特許第6093789号(P6093789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093789再生管理装置、再生管理方法、再生管理プログラム、コンテンツ受信システムおよびコンテンツ配信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093789
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】再生管理装置、再生管理方法、再生管理プログラム、コンテンツ受信システムおよびコンテンツ配信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/4623 20110101AFI20170227BHJP
   H04N 21/6334 20110101ALI20170227BHJP
   H04L 9/08 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H04N21/4623
   H04N21/6334
   H04L9/00 601B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-47433(P2015-47433)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-167766(P2016-167766A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】516193896
【氏名又は名称】智慧行動傳播科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】大矢 智之
(72)【発明者】
【氏名】森住 俊美
(72)【発明者】
【氏名】関 友理
【審査官】 富樫 明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−308595(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146865(WO,A1)
【文献】 特開2011−109311(JP,A)
【文献】 特開2002−366442(JP,A)
【文献】 特開2013−172266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
H04L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の更新周期で更新される鍵を用いて暗号化されたコンテンツ信号と、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を暗号化して得られた第1制御情報と、前記更新周期を示す情報を暗号化して得られた第2制御情報と、を受信する受信機に用いられる再生管理装置であって、
前記受信機から前記第1制御情報および前記第2制御情報を受け取るインターフェースと、
前記第1制御情報を復号し、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を復元する第1復号部と、
前記第2制御情報を復号し、前記更新周期を復元する第2復号部と、
前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間と、前記鍵の更新周期と、に基づいて、前記鍵を前記受信機に出力するか否かを判定し、出力すると判定された場合に、前記復元された鍵を前記受信機に出力する制御部と、を備える再生管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記再生可能時間を前記更新周期で除して得られた値に応じた回数だけ、前記鍵を出力する、請求項1に記載の再生管理装置。
【請求項3】
当該再生管理装置は、前記受信機よりセキュリティが高い、請求項1または2に記載の再生管理装置。
【請求項4】
前記再生可能時間は、前記暗号化されたコンテンツ信号を再生する契約なしで前記暗号化されたコンテンツ信号を再生可能な時間である、請求項1乃至のいずれかに記載の再生管理装置。
【請求項5】
当該再生管理装置は、ICチップであるか、前記受信機に挿入されるICカードである、請求項1乃至のいずれかに記載の再生管理装置。
【請求項6】
前記暗号化されたコンテンツ信号と、前記第1制御情報と、前記第2制御情報と、を受信する受信機と、
請求項1乃至のいずれかに記載の再生管理装置と、を備え、
前記受信機は、前記再生管理装置に前記第1制御情報および前記第2制御情報を転送するとともに、前記再生管理装置から出力された前記鍵を受け取った場合に、前記暗号化されたコンテンツ信号を前記鍵を用いて復号する、コンテンツ受信システム。
【請求項7】
所定の更新周期で更新される鍵を用いて暗号化されたコンテンツ信号と、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を暗号化して得られた第1制御情報と、前記更新周期を示す情報を暗号化して得られた第2制御情報と、を受信する受信機に用いられる再生管理装置が、
前記受信機から前記第1制御情報および前記第2制御情報を受け取り、
前記第1制御情報を復号し、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を復元し、
前記第2制御情報を復号し、前記更新周期を復元し、
前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間と、前記鍵の更新周期と、に基づいて、前記鍵を前記受信機に出力するか否かを判定し、
出力すると判定された場合に、前記復元された鍵を前記受信機に出力する、再生管理方法。
【請求項8】
所定の更新周期で更新される鍵を用いて暗号化されたコンテンツ信号と、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を暗号化して得られた第1制御情報と、前記更新周期を示す情報を暗号化して得られた第2制御情報と、を受信する受信機に用いられる再生管理装置を、
前記受信機から前記第1制御情報を受け取る手段、
前記第1制御情報を復号し、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を復元する手段、
前記第2制御情報を復号し、前記更新周期を復元する手段、
前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間と、前記鍵の更新周期と、に基づいて、前記鍵を前記受信機に出力するか否かを判定する手段、および、
出力すると判定された場合に、前記復元された鍵を前記受信機に出力する手段として機能させるための再生管理プログラム。
【請求項9】
放送装置と、受信機と、前記受信機に挿入されるICカードと、前記放送装置からの放送波を処理するチューナを持たない再生装置と、を備えるコンテンツ配信システムであって、
前記放送装置は、
コンテンツ信号を、所定の更新周期で更新される第1鍵を用いて暗号化し、暗号化コンテンツ信号を生成する第1暗号化部と、
前記第1鍵と、前記第1鍵の再生可能時間を示す情報と、を第2鍵を用いて暗号化し、第1制御情報を生成する第2暗号化部と、
前記更新周期を示す情報および前記第2鍵を前記ICカードに固有の第3鍵を用いて暗号化し、第2制御情報を生成する第3暗号化部と、を有し、
前記暗号化コンテンツ信号、前記第1制御情報および前記第2制御情報は、放送波によって前記受信機に送信され、
前記受信機は、
前記暗号化コンテンツ信号、前記第1制御情報および前記第2制御情報を処理するチューナと、
前記ICカードから前記第1鍵が出力された場合に、前記暗号化コンテンツ信号を復号して、前記コンテンツ信号を復元する第1復号部と、を有し、
前記復元されたコンテンツ信号は、前記再生装置によって再生され、
前記ICカードは、前記受信機よりセキュリティが高く、
前記受信機を介して前記第2制御情報を受信し、前記ICカードが持つ前記第3鍵を用いて前記第2制御情報を復号して、前記更新周期および前記第2鍵を復元する第2復号部と、
前記受信機を介して前記第1制御情報を受信し、復元された前記第2鍵を用いて前記第1制御情報を復号して、前記第1鍵および前記第1鍵の再生可能時間を復元する第3復号部と、
前記再生可能時間を前記更新周期で除して得られた値に応じた回数だけ、前記第1鍵を出力する制御部と、を有するコンテンツ配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗号化されたコンテンツの再生管理を行う再生管理装置、再生管理方法、再生管理プログラム、コンテンツ受信システムおよびコンテンツ配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送局からコンテンツ信号を配信し、これをスマートフォン、パーソナルコンピュータ、テレビ等の電子機器で再生することが広く行われている。有料放送の場合、コンテンツ配信者が配信による利益を確保するために、コンテンツ信号を暗号化して配信する。この場合、コンテンツ配信者と契約を結んだ特定のユーザのみがコンテンツ信号を復号でき、コンテンツを視聴できる。
【0003】
暗号化してコンテンツ信号を配信する場合であっても、契約者数の増加を狙って、契約を結んでいない視聴者に対しても短時間だけコンテンツの視聴を許可することがある。このようなコンテンツの短時間の再生は、プレビューとも呼ばれている。プレビューを実現するためには、所定のプレビュー時間だけ、暗号化されたコンテンツ信号を復号する鍵を出力する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−216941号公報
【特許文献2】特開平11−308595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
復号鍵を不用意に出力してしまうと、この復号鍵を不正に使用される可能性が高くなる。また、時間を正確に管理するためには、一般に、高いコストをかけて改ざんが困難な時刻源を設ける必要がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高セキュリティかつ低コストでプレビューを実現可能な再生管理装置、再生管理方法、再生管理プログラム、コンテンツ受信システムおよびコンテンツ配信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、所定の更新周期で更新される鍵を用いて暗号化されたコンテンツ信号と、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を暗号化して得られた第1制御情報と、を受信する受信機に用いられる再生管理装置であって、前記受信機から前記第1制御情報を受け取るインターフェースと、前記第1制御情報を復号し、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を復元する第1復号部と、前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間と、前記鍵の更新周期と、に基づいて、前記鍵を前記受信機に出力するか否かを判定し、出力すると判定された場合に、前記復元された鍵を前記受信機に出力する制御部と、を備える再生管理装置が提供される。
ここでの再生可能時間とは、前記暗号化されたコンテンツ信号を再生する契約なしで前記暗号化されたコンテンツ信号を再生可能な時間、すなわちプレビュー時間であってもよい。
【0008】
具体的には、前記制御部は、前記再生可能時間を前記更新周期で除して得られた値に応じた回数だけ、前記鍵を出力してもよい。
【0009】
当該再生管理装置は、前記受信機よりセキュリティが高いのが望ましい。
【0010】
一例として、前記更新周期は予め定めた固定値であり、この更新周期を記憶する記憶部を備えてもよい。
【0011】
別の例として、前記受信機は、前記更新周期を示す情報を暗号化して得られた第2制御情報を受信し、前記インターフェースは、前記受信機から前記第2制御情報を受け取り、当該再生管理装置は、前記第2制御情報を復号して、前記更新周期を復元する第2復号部を備えてもよい。
【0012】
また別の例として、前記第1制御情報に前記鍵の更新周期を示す情報が含まれてもよい。
【0013】
さらに別の例として、前記第1制御情報には、前記鍵とともに時刻情報が含まれており、前記第1復号部が前記第1制御情報を復号することにより、1つの前記鍵とともに含まれる前記時刻情報と、更新された前記鍵とともに含まれる前記時刻情報と、に基づいて、前記鍵の更新周期が取得されてもよい。
【0014】
望ましくは、当該再生管理装置は、ICチップであるか、前記受信機に挿入されるICカードである。
【0015】
また、本発明の別の態様によれば、前記暗号化されたコンテンツ信号と、前記第1制御情報と、を受信する受信機と、請求項1乃至9のいずれかに記載の再生管理装置と、を備え、前記受信機は、前記再生管理装置に前記第1制御情報を転送するとともに、前記再生管理装置から出力された前記鍵を受け取った場合に、前記暗号化されたコンテンツ信号を前記鍵を用いて復号する、コンテンツ配信システムが提供される。
【0016】
また、本発明の別の態様によれば、所定の更新周期で更新される鍵を用いて暗号化されたコンテンツ信号と、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を暗号化して得られた第1制御情報と、を受信する受信機に用いられる再生管理装置が、前記受信機から前記第1制御情報を受け取り、前記第1制御情報を復号し、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を復元し、前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間と、前記鍵の更新周期と、に基づいて、前記鍵を前記受信機に出力するか否かを判定し、出力すると判定された場合に、前記復元された鍵を前記受信機に出力する、再生管理方法が提供される。
【0017】
また、本発明の別の態様によれば、所定の更新周期で更新される鍵を用いて暗号化されたコンテンツ信号と、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を暗号化して得られた第1制御情報と、を受信する受信機に用いられる再生管理装置を、前記受信機から前記第1制御情報を受け取る手段、前記第1制御情報を復号し、前記鍵および前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間を示す情報を復元する手段、前記暗号化されたコンテンツ信号の再生可能時間と、前記鍵の更新周期と、に基づいて、前記鍵を前記受信機に出力するか否かを判定する手段、および、出力すると判定された場合に、前記復元された鍵を前記受信機に出力する手段として機能させるための再生管理プログラムが提供される。
【0018】
また、本発明の別の態様によれば、放送装置と、受信機と、前記受信機に挿入されるICカードと、前記放送装置からの放送波を処理するチューナを持たない再生装置と、を備えるコンテンツ配信システムであって、前記放送装置は、コンテンツ信号を、所定の更新周期(Tud)で更新される第1鍵(Ks)を用いて暗号化し、暗号化コンテンツ信号を生成する第1暗号化部(11)と、前記第1鍵(Ks)と、前記第1鍵(Ks)の再生可能時間(Tpre)を示す情報と、を第2鍵(Kw)を用いて暗号化し、第1制御情報(ECM)を生成する第2暗号化部(12)と、前記第2鍵(Kw)を前記ICカードに固有の第3鍵(Km)を用いて暗号化し、第2制御情報(EMM)を生成する第3暗号化部(14)と、を有し、前記暗号化コンテンツ信号、前記第1制御信号(ECM)および前記第2制御信号(EMM)は、放送波により前記受信機に送信され、前記受信機は、前記暗号化コンテンツ信号および前記第1制御信号(ECM)を処理するチューナ(21)と、前記ICカードから前記第1鍵(Ks)が出力された場合に、前記暗号化コンテンツ信号を復号して、前記コンテンツ信号を復元する第1復号部(22)と、を有し、前記復元されたコンテンツ信号は、前記再生装置によって再生され、前記ICカードは、前記受信機よりセキュリティが高く、前記受信機を介して前記第2制御情報(EMM)を受信し、前記ICカードが持つ前記第3鍵(Km)を用いて前記第2制御情報(EMM)を復号して、前記第2鍵(Kw)を復元する第2復号部(32)と、前記受信機を介して前記第1制御情報(ECM)を受信し、復元された前記第2鍵(Kw)を用いて前記第1制御情報(ECM)を復号して、前記第1鍵(Ks)および前記第1鍵(Ks)の再生可能時間(Tpre)を復元する第3復号部(34)と、前記再生可能時間(Tpre)を前記更新周期(Tud)で除して得られた値に応じた回数だけ、前記第1鍵(Ks)を出力する制御部(35)と、を有するコンテンツ配信システムが提供される。
【発明の効果】
【0019】
再生管理装置内で鍵を出力するか否かを判断するため、高セキュリティかつ低コストでプレビューを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係るコンテンツ配信システムの概略構成を示すブロック図。
図2】放送装置1の内部構成の一例を示すブロック図。
図3】受信機2の内部構成の一例を示すブロック図。
図4】ICカード3の内部構成の一例を示すブロック図。
図5】ICカード3の制御部35による鍵Ksの出力を説明する図。
図6】コンテンツ配信システムの処理動作の一例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係るコンテンツ配信システムの概略構成を示すブロック図である。コンテンツ配信システムは、放送装置1、受信機2、ICカード(再生管理装置)3、および、再生装置4から構成される。なお、同図には1組の受信機2、ICカード3および再生装置4を描いているが、通常これらの組は複数存在する。また、放送装置1が複数あってもよい。また、受信機2およびICカード3はコンテンツ受信システムを構成する。
【0023】
放送装置1は、例えば放送局内に設けられ、暗号化されたコンテンツ信号(以下、単に暗号化コンテンツ信号という)と、後述する制御情報ECM(Entitlement Control Message),EMM(Entitlement Management Message)とを放送波により送信する。
受信機2はユーザが使用するものであり、コンテンツ信号および制御情報ECM,EMMを受信して、制御情報ECM,EMMをICカード3に転送する。
ICカード3は受信機2に挿入され、所定の条件を満たす場合にのみ、暗号化コンテンツ信号を復号するための鍵Ks(スクランブル鍵)を受信機2に送信する。受信機2は、鍵Ksを受信すると、この鍵Ksを用いて暗号化コンテンツ信号を復号できる。復号されたコンテンツ信号は再生装置4によって再生される。
【0024】
一例として、受信機2はドングルであり、再生装置4はこのドングルと接続可能なスマートフォンである。このような構成にすることで、スマートフォンがチューナを持たず放送波を処理できない場合であっても、ユーザはこのスマートフォンを用いてコンテンツを楽しむことができる。別の例として、受信機2はセットトップボックスであり、再生装置4はこのセットトップボックスとHDMI(登録商標)ケーブルなどで接続可能なディスプレイであってもよい。あるいは、再生装置4に受信機2が内蔵されていてもよい。また、ICカード3相当の再生管理装置がICチップとして受信機2に組み込まれていてもよい。
【0025】
なお、ICカード3は高セキュリティモジュールであって、少なくとも受信機2よりセキュリティが高く外部からの不正なアクセスに対する耐性が高いのが望ましい。そのような高セキュリティを確保するためには、ICカード3は耐タンパ性を高くしたり、ICカード3相当の再生管理装置を汎用プロセッサの一部に設けられた耐タンパ領域に実装したりすればよい。
【0026】
以下、各装置について詳しく説明する。なお、暗号化コンテンツ信号を再生するには所定の契約が必要であるが、その契約がなされていない場合のプレビューについて主に説明する。
図2は、放送装置1の内部構成の一例を示すブロック図である。放送装置1は、スクランブラ11(暗号化部)と、暗号化部12と、記憶部13と、暗号化部14とを有する。
【0027】
スクランブラ11は鍵Ksを用いてコンテンツ信号をスクランブル(暗号化)する。コンテンツ信号は、例えば映像信号や音声信号である。暗号化により、鍵Ksなしでは再生でない暗号化コンテンツ信号が生成される。鍵Ksは放送装置1が持っている鍵であり、送信先の受信機2ごとに異なるものでなくてもよく、また、コンテンツごとに異なるものでなくてもよい。なお、鍵Ksは所定の更新周期Tudで更新される。更新周期Tudは放送装置1が任意に設定してもよいし、予め定めた固定値でもよい。
【0028】
暗号化部12は、鍵Kw(ワーク鍵)を用いて鍵Ksおよびプレビュー時間Tpreを示す情報を暗号化し、制御情報ECMを生成する。プレビュー時間Tpreはコンテンツ信号を再生する契約なしで再生可能な時間であり、コンテンツ信号に応じて予め定められている。すなわち、制御情報ECMは各コンテンツ信号に付随する情報と言える。
【0029】
記憶部13はICカード3のそれぞれに対応する鍵Km(マスター鍵)を記憶している。すなわち、ICカード3はそれぞれ固有の鍵Kmを持っており、どのICカード3がどの鍵Kmを持っているのかを、記憶部13は記憶している。また、記憶部13は、ICカード3の各ユーザについての契約情報も記憶している。契約情報は、暗号化コンテンツ信号を再生する契約をしているか否かなどを示す情報である。
【0030】
暗号化部14は、記憶部13を参照し、送信対象のICカード3が持っている鍵Kmを用いて鍵Kwおよび契約情報を暗号化し、当該特定のICカード3用の制御情報EMMを生成する。
【0031】
以上の暗号化コンテンツ信号および制御情報ECM,EMMは放送波により放送装置1から受信機2に送信される。なお、暗号化コンテンツ信号と制御情報ECMは組になって送信されるが、制御情報EMMは任意のタイミング、例えば契約情報が変更されたタイミングで送信される。また、制御情報EMMは特定のICカード3が挿入された受信機2で用いられるものであるため、通信により送信されてもよく、これにより放送波の伝送帯域を節約できる。
【0032】
図3は、受信機2の内部構成の一例を示すブロック図である。受信機2は、チューナ21と、ICカード3とのインターフェース(IF)22と、デスクランブラ23(復号部)とを有する。
【0033】
チューナ21は、放送波から暗号化コンテンツ信号および制御情報ECM,EMMを受信し、必要であればユーザの設定に応じて選局する。暗号化コンテンツ信号はデスクランブラ23に供給され、制御情報ECM,EMMはインターフェース22に供給される。
【0034】
インターフェース22は放送装置1から受信した制御情報ECM,ECMをICカード3に転送する。また、インターフェース22は、ICカード3から鍵Ksが出力された場合に、この鍵Ksを受け取り、デスクランブラ23に渡す。
【0035】
デスクランブラ23は鍵Ksを用いて暗号化コンテンツ信号をデスクランブル(復号)する。すなわち、デスクランブラ23は、ICカード3から鍵Ksが出力された場合には暗号化コンテンツ信号を復号できるが、鍵Ksが出力されない場合には暗号化コンテンツをデスクランブルできない。デスクランブルされたコンテンツ信号は映像信号および/または音声信号に変換されて、再生装置4に出力される。
【0036】
なお、制御情報EMMを放送波で送信するのであれば、受信機2に通信機能は不要である。
【0037】
図4は、ICカード3の内部構成の一例を示すブロック図である。ICカード3は、受信機2とのインターフェース(IF)31と、復号部32と、記憶部33と、復号部34と、制御部35とを有する。ICカード3は、例えば受信機2に挿入され受信機2からの電力供給を受けて動作する。
【0038】
インターフェース31は受信機2から制御情報ECM,EMMを受け取る。また、所定の場合に、インターフェース31は鍵Ksを受信機2に払い出す。
【0039】
復号部32は、ICカード3が持っている固有の鍵Kmを用いて制御情報EMMを復号し、鍵Kwおよび契約情報を復元する。鍵Kwおよび契約情報は記憶部33に記憶される。なお、鍵KmはICカード3に固有のものであるため、復号部32は、自身宛の制御情報EMMを復号できるが、他のICカード3宛の制御情報EMMを復号することはできない。
【0040】
記憶部33は、鍵Kwおよび契約情報に加え、鍵Ksの更新周期Tudを記憶している。更新周期Tudが固定値である場合、更新周期Tudは予め記憶部33に埋め込まれて記憶されている。
【0041】
復号部34は鍵Kwを用いて制御情報ECMを復号し、鍵Ksおよびプレビュー時間Tpreを復元する。
【0042】
制御部35は、契約情報と、プレビュー時間Tpreと、鍵Ksの更新周期Tudとに基づいて、鍵Ksを受信機2に出力するか否かを判定する。暗号化コンテンツ信号を再生する契約がなされていることを契約情報が示す場合、制御部35は鍵Ksを出力すると判定する。同契約がなされていないことを契約情報が示す場合、制御部35はプレビュー時間Tpreおよび更新周期Tudに基づいてプレビュー処理を行う。具体的には、制御部35は、プレビュー時間Tpreを更新周期Tudで除した回数だけ、鍵Ksを出力すると判定する。出力すると判定された場合、制御部35はインターフェース31を介して鍵Ksを受信機2に出力する。以下、プレビュー処理の場合の制御部35による判定について詳しく説明する。
【0043】
図5は、ICカード3の制御部35による鍵Ksの出力を説明する図である。なお、以下の説明では、特に断らない限り復号やデータ送受による遅延を無視する。同図では、プレビュー時間Tpreが90秒であり、鍵Ksの更新周期Tudが30秒であると仮定している。この仮定下では、プレビュー時間Tpreの間に3(=Tpre/Tud)回、鍵Ksが更新される。以下更新される鍵Ksを、順に鍵Ks1,Ks2,Ks3とする。
【0044】
図5において、時刻t1で受信機2は暗号化コンテンツ信号および制御情報ECMを受信したものとする。受信した時点では、鍵Ksを出力した回数は0回である。
【0045】
そこで、時刻t1において、制御部35はこのときの鍵Ks1を出力する(1回目の出力)。これにより、受信機2のデスクランブラ23は、時刻t1から更新周期Tudが経過する時刻t2までの30秒間は、鍵Ks1を用いて暗号化コンテンツを復号できる。時刻t2以降は鍵Ksが更新されているため、デスクランブラ23は鍵Ks1では暗号化コンテンツを復号できない。
【0046】
時刻t2において、制御部35は更新された新たな鍵Ks2を暗号化して得られた制御情報ECMを受信する。この時点で、鍵Ksを出力した回数はまだ1回である。よって、制御部35は鍵Ksを受信機2に出力する(2回目の出力)。これにより、受信機2のデスクランブラ23は、時刻t2から更新周期Tudが経過する時刻t3までの30秒間は、鍵Ks2を用いて暗号化コンテンツを復号できる。時刻t3以降は鍵Ksが更新されているため、デスクランブラ23は鍵Ks2では暗号化コンテンツを復号できない。
【0047】
時刻t3において、制御部35は更新された新たな鍵Ks3を暗号化して得られた制御情報ECMを受信する。この時点で、鍵Ksを出力した回数はまだ2回である。よって、制御部35は鍵Ksを受信機2に出力する(3回目の出力)。これにより、受信機2のデスクランブラ23は、時刻t3から更新周期Tudが経過する時刻t4までの30秒間は、鍵Ks3を用いて暗号化コンテンツを復号できる。時刻t4以降は鍵Ksが更新されているため、デスクランブラ23は鍵Ks3では暗号化コンテンツを復号できない。
【0048】
時刻t4において、制御部35は更新された新たな鍵Ksを暗号化して得られた制御情報を受信する。しかしながら、この時点で制御部35はすでに鍵Ksを3回出力している。よって、以降、制御部35は鍵Ksを受信機2に送信しない。そのため、時刻t4以降、デスクランブラ23は暗号化コンテンツを復号できない。
【0049】
このようにして、ちょうどプレビュー時間Tpreの90秒だけ、暗号化コンテンツ信号が復号および再生される。
【0050】
図6は、コンテンツ配信システムの処理動作の一例を示すシーケンス図である。なお、制御情報EMMは既に受信機2に送信されており、その記憶部33には鍵Kwが記憶されているものとする。また、暗号化コンテンツ信号を再生する契約がなされていないものとする。
【0051】
放送装置1は、放送波により、暗号化コンテンツ信号および制御情報ECMを受信機2に送信する(ステップS1)。制御情報ECMには、暗号化された鍵Ksおよびプレビュー時間Tpreを示す情報が含まれている。
受信機2は暗号化コンテンツおよび制御情報ECMを受信し(ステップS11)、制御情報ECMをICカード3に転送する(ステップS12)。
【0052】
ICカード3は制御情報ECMを受信する(ステップS21)。そして、ICカード3内の復号部34は鍵Kwを用いて制御情報ECMを復号し(ステップS22)、鍵Ksおよびプレビュー時間Tpreを復元する。さらに、制御部35は、復元されたプレビュー時間Tpreおよび記憶部33に記憶された更新周期Tudに基づいて、出力回数Nを算出する(ステップS23)。より具体的には、制御部35はTpre/Tudを出力回数Nとする。そして、制御部35は鍵Ksの1回目の出力を行う(ステップS24)。
【0053】
以上の処理の後、制御部35は、出力回数Nだけ、更新周期Tudごとに、鍵Ksを受信機2に出力する(ステップS21〜S25)。すなわち、実際に鍵Ksを出力した回数がN未満であれば(ステップS25のNO)、ある鍵Ks(例えば図5の鍵Ks1)の受信から更新周期Tud経過後に受信された、更新された鍵Ks(例えば図5の鍵Ks2)を含む制御情報ECM(ステップS21)を、復号部34が復号する(ステップS22)。そして、制御部35は復元された鍵Ksを受信機2に出力する(ステップS24)。
【0054】
受信機2のデスクランブラ23は、鍵Ksを受信すると(ステップS13)、暗号化コンテンツ信号をデスクランブルする(ステップS14)。鍵Ksが更新されるまでは、言い換えると、更新周期Tud経過までは、デスクランブラ23は暗号化コンテンツ信号をデスクランブルできる(ステップS15のNO)。
【0055】
更新周期Tudが経過して鍵Ksが更新された場合(ステップS15のYES)、更新された鍵KsをICカード3からデスクランブラ23が受信すれば(ステップS13のYES)、引き続き暗号化コンテンツ信号をデスクランブルできる(ステップS14)。鍵Ksが更新され、更新された鍵KsがICカード3から送信されない場合(ステップS13のNO)、デスクランブラ23は暗号化コンテンツ信号をデスクランブルできなくなる。
【0056】
このように、本実施形態では、ICカード3が更新周期Tudを知っているので、高セキュリティなICカード3内で鍵Ksを出力するか否かを判断できる。そして、出力すると判断された場合に限って、ICカード3から外部の受信機2に鍵Ksが出力される。そのため、セキュリティが向上する。また、受信機2にはそれほど高度なセキュリティが不要になるし、受信機2でプレビュー時間を管理する必要もなくなるため、受信機2の製造コストを下げることもできる。
【0057】
なお、本実施形態では、更新周期Tudは固定値であり、予め記憶部33に記憶されていることとした。しかしながら、ICカード3が更新周期Tudを知ってさえいればよく、更新周期Tudを固定とする以外に種々の変形例が考えられる。
【0058】
例えば、図2の暗号化部14が、鍵Kwのみならず、更新周期Tudを示す情報も併せて暗号化して制御情報EMMを生成してもよい。この場合、図4の復号部32が制御情報EMMを復号することにより更新周期Tudが復元されて、記憶部33に記憶されるようしにしてもよい。
【0059】
別の例として、図2の暗号化部12が、鍵Ksおよびプレビュー時間Tpreを示す情報のみならず、更新周期Tudを示す情報も併せて暗号化して制御情報ECMを生成してもよい。この場合、図4の復号部34が制御情報ECMを復号することにより更新周期Tudが復元されて、記憶部33に記憶されるようしにしてもよい。
【0060】
また別の例として、図2の暗号化部12が、鍵Ksおよびプレビュー時間Tpreを示す情報のみならず、時刻情報も併せて暗号化して制御情報ECMを生成してもよい。時刻情報は、例えば新たな鍵Ksを放送装置1から出力する時刻を示す。図5の例であれば、暗号化部12は鍵Ks1および時刻情報t1を含む制御情報ECM1を生成する。その後、暗号化部12は鍵Ks2および時刻情報t2を含む制御情報ECM2を生成する。この場合、図4の復号部32は、制御情報ECM1から復元される時刻情報t1と、制御情報ECM2から復元される時刻情報t2に基づき、両者の時刻差(t2−t1)を更新周期Tudとして取得し、記憶部33に記憶してもよい。
【0061】
上述した実施形態で説明したコンテンツ配信システムの各部の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、コンテンツ配信システムの各部の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0062】
また、コンテンツ配信システムの各部の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0063】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 放送装置
11 スクランブラ
12 暗号化部
13 記憶部
14 暗号化部
2 受信機
21 チューナ
22 インターフェース
23 デスクランブラ
3 ICカード(再生管理装置)
31 インターフェース
32 復号部
33 記憶部
34 復号部
35 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6