【実施例】
【0133】
実施例1.自己認識ハイブリッド二重鎖の設計
RNAi経路及びDicer酵素の関与が
図1〜3に示される。自己認識R/DNAハイブリッドの設計に含まれる工程が
図4〜6に示される。自己認識R/DNAハイブリッドの操作を
図7〜9に示す。ハイブリッド再会合のin vitroでの形成、並びに親和性及び形成のキネティクスを
図10〜13に示す。in vivoにおけるハイブリッドの形成を
図14及び15に示す。
図16〜20に示されるように、R/DNAハイブリッドの再会合を、脱消光(FRET)によりin vitro及びin vivoの両方で追跡することができる。
図21〜24に示されるように、R/DNAハイブリッドは、予備形成されたsiRNA二重鎖に匹敵するレベルで標的遺伝子発現をサイレンシングすることができる。リポフェクタミン2000は、部分的に蛍光を消光し(
図25)、ハイブリッド再会合を阻止する(
図26及び27)。
図28〜30に示されるように、トーホールド長は、遺伝子サイレンシングに対する様々な影響により変更され得る。
図31に示されるように、R/DNAハイブリッドは、化学修飾されたRNA、異なる細胞表面認識を有するドメイン、及びエンドソームエスケープを向上する部分を用いて設計され得る。
【0134】
実施例2.R/DNAハイブリッドの合理的設計及び名称
原理証明として、再会合に際して、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)、HIV−1又はグルタチオンS−トランスフェラーゼP1(GSTP1)に対する非対称Dicer基質を放出する、幾つかのR/DNAハイブリッド対を設計した。R/DNAハイブリッドの設計原理は以下の通りである(
図32及び33):機能的Dicer基質siRNAをダイスされないように2つのR/DNAハイブリッドの間で分割することにより、それらを非機能的とする(
図33、工程1)。更に、一方又は両方のsiRNA鎖をDNAで置換することにより、RNAiを完全になくすことが示されている。次に、ハイブリッドDNA鎖の各々を、ハイブリッド再会合に必要とされる相補的なトーホールドで装飾し(
図33、工程2)、Dicer基質siRNA放出を生じる。センス鎖を含有する全てのハイブリッドは、H_sと呼ばれ、アンチセンス鎖を含有するハイブリッドはH_antと呼ばれる。使用した部分的な配列セットを以下に列挙する。
【0135】
RNA配列
siRNA二重鎖:
eGFPに対して設計した非対称25/27mer Dicer基質siRNA二重鎖
センス
5’−pACCCUGAAGUUCAUCUGCACCACCG
アンチセンス
5’−CGGUGGUGCAGAUGAACUUCAGGGUCA
【0136】
siRNA用のニックドセンス鎖:
eGFPに対して設計した非対称25/27mer Dicer基質siRNA二重鎖用ニックドセンス鎖
1/2センス1
5’−pACCCUGAAGUUC
1/2センス2
5’−AUCUGCACCACCG
センス及び1/2センス_12nt鎖の5’側はリン酸化されている。
【0137】
eGFPに対して設計したsiRNA二重鎖
センス
5’−pACCCUGAAGUUCAUCUGCACC
アンチセンス
5’−UGCAGAUGAACUUCAGGGUCA
【0138】
HIV−1に対して設計した非対称Dicer基質siRNA二重鎖
プロテアーゼ(Pro).位置2332〜2356、pNL4−3による。
センス
5’−pGAGCAGAUGAUACAGUAUUAGAAGA
アンチセンス
5’−UCUUCUAAUACUGUAUCAUCUGCUCCU
【0139】
エンベロープ(Env).gp120、位置7642〜7665、pNL4−3による。
センス
5’−GGACAAUUGGAGAAGUGAAUUAUAUU
アンチセンス
5’−pUAUAAUUCACUUCUCCAAUUGUCC
【0140】
GSTP−1に対して設計した非対称Dicer基質siRNA二重鎖
センス
5’−pAAGGAUGACUAUGUGAAGGCACUGC
アンチセンス
5’−GCAGUGCCUUCACAUAGUCAUCCUUGC
【0141】
DNA配列
非ジップドトーホールドを下線で示し、それらの長さ(nt)を名称の横に現す。
【0142】
eGFPに対して設計したハイブリッド
センス_12のDNA
5’−
GGAGACCGTGACCGGTGGTGCAGATGAACTTCAGGGTCA
アンチセンス_12のDNA
5’−TGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCG
GTCACGGTCTCC
センス_20のDNA
5’−
GGAGACCGTGACAGTGATTACGGTGGTGCAGATGAACTTCAGGGTCA
アンチセンス_20のDNA
5’−TGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCG
TAATCACTGTCACGGTCTCC
センス_30のDNA
5’−
GGAGACCGTGACAGTGATTAGATTACACTCCGGTGGTGCAGATGAACTTCAGGGTCA
アンチセンス_30のDNA
5’−TGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCG
GAGTGTAATCTAATCACTGTCACGGTCTCC
【0143】
HIV−1に対して設計したハイブリッド
プロテアーゼ(Pro)
センス_12のDNA
5’−AGUCUUCUAAUACUGUAUCAUCUGCUCCU
GTCACGGTCTCC
アンチセンス_12のDNA
5’−
GGAGACCGTGACGAGCAGAUGAUACAGUAUUAGAAGA
【0144】
エンベロープ(Env)
センス_12のDNA
5’−AATATAATTCACTTCTCCAATTGTCC
GTCACGGTCTCC
アンチセンス_12のDNA
5’−
GGAGACCGTGACGGACAATTGGAGAAGTGAATTATATT
5’−
GGAGACCGTGACTGGAGGAAATGAACAAGTAGATAAAT
【0145】
GSTP1に対して設計したハイブリッド
センスのDNA
5’−GCAGTGCCTTCACATAGTCATCCTTGC
GTCACGGTCTCC
アンチセンスのDNA
5’−
GGAGACCGTGACGCAAGGATGACTATGTGAAGGCACTGC
【0146】
蛍光標識化したRNA配列
eGFP
1に対して設計したsiRNA二重鎖のセンス鎖
RNA_センスIRDye700
5’−/5IRD700/ACCCUGAAGUUCAUCUGCACCACCG
【0147】
蛍光標識化したDNA配列
センス_12_Alexa488のDNA
5’−
GGAGACCGTGACCGGTGGTGCAGATGAACTTCAGGGTCAtt/3AIexF488N/
アンチセンス_12_Alexa546のDNA
5’−/5AI exF546N/aaTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCG
GTCACGGTCTCC
アンチセンス_12_Alexa546のトランケートDNA
5’−/5AI exF546N/aaTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCG
DNAセンス_IowaBlack FQ
5’/5IAbFQ/ACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCG
【0148】
ハイブリッドの再会合のスキームを
図34に示す。R/DNAハイブリッド中の相補的な1本鎖非ジップドトーホールドを、任意の安定的な二次構造を回避するためMfold(Zuker,M,Nucleic Acids Res 31,3406−3415(2003))を使用して設計する。37℃の融点(T
m)を超えるためには、GC含有量が60%以上の非ジップドトーホールドの最小長さは、少なくとも12ヌクレオチド(nts)とすべきである。設計した1本鎖トーホールドに対するT
mは、ウォレスルール(Wallace,R.B.et al.,Nucleic Acids Res 6,3543−3557(1979))を使用して約40℃と予測される。20nts及び30ntsのトーホールドも試験した。siRNA二重鎖の非対照性により、全てのH_sハイブリッドは、2塩基の3’オーバーハングを有する(
図34)。DNA、R/DNA及びRNA二重鎖の相対的な熱力学的安定性を、それぞれ、RNAについて最も高く、DNA二重鎖について最も低く整えることができる(Sugimoto,N.et al.,Biochemistry 34,11211−11216(1995))。核酸パッケージNUPACK(Zadeh,J.N.et al.,J Comput Chem 32,170−173(2011))を使用して、37℃、等モル濃度(1μM)の個別の鎖でのRNA及びDNA二重鎖の二量体化の自由エネルギーを計算した。現在、公的にR/DNAハイブリッド自由エネルギー計算のための利用可能な計算方法が存在しない。従って、設計したR/DNAハイブリッドのΔGを推定するため、本発明者らは以下の近似等式を使用した:
ΔG(R/DNAハイブリッド)〜(ΔG DNA「ハイブリッド」二重鎖)+(ΔG RNA「ハイブリッド」二重鎖)/2(等式1)
式中、(ΔG DNA「ハイブリッド」二重鎖)は、対応するR/DNAハイブリッドと同一の配列を有するDNA二重鎖について計算した自由エネルギーであり、ΔG(RNA「ハイブリッド」二重鎖)は、同じハイブリッドと同一の配列を有するRNA二重鎖の自由エネルギーである。
初期状態の自由エネルギーを計算した:
ΔG
initial〜ΔG(R/DNAハイブリッド1)+ΔG(R/DNAハイブリッド2)(等式2)
最終状態の自由エネルギーを計算した:
ΔG
final〜ΔG(最終RNA二重鎖)+ΔG(最終DNA二重鎖)(等式3)
最終状態と初期状態の間の自由エネルギーの差を計算した。
ΔΔG〜ΔG
final−ΔG
initial (等式4)
【0149】
従って、トーホールドジッピング後の再会合のための駆動力は、初期状態(約−85.4kcal/molのΔGを有するR/DNAハイブリッド(25及び27bp)、上記等式2)及び最終状態(約104.9kcal/molのΔGを有するsiRNA(25bp)及びDNA二重鎖(39bp)、上記等式3)の自由エネルギーの差(約−19.5kcal/molのΔΔG、上記等式4)である。RNA二重鎖及びDNA二重鎖の二量体化の自由エネルギーは、NUPACK(Zadeh,J.N.et al.,J Comput Chem 32,170−173(2011))を使用して計算した。
【0150】
実施例3.ダイシングアッセイ及びヒト血清中でのリボヌクレアーゼ分解に対する耐性
操作したR/DNAハイブリッド及びsiRNA二重鎖を調製し、以前に記載されたヒト組換えDicer(Afonin,K.A.et al.,Nat Protoc 6,2022−2034(2011)及びGrabow,W.W.et al.,Nano Lett 11,878−887(2011))により処理される能力について試験した。
図34に提示される未変性ゲルシフトアッセイにより、ヒト酵素Dicerは個別のR/DNAハイブリッドに対して不活性であるが、RNA二重鎖を切断するであろうという、以前に公開された知見(Zhang,H.et al.,The EMBO journal 21,5875−5885(2002))を確認した。従って、予備的なダイシングの結果は、細胞に別々に進入する再結合したR/DNAハイブリッドのみがDicerにより処理され、更に順にRNAiを活性化するRISCに積載されるという見解を支持する。
【0151】
生物学的状況において、ネイキッドsiRNAはヌクレアーゼにより急速に分解され得るため、血流中における機能的siRNAの保持時間を増加するため、化学修飾したdNMPが導入されることが多い(Guo,P.,Nat Nanotechnol 5,833−842(2010))。しかしながら、RNA/DNAハイブリッドは、血流中で良好に保護されていることが報告されている(Hoerter,J.A.et al.,PloS one 6,e20359(2011))。自動認識R/DNAハイブリッド及びそれらの対応するsiRNA二重鎖について測定された相対的安定性は、以前の知見を強く確認し
図34。
【0152】
実施例4.FRETを使用するin vitroでのR/DNAハイブリッド再会合の研究
輸送に対して誘発された反応及び細胞内でのR/DNAハイブリッドの再会合を画像化する更なる機能性を導入するため、及びin vitroでのそれらの相互作用を研究するため、アンチセンス結合DNAの3’側及びセンス結合DNAの5’側をAlexa488及びAlexa546でそれぞれ蛍光的にタグ付けした(
図35A)。これらの色素は、フェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)研究で一般的に使用される(Berney,C.& Danuser,G.,Biophysical journal 84,3992−4010(2003))。2つの蛍光標識化したR/DNAハイブリッドを混合し、37℃でインキュベートした場合、それらの再会合は、Alexa546のフェルスター距離(R
o=6.31nm)以内にAlexa488を配置する。結果として、460nmで励起された場合、Alexa546の発光は非常に増加し、Alexa488のシグナルは、予め作製した再結合が不可能な蛍光標識化DNA二重鎖の対照系に比べて低下する(
図35B及び36)。種々の濃度に関する滴定実験を行って、FRETが記録され得る、同族のR/DNAハイブリッドの最も低い感受性濃度(約5nM)を判定した(
図36)。
【0153】
また、再会合のキネティクスも同じFRETに基づくシステムを使用して研究した。これらの実験では、Alexa488で標識化したR/DNAハイブリッドを37℃にて2分間インキュベートし、続いてAlexa546でタグ付けしたハイブリッドを添加した。FRET測定による再会合のプロセスを30秒毎に追跡した(
図35C)。幾つかの異なる濃度の同族のR/DNAハイブリッドでこの実験を繰り返した(
図37A〜37F)。自動認識R/DNAハイブリッドの再会合反応は、2つの工程からなり、以下の等式により表される:
【0154】
【数1】
【0155】
式中、R及びDは1本鎖RNA及びDNAを現す。第1工程(k
1)は、トーホールドのジッピングによるR/DNAハイブリッドの自動認識であり、テトラマーの形成をもたらす。第2工程(k
2)は、RNA二重鎖及びDNA二重鎖を生じるリハイブリダイゼーションである。
【0156】
再結合のキネティクス
再会合プロセスの間に起こる反応は、以下の通り説明される:
【0157】
【数2】
【0158】
或いはより簡潔には、
【0159】
【数3】
【0160】
次に、種々の生成物の崩壊は以下の通り説明され得る:
【0161】
【数4】
【0162】
2つのキネティクス定数が異なる場合、微分方程式の統合により以下の速度方程式が得られる:
【0163】
【数5】
【0164】
最初に、再会合が起こらないことから、[B]
0=0及び[C]
0=0であり、前記方程式は以下の通り簡略化される:
【0165】
【数6】
【0166】
2つのハイブリッド間の第1反応が二次的な反応であるため、k
1は初期濃度[A]
0に比例する。
初期濃度が非常に高い場合、[A]
0、k
2<<k
1であり、及びFRETを産生する生成物の出現Cは以下の指数関数型崩壊によりモデル化され得る:
[C]=[A]
0(1−e
−k2t)
これについて、速度定数k
2は濃度に非依存的である。
初期濃度が非常に低い場合、[A]
0、k
2>>k
1であり、及びFRETを産生する生成物の出現Cは以下の指数関数型崩壊によりモデル化され得る:
[C]=[A]
0(1−e
−k1t)
これについて、速度定数k
1は初期ハイブリッド濃度[A]
0に依存する。
数式モデルにより、高初期濃度のハイブリッドについて、第2工程は速度制限的(rate limiting)であり、この速度は濃度依存的である一方、低初期濃度のハイブリッドについては、第1工程は速度決定的(rate determining)となり、速度は濃度依存的であるということを予想される。このモデルに従い、本発明者らは、単一の指数関数型崩壊で種々の濃度におけるデータをフィッティングすることができ(
図37)、約30nMより低い濃度において再会合の制限工程は、トーホールドのジッピングである一方で、より高い濃度では、リハイブリダイゼーションが速度決定工程となることを示す。
【0167】
再会合及びsiRNA放出のプロセスにおけるトーホールド相互作用の重要性を強調するため、その再結合する能力についてトーホールドを有さないハイブリッドを試験した(
図37H)。この実験において、Alexa488で標識化したH_sハイブリッドをAlexa546で標識化したトランケートハイブリッドH_ant_トランケートと混合し、それらの相互作用を上記のFRET測定により追跡した。結果は、37℃における3時間のインキュベートの内で顕著な相互作用を示さず、従って、再会合プロセスにおけるトーホールドジッピングの重要な役割に関する証明を与えた。
【0168】
in vitroでの形質移入条件を模倣するため、この研究において全ての形質移入実験で使用するポリカチオン性担体であるリポフェクタミン2000(L2K)で蛍光標識化ハイブリッドを別々に予めインキュベートし、その後、再会合のキネティクスを追跡した(
図35D)。結果は、溶液中でL2Kと一体化した自動認識R/DNAハイブリッド間に再会合は示されなかった。興味深いことに、L2Kの添加は、Alexa488及び546に対する蛍光シグナルの約10倍の低下を引き起こす(
図38A)。更に、L2Kは、酵素活性に対して二重鎖に良好な(約4%未満の分解)保護を与える(
図38B)。
【0169】
再結合を追跡する代替法として、IowaBlack蛍光クエンチャーにより消光したAlexa488を有する自動認識二重鎖に基づく別のFRETシステムを使用した(
図39)。この場合、再会合は、Alexa488からクエンチャーを分離し、その発光を回復した。以前の知見と一致して、L2Kによる実験は、再結合を示さなかった。
【0170】
実施例5.FRETを使用して細胞内におけるR/DNAハイブリッド再会合をモニタリングした
自動認識R/DNAハイブリッドの細胞内への進入及び再結合の能力を、共焦点顕微鏡により評価した。Alexa488及びAlexa546で標識化したR/DNAハイブリッドを、MDA MB231細胞に同時形質移入し、次の日に共焦点顕微鏡により画像化した(
図40及び41)。
図40Aに見られる中断された不均質なパターンは、
図40の蛍光ハイブリッドのエンドソーム位置と一致する。Alexa488及びAlexa546蛍光の重複は、それらの一部が異なるエンドソームに分布するものの、黄色シグナルを特徴とする相当量の共局在が起きていることを示している。FRETがそれらのエンドソーム区画内で起こるかどうかを更に確認するため、Alexa546増感発光を画像化した。試料を488nmで励起し、Alexa546の発光を収集した。ブリードスルー補正に際して残るFRETシグナルを
図40A(1+4及び5)に提示する。R/DNAハイブリッドはエンドソーム区画に共局在するのみならず、かなりのFRETを呈する。高濃度のハイブリッドはエンドソーム内に蓄積するため、観察されたFRETは更に近辺から発散され、これは再結合をもたらさない。より決定的な方法でこの事項に取り組むため、異なるシステムを使用した。再会合によりFRETを呈することが可能なフルオロフォアを導入することに代えて、Alexa488及びIowaBlack蛍光発光クエンチャーを含有する消光した自動認識二重鎖を形質移入した。この二重鎖それ自体は何らの蛍光発光も呈さない(
図40B一番上の行及び
図42)。しかしながら、この消光した二重鎖が自動認識R/DNAハイブリッドと共に同時形質移入された場合には、エンドソーム区分内でのAlexa488の非消光が観察され、細胞内での2つのコンストラクト間の再会合が起きていることを更に証明している。
【0171】
実施例6.細胞内での再会合R/DNAハイブリッドによるsiRNAの放出
細胞内における自動認識R/DNAハイブリッドの再結合及び治療用部分(siRNA)を放出する能力を評価するため、eGFPを安定的に発現するヒト乳癌細胞(MDA−MB231/eGFP)による実験を実施した(
図44及び45)。まず、細胞を一度に1つのみのハイブリッド(H_s又はH_ant)で同時形質移入し、3日後、eGFP発現レベルを蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリーにより分析した。全ての実験を少なくとも3回繰り返した。結果は、個々のハイブリッドにより引き起こされるeGFP産生におけるサイレンシングを示さなかった(
図43及び45A)。しかしながら、別々に調製した、個々の同族のR/DNAハイブリッドを含むL2Kの複合体(H_s/L2K及びH_ant/L2K)で細胞を同時形質移入した場合、3日後に測定されたサイレンシングレベルは、対照の予め形成された非対称Dicer基質siRNAによる形質移入でもたらされたサイレンシングに匹敵するものであった(
図43及び43B)。L2K結合R/DNAハイブリッドに関する再会合のキネティクス研究に基づき(
図35D及び
図35E)、同時形質移入したハイブリッドの再会合及びsiRNA放出は、細胞内ではなく培地中で起こると結論付けることができる。
【0172】
陰性対照として、HIV−1に対して設計したeGFPサイレンシングに無関係の自動認識R/DNAハイブリッドを使用した(
図43B)。また、R/DNAハイブリッド再会合による古典的サイズのsiRNA(21nts)の放出は、非対称Dicer基質siRNAと比べてより低いサイレンシング効率を示し(
図46)、これは公開されたデータ(Rose,S.D.et al,Nucleic acids research 33,4140−4156(2005))と一致する。
【0173】
更に、より高いサイレンシング可能性を有すると報告されている小さい内部セグメント化された干渉RNA(Bramsen,J.B.et al.,Nucleic Acids Res 35,5886−5897(2007))をR/DNAハイブリッドレベルで試験した(
図47)。これらの実験では、センス鎖を2つのより短いRNA(1/2センス1及び1/2センス2)にセグメント化し、これらをDNAセンス鎖と共に使用してセグメント化R/DNAハイブリッド(H_セグメント化_s)を作製した。同時形質移入の結果は、セグメント化siRNAとのハイブリッドについてより高いサイレンシング効率を示し、これは公開されたデータと一致した(Bramsen,J.B.et al.,Nucleic Acids Res 35,5886−5897(2007))。
【0174】
実施例7.細胞内でのsiRNA放出に対するトーホールド長の影響
R/DNAハイブリッドを異なる2日間に同時形質移入する実験は、同様にいくらかのサイレンシングを示した(
図43B、赤色線)。これは、細胞内再会合及びsiRNAの治療的放出に関する更なる証拠としてはたらく。その後、siRNA放出の相対的効率に対するR/DNAハイブリッドにおけるジッピングトーホールドの長さの影響を調査した。同日又は異なる2日間に同時形質移入した12nts、20nts及び30ntsのトーホールドを有するコンストラクトについて、eGFPの相対的サイレンシングを統計学的に分析した。
図48に提示される結果は、同日に同時形質移入したハイブリッドについてサイレンシング効率における差がないことを示す。しかしながら、個々のハイブリッドを1日間隔で形質移入した場合、30ntsのトーホールドを有するコンストラクトは、最も高い効率を示し(
図43)、一方で12及び20ntsトーホールドを有するコンストラクトについては、より弱い同等のサイレンシングが観察された。
【0175】
実施例8.in vivoにおけるR/DNAハイブリッドの輸送及び再会合
in vivoにおける自動認識R/DNAハイブリッドの輸送を評価するため、異種移植片腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおいて生体分布実験を行った。R/DNAハイブリッド及びIRDye700で蛍光標識化したDicer基質siRNAを尾静脈注射によりマウスに全身的に輸送した。結果として、in vivo生体分布及び腫瘍取り込みを、10分後、20分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後及び3時間後に蛍光画像化によって推定した(
図49)。生体分布プロファイルは、3時間の時間経過内において他の主要な器官(脾臓、肝臓、腎臓、腸、及び胆嚢)と比較して、腫瘍内で比較的高い自動認識R/DNAハイブリッドの取り込みを示す。脾臓、肺、心臓及び脳において、蛍光シグナルは検出されなかった。3時間点において、一部の器官、腫瘍及び血液試料を、ex vivoにおいて定量的に分析した。
図49Bに示されるように、3時間後のマウス血液中のR/DNAハイブリッドの相対濃度は、siRNAの濃度よりもほぼ6倍高い。
図49Cに示される腫瘍/腎臓比は、主に腎臓に蓄積したsiRNAと比較して顕著に高い(約2.5倍)R/DNAハイブリッドの取り込みを示す。これは、その分解及び腎
排泄をもたらすin vivoでのsiRNAの相対的化学不安定性に起因し得る。更に、本発明者らは、eGFP発現MDA−MB231異種移植片のin vivoにおける遺伝子サイレンシングを行った。自動認識R/DNAハイブリッド及びeGFPに対するsiRNAを、2匹のマウスにおいて腫瘍内注射によって投与した。注射から5日後の(対照動物と比較した)腫瘍におけるeGFPの蛍光強度の測定により、ex vivoにおいてサイレンシングの程度を分析した(
図49D及び
図50)。R/DNAハイブリッド及びsiRNAによる注射の両方が、eGFP蛍光強度の約70%に匹敵する減少をもたらした。これらの結果は、本発明者らの複数のin vitroサイレンシング実験と良好に一致し、自動認識R/DNAハイブリッドによる標的遺伝子のサイレンシングの成功が確認された。
【0176】
実施例9.HIV標的及び癌標的に対する自動認識R/DNAハイブリッド
前記アプローチの普遍性及び自動認識R/DNAハイブリッドを治療用部分として使用することの実行可能性を示すため、幾つかのHIV−1及び癌遺伝子も標的とした。
【0177】
HIV−1標的遺伝子の場合、以前に記載されるsiRNA(Lowe,J.T.et al.,Mol Ther 20,820−828(2012)))を使用して自動認識R/DNAハイブリッド及び対応するsiRNA二重鎖を設計した。2つの主な標的、すなわちGag及びGag−Polポリタンパク質前駆体(pro−siRNA)をコードする全長ゲノムRNAに見出されるプロテアーゼコーディング領域、及びHIV−1糖タンパク質env mRNA(Env_siRNA、gp120に位置する)を選択した。
図51に示される結果は、siRNA及びR/DNAハイブリッドによる用量依存的ウイルス阻害を示した。たった20nMのPro_ハイブリッドによりHIV−1産生を85%まで阻害した。Gag及びGag−Polをコードする全長mRNAにも結合する、Env_siRNAは、65%〜85%までウイルス産生を低減した(
図51A)。細胞内のgp160及びgp120のレベルも低減された(
図51B)。HIV−1 gp160及びgp120の阻害は、それぞれ、76%及び82%にまで達した(データは示されていない)。細胞内での再結合の後、20nMのProハイブリッドsiRNAによりGag(Pr55+p24/p25)の総量を平均で72%まで低減した。Env_ハイブリッドsiRNAは、細胞内Gagを75%までノックダウンした(
図51B)。また、本発明者らは、本発明者らのシステムにおけるこれらのsiRNAの毒性作用を研究するために異なるアプローチを試験した。同時形質移入したウミシイタケルシフェラーゼをコードするベクターの発現により示されるように、毒性レベルは低かった(補足
図52)。また、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の細胞発現レベルは、有意には影響を受けなかった(データは示されていない)。これらの結果は、自動認識R/DNAハイブリッドが細胞内で再結合することができ、種々の標的を介してHIV−1を阻害することを明確に示している。
【0178】
癌標的遺伝子として、グルタチオンS−トランスフェラーゼP1(GSTP1)を選択した。GSTP1は、抗癌剤を含む様々な求電子化合物に対するグルタチオンの共役を触媒する第II相解毒酵素である。GSTP1は、腫瘍細胞の発生及び生存において重要な保護的役割を果たす、及び癌において頻繁に観察されるGSTP1の過剰発現は化学療法抵抗性と結び付けられていると考えられている(Townsend,D.M.& Tew,K.D.,Oncogene 22,7369−7375(2003))。更に、GSTP1は、c−jun−NH2−キナーゼ1(JNK1)と直接相互作用してマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路を阻害し、薬物誘導性アポトーシスに対する細胞の感受性を低減することが提案されている(Townsend,D.M.&Tew,K.D.,Oncogene 22,7369−7375(2003))。RNA干渉によるGSTP1の発現減少は、化学療法に対して癌細胞を感作するために治療的に使用され得る。
【0179】
内因性GSTP1タンパク質発現は、個別に24時間間隔の異なる2日間に同時形質移入したR/DNAハイブリッドにより効果的に減少され得ることが示された。A549肺腺癌細胞のR/DNAハイブリッドとのインキュベーションは、GSTP1タンパク質産生に顕著な(約55%)の減少をもたらした(補足
図53)。
【0180】
実施例10.R/DNAキメラ多機能ナノ粒子(NP)はHIVに感染した細胞に結合して進入し、HIVに感染した細胞においてアポトーシスを増加する。
治療用R/DNAキメラ多機能ナノ粒子(NP)を、HIV感染の認識、可視化及び機能的治癒に向けてコンピューターで設計した。特定の理論に拘束されるものではないが、複数の治療用siRNAの放出は、HIVにより感染した細胞に別々に進入する少なくとも2つのR/DNA NPの存在によって誘発され得る。2以上の同族のR/DNA NPを、HIVに感染した細胞の細胞表面タンパク質の特徴(例えば、gp41及び/又はgp120に対するアプタマー)の発現をターゲッティングする異なる認識ドメインにより装飾する。
【0181】
治療用R/DNA NPを
図54に示す。各々の同族のR/DNA NPは、独立して治療的に不活性であり、DNA鎖に共有結合している幾つかのスプリット機能性(スプリットリパーゼ、スプリット緑色蛍光タンパク質(GFP)等)と同様に、幾つかの機能性(細胞表面認識ドメイン、蛍光タグ、細胞取り込みを容易にするドメイン等)を有する。
【0182】
一実施形態では、2以上の同族のR/DNA NPは、HIVに感染した細胞の細胞表面タンパク質の特徴をターゲッティングする異なる認識ドメイン(例えば、gp41及び/又はgp120に対するアプタマー)で装飾される。コンピューターによる予測は、近接する(例えば、エンドソーム又は細胞質)両方の同族のR/DNA NPの存在が、操作したトーホールド認識を介して構造的再会合を促進することを示す。これは、機能性(エンドソームエスケープのためのリパーゼ、可視化用のGFP等)を活性化し、治療用siRNAを放出する。低分子干渉RNA(siRNA)を使用することにより、標的mRNAの発現をノックダウンすることがごく普通に可能である。更に、様々なsiRNAにより幾つかのヒトアポトーシス阻害遺伝子を同時にターゲッティングすることによって、コンビナトリアルRNA干渉(co−RNAi)を介して細胞死(アポトーシス)を誘導することが可能である。
【0183】
重要なことは、本発明のR/DNA NPにおいて、治療用siRNAの数は、具体的な課題に応じて分岐の数を調節することによって完全にプログラム化することができる。ヒト酵素Dicerは個別のR/DNA NPに対して不活性であるが、再結合したsiRNAを切断し、一方のsiRNA鎖(ガイド鎖)をRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)へと輸送し、これは次にco−RNAiを活性化する。ガイド鎖は、ヒトアポトーシス阻害遺伝子(BCL−2、FLIP、STAT3、XIAP等)に対するアンチセンス配列を有するように設計される。従って、co−RNAiの活性化は、HIV感染細胞のアポトーシスを生じる。
【0184】
その化学的不安定性及び小さいサイズ(10nm未満)のため、一般的なsiRNAの薬物動態(pharmokinetics)は非常に乏しく、腎臓クリアランスを促進することが知られている。R/DNA NPは10nmを超える平均サイズで化学的に安定であり、これにより治療用途に魅力的な候補とされている。かかる合成の「賢明な」R/DNA NPは、HIVに感染した患者の根絶療法に対する主要な構成要素である。
【0185】
実施例11.GFPをターゲッティングする自動認識R/DNA二重鎖は細胞内のGFP発現を減少させた
ヒト細胞におけるGFPの産生をターゲッティングする、最初からの及び研究された自己認識R/DNA二重鎖システムを操作した(
図55)。自動認識R/DNA二重鎖は、細胞内において効果的に互いを発見し、GFPの合成をノックダウンするsiRNAを放出した。従って、自動認識R/DNA二重鎖は、再結合されるまでDicerには処理されなかった。更に、自動認識R/DNA二重鎖が個別に異なる2日間に形質移入された場合であっても、siRNA放出が観察された。
【0186】
実施例12.HIV細胞表面認識ドメイン及びHIVに感染した細胞においてアポトーシスを増加するアポトーシス阻害遺伝子をターゲッティングするsiRNA配列を有する治療用R/DNA NP
設計した粒子のコンピューターによる特徴づけのため、RNAの二次構造予想のための新規かつ先行するバイオインフォマティクスアプローチ、RNA 3D構造モデリング及びRNA配列設計が開発されている。分子運動シミュレーションに供された治療用R/DNA NPの三次元モデルの作製は、合成R/DNA NPのキネティクス動態に関する重要な情報を与える。
【0187】
in silicoで設計した治療用R/DNA NPのライブラリをin vitro及びHIV感染細胞において試験した。所望の組成物のR/DNA NP中へと集合するそれらの能力について、新たに設計した配列をin vitroで試験した。一旦集合すると、2つ一組で同族のR/DNA NPを自動認識(結合親和性、再結合のキネティクス等)について試験した。同族のR/DNA NP対からのsiRNA二重鎖の放出は、ヒトDicerの処理能力に影響されやすく、治療に有用である。Dicer活性は自動認識再結合の場合に予想される。必要であれば、RNA構造に対して適切な化学修飾を行って、再結合したsiRNAのDicer処理能力、更にはRISC複合体のロードを促進する。
【0188】
R/DNA NP対の活性を試験するため、異なる時間点、濃度、及び組成物において、HIVに感染したヒト細胞(H9及び/又はJurkat細胞)を同族のR/DNA NPで形質移入した。細胞表面HIVマーカーをターゲッティングする細胞認識ドメインを有するR/DNA NPは、HIVに感染した細胞に結合して進入する。R/DNA NPは、HIVに感染した細胞においてアポトーシスを増加する、アポトーシス阻害遺伝子をターゲッティングするsiRNA配列を含有する。特定の理論に拘束されるものではないが、近接する(例えば、エンドソーム又は細胞質)両方の同族のR/DNA NPの存在は、操作したトーホールド認識部分を介する構造的な再会合を促進する。アポトーシスは、商業用キットにより、例えば、BD(商標)MitoScreen(JC−1)フローサイトメトリーキットを使用するフローサイトメトリーにより、測定され得る。非感染細胞株を対照として使用する。
【0189】
実施例13.再会合により複数の機能性を放出する自動認識RNA/DNAハイブリッド
これは、複数の機能性(FRET、アプタマー、リボザイム、siRNA、タンパク質等)を分割し、それらを同時に自動認識RNA/DNAハイブリッドへと導入することができる。これらのハイブリッドは、それら自体は不活性であるが、それらの少なくとも2の存在下により再会合及び機能性放出を生じる(
図56)。アプタマー、様々なsiRNA(eGFP及びHIV−1に対する)、及びフェルスター色素の蛍光対を含有する幾つかのハイブリッドを設計し、実験的に試験した。配列を以下に示す:
【0190】
センス
5’−pACCCUGAAGUUCAUCUGCACC
アンチセンス
5’−pUGCAGAUGAACUUCAGGGUCA
MGアプタマー1
5’−UAUGACAUGGUAACGAAUGACAGUAU
MGアプタマー2
5’−AUACUGUCCGACAUGUCAUA
【0191】
siRNA及びMGアプタマー用のハイブリッド
小文字の配列をDNA鎖に付加してMGアプタマー及びsiRNAの2nts 3’オーバーハングの非対称性を補償した。
【0192】
【化1】
【0193】
MGアプタマー及びsiRNA
【0194】
【化2】
【0195】
2つのsiRNA
【0196】
【化3】
【0197】
MGアプタマー及び2つのsiRNA
【0198】
【化4】
【0199】
3つのsiRNA
【0200】
【化5】
【0201】
HIV−1に対する3つのsiRNA(1877、ldr、Gag)
プロテアーゼ(Pro).位置2332〜2356、pNL4−3による、−1877
センス
5’−pGAGCAGAUGAUACAGUAUUAGAAGA
アンチセンス
5’−UCUUCUAAUACUGUAUCAUCUGCUCCU
エンベロープ(Env).gpl20、位置7642〜7665、pNL4−3による、−7193
センス
5’−GGACAAUUGGAGAAGUGAAUUAUAUU
アンチセンス
5’−pUAUAAUUCACUUCUCCAAUUGUCC
R/T−3722
センス
5’−pGAGGAAAUGAACAAGUAGAUAAAU
アンチセンス
5’−AUUUAUCUACUUGUUCAUUUCCUCCA
【0202】
【化6】
【0203】
結果は、全ての機能性の放出の成功を示す。ハイブリッドの異なる位置に組み込まれた蛍光レポーターとしてのスプリットマラカイトグリーンアプタマーを使用した(
図57及び58)。本発明者らは、水溶液中で結合していない状態において、効率的な内部転換によりSI励起状態から非常に低い蛍光量子収率を呈することから、トリフェニルメタン色素であるマラカイトグリーン(MG)を蛍光レポーターとして選択した。この色素の発光は、SIからの無放射緩和チャネルが閉じた場合に、実質的に増加する。この現象の根本的な機構の詳細は今も議論されており、関連する研究により、高粘性環境又は結合ケージにおくことによりこの色素を「硬化すること(rigidifying)」は、劇的にその発光を増加することが示されている。例えば、最近では、MGの発光は、in vitro選択(SELEX)により得られるRNAアプタマーへの結合により桁違いに増加することが報告されている。
【0204】
自動認識R/DNAハイブリッドの細胞内に進入して再結合する能力を、共焦点顕微鏡により評価した(
図59)。Alexa488及びAlexa546で標識化したR/DNAハイブリッドをMDA−MB−231細胞に同時形質移入し、翌日に共焦点顕微鏡により画像化した。
図59Bに見られる中断された不均質なパターンは、蛍光ハイブリッドのエンドソーム位置と一致する(
図59C及び59D)。Alexa488及びAlexa546蛍光発光の重複は、それらの一部が異なるエンドソームに分布しているものの、黄色シグナルを特徴とする相当量の共局在が起きていることを示している。FRETがそれらのエンドソーム区画内で起きているかどうかを更に確認するため、Alexa546増感発光を画像化した。試料を488nmで励起し、Alexa546の発光を収集した。ブリードスルー補正により残るFRETシグナルが
図59B(4及び5)に提示される。
【0205】
自動認識R/DNAハイブリッドの細胞内で再会合し機能性部分(非対称Dicer基質siRNA)を放出する能力を評価するため、安定的にeGFPを発現するヒト乳癌細胞(MDA−MB−231/eGFP)を用いて実験を行った(
図59D)。まず、細胞を一度に1つのみのハイブリッド(H1又はH2)で同時形質移入し、3日後eGFPの発現レベルを蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリーにより分析した。全ての実験を少なくとも3回繰り返した。結果は、個々のハイブリッドにより引き起こされるeGFP産生に何らのサイレンシングも示さなかった。しかしながら、別々の調製したL2Kの複合体及び個々の同族のR/DNAハイブリッド(H1/L2K及びH2/L2K)で細胞を同時形質移入した場合、3日後に測定したサイレンシングレベルは、3つのsiRNA(ハイブリッド(iii))を放出するハイブリッドに対するより高いサイレンシング効率を有する対照の予備形成された非対称Dicer基質siRNAによる形質移入によりもたらされるサイレンシングに匹敵した。
【0206】
上記実施例を、以下の材料及び方法を使用して行った。
【0207】
RNA及びDNA配列設計。1本鎖DNAトーホールド配列をmFoldプログラム(Zuker,M,Nucleic Acids Res 31,3406−3415 (2003))で最適化し、代替的な二次構造フォールドの発生を最小化した。以前の研究から二重鎖用のsiRNA配列を使用した(Afonin,K.A.et al.,Nat Protoc 6,2022−2034(2011)及びRose,S.D.et al.,Nucleic Acids Res 33,4140−4156(2005))。使用したRNA及びDNA配列の全ての一覧を入手することができる(補足情報)。ハイブリッド二重鎖用のRNA、DNA及び蛍光標識化DNAをIntegrated DNA Technologies,Inc.から購入した。蛍光標識化DNAの場合、2つのヌクレオチドの追加のリンカー(TT又はAAのいずれか)を蛍光タグ用に付加した。
【0208】
ハイブリッドR/DNA二重鎖の集合及び未変性PAGE。様々な二重鎖形成アプローチが他(Afonin,K.A.et al.,Nat Protoc 6,2022−2034(2011))及び本研究においてに詳述され、本発明者らは、最も早いプロトコルを使用した。本文に規定される濃度のオリゴ(RNA及び/DNA)単位を2回に亘り脱イオンした(doubledeionized)水に混合し、95℃にて2分間のヒートブロックでインキュベートした。試料を含有するブロックを熱から除き、10分間に亘って直接氷上に置いた。95℃の加熱前又はその工程後にハイブリダイゼーションバッファー(89mMのTris、80mMのホウ酸(pH8.3)、10mMの酢酸マグネシウム)を混合物に添加した。未変性PAGE実験を記載される通り行った(Afonin,K.A.et al.,Nat Protoc 6,2022−2034(2011);Afonin,K.A.et al.,Chembiochem 9,1902−1905(2008);Afonin,K.A.& Leontis,N.B.Journal of the American Chemical Society 128,16131−16137(2006))。典型的には、報告されている集合実験は、89mMのTrisホウ酸塩、pH8.3、2mMのMg(OAc)
2の存在下で、10℃にて7%(29:1)の未変性ポリアクリルアミドゲル上で分析されていた。Hitachi FMBIO II Multi−View Imagerを使用してSYBR Gold染色したR/DNAハイブリッドを可視化した。
【0209】
組換えヒトDicerアッセイ。最終濃度3μMまでハイブリッドR/DNA二重鎖を上述の通り調製した。ダイシング実験のため、製造業者が提案するプロトコルに従って、37℃にて4時間に亘り、ウルトラアクティブ形態のヒト組換えdicer酵素を含有する組換えヒトturbo dicer酵素キット(Genlantis)と共に試料をインキュベートした。ダイシング反応を、2mM Mg(OAc)
2未変性7%PAGE(上記される)上での分析の前に、dicer停止溶液(製造業者により提供された)によりクエンチした。
【0210】
ヒト血清分解研究。新たに得たヒト全血血清のアリコート(血液を凝集させ、遠心沈殿させて上清を採取した)をすぐに各々の新たな研究に使用した。様々な期間に亘る37℃での80%(v/v)のヒト血清とのインキュベーションの前に、本発明者らによるin vitroでの有効性の研究で使用されたものより100倍高い濃度のRNA二重鎖及びR/DNAハイブリッドを氷上に維持した。最終RNA濃度は2μMであった。2%アガロースゲルにロードする直前、ドライアイス上で分解時間経過をクエンチした。Hitachi FMBIO II Multi−View Imagerを使用して、臭化エチジウムで染色したRNA二重鎖及びR/DNAハイブリッドを可視化した。
【0211】
蛍光発光研究。in vitroでのR/DNAハイブリッドの再会合を評価するため、FluoroMax3(Jobin−Yvon,Horiba)を使用するFRET測定を行った。全ての実験について、励起波長を460nmに設定し、励起及び発光スリット幅を2nmに設定した。最初の実験セットでは、相補的DNAをAlexa488及びAlexa546で修飾した。再結合のキネティクスに従うため、まずセンスRNAを含有するAlexa488R/DNAハイブリッドを37℃にて2分間インキュベートし、その後、アンチセンスRNAを含有するAlexa543R/DNAハイブリッドを本文で規定される等モル量で添加した。FRET測定による再会合のプロセスを追うため、460nmでの励起により、520nm及び570nmでの発光を30秒毎に同時に記録した。これは、形質移入条件に関連する量のネイキッドハイブリッド及び予めリポフェクタミン2000と複合体化させたハイブリッドにより行われた(以下を参照)。また、等モル量の2つの蛍光標識化ハイブリッドの3時間の同時インキュベーションによる静的測定も行った。2つ目の実験セットでは、Alexa488で修飾された一方の鎖及びIowaBlack FQで修飾されたもう一方の鎖を含有するDNA二重鎖を使用した。Alexa543 R/DNAハイブリッド又は非標識化R/DNAハイブリッドの添加によるAlexa488の脱消光を、FRET実験について上述の通り行った。Alexa488蛍光発光の減少をSigmaplotにおいてフィッティングした。以下の3つのパラメーターを含む単一の指数関数型崩壊方程式:
y=yo+ae
−kt
にデータをフィットするため、線形回帰を適用した。
【0212】
RQ1 DNaseによる安定性アッセイ。ヌクレアーゼ存在下での予備形成した二重鎖/L2K複合体の安定性を調べるため、Alexa488で修飾された一方の鎖及びIowaBlack FQで修飾されたもう一方の鎖を含有するDNA二重鎖を、L2Kと予めインキュベートし、FRET実験について上述される通り、RQ1 RNase free DNase(Promega)を用いた消化によるAlexa488の脱消光を行った。対照として、消光したDNA二重鎖を単独で使用した。RQ1 RNase free DNaseを製造業者のプロトコルに従って使用した。
【0213】
siRNA含有RNA NPによるヒト乳癌細胞の形質移入。機能性R/DNAハイブリッドの輸送をアッセイするため、ヒト乳癌細胞株MDA−MB−231(eGFPを含む、又は含まない)を、5%CO
2インキュベーターにおいて10%FBS及びペニシリン−ストレプトマイシンで補填したD−MEM培地(Gibco BRL)中で成長させた。このプロジェクトにおける全ての形質移入を、Invitrogenから購入したリポフェクタミン2000(L2K)を使用して行った。R/DNAハイブリッドの10倍又は50倍溶液を、L2Kと共に30℃にて予めインキュベートした。各形質移入の前に細胞培地をOPTI−MEMで交換し、調製した10倍又は50倍RNA_NP/L2K複合体を1倍の最終濃度まで添加した。細胞を4時間インキュベートした後、培地を交換した(D−MEM、10%FCS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン)。
【0214】
顕微鏡検査。細胞内でのR/DNAハイブリッドの再会合を評価するため、63×、1.4 NA拡大レンズを備えたLSM 710共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して測定を行った。MDA−MB−231細胞をガラス底ペトリ皿(Ibidi,Germany)に播種し、上述のR/DNAハイブリッドによる形質移入に供した。最初の実験セットでは、個々にAlexa488及びAlexa546で修飾したR/DNAハイブリッドを上述の通り細胞へと同時形質移入した。翌日、室温にて20分間4%パラホルムアルデヒド中でインキュベートすることにより試料を固定した。その後、細胞の画像を撮り、試料内のFRETの出現を評価した。Alexa488画像化のため、アルゴンレーザの488nmラインを励起として使用し、発光を493〜557nmで収集した。Alexa546画像化のため、DPSS 561レーザを励起に使用し、発光を566〜680nmで収集した。FRETによる増感発光を評価するため、488nmラインで試料を励起し、566〜680nmの発光を収集することにより画像を取得した。スペクトル重複のため、FRETシグナルは、アクセプターチャネルへのドナー発光及び、ドナー励起波長によるアクセプター分子の励起によって汚染される。このブリードスルーを個々の色素により形質移入した試料を用いて行った測定により評価し、FRETの画像から数学的に除去した。別の実験セットでは、Alexa488で修飾した一方の鎖及び、IowaBlack FQで修飾した別の鎖を含有するDNA二重鎖を使用した。この二重鎖を、単独で形質移入するか、又は二重鎖と再結合が可能なR/DNAハイブリッドと同時形質移入するかのいずれかを行った。Alexa488蛍光発光を上述の通りモニタリングした。全ての画像を1エアリーユニットに調整したピンホールを用いて撮った。
【0215】
エンドソーム共局在研究。細胞中の形質膜陥入した蛍光標識化R/DNAハイブリッドのエンドソーム位置を確認するため、幾つかのエンドソームマーカーによる共染色実験を行った。1つの実験セットでは、細胞をAlexa546 R/DNAハイブリッドで形質移入した。次の日、室温にて20分間、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、その後この温度で扱った。試料をPBSで3回洗浄した後、0.2%Triton X−100で20分間透過処理した。PBSによる3回の洗浄に際し、試料を1%BSAで1時間に亘ってブロックし、その後、初期エンドソーム関連タンパク質EEA1(Cell signaling)又は後期エンドソームマーカーRab7(Cell signaling)に対する一次抗体に暴露した。PBSによる3回の洗浄に際し、試料を二次Alexa488抗体(Molecular Probes)で染色した。2つ目の実験セットでは、細胞をGFP−Rab5又はGFP−Rab7を発現するプラスミドで形質移入した。形質移入から2日以内に、細胞をAlexa546 R/DNAハイブリッドで再度形質移入し、翌日画像化した。両方の実験セットにおいて、Alexa488及び546蛍光発光を、上述の共焦点顕微鏡で分析した。
【0216】
フローサイトメトリー実験。フローサイトメトリー実験による統計学的解析のため、12ウェルプレート(1ウェル当たり10×10
4細胞)で成長させたMDA−MB−231 231(eGFPを含む又は含まない)細胞を細胞解離バッファーで解離させ、PBSで2度洗浄してFACScaliburフローサイトメトリー(BD Bioscience)上でeGFPの発現レベルを蛍光活性化セルソーター(FACS)分析により判定した。少なくとも20,000の事象を収集し、Cell questソフトウェアを使用して分析した。
【0217】
in vivo実験。Federick National Laboratory for Cancer Research(Frederick,MD)Animal Care and Use Committeeのガイドラインに従って、動物実験を行った。全ての実験について、10
6のMDA−MB−231腫瘍細胞を各無胸腺ヌードマウス(Charles River Laboratories,Frederick,MD)の脇腹に注射した。腫瘍の最も長い直径が5mmに達したとき(MDA−MB−231(eGFPなし)注射から約2週間後)に生体分布実験を行った。マウスの尾静脈に、10μg/mlのボラ型両親媒性カチオン性担体(Grinberg,S.et al.,Langmuir 21,7638−7645(2005)に記載される)と関連付けられた、100μl(500nM)のsiRNA_IRDye700又はR/DNA_IRDye700を一度注射した。対照マウスを100μlのPBSバッファーで注射した。蛍光画像化(Maestro GNIR−FLEX,Cambridge Research&Instrumentation,Inc.Woburn,MA)を、動物が麻酔(1L/分フローでO
2中1〜2%のイソフルラン)されている間に、ベースライン(自動蛍光発光を測定するための注射前)、並びに注射から10分、20分、30分、45分、1時間及び2時間及び3時間後に実施した。スキャン(加熱した画像化テーブル)の前、間、及び麻酔から回復する間の画像化の後、動物の内部温度を維持した。画像分析(自動蛍光発光及び造影剤に関する画像ライブラリ)を製造業者のプロトコルに従って行った(Maestro software 2.10.0,CRi,Woburn,MA)。造影剤のIR波長パラメーターにより、画像取得は、励起フィルター(590±15nm)、発光フィルター(645nmロングパス)及び10nm段階毎の650〜850nmのマルチスペクトル取得を利用した。目的の領域を異なる器官周辺で摘出し、全シグナル(カウント/秒)を種々の時間点について回収した。その後、シグナルを種々の器官の重量で正規化した。注射から3時間後の時間点において、マウスを安楽死させ(ACUCガイドラインによりCO
2窒息)、関連する器官(脾臓、肺、脳、肝臓、腎臓、腸、心臓、腫瘍及び膀胱)の重量を測定し、in vivo画像取得パラメーターの実行を取り込んだ。サイレンシング実験のため、eGFPを発現しているMDA−MB−231腫瘍細胞を使用した。腫瘍細胞注射の5日後、マウスに、10μg/mlのボラ両親媒性カチオン性担体(他で記載されている)と関連付けられた、100μl(500nM)のsiRNAを腫瘍内注射するか、自己認識R/DNAハイブリッド各々50μl(500nM)を同時注射するかのいずれかを行った。対照マウスを100μlのPBSバッファーで注射した。5日(120時間)後及び10日(240時間)後にマウスを犠牲にした。マウスから腫瘍を取り出し、4℃にて4%PFA中で終夜固定した後、4℃にて終夜20%スクロースに移した。過剰量のスクロースを腫瘍から瓶に入れ、腫瘍をOCT Compound(Tissue−Tek)に包埋した。10μmの凍結切片をスライドに置き、DAPI(Invitrogen)で染色した後、Prolong Gold a/Fade試薬(Invitrogen)でカバースリップした。Qlmaging Retiga−2000Rカメラ及びNikonのNIS−Elements AR Imagingソフトウェアを備えたNikonのEclipse 80i顕微鏡を使用して画像を取得した。
【0218】
自動認識R/DNAハイブリッドによるHIV−1阻害。細胞内再会合後のハイブリッドによるHIV−1阻害の潜在的可能性を試験するため、HeLa細胞をWT HIV−1分子クローンであるpNL4−3、及びR/DNAハイブリッドで同時形質移入した。2つの異なる標的を選択した:プロテアーゼ、全長ゲノムmRNAをターゲッティングする;及びgp120、env及び全長の両方のゲノムmRNAをターゲッティングする。ノックダウン対照として、ヘテロ二重鎖siRNAを使用した。このアッセイで使用したsiRNA濃度は、5nM、10nM及び20nMであった。pNL4−3及びリポフェクタミン2000(Invitrogen)と共に、ハイブリッドプロテアーゼ_アンチセンス及びプロテアーゼ_センスのインキュベーションを別々に行い、その後細胞に添加した(1ウェル当たり2μgのDNA及び2μlのリポフェクタミン2000)。形質移入の48時間後、上清を回収し、逆転写酵素(RT)活性をin vitro反応で測定した(Freed 1994)。RT活性のレベルは、放出されたウイルスのレベルに正比例する。細胞溶解物を以前に記載されたプロトコル(Waheed AA et al,Methods Mol.Biol.485,163−84(2009))に従って放射性免疫沈降分析により分析した。簡潔には、形質移入の48時間後、細胞をMet/Cys不含RPMI培地で30分間飢餓状態に置き、4時間に亘り[
35S]Met/Cys−Pro−ミックス(Amersham)で代謝的に標識化した。細胞溶解物を調製し、HIV−1感染患者(HIV−Ig:NIH AIDS Research and Reference Reagent Program)から集めた免疫グロブリンで免疫沈降した。免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにより12%アクリルアミドゲル上で分離し、ゲルをphosphorimagerプレート(Kodak又はFuji)に暴露し、Quantity Oneソフトウェア(Bio−Rad)によりバンドを定量した。全HIV−1 Gagタンパク質を測定し(55kDa Gag前駆体+キャプシド p24/p25)、値をウイルス対照(pNL4−3と共にsiRNAを同時形質移入していない)で正規化した。
【0219】
抗GSTP1自動認識R/DNAハイブリッドによる形質移入実験及び免疫ブロッティング。製造業者のプロトコルを使用して、HiPerfect形質移入試薬(Qiagen,Valencia,CA)を用い、25nmolのR/DNAハイブリッド1又は2で60%コンフルエントのA549肺腺癌を、形質移入した。最初のハイブリッド添加から24時間後に、同じプロトコルを使用して補充のハイブリッドを同時形質移入した。細胞を採取し、24時間後に標準プロトコルを使用して免疫ブロッティング用に処理した。抗GSTP1抗体はCell Signaling Technologyによるものであり、β−アクチン抗体はAbcamによるものであった。
【0220】
増感発光法。
1)Alexa488(Gは緑色)及びAlexa546(Rは赤色)の2つの蛍光プローブを使用した。以下に記載されるように、大文字のG及びRをプローブ自体を略記するために使用し、小文字は対応する励起(Alexa488に対して488nm及びAlexa546に対して561nm)及び発光波長(Alexa488について493〜557nm及びAlexa546について566〜680nm)を表すために使用する。
2)各試料について、3つの画像を撮った。最初の2つの画像は488励起(g)を使用して同時に撮り、2つの採取収集チャネル、一方はgで表す493〜557nm(gg、第1画像)及び他方はrで表す566〜680nm(gr、増感発光及びブリードスルーに相当する第2画像)を用いた。第3画像は561励起(r)を使用した直後に、rで表す566〜680nmの発光の収集(rr、第3画像)を用いて撮った。
2つのプローブを含む試料に対し、増感発光画像(gr)中の所与のピクセルにおけるSは、以下の等式により記載される。
S
grsample=F+B
grG×G
ggsample+B
grR×R
rrsample (等式1)
式中、下付き文字の最初の文字は使用した励起波長を指し、2つ目の文字は収集した発光波長を指す(例えば:grは488nmでの緑色励起及び566〜680mnの赤色発光を現す)。上付き文字のsampleは、この値は試料に依存的であることを意味する。Fは、所与のピクセルでのFRETシグナルである。下付きのG及びRは、各々Alexa488及びAlexa546を指す。B
grGは、488nmで励起された場合のAlexa546発光チャネルへのAlexa488のブリードスルーである。同様に、B
grRは、488nmで励起された場合のAlexa488発光チャネルへのAlexa546のブリードスルーである。それらのブリードスルー補正因子は、以下に記載される別々に測定された定数である。G
ggsampleは、488nmにより励起された場合のAlexa488からの強度であり、493nm〜557nmの発光を収集する。同様に、R
rrsampleは、561nmにより励起された場合のalexa546からの強度であり、566〜680nmの発光を収集する。G
ggsample及びR
rrsampleは、試料に依存的であり、それぞれ第1画像及び第3画像からのシグナルに対応する。
第1画像について、等式1は以下の通り簡略化する。S
GGsample=G
GGsample
第3画像について、等式1は以下の通り簡略化する。S
RRsample=R
RRsample
2つのブリードスルー補正因子は、Alexa488のみ又はAlexa546のみを含有する異なる試料から算出される。
Alexa488のみを含有する試料に対して、等式1は以下の通り簡略化する。
第1画像について、S
ggsample=G
ggsample
第2画像について、S
grsample=B
grG×G
ggsample
2つの比を取ることにより、本発明者らは、B
grG=S
grsample/S
ggsampleを得る。
Alexa546のみを含有する試料に対して、等式1は以下の通り簡略化する。
第3画像について、S
rrsample=R
rrsample
第2画像について、S
grsample=B
grR×R
rrsample
2つの比を取ることにより、本発明者らは、B
grR=S
grsample/S
rrsampleを得る。
4)全ての画像を、同一の共焦点顕微鏡設定の下で収集し、上記計算を行う前にバックグラウンドシグナルを減算した。
【0221】
他の実施形態
上記より、本明細書に記載される発明に対して、様々な用途及び条件に適合させるため、変化及び改良がなされ得ることが明らかである。また、かかる実施形態は、下記特許請求の範囲の範囲内である。
【0222】
本明細書において任意の変数の定義において列挙される要素は、列挙される要素のうち任意の単独の要素又は組み合わせ(又は部分的組み合わせ)としての変数の定義を包含する。本明細書の実施形態の列挙は、任意の単独の実施形態、又は任意の他の実施形態又はその一部との組み合わせとしての実施形態を包含する。
【0223】
本明細書において言及される特許及び出版物は全て、各々の独立した特許及び出版物が具体的かつ個別に参照により援用されることが示されるのと同じ程度に、本明細書において参照により援用される。