【実施例】
【0071】
(実施例1)
変異体V
HおよびV
Lのクローニング、発現および精製
凝集および非凝集V
HおよびV
Lドメインならびにそれらの対応物の二重システイン変異体をクローニングし、発現させ、精製した。利用したV
HおよびV
Lならびにそれらの対応するCys変異体を表1に列挙し、
図1に示す。
表1.構築したV
HおよびV
Lならびに変異体
【0072】
【表1】
*本明細書において、「野生型」と称される。配列番号が提示されていない場合、野生型配列は、PCT公開、国際公開第2006/099747号に、特にこの刊行物の
図2に示されるとおり、提示されている。
【0073】
Arbabi−Ghahroudiら(2009年b)に記載されている通り、野生型V
H、HVHAm302、HVHAm427、HVHAm431およびHVHPC235を調製した。Tanhaによる国際公開第2006/099747号に記載されている通り、14種の追加の野生型V
H、HVHP44、HVHB82、HVHP421、HVHP419、HVHP430、HVHP429、HVHM41、HVHM81、HVHP428、HVHP420、HVHP414、HVHP423、HVHP413およびHVHP426ならびに野生型V
Lを調製した。これらの野生型ドメイン(14種の上記のV
Hは除外する;後述を参照)の遺伝子を含有するプラスミドを鋳型として用いて、SOE−PCRにより対応する変異体バージョンを構築した。
【0074】
オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE)−PCRにより、本明細書において「Cys変異体」とも称される、発明に係るV
HおよびV
Lの構築物(HVHAm302、HVHAm427、HVHAm431およびHVHPC235)を作製して(Hoら、1989年;Kimら、投稿済み、Arbabi−Ghahroudiら、2010年)、Kabatナンバリング(Kabatら、1991年)に定義され、V
Hドメインに関しては
図1A、V
Lドメインに関しては
図1Bに提示されている通り、ポジション49および69(V
H)またはポジション48および64(V
L)にCys対を導入した。要約すると、V
H変異体を生成するために。これらクローンのCys変異導入された細断片(sub−fragment)を調製し、次にSOE−PCRにより集合させて完全長Cys変異体を形成した。例えば、HVHAm302Sの場合、DNA鋳型として野生型HVHAm302遺伝子を含有するプラスミドと、以下のプライマー対を用いた標準PCRにより、細断片302S−1および302S−2を別々に作製した:
M13RPa(5’−TCACACAGGAAACAGCTATGAC−3’)(配列番号37)および
KT131(5’−ACCACTACTACTAATAG CGCAGACCCACTCCAGCCCCTTC−3’)(配列番号38)(302S−1細断片用)ならびに
M13FP(5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC−3’)(配列番号39)および
KT129(5’−GCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCTGCTCCAGAGACAATTCCAAGAAC−3’)(配列番号40)(302S−2細断片用)。
【0075】
第二に、鋳型として302S−2を用いて、以下のPCRプライマー対を用いたPCRにより断片302S−2−2を作製する:M13FPおよび
KT130(5’−TGCGCTATTAGTAGTAGTGGTGGTAGCACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCG−3’)(配列番号41)。
【0076】
このステップは、302S−2にオーバーラップ領域を付加した。その後、プライマー対M13RP aまたはb/M13FPを用いたSOE−PCRにより、細断片302S−1および302S−2−2を集合させて、Cys変異を有する完全長V
H断片を作製した。同じ手順およびプライマーを用いて、他のV
H変異体をその対応する野生型V
Hプラスミドから生成した。異なるVL遺伝子特異的なPCRプライマーおよび対応する野生型V
Lプラスミド鋳型を用いた以外は、V
H変異体に対する手順と同じSOE−PCR手順を用いてV
L変異体を生成した。DNA2.0(米国カリフォルニア州メンローパーク)により、14種の非凝集V
H、HVHP44、HVHB82、HVHP421、HVHP419、HVHP430、HVHP429、HVHM41、HVHM81、HVHP428、HVHP420、HVHP414、HVHP423、HVHP413およびHVHP426のCys変異体バージョンを合成した。これらは、それぞれHVHP44S、HVHB82S、HVHP421S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP429S、HVHM41S、HVHM81S、HVHP428S、HVHP420S、HVHP414S、HVHP423S、HVHP413SおよびHVHP426Sと称される。これら14種の構築物に関し、フレームワーク領域およびCDR領域は、PCT公開、国際公開第2006/099747号に、特にこの刊行物の
図2に示されるとおり、提示されている対応する野生型配列のものと別の方法で同じである。
【0077】
次に、他の文献(Sambrookら、1989年;Toら、2005年;Arbabi−Ghahroudiら、2009年a;2009年b;2010年)に記載されている通りに完全長Cys変異体を発現ベクターにクローニングし、発現させ、精製し、その濃度を決定した。
【0078】
追加のジスルフィド連結は、Cys変異体V
HおよびV
Lの発現収量に対して有害な作用がなかった。野生型および変異体sdAbは、ミリグラム量での匹敵する収量を有した。実際のところ、一部の発現試行において、HVHAm302SおよびHVHAm431Sは、その野生型対応物よりも有意に高い発現収量を有した(
図2AにおけるIMAC溶出プロファイルを参照)。
【0079】
非還元SDS−PAGEゲルにおいて、変異体V
HおよびV
Lは、その野生型対応物よりも遅く移動した(
図2B、HVHAm302/HVHAm302SおよびHVHPC235/HVHPC235S V
Hペアについて示される例)。移動の差は、還元条件下で消失した。V
HHの場合にもこのようなSDS−PAGE移動度パターンが観察され、Cys変異体に形成されたCys49/Cys69ジスルフィド連結の兆しとして示唆された(Hussackら、2011年)。野生型/変異体ペアは、基本的に同じ分子量を有するため、野生型V
Hと変異体V
Hとの間のゲル泳動の差は、変異体における特別な(extra)工学的に作製されたジスルフィド連結の結果生じた、その高次構造の差によるものである(KimおよびTanha、2010年)。加えて、野生型V
H HVHAm302は、凝集体(
図2Bにおける二量体バンドを参照)を形成し、これは、抗His抗体を用いたウエスタンブロッティングによりさらに確認された(
図2B、およびデータは示していない)。対応する変異体V
H、HVHAm302Sにおいて、二量体バンドは消失する(
図2B)。これは、工学的に作製されたジスルフィド連結が、V
H非凝集を改善することを示し、分子ふるいクロマトグラフィーの知見(後述および
図4Aを参照)と一致する。
【0080】
(実施例2)
Cys変異体のジスルフィド連結マッピング
V
HおよびV
L Cys変異体に導入されたジスルフィド連結は、この抗体にとって自然なものではないため、V
HおよびV
L変異体のさらなる特性評価の前に、変異導入ポジションにおけるジスルフィド連結の存在を検証した。
【0081】
野生型V
Hにおいて天然ジスルフィド連結を形成する2個のCys残基(Cys22およびCys92)(AmzelおよびPoljak、1979年;Williams & Barclay、1988年)および変異体の変異導入された残基の知識に基づき、ジスルフィド連結の位置を予測することができた。V
Hにおける予測ジスルフィド結合間に数個のトリプシン開裂部位が存在したため、Cys変異体をトリプシン処理し、質量分析を利用して工学的に作製されたジスルフィド連結の存在を検証することが可能であった。
【0082】
他に記載されている通りに(Hussackら、印刷中(b);KimおよびTanha、印刷中;Wuら、2009年)、V
HおよびV
Lについてのジスルフィド連結の決定を行った。KimおよびTanha(印刷中)に記載されている通り正確に、HVHAm302およびHVHAm302Sについてのジスルフィド連結の決定を行った。要約すると、biomax−5メンブレンを有するUltrafree−0.5遠心分離フィルターデバイス(MWCO5000;Millipore、カナダ、オンタリオ州ネピアン)を用いて、0.1M Tris−HCl、pH8.5中にV
H Cys変異体を濃縮し、0.1M Tris−HCl、pH8.5中の0.5mg/mL濃度のトリプシン消化(Roche Diagnostics Canada、カナダ、ケベック州ラヴァル)に付し、トリプシン消化の成功についてSDS−PAGEにより解析し、その後、ペプチドを質量分析による分析に付した(
図3および表2)。
【0083】
結果は、用いた質量分析方法により、V
Hのトリプシン消化により生じたジスルフィド連結したペプチドを同定できたことを示した(
図3Bおよび表2)。組換えタンパク質の全分子量は、インフュージョンESI−MSを用いて40ppmの質量精度以内であると決定された。nanoRPLC−MS
2とDDA(データ依存解析)を用いた、そのトリプシン消化の解析からの各タンパク質の同定適用範囲(coverage)は、30%を超えた。ジスルフィド連結したペプチドイオンは、DDA実験のサーベイスキャンにおいて突出しているように見えた。V
Hからの予想されるジスルフィド連結したペプチド配列は全て、手作業のde novo配列決定により確認した。
【0084】
表2.質量分析によるV
Hのジスルフィド連結の決定。ジスルフィド連結を含有する主要なトリプシンペプチドを示す。接続したシステインは、太字および下線で表し、V
Hの残りの配列は、トリプシン処理により失われる。ペプチドダブレット内のスペースは、配列の中断を表示する。
【0085】
【表2】
aMW
forとMW
expとの間の非常に密接なマッチは、Cys49−Cys69ジスルフィド連結の存在を示す。MW
for:式(から予想される)分子量;MW
exp:MSによる実験により決定された分子量;ΔMWを次のように計算する:(MW
for−MW
exp)。MW
for、MW
expおよびΔMWはダルトン(Da)で示される。
【0086】
HVHAm302Sの場合、m/z964.04(3+)における顕著なイオンを、ジスルフィド連結した
【0087】
【化8】
として配列決定し(
図3Bおよび表2)、ジスルフィド連結を含有するペプチドフラグメントイオン、y
117+P2およびb
16+P2が、それぞれm/z1153.85(2+)およびm/z649.78(2+)において明らかに観察された(
図3および表2)。これにより、HVHAm302SにおけるCys49とCys69との間の工学的に作製されたジスルフィド連結の存在が確認された。HVHPC235SにおけるCys49とCys69との間の工学的に作製されたジスルフィド連結の存在も決定した(表2)。しかし、HVHAm427SおよびHVHAm431Sのジスルフィド連結は、それがプロテアーゼ(トリプシンまたはペプシン)消化に対し高度に抵抗性であったため、質量分析により確認できなかった。しかし、それらそれぞれの野生型形態と比較したHVHAm427SおよびHVHAm431Sの劇的なT
m増大(表4)ならびにSDS−PAGE移動度シフト(
図2B)は、HVHAm427SとHVHAm431Sの両方における工学的に作製されたジスルフィド連結の存在を示す。
【0088】
別の代表例として、14種の変異体V
Hのうち1種(HVHP426S)もCys49/Cys69ジスルフィド連結形成の決定のために選んだ。他のV
Hの事例として、MS結果は、HVHP426Sが、Cys49とCys69との間にジスルフィド連結を形成したことを示した(表2)。
【0089】
変異体V
Lにおける同様の質量分析による分析により、全V
LにおけるポジションCys48とCys64との間における工学的に作製されたジスルフィド連結の存在が確認された(表3)。
【0090】
表3.質量分析(MS)によるV
Lのジスルフィド連結の決定。ジスルフィド連結を含有する主要なトリプシンペプチドを示す。接続したシステイン同士は、同様の下線(および斜体)および太字で表す。HVLP324S、HVLP342S、HVLP351SおよびHVLP3103Sの場合、接続したシステインの別の対を斜体で示す。V
Lにおける残りの配列は、トリプシン処理により失われる。ペプチド断片間のスペースは、配列の中断を表示する。
【0091】
【表3-1】
【表3-2】
aMW
forおよびMW
exp間の非常に密接なマッチは、Cys48−Cys64ジスルフィド連結の存在を示す。MW
for:式(から予想される)分子量;MW
exp:MSによる実験により決定された分子量;ΔMWを次の通り計算する:(MW
for−MW
exp)。MW
for、MW
expおよびΔMWはダルトン(Da)で示される。
【0092】
結晶構造解析は、検査した発明に係るV
HおよびV
L構築物の全てにおける規範Cys−Cys残基間のジスルフィド架橋に加えて、非規範Cys−Cys残基間のジスルフィド架橋の存在を確認した。
【0093】
(実施例3)
分析的分子ふるいクロマトグラフィー
分子ふるいクロマトグラフィー(またはゲル濾過クロマトグラフィー)は、タンパク質を分子サイズおよび流体力学的容積により分離する(PorathおよびFlodin、1959年)。したがって、この方法は、溶液におけるタンパク質凝集状態の評定において有用である。Superdex(商標)75を利用する分子ふるいクロマトグラフィーを用いて、V
H(またはV
L)ドメインの凝集状態を評定する。非凝集V
H(またはV
L)は、単量体V
H(またはV
L)に予想される溶出体積で、単一の対称的ピークのクロマトグラムを生じる筈である。対照的に、凝集V
Hのクロマトグラムプロファイルは、単量体ピークに加えて、より早く溶出する追加のピーク、例えば、大きな凝集体、二量体凝集体からなる。パーセント単量体は、ピークの面積積分により計算し、V
H(またはV
L)凝集傾向の定量的尺度として用いることができる(V
H(またはV
L)の%単量体が高い程、その凝集傾向は低くなり、逆に、V
H(またはV
L)の%凝集体が高い程、その凝集傾向も高くなる)。
【0094】
以前に記載された通りに(Sambrookら、1989年; Toら、2005年;Arbabi−Ghahroudiら、2009年a;Arbabi−Ghahroudiら、2009年b;Arbabi−Ghahroudiら、2010年;KimおよびTanha、印刷中)、V
HおよびV
Lならびにそれらの対応するCys変異体の分子ふるいクロマトグラフィーを行った。要約すると、Superdex(商標)75分子ふるいカラムを、ポンプ速度0.5mL/分にて50mLの濾過・脱気済ddH
2Oで洗浄し、その後、50mLの濾過・脱気済PBSで平衡化した。試料は、0.22μm使い捨てフィルターユニットを通して濾過し、その後、Superdexカラムを用いたAKTA FPLCにおいて製造業者の指示の通りに、流速0.5mL/分のPBSバッファーによる分子ふるいクロマトグラフィーに供した。チューブ当たり0.5mLの画分体積のAKTAフラクションコレクターを用いて、ピークに対応する溶出液を収集した。分子ふるいクロマトグラフィーの後、グラフ作成ソフトウェアGraphPad Prism(Windows(登録商標)用バージョン4.02;GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてA
280対溶出体積をプロットした(
図4)。単量体ピークおよび凝集体ピークを積分して、%単量体または%凝集体を得た。
【0095】
分子ふるいクロマトグラム(SEC)における吸光度の値(A
280)を正規化し、溶出体積に対してプロットした。次式に従い、吸光度の正規化を行った。
%A
280=(A
280N−A
280B)/(A
280M−A
280B)×100
(式中、%A
280は、正規化された吸光度であり、A
280Nは、任意の溶出体積における吸光度であり、A
280Mは、最大吸光度であり、A
280Bは、ベースライン吸光度である)。
【0096】
結果(
図4A)は、3種の凝集V
Hである、HVHAm302、HVHAm427およびHVHAm431の全てにおいて、変異によりタンパク質非凝集性が大いに改善されたことを示す。野生型V
Hは、単量体ピークに加えて凝集V
Hに典型的な早い溶出ピークを示したが(HVHAm302およびHVHAm427については約22%、HVHAm431については25%)、これらの早い溶出ピークは、対応する変異体において消失し、その変異体は基本的に単量体ピークからなっていた。この結果は、ジスルフィド連結の工学的作製が、凝集V
Hを非凝集V
Hに転換したことを示す。その分子ふるいクロマトグラフィー(
図4A)に示す通り、HVHPC235SへとCys変異導入した場合、非凝集V
Hである、HVHPC235は、その非凝集特徴を維持した。
図4Bは、V
Hの14種のV
H変異体である、HVHP44S、HVHB82S、HVHP421S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP429S、HVHM41S、HVHM81S、HVHP428S、HVHP420S、HVHP414S、HVHP423S、HVHP413SおよびHVHP426Sの代表的SECプロファイルを示す。試験した4事例(HVHP414S、HVHP420S、HVHP426SおよびHVHP429S)の全てにおいて分かる通り、変異体は、これらの親野生型V
Hと同様に非凝集のままであった。この結果は、非凝集V
Hの場合、ジスルフィドの工学的作製は、V
Hの非凝集特性を損なわない一方で、下に示す通り、その安定性を大いに改善することを再度実証する。
【0097】
野生型V
Lは、基本的に凝集体がなく、対称的単一ピークを示した。僅かな凝集(11%の二量体凝集体)を示したHVLP364Sを例外として、V
L Cys変異体も単量体型であった。よって、一般に、工学的に作製されたジスルフィド連結は、V
Lの非凝集特性を損なわなかった(
図4C)。
【0098】
(実施例4)
円二色性(CD)分光法による熱安定性の測定
変異体V
HおよびV
Lにおける追加の工学的に作製されたジスルフィド連結が、タンパク質安定性を改善するか評定するため、CD分光法による融解温度(T
m)の測定により熱安定性を評価した。
【0099】
全V
Hおよび変異体V
Lについて、Peltier熱電性型温度制御システムを備えるJasco J−815分光偏光計(Jasco、米国メリーランド州イーストン)を用いて実験を行った。路長1mmのCDキュベットを用いた。スキャンスピード50nm/分、デジタル積分時間(DIT)4秒、バンド幅1nm、データピッチ1nmおよび積分時間1秒で、波長範囲180〜260nmにわたりスペクトルを記録した。融解温度またはT
m(Greenfield、2006年a;2006年b)を測定するため、温度範囲30℃〜96℃にわたりCDスペクトルを記録した。全CDスペクトルは、バッファースペクトルに相当するブランクから差し引いた。100mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4中の50μg/mL V
H濃度を用いて測定を行った。楕円率の変化により、210nmにて全Cys変異体V
LならびにHVHAm431、HVHAm431SおよびHVHP419Sについての;205nmにてHVHAm427、HVHAm427S、HVHAm302、HVHAm302S、HVHB82、HVHP421、HVHP426、HVHP428、HVHP429、HVHP420S、HVHP429S、HVHM81S、HVHP430S、HVHP421S、HVHP426S、HVHP428S、HVHM41およびHVHP414Sについての;220nmにてHVHPC235についての;200nmにてHVHPC235S、HVHP430、HVHP413、HVHP423、HVHM81、HVHP419、HVHP420およびHVHB82Sについての;202nmにてHVHP44、HVHP414およびHVHP423Sについての;208nmにてHVHP44Sについての;ならびに209nmにてHVHM41Sについての熱誘導性タンパク質変性をモニターした。記載されている式(Greenfield、2006年a;2006年b)により、フォールディングしたものの割合(ff)を得た。
ff=([θ]
T−[θ]
U)/([θ]
F−[θ]
U) 式I
(式中、[θ]
Tは、任意の温度におけるモル楕円率であり、[θ]
Fは、30℃における完全にフォールディングしたタンパク質のモル楕円率であり、[θ]
Uは、90℃におけるアンフォールディングしたタンパク質のモル楕円率である)。グラフ作成ソフトウェアGraphPad Prism(Windows(登録商標)用バージョン4.02)を用いた非線形回帰曲線あてはめ(BoltzmanS字状方程式)により、アンフォールディング曲線(フォールディングしたものの割合(ff)対温度)の中点として融解温度(T
m)を得て、表4に記録した。
【0100】
野生型V
Lについては、NESLAB RTE−111バスアクセサリーを備えるJasco J−810分光偏光計を用いた。路長0.02cmの円形セルを用いた。スキャンスピード100nm/分、バンド幅1nmおよび積分時間1秒でスペクトルを記録した。温度範囲25℃〜85℃にわたりHVLP342、HVLP351およびHVLP3103についての、25℃〜80℃にわたりHVLP324、HVLP325、HVLP364およびHVLP389についての、25℃〜90℃にわたりHVLP335についてのCDスペクトルを記録した。203nmにてHVLP325およびHVLP389についての、218nmにてHVLP324、HVLP335、HVLP342、HVLP351、HVLP364およびHVLP3103についてのモル楕円率の熱誘導性変化をモニターした。リン酸ナトリウムバッファーにおいて4.1×10
−5M〜5.7×10
−5Mの範囲の濃度で測定を行った。全CDスペクトルは、バッファースペクトルに相当するブランク(the blank corresponding buffer spectra)から差し引き、以前に記載された通りにV
Hおよび変異体V
Lについての融解温度(T
m)を得た。
【0101】
表4.V
H、V
Lおよび対応するCys変異体の親和性定数、K
Dおよび融解温度、T
m 。V
Lについて、K
DはプロテインLに対するものであり、V
HについてはプロテインAに対するものである。
【0102】
【表4-1】
【0103】
【表4-2】
aより小さいK
D値は、プロテインLにおける高親和性部位に対するHVLP324、HVLP324S、HVLP342およびHVLP342Sの結合に対応する。
bArbabi−Ghahroudiら(2009年b)における表1を参照されたい。
c2つの非常に近いK
Dが得られた。
d括弧内の値は、より高濃度の単量体で得られた。
eそのように限定されない(not−so−defined)より低いプラトーのため、推定の最小T
mを表す(
図5Aにおける融解曲線プロファイルを参照)。
f2つ組で行った。
gToら、2005年から採用したK
D。
【0104】
変性への急激な転移に対応する観察された変性曲線に一致する、二状態系を想定する楕円率データに基づき、V
H(HVHAm302およびHVHAm302S、HVHAm427およびHVHAm427S、HVHAm431およびHVHAm431S、HVHPC235およびHVHPC235S、HVHP44およびHVHP44S、HVHB82およびHVHB82S、HVHP421およびHVHP421S、HVHP419およびHVHP419S、HVHP430およびHVHP430S、HVHP429およびHVHP429S、HVHM41およびHVHM41S、HVHM81およびHVHM81S、HVHP428およびHVHP428S、HVHP420およびHVHP420S、HVHP414およびHVHP414S、HVHP423およびHVHP423S、HVHP413およびHVHP413SならびにHVHP426およびHVHP426S)ならびにV
Lの融解温度(T
m)を決定した(
図5および6ならびに表4)。フォールディングしたものの割合(ff)対温度のS字状変性曲線の中点にT
m値を取った。HVHAm302およびHVHC235とは異なり、HVHAm427およびHVHAm431は両者共に、相当により高いT
mを有しており、これは恐らく、可能性のあるCDR1−CDR3間ジスルフィド連結の存在によるものであろう(
図1Aおよび表4)。HVHAm302およびHVHAm302S、HVHAm427およびHVHAm427S、HVHAm431およびHVHAm431S、HVHPC235およびHVHPC235S V
Hの場合、本発明者らは、変異体V
Hが、その対応する野生型対応物と比較して、有意により高いT
mを有したことを見出し(表4)(対応のあるt検定、両側、p=0.0008)、この結果は、工学的に作製したジスルフィド連結の安定化効果を示した。野生型V
Hは、52.8℃〜70.9℃のT
mを有していたが、これは変異体V
Hでは65.4℃〜84.6℃へと増大した。これは、12.6℃〜16.5℃のT
m増大(ΔT
m)に相当する。HVHP44およびHVHP44S、HVHB82およびHVHB82S、HVHP421およびHVHP421S、HVHP419およびHVHP419S、HVHP430およびHVHP430S、HVHP429およびHVHP429S、HVHM41およびHVHM41S、HVHM81およびHVHM81S、HVHP428およびHVHP428S、HVHP420およびHVHP420S、HVHP414およびHVHP414S、HVHP423およびHVHP423S、HVHP413およびHVHP413SならびにHVHP426およびHVHP426S V
Hの場合、同様のパターンが観察され、野生型V
Hは、54.2℃〜72.5℃のT
mを有し、一方、変異体対応物は、64.7℃〜82.7℃のT
mを有した。これは、変異体V
Hについての8.9℃〜16.8℃のT
m増大(ΔT
m)に相当する(表4)。変異体対野生型V
Hのジスルフィド連結パターンを比較することにより(表2)、T
m増大が実際に、特別なCys49/Cys69ジスルフィド連結の存在によるものであることが明らかとなる。理論による束縛は望まないが、HVHAm427Sにおけるジスルフィド連結は、高次構造の変化をもたらして、ベータ−シート等の、高次構造モジュールを互いに近づけ(短または長距離接触のいずれかにより作用する)、疎水性相互作用または塩橋等の、特別な化学力を誘導し、そのレベルで構造をさらに安定化し得る。
【0105】
V
LのT
mは、49.3℃〜64.6℃の範囲であり、他のsdAbにおいて観察される範囲であった(Jespersら、2004年;Tanhaら、2006年)(
図6および表4)。変異体V
Hの場合と同様に、全変異体V
Lについて、そのT
mは、野生型V
LについてのT
mと比較して、平均17℃まで大幅に増大した(範囲:11.2℃〜21.1℃)。変異体V
LのT
mは、野生型V
Lの49.3℃〜64.6℃と比較して、63.8℃〜82.5℃の範囲であった。よって、熱安定性が最も低い変異体、HVLP342SのT
mは、熱安定性が最も高い野生型、HVLP325に匹敵した(
図6C)。HVLP325Sは、最高のT
m(82.5℃)を有した一方、HVLP342Sは、最低のT
m(63.8℃)を有した。V
Lの安定性におけるジスルフィドの工学的作製の効果は、その生殖系列配列起源にかかわりなくラムダとカッパーの両方の型のV
Lを安定化するため、この効果は普遍的であるようである。
【0106】
(実施例5)
表面プラズモン共鳴(SPR)
それぞれV
HおよびV
LのプロテインAおよびプロテインL結合特性をSPR結合解析において用いて、V
H変異体およびV
L変異体における工学的に作製されたジスルフィド連結によるあらゆる可能性のある微細な構造変化を精査した。プロテインAは多くの場合、V
Hの高次構造完全性のモニターに用いられる(Starovasnikら、1999年)。V
HおよびV
LのSPR解析のための、標準手順を行った。
【0107】
BIACORE解析前に、V
HおよびV
LをHBS−EPバッファー(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005%P20サーファクタント)において流速0.5mL/分で、Superdex(商標)75 10/300(GL)分子ふるいクロマトグラフィー(GE Healthcare)に付し、凝集した材料の証拠が全くなくても、収集した単量体ピークを精製した。BIACORE3000バイオセンサーシステム(GE Healthcare)を用いたSPRにより、プロテインA(Pierce、カナダ、オンタリオ州ネピアン)とV
HおよびプロテインL(Pierce)とV
Lとの相互作用についての結合動態を決定した。
【0108】
V
Hである、HVHAm302、HVHAm302S、HVHAm427、HVHAm427S、HVHAm431およびHVHAm431Sのため、それぞれ540RUおよび1350RUのプロテインAおよび卵白アルブミン(参照タンパク質として)(Sigma、カナダ、オンタリオ州オークビル)を、研究用グレードのCM5センサーチップ(GE Healthcare)に固定した。製造業者(GE Healthcare)により供給されたアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファー、pH4.5における50μg/mLで固定を行った。HBS−EPバッファーにおいて流速50μL/分、25℃で全測定を行った。ランニングバッファーで洗浄することにより、表面を再生させた。
【0109】
HVHPC235およびHVHPC235Sのため、それぞれおよそ1,100RUおよび1,000RUの組換えプロテインAおよび卵白アルブミン(参照タンパク質)を、研究用グレードのセンサーチップCM5に固定した。製造業者により供給されたアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファー(それぞれプロテインAまたは卵白アルブミンに対しpH4.0またはpH4.5)における50μg/mLで固定を行った。それぞれHVHPC235またはHVHPC235Sのために流速20μL/分または40μL/分で、HBS−EPバッファーにおいて25℃で全測定を行った。
【0110】
変異体V
H(HVHP44S、HVHB82S、HVHP421S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP429S、HVHM81S、HVHP428S、HVHP420S、HVHM41S、HVHP423S、HVHP413S、HVHP426SおよびHVHP414S)のため、それぞれおよそ1,170RUおよび1,240RUの組換えプロテインAおよび卵白アルブミン(参照タンパク質)を、研究用グレードのセンサーチップCM5に固定した。製造業者により供給されるアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファー(プロテインAと卵白アルブミンの両方に対しpH4.5)における50μg/mLで固定を行った。それぞれHVHB82S、HVHP421S、HVHP429S、HVHM41S、HVHM81S、HVHP423S、HVHP413S、HVHP426SおよびHVHP414S、またはHVHP44S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP428SおよびHVHP420Sのために流速20μL/分または40μL/分で、HBS−EPバッファーにおいて25℃で全測定を行った。野生型対応物のプロテインA結合特性は、以前に決定された(Toら、2005年)。
【0111】
野生型V
Lのため、600RUのプロテインLまたは800RUのFab参照タンパク質を、研究用グレードのCM5センサーチップ(GE Healthcare)に固定した。V
L変異体のため、およそ400RUの組換えプロテインLまたは卵白アルブミン(参照タンパク質)を固定した。製造業者(GE Healthcare)により供給されるアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファー、pH4.5における20または50μg/mLのタンパク質濃度で固定を行った。流速40または50μL/分でHBS−EPバッファーにおいて25℃で全測定を行った。ランニングバッファーで洗浄することにより、表面を再生した。全データは、BIAevaluation4.1ソフトウェア(GE Healthcare)を用いて評価した。
【0112】
SPR解析は、圧倒的多数の変異体V
H(HVHAm302S、HVHAm427S、HVHAm431S、HVHPC235S、HVHB82S、HVHP421S、HVHP419S、HVHP430S、HVHP429S、HVHM81S、HVHP420S、HVHM41S、HVHP423S、HVHP413S、HVHP426SおよびHVHP44S)が、その野生型対応物と比較してより高いK
D値により表わされるより低い親和性でプロテインAと結合したことを示した(
図7および表4)(2種の変異体V
H[HVHP428SおよびHVHP414S]のみが、その野生型対応物とある程度同じK
D値を示した)。プロテインA結合の低下(K
D値の増大)は、HVHM81/HVHM81Sペアについての1.6倍からHVHPC235/HVHPC235Sペアについての10倍に及ぶ(
図7Aおよび表4)。この結果は、工学的に作製されたジスルフィド結合が、V
Hの高次構造を若干変えることを実証する。理論による束縛は望まないが、V
HのFR1およびFR3内に存することが公知のプロテインA結合部位(Starovasnikら、1999年;RiechmannおよびDavies、1995年)は、FR2およびFR3のベータ鎖における2個のCysの導入により損なわれた可能性がある。興味深いことに、変異体V
Hは、その野生型対応物と比較して、解離速度定数(k
off)の一貫した増大を示し、これは、平衡結合定数(K
D)の上昇をもたらした(
図7B)。
【0113】
V
L Cys変異体が、その野生型対応物と同様の親和性でプロテインLと結合したことが判明し(
図8および表4)、この結果は、ジスルフィド結合が、V
Lの全体的な構造に影響を与えないことを示した。
【0114】
(実施例6)
プロテアーゼ安定性
主要GIプロテアーゼである、トリプシン、キモトリプシンおよびペプシンを用いて、V
LおよびV
Hのプロテアーゼ安定性における工学的に作製されたジスルフィド連結の効果を評価した。GIプロテアーゼによる消化反応後に、SDS−PAGEおよび質量分析により、酵素による開裂の出現に関してV
LおよびV
Hを試験した。基本的に記載されている通りに(Hussackら、2011年)消化を行った。
【0115】
V
Lのため、6μgのV
Lを有する総体積30μL中、37℃で1時間、酵素対sdAb比、1:200、1:40、1:20および1:10(トリプシン/キモトリプシン)または1:200、1:20、1:10および1:4(ペプシン)で消化実験を行った。配列決定グレードの酵素(Hoffmann−La Roche Ltd.、カナダ、オンタリオ州ミシサガ)を用いて製造業者の指示に従い、トリプシンおよびキモトリプシン消化実験を行った。適正な体積の400mM HClを添加することによりpHを調整して、約pH2.0でペプシン(Sigma)消化反応を行った。対照実験において、酵素を等体積の反応バッファーに置き換えた。等体積のSDS−PAGEサンプルバッファー(0.2Mジチオスレイトールを含有)を添加し、混合物を95℃で5分間煮沸することにより、反応を停止させた。その後、試料をSDS−PAGEによる解析に付し、Hussackら、印刷中(a)に記載されているとおりスポット密度解析により、プロテアーゼ消化後のインタクトsdAbのパーセントを決定し、対照と比較して、プロテアーゼ消化後にインタクトな構造を有するV
Lのパーセンテージを計算した。
【0116】
V
Hのため、6μgのV
Hを有するおよび並列式にその変異体V
H対応物を有する総体積30μL中、37℃で1時間、酵素対sdAb比、1:20で、2回の独立した試行により2つ組で、トリプシン/キモトリプシン/ペプシンによる消化実験を行った。V
Lに関して記載されている通り、消化および解析を行った。
【0117】
結果を
図9Aに示す。トリプシンまたはキモトリプシンに対する抵抗性に関して、野生型と変異体V
Lとの間に有意差は観察されなかったが(Wilcoxonマッチドペアt検定、両側P値=0.2969[トリプシン]および0.0625[キモトリプシン])、ペプシンに対する抵抗性における差は、有意であった(Wilcoxonマッチドペアt検定、両側P値=0.0078)。検査した変異体V
Lは、ペプシンに対する抵抗性の改善を示し、そのうちの1つ、HVLP3103Sは、0%抵抗性(野生型)から、ほとんど90%抵抗性(変異体)へと劇的な増大を示した。ペプシン抵抗性の平均値は、ペプシン対V
L比、1:20において変異体V
Lについての51%に対して野生型V
Lについての11%であった。同じ比において、ペプシン抵抗性の中央値は、変異体V
Lについての54%に対して野生型V
Lについての1.5%であった。よって、sdAbのジスルフィド連結の工学的作製は、そのトリプシンおよびキモトリプシン抵抗性特性に影響を与えることなく、そのペプシン抵抗性を有意に増大させた。
【0118】
プロテアーゼ抵抗性(%)対T
mをプロットすることにより、熱安定性とプロテアーゼ抵抗性との間の相関をさらに探索した(
図9B)。一般に、より高いT
mを有するV
Lは、ペプシンに対しより高い抵抗性を示した(両側、P値=0.0012、R
2(Spearman)=0.7344)。トリプシンおよびキモトリプシンの場合、このような相関は観察されなかった(両側、P値=0.5245、R
2(Spearman)=−0.1719[トリプシン];両側、P値=0.5407、R
2(Spearman)=−0.1653[キモトリプシン])。
【0119】
表5に示すV
Hの場合、差は有意ではなかったが(Wilcoxonマッチドペアt検定、両側P値=0.0899[トリプシン]、0.7896[キモトリプシン]および0.7832[ペプシン])、変異体V
Hは、3種のGIプロテアーゼの全てに対してより高い抵抗性(%中央値)を示した(それぞれ野生型および変異体V
Hに関し、77%および82%[トリプシン]、69%および75%[キモトリプシン]ならびに96%および98%[ペプシン])。変異体V
Hの大部分は、ペプシンに対し未変化のまたは僅かに改善した抵抗性を示したが、2種の変異体V
H(HVHM81SおよびHVHP423S)は、100%(HVHM81とHVHP423の両方について)から53%(HVHM81Sについて)および68%(HVHP423Sについて)へと減少した抵抗性を示し、なお、スポット密度解析ツールは、タンパク質バンドを適正に認識できないため、HVHM81Sのペプシン抵抗性は過小評価されたようであった。興味深いことに、2種の変異体V
H(HVHP44SおよびHVHP413S)から、トリプシン抵抗性に関して大きな改善が示され、これらのトリプシン抵抗性は、5%および29%(それぞれHVHP44およびHVHP413)から57%および100%(それぞれHVHP44SおよびHVHP413S)へと改善した。総合すると、変異体は、野生型対応物と同じ程度プロテアーゼ抵抗性である。
【0120】
表5.V
HのGIプロテアーゼ抵抗性
【0121】
【表5-1】
【0122】
【表5-2】
aペプシン抵抗性は、過小評価である。
【0123】
(実施例7)
V
H間およびV
L間の配列同一性
V
H間ならびにV
L間の配列同一性を決定した。解析において、FR配列のみを含めた、即ち、CDR配列を除外した。
【0124】
ClustalW(Thompsonら、1994年)を用いてV
HペアまたはV
Lペアの配列を整列させ、BioEdit Sequence Alignment Editorを用いてV
HペアまたはV
Lペア間のパーセンテージ同一性を計算した。
【0125】
V
Hについてのポジション49および69ならびにV
Lについての48および64におけるCys対置換の生物物理学的意義は、その配列、生殖系列起源ならびにCDR長および組成にかかわりなく普遍的であることが示される。V
Hは、多様な生殖系列起源ならびにCDR長およびアミノ酸組成を有する。特に、CDR3長および組成は、より多様である。そうであるにもかかわらず、これらの構造的変動とは無関係に、ポジション49および69におけるCys対の導入は、Cys49/Cys69ジスルフィド連結を形成し、その発現収量を損なうことなく、VHの非凝集性、熱安定性およびプロテアーゼ安定性における有意な改善をもたらす。国際公開第2006/099747号に記載されている32種のV
Lは、多様である。これらは、カッパーおよびラムダファミリーの両方に属し、多様なVセグメントおよびJセグメント生殖系列起源ならびにCDRアミノ酸組成および長さを有する。特に、CDR3の長さは、6〜11アミノ酸の範囲に及ぶ。異なるクラスを表す8種の非凝集V
L(
図1B)を、上記の32種から選び、Cys48/Cys64置換の生物物理学的意義を評定した。V
Hの場合と同様に、8種のV
LおよびそれらのCys変異体バージョンの並列解析は、構造的変動と無関係に、ポジション48および64におけるCys対の導入は、Cys48/Cys64ジスルフィド連結を形成し、その非凝集状態または発現収量を損なうことなくV
Lの熱安定性およびプロテアーゼ安定性における有意な改善をもたらすことを示した。
【0126】
(実施例8)
ジスルフィドにより安定化されたV
Lファージディスプレイライブラリーの構築
HVLP324S V
Lファージディスプレイライブラリーを、Hussackら(印刷中(c))に記載された方法により二段階で構築した。先ず、HVLP324S V
Lスキャフォールドに基づきランダム化されたCDR3を有するライブラリーを構築した(
図10)。次に、CDR3がランダム化されたライブラリーをスキャフォールドとして用いて、全3種のCDRがランダム化された最終ライブラリーを構築した。
(i)CDR3がランダム化されたV
Lファージディスプレイライブラリーの構築
ssDNA調製に用いたファージがfd−tetV
L24Sであったこと以外は記載されている通りに(Hussackら、印刷中(c))、チミジンの代わりにウリジンを含有するファージssDNA(dU−ssDNA鋳型)を調製した。fd−tetV
L24Sは、そのゲノム内にファージp3遺伝子と融合したHVLP324S V
L遺伝子を有するfd−tetGIIIDファージ(Tanhaら、2001年)である(
図10)。ファージssDNAへのウリジンの取り込みは、記載されている通りに(Hussackら、印刷中(c))、TG1およびCJ236 E.coli細胞に対するファージの力価測定により確認された。ddH
2O中の総計75μgのfd−tetV
L24S ssDNAを調製した。記載されている通りに(Hussackら、印刷中(c))、プライマーV
L24−CDR3、V
L24−CDR3aおよびV
L24−CDR3bを用いたCDR3の同時ランダム化によるヘテロ二本鎖DNAのin vitro合成を行った。プライマーをリン酸化し(Hussackら、印刷中(c))、アニーリング反応において用いた。8.2μLの121.5ng/μL fd−tetV
L24S dU−ssDNA、0.33μLのリン酸化プライマーV
L24−CDR3、V
L24−CDR3aまたはV
L24−CDR3b、1μLのミックス(2μLの10×TMバッファー[500mM Tris−HCl、100mM MgCl
2、pH7.5]、2μLの10mM ATP、1μLの100mM DTT、15μL ddH
2O)および1.5μLの10×TMバッファーを有する総体積15μL中で、93℃5分間、50℃15分間、20℃20分間の、3通りの別個のアニーリング反応を行った。記載されている通りに、共有結合により閉環した環状DNA(CCC−DNA)を合成した(ddH
2O中の総計100μgのCCC−DNAを調製し、SpeedVac(商標)により、255μLにおける82.5μg(323ng/μL)となるまで濃縮した)。23通りの形質転換(11μLのCCC−DNAプラス350μLのエレクトロコンピテントE.coli TG1)を記載されている通りに行った。SOC培地におけるインキュベーション後に、形質転換材料を力価測定し、1Lの2xYT/テトラサイクリン(12.5μg/mL)において一晩37℃、180rpmで成長させた。翌朝、細胞を収穫し、記載されている通りに凍結ライブラリーストックを作製した。A
600nm測定値により、凍結ライブラリーストックの細胞密度を推定した。増幅させたライブラリーファージを上清から精製し、力価測定し(Hussackら(c)を参照)、最終ライブラリー(セクション(ii)を参照)を構築するための出発材料として用いた。形質転換材料(上記を参照)における力価測定実験から、ライブラリーサイズ(形質転換体の数)は、2.3×10
8であると決定された。
(ii)CDR1/CDR2/CDR3ランダム化V
Lファージディスプレイライブラリーの構築
ライブラリー構築の第二のステップにおいて、CDR1およびCDR2をランダム化した。上記の4×10
12cfu CDR3ランダム化ライブラリーファージ(Hussackら(c)を参照)から出発して、dU−ssDNA鋳型を調製した。2mLのファージ(2×10
9/μL)から200μgのssDNAを得た。ファージssDNAへのウリジンの取り込みを上記の通りに確認した。変異原性オリゴヌクレオチドのV
L24−CDR1およびV
L24S−CDR2を用いた変異誘発の第二ラウンドにおいて、dU−ssDNA鋳型を用いた。アニーリングおよびCCC−DNA合成ステップは、上に記すステップと基本的に同一であった。1mLのddH
2O中の総計300μgのCCC−DNAを調製した。記載されている通りに77通りの形質転換(13μLのCCC−DNAプラス200μLのエレクトロコンピテントE.coli TG1)を行った。SOC培地におけるインキュベーション後に、形質転換材料を力価測定し、3Lの2xYT/テトラサイクリン(5μg/mL)において一晩180RPM、37℃で成長させた。凍結ライブラリーストックを作製し、その細胞密度を上に記す通りに推定した。最終体積20mLのPBSにおける上清からライブラリーファージを精製し、TG1に対し力価測定し、インプットファージとしての将来的な第一ラウンドのパニングのため、500μLアリコートにおいて−80℃で凍結して貯蔵した。ライブラリーサイズは、1×10
8形質転換体であると決定された。ライブラリー(非増幅ライブラリー)タイタープレートからの78種のV
Lクローンを、Hussackら(c)に記載されている通りに配列決定に付した。
【0127】
HVLP324S V
Lを、ジスルフィドで安定化された合成V
Lライブラリーの構築のためのスキャフォールドとして用いた。HVLP324Sは、以前に記載されたHVLP324の変異体バージョンであるが、これは、Cys48とCys64との間に追加のジスルフィド連結を有する。以前に記載されたHVLP324V
Lファージディスプレイライブラリーに関して基本的に記載されている通りに、全3種のCDRにおける16(CDR3=9アミノ酸)、17(CDR3=10アミノ酸)および18(CDR3=11アミノ酸)位置に多様性を導入することにより、HVLP324S V
Lファージディスプレイライブラリーを構築した(
図11、Hussackら(c))。ライブラリーサイズは、1×10
8形質転換体という中程度のものであった。非増幅ライブラリーからの78種のV
Lクローンの配列解析は、親V
L(HVLP324S)アミノ酸残基を好む偏りのあるランダム化により、全CDRポジションに多様性が導入されていることを示した。78クローンの配列決定により、2クローンは野生型HVLP324Sと同一で、8クローンはCDR1について野生型配列を有し、2クローンはCDR2について野生型配列を有し、18クローンはCDR3について野生型配列を有し、9クローンはCDR1とCDR2の両方について野生型配列を有し、1クローンはCDR2とCDR3の両方について野生型配列を有し、2クローンはCDR1とCDR3の両方について野生型配列を有することが示された。ライブラリーにおけるこれらクローンの存在は、上記の配列の偏りに寄与する。
【0128】
76種のライブラリークローンのCDR3長分布解析は、大部分(71%)のライブラリークローンが、9アミノ酸のCDR3長を有することを示した。10および11アミノ酸のCDR3長を有するクローンは、それぞれ18%および11%であった。
【0129】
ライブラリー設計、構築および特性評価のさらなる詳細は、
図11の凡例および図面に提示する。用いた特定のオリゴヌクレオチドは、表6に提示されている通りのものであり、表中、N、KおよびRで示すポジションにおける縮重ヌクレオチド残基の表記にはIUPAC命名法が用いられる。
【0130】
表6.分子クローニングのために用いたオリゴヌクレオチドのリスト
【0131】
【表6】
N:A、T、G、またはC。
K:TまたはG。
R:AまたはG。
【0132】
(実施例9)
ジスルフィドにより安定化されたV
Lファージディスプレイライブラリーの検証
HVLP324S V
Lファージディスプレイライブラリーを検証するため、ライブラリーを、2種の異なる被験抗原、即ち、ヒトリゾチームおよびヒト血清アルブミン(HSA)に対するバインダーの選択に付した。最初の結合アッセイ(ファージELISA)により同定された陽性候補バインダー(ファージディスプレイしたV
L)を、E.coliでの発現のためのベクターにサブクローニングした。V
Lバインダーを発現させ、精製し、親和性および安定性に関して解析した。
【0133】
(実施例9a)
パニング
標準パニング技法(例えば、Leeら、2007年;Arbabi−Ghahroudiら、2009年aを参照)により、抗ヒトリゾチームV
Lの選択を行った。要約すると、Nuncマイクロタイターウェル(VWR International, Ltd.、カナダ、オンタリオ州ミシサガ)を、無菌PBS(3.2mM Na
2HPO
4、0.5mM KH
2PO
4、1.3mM KCl、135mM NaCl、pH7.4)における100μLの1mg/mLヒトリゾチーム(Sigma−Aldrich、カナダ、オンタリオ州ミシサガ)で一晩4℃にてコーティングした。ウェルを無菌PBSで3×洗浄し、ペーパータオル上で水分を切り、無菌PBSにおける150μLの2%(w/v)ミルク(2%MPBS)で37℃2時間ブロッキングした。ウェルからブロッキング剤を除去し、1%MPBSにおける100μLのライブラリーファージ(実施例8、セクション(ii)において調製された増幅ファージ(5×10
11cfu;37℃で1.5時間プレインキュベート)をウェルに添加し、1.5時間37℃でインキュベートした。PBST(無菌PBS中の0.05%(v/v)Tween−20)で10×洗浄した後、ウェルを100μLの新たに調製した124mMトリエチルアミンで10分間室温にてインキュベートし、8分の時点で上下にピペッティングすることによりファージを溶離させた。溶離したファージ溶液を1.5mLマイクロチューブ中で、50μLの1M Tris−HCl、pH7.5と混合することにより中和し、感染期まで氷上で保持した。50mLの無菌Falconチューブ中に2×5mLの指数増殖E.coli TG1細胞(OD
600=約0.5)を調製し(Arbabi−Ghahroudiら、2009年a)、そこから2mLを37℃で30分間、145μLの溶離ファージ(下に記す通り溶離ファージの力価を決定するために5μLを取り分けた)に感染させた。感染した細胞を、Sorval Legend RTローターおよび遠心分離機(Thermo Fisher Scientific、カナダ、オンタリオ州ネピアン)を用いて4,000rpm、4℃で20分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットを1mLの2xYTに再懸濁し、2xYT寒天/5μg/mLテトラサイクリン(2xYT/Tet)の入った3枚の大型ペトリ皿上に均等に広げた。ペトリ皿を37℃で一晩インキュベートした。翌日、大型ペトリ皿から増幅ファージを回収した。要約すると、10〜15mLの無菌PBS(容量はコロニー密度に応じて添加)を各プレートに添加し、ガラススプレッダーを用いて細胞を擦り取り、無菌50mL無菌Falconチューブに収集した。前記と同様に細胞をもう一度擦り取り、前のものと一緒にプールした。懸濁液を、Sorval Legend RTローターおよび遠心分離機(Thermo Fisher Scientific)を用いた20分間、4,000rpm、4℃での遠心分離により、細胞ペレットおよび上清へと分画した。基本的に記載されている通りに(Leeら、2007年)、上清から増幅ファージを精製した。要約すると、無菌0.22μmフィルターにより前濾過したファージ上清に、50mL無菌Falconチューブ中1/5容の20%PEG−8000/2.5M NaClを添加し、混合物を氷上で1時間インキュベートした。溶液を、Sorval Legend RTローターおよび遠心分離機(Thermo Fisher Scientific)を用いて20分間、4,000rpm、4℃で遠心分離した。ファージペレットを3mLの無菌PBSに再溶解し、15mL無菌Falconチューブに移し、1/5容の20%PEG−8000/2.5M NaCl(0.6mL)と混合し、氷上で20分間インキュベートした。ファージ溶液を、Sorval Legend RTローターおよび遠心分離機(Thermo Fisher Scientific)を用いて4,000rpm、4℃で20分間遠心分離し、ファージペレットを、ペレットサイズに応じた溶解体積である、0.5〜1mLの無菌PBSに溶解した。無菌1.5mL無菌マイクロチューブにおいて、ファージ溶液を0.1mL容量に分注した。下に記す通りに増幅ファージの力価を決定した。
【0134】
パニングの第二ラウンドのため、上に記す従来のパニングと並行して、サーモパニング(thermopanning)も行い、そこでは、第一ラウンドからの無菌PBS中の増幅ファージを、1.5mL無菌マイクロチューブ中で65℃で2時間加熱し、その後遠心分離し、(パニングの第二ラウンドにおける)結合のためにヒトリゾチームをコーティングしたウェルにファージ上清を添加した。残りのステップは全て、両方のパニング方法で同じであった。並行パニングをさらに2ラウンド継続した。それぞれパニングの第二、第三および第四ラウンドについて、洗浄は、12×、15×および15×であった。
【0135】
並行したサーモパニングが行われない以外はヒトリゾチームについて記載されている通りに、ヒト血清アルブミンに対するパニング(従来のパニング)を行った。パニング後に、タイタープレートからのクローンにおいて(溶離ファージから得られる)、標準ファージELISA(Harrisonら、1996年;Tanhaら、2001年;Hussackら、印刷中(c))を行って、ヒトリゾチームまたは血清アルブミンとの結合が陽性のV
Lをディスプレイするファージを同定した。
【0136】
(実施例9b)
ファージ力価の決定
標準技法を用いて、ファージ力価を決定した。溶離ファージの力価を決定するため、PBSにおいて溶離ファージの10
−1〜10
−4希釈物を作製した(18μLのPBSに2μLのファージを添加して、10
−1希釈物をなど作製した)。10μLの各希釈物を、100μLの指数増殖E.coli TG1細胞(OD
600=約0.5)と混合し、E.coli TG1細胞のファージ感染が起こるよう、混合物を37℃で30分間インキュベートした。感染したTG1細胞を、2xYT/Tet寒天ペトリ皿上に蒔き、37℃で一晩インキュベートした。コロニーの数を用いて、溶離ファージの力価(cfu/mL)を決定した。fdTGIIIおよび−96GIIIプライマー(表6)を用いて、コロニーに対するコロニー−PCRを行って、インサートの存在を検証し(陽性ヒットは、500bp前後のサイズを生じた)、DNA配列決定のための鋳型を提供した。配列を解析し、DNASTAR Lasergene8により操作した。
【0137】
要約すると、増幅ファージ(インプットファージ)の力価を決定するため、10
−3、10
−6、10
−8および10
−10のファージ希釈物を作製した。10μLの各希釈ファージを100μLの指数増殖TG1細胞と混合し、細胞のファージ感染が起こるように混合物を37℃で30分間インキュベートした。その後、無菌使い捨てスプレッダーを用いて、ファージ感染細胞を2xYT r/Tet寒天培地の入ったペトリ皿上に広げ、クリーンベンチ内に5分間放置した。プレートを一晩37℃でインキュベートした。翌朝、プレートにおけるコロニー力価を用いて、増幅ファージの力価を決定した。
【0138】
ライブラリーの有用性を示すため、4ラウンド(four rounds)のためヒトリゾチームおよびヒト血清アルブミンに対しライブラリーをパニングした。ヒトリゾチームに対するパニングの事例において、第一ラウンドにおいて従来のパニングを行い、続いて第2ラウンドから従来のパニングおよびサーモパニングを並行して行った。サーモパニングアプローチにおいて、インプットファージを65℃で2時間インキュベートし、遠心分離して、あらゆる可能な凝集体を除去し、結合のためにリゾチームをコーティングしたウェルに上清を添加した。従来のパニングアプローチにおいて、インプット(増幅)ファージをリゾチームをコーティングしたウェルに熱処理せず直接添加した。サーモパニングを適用して、従来のパニングと比較して安定な(熱安定なかつ/または非凝集性の)V
Lバインダーを優先的に富化するかどうかを観察したが、これは、安定および不安定なV
Lバインダーに関して無差別的であると予想された。
【0139】
表7は、アウトプットファージ力価(または溶離ファージ力価)に関するヒトリゾチームに対するパニングの結果を示す。一般に、アウトプットファージ力価は、従来のパニングと比較して、サーモパニングアプローチでは3〜4桁低い。これは、用いたさらに低いインプットファージ力価および熱処理の間の凝集(データ図示せず)に起因するさらなるファージ損失(恐らく、凝集ファージによりディスプレイされたV
L)による可能性がある。
【0140】
表7.室温(従来のパニング)対65℃−2時間(サーモパニング)の選択条件下で行ったパニングのためのファージ力価。データは、ヒトリゾチームに対するパニングのためのものである。cfu:コロニー形成単位。
【0141】
【表7】
ラウンド3および4からのファージELISAおよび配列解析により、固定化ヒトリゾチームに対し多様なな親和性を有する9種の抗ヒトリゾチームV
Lが同定された(
図13および表8)。解析した総計177種のV
L(それぞれラウンド3およびラウンド4に対し101種のV
Lおよび76種のV
L)のうち4ラウンドのパニングの後、ラウンド3において同定された総計9クローンのうち5クローン、HVLHLRN;HVLHLDS;HVLHLNE;HVLHLNN;HVLHLFLが生存した(
図12)。これらは、サーモパニングアプローチ(65℃、2時間)において、それぞれHVLHLRNおよびHVLHLDSについての54.2%および25%、続いてそれぞれHVLHLNE、HVLHLNNおよびHVLHLFLについての8.3%、8.3%および4.2%で表された。対照的に、従来のパニングアプローチ(室温[RT])を用いて、HVLHLRNおよびHVLHLDSは表されず、HVLHLNE、HVLHLNNおよびHVLHLFLは、それぞれ28.6%、42.9%および28.6%の相対頻度で生じた(
図12)。HVLHLRNおよびHVLHLDSも、サーモパニングのラウンド3における優勢クローンであり、従来のパニングのラウンド3においては僅かに存在した。HVLHLYS、HVLHLAQ、HVLHLQIおよびHVLHLEMは、ラウンド4パニングにおける従来のパニングまたはサーモパニングのいずれによっても選択されなかった。
【0142】
表8.パニングのラウンド3および4から単離された抗ヒトリゾチームV
Lおよび抗ヒト血清アルブミンV
Lの特性。
【0143】
【表8】
ND、決定されず;RT、室温;Agg.、凝集体。%は%凝集体。
【0144】
ヒト血清アルブミンに対する4ラウンドのパニングの後、ファージELISAによる50クローンのスクリーニングおよび配列決定は、1種の優勢V
L、即ち、ヒト血清アルブミンに対する結合がファージELISAにより陽性であるHVLHSA1を明らかにした(
図13;表8)。
【0145】
その後、10種の抗リゾチームファージV
Lバインダーおよび抗アルブミンファージV
Lバインダーを全て、下に記すとおりさらなる特性評価のために加工した。
【0146】
(実施例9c)
抗ヒトリゾチームV
Lおよび抗ヒト血清アルブミンV
Lの生物物理学的特性評価
ファージによりディスプレイされるV
Lクローンから開始し、他の抗体ドメインについて上に記すとおりの標準技法によりV
Lをクローニングし、発現させ、精製した。その後、凝集状態に関しては分子ふるいクロマトグラフィーにより、熱安定性に関してはCDにより、その結合親和性および特異性に関しては表面プラズモン共鳴により、V
Lを解析した。
【0147】
他のドメインについて記載されている通りに、9種の抗ヒトリゾチームV
LおよびHVLHSA1 V
L(
図13;表8)をクローニングし、E.coliにおいて発現させ、標準技法により精製した。V
Lは、そのC末端にHis6タグを有するため、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
図16Aは、最高溶出ピークが400mAU(HVLHLEM)から2400mAU(HVLHLRN)のA
280範囲を示す精製V
LのIMACクロマトグラムプロファイルを示す。V
LのSDS−PAGEプロファイルは、V
Lが高度に純粋であることを示す(
図16B)。そのIMACクロマトグラムプロファイルから判断すると、HVLHSA1の発現収量も高かった(データは示さず)。よって、V
Lは、E.coliにおいて高純度、高収量で発現することができる。
【0148】
その後、Superdex(商標)75分子ふるいクロマトグラフィーによりV
Lをその凝集挙動に関して解析した。記載されている通りに(Arbabi−Ghahroudiら、2010年)各V
Lについての%凝集体(または%単量体)も決定した。
図14Aに示す通り、3種の抗ヒトリゾチームV
L(HVLHLRN、HVLHLEMおよびHVLHLDS)は、純粋に単量体(非凝集)である一方、残りのV
Lバインダーは、7%〜17%に及ぶ%凝集体を有して凝集していた(表8)。HVLHSA1 V
Lも、他のドメインに関して記載されている通りに分子ふるいクロマトグラフィーにより解析した。クロマトグラムは、V
Lが100%非凝集単量体であることを実証する対称の単量体ピークを生じた(
図14A;表8)。これらの結果は、非規範Cys48/Cys64(またはCys49/Cys69)ジスルフィド連結の特色を有するV
L(またはV
H)ライブラリーが、非凝集バインダーをもたらすことを示す。
【0149】
V
Lバインダーの熱安定性の尺度を得るため、他のドメインに関して以前に記載された通りにCDによりV
Lの融解温度(T
m)を決定した。
図14Bは、62℃〜74℃の範囲にある抗ヒトリゾチームV
Lの融解プロファイルを示す。計算されたT
mを表8に記録する。抗アルブミンHVLHSA1のT
mも決定し、それが71℃と高いことを示した(
図14B;表8)。これらのT
mは、非規範ジスルフィド連結のないV
Lよりも有意に高く、このことから、非規範Cys48/Cys64(またはCys49/Cys69)ジスルフィド連結の特色を有するV
L(またはV
H)ライブラリーにより、より安定なバインダーがもたらされることが実証される。ヒトリゾチームパニングの事例において、非凝集性であり(表8)、最高のT
mを有するHVLHLRNおよびHVLHLDSはまた、サーモパニングによって、凝集し熱安定性が低いクローンよりも、非常に著しく富化されたクローンであるが、それは、従来のパニングによっては富化されなかった。これは、どちらのパニングアプローチも、非凝集性の熱安定なバインダーをもたらすが、サーモパニングは、これらを富化することにおいてより効率的であることを実証する。(非凝集性かつ熱安定な、HVLHLEMがサーモパニングによりラウンド4においてまだ選択されていなかったという事実は、パニングの結合ステージにおけるその非常に低い親和性に起因し得た[
図12;表8])。
図14Cは、抗リゾチームV
Lおよび抗アルブミンV
LのT
mと%単量体との間に強い正の相関が存在することを示し(R
2=0.8568;P値(両側)=0.0013、Spearman r=0.9061)、ここことは、V
LのT
mが高ければ高いほど、V
Lは、非凝集となる可能性がより高くなることを意味する。これは、非規範ジスルフィド連結の特色を有するV
L/V
Hライブラリーは、この特色なしのライブラリーよりも熱安定なV
L/V
Hバインダーをもたらすため、これは同様により非凝集性のV
L/V
Hバインダーをもたらすことも意味する。治療薬として、非凝集性かつ熱安定なV
L/V
Hバインダーは、さらに有効である。
【0150】
その抗原である、ヒトリゾチームに対する抗ヒトリゾチームV
Lの親和性(K
D)も決定した。BIACORE3000(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)により、固定した抗ヒトリゾチームV
Lバインダーに対するヒトリゾチームの結合を決定した。298共鳴単位(RU)、312RU、295RU、339RU、315RU、412RU、370RU、345RUおよび349RUの各V
Lバインダー(それぞれHVLHLAQ、HVLHLNE、HVLHLEM、HVLHLYG、HVLHLRN、HVLHLNN、HVLHLQI、HVLHLYSおよびHVLHLDS)を、研究用グレードのCM5センサーチップ上に固定した。製造業者によって供給されるアミンカップリングキットを用いて、pH4.5の10mM酢酸中の10μg/mL濃度で固定を行った。ヒトリゾチームを、HBS−EPバッファー(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005%P20サーファクタント)において流速0.5mL/分でSuperdex75カラム(GE Healthcare)に通して、Biacore解析前にあらゆる可能な凝集体を排除した。結合試験のため、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005%サーファクタントP20を含有する10mM HEPES、pH7.4において25℃で解析を行った。用いた流速は20μL/分であった。再生のため、表面をランニングバッファーで15分間洗浄した。BIAevaluation4.1ソフトウェアによりデータを解析した。結合プロファイルおよび計算されたK
Dを
図15および表8に示す。SPRプロファイル(
図15)から、抗ヒトリゾチームV
Lが、その標的抗原である、リゾチームと実際に結合することを認めることができ、ファージELISAにより得られた結合結果を確認することができる。計算された結合親和性(K
D)は多様であり、その多くは高親和性を有する(K
D=0.05μM〜0.2μM)。
【0151】
上記の他のドメインに関して記載されている通りに表面プラズモン共鳴により、ヒト血清アルブミンに対するV
LのK
Dを決定した。要約すると、BIACORE3000(GE Healthcare)を用いたSPRにより、固定したヒト血清アルブミンとV
Lとの結合を決定した。およそ1,600RUのヒト血清アルブミン、1,900RUのウシ血清アルブミンおよび2,200RUの卵白アルブミンを研究用グレードのCM5センサーチップ上に固定した。タンパク質表面と正確に同じ仕方で、エタノールアミンでブロッキングした表面を参照として調製した。製造業者によって供給されるアミンカップリングキットを用いて、10mM酢酸バッファーpH4.5中の20μg/mL濃度で固定を行った。V
Lを、Superdex75カラム(GE Healthcare)に通して、Biacore解析前にあらゆる可能な凝集体を排除した。結合実験のため、25℃で、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005%サーファクタントP20を含有する10mM HEPES、pH7.4において解析を行った。用いた流速は40μL/分であり、試料体積は60μLであった。再生のため、表面をランニングバッファーで10分間洗浄した。BIAevaluation4.1ソフトウェアによりデータを解析した。
図17は、V
Lが、その標的抗原である、ヒト血清アルブミンと結合することを明らかに示す。計算されたK
Dは、0.8μMであると決定された(表8)。V
Lは卵白アルブミンまたはウシ血清アルブミンと結合しなかったため、結合は特異的であった。
【0152】
よって、結果は、非規範ジスルフィド結合を有するV
HドメインおよびV
Lドメインが、高い親和性、安定性(非凝集性および熱安定性)ならびに発現収量を有する抗原バインダーの供給源であるV
H/V
L合成ライブラリーを構築するためのスキャフォールドとして実施可能であることを示す。
【0153】
(実施例10)
ジスルフィドにより安定化されたV
Hファージディスプレイライブラリーの構築
ポジション49および69における特別なジスルフィド連結により安定化されたV
Hスキャフォールドに築いた、ランダム化CDRを有するV
Hファージディスプレイライブラリーを作製するための実験を設計した。ライブラリーを構築するため、V
Hファージディスプレイライブラリー(HVHP430LGH3)を鋳型として用いて、V
Lライブラリーに関して上に記す方法および以前に記載された方法(Sidhuら、2000年;Hussackら(c))を用いて、2個の選択されたアミノ酸残基(49Serおよび69Ile)をシステインで置き換えることにより、追加のジスルフィド連結を導入した。HVHP430LGH3ファージディスプレイライブラリーは、ファージミドpMED−1にクローニングされ、タンパク質3遺伝子と融合したCDRがランダム化されたヒトV
H遺伝子を有するファージミドベクターベースのライブラリーである(「Non−aggregating human V
H domains」PCT公開、国際公開第2009/079093号)。
【0154】
基本的に上に記す通りならびにHussackら(c)およびSidhuら、2000年に記載されている通りに、ジスルフィドにより安定化されたV
Hファージディスプレイライブラリーを構築する手順を行った。要約すると、システインで置き換えられるよう選択された2個のアミノ酸残基における部位特異的変異誘発の2回の別個のラウンドにより、構築を行った。第一に、HVHP430LGH3ライブラリーから、ファージ(4×10
12cfu(コロニー形成単位))に感染させたE.coli CJ236を用いてdU−ssDNA(ウリジン含有一本鎖ファージDNA)を調製した。上に記す通りおよびHussackら(c)に記載されている通りにE.coli TG1およびCJ236に対する力価を決定することにより、dU−ssDNAへのウリジンの取り込みを確認した後、49Serを49Cysへと変異誘発するアニーリングのためのプライマーKT124のリン酸化、ライゲーションおよび重合を包含する一連のin vitro DNA合成反応を、20μgのdU−ssDNAを用いてその後に行った。in vitro DNA合成反応は、合計して23μgのヘテロ二本鎖DNAをもたらした。続く、形質転換毎に50μLのE.coli TG1コンピテント細胞と、564ngのヘテロ二本鎖DNAを用いた10種の別個の形質転換は、合計して1.1×10
10cfuの多様性を生じた。プライマー(M13RP aまたはbおよび−96GIII)を用いたPCRによるクローンの選択は、約50%(16クローンのうち8クローン)のクローンが、49Serから49Cysへの変異を有したことを明らかにした。変異誘発の次のラウンドのため、M13K07ヘルパーファージによりレスキューすることにより、49Serから49Cysへ変異導入したファージミドライブラリー((HVHP430LGH3C1))からファージを調製し、2.1×10
13cfu/mLのファージ力価をもたらした。その後、(HVHP430LGH3C1)からのファージ(4×10
12cfu)を用いてE.coli CJ236からdU−ssDNAを調製し、続いて8μgのdU−ssDNAおよびプライマーKT125を用いたin vitro DNA合成反応を行い、アニーリングして別のアミノ酸残基を変異誘発させ(69Ileから69Cys)、合計して12μgのヘテロ二本鎖DNAをもたらした。続く、形質転換毎に50μLのE.coli TG1コンピテント細胞と230ngのヘテロ二本鎖DNAを用いた22種の別個の形質転換は、合計して5.3×10
9cfuのライブラリーサイズを生じた。二重変異(49Serから49Cysおよび69Ileから69Cys)を有するV
H遺伝子を表すライブラリーのパーセンテージを決定するため、プライマー(M13RP aまたはbおよび−96GIII)を用いたPCRにより65個のコロニーをスクリーニングし、配列決定し、解析し、28%(65クローンのうち18クローン)のクローンが二重変異(49Serから49Cysおよび69Ileから69Cys)を有し、35%(65クローンのうち23クローン)が単一の変異(49Serから49Cys)を有し、15%(65クローンのうち10クローン)が単一の変異69Ileから69Cysを有し、22%(65クローンのうち14クローン)が変異なしであったことを明らかにした。よって、両方のCys変異を有するライブラリー(HVHP430LGH3C2)のサイズを、クローンの選択の結果に従い、1.5×10
9cfu(=5.3×10
9×28%)に補正した。300mLの2xYTにおいてHVHP430LGH3C2ファージディスプレイライブラリーを増幅させ、ライブラリー細胞を15mLの10%グリセロールに再懸濁し、その後、1mLアリコートとして−80℃で維持した。
【0155】
ライブラリーの多様性は高く(5.3×10
9形質転換体)、その全V
Hメンバーにおいて追加の安定化変異(49Serから49Cysおよび69Ileから69Cys)を有した。ライブラリーは、そのV
HメンバーにおけるCys49/Cys69ジスルフィド連結の存在のため、本技術分野で公知の標準選択技法およびパニング技法を用いることにより、標的抗原に対し高い安定性を有するバインダーを生じる筈である。
本発明の非限定的な実施形態
実施形態1は、フレームワーク領域(FR)に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を含む免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物を含む。実施形態1は、フレームワーク領域(FR)に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を含む変異体免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物であって、安定性の増大、融解温度の増大、溶解性の増大および凝集の減少から選択される1または複数の改善を有する組成物をさらに含む。実施形態1に記載の変異体組成物の改善は、熱リフォールディング効率の改善、プロテアーゼ消化に対する抵抗性の増大、室温以上での、4℃でのまたは0℃未満での貯蔵寿命の増大から選択され得る。実施形態1に記載の変異体組成物の改善は、ヒト被験体に投与したときに、非規範ジスルフィド結合を含まない対応する組成物と比較した場合、機能性の増大または延長としてさらに特徴付けることができる。
【0156】
実施形態2は、実施形態1に記載の組成物であって、免疫グロブリン(immunoglobuin)スキャフォールドがV
HスキャフォールドまたはV
Lスキャフォールドから選択され、該V
Hスキャフォールドが、FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含み、該非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入されたCys残基間に形成され;該V
Lスキャフォールドが、FRに少なくとも1個の非規範ジスルフィド結合を含み、該非規範ジスルフィド結合が、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入されたCys残基間に形成される、組成物を含む。
【0157】
実施形態3は、スキャフォールドが、より大きな抗体タンパク質またはシングルドメイン抗体(sdAb)、scFv、Fab、F(ab)
2からなる群から選択される断片または成熟免疫グロブリンの一部である、実施形態1に記載の組成物を含む。実施形態4は、成熟免疫グロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgEおよび/またはIgMからなる群から選択される、実施形態3に記載の組成物を含む。
【0158】
実施形態5は、免疫グロブリンスキャフォールドがV
Hである、実施形態1に記載の組成物を含む。実施形態5は、免疫グロブリンスキャフォールドが、V
H1ファミリー、V
H2ファミリーまたはV
H3ファミリーから選択される、実施形態1に記載の組成物をさらに含む。実施形態6は、V
Hが、V
H3ファミリーのものである、実施形態5に記載の組成物を含む。さらに別の一実施形態において、V
H免疫グロブリンスキャフォールドは、配列番号2、4、6、8および70〜83からなる群のうち1または複数の配列またはそれと実質的に同一の配列から選択される。一実施形態において、実質的に同一の配列は、本開示されている配列と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5残基異なる。
【0159】
実施形態7は、免疫グロブリンスキャフォールドが、V
Lである、実施形態1に記載の組成物を含む。実施形態8は、V
Lが、カッパーまたはラムダファミリーのものである、実施形態7に記載の組成物を含む。さらに別の一実施形態において、V
L免疫グロブリンスキャフォールドは、配列番号10、12、14、16、18、20、22および24からなる群のうち1または複数の配列またはそれと実質的に同一の配列から選択される。一実施形態において、実質的に同一の配列は、本開示されている配列と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5残基異なる。
【0160】
実施形態9は、1または2以上の非規範ジスルフィド結合が、変異によりFR2およびFR3に導入されたシステイン間に形成される、実施形態1〜8のうちいずれか一実施形態に記載の組成物を含む。実施形態10は、Cys残基が、Kabatナンバリングに基づくポジション49および69に導入される、実施形態5または6に記載の組成物を含む。実施形態11は、Cys残基が、Kabatナンバリングに基づくポジション48および64に導入される、実施形態7または8に記載の組成物を含む。
【0161】
実施形態12は、スキャフォールドが、多量体化される、実施形態1〜11のうちいずれか一実施形態に記載の組成物を含む。一実施形態において、実施形態12から得られた多量体は、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体または八量体を含む。
【0162】
実施形態13は、スキャフォールドが、Fc断片、標的化配列、シグナル配列および精製タグまたはこれらの任意の組み合わせから選択される第二の配列と融合される、実施形態1〜12のうちいずれか一実施形態に記載の組成物を含む。一実施形態において、第二の配列の少なくとも1単位は、本発明のスキャフォールドを含む少なくとも1個の単量体と融合される。一実施形態において、第二の配列の少なくとも1単位は、実施形態12に記載の組成物と融合される。
【0163】
実施形態14は、免疫グロブリンスキャフォールドが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および70〜83からなる群から選択される配列またはそれと実質的に同一の配列またはその断片(ただし、実質的に同一の配列は、規範および非規範ジスルフィド結合の両方を保持し、CDR1、CDR2およびCDR3を含む残基は、任意の適切な配列となることができる)のフレームワーク領域を含む、実施形態1〜13のうちいずれか一実施形態に記載の組成物スキャフォールド(composition scaffold)を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号2またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号4またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号6またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号8またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号10またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号12またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号14またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号16またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号18またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号20またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号22またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号24またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号70またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号71またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号72またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号73またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号74またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号75またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号76またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号77またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号78またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号79またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号80またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号81またはその機能的断片を含む。特定の一実施形態において、組成物は、配列番号82またはその機能的断片を含む。特異的な一実施形態において、組成物は、配列番号83またはその機能的断片を含む。特異的な一実施形態において、組成物は、配列番号84またはその機能的断片を含む。
【0164】
実施形態15は、実施形態1〜14のうちいずれか一実施形態に記載の組成物をコードする核酸を含む。実施形態16は、実施形態15に記載の核酸を含む発現ベクターを含む。実施形態17は、実施形態16に記載の発現ベクターを含む宿主細胞または生物を含む。一実施形態において、本発明の免疫グロブリンスキャフォールドをコードする核酸配列は、本発明の開示されている組成物と実質的に同一の配列をコードする。一実施形態において、実質的に同一の配列は、本開示されている配列と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5残基異なる。一実施形態において、核酸は、宿主細胞または生物における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、細菌における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、E.coliにおける発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、酵母における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、非ヒト動物細胞における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、哺乳類細胞における発現のためにコドン最適化されている。一実施形態において、核酸は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。
【0165】
実施形態18は、実施形態2に記載の少なくとも1種の免疫グロブリンスキャフォールドを含む組換えライブラリーであって、該免疫グロブリンスキャフォールドが、ライブラリー当たり少なくとも10
5、少なくとも10
6、少なくとも10
7、少なくとも10
8、少なくとも10
9または10
9を超えるクローンの多様性を提供する多数の適切なCDR配列をさらに含む、組換えライブラリーを含む。
【0166】
実施形態19は、免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物の安定性を改善する方法であって、フレームワーク領域に1または2以上の非規範ジスルフィド結合を導入するステップを含む方法を含む。実施形態19に記載の方法は、組換え技術を用いて、免疫グロブリン配列における第一のコドンおよび第二のコドンを、各ポジションにおいてシステインのコドンと置き換える方法であって、該免疫グロブリン配列が、V
Hスキャフォールドであり、該第一のコドンが、Kabatナンバリングを用いてポジション49に相当し、該第二のコドンが、Kabatナンバリングを用いてポジション69に相当する方法をさらに含む。実施形態19に記載の方法は、組換え技術を用いて、免疫グロブリン配列における第一のコドンおよび第二のコドンを、各ポジションにおいてシステインのコドンで置き換える方法であって、該免疫グロブリン配列が、V
Lスキャフォールドであり、該第一のコドンが、Kabatナンバリングを用いてポジション48に相当し、該第二のコドンが、Kabatナンバリングを用いてポジション64に相当する方法をさらに含む。本発明は、発現ライブラリーを作製するための、実施形態19に記載の方法の使用をさらに含む。一実施形態において、ライブラリーは、実施形態18に記載のライブラリーである。
【0167】
実施形態20は、安定性の増大、融解温度の増大、溶解性の増大および凝集の減少から選択される1または複数の改善を有する免疫グロブリンスキャフォールドを含む変異体組成物を作製する方法であって、実施形態19に記載の方法を含む。実施形態20に記載の変異体組成物の改善は、熱リフォールディング効率の改善、プロテアーゼ消化に対する抵抗性の増大、室温以上での、4℃でのまたは0℃未満での貯蔵寿命の増大から選択され得る。実施形態20に記載の変異体組成物の改善は、ヒト被験体に投与したときに、非規範ジスルフィド結合を含まない対応する組成物と比較した場合、機能性の増大または延長としてさらに特徴付けることができる。
【0168】
実施形態21は、治療薬である、実施形態1から14のうちいずれか1または複数に記載のいずれか1または複数の組成物を含む。本発明は、実施形態21に記載の組成物を、薬学的に許容される該組成物のためのキャリアまたは賦形剤中にさらに含む。
【0169】
実施形態22は、実施形態21に記載の組成物であって、それを必要とする被験体に投与される組成物の使用を含む。実施形態23は、処置を必要とする被験体に投与される薬剤としての実施形態21に記載のいずれか1または複数の組成物の使用を含む。
【0170】
実施形態24は、免疫グロブリンスキャフォールドを含む組成物が、非ヒト動物に由来する、実施形態1から14のうちいずれか1または複数に記載のいずれか1または複数の組成物を含む。一実施形態において、非ヒト動物は、あらゆる脊椎動物、特に、鳥類、両生類、爬虫類、哺乳類、ラクダ科の動物、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ、ウマまたは非ヒト霊長類から選択される脊椎動物を包含する。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、ヒトである。一実施形態において、免疫グロブリンスキャフォールドは、ラクダ科の動物である。一実施形態において、ラクダ科の動物の種は、ラマ、アルパカおよびラクダからなる群から選択される。一実施形態において、ラクダ科の動物のスキャフォールドは、V
H領域、V
LまたはV
HH領域のうちいずれか1または複数に由来する。
【0171】
【化9】
【0172】
【化10】
【0173】
【化11】
【0174】
【化12】
【0175】
【化13】
【0176】
【化14】
【0177】
本明細書に記載されている実施形態および実施例は、説明目的のものであり、請求されている本発明の範囲を限定するよう意味づけられていない。代替物、修正物および均等物を包含する上記の実施形態の変種は、本特許請求の範囲に包含されていることが本発明者らにより企図される。さらに、記述されている特色の組み合わせは、本発明に係る解明に必要とされないことがある。
【0178】
参考文献
本明細書および本願全体を通じて参照されているあらゆる特許、特許出願および刊行物は、参照により本明細書に援用する。
【0179】
【数1】
【0180】
【数2】
【0181】
【数3】
【0182】
【数4】
【0183】
【数5】
【0184】
【数6】