特許第6093775号(P6093775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズの特許一覧

特許6093775自動認識治療用R/DNAキメラナノ粒子(NP)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093775
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】自動認識治療用R/DNAキメラナノ粒子(NP)
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20170227BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C12N15/00 GZNA
   A61K31/713
   A61P31/04
   A61P31/10
   A61P31/14
   A61P33/00
   A61P35/00
【請求項の数】54
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2014-542565(P2014-542565)
(86)(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公表番号】特表2015-500005(P2015-500005A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】US2012065945
(87)【国際公開番号】WO2013075140
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】61/561,257
(32)【優先日】2011年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/698,113
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514124403
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100102668
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲生
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【弁理士】
【氏名又は名称】牛山 直子
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ, ブルース アレン
(72)【発明者】
【氏名】アフォーニン, キリル アンドレーヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヤール, マティアス デニス
(72)【発明者】
【氏名】ビンデヴァルト, エッカート エイチ. ユー.
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0234109(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0035233(US,A1)
【文献】 特表2014−533953(JP,A)
【文献】 HOGREFE R.I. et al,Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids,25(2006),p.889-907
【文献】 HOERTER J.A. et al,PLoS ONE,6(5)(2011 May),e20359
【文献】 Zhang D.Y. et al,SCIENCE,318(2007),p.1121-1125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/113
A61K 31/713
A61P 31/04
A61P 31/10
A61P 31/14
A61P 33/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのキメラナノ粒子を含むR/DNAキメラ多機能ナノ粒子(R/DNA NP)であって、
第1キメラナノ粒子が第1DNAオリゴヌクレオチド及びその長さに沿ってハイブリダイズする1又はそれ以上の相補的第1RNAオリゴヌクレオチドを含み、
第2キメラナノ粒子が第2DNAオリゴヌクレオチド及びその長さに沿ってハイブリダイズする1又はそれ以上の相補的第2RNAオリゴヌクレオチドを含み、
第1DNAオリゴヌクレオチドが、第2DNAオリゴヌクレオチドに相補的であり、
1又はそれ以上の第1RNAオリゴヌクレオチドが、1又はそれ以上の第2RNAオリゴヌクレオチドに相補的であり、
第1DNAオリゴヌクレオチドが、少なくとも5ヌクレオチドからなる5’トーホールド配列を含み
2DNAオリゴヌクレオチドが、少なくとも5ヌクレオチドからなり5’トーホールド配列に相補的な3’トーホールド配列を含
5’トーホールド及び3’トーホールドのハイブリダイゼーションとそれに続く相補的な第1RNAオリゴヌクレオチド及び第2RNAオリゴヌクレオチドの再会合によってDNA二重鎖と1又はそれ以上の機能的なRNA二重鎖が形成される、
R/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項2】
前記1又はそれ以上の機能的なRNA二重鎖が、ダイサー基質を形成し、ダイサーによる切断後にsiRNAに変換される、請求項1に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項3】
前記siRNAが、標的RNAを阻害する、請求項2に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項4】
前記標的RNAが、阻害された場合に治療的に有利な結果を生じるものである、請求項3に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項5】
前記標的RNAが、疾患の経過及びその一部に関与するタンパク質をコードするRNAを含む、請求項3又は4に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項6】
前記標的RNAが、アポトーシス阻害タンパク質をコードする、請求項3〜5のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項7】
前記アポトーシス阻害タンパク質が、BCL−2、FLIP、STAT3及びXIAPからなる群から選択される、請求項6に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項8】
前記標的RNAが、病原性RNAゲノム、病原性物質のゲノム由来のRNA転写産物、又はそれらの一部である、請求項3〜5のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項9】
前記第1キメラナノ粒子が、蛍光タグ、細胞取り込みを促進するRNA−フルオロフォア複合体ドメイン、スプリット機能性ドメイン、スプリットリパーゼ及びスプリットGFPからなる群から選択される第1機能性部分を含む、請求項1に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項10】
前記第2キメラナノ粒子が、蛍光タグ、細胞取り込みを促進するRNA−フルオロフォア複合体ドメイン、スプリット機能性ドメイン、スプリットリパーゼ及びスプリットGFPからなる群から選択される第2機能性部分を含む、請求項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項11】
前記第1又は第2機能性部分が、認識ドメインである、請求項又は10に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項12】
前記認識ドメインが、認識標的に結合する、請求項11に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項13】
前記認識標的が、標的細胞上に位置するか、又はその中に位置する、請求項12に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項14】
前記標的細胞が、疾患細胞である、請求項13に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項15】
前記疾患細胞が、腫瘍形成細胞、病原性物質に感染した細胞及び遺伝的障害を有する細胞からなる群から選択される、請求項14に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項16】
前記認識ドメインが、核酸分子、ポリペプチド、又はそれらのフラグメントに特異的に結合する、請求項1115のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項17】
前記認識ドメインが、細胞膜ポリペプチド又は細胞膜構造に特異的に結合する、請求項16に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項18】
前記細胞膜ポリペプチド又は細胞膜構造が、癌特異的膜タンパク質又は構造である、請求項17に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項19】
前記認識ドメインが、アプタマーである、請求項1118のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項20】
前記5’トーホールドが5〜50ヌクレオチドを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項21】
前記5’トーホールドが〜30ヌクレオチドを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項22】
前記3’トーホールドが5〜50ヌクレオチドを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項23】
前記3’トーホールドが〜30ヌクレオチドを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項24】
少なくとも1つのオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項25】
前記修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)、2’フルオロアミダイト及び2’OMe RNAアミダイトからなる群から選択される、請求項24に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項26】
前記R/DNAキメラ多機能ナノ粒子が、少なくとも1組の追加のキメラナノ粒子を更に含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項27】
一方の追加のキメラナノ粒子が3’トーホールド配列を含み、他方の追加のキメラナノ粒子が相補的5’トーホールド配列を含む、請求項26に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子を含む組成物。
【請求項29】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子を含む医薬組成物。
【請求項30】
薬学的に許容可能な賦形剤、担体又は希釈剤を更に含む、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記医薬組成物が疾患の治療用に製剤化される、請求項29又は30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記医薬組成物が病原性物質による感染症の治療用に製剤化される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記病原性物質がウイルス、細菌、真菌又は寄生体である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記病原性物質がウイルスである、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記病原性物質がRNAウイルスである、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記医薬組成物が、病原性物質による感染と関連する症状を治療又は低減する第2剤を更に含む、請求項3235のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記第2剤が抗ウイルス剤である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記医薬組成物が腫瘍形成の治療用に製剤化される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記医薬組成物が、腫瘍形成と関連する症状を治療又は低減する第2剤を更に含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記第2剤が抗癌剤である、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のR/DNAキメラ多機能ナノ粒子、又は請求項2840のいずれか一項に記載の組成物を含む、キット。
【請求項42】
前記キットが第2治療剤を更に含む、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記第2治療剤が抗癌剤又は病原性物質による感染症と関連する症状を治療若しくは低減する剤である、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
前記キットが標的遺伝子の選択的阻害に使用される、請求項4143のいずれか一項に記載のキット。
【請求項45】
前記キットがRNAの選択的阻害に対するキットの使用のための説明書を含む、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記キットがRNAの阻害のために使用される、請求項4143のいずれか一項に記載のキット。
【請求項47】
前記キットがRNAの選択的阻害のための説明書を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記キットが腫瘍形成の治療のために使用される、請求項4143のいずれか一項に記載のキット。
【請求項49】
前記キットが新生物の治療のための説明書を含む、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記キットが病原性感染症の治療に使用される、請求項4143のいずれか一項に記載のキット。
【請求項51】
前記キットが病原性感染症の治療のための説明書を含む、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記病原性物質がウイルス、細菌、真菌又は寄生体である、請求項50又は51に記載のキット。
【請求項53】
前記病原性物質がウイルスである、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
前記ウイルスがRNAウイルスである、請求項53に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月17日付で出願された米国仮出願番号第61/561,257号及び2012年9月7日付で出願された米国仮出願番号第61/698,113号の利益を主張し、これらの内容はその全体において参照により援用される。
【0002】
連邦政府による委託研究のもと行われた発明に対する権利に関する記載
本研究は、米国保健研究所の支援を受けた。政府は、本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
過去数年において、生物医学適用のためのRNA干渉(RNAi)の使用に対する関心が非常に高まっている。RNAiは、二本鎖RNA(dsRNA)、並びに一組の具体的なタンパク質及び酵素を利用する遺伝子サイレンシングの転写後配列特異的プロセスである。簡単に作用機構を説明すると、RNaseIII様酵素であるダイサーが、dsRNAを短い二重鎖(21〜23bp)へとプロセッシングする。これらの短干渉RNA(siRNA)と呼ばれる二重鎖は、その後RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)へとロードされ、パッセンジャー又はセンスと呼ばれる一方のsiRNA鎖が廃棄される。ガイド又はアンチセンスと呼ばれる他方の鎖は、切断及び翻訳の阻止の対象となる標的mRNAを認識するためにRISCにより使用される。RNAiは、癌及びHIVの治療法としての使用可能性を示す、様々な種において特定の目的遺伝子の選択的な抑制のための強力な技術となった。特定の目的遺伝子に対する合成siRNAは、細胞内へと外因的に導入されてRNAiを活性化する。更に、siRNAよりわずかに長い合成非対照ダイサー基質(25bp)の導入は、サイレンシングの有効性を非常に高める。これは、RISC複合体をsiRNAでロードするプロセスにおけるDicerの関与により説明される。siRNAの可能性にもかかわらず、RNAiの臨床での輸送に関連する幾つかの課題を克服する新規なアプローチが必要とされている。
【0004】
本明細書に記載されるように、本発明は、Dicer基質siRNA二重鎖の機能性を2つのR/DNAハイブリッドへと分割し、これら2つのハイブリッドは同じ罹患細胞内に同時に存在する場合にトーホールド相互作用を介して互いに認識し、活性なsiRNAを放出しながら再会合する。この新規なアプローチは、静脈内分解(R/DNAハイブリッドに関して減少する)、組織特異性(DNA化学はRNAよりも簡素であり、ターゲッティング又は輸送に関する様々な特徴による化学的修飾を受容する)、薬力学(蛍光タグはR/DNAハイブリッドの再会合に際して活性化され得、輸送及び反応を画像化するフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)を補佐する)等のRNAiの臨床での輸送に関連する幾つかの課題を克服する。更に、これら全ての追加の機能性を、R/DNAハイブリッド中のDNA鎖の化学修飾を介して導入することができ、従って、放出されたsiRNAの処理能力を干渉しない。また、これらの機能性の数は、二重鎖ハイブリッド又はより複雑なハイブリッドナノ構造の組成物中に入るDNA鎖の数の少なくとも2倍の多さであってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、再構成して機能性dsRNAを産生することが可能な、R/DNAキメラ多機能ナノ粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、概して第1DNAオリゴヌクレオチド及び相補的第1RNAオリゴヌクレオチドを有する第1キメラナノ粒子、並びに第2DNAオリゴヌクレオチド及び相補的第2RNAオリゴヌクレオチドを有する第2キメラナノ粒子の少なくとも2つのキメラナノ粒子を有し、第1DNAオリゴヌクレオチドが5’トーホールド配列を有し、かつ第2DNAオリゴヌクレオチドが3’トーホールド配列を有する、R/DNAキメラ多機能ナノ粒子(R/DNA NP)を特徴とする。実施形態では、第1RNAは第2RNAに相補的であり、二重鎖の場合siRNAを形成する。
【0007】
実施形態では、R/DNA NPは相補的な5’及び3’トーホールド配列を有する別のキメラナノ粒子対を含有する。
【0008】
実施形態では、第1RNAオリゴヌクレオチドは少なくとも2つのRNAオリゴヌクレオチドを含む。関連する実施形態では、第2RNAオリゴヌクレオチドは、第1RNAオリゴヌクレオチドを構成する少なくとも2つのRNAオリゴヌクレオチドに対応する少なくとも2つのRNAオリゴヌクレオチドを含む。実施形態では、相補的RNAオリゴヌクレオチドの二重鎖形態は、siRNAである。
【0009】
実施形態では、第1キメラナノ粒子及び第2キメラナノ粒子は各々、互いに及びDNAオリゴヌクレオチドに相補的な少なくとも1つの追加のRNAを含む。関連する実施形態では、少なくとも1つの追加のRNAの二重鎖形態はsiRNAである。
【0010】
実施形態では、5’トーホールドは、5〜50ヌクレオチドを含む。別の実施形態では、5’トーホールドは12〜30ヌクレオチドを含む。
【0011】
実施形態では、3’トーホールドは、5〜50ヌクレオチドを含む。別の実施形態では、3’トーホールドは12〜30ヌクレオチドを含む。
【0012】
実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドはロックド核酸(LAN)、2’フルオロアミダイト及び2’OMe RNAアミダイトからなる群から選択される。
【0013】
実施形態では、siRNAは標的RNAを阻害する。一般的に、標的RNAは阻害された場合に治療的に有利な結果を生むものである。実施形態では、標的RNAは、疾患の進行又はその一部に関与するタンパク質をコードするRNAを含む。
【0014】
関連する実施形態では、標的RNAは、アポトーシス阻害タンパク質又はその一部(例えば、Survivin、BCL−2、FLIP、STAT3及びXIAP)をコードするRNAを含む。
【0015】
関連する実施形態では、標的RNAは病原性RNAゲノム、すなわち病原性物質のゲノムに由来するRNA転写産物又はその一部である。一部の実施形態では、標的RNAはウイルスRNAゲノム又はその一部(例えば、HIVゲノム)である。
【0016】
上記態様及び実施形態のいずれにおいても、第1キメラナノ粒子は、第1機能性部分を含み得る。
【0017】
上記態様及び実施形態のいずれにおいても、第2キメラナノ粒子は、第2機能性部分を含み得る。
【0018】
関連する実施形態では、第1及び/又は第2機能性部分は、認識ドメインである。実施形態では、認識ドメインは、認識標的に結合する。認識標的は標的細胞上又はその中に位置し得る。
【0019】
実施形態では、標的細胞は疾患細胞(例えば、新生物細胞、病原体に感染した細胞、又は遺伝障害を有する細胞)である。
【0020】
実施形態では、認識ドメインは、核酸分子、ポリペプチド又はそれらの断片に特異的に結合する。
【0021】
実施形態では、蛍光タグ、細胞内取り込みを促進するドメイン、スプリット機能性ドメイン、スプリットリパーゼ及びスプリットGFP。また、一部の実施形態では、機能性部分は、会合に際してシグナルを発するRNA−フルオロフォア複合体であってもよい。Paige,J.S.et al,Science 333:642−646(2011)を参照されたい。
【0022】
実施形態では、認識ドメインはアプタマーである。実施形態では、アプタマーは、細胞膜ポリペプチド又は細胞膜構造を結合する。細胞膜ポリペプチド又は細胞膜構造は、疾患特異的膜タンパク質又は構造(例えば、癌特異的膜タンパク質又は構造、病原性物質による感染と関連する特異的膜タンパク質又は構造等)であり得る。実施形態では、アプタマーは、細胞中の分子を結合する。例えば、アプタマーは、標的細胞中の核酸分子又はその一部(例えば、DNA分子、RNA分子又はそれらのフラグメント)を結合し得る。
【0023】
一部の実施形態では、R/DNA NPは、少なくとも1つの本明細書(明細書及び図面)に記載される配列を含有する。
【0024】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるR/DNA NPを使用する方法を特徴とする。
【0025】
態様では、本発明は、細胞における標的遺伝子の発現を阻害又は低減する方法を特徴とする。実施形態では、前記方法は、細胞と、治療的有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのR/DNA NPとを接触させることを含む。実施形態では、細胞は被験体内にある。
【0026】
態様では、本発明は病原体に感染した細胞を死滅させる方法を特徴とする。実施形態では、前記方法は、細胞と、治療的有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのR/DNA NPを接触させることを含む。実施形態では、細胞は被験体内にある。
【0027】
態様では、本発明は、細胞における病原体の複製を阻害する方法を特徴とする。態様では、前記方法は、細胞と、治療的有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのR/DNA NPを接触させることを含む。実施形態では、細胞は被験体内にある。
【0028】
態様では、本発明は、被験体における病原性負荷を低減する方法を特徴とする。実施形態では、前記方法は、治療的有効量の治療的有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのR/DNA NPを投与することを含む。実施形態では、被験体は病原性感染症を発症するリスクがある。実施形態では、前記被験体は病原性感染症に罹患していると診断されている。
【0029】
態様では、本発明は、被験体における病原性感染症を治療又は予防する方法を特徴とする。実施形態では、前記方法は、治療的有効量の治療的有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのR/DNA NPを投与することを含む。実施形態では、前記方法は、病原性負荷を低減することにより、病原性感染症を治療又は予防する。実施形態では、前記方法は、感染した細胞の死を誘導することにより、病原性感染症を予防又は治療する。
【0030】
上記態様及び実施形態のいずれにおいても、前記被験体は哺乳類(例えば、ヒト)であり得る。
【0031】
上記態様及び実施形態のいずれにおいても、前記病原体はウイルス、細菌、真菌又は寄生体であり得る。一部の実施形態では、病原体はウイルス(例えば、HIV)である。
【0032】
上記態様及び実施形態のいずれにおいても、前記方法は、前記細胞と治療的有効量の第2治療剤を更に接触させることを含むか、又は治療的有効量の第2治療剤を被験体に更に投与することを含み得る。第2治療剤は、病原性感染症又は病原性感染症に関連する症状を治療し得る。例えば、第2治療剤は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤又は駆虫剤であり得る。かかる薬剤は当該技術分野においてよく知られており、第2治療剤の適切な用量を選択及び決定することは内科医の権限の範囲内である。例えば、それらの内容が全体において参照により援用される、Drug Information Handbook:A Comprehensive Resource or All Clinicians and Healthcare Professionals,20th Ed.,C.F.Lacy et al.(eds.)(Lexi−Comp 2011);Johns Hopkins ABX Guide:Diagnosis&Treatment of Infectious Diseases,2nd Ed.,J.G.Bartlett et al.(eds.)(Jones&Bartlett Publishers 2010);及びMandell,Douglas,and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases:Expert Consult Premium Edition,7th Ed.,G.L.Mandell(ed.)(Churchill Livingstone 2009);The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy 2012,42nd Ed.,D.N.Gilbert et al.(eds.)(Antimicrobial Therapy 2012);Clinical Infectious Disease 2013,11th Ed.,C.G.Weber(ed.)(Pacific Primary Care Software 2012)を参照されたい。
【0033】
態様では、本発明は、新生物細胞を死滅させる方法を特徴とする。実施形態では、前記方法は、細胞と、治療的有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのR/DNA NPを接触させることを含む。実施形態では、細胞は被験体内にある。
【0034】
態様では、本発明は、腫瘍形成を有する被験体を治療する方法を特徴とする。実施形態では、前記方法は、治療的有効量の治療的有効量の本明細書に記載される少なくとも1つのR/DNA NPを投与することを含む。
【0035】
実施形態では、腫瘍形成細胞は、固形腫瘍に存在する癌細胞である。実施形態では、癌は、乳癌、前立腺癌、黒色腫、神経膠芽腫、結腸癌、卵巣癌及び非小細胞性肺癌からなる群から選択される。
【0036】
関連する実施形態では、前記方法は、前記細胞と治療的有効量の第2治療剤を接触させることを含むか、又は治療的有効量の第2治療剤を被験体に投与することを含み得る。一部の実施形態では、第2治療剤は抗癌剤である。抗癌剤は、当該技術分野においてよく知られており、任意のかかる薬剤は本発明における使用に好適である。例えば、それらの内容が全体において参照により援用される、Anticancer Drugs:Design,Delivery and Pharmacology(Cancer Etiology,Diagnosis and Treatments)(eds.Spencer,P.& Holt,W.)(Nova Science Publishers,2011);Clinical Guide to Antineoplastic Therapy:A Chemotherapy Handbook(ed.Gullatte)(Oncology Nursing Society,2007);Chemotherapy and Biotherapy Guidelines and Recommendations for Practice(eds.Polovich,M.et al.)(Oncology Nursing Society,2009);Physicians’Cancer Chemotherapy Drug Manual 2012(eds.Chu,E.&DeVita,Jr.,V.T.)(Jones&Bartlett Learning,2011);DeVita,Hellman,and Rosenberg’s Cancer:Principles and Practice of Oncology(eds.DeVita,Jr.,V.T.et al.)(Lippincott Williams&Wilkins,2011);及びClinical Radiation Oncology(eds.Gunderson,L.L.&Tepper,J.E.)(Saunders)(2011)を参照されたい。例えば、抗癌剤の非限定的な例として、アビラテロンアセテート、アファチニブ、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミホスチン、アミノグルテチミド、アナグレリド、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、アザチオプリン、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロチン(Bexarotine)、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デシタビン、ドセタキセル、デキサメタゾン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポエチンアルファ、エポチロン、エルロチニブ、エストラムスチン、エチノスタット(Etinostat)、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、葉酸結合アルカロイド、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、GM−CT−01、ゴセレリン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、イリノテカン、イクサベピロン、ラパチニブ、ロイコボリン、ロイプロリド、レナリドマイド、レトロゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、ネララビン、ニロチニブ、ニルタミド、オクトレオチド、オファツムマブ、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パニツムマブ、ペメトレキセド、ペントスタチン、多糖類ガレクチン阻害剤、プロカルバジン、ラロキシフェン、レチノイン酸、リツキシマブ、ロミプロスチム、サルグラモスチム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、タモキシフェン、テムシロリムス、テモゾラミド、テニポシド、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、VEGF阻害剤及びトラップ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンタフォリド(EC145)、ボリノスタット又はこれらの塩が挙げられる。
【0037】
上記態様及び実施形態のいずれにおいても、病原体は、当該技術分野において公知の任意のウイルス、細菌、真菌又は寄生体であり得る。例えば、Clinical Infectious Disease 2013,11th Ed.,C.G.Weber(ed.)(Pacific Primary Care Software 2012)を参照されたい。
【0038】
細菌性病原体の例として、アエロバクター、アエロモナス、アシネトバクター、アクチノミセス・イスラエリイ、アグロバクテリウム、バチルス、炭疽菌、バクテロイデス、バルトネラ、ボルデテラ、ボルテラ、ボレリア、ブルセラ、バークホルデリア、カリマトバクテリウム、カンピロバクター、シトロバクター、クロストリジウム、ウェルシュ菌、破傷風菌、コリネバクテリウム、コリネバクテリウム・ジフテリエ、コリネバクテリウム属、エンテロバクター、エンテロバクター・アエロゲネス、エンテロコッカス、豚丹毒菌、大腸菌、フランシセラ、フゾバクテリウム・ヌクレアタム、ガードネレラ、ヘモフィルス、ハフニア、ヘリコバクター、クレブシエラ、肺炎桿菌、乳酸桿菌、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、モルガネラ、モラクセラ、マイコバクテリウム、ナイセリア、パスツレラ、パスツレラ・ムルトシダ、プロテウス、プロビデンシア、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、セラチア、赤痢菌、ブドウ球菌、ステントロホモナス(Stentorophomonas)、連鎖球菌、ストレプトバシラス・モニリフォルミス、トレポネーマ、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマ、キサントモナス、ビブリオ及びエルシニアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
ウイルスの例として、レトロウイルス科(例えば、HIV−1(HDTV−III、LAVE若しくはHTLV−III/LAVとも呼ばれる、又はHIV−III等のヒト免疫不全ウイルス;及びHIV−LP等の他の分離株;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラウイルス科(Flaviridae)(例えば、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス);コロノウイルス科(Coronovirus)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブンガウイルス科(Bungaviridea)(例えば、ハンターンウイルス、ブンガウイルス(bunga virus)、フレボウイルス及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス及びロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポーバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(殆どのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス)、及びイリドウイルス科(例えば、アフリカ豚コレラウイルス);並びに未分類ウイルス(例えば、D型肝炎の作用因子(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライトウイルスと考えられている)、非A非B型肝炎の作用因子(クラス1=内部感染;クラス2=非経口感染(すなわち、C型肝炎);ノーウォーク及び関連ウイルス、並びにアストロウイルス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
病原性真菌の例として、限定されることなく、アルテルナリア、アスペルギルス、バシディオボールス、ビポラリス、ブラストシゾミセス、カンジダ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・グラブラタ(旧名トルロプシス・グラブラタ)、カンジダ・パラプシロシス、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・プソイドトロピカリス、カンジダ・グイリエルモンディ、カンジダ・ドゥブリニエンシス及びカンジダ・ルシタニエ、コクシジオイデス、クラドフィアロフォラ、クリプトコッカス、カニングハメラ、カーブラリア、エクソフィアラ、フォンセケア、ヒストプラズマ、マズレラ、マラセチア、プラストミセス(Plastomyces)、ロドトルラ、スケドスポリウム、スコプラリオプシス、スポロボロマイセス、白癬及びトリコスポロンが挙げられる。
【0041】
寄生体は、細胞内であるか細胞外であるかに基づいて分類される。本明細書で使用される「細胞内寄生体」は、その生活環全体が細胞内にある寄生体である。ヒト細胞内寄生体として、リーシュマニア、マラリア原虫、クルーズトリパノソーマ、トキソプラズマ原虫、バベシア、及び旋毛虫が挙げられる。本明細書で使用される「細胞外寄生体」は、その生活環全体が細胞外にある寄生体である。ヒトに感染し得る細胞外寄生体として、赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫、エンテロシトゾーン・ビエヌーシ、ネグレリア及びアカントアメーバ、並びに殆どの蠕虫が挙げられる。更に別の種類の寄生体は、主に細胞外であるが、生活環の中で危機的な段階には偏性に細胞内に存在すると定義される。かかる寄生体は本明細書において「偏性細胞内寄生体」と呼ぶ。これらの寄生体は、それらの生涯の大半又は生涯の一部のみが細胞外環境に存在し得るが、それら全てが生活環の中で少なくとも(at lest)1度の偏性細胞内段階を有する。この後者の分類の寄生体として、ローデシアトリパノソーマ及びガンビアトリパノソーマ、イソスポラ、クリプトスポリジウム、アイメリア、ネオスポラ、サルコシスチス、並びに住血吸虫が挙げられる。一態様では、本発明は、細胞内寄生体及び生活環において少なくとも1度の細胞内段階を有する偏性細胞内寄生体により生じる感染症の予防及び治療に関する。一部の実施形態では、本発明は、細胞内に優勢である偏性細胞内寄生体による感染症の予防を対象とする。本発明の一部の態様に関する寄生体の非限定的な一覧の例として、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、並びに三日熱マラリア原虫等のマラリア原虫属及びトキソプラズマ原虫が挙げられる。血液媒介寄生体及び/又は組織寄生体として、プラスモジウム属、バベシアミクロティ、多型バベシア、熱帯リーシュマニア、リーシュマニア属、ブラジルリーシュマニア、ドノバンリーシュマニア、ガンビアトリパノソーマ及びローデシアトリパノソーマ(アフリカ睡眠病)、クルーズトリパノソーマ(シャーガス病)、並びにトキソプラズマ原虫が挙げられる。血液媒介寄生体及び/又は組織寄生体として、プラスモジウム、バベシアミクロティ、多型バベシア、熱帯リーシュマニア、リーシュマニア、ブラジルリーシュマニア、ドノバンリーシュマニア、ガンビアトリパノソーマ及びローデシアトリパノソーマ(アフリカ睡眠病)、クルーズトリパノソーマ(シャーガス病)、並びにトキソプラズマ原虫が挙げられる。
【0042】
また、本発明は、本明細書に記載される少なくとも1つのR/DNA NPを含有する組成物(医薬組成物を含む)を特徴とする。また、実施形態では、前記組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、担体又は希釈剤をも含有する。
【0043】
実施形態では、前記組成物は、本明細書に記載される少なくとも1つの方法に使用される。
【0044】
実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤を更に含有する。一部の実施形態では、第2治療剤は、病原性物質による感染症と関連する症状を治療又は低減する。一部の実施形態では、第2治療剤は抗癌剤である。
【0045】
本発明は、本明細書に記載されるR/DNA NP及び/又は組成物を含むキットを更に特徴とする。実施形態では、前記キットは、本明細書に記載される少なくとも1つの方法に使用される。関連する実施形態では、前記キットは、本明細書に記載される少なくとも1つの方法におけるキットの使用に関する指示書を更に含む。
【0046】
一部の実施形態では、前記キットは、少なくとも1つの追加の治療剤を含む。実施形態では、第2治療剤は、病原性物質による感染症と関連する症状を治療又は低減する。実施形態では、第2治療剤は抗癌剤である。
【0047】
RNAi経路並びに標的とされる細胞又は疾患細胞内の他の機能性を誘発する手段である、コンピューターにより設計された治療用R/DNAキメラ多機能ナノ粒子(R/DNA NP)が記載される。治療用R/DNA NPは、2つのDNA及び2つのRNAが互いに相補的である、少なくとも一対のRNA/DNA二重鎖である。DNA分子は、相補的なトーホールド配列を有する。各R/DNA NPにおけるトーホールド配列は、分子を再会合させ、DNA/DNA二重鎖及びRNA/RNA二重鎖を生じる。RNA/RNA二重鎖は、標的RNAを阻害するsiRNAとなるように設計される。標的RNAは、それをサイレンシングすることにより治療的効果を有する任意の転写産物であり得る。従って、R/DNA NPは、siRNAが使用されるか、又は使用が考慮される任意の状況において使用され得る。また、R/DNA NP分子は、様々な分子に結合する部分も有し得る。例えば、前記部分は、目的細胞(例えば、疾患細胞、新生物細胞又はウイルスに感染した細胞、例えばHIV感染細胞)上のみに存在する細胞表面タンパク質に結合し得る。従って、前記粒子は、そこで標的遺伝子を阻害することが意図される特定の細胞(例えば、新生物細胞、感染細胞を含む疾患細胞)を標的とし、それに進入する。再会合に続き、siRNAは活性化され、標的遺伝子の阻害をもたらし、治療的に望ましい効果(例えば、新生物細胞又は感染細胞の死)を生じる。
【0048】
本発明の更なる目的及び利点は、一部は以下の記載において明らかにされ、また一部は本明細書から自明であるか、又は本発明の実施により理解されるであろう。本発明の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において指摘されるものを含み、本明細書に開示される要素及び組み合わせの手段により具現化され、達成されるであろう。上記の総合的な記載及び以下の詳細な記載は、両者とも例示及び説明であるにすぎず、請求項に記載される本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。本出願に組み込まれ、本出願の一部を構成する添付の図面は、明細書と共に、本発明の幾つかの実施形態を図解し、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0049】
定義
「治療用R/DNAキメラ多機能ナノ粒子」又は「R/DNA NP」は、DNA分子とRNA分子が相補的である一対のRNA/DNAハイブリッド分子を意味する。第1R/DNA NPのDNA分子は、3’トーホールド配列を有し、第2R/DNA NPのDNA分子は5’トーホールド配列を有する。3’及び5’トーホールド配列は、互いに相補的である。2つのR/DNA NPを混合すると、トーホールド配列は、2つのR/DNA NPの再会合を生じる二重鎖を形成する。再会合の最終結果は、DNA/DNA二重鎖及びRNA/RNA二重鎖であり、ここで、RNA/RNA二重鎖は標的RNAを阻害するsiRNAとして作用するように設計されている。
【0050】
「トーホールド」は、核酸の1本鎖伸長を意味する。R/DNA NPは、相補的なトーホールドの結合が2つのR/DNA NP間の再会合を生じる、相補的なトーホールドを含有する。本明細書で記載されるトーホールドは、5〜50ヌクレオチド長であり、好ましくは12〜30ヌクレオチド長である。
【0051】
「標的RNA」又は「標的ヒトRNA」は、その阻害が治療的に有益である機能性を有するポリペプチドをコードするRNAを意味する。
【0052】
「物質(agent)」は、任意の小分子化合物、抗体、核酸分子若しくはポリペプチド又はそれらのフラグメントを意味する。
【0053】
「改善する」は、疾患の発症又は進行を軽減、抑制、和らげる、縮小、阻止、又は安定化することを意味する。
【0054】
「変更」は、本明細書で記載されるような標準的な当分野で公知の方法により検出される遺伝子又はポリペプチドの発現レベル又は活性の変化(増加又は減少)を意味する。本明細書で使用されるように、変更は、発現レベルにおける10%の変化、発現レベルにおける好ましくは25%の変化、より好ましくは40%の変化、更に最も好ましくは50%以上の変化を含む。
【0055】
「アナログ」は、同一ではないが、類似する機能的特徴又は構造的特徴を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチドアナログは、天然由来のポリペプチドと比較してアナログの機能を増強する特定の生化学的修飾を有しつつ、対応する天然由来のポリペプチドの生物学的活性を維持する。かかる生物学的修飾は、例えばリガンド結合を変更することなく、アナログのプロテアーゼ耐性、膜透過性又は半減期を高め得る。アナログは、非天然アミノ酸を含み得る。
【0056】
本開示では、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有している(containing)」及び「有する(having)」等は、米国特許法においては、それらに属する意味を有し、「包含する(includes)」、「包含している(including)」等を意味し得る;「から本質的になる」又は「本質的にからなる」等は、米国特許法においては属する意味を有し、前記用語は開放型であり、列挙されるものの基本的又は新規な特徴が列挙されるものより多くの存在によって変更されない限り、列挙されるものより多くの存在を認めるが、先行技術の実施形態を除外する。
【0057】
「検出する」は、検出される検体の存在、不在又は量を特定することを指す。
【0058】
「検出可能な標識」は、目的の分子に結合した場合に、分光光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段又は化学的手段を介して後者を検出可能とする組成物を意味する。例えば、有用な標識として、放射性同位体、磁性ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAに通常使用される)、ビオチン、ジゴキシゲニン又はハプテンが挙げられる。
【0059】
「疾患」は、細胞、組織又は器官の正常な機能を損傷する又はそれと干渉する任意の状態又は障害を意味する。
【0060】
「有効量」は、治療していない患者と比較して、疾患の症状を緩和するために必要な量を意味する。疾患の治療的処置のための本発明の実施に使用される活性化合物の有効量は、投与方式、被験体の年齢、体重及び全身の健康状態に応じて変動する。最終的には、担当する内科医又は獣医が適切な量及び投与計画を決定する。かかる量は、「有効」量と呼ばれる。
【0061】
本発明は、治療用の高特異性薬物の開発又は本明細書に記述される方法により特徴づけられる障害に有用な多数の標的を提供する。更に、本発明の方法は、被験体における使用に安全な治療法を特定するための手軽な手段を提供する。更に、本発明の方法は、本明細書に記載される疾患に対する効果に関し、高容量スループット、高感度及び低複雑性で実質的に任意の数の化合物を分析する道を提供する。
【0062】
「フラグメント」は、ポリペプチド又は核酸分子の一部を意味する。この部分は、好ましくは参照核酸分子又はポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%を含有する。フラグメントは、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100、200、300、400、500、600、700、800、900又は1000のヌクレオチド又はアミノ酸を含有し得る。
【0063】
「ハイブリダイゼーション」は、相補的ヌクレオベース間のワトソン−クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合であり得る、水素結合を意味する。例えば、アデニン及びチミンは、水素結合の形成によって一対となる相補的ヌクレオベースである。
【0064】
「腫瘍形成を阻害する」は、腫瘍形成へと発達する細胞の性質を低減すること、又は腫瘍形成の成長又は増殖を遅延、低減若しくは安定化することを意味する。
【0065】
「阻害性核酸」は、二本鎖RNA、siRNA、shRNA若しくはアンチセンスRNA、又はそれらの一部、又はそれらの模倣物を意味し、哺乳類細胞に投与された場合に標的遺伝子の発現減少(例えば、10%、25%、50%、75%、更には90%〜100%)を生じる。典型的には、核酸阻害剤は、標的核酸分子の一部、若しくはそのオーソログを含むか、又は標的核酸分子の相補鎖の少なくとも一部を含む。例えば、阻害性核酸分子は、本明細書に記述される少なくともいずれかの又は全ての核酸の一部を含む。
【0066】
「単離されたポリヌクレオチド」は、本発明の核酸分子が由来する生物の天然のゲノムにおいて前記遺伝子に隣接する遺伝子を含まない核酸(例えばDNA)を意味する。従って、前記用語は、例えば、ベクター中;自律複製可能なプラスミド若しくはベクター中;又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれた組換えDNA、又は他の配列から独立した別々の分子であるDNA(例えば、cDNA、又はPCR若しくは制限酵素消化により産生されたゲノム若しくはcDNAフラグメント)を含む。更に、前記用語は、DNAから転写されたRNA分子、並びに追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。
【0067】
「単離されたポリペプチド」は、天然に付随する成分から分離された本発明のポリペプチドを意味する。典型的には、ポリペプチドは、少なくとも60重量%が、天然に付随しているタンパク質及び天然の有機分子を含まない場合に、単離されている。好ましくは、前記製剤は、本発明のポリペプチドの少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%である。単離された本発明のポリペプチドは、例えば、天然起源からの抽出により、かかるポリペプチドをコードする組換え核酸の発現により、又は前記タンパク質を化学合成することにより得られ得る。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又はHPLC分析による方法によって測定され得る。
【0068】
「マーカー」は、疾患又は障害と関連する発現レベル又は活性の変化を有する任意のタンパク質又はポリヌクレオチドを意味する。
【0069】
「腫瘍形成」は、不適切に高レベルの細胞分裂、不適切に低レベルのアポトーシス、又はこれらの両方により引き起こされるか、又はこれらを生じる任意の疾患を意味する。例えば、癌は腫瘍形成である。癌の例として、限定されることなく、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性多血症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、H鎖病、並びに肉腫及び癌腫等の固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、ナイル管癌(nile duct carcinoma)、絨毛癌、精上皮種、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、希突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫)が挙げられる。リンパ増殖性障害もまた、増殖性疾患とされている。
【0070】
「腫瘍形成細胞」は、腫瘍形成の成分である細胞を意味する。
【0071】
本明細書で使用されるように「作用物質を得ること」における「得ること」は、その作用物質を合成すること、購入すること、或いは別の方法で取得することを含む。
【0072】
「プライマーセット」は、例えばPCRに使用され得る一組のオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーセットは、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、80、100、200、250、300、400、500、600又はそれより多いプライマーからなるであろう。
【0073】
「認識ドメイン」は、認識標的に結合する化学的構造を意味する。
【0074】
「認識標的」は、認識ドメインによって結合される標的細胞表面に存在する構造を意味する。
【0075】
「低減」は、少なくとも10%、25%、50%、75%又は100%の負の変更を意味する。
【0076】
「参照」は、標準又は対照条件を意味する。
【0077】
「参照配列」は、配列比較の基礎として使用される規定された配列である。参照配列は、指定された配列のサブセット又は全体;例えば、全長cDNA又は遺伝子配列のセグメント、又は完全なcNDA若しくは遺伝子配列であってもよい。ポリペプチドについては、参照ポリペプチド配列の長さは、通常、少なくとも約16アミノ酸、好ましくは少なくとも約20アミノ酸、より好ましくは少なくとも約25アミノ酸、また更に好ましくは約35アミノ酸、約50アミノ酸、又は約100アミノ酸であろう。核酸については、参照核酸配列の長さは、通常、少なくとも約50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75ヌクレオチド、また更に好ましくは約100ヌクレオチド若しくは約300ヌクレオチド、又はその近辺若しくはその間の整数であろう。
【0078】
「siRNA」は、二本鎖RNAを意味する。最適には、siRNAは、18、19、20、21、22、23又は24ヌクレオチドの長さであり、その3’末端に2塩基のオーバーハングを有する。これらのdsRNAを個々の細胞又は動物全体に導入することができ、例えば、血流を介して全身に導入され得る。かかるsiRNAは、mRNAレベル又はプロモーター活性の下方制御に使用される。
【0079】
「特異的に結合する」は、本発明のポリペプチドを認識して結合するが、試料、例えば本来的に本発明のポリペプチドを含む生物学的試料中の他の分子を実質的に認識せず、及び結合しない化合物又は抗体を意味する。
【0080】
本発明の方法に有用な核酸分子は、ポリペプチド、非コーディングRNA、又はそれらのフラグメントをコードする任意の核酸分子を含む。かかる核酸分子は、内因性の核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を呈するであろう。内因性配列に対して「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることが可能である。本発明の方法に有用な核酸分子は、本発明のポリペプチド又はそのフラグメントをコードする任意の核酸分子を含む。かかる核酸分子は、内因性核酸配列に対して100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を呈するであろう。内因性配列に対して「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることが可能である。「ハイブリダイズする」は、様々なストリンジェンシー条件下で、対が、相補的なポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される遺伝子)又はその一部の間で二本鎖分子を形成することを意味する(例えば、Wahl,G.M.and S.L.Berger(1987)Methods Enzymol.152:399;Kimmel,A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507を参照されたい)。
【0081】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常は、約750mM未満のNaCl及び75mM未満のクエン酸三ナトリウム、好ましくは約500mM未満のNaCl及び50mM未満のクエン酸三ナトリウム、より好ましくは約250mM未満のNaCl及び25mM未満のクエン酸三ナトリウムであろう。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションを、有機溶媒、例えばホルムアミドの不在下で得ることができ、一方、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションを少なくとも約35%のホルアミド、より好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含む。ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、及び担体DNAを含むこと若しくは排除すること等の変動する追加のパラメーターは、当業者によく知られている。これらの様々な条件を必要に応じて組み合わせることにより、様々なレベルのストリンジェンシーが達成される。好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム、及び1%SDS中30℃にて生じるであろう。より好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、500mMのNaCl、50mMのクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド及び100.mu.g/mlの変性サケ精子DNA(ssDNA)中37℃にて生じるであろう。最も好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、250mMのNaCl、25mMのクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、及び200μg/mlのssDNA中42℃で生じるであろう。これらの条件に対する有用な変数は、当業者に直ちに明白であろう。
【0082】
殆どの適用に関して、ハイブリダイゼーション後の洗浄工程もまた、ストリンジェンシーが異なる。洗浄ストリンジェンシー条件は、塩濃度及び温度により規定され得る。上述のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度の減少又は温度の上昇により増加し得る。例えば、洗浄工程に関してストリンジェントな塩濃度は、好ましくは、約30mM未満のNaCl及び3mM未満のクエン酸三ナトリウム、また最も好ましくは15mM未満のNaCl及び1.5mM未満のクエン酸三ナトリウムであろう。洗浄工程に関してストリンジェントな温度条件は、通常、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、また更に好ましくは少なくとも約68℃の温度を含む。好ましい実施形態では、洗浄工程は30mMのNaCl、3mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%SDS中25℃で生じる。より好ましい実施形態では、洗浄工程は、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%SDS中42℃で生じる。より好ましい実施形態では、洗浄工程は15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%SDS中68℃で生じる。これらの条件に対する更なる変化は、当業者に直ちに明白であろう。ハイブリダイゼーション技術は、当業者によく知られており、例えば、Benton and Davis(Science 196:180,1977);Grunstein and Hogness(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 72:3961,1975);Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,New York,2001);Berger and Kimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press,New York);及びSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに記載されている。
【0083】
「実質的に同一」は、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載される任意の1つのアミノ酸配列)又は核酸配列(本明細書に記載される任意の1つの核酸配列)に対して少なくとも50%の同一性を呈するポリペプチド又は核酸分子を意味する。好ましくは、かかる配列は、比較に使用される配列に対して、アミノ酸レベル又は核酸レベルで少なくとも60%、より好ましくは80%若しくは85%、またより好ましくは90%、95%、更には99%同一である。
【0084】
配列同一性は、典型的には配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,Wis.53705,BLASTプログラム、BESTFITプログラム、GAPプログラム又はPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。かかるソフトウェアは、様々な置換、欠失及び/又は他の修飾に対する相同性の程度を指定することにより、同一又は類似の配列をマッチングする。保存的置換は、典型的には、以下の群内の置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定するための例示的アプローチでは、関連性の高い配列を示すe−3〜e−100の確率スコアによりBLASTプログラムを使用することができる。
【0085】
「被験体」は、ヒト、又はウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ若しくはネコ等の非ヒト哺乳動物を含むが、これらに限定されない哺乳類を意味する。
【0086】
本明細書において提供される範囲は、その範囲内の全ての値の簡略表記であると理解される。例えば、1〜50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50からなる群から選択される任意の数字、数字の組み合わせ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0087】
本明細書で使用されるように、用語「治療する」、「治療すること」、「治療」等は、それと関連する障害及び/又は症状を低減又は緩和することを指す。障害又は状態を治療することは、それと関連する障害、状態又は症状を完全に除去することを必要としないことが理解されるが、これを排除するものではない。
【0088】
別段の定めがない限り又は文脈から自明でない限り、本明細書で使用されるように、用語「又は」は包括的であると理解される。別段の定めがない限り又は文脈から自明でない限り、本明細書で使用されるように、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、単一又は複数であると理解される。
【0089】
別段の定めがない限り又は文脈から自明でない限り、本明細書で使用されるように、用語「約」は、当該技術分野における一般交差の範囲内、例えば、平均の2つの標準偏差内であると理解される。約は、表示される値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%内であると理解される。文脈から明白でない限り、本明細書において提供される全ての数値は、用語「約」により修飾される。
【0090】
本明細書中の変数の任意の定義における化学基の一覧の列挙は、任意の単一の基又は列挙される基の組み合わせとしてのその変数の定義を含む。本明細書中の変数又は態様に関する実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態、又は任意の他の実施形態若しくはその一部との組み合わせとしてのその実施形態を含む。
【0091】
本明細書において提供される任意の組成物又は方法を、本明細書において提供される1又は複数の他の組成物及び方法のいずれかと組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1図1は、RNAi経路を示す概略図である。
図2図2は、Dicer酵素の構造的特徴を示す。
図3図3は、Dicerは二本鎖RNAを切断し得るが、DNA/RNAハイブリッドを切断し得ないことを示す概略図である。
図4図4は、自己認識ハイブリッド二重鎖の設計における第1工程を解説する概略図である。
図5図5は、自己認識ハイブリッド二重鎖の設計における第2工程、すなわちトーホールド配列の付加を解説する概略図である。
図6図6は、設計した自己認識ハイブリッド二重鎖の作用を解説する概略図である。
図7図7は、自己活性化治療剤の作用を解説する概略図である。
図8図8は、各自己認識ハイブリッドにおける相補的トーホールド配列の存在が、RNA二重鎖の形成をもたらすトーホールド二重鎖を形成する方法を解説する概略図である。
図9図9は、自己認識粒子を産生するための合理的設計の使用を解説する。
図10図10は、FRETにより測定されるハイブリッド再会合のin vitroでの形成を示す。
図11図11は、トーホールドを有さない陰性対照二重鎖を使用するハイブリッド再会合の親和性を示す。
図12図12は、トーホールドを有する二重鎖を使用するハイブリッド再会合の親和性を示す。
図13図13は、ハイブリッド再結合のキネティクスを示す一組のグラフである。
図14図14は、in vivoにおけるハイブリッドの再会合の追跡を示す。
図15図15は、生細胞におけるハイブリッドの再会合の追跡を示す。
図16図16は、in vitroにおいて脱消光(de−quenching)(FRET)により再会合がどのようにモニタリングされ得るかを解説する。
図17図17は、in vitroにおいて再会合を追跡する解説例である。
図18図18は、ハイブリッド脱消光のキネティクスの解説例である。
図19図19は、脱消光による生細胞内でのハイブリッドの再会合の追跡を示す。
図20図20は、脱消光による生細胞内でのハイブリッドの再会合の追跡を示す。
図21図21は、自己認識粒子が、予備形成されたsiRNA二重鎖に匹敵するレベルの標的遺伝子の発現をサイレンシングすることができることを示す。
図22図22は、同日のハイブリッドの同時形質移入が、予備形成したsiRNA二重鎖で見られるものに匹敵する標的遺伝子サイレンシングレベルをもたらすことを示す。
図23図23は、同日のハイブリッドの同時形質移入の例である。
図24図24は、異なる2日間のハイブリッド同時形質移入が標的遺伝子のサイレンシングをもたらすことを示す。
図25図25は、リポフェクタミン2000が部分的に蛍光を消光することを示す。
図26図26は、リポフェクタミン2000がハイブリッド再結合を阻止することを示す。
図27図27は、予備形成したリポフェクタミン2000/ハイブリッドは再結合を示さないことを示す。
図28図28は、可変的なトーホールド長を有するハイブリッドの設計を示す概略図である。
図29図29は、同日の形質移入におけるサイレンシングに対する可変的なトーホールド長の影響を示す。
図30図30は、異日の形質移入におけるサイレンシングに対する可変的なトーホールド長の影響を示す。
図31図31は、多段階の輸送を高める改善されたハイブリッドの設計を示す。
図32図32は、2つの自動認識R/DNAハイブリッドによる機能性の活性化を示す。(a)2つの非機能性単位の再会合による機能性の活性化の一般的な原理を示す挿絵。(b)非対照性Dicer基質siRNA放出を生じる、自動認識R/DNAハイブリッド再会合の概略的な図示。色分けは図を通して同じとする。
図33図33は、再会合により機能性(非対称25/27mer Dicer基質)を放出することが可能なRNA/DNAハイブリッドの合理的設計を示す挿絵である。
図34図34は、R/DNAハイブリッド及びRNA二重鎖の比較分析を示す。(a)組換えヒトturbo dicer酵素キット(Genlantis)によりR/DNAハイブリッド及び非対称25/27mer Dicer基質siRNA二重鎖に対してそれぞれ行われた、ダイシング実験に関する全SYBR Gold染色未変性PAGE結果。(b)80%のヒト血清におけるR/DNAハイブリッド及び非対称25/27mer Dicer基質siRNA二重鎖の相対的安定性をそれぞれ表す、全臭化エチジウム染色アガロースゲル及び定量結果。
図35図35は、37℃における溶液中での自動認識R/DNAハイブリッド再会合の蛍光研究を示す。(a)再結合ができないAlexa488及びAlexa546で蛍光標識化された対照DNA二重鎖(上部)及び再会合用にプログラムされた蛍光標識化された自動認識R/DNAハイブリッド(下部)の概略的表示。(b)FRETを示さない対照DNA二重鎖、及びAlexa546発光シグナルが増加した再結合した自動認識R/DNAハイブリッドの発光スペクトル。(c)Alexa488及びAlexa546で標識化した自動認識R/DNAハイブリッドの再会合におけるFRET時間トレース。(d)混合前に個別にL2Kと結合させた蛍光標識化したR/DNAハイブリッドに、その後、蛍光時間トレーシングを行った。L2Kはハイブリッドと複合体を形成して、それらの再会合を阻止し、(c)に比べてAlexa488の発光シグナル(緑色)はAlexa546(赤色)の上に留まることに留意されたい。(e〜f)再結合用にプログラムされた対応するハイブリッドの概略的表示を含む、Alexa488及びクエンチャーIowaBlack FQ(緑色)で標識化した自動認識R/DNAハイブリッドの再会合における概略的表示及びFRET時間トレース。(d)と同様に、L2Kは消光したハイブリッド(青色)と複合体を形成して、それらの再結合を阻止することに留意されたい。
図36図36は、37℃での3時間のインキュベーション後の溶液中での自動認識R/DNAハイブリッドの再会合の蛍光研究を示す。再結合できないAlexa488及びAlexa546で蛍光標識化した対照DNA二重鎖(上欄)、並びに再会合用にプログラムされた蛍光標識化した自動認識R/DNAハイブリッドの発光(下欄)の発光スペクトル及び概略的表示。Alexa546発光シグナルが増加していることに留意されたい。種々の濃度(nMで示される)の全ての試料について、励起は460nmであった。
図37図37A〜37Eは、37℃における自動認識R/DNAハイブリッドの再会合のキネティクスを示す概略図及びグラフである。(a)再会合の概略的表示及び(b〜f)FRET時間トレース、並びに各々の場合について上記で指定される種々の等モル濃度で混合したAlexa488及びAlexa546で標識化し、37℃でインキュベートした自動認識R/DNAハイブリッドの再会合におけるそれらのフィッティング。全ての試料について、励起を460nmに設定し、b〜dについては1秒毎に、またe及びfについては30秒毎に520nmで発光を測定した。(g)自動認識R/DNAハイブリッドの再会合の定数(b〜fのフィッティングに由来する)は、より低い濃度(30nm未満)でのハイブリッド濃度に依存する。(h)トーホールドを有さないトランケートハイブリッド及び対応するFRET時間トレースの概略的表示。蛍光シグナルに有意な変化はなく、トーホールドが再会合に必須であることが示唆されていることに留意されたい。
図38図38は、リポフェクタミン2000(L2K)の添加は、溶液中で再結合したR/DNAハイブリッドの蛍光を消光し、酵素分解から二重鎖を保護することを示す。(a)Alexa488及びAlexa546で標識化したR/DNAハイブリッドを、100nMの濃度で混合し、37℃にて2時間のインキュベーション後にL2Kを添加した。励起を460nmに設定し、発光を520nm及び570nmで測定した。Alexa546の発光シグナルはAlexa488の上に留まることに留意されたい。(b)Alexa488及びIowaBlack FQで標識した消光したDNA二重鎖を、300nMの濃度でL2Kと混合し、37℃で2分間インキュベートした(青色線)後DNase添加した。3時間のインキュベーションの後、分解は観察されなかった。対照として、L2Kを含まない同じ二重鎖をDNaseにより完全に消化した(赤色線)。その後、消化の際にL2Kを添加して、消化した二重鎖に対するそれ自身の消光可能性を評価することにより、L2K複合化二重鎖により消化が起きた場合に予想されるシグナルに対する参照を提供した。励起を460nmで設定し、発光を520nmで測定した。
図39図39は、37℃で3時間のインキュベーション後の溶液中の自動認識R/DNAハイブリッドの再会合の蛍光研究を示す。全ての試料について、励起を460nmに設定し、100nM濃度を使用した。Alexa488(緑色曲線)又はAlexa546(赤色曲線)で標識化したR/DNAハイブリッド、Alexa488及びクエンチャーIowaBlack FQを含有する二重鎖(黄色曲線)、並びに二重鎖Alexa488/IowaBlack FQとその同族のR/DNA Alexa546ハイブリッド(黒色)の混合物について発光スペクトルを収集した。
図40図40A図40Dは、共焦点蛍光顕微鏡により可視化したヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)における自動認識R/DNAハイブリッドの再会合及び局在を示す。(図40A)FRET実験:Alexa488及びAlexa546で標識化した同族のハイブリッドで細胞を同時形質移入し、次の日に画像を撮った。(図40B)脱消光実験:Alexa488及びIowaBlack FQで標識化した1つの二重鎖を有する同族の二重鎖で細胞を同時形質移入した。画像を次の日に撮った。(図40C〜D)エンドソーム区画に通常使用されるマーカーEEA1(図40C)及びRab7(図40D)を有する自動認識R/DNAハイブリッドの局在。 a〜dの画像番号は以下に対応する:微分干渉コントラスト(DIC)画像(1)、Alexa488発光(2)、Alexa546発光(3)、ブリードスルー補正FRET画像(4)、黄色の星印で対応を示しているブリードスルー補正FERT画像の白色の四角により示される拡大されたフラグメントの3Dチャート表示(5)、EAA1抗体染色(6)及びRab7抗体染色(7)。画像(1+2+3)、(1+4)、(1+2)、(1+3+6)、(1+3+7)は、2つ又は3つの異なる画像の重複像である。
図41図41は、共焦点蛍光顕微鏡により可視化したヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)における自動認識R/DNAハイブリッドの再会合(N=5)を示す。Alexa488及びAlexa546で標識化した同族のハイブリッドで細胞を同時形質移入し、画像を次の日に撮った。画像番号は以下に対応する:Alexa546発光(1)、Alexa488発光(2)、DIC(3)。
図42図42は、共焦点蛍光顕微鏡により可視化したヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)における自動認識R/DNAハイブリッドの脱消光再会合実験(N=6)を示す一組の写真である:Alexa488及びIowaBlack FQで標識化した1つのハイブリッドを有する同族のハイブリッドで細胞を同時形質移入した。対照として(上欄)、N=6、細胞を消光した二重鎖のみで形質移入した。画像を次の日に撮った。画像番号は以下に対応する:DIC(1)、Alexa488発光(2)。
図43図43A図43C 安定的に増強されたGFP(eGFP)を発現するヒト乳癌細胞(MDA−MB−231/GFP)に対するGFPノックダウンアッセイ。eGFPに対してsiRNAを放出するようにプログラムした自動認識R/DNAハイブリッド(H_s及びH_ant)で細胞を形質移入してから3日後、(図43A)蛍光顕微鏡によりeGFP発現を観察し、(図43B)フローサイトメトリー実験によりeGFP発現を統計学的に分析した。対照として、eGFPに対するsiRNA二重鎖を使用した。個々のR/DNAハイブリッドはeGFP産生の減少を引き起こさないことに留意されたい(補足図S8)。(図43C)異なる2日間に同時形質移入した自動認識R/DNAハイブリッドにおけるトーホールド長の依存性は、eGFP発現をノックダウンするそれらの能力を示す。アンチセンス(H_ant)を含有するR/DNAハイブリッドを、センス(H_s)を含むハイブリッドの一日前に形質移入した。3日後、eGFP発現を分析した。
図44図44は、安定的に増強されたGFP(eGFP)を発現するヒト乳癌細胞(MDA−MB−231/GFP)に対するGFPノックダウンアッセイを示す一組の写真である。eGFPに対してsiRNAを放出するようにプログラムした様々な等モル濃度の自動認識R/DNAハイブリッド(H_s及びH_ant)で細胞を形質移入してから3日後、蛍光顕微鏡によりeGFP発現を観察した。対照として、eGFPに対するsiRNA二重鎖を使用した。
図45図45A及び図45Bは、安定的に増強されたGFP(eGFP)を発現するヒト乳癌細胞(MDA−MB−231/GFP)に対するGFPノックダウンアッセイの結果を示す写真及びグラフである。(a)単一のR/DNAハイブリッドによる細胞の形質移入から3日後、eGFP発現を蛍光顕微鏡により観察し、フローサイトメトリー実験により統計学的に分析した。個々のR/DNAハイブリッドはeGFP産生の減少を引き起こさないことに留意されたい。(b)陰性対象として、HIV−1に対して設計したeGFPサイレンシングに無関係の自動認識R/DNAハイブリッドを使用した。HIVに対してsiRNAを放出するように設計したR/DNAハイブリッドで細胞を形質移入してから3日後、蛍光顕微鏡実験及びフローサイトメトリー実験によってeGFP発現は観察されなかった。自動認識R/DNAハイブリッド及びeGFPに対するsiRNAを、陽性対照として使用した。
図46図46は、R/DNAハイブリッドを有する古典的なサイズのsiRNA(21nts)の使用が、伸長された(25/27mer)ハイブリッドと比較して、同等のGFPノックダウンのサイレンシング効率を実証することを示す。eGFP発現の統計学的分析をフローサイトメトリーにより行った。R/DNAハイブリッドを同日に同時形質移入し、3日後に、eGFP発現を分析した。
図47図47A及び図47Bは、R/DNAハイブリッドを有する内部セグメント化干渉RNAの使用は、通常のハイブリッドと比べてより高効率のGFPノックダウンをもたらすことを示す。(a)内部セグメント化された干渉RNA(H_セグメント化_s)を有する自動認識R/DNAハイブリッドの概略的表示。(b)フローサイトメトリーによるeGFP発現の統計学的分析。R/DNAハイブリッドを同日に同時形質移入し、3日後に、eGFP発現を分析した。
図48図48は、同日に同時形質移入された自動認識R/DNAハイブリッドにおける、それらのeGFP発現をノックダウンする能力に対するトーホールド長の依存性を示す。(a)異なる長さの非ジップドトーホールドを有する自動認識R/DNAハイブリッドの概略的表示。(b)フローサイトメトリーによるeGFP発現の統計学的分析。R/DNAハイブリッド(H_s及びH_ant)を同日に同時形質移入した。3日後、eGFP発現を分析した。
図49図49は、腫瘍異種移植片マウスモデルにおける自動認識R/DNAハイブリッドのin vivo研究の結果を示す。(a)尾静脈注射の3時間後における腫瘍を有するマウスにおける、蛍光標識化したR/DNAハイブリッドの薬物動態プロファイル。比較的高レベルのハイブリッド蓄積が腫瘍組織において生じる。3時間画像において、蛍光最大(赤色)は注射(1)、腫瘍(2)及び採血(3)の場所に対応する。(b)マウス血流中の蛍光プローブの量(R/DNAハイブリッド及びIRDye700で標識化されたDicer基質siRNA)を、注射の3時間後に測定した。(c)マウス腎臓及び腫瘍のex vivo蛍光画像及び分析は、Dicer基質siRNAに比べて、R/DNAハイブリッドについて比較的高い腫瘍取り込みを示す。(d)in vivoにおける注射から5日後の腫瘍のex vivo蛍光画像は、siRNA及び自動認識R/DNAハイブリッドにより引き起こされるのと同等レベルのeGFPサイレンシングを示す。
図50図50は、in vivoでの注射から5日後の腫瘍のex vivo蛍光画像を示す一組の写真であり、siRNA及び自動認識R/DNAハイブリッドにより引き起こされるのと同等のeGFPサイレンシングレベルを示す。腫瘍をマウスから除去し、4℃にて4%PFAで終夜固定し、パラフィン加工した。5μmの切片をスライドの上に置いた後、段階的なエタノールからdHO、その後PBSにより、脱パラフィン及び再水和した。プロテイナーゼK(DAKO)による予備処理を室温にて5分間行った。切片をNGS中でブロックし、抗GFP抗体(abcam #ab6556、1:1000に希釈)と共に4℃にてインキュベート(incubated ON)した。蛍光標識化のため、切片をヤギa/ウサギIgG Alexa 488(Invitrogen/Molecular Probes)とインキュベートし、DAPIで対比染色した後、Prolong Gold a/Fade試薬(Invitrogen)でカバースリップした。QImaging Retiga−2000Rカメラ及びNikonのNIS−Elements AR Imagingソフトウェアを備えたNikonのEclipse 80i顕微鏡を使用して画像を取得した。DAB標識のため、切片をビオチン化ヤギa/ウサギIgG(Vector Labs)中でインキュベートし、その後ABC Elite試薬(Vector Labs)、それに続いてDABでインキュベートした。ヘマトキシリン対比染色を行い、スライドをPermountでカバースリップした。AperioのScanScopeデジタルスライドスキャナを使用してスライド全体のデジタル画像を取得した。
図51図51は、HIV−1発現及び産生がsiRNA及び再結合したR/DNAハイブリッドにより阻害されたことを示す。(a)HeLa細胞を、siRNAと共に又はこれを伴わずに、pNL4−3で形質移入した。ウイルス上清を回収し、RT活性を測定した;siRNAを含まないウイルス対照(VC.1及びVC.2)に対して正規化したデータを示す。エラーバーはSDを示す;N=4。(b)形質移入から48時間後において、4時間に亘って[35S]MetCysでHeLa細胞を代謝性に標識化した。細胞溶解物に放射性免疫沈降法を行った。外皮糖タンパク質前駆体であるgpl60、及び表面糖タンパク質gpl20の位置;Pr55Gag(Pr55)、CA−SPl(p25)及びCA(p24)が示される。全細胞関連Gagの定量:Pr55+p25+24。100に設定したsiRNAを含まないウイルス対照(VC)における全Gag。エラーバーはSDを示す;N=3。
図52図52A〜52Dは、フローサイトメトリー(図51A)及び自己認識R/DNAハイブリッドを含むHeLa細胞中のRab5/7(エンドソーム)共局在(図51B)により測定された形質移入効率を示す。フローサイトメトリーによる形質移入効率を統計学的に分析し(図52A)、共局在を共焦点蛍光顕微鏡により可視化した(図52B)。HIV−1発現HeLa細胞におけるsiRNAの細胞毒性(LCPS=ルシフェラーゼカウント/秒)(図52C)は、最小5nM〜20nMである。細胞を、siRNAを含む又はsiRNAを含まない、pNL4−3及びpsiCHECKTM−1(Promega)で同時形質移入した。形質移入から48時間後、細胞を溶解し、ウミシイタケルシフェラーゼを測定した。eGFP siRNAを対照として使用した。V.C.ウイルス対照。LucC.ルシフェラーゼ対照。エラーバーは、SD;N=4を示す。(図52D)RT産生に対する影響。eGFP siRNAを陰性対照として使用した。eGFP siRNAをpNL4−3プラスミドと共に同時形質移入し、48時間後の上清中のRTレベルを測定した。V.C.ウイルス対照。
図53図53は、ウェスタンブロットにより示されるR/DNA処理の後のA549肺腺癌細胞におけるGSTP1タンパク質発現における相対的減少(3回の反復より算出された対応する標準偏差(SD)及び標準誤差(SE)と共に)を示す。H_s+H_ant(GSTP1)の場合、RNAセンス鎖を含む自動認識R/DNAハイブリッドを最初に形質移入し、37℃で24時間のインキュベーション後にGSTP1 siRNAのRNAアンチセンス鎖を含有する相補的(complement)R/DNAハイブリッドを形質移入した。細胞を採取し、24時間後に標準的なプロトコルを使用する免疫ブロッティングのため処理した。抗GSTP1抗体はCell Signaling Technologyによるものであり、β−アクチン抗体はAbcamによるものであった。
図54図54は、細胞内での再結合の前(上欄)及び後(下欄)における2つの同族の自動認識治療用R/DNA NPの概略的表示である。
図55図55は、GFP遺伝子(上欄)に対して設計されたsiRNAを放出する自動認識R/DNA二重鎖の再結合、及び自動認識R/DNA二重鎖の再会合により誘発されたヒト細胞内でのGFP発現のサイレンシングを示すFACSデータを示す概略図である。
図56図56は、再会合において複数の機能性(FRET反応、siRNA及びRNAアプタマー)を放出する例示的な自動認識RNA/DNAハイブリッドを示す概略図である。
図57図57A図57Cは、自動認識RNA/DNAハイブリッドの再会合による複数の機能性(FRET、siRNA、MGアプタマー)の放出を示す。図57Aは、再会合によるsiRNA及びMGアプタマーの放出を示すハイブリッド再会合及び未変性PAGEの概略図である。図57Bは、放出中のMGアプタマーの活性化を示す静的及び動的蛍光実験である。MGそれ自身は非蛍光(青色曲線)であり、いずれか1つのハイブリッドの存在はその蛍光発光を活性化しない(緑色曲線)。しかしながら、2つの同族のハイブリッドの再会合は、個々のMGアプタマー鎖の放出、それらの集合、更にはその蛍光発光の顕著な増加をもたらすMG取り込みをもたらす(赤紫色の曲線)。図57C 上欄:再会合におけるFRETの活性化。FRETを示さない対照DNA二重鎖(青色曲線)、及び増加したAlexa546発光シグナルを伴う再会合した自動認識R/DNAハイブリッド(赤色曲線)の発光スペクトル。図57C 下欄:Alexa488及びAlexa546で標識化した自動認識R/DNAハイブリッドの再会合におけるFRET時間トレース。
図58図58は、自動認識RNA/DNAハイブリッドの再会合による複数の機能性(2つのsiRNA、MGアプタマー)の放出を示す。MGアプタマーは、3つの異なる位置に配置され(3組のハイブリッドを試験した)、従って、(ssDNAトーホールドに関する位置にかかわらず)3つ全ての場合においてMG蛍光の活性化は全ての機能性の放出を証明する。左欄:ハイブリッド再会合の概略図、並びに再会合によるsiRNA及びMGアプタマーの放出を示す全SYBR Gold染色未変性PAGE。右欄:放出の間のMGアプタマーの活性化を示す静的及び動的蛍光実験。
図59図59A図59Dは、共焦点蛍光顕微鏡により可視化したヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)における自動認識R/DNAハイブリッドの再会合、局在、更には安定的に増強したGFP(eGFP)を発現するヒト乳癌細胞(MDA−MB231/GFP)に対するGFPノックダウンアッセイにより追跡したsiRNAの放出を示す。図59Aは、これらの実験において比較した種々のサイズのハイブリッド再会合の概略図である。FRET実験(図59B):Alexa488及びAlexa546で標識化した同族ハイブリッドで同時形質移入し、次の日に画像を取得した細胞。図59Cは、siRNAの放出を示す全SYBR Gold染色未変性PAGEを示すゲルである。GFPノックダウンアッセイ(図59D):eGFPに対する1個(ハイブリッド(i))、2個(ハイブリッド(ii))、及び3個(ハイブリッド(iii))のsiRNAを放出するようにプログラムした、自動認識R/DNAハイブリッドによる細胞の形質移入から3日後。eGFP発現を蛍光顕微鏡で観察し、フローサイトメトリー実験により統計学的に分析した。対照として、eGFPに対するsiRNA二重鎖を使用した。図59Bにおける画像番号は以下に対応する:Alexa488発光(1)、Alexa546発光(2)、ブリードスルー補正FRET画像(3)、FRET重複で補正した微分干渉コントラスト(DIC)画像(4)。黄色の星印で対応を示しているブリードスルー補正FERT画像の白色の四角により示される拡大されたフラグメントの3Dチャート表示(5)。
【発明を実施するための形態】
【0093】
治療剤としてRNA干渉(RNAi)を使用することにより、疾患細胞において標的遺伝子の発現をノックダウンすることが日常的に可能である。RNAiの仕組みを開始する一つの方法は、低分子干渉RNA(siRNA)二重鎖の細胞への直接的な外因性の導入による。本明細書に記載される発明は、RNAi経路並びに疾患細胞内の他の機能性を誘発するために一般的に使用され得る、治療用RNA/DNAハイブリッドに基づく戦略を提供する。個々には、各ハイブリッドは機能的に不活性であり、治療用siRNAの提示は、同じ細胞内に同時に存在する少なくとも2つの同族のハイブリッドが再会合することによってのみ活性化され得る。本発明は、同日に又は異なる2日間に同族のハイブリッドを細胞に同時に輸送するiRNA放出の方法を特徴とする。本発明は、生化学的適用のための「賢明な」ナノ粒子に基づく核酸を提供する。
【0094】
本発明は、細胞内での再会合による組み込まれた機能性の放出の誘発を経ることが可能なプログラム可能な自動認識R/DNAハイブリッドを設計及び操作する新規戦略に基づく。R/DNAハイブリッドは、siRNAと比べて血液血清中で顕著に高い安定性を有し、しかもR/DNAハイブリッドアプローチの使用は、(i)siRNAの処理能力の直接的な干渉を伴うことなく更なる機能性を導入すること、(ii)in vitro及び細胞内部におけるスプリット機能性(例えば、FRET)の活性化、(ii)細胞内におけるリアルタイムでのこれらのハイブリッドの輸送又は再会合の追跡、(iii)細胞培養物及びin vivoにおけるsiRNAの誘発された放出、(iv)siRNAと比べて遺伝子サイレンシングの効果の延長を可能とする。更に、このアプローチは、(i)標的特異性に対するより高い制御(例えば、2つのハイブリッドが2つの異なる組織特異的認識部分により装飾される場合)、(ii)分岐ハイブリッド構造を導入することによる機能性の数の増加、(iii)化学的アナログ(例えば、ロックド核酸(LAN)、ペプチド核酸(PNA)等)によるDNA鎖の置換を介する化学的安定性の微調整による生体液中の保持時間の増加、(iv)条件付きのsiRNA又は他の機能性の放出を可能とし得る。更に、トーホールド相互作用の熱安定性は、それらの長さ及び組成を変更することにより微調整され得る。本発明は、ナノテクノロジー適用及び生物医学的適用の幅広いアレイに対する核酸系ナノ粒子の更なる開発のための新たな道を開くものである。
【0095】
本発明の特定の態様は、被験体において遺伝子発現を阻害するのに有用な組成物及び方法を特徴とする。本発明は、第1DNA分子が5’トーホールド配列を有し、かつ第2DNA分子が3’トーホールド配列を有し、5’及び3’トーホールド配列が相補的である、RNA/DNA二重鎖対である治療用R/DNAキメラ多機能ナノ粒子(R/DNA NP)を特徴とする。2つのR/DNA NPを混合すると、トーホールド配列は、2つのR/DNA NPの再会合を生じる二重鎖を形成する。再会合産物は、DNA/DNA二重鎖及びRNA/RNA二重鎖であり、RNA二重鎖は特異的な標的RNAを標的とするsiRNAとして機能するように設計されている。また、R/DNA NPは、標的分子に特異的に結合する付着した部分を有する。一実施形態では、標的分子は、標的遺伝子を発現する細胞上に存在する細胞表面タンパク質である。従って、R/DNA NPは、特定の細胞における特定の標的遺伝子のターゲッティングを可能とする。
【0096】
本発明は、医学的に重要な遺伝子又は医学的に重要な細胞における遺伝子を標的とするために使用され得る。例えば、一実施形態では、ウイルスに感染した細胞をターゲッティングすることにより被験体のウイルス負荷を低減するため、R/DNA NPを使用することができるであろう。具体的な実施形態では、R/DNA NPは、ウイルスに感染した細胞におけるアポトーシス阻害剤を阻害することにより、ウイルスに感染した細胞を特異的に死滅させる。特定の実施形態では、ウイルスはHIVである。他の実施形態では、R/DNA NPは、新生物細胞を標的とするために使用されるであろう。更なる実施形態では、R/DNA NPは、腫瘍形成における標的遺伝子を阻害して、腫瘍形成の死滅又はアポトーシスを生じるであろう。従って、R/DNA NPは、遺伝子サイレンシングアプローチを受け入れることが可能な任意の疾患を治療するために使用されるであろう。
【0097】
また、本発明は、HIV感染細胞を標的とする有効量のR/DNA NPを投与して、標的化されたアポトーシス阻害剤の破壊を生じ、HIV感染細胞の死をもたらすことにより被験体からHIVを根絶することによってHIV感染被験の服従を治療する方法を提供する。
【0098】
更に、本発明は、腫瘍形成細胞を標的とする有効量のR/DNA NPを投与して腫瘍形成細胞の死又はアポトーシスをもたらす標的遺伝子のノックダウンを生じることによって、腫瘍形成を有する被験体を治療する方法を特徴とする。
【0099】
本明細書において前記方法は、かかる効果を生じるために本明細書に記載される化合物、又は本明細書に記載される組成物の有効量を被験体(かかる治療が必要と特定された被験体を含む)に投与することを含む。かかる治療が必要な被験体の特定は、被験体又は医療の専門家によって判断され、主観的(例えば、意見)又は客観的(例えば試験若しくは診断方法により測定可能)であってもよい。
【0100】
本明細書で使用されるように、用語「治療する」、「治療すること」、「治療」等は、それと関連する障害及び/又は症状を低減又は緩和することを指す。障害又は状態を治療することは、それと関連する障害、状態又は症状が完全に除去されることを必要としないが、それを排除するものではないと理解されるであろう。
【0101】
本明細書で使用されるように、用語「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的治療」等は、障害又は症状を有していないが発症しやすいリスクにある被験体における障害又は症状の発症可能性を低減することを指す。
【0102】
通常、本発明の治療法(予防的治療を含む)は、本明細書の式の化合物等の本明細書の化合物の治療的有効量を、哺乳類、具体的にはヒトを含むそれを必要とする被験体(例えば、動物、ヒト)に投与することを含む。かかる治療は、疾患、障害又はそれらの症状に罹患した、有する、傾向がある、又はリスクがある被験体、具体的にはヒトに好適に投与されるであろう。「そのリスクにある」被験体の判定は、診断検査又は被験体若しくは医療提供者の意見(例えば、遺伝子検査、酵素若しくはタンパク質マーカー、マーカー(本明細書に規定される)、家族歴等)による任意の客観的若しくは主観的判断により行われ得る。また、本明細書の化合物は、ウイルス、具体的にはHIVが関係する可能性のある任意の他の障害の治療にも使用され得る。
【0103】
1つの実施形態では、本発明は、治療経過をモニタリングする方法を提供する。前記方法は、ウイルスに感染した細胞、具体的にはHIVに感染した細胞(例えば、本明細書の化合物、タンパク質又はその前駆体等により調節される、本明細書に記述される任意の標的)に対する診断マーカーのレベルを判定する工程、又はウイルス、具体的にはHIVと関連する障害若しくはその症状に罹患した、若しくはそれに感受性の被験体における診断的測定(例えば、スクリーニング、アッセイ)の工程を含み、ここで、被験体は、その疾患若しくは症状を治療するのに十分な本明細書の化合物の治療的量を投与されている。前記被験体の疾患状態を確立するため、前記方法で判定されたマーカーのレベルを、健康な正常対照又は他の罹患患者のいずれかにおける既知のマーカーのレベルと比較することができる。好ましい実施形態では、第1レベルの判定より後の時間点において被験体におけるマーカーの第2レベルを判定し、2つのレベルを比較して一連の疾患又は治療法の有効性をモニタリングする。特定の好ましい実施形態では、被験体における治療前のマーカーのレベルを、本発明による治療の開始前に判定し、その後、この治療前のマーカーのレベルを治療開始後の被験体におけるマーカーのレベルと比較して治療の有効性を判定する。
【0104】
薬学的治療剤
本発明の開示は、疾患細胞における標的タンパク質の発現又は活性を減少するR/DNA NPを提供する。例えば、非限定的な一実施形態では、本開示は、疾患細胞においてアポトーシス阻害剤の発現又は活性を阻害するR/DNA NPを含む医薬組成物を提供する。更なる実施形態では、前記疾患細胞は、新生物細胞又はウイルスに感染した細胞である。しかしながら、本明細書に記載される薬学的適用は、遺伝子サイレンシングを受け入れることが可能な、又は受け入れることが可能とされる任意の疾患状態の治療に適用可能である。治療用途に関し、本明細書に開示される方法を使用して特定された前記組成物又は薬剤は、全身投与されてもよく、例えば、薬学的に許容可能な担体中に製剤化され得る。好ましい投与経路として、例えば、患者における薬物の継続的、持続的レベルを提供する、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、又は髄腔内注射が挙げられる。ヒト患者又は他の動物の治療は、生理学的に許容可能な担体中の治療的有効量のR/DNA NPを使用して行われる。好適な担体及びそれらの製剤は、例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。投与される治療剤の量は、投与方式、患者の年齢及び体重、並びに疾患進行の臨床症状に応じて変化する。一般的に、量は、その疾患の治療に使用される他の薬剤について使用される量の範囲内であるが、特定の場合、前記化合物の特異性が高められているため、より低量となる。化合物は、当業者に既知の診断方法によるか、又は疾患と関連する遺伝子の転写活性化を測定する任意のそのアッセイを使用して、判定される癌の進行又は転移の臨床的又は生理学的症状を制御する用量で投与される。
【0105】
医薬組成物の調製
疾患の治療のための本開示のR/DNA NP又はそのアナログの投与は、他の成分と組み合わせて、疾患の緩和、低減、根絶又は安定化において効果的なR/DNA NPの濃度を生じる任意の好適な手段によるものであってもよい。一実施形態では、R/DNA NPの投与は、標的遺伝子の発現又は活性を低減する。別の実施形態では、R/DNA NPは、疾患と関連する疾患の予防又は治療のため被験体に投与される。
【0106】
かかるR/DNA NPの投与方法は、当該技術分野において既知である。本開示は、当該技術分野において既知の任意の手段による薬剤の治療的投与を提供する。前記化合物を、任意の好適な担体物質中に任意の適切な量で含有させてもよく、通常、前記化合物は、組成物全重量の1〜95重量%の量で存在する。前記組成物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内又は腹腔内)投与経路に好適な剤型で提供され得る。医薬組成物は、従来の薬学的慣習に従って製剤化され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988−1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照されたい)。好適な製剤として、経口投与、デポ製剤、パッチによる輸送用製剤、及び局所又は経皮的に輸送させるための半固形投与形態が挙げられる。
【0107】
本開示による医薬組成物は、投与に際して実質的に即時に、又は任意の予定された時若しく投与後の期間に活性化合物を放出するように製剤化され得る。後者のタイプの組成物は、一般的に、放出制御製剤として知られ、(i)延長された期間に亘って体内で実質的に一定の薬物濃度を生じる製剤;(ii)予定された遅延時間の後に延長された期間に亘って体内で実質的に一定の薬物濃度を生じる製剤;(iii)活性物質の血漿レベルの変動(のこぎり刃キネティックパターン)と関連する望ましくない副作用を同時に最小化しながら、体内で相対的に一定の有効レベルを維持することによって、予定された期間に亘り作用を持続させる製剤;(iv)例えば、中枢神経系又は脳脊髄液に隣接するか又はその中での放出制御組成物の空間的な配置により作用を局在化する製剤;(v)例えば、毎週1回又は2週間に1回、服用量が投与されるように、簡易な投薬を可能とする製剤;並びに(vi)担体又は化学的誘導体を使用することによって腫瘍細胞を標的とし、癌においてその機能が攪乱されている特定の細胞種へと治療剤を輸送する製剤、を含む。一部の適用については、放出制御製剤は、日中の頻繁な投薬を不要にし、血漿レベルを治療レベルに持続させる。
【0108】
放出速度が問題の化合物の代謝速度を上回る、制御された放出を得るために、任意の多数の戦略を遂行することができる。一例では、例えば、様々な種類の放出制御組成物及びコーティングを含む、製剤化パラメーター及び成分の適切な選択により、制御された放出が得られる。従って、治療剤は、適切な賦形剤と共に、投与に際して制御された方式で治療剤を放出する医薬組成物へと製剤化される。例として、シングルユニット又はマルチユニットのタブレット組成物又はカプセル組成物、油溶液、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル、ミクロスフィア、分子複合体、ナノ粒子、パッチ及びリポソームが挙げられる。
【0109】
非経口組成物
医薬組成物は、剤型、製剤、又は好適な輸送デバイス若しくは従来の非毒性の薬学的に許容可能な担体及びアジュバントを含有するインプラントで、注射、点滴又は移植(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内等)により非経口的に投与され得る。かかる組成物の製剤化及び調製は、医薬製剤の技術分野における当業者によく知られている。製剤は、上記Remington:The Science and Practice of Pharmacyに見出され得る。非経口用途の組成物は、単位投与形態(例えば、単回投与アンプルで)、又は好適な防腐剤が添加され得る(以下を参照)複数投与を含有するバイアルで提供され得る。前記組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、点滴デバイス若しくは移植用輸送デバイスの形態であってもよく、又は使用前に水又は別の好適なビヒクルにより再構成される乾燥粉末として提示され得る。活性な治療剤とは別に、前記組成物は、好適な非経口的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を含み得る。活性な治療剤は、制御された放出のためミクロスフィア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム等に組み込まれ得る。更に、前記組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、等張化剤及び/又は分散剤を含み得る。
【0110】
上述のように、本開示による医薬組成物は、滅菌注射に好適な形態であってもよい。かかる組成物を調製するため、好適な活性な治療剤を非経口的に許容可能な液体ビヒクルに溶解又は懸濁する。
【0111】
放出制御非経口組成物
放出制御非経口組成物は、懸濁液、ミクロスフィア、マイクロカプセル、磁性ミクロスフィア、油溶液、油懸濁液又は乳剤の形態であり得る。或いは、活性な薬物は、生体適合性の担体、リポソーム、ナノ粒子、インプラント又は点滴デバイスに組み込まれ得る。ミクロスフィア及び/又はマイクロカプセルの調製に使用される材料は、例えば、ポリガラクチン(polygalactin)、ポリ−(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−L−グルタミン)及びポリ(乳酸)である。放出制御非経口製剤を製剤化する場合に使用され得る生体適合性担体は、炭水化物(例えばデキストラン)、タンパク質(例えばアルブミン)、リポタンパク質又は抗体である。インプラントに使用する材料は、非生分解性(例えばポリジメチルシロキサン)又は生分解性(例えばポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)若しくはポリ(オルトエステル)又はそれらの組み合わせ)であってもよい。
【0112】
阻害性核酸
本明細書に記載されるR/DNA分子は、標的細胞において阻害性核酸分子を一度形成することによりはたらく。かかる阻害性核酸は、標的RNA(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド分子、siRNA、shRNA)をコードする核酸分子を結合する1本鎖及び2本鎖核酸分子(例えば、DNA、RNA、及びこれらのアナログ)、並びに標的ポリペプチドに直接結合してその生物学的活性を調節する核酸分子(例えば、アプタマー)を含む。
【0113】
リボザイム
本開示のアンチセンス標的RNA配列を含む触媒RNA分子又はリボザイムは、in vivoにおける標的RNAの発現を阻害するために使用され得る。アンチセンスRNA中にリボザイム配列を含むことは、それらに対してRNA切断活性を与え、それによりコンストラクトの活性を高める。標的RNA特異的リボザイムの設計及び使用は、各々参照により援用される、Haseloff et al,Nature 334:585−591.1988及び米国特許出願第2003/0003469 A1号明細書に記載されている。
【0114】
従って、本開示は、結合アームに8〜19の連続したヌクレオベースを有するアンチセンスRNAを含む触媒RNA分子も特徴とする。本開示の好ましい実施形態では、触媒核酸分子は、ハンマーヘッドモチーフ又はヘアピンモチーフに形成される。かかるハンマーヘッドモチーフの例は、Rossi et al.,Aids Research and Human Retroviruses,8:183,1992に記載されている。ヘアピンモチーフの例は、Hampel et al.,1988年9月20日付出願の米国特許出願番号第07/247,100号の部分継続出願である、1989年9月20日付出願の「RNA Catalyst for Cleaving Specific RNA Sequences」、Hampel and Tritz,Biochemistry,28:4929,1989、及びHampel et al.,Nucleic Acids Research,18:299,1990に記載されている。これらの具体的なモチーフは、本開示において限定的なものではなく、当業者であれば、本開示の酵素核酸分子において重要であることの全ては、それが1又は複数の標的遺伝子RNA領域に相補的な特異的基質結合部位を有し、及びそれが分子にRNA切断活性を与える基質結合部位内又はその周囲のヌクレオチド配列を有することであることを認識するであろう。
【0115】
低分子ヘアピン型RNAは、任意選択による3’UUオーバーハングを有するステムループ構造からなる。変化し得るが、ステムは21〜31bp(望ましくは25〜29bp)の範囲であってもよく、ループは4〜30bp(望ましくは4〜23bp)の範囲であってもよい。細胞内でのshRNAの発現のため、ポリメラーゼIII H1−RNA又はU6プロモーターのいずれか、ステムループRNAインサートのためのクローニング部位、及び4−5チミジン転写終結シグナルを含有するプラスミドベクターを利用することができる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、通常、明確な開始部位又は停止部位を有し、それらの転写産物はポリ(A)テールを欠く。これらのプロモーターの終結シグナルは、ポリチミジントラクトにより規定され、転写産物は典型的には2番目のウリジンの後に切断される。この位置における切断により、発現されたshRNAにおける3’UUオーバーハングを生じ、これは合成siRNAの3’オーバーハングに類似する。哺乳類細胞においてshRNAを発現する更なる方法は、上記に引用された参考文献において記載されている。
【0116】
siRNA
短い21〜25ヌクレオチドの二本鎖RNAは、遺伝子発現の下方制御に有効である(参照により本明細書に援用される、Zamore et al.,Cell 101:25−33;Elbashir et al.,Nature 411:494−498,2001)。哺乳類におけるsiRNAアプローチの治療有効性は、McCaffrey et al.(Nature 418:38−39,2002)によりin vivoで実証された。
【0117】
標的遺伝子の配列を考慮すると、siRNAは、遺伝子を不活性化するように設計され得る。かかるsiRNAは、例えば罹患組織に直接投与されるか、又は全身投与されるであろう。Parl遺伝子の核酸配列を低分子干渉RNA(siRNA)の設計に使用することができる。21〜25ヌクレオチドのsiRNAは、例えば、疾患関連遺伝子を阻害する治療剤として使用され得る。
【0118】
本開示の阻害性核酸分子は、標的RNA発現のRNA干渉(RNAi)媒介ノックダウンのための二本鎖RNAとして利用され得る。治療的実施形態では、標的RNAは、疾患関連遺伝子である。例えば、非限定的な実施形態では、標的RNAは、癌の発症又は進行に関与する遺伝子である。別の実施形態では、標的RNA発現は、ウイルスに感染した細胞において減少する。別の実施形態では、標的RNAはアポトーシス阻害タンパク質をコードし、前記細胞はHIVに感染している。RNAiは、目的の具体的タンパク質の細胞発現を減少する方法である(Tuschl,ChemBioChem 2:239−245,2001;Sharp,Gene Dev 15:485−490,2000;Hutvagner and Zamore,Curr Opin Genet Devel 12:225−232,2002;及びHannon,Nature 418:244−251,2002において概説される)。dsRNAの形質移入によるか、又はプラスミドに基づく発現系を使用するsiRNAの発現を介するかのいずれかによるsiRNAの細胞への導入は、哺乳類細胞において機能喪失型の表現型を生じるためにますます使用されている。
【0119】
本開示の一実施形態では、本開示のヌクレオベースオリゴマーの8〜19の連続したヌクレオベースを含む二本鎖RNA(dsRNA)分子が作製される。dsRNAは、二重鎖化された、又は自己二重鎖化(self−duplexed)(低分子ヘアピン型(sh)RNA)した単独のRNA鎖を有する2本の異なるRNA鎖であり得る。典型的には、dsRNAは、約21〜22塩基対であるが、望ましい場合は、それよりも短く、又は長く(約29ヌクレオベース以下)てもよい。dsRNAは、標準的な技術を使用して作製され得る(例えば、化学合成又はin vivo転写)。キットは、例えばAmbion(Austin,TX)及びEpicentre(Madison,Wis)から入手可能である。哺乳類細胞においてdsRNAを発現する方法は、各々参照により本明細書において援用される、Brummelkamp et al.Science 296:550−553,2002;Paddison et al.Gene Dev 16:948−958,2002.Paul et al.Nat Biotechnol 20:505−508,2002;Sui et al.Proc Natl Acad Sci USA 99:5515−5520,2002;Yu et al.Proc Natl Acad Sci USA 99:6047−6052,2002;Miyagishi et al.Nat Biotechnol 20:497−500,2002;及びLee et al.Nat Biotechnol 20:500−505,2002に記載されている。特定の実施形態では、二本鎖siRNAのセンス鎖は2つのより小さいオリゴヌクレオチドへと分割され、3本鎖siRNAとも呼ばれる。
【0120】
低分子ヘアピン型RNAは、任意選択による3’UUオーバーハングを有するステムループ構造からなる。変化し得るが、ステムは21〜31bp(望ましくは25〜29bp)の範囲であってもよく、ループは4〜30bp(望ましくは4〜23bp)の範囲であってもよい。細胞内でのshRNAの発現のため、ポリメラーゼIII H1−RNA又はU6プロモーターのいずれか、ステムループRNAインサートのためのクローニング部位、及び4−5チミジン転写終結シグナルを含有するプラスミドベクターを利用することができる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、通常、明確な開始部位又は停止部位を有し、それらの転写産物はポリ(A)テールを欠く。これらのプロモーターの終結シグナルは、ポリチミジントラクトにより規定され、転写産物は典型的には2番目のウリジンの後に切断される。この位置における切断により、発現されたshRNAにおける3’UUオーバーハングを生じ、これは合成siRNAの3’オーバーハングに類似する。哺乳類細胞においてshRNAを発現する更なる方法は、上記に引用された参考文献において記載されている。
【0121】
本発明は、3’及び5’エキソヌクレアーゼ並びにエンドヌクレアーゼから保護する修飾を有する安定化されたR/DNA NPを包含する。かかる修飾は、望ましくはin vivoでの安定性を高めつつ、標的親和性を維持する。様々な実施形態では、本発明のR/DNA NPは、所与のヌクレオベース配列のリボース及び/又はリン酸及び/又は塩基位置における化学的置換を含む。例えば、本発明のR/DNA NPは、リボース部分の2’位置における化学修飾、アプタマーの環状化、3’キャッピング及び「シュピーゲルマー」技術を含む。その2’−OCH3修飾対応物により順次置き換えられたA及びGヌクレオチドを有するR/DNA NPは、本発明の方法に特に有用である。かかる修飾は、典型的には親和性及び特異性を維持するという点で良好な耐容性を示す。様々な実施形態では、R/DNA NPは、少なくとも10%、25%、50%又は75%の修飾されたヌクレオチドを含む。他の実施形態では、80%〜90%ものR/DNA NPのヌクレオチドが安定化置換を含む。他の実施形態では、2’−OMe含有R/DNA NPが合成される。かかるR/DNA NPは、合成するのに安価であり、天然のポリメラーゼが2’−OMeヌクレオチド三リン酸を基質として受け入れず、従って2’−OMeヌクレオチドが宿主DNAへと再利用され得ないことから望ましい。本明細書に記載される方法を使用することにより、R/DNA NPは、in vivo安定性の向上のために選択されるであろう。一実施形態では、2’−F及び2’−OCH修飾を有するR/DNA NPを使用して、ヌクレアーゼ耐性アプタマーを作出する。他の実施形態では、本発明の核酸は、1又は複数のロックド核酸(LNA)を有する。LNAは、修飾RNAヌクレオチドを指す。LNAのリボースは、North又は3’−endoコンホメーションへとリボースをロックする、2’酸素及び4’炭素を接続する余分のブリッジにより修飾される。例えば、Kaur,H.et al.,Biochemistry,vol.45,pages 7347−55;及びKoshkin,A.A.,et al.,Tetrahedron,vol.54,pages3607−3630を参照されたい。他の実施形態では、本発明の1又は複数の核酸は、核酸塩基がデオキシリボース環に代えてモルホリン環に結合され、リン酸に代えてホスホロジアミデート基を介して連結される、モルホリノ構造を組み込む。例えば、Summerton,J.and Weller,D.,Antisense&Nucleic Acid Drug Development,vol.7,pages 187−195を参照されたい。更なる他の修飾として、核酸のリン酸骨格が、リン酸骨格中の酸素基を1又は複数の硫黄基で置換することによって修飾される、(PS)−リン酸硫黄修飾が挙げられる。核酸を安定化する他の修飾は当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,580,737号;及び米国特許出願第20050037394号明細書、同第20040253679号明細書、同第20040197804号明細書及び同第20040180360号明細書に記載される。
【0122】
ヌクレオチド系オリゴマーの輸送
ネイキッドの阻害性核酸分子、又はそのアナログは、哺乳類細胞に進入し、目的遺伝子の発現を阻害することが可能である。それにもかかわらず、特許請求されているR/DNA NPを細胞へと輸送するためにオリゴヌクレオチド又は他のヌクレオベースのオリゴマーの輸送を補助する製剤を利用することが望ましい場合がある(例えば、各々参照により本明細書に援用される、米国特許第5,656,611号、同第5,753,613号、同第5,785,992号、同第6,120,798号、同第6,221,959号、同第6,346,613号及び同第6,353,055号を参照されたい)。
【0123】
投与量
動物モデルと比較したヒトに対する投与量を修正するために当該技術分野において当業者が通例と認識するように、ヒトの投与量は、最初に、マウスで使用された化合物の量から外挿することによって決定され得る。特定の実施形態では、投与量は、化合物約1mg/体重kg〜化合物約5000mg/体重kgの間;又は約5mg/体重kg〜約4000mg/体重kg、又は約10mg/体重kg〜約3000mg/体重kg;又は約50mg/体重kg〜約2000mg/体重kg;又は約100mg/体重kg〜1000mg/体重kg;又は約150mg/体重kg〜約500mg/体重kgの間で変化し得ると予想される。他の実施形態では、この容量は、約1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000mg/体重Kgであってもよい。他の実施形態では、より高い投与量が使用され得ることが予想され、かかる投与量は、化合物約5mg/体重kg〜化合物約20mg/体重kgであってもよい。他の実施形態では、前記投与量は、約8、10、12、14、16又は18mg/体重kgであってもよい。勿論、この投与量は、初期の臨床試験の結果及び特定の患者の要求に応じて、かかる治療プロトコルにおいて日常的に行われるように、上方へ又は下方へと調整され得る。
【0124】
治療方法
本開示は、特異的な標的細胞における1又は複数の標的遺伝子を特異的に阻害又は低減することにより疾患、具体的には腫瘍形成及びウイルス感染症を治療する方法を提供する。前記方法は、被験体に治療的有効量のR/DNA NPを投与することを含み、R/DNA NPは標的細胞に結合して進入する。一旦標的細胞内に入ると、R/DNA NPは、DNAオリゴヌクレオチド中に存在するトーホールド配列を介して再結合する。再会合により、機能性RNA分子が放出される。一実施形態では、RNA分子は相補的であり、siRNAである二重鎖を形成する。放出siRNAは、標的遺伝子を阻害し、疾患細胞の治療をもたらす。前記方法は、疾患が治療されるような条件下において、治療的量又は疾患若しくはその症状を治療するのに十分な量の本明細書の化合物を被験体に投与する工程を含む。
【0125】
本明細書の方法は、かかる効果を生じるために本明細書に記載される化合物、又は本明細書に記載される組成物の有効量を被験体(かかる治療が必要と特定された被験体を含む)に投与することを含む。かかる治療が必要な被験体の特定は、被験体又は医療の専門家によって判断され得、及び主観的(例えば、意見)又は客観的(例えば試験若しくは診断方法により測定可能)であり得る。
【0126】
予防的治療を含む、本開示の治療方法は、通常、哺乳類、具体的にはヒトを含むそれを必要とする被験体(例えば、動物、ヒト)への本明細書の製剤の化合物等の治療的有効量の本明細書の薬剤の投与を含む。かかる治療は、癌の進行若しくは転移又はそれらの症状に罹患した、有する、感受性の又はそのリスクにある被験体、具体的にはヒトに好適に投与される。「リスクにある」被験体の判定は、診断検査又は被験体若しくは医療提供者の意見(例えば、遺伝子検査、酵素若しくはタンパク質マーカー、マーカー(本明細書に規定される)、家族歴等)による任意の客観的若しくは主観的判断により行われ得る。本明細書の薬剤は、転写活性が関与し得る任意の他の疾患の治療にも使用され得る。
【0127】
一実施形態では、本開示は、治療経過をモニタリングする方法を提供する。前記方法は、疾患に罹患している又はそれに感受性の被験体における診断マーカー(マーカー)(例えば、腫瘍形成又はウイルス感染症を示すマーカー)のレベルを特定する工程、又は診断測定(例えば、スクリーニング、アッセイ)の工程を含み、ここで、被験体は、疾患若しくはその症状を治療するのに十分な治療的量の本明細書の化合物を投与されている。前記被験体の疾患状態を確立するため、前記方法で判定されたマーカーのレベルを、健康な正常対照又は他の罹患患者のいずれかにおける既知のマーカーのレベルと比較することができる。一実施形態では、マーカーは、腫瘍形成又はウイルス感染症の指標である。好ましい実施形態では、第1レベルの判定より後の時間点において被験体におけるマーカーの第2レベルを判定し、2つのレベルを比較して疾患又は治療効果の経過をモニタリングする。特定の好ましい実施形態では、被験体における治療前のマーカーのレベルを本開示による治療の開始前に判定し、その後、この治療前のマーカーのレベルを治療開始後の被験体におけるマーカーのレベルと比較して治療の有効性を判定する。
【0128】
キット
本開示は、疾患の治療又は予防のためのキットを提供する。一実施形態では、キットは、単位投与形態の有効量の本発明の薬剤(例えば、R/DNA NP)を含有する治療用又は予防用組成物を含む。一部の実施形態では、キットは、治療用又は予防用化合物を含有する滅菌容器を含み、かかる容器は、ボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、パウチ、ブリスターパック又は当該技術分野で既知の他の好適な容器形態であり得る。かかる容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔又は医薬品の保持に好適な他の材料で作製され得る。
【0129】
望ましい場合、本開示の薬剤は、疾患を有する又は発症するリスクにある被験体に投与するための指示書と共に提供される。前記指示書は、通常、疾患(例えば、腫瘍形成又はウイルス感染症)の治療用又は予防用組成物の使用に関する情報を含む。他の実施形態では、前記指示書は、以下の少なくとも1つを含む:化合物の説明;投与計画及び疾患又はその症状の治療若しくは予防のための投与;用法注意;警告;指示;禁忌;過剰投与の情報;有害反応;動物薬理学;臨床研究;及び/又は参考文献。前記指示書は、(容器がある場合)容器に直接印刷されてもよく、容器にラベルとして貼り付けられてもよく、又は容器内に又は容器と共に供給される別のシート、パンフレット、カード若しくはホルダーであってもよい。
【0130】
併用療法
本開示の組成物及び方法は、当該技術分野において既知の任意の従来の治療法と組み合わせて使用され得る。一実施形態では、抗HIV活性を有する本開示の組成物(例えば、R/DNA NPを含む組成物)は、当該技術分野において既知の抗ウイルスと組み合わせて使用され得る。他の実施形態では、抗腫瘍形成活性を有するR/DNA NPを含む組成物は、外科手術に対するアジュバントとして、又は1若しくは複数の抗腫瘍形成化学療法と組み合わせて使用され得る。或る特定の実施形態では、1又は複数の化学療法薬は、酢酸アビラテロン、アルトレタミン、無水ビンブラスチン、オーリスタチン、ベキサロテン、ビカルタミド、BMS184476、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、ブレオマイシン、N,N−ジメチルL−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−1-Lプロリン−t−ブチルアミド、カケクチン、セマドチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビン−カロイコブラスチン、ドセタキソール、ドキセタキセル、シクロホスファミド、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、シスプラチン、クリプトフィシン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン ドラスタチン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エトポシド、5−フルオロウラシル、フィナステリド、フルタミド、ヒドロキシウレア及びヒドロキシウレアタキサン、イホスファミド、リアロゾール、ロニダミン、ロムスチン(CCNU)、MDV3100、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、イセチオン酸ミボブリン、リゾキシン、セルテネフ、ストレプトゾシン、マイトマイシン、メトトレキサート、タキサン、ニルタミド、オナプリストン、パクリタキセル、プレドニムスチン、プロカルバジン、RPR109881、リン酸ストラムスチン(stramustine phosphate)、タモキシフェン、タソネルミン、タキソール、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン硫酸、及びビンフルニンから選択される。
【0131】
組換えポリペプチド発現
本発明の実施は、特段の定めがない限り、十分に当業者の認識範囲内である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術を利用する。かかる技術は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,second edition(Sambrook,1989);「Oligonucleotide Synthesis」(Gait,1984);「Animal Cell Culture」(Freshney,1987);「Methods in Enzymology」「Handbook of Experimental Immunology」(Weir,1996);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(Miller and Calos,1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel,1987);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」,(Mullis,1994);「Current Protocols in Immunology」(Coligan,1991)等の文献において十分説明されている。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの産生に適用可能であり、それ自身、本発明の作製及び実施において考慮され得る。特定の実施形態に有用な具体的な技術を以下の欄で説明する。
【0132】
以下の実施例は、当業者に対して本発明のアッセイ法、スクリーニング法及び治療法をどのようにして作製し使用するかに関する完全な開示及び説明を提供するように提示され、これらは本発明者らが彼らの発明とする範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0133】
実施例1.自己認識ハイブリッド二重鎖の設計
RNAi経路及びDicer酵素の関与が図1〜3に示される。自己認識R/DNAハイブリッドの設計に含まれる工程が図4〜6に示される。自己認識R/DNAハイブリッドの操作を図7〜9に示す。ハイブリッド再会合のin vitroでの形成、並びに親和性及び形成のキネティクスを図10〜13に示す。in vivoにおけるハイブリッドの形成を図14及び15に示す。図16〜20に示されるように、R/DNAハイブリッドの再会合を、脱消光(FRET)によりin vitro及びin vivoの両方で追跡することができる。図21〜24に示されるように、R/DNAハイブリッドは、予備形成されたsiRNA二重鎖に匹敵するレベルで標的遺伝子発現をサイレンシングすることができる。リポフェクタミン2000は、部分的に蛍光を消光し(図25)、ハイブリッド再会合を阻止する(図26及び27)。図28〜30に示されるように、トーホールド長は、遺伝子サイレンシングに対する様々な影響により変更され得る。図31に示されるように、R/DNAハイブリッドは、化学修飾されたRNA、異なる細胞表面認識を有するドメイン、及びエンドソームエスケープを向上する部分を用いて設計され得る。
【0134】
実施例2.R/DNAハイブリッドの合理的設計及び名称
原理証明として、再会合に際して、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)、HIV−1又はグルタチオンS−トランスフェラーゼP1(GSTP1)に対する非対称Dicer基質を放出する、幾つかのR/DNAハイブリッド対を設計した。R/DNAハイブリッドの設計原理は以下の通りである(図32及び33):機能的Dicer基質siRNAをダイスされないように2つのR/DNAハイブリッドの間で分割することにより、それらを非機能的とする(図33、工程1)。更に、一方又は両方のsiRNA鎖をDNAで置換することにより、RNAiを完全になくすことが示されている。次に、ハイブリッドDNA鎖の各々を、ハイブリッド再会合に必要とされる相補的なトーホールドで装飾し(図33、工程2)、Dicer基質siRNA放出を生じる。センス鎖を含有する全てのハイブリッドは、H_sと呼ばれ、アンチセンス鎖を含有するハイブリッドはH_antと呼ばれる。使用した部分的な配列セットを以下に列挙する。
【0135】
RNA配列
siRNA二重鎖:
eGFPに対して設計した非対称25/27mer Dicer基質siRNA二重鎖
センス
5’−pACCCUGAAGUUCAUCUGCACCACCG
アンチセンス
5’−CGGUGGUGCAGAUGAACUUCAGGGUCA
【0136】
siRNA用のニックドセンス鎖:
eGFPに対して設計した非対称25/27mer Dicer基質siRNA二重鎖用ニックドセンス鎖
1/2センス1
5’−pACCCUGAAGUUC
1/2センス2
5’−AUCUGCACCACCG
センス及び1/2センス_12nt鎖の5’側はリン酸化されている。
【0137】
eGFPに対して設計したsiRNA二重鎖
センス
5’−pACCCUGAAGUUCAUCUGCACC
アンチセンス
5’−UGCAGAUGAACUUCAGGGUCA
【0138】
HIV−1に対して設計した非対称Dicer基質siRNA二重鎖
プロテアーゼ(Pro).位置2332〜2356、pNL4−3による。
センス
5’−pGAGCAGAUGAUACAGUAUUAGAAGA
アンチセンス
5’−UCUUCUAAUACUGUAUCAUCUGCUCCU
【0139】
エンベロープ(Env).gp120、位置7642〜7665、pNL4−3による。
センス
5’−GGACAAUUGGAGAAGUGAAUUAUAUU
アンチセンス
5’−pUAUAAUUCACUUCUCCAAUUGUCC
【0140】
GSTP−1に対して設計した非対称Dicer基質siRNA二重鎖
センス
5’−pAAGGAUGACUAUGUGAAGGCACUGC
アンチセンス
5’−GCAGUGCCUUCACAUAGUCAUCCUUGC
【0141】
DNA配列
非ジップドトーホールドを下線で示し、それらの長さ(nt)を名称の横に現す。
【0142】
eGFPに対して設計したハイブリッド
センス_12のDNA
5’−GGAGACCGTGACCGGTGGTGCAGATGAACTTCAGGGTCA
アンチセンス_12のDNA
5’−TGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGTCACGGTCTCC
センス_20のDNA
5’−GGAGACCGTGACAGTGATTACGGTGGTGCAGATGAACTTCAGGGTCA
アンチセンス_20のDNA
5’−TGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGTAATCACTGTCACGGTCTCC
センス_30のDNA
5’−GGAGACCGTGACAGTGATTAGATTACACTCCGGTGGTGCAGATGAACTTCAGGGTCA
アンチセンス_30のDNA
5’−TGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGAGTGTAATCTAATCACTGTCACGGTCTCC
【0143】
HIV−1に対して設計したハイブリッド
プロテアーゼ(Pro)
センス_12のDNA
5’−AGUCUUCUAAUACUGUAUCAUCUGCUCCUGTCACGGTCTCC
アンチセンス_12のDNA
5’−GGAGACCGTGACGAGCAGAUGAUACAGUAUUAGAAGA
【0144】
エンベロープ(Env)
センス_12のDNA
5’−AATATAATTCACTTCTCCAATTGTCCGTCACGGTCTCC
アンチセンス_12のDNA
5’−GGAGACCGTGACGGACAATTGGAGAAGTGAATTATATT
5’−GGAGACCGTGACTGGAGGAAATGAACAAGTAGATAAAT
【0145】
GSTP1に対して設計したハイブリッド
センスのDNA
5’−GCAGTGCCTTCACATAGTCATCCTTGCGTCACGGTCTCC
アンチセンスのDNA
5’−GGAGACCGTGACGCAAGGATGACTATGTGAAGGCACTGC
【0146】
蛍光標識化したRNA配列
eGFPに対して設計したsiRNA二重鎖のセンス鎖
RNA_センスIRDye700
5’−/5IRD700/ACCCUGAAGUUCAUCUGCACCACCG
【0147】
蛍光標識化したDNA配列
センス_12_Alexa488のDNA
5’−GGAGACCGTGACCGGTGGTGCAGATGAACTTCAGGGTCAtt/3AIexF488N/
アンチセンス_12_Alexa546のDNA
5’−/5AI exF546N/aaTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGTCACGGTCTCC
アンチセンス_12_Alexa546のトランケートDNA
5’−/5AI exF546N/aaTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCG
DNAセンス_IowaBlack FQ
5’/5IAbFQ/ACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCG
【0148】
ハイブリッドの再会合のスキームを図34に示す。R/DNAハイブリッド中の相補的な1本鎖非ジップドトーホールドを、任意の安定的な二次構造を回避するためMfold(Zuker,M,Nucleic Acids Res 31,3406−3415(2003))を使用して設計する。37℃の融点(T)を超えるためには、GC含有量が60%以上の非ジップドトーホールドの最小長さは、少なくとも12ヌクレオチド(nts)とすべきである。設計した1本鎖トーホールドに対するTは、ウォレスルール(Wallace,R.B.et al.,Nucleic Acids Res 6,3543−3557(1979))を使用して約40℃と予測される。20nts及び30ntsのトーホールドも試験した。siRNA二重鎖の非対照性により、全てのH_sハイブリッドは、2塩基の3’オーバーハングを有する(図34)。DNA、R/DNA及びRNA二重鎖の相対的な熱力学的安定性を、それぞれ、RNAについて最も高く、DNA二重鎖について最も低く整えることができる(Sugimoto,N.et al.,Biochemistry 34,11211−11216(1995))。核酸パッケージNUPACK(Zadeh,J.N.et al.,J Comput Chem 32,170−173(2011))を使用して、37℃、等モル濃度(1μM)の個別の鎖でのRNA及びDNA二重鎖の二量体化の自由エネルギーを計算した。現在、公的にR/DNAハイブリッド自由エネルギー計算のための利用可能な計算方法が存在しない。従って、設計したR/DNAハイブリッドのΔGを推定するため、本発明者らは以下の近似等式を使用した:
ΔG(R/DNAハイブリッド)〜(ΔG DNA「ハイブリッド」二重鎖)+(ΔG RNA「ハイブリッド」二重鎖)/2(等式1)
式中、(ΔG DNA「ハイブリッド」二重鎖)は、対応するR/DNAハイブリッドと同一の配列を有するDNA二重鎖について計算した自由エネルギーであり、ΔG(RNA「ハイブリッド」二重鎖)は、同じハイブリッドと同一の配列を有するRNA二重鎖の自由エネルギーである。
初期状態の自由エネルギーを計算した:
ΔGinitial〜ΔG(R/DNAハイブリッド1)+ΔG(R/DNAハイブリッド2)(等式2)
最終状態の自由エネルギーを計算した:
ΔGfinal〜ΔG(最終RNA二重鎖)+ΔG(最終DNA二重鎖)(等式3)
最終状態と初期状態の間の自由エネルギーの差を計算した。
ΔΔG〜ΔGfinal−ΔGinitial (等式4)
【0149】
従って、トーホールドジッピング後の再会合のための駆動力は、初期状態(約−85.4kcal/molのΔGを有するR/DNAハイブリッド(25及び27bp)、上記等式2)及び最終状態(約104.9kcal/molのΔGを有するsiRNA(25bp)及びDNA二重鎖(39bp)、上記等式3)の自由エネルギーの差(約−19.5kcal/molのΔΔG、上記等式4)である。RNA二重鎖及びDNA二重鎖の二量体化の自由エネルギーは、NUPACK(Zadeh,J.N.et al.,J Comput Chem 32,170−173(2011))を使用して計算した。
【0150】
実施例3.ダイシングアッセイ及びヒト血清中でのリボヌクレアーゼ分解に対する耐性
操作したR/DNAハイブリッド及びsiRNA二重鎖を調製し、以前に記載されたヒト組換えDicer(Afonin,K.A.et al.,Nat Protoc 6,2022−2034(2011)及びGrabow,W.W.et al.,Nano Lett 11,878−887(2011))により処理される能力について試験した。
図34に提示される未変性ゲルシフトアッセイにより、ヒト酵素Dicerは個別のR/DNAハイブリッドに対して不活性であるが、RNA二重鎖を切断するであろうという、以前に公開された知見(Zhang,H.et al.,The EMBO journal 21,5875−5885(2002))を確認した。従って、予備的なダイシングの結果は、細胞に別々に進入する再結合したR/DNAハイブリッドのみがDicerにより処理され、更に順にRNAiを活性化するRISCに積載されるという見解を支持する。
【0151】
生物学的状況において、ネイキッドsiRNAはヌクレアーゼにより急速に分解され得るため、血流中における機能的siRNAの保持時間を増加するため、化学修飾したdNMPが導入されることが多い(Guo,P.,Nat Nanotechnol 5,833−842(2010))。しかしながら、RNA/DNAハイブリッドは、血流中で良好に保護されていることが報告されている(Hoerter,J.A.et al.,PloS one 6,e20359(2011))。自動認識R/DNAハイブリッド及びそれらの対応するsiRNA二重鎖について測定された相対的安定性は、以前の知見を強く確認し 図34
【0152】
実施例4.FRETを使用するin vitroでのR/DNAハイブリッド再会合の研究
輸送に対して誘発された反応及び細胞内でのR/DNAハイブリッドの再会合を画像化する更なる機能性を導入するため、及びin vitroでのそれらの相互作用を研究するため、アンチセンス結合DNAの3’側及びセンス結合DNAの5’側をAlexa488及びAlexa546でそれぞれ蛍光的にタグ付けした(図35A)。これらの色素は、フェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)研究で一般的に使用される(Berney,C.& Danuser,G.,Biophysical journal 84,3992−4010(2003))。2つの蛍光標識化したR/DNAハイブリッドを混合し、37℃でインキュベートした場合、それらの再会合は、Alexa546のフェルスター距離(R=6.31nm)以内にAlexa488を配置する。結果として、460nmで励起された場合、Alexa546の発光は非常に増加し、Alexa488のシグナルは、予め作製した再結合が不可能な蛍光標識化DNA二重鎖の対照系に比べて低下する(図35B及び36)。種々の濃度に関する滴定実験を行って、FRETが記録され得る、同族のR/DNAハイブリッドの最も低い感受性濃度(約5nM)を判定した(図36)。
【0153】
また、再会合のキネティクスも同じFRETに基づくシステムを使用して研究した。これらの実験では、Alexa488で標識化したR/DNAハイブリッドを37℃にて2分間インキュベートし、続いてAlexa546でタグ付けしたハイブリッドを添加した。FRET測定による再会合のプロセスを30秒毎に追跡した(図35C)。幾つかの異なる濃度の同族のR/DNAハイブリッドでこの実験を繰り返した(図37A〜37F)。自動認識R/DNAハイブリッドの再会合反応は、2つの工程からなり、以下の等式により表される:
【0154】
【数1】
【0155】
式中、R及びDは1本鎖RNA及びDNAを現す。第1工程(k)は、トーホールドのジッピングによるR/DNAハイブリッドの自動認識であり、テトラマーの形成をもたらす。第2工程(k)は、RNA二重鎖及びDNA二重鎖を生じるリハイブリダイゼーションである。
【0156】
再結合のキネティクス
再会合プロセスの間に起こる反応は、以下の通り説明される:
【0157】
【数2】
【0158】
或いはより簡潔には、
【0159】
【数3】
【0160】
次に、種々の生成物の崩壊は以下の通り説明され得る:
【0161】
【数4】
【0162】
2つのキネティクス定数が異なる場合、微分方程式の統合により以下の速度方程式が得られる:
【0163】
【数5】
【0164】
最初に、再会合が起こらないことから、[B]=0及び[C]=0であり、前記方程式は以下の通り簡略化される:
【0165】
【数6】
【0166】
2つのハイブリッド間の第1反応が二次的な反応であるため、kは初期濃度[A]に比例する。
初期濃度が非常に高い場合、[A]、k<<kであり、及びFRETを産生する生成物の出現Cは以下の指数関数型崩壊によりモデル化され得る:
[C]=[A](1−e−k2t
これについて、速度定数kは濃度に非依存的である。
初期濃度が非常に低い場合、[A]、k>>kであり、及びFRETを産生する生成物の出現Cは以下の指数関数型崩壊によりモデル化され得る:
[C]=[A](1−e−k1t
これについて、速度定数kは初期ハイブリッド濃度[A]に依存する。
数式モデルにより、高初期濃度のハイブリッドについて、第2工程は速度制限的(rate limiting)であり、この速度は濃度依存的である一方、低初期濃度のハイブリッドについては、第1工程は速度決定的(rate determining)となり、速度は濃度依存的であるということを予想される。このモデルに従い、本発明者らは、単一の指数関数型崩壊で種々の濃度におけるデータをフィッティングすることができ(図37)、約30nMより低い濃度において再会合の制限工程は、トーホールドのジッピングである一方で、より高い濃度では、リハイブリダイゼーションが速度決定工程となることを示す。
【0167】
再会合及びsiRNA放出のプロセスにおけるトーホールド相互作用の重要性を強調するため、その再結合する能力についてトーホールドを有さないハイブリッドを試験した(図37H)。この実験において、Alexa488で標識化したH_sハイブリッドをAlexa546で標識化したトランケートハイブリッドH_ant_トランケートと混合し、それらの相互作用を上記のFRET測定により追跡した。結果は、37℃における3時間のインキュベートの内で顕著な相互作用を示さず、従って、再会合プロセスにおけるトーホールドジッピングの重要な役割に関する証明を与えた。
【0168】
in vitroでの形質移入条件を模倣するため、この研究において全ての形質移入実験で使用するポリカチオン性担体であるリポフェクタミン2000(L2K)で蛍光標識化ハイブリッドを別々に予めインキュベートし、その後、再会合のキネティクスを追跡した(図35D)。結果は、溶液中でL2Kと一体化した自動認識R/DNAハイブリッド間に再会合は示されなかった。興味深いことに、L2Kの添加は、Alexa488及び546に対する蛍光シグナルの約10倍の低下を引き起こす(図38A)。更に、L2Kは、酵素活性に対して二重鎖に良好な(約4%未満の分解)保護を与える(図38B)。
【0169】
再結合を追跡する代替法として、IowaBlack蛍光クエンチャーにより消光したAlexa488を有する自動認識二重鎖に基づく別のFRETシステムを使用した(図39)。この場合、再会合は、Alexa488からクエンチャーを分離し、その発光を回復した。以前の知見と一致して、L2Kによる実験は、再結合を示さなかった。
【0170】
実施例5.FRETを使用して細胞内におけるR/DNAハイブリッド再会合をモニタリングした
自動認識R/DNAハイブリッドの細胞内への進入及び再結合の能力を、共焦点顕微鏡により評価した。Alexa488及びAlexa546で標識化したR/DNAハイブリッドを、MDA MB231細胞に同時形質移入し、次の日に共焦点顕微鏡により画像化した(図40及び41)。図40Aに見られる中断された不均質なパターンは、図40の蛍光ハイブリッドのエンドソーム位置と一致する。Alexa488及びAlexa546蛍光の重複は、それらの一部が異なるエンドソームに分布するものの、黄色シグナルを特徴とする相当量の共局在が起きていることを示している。FRETがそれらのエンドソーム区画内で起こるかどうかを更に確認するため、Alexa546増感発光を画像化した。試料を488nmで励起し、Alexa546の発光を収集した。ブリードスルー補正に際して残るFRETシグナルを図40A(1+4及び5)に提示する。R/DNAハイブリッドはエンドソーム区画に共局在するのみならず、かなりのFRETを呈する。高濃度のハイブリッドはエンドソーム内に蓄積するため、観察されたFRETは更に近辺から発散され、これは再結合をもたらさない。より決定的な方法でこの事項に取り組むため、異なるシステムを使用した。再会合によりFRETを呈することが可能なフルオロフォアを導入することに代えて、Alexa488及びIowaBlack蛍光発光クエンチャーを含有する消光した自動認識二重鎖を形質移入した。この二重鎖それ自体は何らの蛍光発光も呈さない(図40B一番上の行及び図42)。しかしながら、この消光した二重鎖が自動認識R/DNAハイブリッドと共に同時形質移入された場合には、エンドソーム区分内でのAlexa488の非消光が観察され、細胞内での2つのコンストラクト間の再会合が起きていることを更に証明している。
【0171】
実施例6.細胞内での再会合R/DNAハイブリッドによるsiRNAの放出
細胞内における自動認識R/DNAハイブリッドの再結合及び治療用部分(siRNA)を放出する能力を評価するため、eGFPを安定的に発現するヒト乳癌細胞(MDA−MB231/eGFP)による実験を実施した(図44及び45)。まず、細胞を一度に1つのみのハイブリッド(H_s又はH_ant)で同時形質移入し、3日後、eGFP発現レベルを蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリーにより分析した。全ての実験を少なくとも3回繰り返した。結果は、個々のハイブリッドにより引き起こされるeGFP産生におけるサイレンシングを示さなかった(図43及び45A)。しかしながら、別々に調製した、個々の同族のR/DNAハイブリッドを含むL2Kの複合体(H_s/L2K及びH_ant/L2K)で細胞を同時形質移入した場合、3日後に測定されたサイレンシングレベルは、対照の予め形成された非対称Dicer基質siRNAによる形質移入でもたらされたサイレンシングに匹敵するものであった(図43及び43B)。L2K結合R/DNAハイブリッドに関する再会合のキネティクス研究に基づき(図35D及び図35E)、同時形質移入したハイブリッドの再会合及びsiRNA放出は、細胞内ではなく培地中で起こると結論付けることができる。
【0172】
陰性対照として、HIV−1に対して設計したeGFPサイレンシングに無関係の自動認識R/DNAハイブリッドを使用した(図43B)。また、R/DNAハイブリッド再会合による古典的サイズのsiRNA(21nts)の放出は、非対称Dicer基質siRNAと比べてより低いサイレンシング効率を示し(図46)、これは公開されたデータ(Rose,S.D.et al,Nucleic acids research 33,4140−4156(2005))と一致する。
【0173】
更に、より高いサイレンシング可能性を有すると報告されている小さい内部セグメント化された干渉RNA(Bramsen,J.B.et al.,Nucleic Acids Res 35,5886−5897(2007))をR/DNAハイブリッドレベルで試験した(図47)。これらの実験では、センス鎖を2つのより短いRNA(1/2センス1及び1/2センス2)にセグメント化し、これらをDNAセンス鎖と共に使用してセグメント化R/DNAハイブリッド(H_セグメント化_s)を作製した。同時形質移入の結果は、セグメント化siRNAとのハイブリッドについてより高いサイレンシング効率を示し、これは公開されたデータと一致した(Bramsen,J.B.et al.,Nucleic Acids Res 35,5886−5897(2007))。
【0174】
実施例7.細胞内でのsiRNA放出に対するトーホールド長の影響
R/DNAハイブリッドを異なる2日間に同時形質移入する実験は、同様にいくらかのサイレンシングを示した(図43B、赤色線)。これは、細胞内再会合及びsiRNAの治療的放出に関する更なる証拠としてはたらく。その後、siRNA放出の相対的効率に対するR/DNAハイブリッドにおけるジッピングトーホールドの長さの影響を調査した。同日又は異なる2日間に同時形質移入した12nts、20nts及び30ntsのトーホールドを有するコンストラクトについて、eGFPの相対的サイレンシングを統計学的に分析した。図48に提示される結果は、同日に同時形質移入したハイブリッドについてサイレンシング効率における差がないことを示す。しかしながら、個々のハイブリッドを1日間隔で形質移入した場合、30ntsのトーホールドを有するコンストラクトは、最も高い効率を示し(図43)、一方で12及び20ntsトーホールドを有するコンストラクトについては、より弱い同等のサイレンシングが観察された。
【0175】
実施例8.in vivoにおけるR/DNAハイブリッドの輸送及び再会合
in vivoにおける自動認識R/DNAハイブリッドの輸送を評価するため、異種移植片腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおいて生体分布実験を行った。R/DNAハイブリッド及びIRDye700で蛍光標識化したDicer基質siRNAを尾静脈注射によりマウスに全身的に輸送した。結果として、in vivo生体分布及び腫瘍取り込みを、10分後、20分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後及び3時間後に蛍光画像化によって推定した(図49)。生体分布プロファイルは、3時間の時間経過内において他の主要な器官(脾臓、肝臓、腎臓、腸、及び胆嚢)と比較して、腫瘍内で比較的高い自動認識R/DNAハイブリッドの取り込みを示す。脾臓、肺、心臓及び脳において、蛍光シグナルは検出されなかった。3時間点において、一部の器官、腫瘍及び血液試料を、ex vivoにおいて定量的に分析した。図49Bに示されるように、3時間後のマウス血液中のR/DNAハイブリッドの相対濃度は、siRNAの濃度よりもほぼ6倍高い。図49Cに示される腫瘍/腎臓比は、主に腎臓に蓄積したsiRNAと比較して顕著に高い(約2.5倍)R/DNAハイブリッドの取り込みを示す。これは、その分解及び腎排泄をもたらすin vivoでのsiRNAの相対的化学不安定性に起因し得る。更に、本発明者らは、eGFP発現MDA−MB231異種移植片のin vivoにおける遺伝子サイレンシングを行った。自動認識R/DNAハイブリッド及びeGFPに対するsiRNAを、2匹のマウスにおいて腫瘍内注射によって投与した。注射から5日後の(対照動物と比較した)腫瘍におけるeGFPの蛍光強度の測定により、ex vivoにおいてサイレンシングの程度を分析した(図49D及び図50)。R/DNAハイブリッド及びsiRNAによる注射の両方が、eGFP蛍光強度の約70%に匹敵する減少をもたらした。これらの結果は、本発明者らの複数のin vitroサイレンシング実験と良好に一致し、自動認識R/DNAハイブリッドによる標的遺伝子のサイレンシングの成功が確認された。
【0176】
実施例9.HIV標的及び癌標的に対する自動認識R/DNAハイブリッド
前記アプローチの普遍性及び自動認識R/DNAハイブリッドを治療用部分として使用することの実行可能性を示すため、幾つかのHIV−1及び癌遺伝子も標的とした。
【0177】
HIV−1標的遺伝子の場合、以前に記載されるsiRNA(Lowe,J.T.et al.,Mol Ther 20,820−828(2012)))を使用して自動認識R/DNAハイブリッド及び対応するsiRNA二重鎖を設計した。2つの主な標的、すなわちGag及びGag−Polポリタンパク質前駆体(pro−siRNA)をコードする全長ゲノムRNAに見出されるプロテアーゼコーディング領域、及びHIV−1糖タンパク質env mRNA(Env_siRNA、gp120に位置する)を選択した。図51に示される結果は、siRNA及びR/DNAハイブリッドによる用量依存的ウイルス阻害を示した。たった20nMのPro_ハイブリッドによりHIV−1産生を85%まで阻害した。Gag及びGag−Polをコードする全長mRNAにも結合する、Env_siRNAは、65%〜85%までウイルス産生を低減した(図51A)。細胞内のgp160及びgp120のレベルも低減された(図51B)。HIV−1 gp160及びgp120の阻害は、それぞれ、76%及び82%にまで達した(データは示されていない)。細胞内での再結合の後、20nMのProハイブリッドsiRNAによりGag(Pr55+p24/p25)の総量を平均で72%まで低減した。Env_ハイブリッドsiRNAは、細胞内Gagを75%までノックダウンした(図51B)。また、本発明者らは、本発明者らのシステムにおけるこれらのsiRNAの毒性作用を研究するために異なるアプローチを試験した。同時形質移入したウミシイタケルシフェラーゼをコードするベクターの発現により示されるように、毒性レベルは低かった(補足図52)。また、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の細胞発現レベルは、有意には影響を受けなかった(データは示されていない)。これらの結果は、自動認識R/DNAハイブリッドが細胞内で再結合することができ、種々の標的を介してHIV−1を阻害することを明確に示している。
【0178】
癌標的遺伝子として、グルタチオンS−トランスフェラーゼP1(GSTP1)を選択した。GSTP1は、抗癌剤を含む様々な求電子化合物に対するグルタチオンの共役を触媒する第II相解毒酵素である。GSTP1は、腫瘍細胞の発生及び生存において重要な保護的役割を果たす、及び癌において頻繁に観察されるGSTP1の過剰発現は化学療法抵抗性と結び付けられていると考えられている(Townsend,D.M.& Tew,K.D.,Oncogene 22,7369−7375(2003))。更に、GSTP1は、c−jun−NH2−キナーゼ1(JNK1)と直接相互作用してマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路を阻害し、薬物誘導性アポトーシスに対する細胞の感受性を低減することが提案されている(Townsend,D.M.&Tew,K.D.,Oncogene 22,7369−7375(2003))。RNA干渉によるGSTP1の発現減少は、化学療法に対して癌細胞を感作するために治療的に使用され得る。
【0179】
内因性GSTP1タンパク質発現は、個別に24時間間隔の異なる2日間に同時形質移入したR/DNAハイブリッドにより効果的に減少され得ることが示された。A549肺腺癌細胞のR/DNAハイブリッドとのインキュベーションは、GSTP1タンパク質産生に顕著な(約55%)の減少をもたらした(補足図53)。
【0180】
実施例10.R/DNAキメラ多機能ナノ粒子(NP)はHIVに感染した細胞に結合して進入し、HIVに感染した細胞においてアポトーシスを増加する。
治療用R/DNAキメラ多機能ナノ粒子(NP)を、HIV感染の認識、可視化及び機能的治癒に向けてコンピューターで設計した。特定の理論に拘束されるものではないが、複数の治療用siRNAの放出は、HIVにより感染した細胞に別々に進入する少なくとも2つのR/DNA NPの存在によって誘発され得る。2以上の同族のR/DNA NPを、HIVに感染した細胞の細胞表面タンパク質の特徴(例えば、gp41及び/又はgp120に対するアプタマー)の発現をターゲッティングする異なる認識ドメインにより装飾する。
【0181】
治療用R/DNA NPを図54に示す。各々の同族のR/DNA NPは、独立して治療的に不活性であり、DNA鎖に共有結合している幾つかのスプリット機能性(スプリットリパーゼ、スプリット緑色蛍光タンパク質(GFP)等)と同様に、幾つかの機能性(細胞表面認識ドメイン、蛍光タグ、細胞取り込みを容易にするドメイン等)を有する。
【0182】
一実施形態では、2以上の同族のR/DNA NPは、HIVに感染した細胞の細胞表面タンパク質の特徴をターゲッティングする異なる認識ドメイン(例えば、gp41及び/又はgp120に対するアプタマー)で装飾される。コンピューターによる予測は、近接する(例えば、エンドソーム又は細胞質)両方の同族のR/DNA NPの存在が、操作したトーホールド認識を介して構造的再会合を促進することを示す。これは、機能性(エンドソームエスケープのためのリパーゼ、可視化用のGFP等)を活性化し、治療用siRNAを放出する。低分子干渉RNA(siRNA)を使用することにより、標的mRNAの発現をノックダウンすることがごく普通に可能である。更に、様々なsiRNAにより幾つかのヒトアポトーシス阻害遺伝子を同時にターゲッティングすることによって、コンビナトリアルRNA干渉(co−RNAi)を介して細胞死(アポトーシス)を誘導することが可能である。
【0183】
重要なことは、本発明のR/DNA NPにおいて、治療用siRNAの数は、具体的な課題に応じて分岐の数を調節することによって完全にプログラム化することができる。ヒト酵素Dicerは個別のR/DNA NPに対して不活性であるが、再結合したsiRNAを切断し、一方のsiRNA鎖(ガイド鎖)をRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)へと輸送し、これは次にco−RNAiを活性化する。ガイド鎖は、ヒトアポトーシス阻害遺伝子(BCL−2、FLIP、STAT3、XIAP等)に対するアンチセンス配列を有するように設計される。従って、co−RNAiの活性化は、HIV感染細胞のアポトーシスを生じる。
【0184】
その化学的不安定性及び小さいサイズ(10nm未満)のため、一般的なsiRNAの薬物動態(pharmokinetics)は非常に乏しく、腎臓クリアランスを促進することが知られている。R/DNA NPは10nmを超える平均サイズで化学的に安定であり、これにより治療用途に魅力的な候補とされている。かかる合成の「賢明な」R/DNA NPは、HIVに感染した患者の根絶療法に対する主要な構成要素である。
【0185】
実施例11.GFPをターゲッティングする自動認識R/DNA二重鎖は細胞内のGFP発現を減少させた
ヒト細胞におけるGFPの産生をターゲッティングする、最初からの及び研究された自己認識R/DNA二重鎖システムを操作した(図55)。自動認識R/DNA二重鎖は、細胞内において効果的に互いを発見し、GFPの合成をノックダウンするsiRNAを放出した。従って、自動認識R/DNA二重鎖は、再結合されるまでDicerには処理されなかった。更に、自動認識R/DNA二重鎖が個別に異なる2日間に形質移入された場合であっても、siRNA放出が観察された。
【0186】
実施例12.HIV細胞表面認識ドメイン及びHIVに感染した細胞においてアポトーシスを増加するアポトーシス阻害遺伝子をターゲッティングするsiRNA配列を有する治療用R/DNA NP
設計した粒子のコンピューターによる特徴づけのため、RNAの二次構造予想のための新規かつ先行するバイオインフォマティクスアプローチ、RNA 3D構造モデリング及びRNA配列設計が開発されている。分子運動シミュレーションに供された治療用R/DNA NPの三次元モデルの作製は、合成R/DNA NPのキネティクス動態に関する重要な情報を与える。
【0187】
in silicoで設計した治療用R/DNA NPのライブラリをin vitro及びHIV感染細胞において試験した。所望の組成物のR/DNA NP中へと集合するそれらの能力について、新たに設計した配列をin vitroで試験した。一旦集合すると、2つ一組で同族のR/DNA NPを自動認識(結合親和性、再結合のキネティクス等)について試験した。同族のR/DNA NP対からのsiRNA二重鎖の放出は、ヒトDicerの処理能力に影響されやすく、治療に有用である。Dicer活性は自動認識再結合の場合に予想される。必要であれば、RNA構造に対して適切な化学修飾を行って、再結合したsiRNAのDicer処理能力、更にはRISC複合体のロードを促進する。
【0188】
R/DNA NP対の活性を試験するため、異なる時間点、濃度、及び組成物において、HIVに感染したヒト細胞(H9及び/又はJurkat細胞)を同族のR/DNA NPで形質移入した。細胞表面HIVマーカーをターゲッティングする細胞認識ドメインを有するR/DNA NPは、HIVに感染した細胞に結合して進入する。R/DNA NPは、HIVに感染した細胞においてアポトーシスを増加する、アポトーシス阻害遺伝子をターゲッティングするsiRNA配列を含有する。特定の理論に拘束されるものではないが、近接する(例えば、エンドソーム又は細胞質)両方の同族のR/DNA NPの存在は、操作したトーホールド認識部分を介する構造的な再会合を促進する。アポトーシスは、商業用キットにより、例えば、BD(商標)MitoScreen(JC−1)フローサイトメトリーキットを使用するフローサイトメトリーにより、測定され得る。非感染細胞株を対照として使用する。
【0189】
実施例13.再会合により複数の機能性を放出する自動認識RNA/DNAハイブリッド
これは、複数の機能性(FRET、アプタマー、リボザイム、siRNA、タンパク質等)を分割し、それらを同時に自動認識RNA/DNAハイブリッドへと導入することができる。これらのハイブリッドは、それら自体は不活性であるが、それらの少なくとも2の存在下により再会合及び機能性放出を生じる(図56)。アプタマー、様々なsiRNA(eGFP及びHIV−1に対する)、及びフェルスター色素の蛍光対を含有する幾つかのハイブリッドを設計し、実験的に試験した。配列を以下に示す:
【0190】
センス
5’−pACCCUGAAGUUCAUCUGCACC
アンチセンス
5’−pUGCAGAUGAACUUCAGGGUCA
MGアプタマー1
5’−UAUGACAUGGUAACGAAUGACAGUAU
MGアプタマー2
5’−AUACUGUCCGACAUGUCAUA
【0191】
siRNA及びMGアプタマー用のハイブリッド
小文字の配列をDNA鎖に付加してMGアプタマー及びsiRNAの2nts 3’オーバーハングの非対称性を補償した。
【0192】
【化1】
【0193】
MGアプタマー及びsiRNA
【0194】
【化2】
【0195】
2つのsiRNA
【0196】
【化3】
【0197】
MGアプタマー及び2つのsiRNA
【0198】
【化4】
【0199】
3つのsiRNA
【0200】
【化5】
【0201】
HIV−1に対する3つのsiRNA(1877、ldr、Gag)
プロテアーゼ(Pro).位置2332〜2356、pNL4−3による、−1877
センス
5’−pGAGCAGAUGAUACAGUAUUAGAAGA
アンチセンス
5’−UCUUCUAAUACUGUAUCAUCUGCUCCU
エンベロープ(Env).gpl20、位置7642〜7665、pNL4−3による、−7193
センス
5’−GGACAAUUGGAGAAGUGAAUUAUAUU
アンチセンス
5’−pUAUAAUUCACUUCUCCAAUUGUCC
R/T−3722
センス
5’−pGAGGAAAUGAACAAGUAGAUAAAU
アンチセンス
5’−AUUUAUCUACUUGUUCAUUUCCUCCA
【0202】
【化6】
【0203】
結果は、全ての機能性の放出の成功を示す。ハイブリッドの異なる位置に組み込まれた蛍光レポーターとしてのスプリットマラカイトグリーンアプタマーを使用した(図57及び58)。本発明者らは、水溶液中で結合していない状態において、効率的な内部転換によりSI励起状態から非常に低い蛍光量子収率を呈することから、トリフェニルメタン色素であるマラカイトグリーン(MG)を蛍光レポーターとして選択した。この色素の発光は、SIからの無放射緩和チャネルが閉じた場合に、実質的に増加する。この現象の根本的な機構の詳細は今も議論されており、関連する研究により、高粘性環境又は結合ケージにおくことによりこの色素を「硬化すること(rigidifying)」は、劇的にその発光を増加することが示されている。例えば、最近では、MGの発光は、in vitro選択(SELEX)により得られるRNAアプタマーへの結合により桁違いに増加することが報告されている。
【0204】
自動認識R/DNAハイブリッドの細胞内に進入して再結合する能力を、共焦点顕微鏡により評価した(図59)。Alexa488及びAlexa546で標識化したR/DNAハイブリッドをMDA−MB−231細胞に同時形質移入し、翌日に共焦点顕微鏡により画像化した。図59Bに見られる中断された不均質なパターンは、蛍光ハイブリッドのエンドソーム位置と一致する(図59C及び59D)。Alexa488及びAlexa546蛍光発光の重複は、それらの一部が異なるエンドソームに分布しているものの、黄色シグナルを特徴とする相当量の共局在が起きていることを示している。FRETがそれらのエンドソーム区画内で起きているかどうかを更に確認するため、Alexa546増感発光を画像化した。試料を488nmで励起し、Alexa546の発光を収集した。ブリードスルー補正により残るFRETシグナルが図59B(4及び5)に提示される。
【0205】
自動認識R/DNAハイブリッドの細胞内で再会合し機能性部分(非対称Dicer基質siRNA)を放出する能力を評価するため、安定的にeGFPを発現するヒト乳癌細胞(MDA−MB−231/eGFP)を用いて実験を行った(図59D)。まず、細胞を一度に1つのみのハイブリッド(H1又はH2)で同時形質移入し、3日後eGFPの発現レベルを蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリーにより分析した。全ての実験を少なくとも3回繰り返した。結果は、個々のハイブリッドにより引き起こされるeGFP産生に何らのサイレンシングも示さなかった。しかしながら、別々の調製したL2Kの複合体及び個々の同族のR/DNAハイブリッド(H1/L2K及びH2/L2K)で細胞を同時形質移入した場合、3日後に測定したサイレンシングレベルは、3つのsiRNA(ハイブリッド(iii))を放出するハイブリッドに対するより高いサイレンシング効率を有する対照の予備形成された非対称Dicer基質siRNAによる形質移入によりもたらされるサイレンシングに匹敵した。
【0206】
上記実施例を、以下の材料及び方法を使用して行った。
【0207】
RNA及びDNA配列設計。1本鎖DNAトーホールド配列をmFoldプログラム(Zuker,M,Nucleic Acids Res 31,3406−3415 (2003))で最適化し、代替的な二次構造フォールドの発生を最小化した。以前の研究から二重鎖用のsiRNA配列を使用した(Afonin,K.A.et al.,Nat Protoc 6,2022−2034(2011)及びRose,S.D.et al.,Nucleic Acids Res 33,4140−4156(2005))。使用したRNA及びDNA配列の全ての一覧を入手することができる(補足情報)。ハイブリッド二重鎖用のRNA、DNA及び蛍光標識化DNAをIntegrated DNA Technologies,Inc.から購入した。蛍光標識化DNAの場合、2つのヌクレオチドの追加のリンカー(TT又はAAのいずれか)を蛍光タグ用に付加した。
【0208】
ハイブリッドR/DNA二重鎖の集合及び未変性PAGE。様々な二重鎖形成アプローチが他(Afonin,K.A.et al.,Nat Protoc 6,2022−2034(2011))及び本研究においてに詳述され、本発明者らは、最も早いプロトコルを使用した。本文に規定される濃度のオリゴ(RNA及び/DNA)単位を2回に亘り脱イオンした(doubledeionized)水に混合し、95℃にて2分間のヒートブロックでインキュベートした。試料を含有するブロックを熱から除き、10分間に亘って直接氷上に置いた。95℃の加熱前又はその工程後にハイブリダイゼーションバッファー(89mMのTris、80mMのホウ酸(pH8.3)、10mMの酢酸マグネシウム)を混合物に添加した。未変性PAGE実験を記載される通り行った(Afonin,K.A.et al.,Nat Protoc 6,2022−2034(2011);Afonin,K.A.et al.,Chembiochem 9,1902−1905(2008);Afonin,K.A.& Leontis,N.B.Journal of the American Chemical Society 128,16131−16137(2006))。典型的には、報告されている集合実験は、89mMのTrisホウ酸塩、pH8.3、2mMのMg(OAc)の存在下で、10℃にて7%(29:1)の未変性ポリアクリルアミドゲル上で分析されていた。Hitachi FMBIO II Multi−View Imagerを使用してSYBR Gold染色したR/DNAハイブリッドを可視化した。
【0209】
組換えヒトDicerアッセイ。最終濃度3μMまでハイブリッドR/DNA二重鎖を上述の通り調製した。ダイシング実験のため、製造業者が提案するプロトコルに従って、37℃にて4時間に亘り、ウルトラアクティブ形態のヒト組換えdicer酵素を含有する組換えヒトturbo dicer酵素キット(Genlantis)と共に試料をインキュベートした。ダイシング反応を、2mM Mg(OAc)未変性7%PAGE(上記される)上での分析の前に、dicer停止溶液(製造業者により提供された)によりクエンチした。
【0210】
ヒト血清分解研究。新たに得たヒト全血血清のアリコート(血液を凝集させ、遠心沈殿させて上清を採取した)をすぐに各々の新たな研究に使用した。様々な期間に亘る37℃での80%(v/v)のヒト血清とのインキュベーションの前に、本発明者らによるin vitroでの有効性の研究で使用されたものより100倍高い濃度のRNA二重鎖及びR/DNAハイブリッドを氷上に維持した。最終RNA濃度は2μMであった。2%アガロースゲルにロードする直前、ドライアイス上で分解時間経過をクエンチした。Hitachi FMBIO II Multi−View Imagerを使用して、臭化エチジウムで染色したRNA二重鎖及びR/DNAハイブリッドを可視化した。
【0211】
蛍光発光研究。in vitroでのR/DNAハイブリッドの再会合を評価するため、FluoroMax3(Jobin−Yvon,Horiba)を使用するFRET測定を行った。全ての実験について、励起波長を460nmに設定し、励起及び発光スリット幅を2nmに設定した。最初の実験セットでは、相補的DNAをAlexa488及びAlexa546で修飾した。再結合のキネティクスに従うため、まずセンスRNAを含有するAlexa488R/DNAハイブリッドを37℃にて2分間インキュベートし、その後、アンチセンスRNAを含有するAlexa543R/DNAハイブリッドを本文で規定される等モル量で添加した。FRET測定による再会合のプロセスを追うため、460nmでの励起により、520nm及び570nmでの発光を30秒毎に同時に記録した。これは、形質移入条件に関連する量のネイキッドハイブリッド及び予めリポフェクタミン2000と複合体化させたハイブリッドにより行われた(以下を参照)。また、等モル量の2つの蛍光標識化ハイブリッドの3時間の同時インキュベーションによる静的測定も行った。2つ目の実験セットでは、Alexa488で修飾された一方の鎖及びIowaBlack FQで修飾されたもう一方の鎖を含有するDNA二重鎖を使用した。Alexa543 R/DNAハイブリッド又は非標識化R/DNAハイブリッドの添加によるAlexa488の脱消光を、FRET実験について上述の通り行った。Alexa488蛍光発光の減少をSigmaplotにおいてフィッティングした。以下の3つのパラメーターを含む単一の指数関数型崩壊方程式:
y=yo+ae−kt
にデータをフィットするため、線形回帰を適用した。
【0212】
RQ1 DNaseによる安定性アッセイ。ヌクレアーゼ存在下での予備形成した二重鎖/L2K複合体の安定性を調べるため、Alexa488で修飾された一方の鎖及びIowaBlack FQで修飾されたもう一方の鎖を含有するDNA二重鎖を、L2Kと予めインキュベートし、FRET実験について上述される通り、RQ1 RNase free DNase(Promega)を用いた消化によるAlexa488の脱消光を行った。対照として、消光したDNA二重鎖を単独で使用した。RQ1 RNase free DNaseを製造業者のプロトコルに従って使用した。
【0213】
siRNA含有RNA NPによるヒト乳癌細胞の形質移入。機能性R/DNAハイブリッドの輸送をアッセイするため、ヒト乳癌細胞株MDA−MB−231(eGFPを含む、又は含まない)を、5%COインキュベーターにおいて10%FBS及びペニシリン−ストレプトマイシンで補填したD−MEM培地(Gibco BRL)中で成長させた。このプロジェクトにおける全ての形質移入を、Invitrogenから購入したリポフェクタミン2000(L2K)を使用して行った。R/DNAハイブリッドの10倍又は50倍溶液を、L2Kと共に30℃にて予めインキュベートした。各形質移入の前に細胞培地をOPTI−MEMで交換し、調製した10倍又は50倍RNA_NP/L2K複合体を1倍の最終濃度まで添加した。細胞を4時間インキュベートした後、培地を交換した(D−MEM、10%FCS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン)。
【0214】
顕微鏡検査。細胞内でのR/DNAハイブリッドの再会合を評価するため、63×、1.4 NA拡大レンズを備えたLSM 710共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して測定を行った。MDA−MB−231細胞をガラス底ペトリ皿(Ibidi,Germany)に播種し、上述のR/DNAハイブリッドによる形質移入に供した。最初の実験セットでは、個々にAlexa488及びAlexa546で修飾したR/DNAハイブリッドを上述の通り細胞へと同時形質移入した。翌日、室温にて20分間4%パラホルムアルデヒド中でインキュベートすることにより試料を固定した。その後、細胞の画像を撮り、試料内のFRETの出現を評価した。Alexa488画像化のため、アルゴンレーザの488nmラインを励起として使用し、発光を493〜557nmで収集した。Alexa546画像化のため、DPSS 561レーザを励起に使用し、発光を566〜680nmで収集した。FRETによる増感発光を評価するため、488nmラインで試料を励起し、566〜680nmの発光を収集することにより画像を取得した。スペクトル重複のため、FRETシグナルは、アクセプターチャネルへのドナー発光及び、ドナー励起波長によるアクセプター分子の励起によって汚染される。このブリードスルーを個々の色素により形質移入した試料を用いて行った測定により評価し、FRETの画像から数学的に除去した。別の実験セットでは、Alexa488で修飾した一方の鎖及び、IowaBlack FQで修飾した別の鎖を含有するDNA二重鎖を使用した。この二重鎖を、単独で形質移入するか、又は二重鎖と再結合が可能なR/DNAハイブリッドと同時形質移入するかのいずれかを行った。Alexa488蛍光発光を上述の通りモニタリングした。全ての画像を1エアリーユニットに調整したピンホールを用いて撮った。
【0215】
エンドソーム共局在研究。細胞中の形質膜陥入した蛍光標識化R/DNAハイブリッドのエンドソーム位置を確認するため、幾つかのエンドソームマーカーによる共染色実験を行った。1つの実験セットでは、細胞をAlexa546 R/DNAハイブリッドで形質移入した。次の日、室温にて20分間、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、その後この温度で扱った。試料をPBSで3回洗浄した後、0.2%Triton X−100で20分間透過処理した。PBSによる3回の洗浄に際し、試料を1%BSAで1時間に亘ってブロックし、その後、初期エンドソーム関連タンパク質EEA1(Cell signaling)又は後期エンドソームマーカーRab7(Cell signaling)に対する一次抗体に暴露した。PBSによる3回の洗浄に際し、試料を二次Alexa488抗体(Molecular Probes)で染色した。2つ目の実験セットでは、細胞をGFP−Rab5又はGFP−Rab7を発現するプラスミドで形質移入した。形質移入から2日以内に、細胞をAlexa546 R/DNAハイブリッドで再度形質移入し、翌日画像化した。両方の実験セットにおいて、Alexa488及び546蛍光発光を、上述の共焦点顕微鏡で分析した。
【0216】
フローサイトメトリー実験。フローサイトメトリー実験による統計学的解析のため、12ウェルプレート(1ウェル当たり10×10細胞)で成長させたMDA−MB−231 231(eGFPを含む又は含まない)細胞を細胞解離バッファーで解離させ、PBSで2度洗浄してFACScaliburフローサイトメトリー(BD Bioscience)上でeGFPの発現レベルを蛍光活性化セルソーター(FACS)分析により判定した。少なくとも20,000の事象を収集し、Cell questソフトウェアを使用して分析した。
【0217】
in vivo実験。Federick National Laboratory for Cancer Research(Frederick,MD)Animal Care and Use Committeeのガイドラインに従って、動物実験を行った。全ての実験について、10のMDA−MB−231腫瘍細胞を各無胸腺ヌードマウス(Charles River Laboratories,Frederick,MD)の脇腹に注射した。腫瘍の最も長い直径が5mmに達したとき(MDA−MB−231(eGFPなし)注射から約2週間後)に生体分布実験を行った。マウスの尾静脈に、10μg/mlのボラ型両親媒性カチオン性担体(Grinberg,S.et al.,Langmuir 21,7638−7645(2005)に記載される)と関連付けられた、100μl(500nM)のsiRNA_IRDye700又はR/DNA_IRDye700を一度注射した。対照マウスを100μlのPBSバッファーで注射した。蛍光画像化(Maestro GNIR−FLEX,Cambridge Research&Instrumentation,Inc.Woburn,MA)を、動物が麻酔(1L/分フローでO中1〜2%のイソフルラン)されている間に、ベースライン(自動蛍光発光を測定するための注射前)、並びに注射から10分、20分、30分、45分、1時間及び2時間及び3時間後に実施した。スキャン(加熱した画像化テーブル)の前、間、及び麻酔から回復する間の画像化の後、動物の内部温度を維持した。画像分析(自動蛍光発光及び造影剤に関する画像ライブラリ)を製造業者のプロトコルに従って行った(Maestro software 2.10.0,CRi,Woburn,MA)。造影剤のIR波長パラメーターにより、画像取得は、励起フィルター(590±15nm)、発光フィルター(645nmロングパス)及び10nm段階毎の650〜850nmのマルチスペクトル取得を利用した。目的の領域を異なる器官周辺で摘出し、全シグナル(カウント/秒)を種々の時間点について回収した。その後、シグナルを種々の器官の重量で正規化した。注射から3時間後の時間点において、マウスを安楽死させ(ACUCガイドラインによりCO窒息)、関連する器官(脾臓、肺、脳、肝臓、腎臓、腸、心臓、腫瘍及び膀胱)の重量を測定し、in vivo画像取得パラメーターの実行を取り込んだ。サイレンシング実験のため、eGFPを発現しているMDA−MB−231腫瘍細胞を使用した。腫瘍細胞注射の5日後、マウスに、10μg/mlのボラ両親媒性カチオン性担体(他で記載されている)と関連付けられた、100μl(500nM)のsiRNAを腫瘍内注射するか、自己認識R/DNAハイブリッド各々50μl(500nM)を同時注射するかのいずれかを行った。対照マウスを100μlのPBSバッファーで注射した。5日(120時間)後及び10日(240時間)後にマウスを犠牲にした。マウスから腫瘍を取り出し、4℃にて4%PFA中で終夜固定した後、4℃にて終夜20%スクロースに移した。過剰量のスクロースを腫瘍から瓶に入れ、腫瘍をOCT Compound(Tissue−Tek)に包埋した。10μmの凍結切片をスライドに置き、DAPI(Invitrogen)で染色した後、Prolong Gold a/Fade試薬(Invitrogen)でカバースリップした。Qlmaging Retiga−2000Rカメラ及びNikonのNIS−Elements AR Imagingソフトウェアを備えたNikonのEclipse 80i顕微鏡を使用して画像を取得した。
【0218】
自動認識R/DNAハイブリッドによるHIV−1阻害。細胞内再会合後のハイブリッドによるHIV−1阻害の潜在的可能性を試験するため、HeLa細胞をWT HIV−1分子クローンであるpNL4−3、及びR/DNAハイブリッドで同時形質移入した。2つの異なる標的を選択した:プロテアーゼ、全長ゲノムmRNAをターゲッティングする;及びgp120、env及び全長の両方のゲノムmRNAをターゲッティングする。ノックダウン対照として、ヘテロ二重鎖siRNAを使用した。このアッセイで使用したsiRNA濃度は、5nM、10nM及び20nMであった。pNL4−3及びリポフェクタミン2000(Invitrogen)と共に、ハイブリッドプロテアーゼ_アンチセンス及びプロテアーゼ_センスのインキュベーションを別々に行い、その後細胞に添加した(1ウェル当たり2μgのDNA及び2μlのリポフェクタミン2000)。形質移入の48時間後、上清を回収し、逆転写酵素(RT)活性をin vitro反応で測定した(Freed 1994)。RT活性のレベルは、放出されたウイルスのレベルに正比例する。細胞溶解物を以前に記載されたプロトコル(Waheed AA et al,Methods Mol.Biol.485,163−84(2009))に従って放射性免疫沈降分析により分析した。簡潔には、形質移入の48時間後、細胞をMet/Cys不含RPMI培地で30分間飢餓状態に置き、4時間に亘り[35S]Met/Cys−Pro−ミックス(Amersham)で代謝的に標識化した。細胞溶解物を調製し、HIV−1感染患者(HIV−Ig:NIH AIDS Research and Reference Reagent Program)から集めた免疫グロブリンで免疫沈降した。免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにより12%アクリルアミドゲル上で分離し、ゲルをphosphorimagerプレート(Kodak又はFuji)に暴露し、Quantity Oneソフトウェア(Bio−Rad)によりバンドを定量した。全HIV−1 Gagタンパク質を測定し(55kDa Gag前駆体+キャプシド p24/p25)、値をウイルス対照(pNL4−3と共にsiRNAを同時形質移入していない)で正規化した。
【0219】
抗GSTP1自動認識R/DNAハイブリッドによる形質移入実験及び免疫ブロッティング。製造業者のプロトコルを使用して、HiPerfect形質移入試薬(Qiagen,Valencia,CA)を用い、25nmolのR/DNAハイブリッド1又は2で60%コンフルエントのA549肺腺癌を、形質移入した。最初のハイブリッド添加から24時間後に、同じプロトコルを使用して補充のハイブリッドを同時形質移入した。細胞を採取し、24時間後に標準プロトコルを使用して免疫ブロッティング用に処理した。抗GSTP1抗体はCell Signaling Technologyによるものであり、β−アクチン抗体はAbcamによるものであった。
【0220】
増感発光法。
1)Alexa488(Gは緑色)及びAlexa546(Rは赤色)の2つの蛍光プローブを使用した。以下に記載されるように、大文字のG及びRをプローブ自体を略記するために使用し、小文字は対応する励起(Alexa488に対して488nm及びAlexa546に対して561nm)及び発光波長(Alexa488について493〜557nm及びAlexa546について566〜680nm)を表すために使用する。
2)各試料について、3つの画像を撮った。最初の2つの画像は488励起(g)を使用して同時に撮り、2つの採取収集チャネル、一方はgで表す493〜557nm(gg、第1画像)及び他方はrで表す566〜680nm(gr、増感発光及びブリードスルーに相当する第2画像)を用いた。第3画像は561励起(r)を使用した直後に、rで表す566〜680nmの発光の収集(rr、第3画像)を用いて撮った。
2つのプローブを含む試料に対し、増感発光画像(gr)中の所与のピクセルにおけるSは、以下の等式により記載される。
grsample=F+Bgr×Gggsample+Bgr×Rrrsample (等式1)
式中、下付き文字の最初の文字は使用した励起波長を指し、2つ目の文字は収集した発光波長を指す(例えば:grは488nmでの緑色励起及び566〜680mnの赤色発光を現す)。上付き文字のsampleは、この値は試料に依存的であることを意味する。Fは、所与のピクセルでのFRETシグナルである。下付きのG及びRは、各々Alexa488及びAlexa546を指す。Bgrは、488nmで励起された場合のAlexa546発光チャネルへのAlexa488のブリードスルーである。同様に、Bgrは、488nmで励起された場合のAlexa488発光チャネルへのAlexa546のブリードスルーである。それらのブリードスルー補正因子は、以下に記載される別々に測定された定数である。Gggsampleは、488nmにより励起された場合のAlexa488からの強度であり、493nm〜557nmの発光を収集する。同様に、Rrrsampleは、561nmにより励起された場合のalexa546からの強度であり、566〜680nmの発光を収集する。Gggsample及びRrrsampleは、試料に依存的であり、それぞれ第1画像及び第3画像からのシグナルに対応する。
第1画像について、等式1は以下の通り簡略化する。SGGsample=GGGsample
第3画像について、等式1は以下の通り簡略化する。SRRsample=RRRsample
2つのブリードスルー補正因子は、Alexa488のみ又はAlexa546のみを含有する異なる試料から算出される。
Alexa488のみを含有する試料に対して、等式1は以下の通り簡略化する。
第1画像について、Sggsample=Gggsample
第2画像について、Sgrsample=Bgr×Gggsample
2つの比を取ることにより、本発明者らは、Bgr=Sgrsample/Sggsampleを得る。
Alexa546のみを含有する試料に対して、等式1は以下の通り簡略化する。
第3画像について、Srrsample=Rrrsample
第2画像について、Sgrsample=Bgr×Rrrsample
2つの比を取ることにより、本発明者らは、Bgr=Sgrsample/Srrsampleを得る。
4)全ての画像を、同一の共焦点顕微鏡設定の下で収集し、上記計算を行う前にバックグラウンドシグナルを減算した。
【0221】
他の実施形態
上記より、本明細書に記載される発明に対して、様々な用途及び条件に適合させるため、変化及び改良がなされ得ることが明らかである。また、かかる実施形態は、下記特許請求の範囲の範囲内である。
【0222】
本明細書において任意の変数の定義において列挙される要素は、列挙される要素のうち任意の単独の要素又は組み合わせ(又は部分的組み合わせ)としての変数の定義を包含する。本明細書の実施形態の列挙は、任意の単独の実施形態、又は任意の他の実施形態又はその一部との組み合わせとしての実施形態を包含する。
【0223】
本明細書において言及される特許及び出版物は全て、各々の独立した特許及び出版物が具体的かつ個別に参照により援用されることが示されるのと同じ程度に、本明細書において参照により援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]