(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093790
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】測位装置、測位方法、測位プログラム、測位システム及び測位端末
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20170227BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20170227BHJP
G06N 99/00 20100101ALI20170227BHJP
G06N 5/02 20060101ALN20170227BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G01C21/26 P
G06N99/00 153
!G06N5/02 120
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-49242(P2015-49242)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-170005(P2016-170005A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩二
【審査官】
▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/033874(WO,A1)
【文献】
特開2013−050325(JP,A)
【文献】
特開平10−136436(JP,A)
【文献】
特開2013−205170(JP,A)
【文献】
特開2013−053930(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0079039(US,A1)
【文献】
特開平10−094040(JP,A)
【文献】
特開2010−060419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S 19/00−19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内で測位端末の位置を推定する測位装置であって、
所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機の識別情報と当該近接型発信機を設置した位置を示す位置情報とを関連付けて格納した発信機情報蓄積手段と、
前記測位端末が観測した、周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を含むセンサ情報を受信する受信手段と、
前記センサ情報に含まれる前記近接型発信機の識別情報に基づいて前記発信機情報蓄積手段から前記位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報および前記センサ情報を教師データとして学習モデルを生成するモデル生成手段と、
前記測位端末から前記センサ情報を受信し、当該センサ情報を入力として前記学習モデルを用いて前記測位端末の位置を推定する位置推定手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記測位端末から当該測位端末の端末情報を受信し、
前記モデル生成手段は、前記端末情報毎に前記学習モデルを生成し、
前記位置推定手段は、前記測位端末から前記端末情報を受信し、当該端末情報に対応する学習モデルを用いて位置を推定することを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記近接型発信機は、現在位置が特定可能で、前記測位端末との間で近距離無線通信により決済処理を行う装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記近接型発信機は、現在位置が特定可能で、移動する移動装置に設置されており、
前記発信機情報蓄積手段に格納された前記位置情報を前記移動装置の移動に応じて更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項5】
屋内で測位端末の位置を推定する測位方法であって、
所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機の識別情報と当該近接型発信機を設置した位置を示す位置情報とを関連付けて発信機情報蓄積手段に格納しておき、
前記測位端末が観測した、周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を含むセンサ情報を受信するステップと、
前記センサ情報に含まれる前記近接型発信機の識別情報に基づいて前記発信機情報蓄積手段から前記位置情報を取得するステップと、
前記位置情報および前記センサ情報を教師データとして学習モデルを生成するステップと、
前記測位端末から前記センサ情報を受信し、当該センサ情報を入力として前記学習モデルを用いて前記測位端末の位置を推定するステップと、
を有することを特徴とする測位方法。
【請求項6】
コンピュータを、
屋内で測位端末の位置を推定する測位装置が備える、
所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機の識別情報と当該近接型発信機を設置した位置を示す位置情報とを関連付けて格納した発信機情報蓄積手段、
前記測位端末が観測した、周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を含むセンサ情報を受信する受信手段、
前記センサ情報に含まれる前記近接型発信機の識別情報に基づいて前記発信機情報蓄積手段から前記位置情報を取得する位置情報取得手段、
前記位置情報および前記センサ情報を教師データとして学習モデルを生成するモデル生成手段、
前記測位端末から前記センサ情報を受信し、当該センサ情報を入力として前記学習モデルを用いて前記測位端末の位置を推定する位置推定手段、
として動作させることを特徴とする測位プログラム。
【請求項7】
測位装置と測位端末と所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機とを備えて、屋内で前記測位端末の位置を推定する測位システムであって、
前記測位装置は、
前記近接型発信機の識別情報と当該近接型発信機を設置した位置を示す位置情報とを関連付けて格納した発信機情報蓄積手段と、
前記測位端末が観測した、周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を含むセンサ情報を受信する受信手段と、
前記センサ情報に含まれる前記近接型発信機の識別情報に基づいて前記発信機情報蓄積手段から前記位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報および前記センサ情報を教師データとして学習モデルを生成するモデル生成手段と、
前記測位端末から前記センサ情報を受信し、当該センサ情報を入力として前記学習モデルを用いて前記測位端末の位置を推定する位置推定手段と、を有し、
前記測位端末は、
当該測位端末の周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を観測するセンサと、
前記センサの観測結果をセンサ情報として前記測位装置に送信する送信手段と、
前記測位装置から前記センサ情報に基づいて推定された位置を受信する受信手段と、
前記近接型発信機の電波を受信したときは、当該近接型発信機の識別情報を前記センサ情報に含めて前記測位装置に送信する発信機情報送信手段と、を有すること
を特徴とする測位システム。
【請求項8】
屋内で観測された情報を測位装置に送信して位置を得る測位端末であって、
当該測位端末の周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を観測するセンサと、
前記センサの観測結果をセンサ情報として前記測位装置に送信する送信手段と、
前記測位装置から前記センサ情報に基づいて推定された位置を受信する受信手段と、
所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機の電波を受信したときは、当該近接型発信機の識別情報を前記センサ情報に含めて前記測位装置に送信する発信機情報送信手段と、
を有することを特徴とする測位端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内での測位技術に関する。
【背景技術】
【0002】
測位技術として、屋外では、GPS/準天頂衛星などを用いた高精度な測位が実現されている。屋内では、Wi−Fi/BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))などを用いた測位技術が提案されている。
【0003】
従来の屋内の測位技術は、屋内に設置されたWi−FiアクセスポイントやBLE発信機から受信した電波の受信強度に基づいて位置を推定しているが、高精度に測位できないという問題があった。
【0004】
そこで、発明者らは、携帯端末で測定可能な電波強度を含むセンサ情報と位置の関係を機械学習により学習し、センサ情報を入力として位置を推定する方法を考えた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】竹内孝、他3名、“非負制約下における複合行列分解”、情報処理学会研究報告.MPS,数理モデル化と問題解決研究報告、一般社団法人情報処理学会、2013-05-16、2013-MPS-93(3)、1-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、環境の変化に頑強な測位を実現する学習モデルを生成するためには、端末種別毎、OS種別毎、天候、人の有無など様々な環境下での学習用の正解データを収集する必要があり、効率的に正解データを収集する方法が求められる。
【0007】
また、人の流れの変化など、測位対象の状況の変化に対応させて学習モデルを追加学習する必要もある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、屋内での測位に用いる学習モデルを生成するときの正解データを容易に収集することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明に係る測位装置は、屋内で測位端末の位置を推定する測位装置であって、所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機の識別情報と当該近接型発信機を設置した位置を示す位置情報とを関連付けて格納した発信機情報蓄積手段と、前記測位端末が観測した
、周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を含むセンサ情
報を受信する受信手段と、
前記センサ情報に含まれる前記近接型発信機の識別情報に基づいて前記発信機情報蓄積手段から前記位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報および前記センサ情報を教師データとして学習モデルを生成するモデル生成手段と、前記測位端末から前記センサ情報を受信し、当該センサ情報を入力として前記学習モデルを用いて前記測位端末の位置を推定する位置推定手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記測位装置において、前記受信手段は、前記測位端末から当該測位端末の端末情報を受信し、前記モデル生成手段は、前記端末情報毎に前記学習モデルを生成し、前記位置推定手段は、前記測位端末から前記端末情報を受信し、当該端末情報に対応する学習モデルを用いて位置を推定することを特徴とする。
【0011】
上記測位装置において、前記
近接型発信機は、現在位置が特定可能で、前記測位端末との間で近距離無線通信により決済処理を行う装置であることを特徴とする。
【0012】
上記測位装置において、前記
近接型発信機は、現在位置が特定可能で、移動する移動装置に設置されており、前記発信機情報蓄積手段に格納された前記位置情報を前記移動装置の移動に応じて更新することを特徴とする。
【0013】
第2の本発明に係る測位方法は、屋内で測位端末の位置を推定する測位方法であって、所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機の識別情報と当該近接型発信機を設置した位置を示す位置情報とを関連付けて発信機情報蓄積手段に格納しておき、前記測位端末が観測した
、周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を含むセンサ情
報を受信するステップと、
前記センサ情報に含まれる前記近接型発信機の識別情報に基づいて前記発信機情報蓄積手段から前記位置情報を取得するステップと、前記位置情報および前記センサ情報を教師データとして学習モデルを生成するステップと、前記測位端末から前記センサ情報を受信し、当該センサ情報を入力として前記学習モデルを用いて前記測位端末の位置を推定するステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
第3の本発明に係る測位プログラムは、コンピュータを、屋内で測位端末の位置を推定する測位装置が備える、所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機の識別情報と当該近接型発信機を設置した位置を示す位置情報とを関連付けて格納した発信機情報蓄積手段、前記測位端末が観測した
、周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を含むセンサ情
報を受信する受信手段、
前記センサ情報に含まれる前記近接型発信機の識別情報に基づいて前記発信機情報蓄積手段から前記位置情報を取得する位置情報取得手段、前記位置情報および前記センサ情報を教師データとして学習モデルを生成するモデル生成手段、前記測位端末から前記センサ情報を受信し、当該センサ情報を入力として前記学習モデルを用いて前記測位端末の位置を推定する位置推定手段、として動作させることを特徴とする。
【0015】
第4の本発明に係る測位システムは、測位装置と測位端末と所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機とを備えて、屋内で前記測位端末の位置を推定する測位システムであって、前記測位装置は、前記近接型発信機の識別情報と当該近接型発信機を設置した位置を示す位置情報とを関連付けて格納した発信機情報蓄積手段と、前記測位端末が観測した
、周囲の電波強度および音波強度の少なくとも一方を含むセンサ情
報を受信する受信手段と、
前記センサ情報に含まれる前記近接型発信機の識別情報に基づいて前記発信機情報蓄積手段から前記位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報および前記センサ情報を教師データとして学習モデルを生成するモデル生成手段と、前記測位端末から前記センサ情報を受信し、当該センサ情報を入力として前記学習モデルを用いて前記測位端末の位置を推定する位置推定手段と、を有し、前記測位端末は、当該測位端末の周囲の
電波強度および音波強度の少なくとも一方を観測するセンサと、前記センサの観測結果をセンサ情報として前記測位装置に送信する送信手段と、前記測位装置から前記センサ情報に基づいて推定された位置を受信する受信手段と、前記近接型発信機の電波を受信したときは、当該近接型発信機の
識別情報を前記センサ情報
に含めて前記測位装置に送信する発信機情報送信手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
第5の本発明に係る測位端末は、屋内で観測された情報を測位装置に送信して位置を得る測位端末であって、当該測位端末の周囲の
電波強度および音波強度の少なくとも一方を観測するセンサと、前記センサの観測結果をセンサ情報として前記測位装置に送信する送信手段と、前記測位装置から前記センサ情報に基づいて推定された位置を受信する受信手段と、所定の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する近接型発信機の電波を受信したときは、当該近接型発信機の
識別情報を前記センサ情報
に含めて前記測位装置に送信する発信機情報送信手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、屋内での測位に用いる学習モデルを生成するときの正解データを容易に収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態における屋内位置測位システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】測位クライアントが電波強度を測定する様子を示す図である。
【
図3】測位サーバが学習モデルを生成・更新する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】測位サーバが位置を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態における屋内位置測位システムの構成を示す機能ブロック図である。本屋内位置測位システムは、測位サーバ1と測位クライアント2を備える。測位サーバ1は、屋内において測位クライアント2が観測した電波強度や音波強度などのセンサ情報を受信し、機械学習によりセンサ情報と位置の関係を学習して学習モデルを生成するとともに、生成した学習モデルを用いて測位クライアント2から受信したセンサ情報を入力として位置を推定する。
【0021】
本実施の形態では、学習の際に、10〜15cm程度の近距離の範囲内のみに届く電波を出力する正確な位置を特定した近接型発信機を設置し、測位サーバ1は測位クライアント2から受信した近接型発信機からの電波の情報に基づいて位置を特定する。
図2に測位クライアント2が電波強度を測定する様子を示す。
図2には、Wi−Fiの電波100Aが届く範囲、BLEの電波200A,200B,200Cが届く範囲、および近接型発信機の電波300A,300B,300C,300D,300Eが届く範囲が図示されている。近接型発信機としては近接型のBLE発信機を用いることができる。
図2において、測位クライアント2は、Wi−Fiの電波100A、BLEの電波200A、および近接型発信機の電波300Aを受信し、各電波から取得できるIDと電波強度をセンサ情報として測位サーバ1に送信する。なお、測位サーバ1での学習用の正解データの収集が完了した後に近接型発信機は撤去する。以下、測位サーバ1と測位クライアント2について説明する。
【0022】
測位サーバ1は、受信部11、学習用ビーコン情報DB(データベース)12、モデル生成部13、モデルDB14、位置推定部15、および送信部16を備える。測位サーバ1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは測位サーバ1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0023】
受信部11は、測位クライアント2からセンサ情報と端末情報を受信する。センサ情報は、測位クライアント2が備えるセンサが測定した情報であり、例えばWi−FiやBLEのIDと電波強度、屋内に設置された超音波発信機のIDと音波強度がある。端末情報は、測位クライアント2として用いる携帯端末を表す情報であり、例えばOS種別、OSのバージョン、端末の機種名がある。
【0024】
学習用ビーコン情報DB12は、近接型発信機のIDと近接型発信機の正確な設置位置情報とを対応付けた学習用ビーコン情報を格納する。
【0025】
モデル生成部13は、測位クライアント2から受信した情報に基づいて、端末情報毎に、センサ情報を入力として位置を推定する学習モデルを生成・更新する。測位クライアント2から受信した情報に近接型発信機が出力した電波の情報が含まれるときは、学習用ビーコン情報DB12を参照し、その近接型発信機のIDに対応する近接型発信機の設置位置情報を取得し、取得した設置位置情報および近接型発信機の電波の情報以外のセンサ情報を教師データとして学習モデルを生成・更新する。天候や人の有無などの環境情報を含めて学習モデルを生成・更新してもよい。天候は測位する建物内で共通するので、例えば天気予報サイトなどから現在の天候の情報を取得してもよい。人の有無についても、測位する建物内を撮影した画像を解析して取得してもよい。あるいは、環境情報を測位クライアント2から受信してもよい。
【0026】
学習モデルを生成する機械学習の例としては、非特許文献1に記載のNon−negative Multiple Matrix Factorization(NMMF)を用いた多次元機械学習技術や、Self−Organization Incremental Neural Network(SOINN)、Deep Neural Networks(DNN)を利用することができる。
【0027】
モデルDB14は、端末情報毎に、モデル生成部13で生成した学習モデルを格納する。
【0028】
位置推定部15は、モデルDB14に格納された、測位クライアント2から受信した端末情報に対応する学習モデルを用い、測位クライアント2から受信したセンサ情報を入力として位置を推定する。位置の推定に環境情報を含めてもよい。なお、測位クライアント2から受信した端末情報に対応する学習モデルがモデルDB14に存在しないときは、測位クライアント2に類似する端末(例えばOSやベンダが同じ端末)の学習モデルや汎用の学習モデルを用いる。
【0029】
送信部16は、位置推定部15が推定した位置を測位クライアント2に送信する。
【0030】
測位クライアント2は、センサ情報収集部21、学習用ビーコン情報収集部22、端末情報収集部23、送信部24、および受信部25を備える。測位クライアント2として、スマートフォンなどの携帯端末を利用できる。学習時には、様々な種類の測位クライアント2を用いる。
【0031】
センサ情報収集部21は、Wi−Fiの電波、BLEの電波、あるいは超音波発信機が発信する超音波を受信し、電波や超音波の発信元を示すIDと電波強度および音波強度を収集する。
【0032】
学習用ビーコン情報収集部22は、近接型発信機の電波を受信し、近接型発信機のIDと電波強度を収集する。
【0033】
端末情報収集部23は、測位クライアント2のOS種別、OSのバージョン、機種名などの端末情報を収集する。
【0034】
送信部24は、学習時には、センサ情報収集部21と学習用ビーコン情報収集部22が収集したセンサ情報と端末情報収集部23が収集した端末情報を測位サーバ1に送信する。送信部24は、測位サーバ1に位置を尋ねるときには、センサ情報収集部21が収集したセンサ情報と端末情報収集部23が収集した端末情報を測位サーバ1に送信する。
【0035】
受信部25は、測位サーバ1に位置を尋ねたときに、測位サーバ1が推定した位置情報を受信する。
【0036】
次に、測位サーバ1の動作について説明する。
【0037】
図3は、測位サーバ1が学習モデルを生成・更新する処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
測位サーバ1は、測位クライアント2から近接型発信機のIDと電波強度を含むセンサ情報と端末情報を受信する(ステップS11)。
【0039】
測位サーバ1は、受信した端末情報に対応する学習モデルが存在するか否か判定し(ステップS12)、測位クライアント2に対応する学習モデルが存在する場合はその学習モデルを選択する(ステップS13)。
【0040】
測位クライアント2に対応する学習モデルが存在しない場合は、測位サーバ1は端末情報の初期学習モデルを作成する(ステップS14)。ここで作成する初期学習モデルは、測位クライアント2とベンダ/OS種別が類似する端末の学習モデルを流用する。
【0041】
測位サーバ1は、学習用ビーコン情報DB12を参照し、センサ情報に含まれる近接型発信機のIDに対応する設置位置情報を取得して、測位クライアント2の位置を特定する(ステップS15)。
【0042】
測位サーバ1は、ステップS15で特定した位置について測位クライアント2から受信したセンサ情報(学習後に取り除かれる近接型発信機の電波の情報を除く)を正解データとして選択した学習モデルを更新する(ステップS16)。
【0043】
図4は、測位サーバ1が位置を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
測位サーバ1は、測位クライアント2からセンサ情報と端末情報を受信する(ステップS21)。
【0045】
測位サーバ1は、受信した端末情報に対応する学習モデルが存在するか否か判定し(ステップS22)、測位クライアント2に対応する学習モデルが存在する場合はその学習モデルを選択する(ステップS23)。
【0046】
測位クライアント2に対応する学習モデルが存在しない場合は、測位サーバ1は汎用の学習モデルを選択する(ステップS24)。選択する汎用の学習モデルとして、測位クライアント2とベンダ/OS種別が類似する端末の学習モデルを選択してもよい。
【0047】
測位サーバ1は、選択した学習モデルを用い、測位クライアント2から受信したセンサ情報を入力として測位クライアント2の位置を推定する(ステップS25)。
【0048】
測位サーバ1は、推定した位置を測位クライアント2に送信する(ステップS26)。
【0049】
上記では、BLEを用いた近接型発信機を設置して学習する例を説明したが、近接型発信機としてNear Field Communication(NFC)を利用した駅構内の改札や店舗内の決済手段を用いてもよい。測位クライアント2はNFCの電波の情報を測位サーバ1に送信し、測位サーバ1は、NFCの電波の情報から測位クライアント2の位置を特定する。測位サーバ1の学習用ビーコン情報DB12に、改札や決済手段などのように電波の届く範囲が限られて測位クライアント2の位置が特定できる装置のIDと設置位置情報を格納しておく。測位サーバ1は、測位クライアント2から受信したセンサ情報に学習用ビーコン情報DB12に格納された装置のIDに対応する情報が含まれている場合、その装置の設置位置情報を学習用ビーコン情報DB12から取得し、受信したセンサ情報で学習モデルを追加学習する。
【0050】
また、進んだ距離や方向を正確に得ることができる電動車いすや自走式ロボットを位置情報把握ステーションとして利用し、そこから得られた情報を用いて学習モデルを精緻化してもよい。例えば、近接型発信機を設置した電動車いすを改札や建物の入口などの位置が特定できる場所から移動させて、測位サーバ1の学習用ビーコン情報DB12に格納された設置位置情報を電動車いすの位置に合わせて更新する。測位クライアント2は電動車いすに設置された近接型発信機から受信した電波の情報を含むセンサ情報と車いすの位置を測位サーバ1に送信し、測位サーバ1は電動車いすの位置から測位クライアント2の位置を特定する。位置情報把握ステーションは移動した位置を正確に把握できれば良く、電動車いすや自走式ロボット以外の装置を位置情報把握ステーションとして利用してもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態によれば、測位サーバ1は、正確な位置を特定した近接型発信機のIDと近接型発信機の設置位置情報とを対応付けた学習用ビーコン情報を格納する学習用ビーコン情報DB12を備え、測位クライアント2から近接型発信機が出力した電波の情報とセンサ情報を受信すると、近接型発信機の電波の情報から測位クライアント2の位置を特定するとともに、特定した位置についてセンサ情報を正解データとして学習モデルを生成する。測位クライアント2からセンサ情報が送信されて位置の問い合わせがあったときは、センサ情報を入力として学習モデルを用いて測位クライアント2の位置を推定する。これにより、学習時に測位クライアント2に現在位置を入力する必要がなくなるので、屋内での測位に用いる学習データを生成するときの正解データを容易に収集することができる。
【0052】
本実施の形態によれば、測位サーバ1は測位クライアント2から端末情報を受信し、端末情報毎に学習モデルを生成することにより、より精度の高い測位が可能となる。
【0053】
本実施の形態によれば、近接型発信機として改札や決済手段や車いすを用いることで、測位クライアント2が改札や決済手段に近接するときに追加学習することができるので、人の流れの変化など状況の変化に対応させて測位の精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…測位サーバ
11…受信部
12…学習用ビーコン情報DB
13…モデル生成部
14…モデルDB
15…位置推定部
16…送信部
2…測位クライアント
21…センサ情報収集部
22…学習用ビーコン情報収集部
23…端末情報収集部
24…送信部
25…受信部