯蔵した。ライブラリーサイズは、1×10形質転換体であると決定された。ライブラリー(非増幅ライブラリー)タイタープレートからの78種のVクローンを、Hussackら(c)に記載されている通りに配列決定に付した。
【0127】
HVLP324S Vを、ジスルフィドで安定化された合成Vライブラリーの構築のためのスキャフォールドとして用いた。HVLP324Sは、以前に記載されたHVLP324の変異体バージョンであるが、これは、Cys48とCys64との間に追加のジスルフィド連結を有する。以前に記載されたHVLP324Vファージディスプレイライブラリーに関して基本的に記載されている通りに、全3種のCDRにおける16(CDR3=9アミノ酸)、17(CDR3=10アミノ酸)および18(CDR3=11アミノ酸)位置に多様性を導入することにより、HVLP324S Vファージディスプレイライブラリーを構築した(図11、Hussackら(c))。ライブラリーサイズは、1×10形質転換体という中程度のものであった。非増幅ライブラリーからの78種のVクローンの配列解析は、親V(HVLP324S)アミノ酸残基を好む偏りのあるランダム化により、全CDRポジションに多様性が導入されていることを示した。78クローンの配列決定により、2クローンは野生型HVLP324Sと同一で、8クローンはCDR1について野生型配列を有し、2クローンはCDR2について野生型配列を有し、18クローンはCDR3について野生型配列を有し、9クローンはCDR1とCDR2の両方について野生型配列を有し、1クローンはCDR2とCDR3の両方について野生型配列を有し、2クローンはCDR1とCDR3の両方について野生型配列を有することが示された。ライブラリーにおけるこれらクローンの存在は、上記の配列の偏りに寄与する。
【0128】
76種のライブラリークローンのCDR3長分布解析は、大部分(71%)のライブラリークローンが、9アミノ酸のCDR3長を有することを示した。10および11アミノ酸のCDR3長を有するクローンは、それぞれ18%および11%であった。
【0129】
ライブラリー設計、構築および特性評価のさらなる詳細は、図11の凡例および図面に提示する。用いた特定のオリゴヌクレオチドは、表6に提示されている通りのものであり、表中、N、KおよびRで示すポジションにおける縮重ヌクレオチド残基の表記にはIUPAC命名法が用いられる。
【0130】
表6.分子クローニングのために用いたオリゴヌクレオチドのリスト
【0131】
【表6】
N:A、T、G、またはC。
K:TまたはG。
R:AまたはG。
【0132】
(実施例9)
ジスルフィドにより安定化されたVファージディスプレイライブラリーの検証
HVLP324S Vファージディスプレイライブラリーを検証するため、ライブラリーを、2種の異なる被験抗原、即ち、ヒトリゾチームおよびヒト血清アルブミン(HSA)に対するバインダーの選択に付した。最初の結合アッセイ(ファージELISA)により同定された陽性候補バインダー(ファージディスプレイしたV)を、E.coliでの発現のためのベクターにサブクローニングした。Vバインダーを発現させ、精製し、親和性および安定性に関して解析した。
【0133】
(実施例9a)
パニング
標準パニング技法(例えば、Leeら、2007年;Arbabi−Ghahroudiら、2009年aを参照)により、抗ヒトリゾチームVの選択を行った。要約すると、Nuncマイクロタイターウェル(VWR International, Ltd.、カナダ、オンタリオ州ミシサガ)を、無菌PBS(3.2mM NaHPO、0.5mM KHPO、1.3mM KCl、135mM NaCl、pH7.4)における100μLの1mg/mLヒトリゾチーム(Sigma−Aldrich、カナダ、オンタリオ州ミシサガ)で一晩4℃にてコーティングした。ウェルを無菌PBSで3×洗浄し、ペーパータオル上で水分を切り、無菌PBSにおける150μLの2%(w/v)ミルク(2%MPBS)で37℃2時間ブロッキングした。ウェルからブロッキング剤を除去し、1%MPBSにおける100μLのライブラリーファージ(実施例8、セクション(ii)において調製された増幅ファージ(5×1011cfu;37℃で1.5時間プレインキュベート)をウェルに添加し、1.5時間37℃でインキュベートした。PBST(無菌PBS中の0.05%(v/v)Tween−20)で10×洗浄した後、ウェルを100μLの新たに調製した124mMトリエチルアミンで10分間室温にてインキュベートし、8分の時点で上下にピペッティングすることによりファージを溶離させた。溶離したファージ溶液を1.5mLマイクロチューブ中で、50μLの1M Tris−HCl、pH7.5と混合することにより中和し、感染期まで氷上で保持した。50mLの無菌Falconチューブ中に2×5mLの指数増殖E.coli TG1細胞(OD600=約0.5)を調製し(Arbabi−Ghahroudiら、2009年a)、そこから2mLを37℃で30分間、145μLの溶離ファージ(下に記す通り溶離ファージの力価を決定するために5μLを取り分けた)に感染させた。感染した細胞を、Sorval Legend RTローターおよび遠心分離機(Thermo Fisher Scientific、カナダ、オンタリオ州ネピアン)を用いて4,000rpm、4℃で20分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットを1mLの2xYTに再懸濁し、2xYT寒天/5μg/mLテトラサイクリン(2xYT/Tet)の入った3枚の大型ペトリ皿上に均等に広げた。ペトリ皿を37℃で一晩インキュベートした。翌日、大型ペトリ皿から増幅ファージを回収した。要約すると、10〜15mLの無菌PBS(容量はコロニー密度に応じて添加)を各プレートに添加し、ガラススプレッダーを用いて細胞を擦り取り、無菌50mL無菌Falconチューブに収集した。前記と同様に細胞をもう一度擦り取り、前のものと一緒にプールした。懸濁液を、Sorval Legend RTローターおよび遠心分離機(Thermo Fisher Scientific)を用いた20分間、4,000rpm、4℃での遠心分離により、細胞ペレットおよび上清へと分画した。基本的に記載されている通りに(Leeら、2007年)、上清から増幅ファージを精製した。要約すると、無菌0.22μmフィルターにより前濾過したファージ上清に、50mL無菌Falconチューブ中1/5容の20%PEG−8000/2.5M NaClを添加し、混合物を氷上で1時間インキュベートした。溶液を、Sorval Legend RTローターおよび遠心分離機(Thermo Fisher Scientific)を用いて20分間、4,000rpm、4℃で遠心分離した。ファージペレットを3mLの無菌PBSに再溶解し、15mL無菌Falconチューブに移し、1/5容の20%PEG−8000/2.5M NaCl(0.6mL)と混合し、氷上で20分間インキュベートした。ファージ溶液を、Sorval Legend RTローターおよび遠心分離機(Thermo Fisher Scientific)を用いて4,000rpm、4℃で20分間遠心分離し、ファージペレットを、ペレットサイズに応じた溶解体積である、0.5〜1mLの無菌PBSに溶解した。無菌1.5mL無菌マイクロチューブにおいて、ファージ溶液を0.1mL容量に分注した。下に記す通りに増幅ファージの力価を決定した。
【0134】
パニングの第二ラウンドのため、上に記す従来のパニングと並行して、サーモパニング(thermopanning)も行い、そこでは、第一ラウンドからの無菌PBS中の増幅ファージを、1.5mL無菌マイクロチューブ中で65℃で2時間加熱し、その後遠心分離し、(パニングの第二ラウンドにおける)結合のためにヒトリゾチームをコーティングしたウェルにファージ上清を添加した。残りのステップは全て、両方のパニング方法で同じであった。並行パニングをさらに2ラウンド継続した。それぞれパニングの第二、第三および第四ラウンドについて、洗浄は、12×、15×および15×であった。
【0135】
並行したサーモパニングが行われない以外はヒトリゾチームについて記載されている通りに、ヒト血清アルブミンに対するパニング(従来のパニング)を行った。パニング後に、タイタープレートからのクローンにおいて(溶離ファージから得られる)、標準ファージELISA(Harrisonら、1996年;Tanhaら、2001年;Hussackら、印刷中(c))を行って、ヒトリゾチームまたは血清アルブミンとの結合が陽性のVをディスプレイするファージを同定した。
【0136】
(実施例9b)
ファージ力価の決定
標準技法を用いて、ファージ力価を決定した。溶離ファージの力価を決定するため、PBSにおいて溶離ファージの10−1〜10−4希釈物を作製した(18μLのPBSに2μLのファージを添加して、10−1希釈物をなど作製した)。10μLの各希釈物を、100μLの指数増殖E.coli TG1細胞(OD600=約0.5)と混合し、E.coli TG1細胞のファージ感染が起こるよう、混合物を37℃で30分間インキュベートした。感染したTG1細胞を、2xYT/Tet寒天ペトリ皿上に蒔き、37℃で一晩インキュベートした。コロニーの数を用いて、溶離ファージの力価(cfu/mL)を決定した。fdTGIIIおよび−96GIIIプライマー(表6)を用いて、コロニーに対するコロニー−PCRを行って、インサートの存在を検証し(陽性ヒットは、500bp前後のサイズを生じた)、DNA配列決定のための鋳型を提供した。配列を解析し、DNASTAR Lasergene8により操作した。
【0137】
要約すると、増幅ファージ(インプットファージ)の力価を決定するため、10−3、10−6、10−8および10−10のファージ希釈物を作製した。10μLの各希釈ファージを100μLの指数増殖TG1細胞と混合し、細胞のファージ感染が起こるように混合物を37℃で30分間インキュベートした。その後、無菌使い捨てスプレッダーを用いて、ファージ感染細胞を2xYT r/Tet寒天培地の入ったペトリ皿上に広げ、クリーンベンチ内に5分間放置した。プレートを一晩37℃でインキュベートした。翌朝、プレートにおけるコロニー力価を用いて、増幅ファージの力価を決定した。
【0138】
ライブラリーの有用性を示すため、4ラウンド(four rounds)のためヒトリゾチームおよびヒト血清アルブミンに対しライブラリーをパニングした。ヒトリゾチームに対するパニングの事例において、第一ラウンドにおいて従来のパニングを行い、続いて第2ラウンドから従来のパニングおよびサーモパニングを並行して行った。サーモパニングアプローチにおいて、インプットファージを65℃で2時間インキュベートし、遠心分離して、あらゆる可能な凝集体を除去し、結合のためにリゾチームをコーティングしたウェルに上清を添加した。従来のパニングアプローチにおいて、インプット(増幅)ファージをリゾチームをコーティングしたウェルに熱処理せず直接添加した。サーモパニングを適用して、従来のパニングと比較して安定な(熱安定なかつ/または非凝集性の)Vバインダーを優先的に富化するかどうかを観察したが、これは、安定および不安定なVバインダーに関して無差別的であると予想された。
【0139】
表7は、アウトプットファージ力価(または溶離ファージ力価)に関するヒトリゾチームに対するパニングの結果を示す。一般に、アウトプットファージ力価は、従来のパニングと比較して、サーモパニングアプローチでは3〜4桁低い。これは、用いたさらに低いインプットファージ力価および熱処理の間の凝集(データ図示せず)に起因するさらなるファージ損失(恐らく、凝集ファージによりディスプレイされたV)による可能性がある。
【0140】
表7.室温(従来のパニング)対65℃−2時間(サーモパニング)の選択条件下で行ったパニングのためのファージ力価。データは、ヒトリゾチームに対するパニングのためのものである。cfu:コロニー形成単位。
【0141】
【表7】
ラウンド3および4からのファージELISAおよび配列解析により、固定化ヒトリゾチームに対し多様なな親和性を有する9種の抗ヒトリゾチームVが同定された(図13および表8)。解析した総計177種のV(それぞれラウンド3およびラウンド4に対し101種のVおよび76種のV)のうち4ラウンドのパニングの後、ラウンド3において同定された総計9クローンのうち5クローン、HVLHLRN;HVLHLDS;HVLHLNE;HVLHLNN;HVLHLFLが生存した(図12)。これらは、サーモパニングアプローチ(65℃、2時間)において、それぞれHVLHLRNおよびHVLHLDSについての54.2%および25%、続いてそれぞれHVLHLNE、HVLHLNNおよびHVLHLFLについての8.3%、8.3%および4.2%で表された。対照的に、従来のパニングアプローチ(室温[RT])を用いて、HVLHLRNおよびHVLHLDSは表されず、HVLHLNE、HVLHLNNおよびHVLHLFLは、それぞれ28.6%、42.9%および28.6%の相対頻度で生じた(図12)。HVLHLRNおよびHVLHLDSも、サーモパニングのラウンド3における優勢クローンであり、従来のパニングのラウンド3においては僅かに存在した。HVLHLYS、HVLHLAQ、HVLHLQIおよびHVLHLEMは、ラウンド4パニングにおける従来のパニングまたはサーモパニングのいずれによっても選択されなかった。
【0142】
表8.パニングのラウンド3および4から単離された抗ヒトリゾチームVおよび抗ヒト血清アルブミンVの特性。
【0143】
【表8】
ND、決定されず;RT、室温;Agg.、凝集体。%は%凝集体。
【0144】

ヒト血清アルブミンに対する4ラウンドのパニングの後、ファージELISAによる50クローンのスクリーニングおよび配列決定は、1種の優勢V、即ち、ヒト血清アルブミンに対する結合がファージELISAにより陽性であるHVLHSA1を明らかにした(図13;表8)。
【0145】
その後、10種の抗リゾチームファージVバインダーおよび抗アルブミンファージVバインダーを全て、下に記すとおりさらなる特性評価のために加工した。
【0146】
(実施例9c)
抗ヒトリゾチームVおよび抗ヒト血清アルブミンVの生物物理学的特性評価
ファージによりディスプレイされるVクローンから開始し、他の抗体ドメインについて上に記すとおりの標準技法によりVをクローニングし、発現させ、精製した。その後、凝集状態に関しては分子ふるいクロマトグラフィーにより、熱安定性に関してはCDにより、その結合親和性および特異性に関しては表面プラズモン共鳴により、Vを解析した。
【0147】
他のドメインについて記載されている通りに、9種の抗ヒトリゾチームVおよびHVLHSA1 V図13;表8)をクローニングし、E.coliにおいて発現させ、標準技法により精製した。Vは、そのC末端にHis6タグを有するため、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。図16Aは、最高溶出ピークが400mAU(HVLHLEM)から2400mAU(HVLHLRN)のA280範囲を示す精製VのIMACクロマトグラムプロファイルを示す。VのSDS−PAGEプロファイルは、Vが高度に純粋であることを示す(図16B)。そのIMACクロマトグラムプロファイルから判断すると、HVLHSA1の発現収量も高かった(データは示さず)。よって、Vは、E.coliにおいて高純度、高収量で発現することができる。
【0148】
その後、Superdex(商標)75分子ふるいクロマトグラフィーによりVをその凝集挙動に関して解析した。記載されている通りに(Arbabi−Ghahroudiら、2010年)各Vについての%凝集体(または%単量体)も決定した。図14Aに示す通り、3種の抗ヒトリゾチームV(HVLHLRN、HVLHLEMおよびHVLHLDS)は、純粋に単量体(非凝集)である一方、残りのVバインダーは、7%〜17%に及ぶ%凝集体を有して凝集していた(表8)。HVLHSA1 Vも、他のドメインに関して記載されている通りに分子ふるいクロマトグラフィーにより解析した。クロマトグラムは、Vが100%非凝集単量体であることを実証する対称の単量体ピークを生じた(図14A;表8)。これらの結果は、非規範Cys48/Cys64(またはCys49/Cys69)ジスルフィド連結の特色を有するV(またはV)ライブラリーが、非凝集バインダーをもたらすことを示す。
【0149】
バインダーの熱安定性の尺度を得るため、他のドメインに関して以前に記載された通りにCDによりVの融解温度(T)を決定した。図14Bは、62℃〜74℃の範囲にある抗ヒトリゾチームVの融解プロファイルを示す。計算されたTを表8に記録する。抗アルブミンHVLHSA1のTも決定し、それが71℃と高いことを示した(図14B;表8)。これらのTは、非規範ジスルフィド連結のないVよりも有意に高く、このことから、非規範Cys48/Cys64(またはCys49/Cys69)ジスルフィド連結の特色を有するV(またはV)ライブラリーにより、より安定なバインダーがもたらされることが実証される。ヒトリゾチームパニングの事例において、非凝集性であり(表8)、最高のTを有するHVLHLRNおよびHVLHLDSはまた、サーモパニングによって、凝集し熱安定性が低いクローンよりも、非常に著しく富化されたクローンであるが、それは、従来のパニングによっては富化されなかった。これは、どちらのパニングアプローチも、非凝集性の熱安定なバインダーをもたらすが、サーモパニングは、これらを富化することにおいてより効率的であることを実証する。(非凝集性かつ熱安定な、HVLHLEMがサーモパニングによりラウンド4においてまだ選択されていなかったという事実は、パニングの結合ステージにおけるその非常に低い親和性に起因し得た[図12;表8])。図14Cは、抗リゾチームVおよび抗アルブミンVのTと%単量体との間に強い正の相関が存在することを示し(R=0.8568;P値(両側)=0.0013、Spearman r=0.9061)、ここことは、VのTが高ければ高いほど、Vは、非凝集となる可能性がより高くなることを意味する。これは、非規範ジスルフィド連結の特色を有するV/Vライブラリーは、この特色なしのライブラリーよりも熱安定なV/Vバインダーをもたらすため、これは同様により非凝集性のV/Vバインダーをもたらすことも意味する。治療薬として、非凝集性かつ熱安定なV/Vバインダーは、さらに有効である。
【0150】
その抗原である、ヒトリゾチームに対する抗ヒトリゾチームVの親和性(K)も決定した。BIACORE3000(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)により、固定した抗ヒトリゾチームVバインダーに対するヒトリゾチームの結合を決定した。298共鳴単位(RU)、312RU、295RU、339RU、315RU、412RU、370RU、345RUおよび349RUの各Vバインダー(それぞれHVLHLAQ、HVLHLNE、HVLHLEM、HVLHLYG、HVLHLRN、HVLHLNN、HVLHLQI、HVLHLYSおよびHVLHLDS)を、研究用グレードのCM5センサーチップ上に固定した。製造業者によって供給されるアミンカップリングキットを用いて、pH4.5の10mM酢酸中の10μg/mL濃度で固定を行った。ヒトリゾチームを、HBS−EPバッファー(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005%P20サーファクタント)において流速0.5mL/分でSuperdex75カラム(GE Healthcare)に通して、Biacore解析前にあらゆる可能な凝集体を排除した。結合試験のため、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005%サーファクタントP20を含有する10mM HEPES、pH7.4において25℃で解析を行った。用いた流速は20μL/分であった。再生のため、表面をランニングバッファーで15分間洗浄した。BIAevaluation4.1ソフトウェアによりデータを解析した。結合プロファイルおよび計算されたK図15および表8に示す。SPRプロファイル(図15)から、抗ヒトリゾチームVが、その標的抗原である、リゾチームと実際に結合することを認めることができ、ファージELISAにより得られた結合結果を確認することができる。計算された結合親和性(K)は多様であり、その多くは高親和性を有する(K=0.05μM〜0.2μM)。
【0151】
上記の他のドメインに関して記載されている通りに表面プラズモン共鳴により、ヒト血清アルブミンに対するVのKを決定した。要約すると、BIACORE3000(GE Healthcare)を用いたSPRにより、固定したヒト血清アルブミンとVとの結合を決定した。およそ1,600RUのヒト血清アルブミン、1,900RUのウシ血清アルブミンおよび2,200RUの卵白アルブミンを研究用グレードのCM5センサーチップ上に固定した。タンパク質表面と正確に同じ仕方で、エタノールアミンでブロッキングした表面を参照として調製した。製造業者によって供給されるアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファーpH4.5中の20μg/mL濃度で固定を行った。Vを、Superdex75カラム(GE Healthcare)に通して、Biacore解析前にあらゆる可能な凝集体を排除した。結合実験のため、25℃で、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005%サーファクタントP20を含有する10mM HEPES、pH7.4において解析を行った。用いた流速は40μL/分であり、試料体積は60μLであった。再生のため、表面をランニングバッファーで10分間洗浄した。BIAevaluation4.1ソフトウェアによりデータを解析した。図17は、Vが、その標的抗原である、ヒト血清アルブミンと結合することを明らかに示す。計算されたKは、0.8μMであると決定された(表8)。Vは卵白アルブミンまたはウシ血清アルブミンと結合しなかったため、結合は特異的であった。
【0152】
よって、結果は、非規範ジスルフィド結合を有するVドメインおよびVドメインが、高い親和性、安定性(非凝集性および熱安定性)ならびに発現収量を有する抗原バインダーの供給源であるV/V合成ライブラリーを構築するためのスキャフォールドとして実施可能であることを示す。
【0153】
(実施例10)
ジスルフィドにより安定化されたVファージディスプレイライブラリーの構築
ポジション49および69における特別なジスルフィド連結により安定化されたVスキャフォールドに築いた、ランダム化CDRを有するVファージディスプレイライブラリーを作製するための実験を設計した。ライブラリーを構築するため、Vファージディスプレイライブラリー(HVHP430LGH3)を鋳型として用いて、Vライブラリーに関して上に記す方法および以前に記載された方法(Sidhuら、2000年;Hussackら(c))を用いて、2個の選択されたアミノ酸残基(49Serおよび69Ile)をシステインで置き換えることにより、追加のジスルフィド連結を導入した。HVHP430LGH3ファージディスプレイライブラリーは、ファージミドpMED−1にクローニングされ、タンパク質3遺伝子と融合したCDRがランダム化されたヒトV遺伝子を有するファージミドベクターベースのライブラリーである(「Non−aggregating human V domains」PCT公開、国際公開第2009/079093号)。
【0154】
基本的に上に記す通りならびにHussackら(c)およびSidhuら、2000年に記載されている通りに、ジスルフィドにより安定化されたVファージディスプレイライブラリーを構築する手順を行った。要約すると、システインで置き換えられるよう選択された2個のアミノ酸残基における部位特異的変異誘発の2回の別個のラウンドにより、構築を行った。第一に、HVHP430LGH3ライブラリーから、ファージ(4×1012cfu(コロニー形成単位))に感染させたE.coli CJ236を用いてdU−ssDNA(ウリジン含有一本鎖ファージDNA)を調製した。上に記す通りおよびHussackら(c)に記載されている通りにE.coli TG1およびCJ236に対する力価を決定することにより、dU−ssDNAへのウリジンの取り込みを確認した後、49Serを49Cysへと変異誘発するアニーリングのためのプライマーKT124のリン酸化、ライゲーションおよび重合を包含する一連のin vitro DNA合成反応を、20μgのdU−ssDNAを用いてその後に行った。in vitro DNA合成反応は、合計して23μgのヘテロ二本鎖DNAをもたらした。続く、形質転換毎に50μLのE.coli TG1コンピテント細胞と、564ngのヘテロ二本鎖DNAを用いた10種の別個の形質転換は、合計して1.1×1010cfuの多様性を生じた。プライマー(M13RP aまたはbおよび−96GIII)を用いたPCRによるクローンの選択は、約50%(16クローンのうち8クローン)のクローンが、49Serから49Cysへの変異を有したことを明らかにした。変異誘発の次のラウンドのため、M13K07ヘルパーファージによりレスキューすることにより、49Serから49Cysへ変異導入したファージミドライブラリー((HVHP430LGH3C1))からファージを調製し、2.1×1013cfu/mLのファージ力価をもたらした。その後、(HVHP430LGH3C1)からのファージ(4×1012cfu)を用いてE.coli CJ236からdU−ssDNAを調製し、続いて8μgのdU−ssDNAおよびプライマーKT125を用いたin vitro DNA合成反応を行い、アニーリングして別のアミノ酸残基を変異誘発させ(69Ileから69Cys)、合計して12μgのヘテロ二本鎖DNAをもたらした。続く、形質転換毎に50μLのE.coli TG1コンピテント細胞と230ngのヘテロ二本鎖DNAを用いた22種の別個の形質転換は、合計して5.3×10cfuのライブラリーサイズを生じた。二重変異(49Serから49Cysおよび69Ileから69Cys)を有するV遺伝子を表すライブラリーのパーセンテージを決定するため、プライマー(M13RP aまたはbおよび−96GIII)を用いたPCRにより65個のコロニーをスクリーニングし、配列決定し、解析し、28%(65クローンのうち18クローン)のクローンが二重変異(49Serから49Cysおよび69Ileから69Cys)を有し、35%(65クローンのうち23クローン)が単一の変異(49Serから49Cys)を有し、15%(65クローンのうち10クローン)が単一の変異69Ileから69Cysを有し、22%(65クローンのうち14クローン)が変異なしであったことを明らかにした。よって、両方のCys変異を有するライブラリー(HVHP430LGH3C2)のサイズを、クローンの選択の結果に従い、1.5×10cfu(=5.3×10×28%)に補正した。300mLの2xYTにおいてHVHP430LGH3C2ファージディスプレイライブラリーを増幅させ、ライブラリー細胞を15mLの10%グリセロールに再懸濁し、その後、1mLアリコートとして−80℃で維持した。
【0155】
ライブラリーの多様性は高く(5.3×10形質転換体)、その全Vメンバーにおいて追加の安定化変異(49Serから49Cysおよび69Ileから69Cys)を有した。ライブラリーは、そのVメンバーにおけるCys49/Cys69ジスルフィド連結の存在のため、本技術分野で公知の標準選択技法およびパニング技法を用いることにより、標的抗原に対し高い安定性を有するバインダーを生じる筈である。
本発明の非限定的な実施形態
実施形態1は、フレームワーク領域(FR)に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を含む免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物を含む。実施形態1は、フレームワーク領域(FR)に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を含む変異体免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物であって、安定性の増大、融解温度の増大、溶解性の増大および凝集の減少から選択される1または複数の改善を有する組成物をさらに含む。実施形態1に記載の変異体組成物の改善は、熱リフォールディング効率の改善、プロテアーゼ消化に対する抵抗性の増大、室温以上での、4℃でのまたは0℃未満での貯蔵寿命の増大から選択され得る。実施形態1に記載の変異体組成物の改善は、ヒト被験体に投与したときに、非規範ジスルフィド結合を含まない対応する組成物と比較した場合、機能性の増大または延長としてさらに特徴付けることができる。
【0156】
実施形態2は、実施形態1に記載の組成物であって、免疫グロブリン(immunoglobuin)スキャフォールドがVスキャフォールドまたはVスキャフォールドから選択され、該Vスキャフォールドが、FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含み、該非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入されたCys残基間に形成され;該Vスキャフォールドが、FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含み、該非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入されたCys残基間に形成される、組成物を含む。
【0157】
実施形態3は、スキャフォールドが、より大きな抗体タンパク質またはシングルドメイン抗体(sdAb)、scFv、Fab、F(ab)からなる群から選択される断片または成熟免疫グロブリンの一部である、実施形態1に記載の組成物を含む。実施形態4は、成熟免疫グロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgEおよび/またはIgMからなる群から選択される、実施形態3に記載の組成物を含む。
【0158】
実施形態5は、免疫グロブリンスキャフォールドがVである、実施形態1に記載の組成物を含む。実施形態5は、免疫グロブリンスキャフォールドが、V1ファミリー、V2ファミリーまたはV3ファミリーから選択される、実施形態1に記載の組成物をさらに含む。実施形態6は、Vが、V3ファミリーのものである、実施形態5に記載の組成物を含む。さらに別の一実施形態において、V免疫グロブリンスキャフォールドは、配列番号2、4、6、8および70〜83からなる群のうち1または複数の配列またはそれと実質的に同一の配列から選択される。一実施形態において、実質的に同一の配列は、本開示されている配列と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5残基異なる。
【0159】
実施形態7は、免疫グロブリンスキャフォールドが、Vである、実施形態1に記載の組成物を含む。実施形態8は、Vが、カッパーまたはラムダファミリーのものである、実施形態7に記載の組成物を含む。さらに別の一実施形態において、V免疫グロブリンスキャフォールドは、配列番号10、12、14、16、18、20、22および24からなる群のうち1または複数の配列またはそれと実質的に同一の配列から選択される。一実施形態において、実質的に同一の配列は、本開示されている配列と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5残基異なる。
【0160】
実施形態9は、1または2以上の非規範ジスルフィド結合が、変異によりFR2およびFR3に導入されたシステイン間に形成される、実施形態1〜8のうちいずれか一実施形態に記載の組成物を含む。実施形態10は、Cys残基が、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入される、実施形態5または6に記載の組成物を含む。実施形態11は、Cys残基が、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入される、実施形態7または8に記載の組成物を含む。
【0161】
実施形態12は、スキャフォールドが、多量体化される、実施形態1〜11のうちいずれか一実施形態に記載の組成物を含む。一実施形態において、実施形態12から得られた多量体は、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体または八量体を含む。
【0162】
実施形態13は、スキャフォールドが、Fc断片、標的化配列、シグナル配列および精製タグまたはこれらの任意の組み合わせから選択される第二の配列と融合される、実施形態1〜12のうちいずれか一実施形態に記載の組成物を含む。一実施形態において、第二の配列の少なくとも1単位は、本発明のスキャフォールドを含む少なくとも1個の単量体と融合される。一実施形態において、第二の配列の少なくとも1単位は、実施形態12に記載の組成物と融合される。
【0163】
実施形態14は、免疫グロブリンスキャフォールドが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および70〜83からなる群から選択される配列またはそれと実質的に同一の配列またはその断片(ただし、実質的に同一の配列は、規範および非規範ジスルフィド結合の両方を保持し、CDR1、CDR2およびCDR3を含む残基は、任意の適切な配列となることができる)のフレームワーク領域を含む、実施形態1〜13のうちいずれか一実施形態に記載の組成物スキャフォールド(composition scaffold)を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号2またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号4またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号6またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号8またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号10またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号12またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号14またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号16またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号18またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号20またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号22またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号24またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号70またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号71またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号72またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号73またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号74またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号75またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号76またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号77またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号78またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号79またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号80またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号81またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号82またはその機能的断片を含む。特異的な一実施形態において、組成物は、配列番号83またはその機能的断片を含む。特異的な一実施形態において、組成物は、配列番号84またはその機能的断片を含む。
【0164】
実施形態15は、実施形態1〜14のうちいずれか一実施形態に記載の組成物をコードする核酸を含む。実施形態16は、実施形態15に記載の核酸を含む発現ベクターを含む。実施形態17は、実施形態16に記載の発現ベクターを含む宿主細胞または生物を含む。一実施形態において、本発明の免疫グロブリンスキャフォールドをコードする核酸配列は、本発明の開示されている組成物と実質的に同一の配列をコードする。一実施形態において、実質的に同一の配列は、本開示されている配列と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5残基異なる。一実施形態において、核酸は、宿主細胞または生物における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、細菌における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、E.coliにおける発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、酵母における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、非ヒト動物細胞における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、哺乳類細胞における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。
【0165】
実施形態18は、実施形態2に記載の少なくとも1種の免疫グロブリンスキャフォールドを含む組換えライブラリーであって、該免疫グロブリンスキャフォールドが、ライブラリー当たり少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10または10を超えるクローンの多様性を提供する多数の適切なCDR配列をさらに含む、組換えライブラリーを含む。
【0166】
実施形態19は、免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物の安定性を改善する方法であって、フレームワーク領域に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を導入するステップを含む方法を含む。実施形態19に記載の方法は、組換え技術を用いて、免疫グロブリン配列における第一のコドンおよび第二のコドンを、各ポジションにおいてシステインのコドンと置き換える方法であって、該免疫グロブリン配列が、Vスキャフォールドであり、該第一のコドンが、Kabatナンバリングを用いてポジション49に相当し、該第二のコドンが、Kabatナンバリングを用いてポジション69に相当する方法をさらに含む。実施形態19に記載の方法は、組換え技術を用いて、免疫グロブリン配列における第一のコドンおよび第二のコドンを、各ポジションにおいてシステインのコドンで置き換える方法であって、該免疫グロブリン配列が、Vスキャフォールドであり、該第一のコドンが、Kabatナンバリングを用いてポジション48に相当し、該第二のコドンが、Kabatナンバリングを用いてポジション64に相当する方法をさらに含む。本発明は、発現ライブラリーを作製するための、実施形態19に記載の方法の使用をさらに含む。一実施形態において、ライブラリーは、実施形態18に記載のライブラリーである。
【0167】
実施形態20は、安定性の増大、融解温度の増大、溶解性の増大および凝集の減少から選択される1または複数の改善を有する免疫グロブリンスキャフォールドを含む変異体組成物を作製する方法であって、実施形態19に記載の方法を含む。実施形態20に記載の変異体組成物の改善は、熱リフォールディング効率の改善、プロテアーゼ消化に対する抵抗性の増大、室温以上での、4℃でのまたは0℃未満での貯蔵寿命の増大から選択され得る。実施形態20に記載の変異体組成物の改善は、ヒト被験体に投与したときに、非規範ジスルフィド結合を含まない対応する組成物と比較した場合、機能性の増大または延長としてさらに特徴付けることができる。
【0168】
実施形態21は、治療薬である、実施形態1から14のうちいずれか1または複数に記載のいずれか1または複数の組成物を含む。本発明は、実施形態21に記載の組成物を、薬学的に許容される該組成物のためのキャリアまたは賦形剤中にさらに含む。
【0169】
実施形態22は、実施形態21に記載の組成物であって、それを必要とする被験体に投与される組成物の使用を含む。実施形態23は、処置を必要とする被験体に投与される薬剤としての実施形態21に記載のいずれか1または複数の組成物の使用を含む。
【0170】
実施形態24は、免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物が、非ヒト動物に由来する、実施形態1から14のうちいずれか1または複数に記載のいずれか1または複数の組成物を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、あらゆる脊椎動物、特に、鳥類、両生類、爬虫類、哺乳類、ラクダ科の動物、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ、ウマまたは非ヒト霊長類から選択される脊椎動物を包含する。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、ヒトである。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、ラクダ科の動物である。一実施形態において、ラクダ科の動物の種は、ラマ、アルパカおよびラクダからなる群から選択される。一実施形態において、ラクダ科の動物のスキャフォールドは、V領域、VまたはVH領域のうちいずれか1または複数に由来する。
【0171】
【化9】
【0172】
【化10】
【0173】
【化11】
【0174】
【化12】
【0175】
【化13】
【0176】
【化14】
【0177】
本明細書に記載されている実施形態および実施例は、説明目的のものであり、請求されている本発明の範囲を限定するよう意味づけられていない。代替物、修正物および均等物を包含する上記の実施形態の変種は、本特許請求の範囲に包含されていることが本発明者らにより企図される。さらに、記述されている特色の組み合わせは、本発明に係る解明に必要とされないことがある。
【0178】
参考文献
本明細書および本願全体を通じて参照されているあらゆる特許、特許出願および刊行物は、参照により本明細書に援用する。
【0179】
【数1】
【0180】
【数2】
【0181】
【数3】
【0182】
【数4】
【0183】
【数5】
【0184】
【数6】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A-1】
図3A-2】
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A-1】
図7A-2】
図7B
図8A-1】
図8A-2】
図8B-1】
図8B-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図16-1】
図16-2】
図17
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]