特許第6093797号(P6093797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093797
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】屋根の防湿構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/66 20060101AFI20170227BHJP
   E04B 7/06 20060101ALI20170227BHJP
   E04B 7/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   E04B1/66 A
   E04B7/06 B
   E04B7/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-74051(P2015-74051)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-194207(P2016-194207A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】592190969
【氏名又は名称】株式会社アールシーコア
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(74)【代理人】
【識別番号】100120488
【弁理士】
【氏名又は名称】北口 智英
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康史
【審査官】 多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−054413(JP,A)
【文献】 特開平06−248745(JP,A)
【文献】 特開平07−286418(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3039397(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62−1/99
E04B 7/02−7/06
E04D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の防湿構造であって、
前記屋根は、屋根の傾斜に沿って設けられた垂木と、該垂木を支持し、水平かつ外壁の中心線のうち少なくとも一つに対して平行に設けられた垂木支持材と、を有し、
前記各垂木と該垂木が載置される前記垂木支持材との間に、防湿シートが挟まれているとともに、該垂木の下面のみが該防湿シートで覆われていることを特徴とする屋根の防湿構造。
【請求項2】
前記各垂木と前記垂木支持材とが交わる位置に、該垂木と該垂木支持材とが係合するように該垂木の下面に切り欠きが設けられていることを特徴とする請求項1記載の屋根の防湿構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防湿構造を備えた屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋根に設けられる防湿構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の木造建築において、最上階の天井を勾配天井とし、母屋や登り梁などを室内側に見せる構造とする際には、通常よりも成の高い垂木を母屋、棟木等の桁材に載設していした。そして、前記垂木と垂木との間に挟まれた空間に断熱材等を敷設し、防湿シートを室内側から貼り、最後に天井仕上げ材を張って天井としていた。この際、前記桁材と垂木の交差部は、垂木勝ちに桁材の垂木載設箇所が切り欠かれており、防湿シートの敷設面は桁材によって分断されていた。そのため、防湿シートと桁材との接合箇所を気密テープで留めて防湿シートを貼っていた。
また、複数の壁パネルと天井面材を有するユニット建物において、水平な天井に対して、気密シートを壁パネルと天井面材で挟む特許文献1の建物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−352115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、防湿シ−トは桁材によって分断されてしまうため、防湿シートに隙間が生じてしまう可能性や、垂木と桁材との継ぎ目部位から湿気が上ってしまうことがある。また、防湿シ−トと桁材とを気密テープで留めつける作業は、高所でかつ上を向きながら行うため、熟練工が行う上でも困難を要する。
そこで、高い気密性を有する防湿構造の提供と、防湿シ−トを容易に貼ることができ、高所での作業を簡易化できる、屋根の防湿構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(第1の発明)
本発明における第1の発明は、屋根の防湿構造であって、
前記屋根は、屋根の傾斜に沿って設けられた垂木10と、該垂木10を支持し、水平かつ外壁の中心線のうち少なくとも一つに対して平行に設けられた垂木支持材20とを有し、
前記各垂木10と該垂木10が載置される前記垂木支持材20との間に、防湿シート30が挟まれているとともに、該垂木10の下面のみが該防湿シート30で覆われていることを特徴とする。
【0006】
ここで、「外壁の中心線」とは、壁面の上辺と平行な線であって、外壁の中心を通る線である。
また、「垂木支持材20」とは、棟木22、母屋21、軒桁等の桁材だけでなく、垂木10を支持するのであれば、壁パネル、ログ壁、コンクリート壁等のことも指す。
ここで用いる防湿シート30は、垂木支持材20と垂木10との間に挟まれた際に、はみ出るような幅であることが望ましい。
【0007】
また、本発明における防湿構造及び防湿構造を有した屋根は次のように形成される。
まず、垂木支持材20の上に防湿シート30を載せる。その後、垂木10を該防湿シート30の上に載設する。その後、垂木10と垂木支持材20で囲まれた空間に断熱材等を敷き詰め、防湿シート30を断熱材等に貼り付ける。このとき、防湿シート30が垂木支持材20と垂木10からはみ出ているため、はみ出た防湿シート30と重なるように防湿シート30を貼り、継ぎ目位置に気密テープを貼ることで、高い気密性を有しながら、防湿シート30を天井全面に貼ることができる。このように、本発明の防湿構造は、垂木10と垂木支持材20との間に防湿シート30が挟まっているため、垂木10と垂木支持材20との間から上がる湿気を防ぐことができ、かつ本発明の防湿構造を用いることで、天井全面への防湿シート30の貼り付け作業が容易になる。
【0008】
(第2の発明)
本発明における第2の発明は、第1の発明に加えて、
前記垂木10と前記垂木支持材20とが交わる位置に、該垂木10と該垂木支持材20とが係合するように該垂木10の下面12に切り欠き11が入っていることを特徴とする。
ここで、垂木10に切り欠き11が設けられているため、垂木支持材20と係合して、垂木10の長手方向の位置決めが行われるほか、防湿シート30を支えるため、前述の防湿シート30の貼り付け作業が容易になる。
また、垂木10の切り欠き11は、現場でつくっても良いが、改め所定の長さの位置でプレカットしておく方が望ましい。これにより、大幅な工期短縮となる。
【0009】
(第3の発明)
本発明における第3の発明は第1又は2の発明にかかる防湿構造を備えた屋根である。
前述のように第1又は第2の発明にかかる防湿構造を備えた屋根は、屋根を作る際に工期が短くて済むため、コストを抑えた屋根を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
前述のように、垂木と垂木支持材との間に防湿シートを挟むため、垂木と垂木支持材との間から上がる湿気を防ぐことができる。また、気密テープで留めつける箇所は、防湿シート同士だけであり、複雑な貼り付け作業を省くことができ、作業を簡易化できる。
加えて、垂木に切り欠きが入っているため、施工現場で垂木支持材に垂木を掛け渡す際に、容易に位置決めを行え、施工効率が上がり、工期短縮となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】垂木と垂木支持材(母屋)との載設部における断面図(A)と底面図(B)。
図2】垂木と垂木支持材(棟木)との載設部における断面図(A)と底面図(B)。
図3】防湿テープのかけられた垂木支持材の断面図(A)と平面図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態における防湿構造は、図示しない木造の建物における、図示しない切妻屋根に適用され得るものであって、垂木10と垂木支持材20とが交わる部位に適用され得る。本発明の実施の形態は、切妻屋根としているが、本発明を限定するものではなく、折れ屋根、片流れ屋根等の屋根に対しても同様である。
【0013】
(母屋21及び垂木10)
図1(A)に本実施の形態における屋根構造の、垂木支持材20の一つである母屋21及び垂木10の載設部を示す。
屋根構造の載設部は、断面が長方形の母屋21と、前記母屋21の上部にかけられた防湿シート30と、前記防湿シート30を前記母屋21とで挟むように載設された垂木10とからなる。
垂木10には、母屋21と係合するように、切り欠き11が設けられており、この切り欠き11と母屋21とが係合することで、垂木10は母屋21の上に載設される。ここで、切り欠き11は、母屋21の角部にぴったりと係合するよう、開き角90度となっている。
【0014】
(棟木22及び垂木10)
図2に本実施の形態における屋根構造の、垂木支持材の一つである棟木22及び垂木10の載設部を示す。
棟木22には、垂木10が棟木22を挟んで対向するように2本ずつ載設されており、図示しないものの、2本一組の垂木10が棟木22の長手方向に沿って複数本載設されている。対向するように載設された一組の垂木10同士の継手部分は、滑り刃継ぎによって継がれている。ここで、2本の垂木10が継がれる面を密着面13とすると、垂木10の密着面13と下面12によって設けられた角には、棟木22とぴったり係合するように、開き角90度の切り欠き11が設けられている。また、棟木22と垂木10との間には、母屋21と垂木10と同様、防湿シート30が挟まれている。
【0015】
(防湿シート30)
防湿シート30は、垂木支持材20の上面に図3のように、垂木支持材20の長手方向に対して一繋ぎにかかっている。
前記防湿シート30が前記垂木支持材20の上面にかけられた後に、図1又は図2に示すように、垂木10が前記防湿シートの上に載設される。そのため、防湿シート30は垂木10の重みによって、垂木10と垂木支持材20との間に隙間なく固定される。その後、図示しない断熱材を各垂木10と各垂木支持材20とで囲まれた枠の中に敷き詰める。そして、図1(B)及び図2(B)のように、垂木10に挟まれていない防湿シート30と重なるように防湿シート30を貼り付け、防湿シート30同士を気密テープ40で留めつける。
【0016】
(作用・効果)
以上のように設けられた屋根は、気密性が高いため、結露が生じにくく、室内の温度を一定に保つことができることが期待される。また、防湿シート30同士を気密テープ40で貼り合わせる作業のため、熟練工でなくとも簡単かつ正確に防湿シート30を貼ることができる。
また、垂木10に切り欠き11が設けられているため、垂木10の位置決めが容易である。前記切り欠き11を事前にプレカット加工してから現場で組み立てることで、容易に位置決めができ、工期の短縮にもつながる。
なお、本実施の形態においては、垂木支持材20を母屋21及び棟木22としたが、垂木を支持する部材であれば壁パネル、ログ壁及び軒桁であってもよい。
【符号の説明】
【0017】
10 垂木 11 切り欠き
12 下面 13 密着面
20 垂木支持材 21 母屋
22 棟木 30 防湿シート
40 気密テープ
図1
図2
図3