特許第6093725号(P6093725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093725
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】鋳型造型用型
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/10 20060101AFI20170227BHJP
   B22C 7/00 20060101ALI20170227BHJP
   B22C 15/24 20060101ALI20170227BHJP
   B22C 23/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B22C9/10 G
   B22C7/00 111
   B22C7/00 112B
   B22C15/24 Z
   B22C23/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-47628(P2014-47628)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-171718(P2015-171718A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】391012796
【氏名又は名称】ヨシワ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正弘
(72)【発明者】
【氏名】榎田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】川元 健嗣
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−108247(JP,A)
【文献】 特開平09−052144(JP,A)
【文献】 特開平06−190506(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175734(JP,U)
【文献】 実開昭57−003446(JP,U)
【文献】 特開昭59−107746(JP,A)
【文献】 特開平07−116777(JP,A)
【文献】 特開平07−279153(JP,A)
【文献】 実開昭58−091433(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0158870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 7/00, 9/10,15/24,23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型形状に対応する鋳型造型空間を有し、該鋳型造型空間に鋳物砂を満たして固化させることにより鋳型を造型する鋳型造型用型であって、
上型及び該上型に対向配置された下型を有し、上記上型及び上記下型の各造型面間に型閉じ状態で形成される上記鋳型造型空間に粘結剤を添加・混練した珪砂からなる上記鋳物砂を満たすとともに当該鋳物砂に硬化性ガスを通過させることにより固化させて上記鋳型を得るよう構成され、
上記上型及び上記下型の少なくとも一方は、スライド孔を有する型本体と、上記スライド孔にスライド移動可能に嵌挿されるスライド型とを備え、
上記鋳型造型用型の上記鋳型造型空間を形成する造型面を含む領域の全部又は一部は、超高分子量ポリエチレンからなり、
上記型本体の上記スライド孔内周面を含む領域及び上記スライド型の上記スライド孔内周面との対向面を含む領域の少なくとも一方は、超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする鋳型造型用型。
【請求項2】
請求項に記載の鋳型造型用型において、
上記上型及び上記下型の少なくとも一方には、上記鋳型造型空間の気体を型外に排出する複数の排気孔が貫通形成され、
上記上型及び上記下型の少なくとも一方の上記排気孔内周面を含む領域は、超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする鋳型造型用型。
【請求項3】
請求項又はに記載の鋳型造型用型において、
上記下型には、上下に延びる複数のガイド孔と、該各ガイド孔に上下動可能に挿通され、造型した上記鋳型を上記上型及び上記下型から脱型する際、上方に移動して上記鋳型を下方から押圧する押圧ピンとが設けられ、
上記下型の上記ガイド孔内周面を含む領域は、超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする鋳型造型用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型を造型する鋳型造型用型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に開示されている鋳型造型用型は、上型及び該上型に対向配置された下型を備え、上型及び下型の各造型面間に型閉じ状態で形成される鋳型造型空間に鋳物砂を満たして固化させることにより鋳型を造型している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−12554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の如き鋳型造型用型は、一般的に、金属からなり、鋳物砂は圧縮エアにより圧送されながら上記鋳型造型空間に導入される。これら鋳型造型空間に圧送されながら導入される鋳物砂は、金属より硬いため、上型及び下型の各造型面に激しく接触することで造型面が摩耗してしまう。各造型面の摩耗が進むと、造型する鋳型の精度がばらついて不良品となってしまうので、上型及び下型における各造型面に対してメンテナンスを定期的に行う必要が生じ、コストが嵩むとともにメンテナンス作業が煩雑であった。
【0005】
また、上述の如き鋳型造型用型の造型面には、造型した鋳型を脱型する際に当該鋳型の破損を防ぐために、一般的に、抜き勾配を大きく設定してあり、これによって鋳物を製作すると、鋳物の仕上げ加工前の重量が上がって扱い難くなるだけではなく、仕上げ加工時における加工量が多くなることから加工コストが嵩むという問題もある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、メンテナンスを無くすか、又は、メンテナンス周期を延ばすことができ、しかも、製造した鋳物の仕上げ加工前の重量を下げることができる低コストな鋳型造型用型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、鋳型を造型する上型及び下型の各造型面における鋳物砂に対する摩擦抵抗が極めて低くなるような工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、鋳型形状に対応する鋳型造型空間を有し、該鋳型造型空間に鋳物砂を満たして固化させることにより鋳型を造型する鋳型造型用型において、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、上型及び該上型に対向配置された下型を有し、上記上型及び上記下型の各造型面間に型閉じ状態で形成される上記鋳型造型空間に粘結剤を添加・混練した珪砂からなる上記鋳物砂を満たすとともに当該鋳物砂に硬化性ガスを通過させることにより固化させて上記鋳型を得るよう構成され、上記上型及び上記下型の少なくとも一方は、スライド孔を有する型本体と、上記スライド孔にスライド移動可能に嵌挿されるスライド型とを備え、上記鋳型造型用型の上記鋳型造型空間を形成する造型面を含む領域の全部又は一部は、超高分子量ポリエチレンからなり、上記型本体の上記スライド孔内周面を含む領域及び上記スライド型の上記スライド孔内周面との対向面を含む領域の少なくとも一方は、超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする
【0010】
第2の発明では、第の発明において、上記上型及び上記下型の少なくとも一方には、上記鋳型造型空間の気体を型外に排出する複数の排気孔が貫通形成され、上記上型及び上記下型の少なくとも一方の上記排気孔内周面を含む領域は、超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする。
【0011】
の発明では、第又は第の発明において、上記下型には、上下に延びる複数のガイド孔と、該各ガイド孔に上下動可能に挿通され、造型した上記鋳型を上記上型及び上記下型から脱型する際、上方に移動して上記鋳型を下方から押圧する押圧ピンとが設けられ、上記下型の上記ガイド孔内周面を含む領域は、超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
第1の発明では、鋳型造型用型の造型面の摩擦抵抗が金属からなる型の場合に比べて低くなり、圧縮エアにより鋳物砂が上記鋳型造型空間に圧送されても鋳型造型用型の造型面の損傷が減るか、或いは無くなり、型のメンテナンス周期を延ばすか、又は無くすことができて、維持管理がし易く低コストな鋳型造型用型にできる。また、上型及び下型の各造型面と造型した鋳型との間の摩擦抵抗が低くなるので、鋳型を上型及び下型から脱型するのが容易となり、上型及び下型の抜き勾配を小さくして仕上げ加工前の鋳物重量を下げて鋳物を取り扱い易くするとともに、鋳物の仕上げ加工時における加工量を減らして加工コストを下げることができる。
【0013】
また、所謂、コールドボックス法で鋳型を造型する鋳型造型用型においてメンテナンス周期を延ばすか、又は無くすことができ、維持管理がし易くなるとともにコストを抑えることができる。
【0014】
さらに、型本体とスライド型との間の摩擦抵抗が金属からなる型の場合に比べて低くなるので、型本体とスライド型との間に鋳物砂が入り込んだとしても、型本体及びスライド型の損傷が減るか、或いは無くなる。したがって、型本体及びスライド型が損傷して型本体とスライド型との間が広がり、その広がった隙間に鋳物砂が入り込んでスライド型のスライド動作に支障がでるといったことを防ぐことができる。
【0015】
の発明では、排気孔内周面の摩擦抵抗が金属からなる型の場合に比べて低くなるので、鋳型造型空間の気体を排気孔から型外に排出する際、鋳物砂が気体とともに排気孔を通過して排気孔内周面に接触したとしても、排気孔内周面の損傷が減るか、或いは無くなる。したがって、排気孔内周面が損傷することで排気孔から排気される気体の流れが変わって造型条件が変化してしまい、造型する鋳型が不良品になるといったことを防ぐことができる。
【0016】
の発明では、ガイド孔内周面の摩擦抵抗が金属からなる場合に比べて低くなって押圧ピンが滑らかに上下動するようになるので、押圧ピン外周面とガイド孔内周面との間の隙間が小さくなるよう設計できる。したがって、押圧ピン外周面とガイド孔内周面との間に鋳物砂が入り込み難くなって、鋳物砂によるガイド孔内周面の損傷を低減させることができる。また、もし仮に、押圧ピン外周面とガイド孔内周面との間に鋳物砂が入り込んだとしても、ガイド孔内周面の摩擦抵抗が金属からなる場合に比べて低いので、ガイド孔内周面の損傷が減るか、或いは無くなる。したがって、ガイド孔内周面が損傷して押圧ピン外周面とガイド孔内周面との間が広がり、その広がった隙間に鋳物砂が入り込んで押圧ピンの上下動作に支障がでてしまうといったことがない
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る鋳型造型用型の概略正面図である。
図2図1相当図であり、鋳型造型空間に鋳物砂を導入し始めた直後の状態を示す。
図3図2の状態からさらに鋳型造型空間に鋳物砂を導入して鋳型を造型した後、各スライド型をスライドさせて、造型した鋳型を脱型する直前の状態を示す。
図4図3の状態から上型及び下型を型開きして、造型した鋳型を脱型した直後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0019】
図1乃至図4は、本発明の実施形態に係る樹脂型1(鋳型造型用型)を備えた鋳型造型装置10の一部構造を示す。該鋳型造型装置10は、所謂コールドボックス法で鋳型9を造型するものであり、鋳物(図示せず)を製造する製造ラインの鋳型造型領域に配置されている。
【0020】
上記樹脂型1の上方には、粘結剤を添加・混練した天然珪砂からなる鋳物砂S1を貯留する砂貯留タンク11が昇降可能に設けられ、該砂貯留タンク11の中央下部には、当該砂貯留タンク11内に貯留する鋳物砂S1を下方に吹き出すためのブローノズル11aが突設されている。
【0021】
上記樹脂型1は、上型2及び該上型2に対向配置された下型3を備え、該下型3に対して上記上型2が進退するようになっている。
【0022】
上記上型2は、扁平な厚みを有する直方体形状をなす上型本体21を備え、該上型本体21は、超高分子量ポリエチレンで一体成形されている。
【0023】
該上型本体21の下面には、上方に窪む上型凹状面21aが凹設され、該上型凹状面21aの開口周りには、平坦な上型分割面21bが設けられている。
【0024】
上記上型凹状面21aにおける内側面の下半部分は、上半部分より水平方向外側に位置していて、両者間には段部21cが形成されている。
【0025】
上記上型本体21の中央部分には、上下方向に延びる貫通孔20が貫通形成され、該貫通孔20には、上記砂貯留タンク11が下降した際、上記ブローノズル11aが上方から嵌挿するようになっている。
【0026】
また、上記上型本体21の上記貫通孔20周りには、上下方向に延びる複数の上型排気孔21dが貫通形成されている。
【0027】
上記上型本体21の上記上型凹状面21a周りには、略水平方向に延び、上記上型凹状面21aにおける内側面の上半部分に開口する上型スライド孔22がその延出方向に離間して一対形成され、該各上型スライド孔22内周面上側には、当該上型スライド孔22の延出方向に延びる上型凹条溝22aが凹設されている。
【0028】
上記各上型スライド孔22には、第1スライド型4が水平方向にスライド移動可能に嵌挿され、該各第1スライド型4は、超高分子量ポリエチレンで一体成形されている。
【0029】
上記第1スライド型4上面には、上記上型凹条溝22aに水平方向に移動可能に嵌合する突条部4aが突設され、上記第1スライド型4が型内側にスライド移動すると上記突条部4aが上記上型凹条溝22aの型内側の内側面に接触してそれ以上のスライド移動が規制される一方、上記第1スライド型4が型外側にスライド移動すると上記突条部4aが上記上型凹条溝22aの型外側の内側面に接触してそれ以上のスライド移動が規制されるようになっている。
【0030】
上記第1スライド型4における型内側の端部は、断面略台形状をなし、上記第1スライド型4が型内側にスライド移動した状態で上記上型スライド孔22における型内側の開口から飛び出すようになっている。そして、上記各上型スライド孔22の型内側の開口から飛び出した各第1スライド型4における型内側の端面4bと上記上型凹状面21aとで上側造型面2aが構成されるようになっている。
【0031】
また、上記第1スライド型4における型外側の端部には、上記上型本体21の外周面に沿って下方に延びる第1延出部4cが設けられ、該第1延出部4c下端には、下方に開口する嵌合凹部4dが凹設されている。
【0032】
上記下型3は、扁平な厚みを有する直方体形状をなす下型本体31を備え、該下型本体31は、超高分子量ポリエチレンで一体成形されている。
【0033】
上記下型本体31の上面には、下型凹状面31aが凹設され、該下型凹状面31aの開口周りには、平坦な下型分割面31bが設けられている。
【0034】
上記下型凹状面31aにおける内側面の上半部分は、下半部分より水平方向外側に位置していて、両者間には段部31cが形成されている。
【0035】
また、上記下型本体31の中央寄りの位置には、上下方向に延びる複数の下型排気孔31dが貫通形成されている。
【0036】
上記下型本体31の上記下型凹状面31a周りには、略水平方向に延び、上記下型凹状面31aにおける内側面の下半部分に開口する下型スライド孔32がその延出方向に離間して一対形成され、該各下型スライド孔32内周面下側には、当該下型スライド孔32の延出方向に延びる下型凹条溝32aが凹設されている。
【0037】
また、上記下型本体31の上記段部31cに対応する位置には、上下に延びて上記下型スライド孔32に連通する第1連通孔33aが水平方向に離間して一対貫通形成され、上記下型本体31下部の上記各第1連通孔33aに対応する位置には、上下方向に延びて上記下型スライド孔32に連通する第2連通孔33bが貫通形成されている。
【0038】
上記各下型スライド孔32には、第2スライド型5が水平方向にスライド移動可能に嵌挿され、該第2スライド型5は、超高分子量ポリエチレンで一体成形されている。
【0039】
上記第2スライド型5下面には、上記下型凹条溝32aに水平方向に移動可能に嵌合する突条部5aが突設され、上記第2スライド型5が型内側にスライド移動すると上記突条部5aが上記下型凹条溝32aの型内側の内側面に接触してそれ以上のスライド移動が規制される一方、上記第2スライド型5が型外側にスライド移動すると上記突条部5aが上記下型凹条溝32aの型外側の内側面に接触してそれ以上のスライド移動が規制されるようになっている。
【0040】
上記第2スライド型5における型内側の端部は、断面略台形状をなし、上記第2スライド型5が型内側にスライド移動した状態で上記下型スライド孔32における型内側の開口から飛び出すようになっている。そして、上記各下型スライド孔32の型内側の開口から飛び出した各第2スライド型5における型内側の端面5bと上記下型凹状面31aとで下側造型面3aが構成されるようになっている。
【0041】
また、上記第2スライド型5における型外側の端部には、上記下型本体31の外周面に沿って上方に延びる第2延出部5cが設けられ、該第2延出部5c上端には、上記嵌合凹部4dに嵌合可能な突起5dが突設されている。
【0042】
さらに、上記各第2スライド型5には、当該第2スライド型5のスライド方向に幅広な長孔5eが上下方向に貫通形成され、該長孔5eは、上記第1及び第2連通孔33a,33bとで本発明のガイド孔6を構成し、上記第2スライド型5が型内側及び型外側のいずれの方向にスライド移動しても上記第1及び第2連通孔33a,33bに対応するようになっている。
【0043】
上記各ガイド孔6には、細棒状の金属製押圧ピン7が上下動可能に挿通され、該各押圧ピン7の下端部分は連結板7aで連結されている。
【0044】
そして、上記上型2を上記下型3に対して進出させて上記上型分割面21bと上記下型分割面31bとを合わせるとともに嵌合凹部4dに突起5dを嵌合させて型閉じ状態にすると、上側造型面2a及び下側造型面3a間に鋳型9の形状に対応する鋳型造型空間8が形成され、該鋳型造型空間8に鋳物砂S1を満たすとともに当該鋳物砂S1に硬化性ガスを通過させ、且つ、該硬化性ガスを各上型排気孔21d及び各下型排気孔31dから型外に排出することにより上記鋳物砂S1を固化させて上記鋳型9を造型するようになっている。
【0045】
また、造型した上記鋳型9を上記上型2及び上記下型3から脱型する際、上記押圧ピン7が上方に移動して上記鋳型9を下方から押圧するようになっている。
【0046】
尚、本発明の実施形態に係る上型本体21、下型本体31、第1スライド型4及び第2スライド型5は、超高分子量ポリエチレンからなっているが、この超高分子量ポリエチレンは平均分子量が500万以上であり、その具体的な商品として、作新工業株式会社製の「Saxinニューライト」が挙げられる。
【0047】
次に、上記鋳型造型装置10による鋳型9の造型について説明する。
【0048】
まず、図1に示すように、上型2を下型3に対して進出させて上型2と下型3とを型閉じし、上記上型2及び上記下型3の上側造型面2a及び下側造型面3a間に鋳型造型空間8を形成するとともに、砂貯留タンク11を下降させて上型2の貫通孔20にブローノズル11aを嵌挿させ、且つ、上記両押圧ピン7を下方に移動させる(図2のX1方向)。
【0049】
次に、上記砂貯留タンク11内に図示しないエア供給管から圧縮エアを供給する。すると、図2に示すように、ブローノズル11aから鋳物砂S1が上記鋳型造型空間8に吹き出され、当該鋳型造型空間8が鋳物砂S1で満たされる。
【0050】
しかる後、砂貯留タンク11が上昇して上型2の貫通孔20からブローノズル11aが抜き取られるとともに上記貫通孔20に硬化性ガス導入装置(図示せず)が接続され、上記鋳型造型空間8に硬化性ガスを導入して鋳物砂S1を固化させて鋳型9を得る。
【0051】
その後、図3及び図4に示すように、各第1スライド型4及び各第2スライド型5を型外側に同時にスライド移動させた後(図3のX2方向)、上型2を上昇させるとともに両押圧ピン7を上動させる(図4のX3及びX4方向)。すると、両押圧ピン7が上記鋳型9を下方から押圧して下側造型面3aから離間させる。そして、上型2及び下型3の間から鋳型9を取り出して該鋳型9を次工程に搬送する。
【0052】
以上より、本発明の実施形態によると、上型本体21、下型本体31、第1スライド型4及び第2スライド型5は、超高分子量ポリエチレンからなるので、鋳型造型空間8に面する領域、すなわち、上側造型面2a及び下側造型面3aの摩擦抵抗が金属からなる型の場合に比べて低くなり、圧縮エアにより鋳物砂S1が上記鋳型造型空間8に圧送されても上側造型面2a及び下側造型面3aの損傷が減るか、或いは無くなり、上型2及び下型3のメンテナンス周期を延ばすか、又は無くすことができて、維持管理がし易く低コストな樹脂型1にできる。また、上側造型面2a及び下側造型面3aと造型した鋳型9との間の摩擦抵抗が低くなるので、鋳型9を上型2及び下型3から脱型するのが容易となり、上型2及び下型3の抜き勾配を小さくして仕上げ加工前の鋳物重量を下げて鋳物を取り扱い易くするとともに、鋳物の仕上げ加工時における加工量を減らして加工コストを下げることができる。
【0053】
また、本実施形態における樹脂型1は、所謂、コールドボックス法で鋳型9を造型する鋳型造型用型であるが、このコールドボックス法で用いられる樹脂型1においてもメンテナンス周期を延ばすか、又は無くすことができ、維持管理がし易くなるとともにコストを抑えることができる。
【0054】
さらに、上型本体21及び下型本体31は、超高分子量ポリエチレンからなるので、上型排気孔21d及び下型排気孔31d内周面の摩擦抵抗が金属からなる型の場合に比べて低くなり、鋳型造型空間8の気体(圧縮エア、硬化性ガス)を上型排気孔21d及び下型排気孔31dから上型2及び下型3の外に排出する際、鋳物砂S1が気体とともに上型排気孔21d及び下型排気孔31dを通過してその内周面に接触したとしても、上型排気孔21d及び下型排気孔31dの内周面の損傷が減るか、或いは無くなる。したがって、上型排気孔21d及び下型排気孔31dの内周面が損傷することで上型排気孔21d及び下型排気孔31dから排気される気体の流れが変わって造型条件が変化してしまい、造型する鋳型9が不良品になるといったことを防ぐことができる。
【0055】
それに加えて、下型本体31及び第2スライド型5は、超高分子量ポリエチレンからなるので、ガイド孔6内周面の摩擦抵抗が金属からなる場合に比べて低くなって押圧ピン7が滑らかに上下動するようになり、押圧ピン7外周面とガイド孔6内周面との間の隙間が小さくなるよう設計できる。したがって、押圧ピン7外周面とガイド孔6内周面との間に鋳物砂S1が入り込み難くなって、鋳物砂S1によるガイド孔6内周面の損傷を低減させることができる。また、もし仮に、押圧ピン7外周面とガイド孔6内周面との間に鋳物砂S1が入り込んだとしても、ガイド孔6内周面の摩擦抵抗が金属からなる場合に比べて低いので、ガイド孔6内周面の損傷が減るか、或いは無くなる。したがって、ガイド孔6内周面が損傷して押圧ピン7外周面とガイド孔6内周面との間が広がり、その広がった隙間に鋳物砂S1が入り込んで押圧ピン7の上下動作に支障がでてしまうといったことがない。
【0056】
そして、上型本体21、下型本体31、第1スライド型4及び第2スライド型5は、超高分子量ポリエチレンからなるので、上型本体21、下型本体31と第1、第2スライド型4、5との間の摩擦抵抗が金属からなる型の場合に比べて低くなり、上型本体21、下型本体31と第1、第2スライド型4、5との間に鋳物砂S1が入り込んだとしても、上型本体21、下型本体31、第1、第2スライド型4、5の損傷が減るか、或いは無くなる。したがって、上型本体21、下型本体31、第1、第2スライド型4、5が損傷して上型本体21、下型本体31と第1、第2スライド型4、5との間が広がり、その広がった隙間に鋳物砂S1が入り込んで第1及び第2スライド型4、5のスライド動作に支障がでるといったことを防ぐことができる。
【0057】
尚、本発明の実施形態では、上型本体21、下型本体31、第1スライド型4及び第2スライド型5を超高分子量ポリエチレンで一体成形することにより得ているが、上型本体21、下型本体31、第1スライド型4及び第2スライド型5の一部分だけを超高分子量ポリエチレンからなるものにしてもよい。例えば、上型2における鋳型造型空間8を形成する上側造型面2aを含む領域の一部を超高分子量ポリエチレンからなる樹脂で製作するようにしてもよいし、下型3における鋳型造型空間8を形成する下側造型面3aを含む領域の一部を超高分子量ポリエチレンからなる樹脂で製作するようにしてもよい。
【0058】
また、上型2及び下型3における上型排気孔21d及び下型排気孔31dの各内周面を含むように型の一部だけを超高分子量ポリエチレンからなる樹脂で製作するようにしてもよい。
【0059】
さらに、下型3における各ガイド孔6内周面を含むように型の一部だけを超高分子量ポリエチレンからなる樹脂で製作するようにしてもよい。
【0060】
それに加えて、上型2及び下型3における上型スライド孔22内周面及び下型スライド孔32内周面を含むように型の一部だけを超高分子量ポリエチレンからなる樹脂で製作するようにしてもよく、第1、第2スライド型4、5の上型スライド孔22内周面及び下型スライド孔32内周面との対向面を含むように型の一部だけを超高分子量ポリエチレンからなる樹脂で製作するようにしてもよい
【0061】
た、本発明の実施形態では、上型2に上型排気孔21dが、下型3に下型排気孔31dが形成されているが、両方の型に形成するのが必須要件ではなく、いずれか一方の型に形成すればよい。
【0062】
また、本発明の実施形態では、上型2に第1スライド型4が、下型3に第2スライド型5が設けられているが、両方の型に設けるのが必須要件ではなく、いずれか一方の型に設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、鋳型を造型する鋳型造型用型に適している。
【符号の説明】
【0064】
1 樹脂型(鋳型造型用型)
2 上型
3 下型
4 第1スライド型
5 第2スライド型
6 ガイド孔
7 押圧ピン
8 鋳型造型空間
9 鋳型
10 鋳型造型装置
21 上型本体
21d 上型排気孔
31 下型本体
31d 下型排気孔
S1 鋳物砂
図1
図2
図3
図4