(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中空微小粒子が、中空のガラス、セラミック、金属、シリカ、アルミナおよびジルコニアの各微小粒子、並びにこれら中空微小粒子の混合物の群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載のタイヤ。
前記ブロックコポリマーの1個以上のエラストマーブロックが、エチレンエラストマー、ジエンエラストマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜10のいずれか1項記載のタイヤ。
前記ブロックコポリマーの1個以上の熱可塑性ブロックが、80℃よりも高いガラス転移温度を有する、半結晶性熱可塑性ブロックの場合は80℃よりも高い融点を有するポリマーから選ばれる、請求項1〜14のいずれか1項記載のタイヤ。
前記ブロックコポリマーの1個以上の熱可塑性ブロックが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化化合物、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、熱可塑性コポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜15のいずれか1項記載のタイヤ。
前記1種以上の熱可塑性エラストマーが、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)およびスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)の各熱可塑性エラストマー、並びにこれらコポリマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜17のいずれか1項記載のタイヤ。
前記タイヤが、前記トレッド以外に、クラウン、2枚の側壁および2本のビード、これら2本のビードに固定されているカーカス補強材、およびクラウン補強材を含むような、請求項1〜23のいずれか1項記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
I. 発明の詳細な説明
本説明においては、特に明確に断らない限り、示す全ての百分率(%)は、全て質量%である。
さらにまた、用語“phr”は、本特許出願の意義の範囲内において、エラストマー100質量部当りの質量部を意味する。本発明の意義の範囲内において、熱可塑性エラストマー(TPE)は、エラストマーのうちに包含される。
【0010】
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0011】
I‐1. トレッドの組成物
本発明に従うタイヤは、主要エラストマーとして少なくとも1種の熱可塑性エラストマーをベースとし、上記熱可塑性エラストマーが少なくとも1個のエラストマーブロックと少なくとも1個の熱可塑性ブロックを含み、且つ走行時に破裂し得る中空微小粒子を含むという本質的な特徴を有するトレッドを備えている。
【0012】
I‐1‐A. 熱可塑性エラストマー(TPE)
熱可塑性エラストマー(“TPE”と略称する)は、熱可塑性ポリマーとエラストマーとの間の中間の構造を有する。これらは、可撓性エラストマーブロックによって連結された硬質熱可塑性ブロックからなるブロックコポリマーである。
本発明のこの実施態様の実施において使用する熱可塑性エラストマーは、その熱可塑性ブロックおよびエラストマーブロックの化学的性質が変動し得るブロックコポリマーである。
【0013】
TPEの構造
TPEの数平均分子量(Mnで示す)は、好ましくは30 000g/モルと500 000g/モルの間、より好ましくは40 000g/モルと400 000g/モルの間である。上記最低値よりも低いと、TPEのエラストマー鎖間の固着力が、特にその可能性ある希釈(増量剤オイルの存在において)のために影響を受けるリスクが存在する;さらにまた、“高温”性能の低下の結果によって、機械的性質、特に、破断点諸性質に影響を与える加工温度の上昇のリスクも存在する。さらにまた、過度に高い分子量Mnは、使用にとって不利であり得る。従って、50 000〜300 000g/モルの範囲内の値が、特にタイヤトレッド組成物におけるTPEの使用にとって特に良好に適していることが判明している。
【0014】
TPEエラストマーの数平均分子量(Mn)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)により、既知の方法で測定する。例えば、スチレン熱可塑性エラストマーの場合、サンプルを、前以って、約1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解し、その後、溶液を、0.45μmの有孔度を有するフィルターにより、注入前に濾過する。使用する装置は、Waters Allianceクロマトグラフィー系である。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名Styragelを有する直列4本のWatersカラムセット(HMW7カラム、HMW6Eカラムおよび2本のHT6Eカラム)を使用する。ポリマーサンプル溶液の注入容量は、100μlである。検出器はWaters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを使用するその関連ソフトウェアは、Waters Milleniumシステムである。算出した平均モル質量を、ポリスチレン標準によって得られた較正曲線と対比する。条件は、当業者であれば、調整し得るであろう。
【0015】
TPEの多分散性指数PI (注:PI = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量である)の値は、好ましくは3よりも低く、より好ましくは2よりも低く、さらにより好ましくは1.5よりも低い。
【0016】
本特許出願においては、TPEのガラス転移温度に言及する場合、そのガラス転移温度は、エラストマーブロックに関連するTgに関する。TPEは、好ましくは、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下であるガラス転移温度(“Tg”)を示す。これらの最低値よりも高いTg値は、極めて低温で使用するときの上記トレッドの性能を低下させ得る;そのような使用においては、TPEのTgは、さらにより好ましくは−10℃以下である。また、好ましくは、TPEのTgは−100℃よりも高い。
【0017】
知られている通り、TPEは、2つのガラス転移温度ピーク(Tg;ASTM D3418に従って測定)、即ち、TPEのエラストマー部分に関連する最低温度およびTPEの熱可塑性部分に関連する最高温度を示す。従って、TPEの可撓性ブロックは、周囲温度(25℃)よりも低いTgによって定義され、一方、硬質ブロックは、80℃よりも高いTgを有する。
【0018】
性質的にエラストマー性および熱可塑性の双方であるためには、TPEは、十分に相いれない各ブロック(即ち、それらそれぞれの分子量、それらそれぞれの極性またはそれらそれぞれのTg値の結果として異なる)を有してエラストマーブロックまたは熱可塑性ブロックのそれら固有の性質を保持しなければならない。
【0019】
TPEは、小個数のブロック(5個未満、典型的には2個または3個)を有するコポリマーであり得、この場合、これらのブロックは、15 000g/モルよりも大きい高分子量を有する。これらのTPEは、例えば、1個の熱可塑性ブロックと1個のエラストマーブロックを含むジブロックコポリマーであり得る。また、これらのTPEは、多くの場合、可撓性セグメントによって連結された2個の硬質セグメントを含むトリブロックエラストマーでもある。硬質および可撓性セグメントは、線状、または星型または枝分れ形状で配置させ得る。典型的には、これらのセグメントまたはブロックの各々は、多くの場合、最低限5個よりも多い、一般的には10個よりも多い基本単位(例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーにおけるスチレン単位とブタジエン単位)を含む。
【0020】
また、TPEは、多数のより小さなブロック(30個以上、典型的には50〜500個)を含み得、この場合、これらのブロックは、比較的低い、例えば、500〜5000g/モルの分子量を有する;これらのTPEは、この後、マルチブロックTPEと称し、エラストマーブロック/熱可塑性ブロック連続物である。
【0021】
第1の別の形態によれば、TPEは、線状形で提供される。例えば、TPEは、ジブロックコポリマーである:熱可塑性ブロック/エラストマーブロック。また、TPEは、トリブロックコポリマーであり得る:熱可塑性ブロック/エラストマーブロック/熱可塑性ブロック、即ち、中心エラストマーブロックと該エラストマーブロックの2つの末端の各々における2個の末端熱可塑性ブロック。同様に、マルチブロックTPEは、エラストマーブロック/熱可塑性ブロックの線状連続物であり得る。
【0022】
本発明のもう1つの別の形態によれば、本発明の必要条件において使用するTPEは、少なくとも3本の分岐を含む星型枝分れ形で提供される。例えば、TPEは、その場合、少なくとも3本の分岐を含む星型枝分れエラストマーブロックと、該エラストマーブロックの分岐の各々の末端に位置する熱可塑性ブロックとからなり得る。中心エラストマーの分岐数は、例えば、3〜12本、好ましくは3〜6本の範囲であり得る。
【0023】
本発明のもう1つの別の形態によれば、TPEは、枝分れまたはデンドリマー形で提供する。TPEは、その場合、枝分れまたはデンドリマーエラストマーブロックと、該デンドリマーエラストマーブロックの各分岐の末端に位置する熱可塑性ブロックからなり得る。
【0024】
エラストマーブロックの性質
本発明の必要条件に対してのTPEのエラストマーブロックは、当業者にとって既知の任意のエラストマーであり得る。これらのブロックは、炭素系鎖を含み得(例えば、ポリイソプレン)、或いは含み得ない(例えば、シリコーン)。これらのブロックは、25℃よりも低い、好ましくは10℃よりも低い、より好ましくは0℃よりも低い、極めて好ましくは−10℃よりも低いTgを有する。また、好ましくは、TPEのエラストマーブロックのTgは、−100℃よりも高い。
【0025】
炭素系鎖を含むエラストマーブロックにおいては、TPEのエラストマー部分がエチレン系不飽和を含まない場合、そのブロックは、飽和エラストマーブロックと称する。TPEのエラストマーブロックがエチレン系不飽和(即ち、炭素‐炭素二重結合)を含む場合、そのエラストマーブロックは、不飽和またはジエンエラストマーブロックと称する。
【0026】
飽和エラストマーブロックは、少なくとも1種(即ち、1種以上)のエチレン系モノマー、即ち、1個の炭素‐炭素二重結合を含むモノマーの重合によって得られるポリマー配列からなる。これらのエチレン系モノマーから得られるブロックのうちでは、エチレン/プロピレンまたはエチレン/ブチレンランダムコポリマーのようなポリアルキレンブロックを挙げることができる。また、これらの飽和エラストマーブロックは、不飽和エラストマーブロックの水素化によっても得ることができる。また、これらの飽和エラストマーブロックは、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリカーボネートの群から得られる脂肪族ブロックでもあり得る。
【0027】
飽和エラストマーブロックの場合、TPEのこのエラストマーブロックは、主として、エチレン系単位からなる。用語“主として”とは、エラストマーブロックの総質量に対して最高の質量によるエチレン系のモノマー含有量、好ましくは50%よりも多い、より好ましくは75%よりも多い、さらにより好ましくは85%よりも多い質量による含有量を意味するものと理解されたい。
【0028】
共役C
4〜C
14ジエンを上記エチレン系モノマーと共重合させることができる。これらは、この場合、ランダムコポリマーである。好ましくは、これらの共役ジエン類は、イソプレン、ブタジエン、1‐メチルブタジエン、2‐メチルブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,4‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエン、2‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、3‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、4‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ペンタジエン、1,3‐ヘキサジエン、2‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、3‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、4‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、5‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ヘキサジエン、2,4‐ジメチル‐1,3‐ヘキサジエン、2,5‐ジメチル‐1,3‐ヘキサジエン、2‐ネオペンチルブタジエン、1,3‐シクロペンタジエン、1,3‐シクロヘキサジエン、1‐ビニル‐1,3‐シクロヘキサジエン、またはそれらの混合物から選ばれる。さらに好ましくは、上記共役ジエンは、イソプレンまたはイソプレンを含む混合物である。
【0029】
不飽和エラストマーブロックの場合、TPEのこのエラストマーブロックは、主として、ジエンエラストマー成分からなる。用語“主として”とは、エラストマーブロックの総質量に対して最高の質量によるジエンモノマー含有量、好ましくは50%よりも多い、より好ましくは75%よりも多い、さらにより好ましくは85%よりも多い質量による含有量を意味するものと理解されたい。また、不飽和エラストマーブロックの不飽和は、例えば、ポリノルボルネンにおける場合のように、環状タイプの二重結合および不飽和を含むモノマーにも由来し得る。
好ましくは、共役C
4〜C
14ジエンを重合または共重合させてジエンエラストマーブロックを形成することができる。好ましくは、これらの共役ジエン類は、イソプレン、ブタジエン、ピペリレン、1‐メチルブタジエン、2‐メチルブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,4‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエン、2‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、3‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、4‐メチル‐1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ペンタジエン、2,5‐ジメチル‐1,3‐ペンタジエン、2‐メチル‐1,4‐ペンタジエン、1,3‐ヘキサジエン、2‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、2‐メチル‐1,5‐ヘキサジエン、3‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、4‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、5‐メチル‐1,3‐ヘキサジエン、2,5‐ジメチル‐1,3‐ヘキサジエン、2,5‐ジメチル‐2,4‐ヘキサジエン、2‐ネオペンチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、2‐メチル‐1,6‐ヘプタジエン、1,3‐シクロヘキサジエン、1‐ビニル‐1,3‐シクロヘキサジエンまたはそれらの混合物から選ばれる。さらに好ましくは、上記共役ジエンは、イソプレンまたはブタジエン或いはイソプレンおよび/またはブタジエンを含む混合物である。
【0030】
別の形態によれば、TPEの上記エラストマー部分を形成するために重合させるモノマーは、少なくとも1種の他のモノマーとランダムに共重合させてエラストマーブロックを形成することができる。この別の形態によれば、エラストマーブロックの総単位数に対するエチレン系モノマー以外の重合モノマーのモル画分は、このブロックがそのエラストマー特性を保持するようでなければならない。有利には、この他のコモノマーのモル画分は、0%〜50%、より好ましくは0%〜45%、さらにより好ましくは0%〜40%の範囲にあり得る。
【0031】
例えば、上記第1モノマーと共重合させ得るこの他のモノマーは、上述したようなエチレン系モノマー(例えば、エチレン);ジエンモノマー、特に、上述したような4〜14個の炭素原子を有する共役ジエンモノマー(例えば、ブタジエン);上述したような8〜20個の炭素原子を有するビニル芳香族タイプのモノマーから選択することができ、或いは、酢酸ビニルのようなモノマーも含ませ得る。
【0032】
コモノマーがビニル芳香族タイプである場合、そのコモノマーは、有利には、上記熱可塑性ブロックの総単位数に対して、0%〜50%の、より好ましくは0%〜45%の範囲、さらにより好ましくは0%〜40%の範囲の単位画分を示す。上述したスチレンモノマー、即ち、メチルスチレン、パラ(tert‐ブチル)スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレンまたはパラ‐ヒドロキシスチレンは、ビニル芳香族化合物として特に適している。好ましくは、ビニル芳香族タイプのコモノマーはスチレンである。
【0033】
本発明の好ましい実施態様によれば、TPEの上記エラストマーブロックは、TPEに良好なエラストマー特性および十分且つタイヤトレッドとしての使用と適合し得る機械的強度を付与するように、全体で、25 000g/モル〜350 000g/モル、好ましくは35 000g/モル〜250 000g/モルの範囲にある数平均分子量(Mn)を示す。
また、エラストマーブロックは、数タイプの上述したようなエチレン、ジエンまたはスチレンモノマーを含むブロックであり得る。
また、エラストマーブロックは、数種の上述したようなエラストマーブロックからなり得る。
【0034】
熱可塑性ブロックの性質
熱可塑性ブロックの定義については、該硬質熱可塑性ブロックのガラス転移温度(Tg)特性を使用する。この特性は、当業者にとって周知である。この特性は、特に、工業的処理(転換)温度を選択することを可能にする。非晶質ポリマー(またはポリマーブロック)の場合は、処理温度は、Tgよりも実質的に高くに選定する。半結晶性ポリマー(またはポリマーブロック)の特定の例においては、ガラス転移温度よりも高い融点が観察され得る。この場合、当該ポリマー(またはポリマーブロック)における処理温度を選定することを可能にするのはむしろ融点(M.p.)である。従って、この後、“Tg (または、必要な場合のM.p.)”について言及する場合、この温度が処理温度を選定するのに使用する温度であるとみなす必要があろう。
【0035】
本発明の必要条件に関しては、TPEエラストマーは、80℃以上のTgを有し且つ重合モノマーから形成された1個以上の熱可塑性ブロックを含む。好ましくは、この熱可塑性ブロックは、80℃〜250℃で変動する範囲内のTgを有する。好ましくは、この熱可塑性ブロックのTgは、好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。
【0036】
本発明のこの実施態様の実施に関して定義したようなTPEに対する熱可塑性ブロックの割合は、一方では、上記コポリマーが示さなければならない熱可塑特性によって決定する。80℃以上のTgを有する熱可塑性ブロックは、好ましくは、本発明に従うエラストマーの熱可塑特性を保持するに十分な割合で存在する。TPE中での80℃以上のTgを有する熱可塑性ブロックの最低含有量は、当該コポリマーの使用条件の関数として変動し得る。他方、タイヤの製造中にTPEが変形する能力も、80℃以上のTgを有する熱可塑性ブロックの割合を決定するのに寄与し得る。
【0037】
80℃以上のTgを有する熱可塑性ブロックは、種々の性質を有する重合モノマーから形成し得る;特に、これらのブロックは、下記のブロックまたは下記のブロックの混合物を構成し得る;
・ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン);
・ポリウレタン;
・ポリアミド;
・ポリエステル;
・ポリアセタール;
・ポリエーテル(ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル);
・ポリフェニレンスルフィド;
・ポリフッ化化合物(FFP、PFA、ETFE);
・ポリスチレン(以下で詳細に説明する);
・ポリカーボネート;
・ポリスルホン;
・ポリメチルメタクリレート;
・ポリエーテルイミド;
・熱可塑性コポリマー、例えば、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)コポリマー。
【0038】
また、80℃以上のTgを有する熱可塑性ブロックは、下記の各化合物およびそれら化合物の混合物から選ばれるモノマーからも得ることができる:
・アセナフチレン:当業者であれば、例えば、Z. FodorおよびJ.P. Kennedyによる論文Polymer Bulletin, 1992, 29(6), 697‐705を参照し得る:
・例えば、2‐メチルインデン、3‐メチルインデン、4‐メチルインデン、ジメチルインデン、2‐フェニルインデン、3‐フェニルインデンおよび4‐フェニルインデンのような、インデンおよびその誘導体:当業者であれば、例えば、発明者Kennedy、Puskas、KaszasおよびHagerによる特許文献US 4 946 899号;並びに、J. E. Puskas、G. Kaszas、J.P. KennedyおよびW.G Hagerによる文献Journal of Polymer Science, Part A, Polymer Chemistry (1992), 30, 41、およびJ.P. Kennedy、N. MeguriyaおよびB. Keszlerによる文献Macromolecules (1991), 24(25), 6572‐6577を参照し得る;
・イソプレン、この場合、一定数のトランス‐1,4‐ポリイソプレン単位および分子内プロセスによる環状化単位の形成をもたらす:当業者であれば、例えば、G. Kaszas、J.E. PuskasおよびJ.P. Kennedyによる文献Applied Polymer Science (1990), 39(1), 119‐144、およびJ.E. Puskas、G. KaszasおよびJ.P. Kennedyによる文献Macromolecular Science, Chemistry A28 (1991), 65‐80を参照し得る。
【0039】
ポリスチレンは、スチレンモノマーから得られる。用語“スチレン”モノマーは、本説明においては、非置換および置換スチレンをベースとする任意のモノマーを意味するものと理解すべきである;置換スチレンのうちでは、例えば、メチルスチレン(例えば、o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレンまたはp‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、α,2‐ジメチルスチレン、α,4‐ジメチルスチレンまたはジフェニルエチレン)、パラ‐(tert‐ブチル)スチレン、クロロスチレン(例えば、o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、2,4‐ジクロロスチレン、2,6‐ジクロロスチレンまたは2,4,6‐トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(例えば、o‐ブロモスチレン、m‐ブロモスチレン、p‐ブロモスチレン、2,4‐ジブロモスチレン、2,6‐ジブロモスチレンまたは2,4,6‐トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(例えば、o‐フルオロスチレン、m‐フルオロスチレン、p‐フルオロスチレン、2,4‐ジフルオロスチレン、2,6‐ジフルオロスチレンまたは2,4,6‐トリフルオロスチレン)、またはパラ‐ヒドロキシスチレンを挙げることができる。
【0040】
本発明の好ましい実施態様によれば、TPEエラストマー中のスチレンの質量による含有量は、5%と50%の間の量である。上記最低値よりも少ないと、上記エラストマーの熱可塑特性が実質的に低下するリスクが存在し、一方、推奨する最高値よりも多いと、上記トレッドの弾力性が影響を受け得る。これらの理由により、スチレン含有量は、さらに好ましくは、10%と40%の間の量である。
【0041】
本発明の別の形態によれば、上記で定義したような重合モノマーは、少なくとも1種の他のモノマーと共重合させて、上記で定義したようなTgを有する熱可塑性ブロックを形成し得る。
例えば、上記重合モノマーと共重合させることのできるこの他のモノマーは、エラストマーブロックに関連する箇所において定義したような、ジエンモノマー、特に、4〜14個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーおよび8〜20個の炭素原子を有するビニル芳香族タイプのモノマーから選択し得る。
【0042】
本発明によれば、TPEの熱可塑性ブロックは、TPEに良好な弾力性と十分且つタイヤトレッドとしての使用と適合する機械的強度とを付与するように、全体で、5 000g/モル〜150 000g/モルの範囲にある数平均分子量(Mn)を示す。
また、上記熱可塑性ブロックは、数種の上記で定義したような熱可塑性ブロックからなり得る。
【0043】
TPEの例
例えば、TPEは、そのエラストマー部分が飽和であり且つスチレンブロックとアルキレンブロックを含むコポリマーである。アルキレンブロックは、好ましくは、エチレン、プロピレンまたはブチレンである。さらに好ましくは、このTPEエラストマーは、線状または星型枝分れしているジブロックまたはトリブロックコポリマーからなる下記の群から選ばれる:線状または星型枝分れのスチレン/エチレン/ブチレン(SEB)、線状または星型枝分れのスチレン/エチレン/プロピレン(SEP)、線状または星型枝分れのスチレン/エチレン/エチレン/プロピレン(SEEP)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンSEPS)、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEEPS)、線状または星型枝分れのスチレン/イソブチレン(SIB)、スチレン/イソブチレン/スチレン(SIBS)およびこれらコポリマーの混合物。
【0044】
もう1つの例によれば、TPEは、そのエラストマー部分が不飽和であり且つスチレンブロックとジエンブロックを含み、これらのジエンブロックが、特に、イソプレンまたはブタジエンブロックであるところのコポリマーである。さらに好ましくは、このTPEエラストマーは、線状または星型枝分れしているジブロックまたはトリブロックコポリマーからなる以下の群から選ばれる:線状または星型枝分れのスチレン/ブタジエン(SB)、線状または星型枝分れのスチレン/イソプレン(SI)、線状または星型枝分れのスチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)またはこれらコポリマーの混合物。
【0045】
また、例えば、TPEは、例えば線状または星型枝分れのスチレン/ブタジエン/ブチレン(SBB)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)またはこれらコポリマーの混合物のような、そのエラストマー部分が飽和部分と不飽和部分を含むコポリマーである。
【0046】
マルチブロックTPEのうちでは、エチレンと、プロピレン/ポリプロピレン、ポリブタジエン/ポリウレタン(TPU)、ポリエーテル/ポリエステル(COPE)またはポリエーテル/ポリアミド(PEBA)とのランダムコポリマーブロックを含むコポリマーを挙げることができる。
また、上記で例として示した複数のTPEを、本発明に従うトレッド中で、互いに混合することも可能である。
【0047】
商業的に入手可能なTPEエラストマーの例としては、Kraton社からKraton Gの品名(例えば、G1650、G1651、G1654およびG1730の各製品)でまたはKuraray社からSeptonの品名(例えば、Septon 2007、Septon 4033またはSepton 8004)で販売されているSEPS、SEEPSまたはSEBSタイプのエラストマー;或いは、Kuraray社から品名Hybrar 5125としてまたはKraton社から品名D1161として販売されているSISタイプのエラストマーを挙げることができる。また、Dexco Polymers社からVectorの品名(例えば、Vector 4114またはVector 8508)で販売されているエラストマーも挙げることができる。マルチブロックTPEのうちでは、Exxon社から販売されているVistamaxx TPE;DSM社からArniteiの品名でまたはDuPont社からHytrelの品名でまたはTicona社からRiteflexの品名で販売されているCOPE TPE;Arkema社からPEBAXの品名で販売されているPEBA TPE;或いは、Sartomer社から品名TPU 7840としてまたはBASF社からElastogranの品名で販売されているTPU TPEを挙げることができる。
【0048】
TPE量
任意構成成分の他の(非熱可塑性の)エラストマーを上記組成物において使用する場合、上記1種以上のTPEエラストマーは、質量による主要画分を構成する;TPEエラストマーは、その場合、上記エラストマー組成物中に存在する合計エラストマーの少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも75質量%を示す。また、好ましくは、上記1種以上のTPEエラストマーは、上記エラストマーの組成物中に存在する合計エラストマーの少なくとも95質量%(特に100質量%)を示す。
【0049】
従って、TPEエラストマーの量は、65〜100phr、好ましくは70〜100phr、特に75〜100phrで変動する範囲内にある。また、好ましくは、上記組成物は、95〜100phrのTPEエラストマーを含む。上記1種以上のTPEエラストマーは、好ましくは、上記トレッドの唯一のエラストマー(1種以上)である。
【0050】
I‐1‐B. 非熱可塑性エラストマー
上記で説明した1種以上の熱可塑性エラストマーは、それ自体単独で、本発明に従うトレッドが有用であるために十分である。
本発明に従うトレッドの組成物は、少なくとも1種(即ち、1種以上)のジエンゴムを非熱可塑性エラストマーとして含み得る;このジエンゴムは、単独でまたは少なくとも1種(即ち、1種以上)の他の非熱可塑性ゴムまたはエラストマーとのブレンドとして使用することが可能である。
【0051】
任意構成成分としての非熱可塑性エラストマーの合計含有量は、0〜35phr、好ましくは0〜30phr、より好ましくは0〜25phr、さらにより好ましくは0〜5phrで変動する範囲内である。従って、上記トレッドが非熱可塑性エラストマーを含む場合、非熱可塑性エラストマーは、多くとも35phr、好ましくは多くとも30phr、より好ましくは多くとも25phr、極めて好ましくは多くとも5phrを示す。また、極めて好ましくは、本発明に従うタイヤのトレッドは、非熱可塑性エラストマーを含まない。
【0052】
“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー(共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも部分的に由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0053】
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。
“本質的に不飽和”とは、一般に、15%(モル%)よりも多いジエン由来(共役ジエン)の単位含有量を有する、共役ジエンモノマーに少なくとも一部由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、“高不飽和”のジエンエラストマーは、特に、50%よりも多いジエン由来(共役ジエン)の単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0054】
従って、ある種のブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα‐オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、“本質的に飽和”のジエンエラストマー(低いまたは極めて低い常に15%よりも低いジエン由来単位含有量)として説明し得る。
【0055】
これらの定義を考慮すると、上記のカテゴリーのいずれであれ、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマーは、さらに具体的には、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) エチレンおよび3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に、1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンと一緒のエチレンおよびプロピレンから得られるエラストマー;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ジエンブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0056】
任意のタイプのジエンエラストマーを本発明において使用することができる。上記組成物が加硫系を含む場合、好ましくは、特に上記のタイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のエラストマーを本発明に従うタイヤのトレッドの製造において使用し得る。
【0057】
以下は、共役ジエン類として特に適している:1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3-ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C
1〜C
5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンまたは2,4‐ヘキサジエン。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適している:スチレン;オルソ‐、メタ‐またはパラ‐メチルスチレン;“ビニル‐トルエン”市販混合物;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
【0058】
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間の量のジエン単位と1質量%と80質量%の間の量のビニル芳香族単位を含み得る。これらのエラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリングし得および/または星型枝分れ化し得或いは官能化し得る。カーボンブラックとカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基または、例えば、ベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができる;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、例えば、シラノール基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。また、そのような官能化エラストマー類の他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0059】
I‐1‐C. 中空微小粒子
本発明に従うタイヤのトレッドの第2の本質的特徴は、中空微小粒子を含むことである。
用語“中空微小粒子”とは、硬質シェルを有する多様な構成材料の中空微小粒子を意味するものと理解されたい。これらの中空微小粒子は、内部に、液体、好ましくは気体、特に空気を含み得る。
気体を充たした中空微小粒子は、特に、その破裂圧力に特徴を有する。
【0060】
破裂圧力は、窒素静水圧下での試験によって測定する。この方法により、中空微小粒子のサンプルが所定の窒素圧を受け、その中空微小粒子の密度が既知であるときのこのサンプルの容積の低下の百分率を判定する。中空微小粒子とタルクの混合物を密度計に入れてその密度を測定する。引続き、混合物を可変静水圧試験装置に入れ所定の窒素圧サイクルに供する。上記圧力サイクルの終了時に、上記混合物の密度を測定し、初期密度と比較する。その後、中空微小粒子の残存百分率を、下記の式によって判定する:
(式中、P
Iは、上記混合物の初期密度であり;P
Fは、上記混合物の最終密度であり;P
Tは、タルクの密度であり;Bは、上記混合物中の中空微小粒子の質量であり;Tは、上記混合物中のタルクの質量である)。
【0061】
本明細書において説明している中空微小粒子の破裂圧力(“破壊試験”)は、90%程度の残存百分率(“約90%の目標残存率)を上記試験法を使用して測定している静水圧に相応する。
好ましくは、上記破裂圧力は、好ましくは800バール未満である。このことは、この値よりも高いと、上記トレッドの慣らし運転メカニズムが、中空微小粒子の破裂に対する極めて高い抵抗性故に、もはや十分に明確ではないことが判明していることによる。
【0062】
好ましくは、上記中空微小粒子は、200バールよりも高い破裂圧力を有する。このことは、破裂圧力が200バールよりも低い場合、これら中空微小粒子の多くがトレッドの製造中に破壊することが判明していることによる。
極めて好ましくは、上記破裂圧力は、300バールよりも高い;これによって、トレッドの製造中の破壊中空微小粒子数を制限すること可能にする。
【0063】
上記中空微小粒子は、中空のガラス、セラミック、金属、シリカ、アルミナおよびジルコニアの各微小粒子、並びにこれら中空微小粒子の混合物の群から選ばれる。
好ましくは、中空のガラスおよび/またはセラミック微小粒子を使用する。
【0064】
上記トレッドの中空微小粒子の含有量は、1容量%と40容量%の間、好ましくは5容量%と35容量%の間の量である。1%よりも低いと、上記微小球の効果が不十分となり、40%よりも高いと、中空微小粒子の満足し得る分散でもってのトレッドの製造が困難となる。
【0065】
上記中空微小粒子は、任意の有用な形状を有し得る。多くの実施態様において、上記中空微小粒子は、球形、長方形または楕円形を有する。特定の実施態様においては、上記中空微小粒子は、球形を有し、中空微小球と称する。
【0066】
上記中空微小粒子の容積平均直径は、5〜500ミクロンの範囲内である。中空ガラスまたはセラミック微小球の場合、この容積平均直径は、好ましくは20ミクロンと150ミクロンの間である。20ミクロンよりも小さいと、中空微小粒子の破壊に対する抵抗性が高過ぎ、150ミクロンよりも大きいと、その逆である。双方の場合において、上記慣らし運転メカニズムは、もはや十分に明確ではない。
【0067】
これら中空微小粒子の破裂圧力特性、材料特性および形状特性によれば、上記中空微小粒子の密度は、0.3と2の間である。
十分な破裂圧力を有しながら密度が低いほど、上記中空微小粒子の機械的慣らし運転後の効果はより実質的である。従って、0.3と0.4の間の密度が、中空ガラスまたはセラミック微小球においては特に有利である。
【0068】
ガラス製の中空微小球の例は、3M社から、標章:3M(登録商標) Glass Bubbles S32、S38、S38HSおよびS60HSとして入手可能である。セラミック製の中空微小球の例は、Trelleborg Fillite社から標章:106および160として入手可能である。
【0069】
I‐1‐D. ナノメートルまたは補強用充填剤
上記で説明した熱可塑性エラストマーは、それ自体単独で、本発明に従うトレッドが有用であるためのエラストマーとして十分である。
【0070】
補強用充填剤を使用する場合、タイヤの製造において一般的に使用する任意のタイプの充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特にカーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0071】
タイヤにおいて通常使用する全てのカーボンブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN722)、実際にはN990でさえも挙げられる。
【0072】
用語“補強用無機充填剤”とは、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックと対比して、“白色充填剤”、“透明充填剤”としても、または“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤ製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強役割において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置換わり得る、その色合およびその由来(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0073】
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な高密度化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、用語“補強用無機充填剤”は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物を意味することも理解されたい。
【0074】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO
2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al
2O
3)が、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gであるBET比表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(HDS)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0075】
補強用無機充填剤を上記エラストマーにカップリングさせるためには、例えば、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)と上記エラストマー間に化学的および/または物理的性質の十分な結合を与えることを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用することが可能である。
【0076】
上記組成物中の補強用充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の容量による含有量は、0〜20%の範囲内であり、この含有量は、無可塑剤組成物における0〜50phrの含有量に相応する。好ましくは、上記組成物は、30phrよりも少ない、より好ましくは10phrよりも少ない補強用充填剤を含む。本発明の好ましい別の形態によれば、上記組成物は、補強用充填剤を含まない。
【0077】
I‐1‐E. 可塑剤
上記で説明した熱可塑性エラストマーは、それ自体単独で、本発明に従うトレッドが有用であるためのエラストマーとして十分である。
しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、上記エラストマー組成物は、増量用オイル(または可塑化用オイル)または可塑化用樹脂のような可塑剤も含み得る;その役割は、トレッドの加工、特に、タイヤへのその一体化を、モジュラスを低下させ且つ粘着付与力を増強することによって容易にすることである。
【0078】
好ましくは弱極性を有し、エラストマー、特に熱可塑性エラストマーを増量または可塑化することのできる任意の増量用オイルを使用し得る。周囲温度(23℃)において、これらのオイルは、多かれ少なかれ粘稠であり、特に本来固体である樹脂またはゴムと対比して液体(即ち、注釈すれば、最終的にその容器形状を取る能力を有する物質)である。また、当業者にとって既知の任意のタイプの可塑化用樹脂も使用し得る。
例えば、上記増量用オイルは、低粘度パラフィン系オイル(LVPO)のようなパラフィン系オイルからなる群から選ばれる。
【0079】
当業者であれば、以下の説明および実施例に照らせば、可塑剤の量を、使用するTPEエラストマー(上述したような)および上記トレッドを備えたタイヤの特定の使用条件の関数として、特に、そのトレッドを使用することを意図するタイヤの関数として如何にして調整するかは承知しているであろう。
使用する場合、増量用オイルの含有量は、目標とするTgおよび目標とするモジュラスに従い、好ましくは0〜80phr、より好ましくは0〜50phrの範囲にある。
【0080】
I‐1‐F. 各種添加剤
さらにまた、上記トレッドは、当業者にとって既知のトレッド中に通常存在する各種添加剤も含み得る。例えば、当業者にとって既知の層状充填剤のような不活性マイクロメートル充填剤;酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤、UV安定剤のような保護剤;各種加工助剤または他の安定剤;或いは、タイヤの残余の構造体への接着を促進することのできる促進剤が挙げられる。同様に、また、必要に応じて、本発明のトレッドの組成物は、当業者にとって既知の架橋系も含み得る。好ましくは、上記組成物は、架橋系を含まない。
【0081】
上記で説明したエラストマー以外に、上記トレッドの組成物は、上記ブロックエラストマーに対して質量による小画分に常に従って、例えば、熱可塑性ポリマー、特に、ポリ(パラ‐フェニレンエーテル)ポリマー(略号“PPE”で示す)のようなエラストマー以外のポリマーも含み得る。これらのPPE熱可塑性ポリマーは、当業者にとって周知である;これらのPPEポリマーは、周囲温度(20℃)において固体であり且つスチレンポリマーと相溶性であって、熱可塑性ブロックがスチレンブロックであるTPEエラストマーのTgを上昇させるのに特に使用されている樹脂である(例えば、"Thermal, Mechanical and Morphological Analyses of Poly(2,6‐dimethyl‐1,4‐phenylene oxide)/Styrene‐Butadiene‐Styrene Blends", Tucker, Barlow and Paul, Macromolecules, 1988, 21, 1678‐1685を参照されたい)。
【0082】
I‐2. トレッドの製造
本発明の主題であるトレッドは、任意の混合方法によって、特に、任意の液相混合方法、特に、弱剪断を使用する方法によって加工し得る。また、上記トレッドは、TPEにおける通常通りに、例えばビーズまたは顆粒形で入手し得る出発材料を使用する押出または成形によっても加工し得る。
【0083】
本発明に従うタイヤ用のトレッドは、例えば、各種成分をツインスクリュー押出機内で混入してマトリックスの溶融および全ての成分の混入を実施し、次いで、上記形状要素の製造を可能にするダイを使用することによって製造する。使用する手段および条件は、加工中に上記微小球を破壊しないように適応させなければならない。特に、上記微小球を、TPEが完全に溶融しているときのみの押出機本体内に導入することが重要である。トレッドを、その後、タイヤ硬化用のモールド内で成形する。
【0084】
上記TPEのエラストマーブロックが飽和エラストマーブロックである場合、タイヤ内に、上記トレッドの下の接着層(不飽和エラストマーブロックを有するTPEを含む)を含ませて、上記トレッドと最終タイヤ内の隣接層との接着を促進させることが必要であり得る。
【0085】
このトレッドは、タイヤに通常通りに取付け得る;上記タイヤは、本発明に従うトレッド以外に、クラウン、2枚の側壁および2本のビード、これら2本のビードに固定されているカーカス補強材、およびクラウン補強材を含む。必要に応じて、また、上述したように、本発明に従うタイヤは、さらに、下地層および接着層を上記トレッドとクラウンの間に含み得る。
【0086】
II. 本発明の実施例
本発明に従うタイヤ用のトレッド組成物を、上述したようにして、180℃のスクリュー温度を有し、熱可塑性マトリックスの溶融とその成形を可能にするツインスキュー押出機に導入したSBS熱可塑性エラストマーマトリックス(Europrene社からのSOLT 166)によって製造した。中空微小粒子は、熱可塑性エラストマーマトリックスが既に完全に溶融しているような、熱可塑性エラストマーマトリックスの下流において押出内に導入する。数種の中空微小粒子、即ち、ガラス微小球およびセラミック微小球を使用した。中空微小球の導入は、ツインスクリュー内で十分に早期に実施して、これら微小球の分散を正確に実施するようにする。フラットダイをツインスクリュー押出機のヘッドに配置して、タイヤトレッドの製造に必要な形状要素を得るようにする。
【0087】
上記形状要素中の中空微小球の観察は、電子顕微鏡によって実施し得る;中空微小球およびある場合のその崩壊は、容易に見分けられる。さらに具体的には、本発明者等は、中空微小球の破裂圧力が200バールよりも低い場合、無数の崩壊中空微小球を観察し;一方、上記破裂圧力が300バールよりも高い場合、極めて多数の中空微小球が組成物の製造段階後に完全なままであることを観察している。
【0088】
試験した中空微小粒子の特性、提供した供給元を、下記の表1に示している。
表1
【0089】
試験したトレッド混合物の配合を下記の表2に示す。対照は、組成物C‐01であり、熱可塑性エラストマーのEuroprene SOLT 166のみを含む。他の混合物は、全て、同じマトリックスを含み、これにガラスまたはセラミック微小球を30容量%の含有量で添加している。Phrでの中空微小球の含有量は、括弧内に示している。
【0091】
本発明に従うタイヤを、通常の方法に従い、当業者にとって既知の通常の構成要素、即ち、クラウン、2枚の側壁および2本のビード、これら2本のビードに固定したカーカス補強材、クラウン補強材およびトレッドによって製造した;トレッドは、本発明の必要条件に関して説明しているトレッドである。
【0092】
タイヤの加硫後、トレッドのショアA硬度の測定を、試験した各組成物において実施する。その後、各タイヤを100kmの走行に供し、ショアA硬度の2回目の測定を実施する。ショアA硬度の測定は、規格ASTM D 2240に従って実施する。
【0093】
走行の前後において実施したショアA硬度の測定値を下記の表3に示す。
表3
【0094】
これらのトレッドは、全て、100kmの走行後、そのショア硬度の低下を示している。この順応化現象は、周知であって、トレッドにおいて常に観察されるが、その変化は、中空微小球を含まないトレッドにおけるよりも中空微小球を含む組成物におけるほうが平均2倍ほど大きい。
【0095】
電子顕微鏡による観察を、100kmの走行後のトレッドにおいて実施した。これらの観察は、多くの中空微小球がトレッドの薄い表面層中、即ち、表面の2〜3mmにおいて崩壊していたのに対し、深部では、大多数の中空微小球は完全なままであったことを示していた。
【0096】
従って、ショアA硬度の低下は、実際上、粗い地面上での走行に関連した高局所圧による中空微小球の薄いトレッド表面層内での破壊の結果である。従って、中空微小球の存在は、混合物の剛性が混合物の嵩内では影響を受けず、中空微小球の悪影響を受けないことから、走行中に、グリップ特性にとって好ましいトレッドの剛性勾配を車両のハンドリング性を損なうことなく創生することを効果的に可能にする。
【0097】
当業者であれば、中空微小粒子の含有量と性質を如何に調製して、所望するグリップ効果および操作条件(タイヤのタイプ、走行操作)の関数としての予測剛性低下を得るかは承知しているであろう。