【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ヌオーヴァ アカデミア ディ ベッレ アルティ ア ミラノの卒業論文 平成27年7月13日発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補助椅子は、前記ハンドリムに取り付けられる取付本体部を備え、前記取付本体部に前記座面構成部材の一端部が第1ヒンジを介して取り付けられる一方、前記座面構成部材の他端部には第2ヒンジを介して前記脚部構成部材が取り付けられるとともに、前記座面構成部材には、前記脚部構成部材を収容可能な溝部が形成されており、
前記収容状態では、前記座面構成部材が前記第1ヒンジを介して前記駆動輪と略平行となるまで回動されてなる一方、前記脚部構成部材が前記第2ヒンジを介して前記駆動輪と略平行となるまで前記座面構成部材とは反対向きに回動されて前記座面構成部材の前記溝部内に収容され、
前記収容状態から前記展開状態に切り替える際には、前記第2ヒンジを介して前記脚部構成部材を前記座シートの幅方向外側に向かって回動させつつ、前記第1ヒンジを介して前記座面構成部材を前記座シートの幅方向外側に向かって前記脚部構成部材とは反対向きに回動させることで、前記切り替えが可能な構成であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の車椅子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この他にも、起立補助シート付車椅子、リクライニング付車椅子、頭頸部サポート具付車椅子、肘掛けの着脱が可能な車椅子、買い物かごが取り付け可能な車椅子、押し手の高さ調節が可能な車椅子など、車椅子利用者や介護者の利便性に富んだものは数多く知られている。しかしながら、いずれも利用者の快適さや、介護者の利便性に視点が置かれたものであり、特に、車椅子利用者が可能な限り自分で行えるよう自活意思を支援・尊重すべく利用者独立の発想に基づくものが多い。
【0005】
ところで、車椅子利用者が自力で走行可能な場合であっても、介護者が付き添う場合は多くある。この場合、屋外で車椅子利用者が停止し休憩する場合、付添人が座ることは想定されておらず、車椅子利用者の近くで立ったまま付き添う状態を強いられることとなる。また、例えば病院の待合室等でも、車椅子専用の待機スペースはあるが、そのような場所に付添人用の椅子が設けられていることは少なく、車椅子利用者と付添人が別々の場所に離れて座ることとなる。本願発明者は、特に車椅子利用者の気持ちに寄り添うとともに、利用者と付添人とが生活行動を共にできることに重点をおき、一緒に座る・話す・休憩すること等が実現可能な車椅子を発明するに至った。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、利用者と第三者が共に着座可能となる構成を備えた車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、利用者が着座する座シートの幅方向外側に配される駆動輪の更に外側に、前記駆動輪を操作するためのハンドリムが設けられた車椅子であって、前記ハンドリムに対し、補助椅子が着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
このような車椅子によると、座シートの幅方向(車椅子の進行方向に対する左右の幅方向)外側に設けられたハンドリムに対し補助椅子が取り付けられているため、車椅子利用者用の座シートとは別に、第三者が着座する椅子が確保されることとなる。これにより、車椅子利用者と第三者が共に着座することが可能となる。また、通常自走式の車椅子に備えられているハンドリムを補助椅子の取付箇所として利用しているため、補助椅子用の取付部を新たに設ける必要がない。また、補助椅子はハンドリムに対して着脱可能に取り付けられているため、不要時にはハンドリムから取り外すことも可能である。
【0009】
上記車椅子において、前記ハンドリムは、輪状をなすとともに前記駆動輪に対して略平行に配され、その直径が前記駆動輪の直径よりも小さいものとされ、前記補助椅子は、前記ハンドリムに対して、折り畳んで前記駆動輪と略平行な板状とされる収容状態と、折り畳みから展開されて着座可能とされる展開状態との間を、切り替え自在に取り付けられ、前記収容状態において、その平面視における最大外径が前記ハンドリムの直径以下とされているものとすることができる。
【0010】
このような車椅子によると、補助椅子は、その収容状態においては、ハンドリムと略平行かつ、その平面視における最大外径が駆動輪の直径よりも小さいハンドリムの直径内に収まるように収容されるため、駆動輪を操作すべくハンドリムを回転させる際にも補助椅子が回転操作の障害となりにくい。これにより、補助椅子がハンドリムに対して取り付けられた収容状態においても車椅子の走行が可能となる。また、補助椅子はその収容状態において、駆動輪やハンドリムと略平行に配され略平坦な板状をなすため、座シートの幅方向において収まり良く、意匠性に優れたものとなる。
【0011】
上記車椅子において、前記補助椅子は、前記収容状態において、平面視における最外周部が前記ハンドリムの輪状に倣う曲線状とされているものとすることができる。
【0012】
このような車椅子によると、補助椅子の収容状態において、平面視における最外周部がハンドリムの輪状に倣うため意匠性に優れる。また、駆動輪の回転操作の際、ハンドリムと補助椅子の最外周部を共に把持することができるため、補助椅子が取り付けられた状態においても、駆動輪の回転操作をスムーズに行うことができる。
【0013】
上記車椅子において、前記補助椅子は、前記展開状態において座面を構成する座面構成部材と脚部を構成する脚部構成部材とがヒンジを介して連結されてなり、前記展開状態では、前記脚部が鉛直方向に起立される一方、前記座面が水平に展開され、前記展開状態から前記収容状態に折り畳まれる際には、前記脚部構成部材は、その接地面が上方に指向するまで回動されつつ前記ハンドリム側に収容される一方、前記脚部構成部材に対して前記ヒンジを介して連結された座面構成部材は、前記脚部構成部材の回動に伴って前記脚部構成部材に対して相対的に折り畳まれ前記ハンドリム側に収容されるものとすることができる。
【0014】
このような車椅子によると、収容状態と展開状態と間の切り替えをスムーズに行うことが可能となる。
【0015】
上記車椅子において、前記収容状態から前記展開状態に展開される際には、前記脚部構成部材は、その収容状態からその先端が引き出され前記座シートの幅方向外側に向かって180度回転するように展開されることで、鉛直方向に起立して前記先端が接地し、前記座面構成部材は、前記ヒンジを介して連結されている前記脚部構成部材が前記展開状態とされることに伴い、その収容状態から前記座シートの幅方向外側に向かって引き出し展開されることで展開状態とされ、前記脚部に対して略垂直となるものとすることができる。
【0016】
このような車椅子によると、補助椅子の展開状態において、脚部構成部材は鉛直方向に起立してその先端が接地し、座面構成部材は該脚部に対して略垂直となるため、補助椅子を適正な角度で組み立てることが可能となり、座面上に着座する人の体重を支持することができる。
【0017】
上記車椅子において、前記補助椅子は、前記ハンドリムに取り付けられる取付本体部を備え、前記取付本体部に前記座面構成部材の一端部が第1ヒンジを介して取り付けられる一方、前記座面構成部材の他端部には第2ヒンジを介して前記脚部構成部材が取り付けられるとともに、前記座面構成部材には、前記脚部構成部材を収容可能な溝部が形成されており、前記収容状態では、前記座面構成部材が前記第1ヒンジを介して前記駆動輪と略平行となるまで回動されてなる一方、前記脚部構成部材が前記第2ヒンジを介して前記駆動輪と略平行となるまで前記座面構成部材とは反対向きに回動されて前記座面構成部材の前記溝部内に収容され、前記収容状態から前記展開状態に切り替える際には、前記第2ヒンジを介して前記脚部構成部材を前記座シートの幅方向外側に向かって回動させつつ、前記第1ヒンジを介して前記座面構成部材を前記座シートの幅方向外側に向かって前記脚部構成部材とは反対向きに回動させることで、前記切り替えが可能な構成であるものとすることができる。
【0018】
上記車椅子において、前記脚部構成部材の長さ寸法が、前記座面構成部材における最長部の長さ寸法よりも大きく構成されているものとすることができる。
【0019】
補助椅子が展開されて着座可能とされる展開状態にある場合、その座面高は、座面構成部材と取付本体部とを連結している第1ヒンジが上方を向く状態において、該第1ヒンジから地面までの長さによって決定される。ここで、脚部構成部材の長さ寸法を、座面構成部材における最長部の長さ寸法よりも大きく構成しており、かつ脚部構成部材を座シートの幅方向外側に向かって約180度回転するように展開させるため、その先端をより確実に接地させることが可能となる。つまり、脚部構成部材の長さ寸法のうち、座面構成部材における最長部の長さ寸法よりも大きく構成したその寸法差が、補助椅子のうち下方に位置する最外周部と地面との間の距離を稼いでおり、補助椅子を適正な角度で組み立てることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、利用者と第三者が共に着座可能となるよう補助椅子を備えた車椅子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、
図1乃至
図7を用いて説明する。なお、
図1のFとは車椅子の進行方向における前方を意味し、Rとは車椅子の進行方向における後方を意味する。同じく前方、後方とは車椅子の進行方向における前方、後方を意味し、外側とは座シートの幅方向における外側を意味するものである。
図1に示すように、車椅子1は、自走式タイプのものであり、車椅子1の骨格となるフレーム部11と、利用者が着座する座シート12及び背もたれ13を備えた座席部123と、フレーム部11及び座席部123の左右外側に配される一対の駆動輪20,20と、各駆動輪20の前方で車椅子の移動方向を左右する一対の前輪(キャスタ)14,14とを含んで構成されている。また、背もたれ13の上方における左右両側には、介護者が車椅子を移動・操作するときに握る一対の手押しハンドル15,15が設けられている。一方、座シート12の前方下方には、利用者の足を支えるためのレッグサボート15や、足を載せておくためのフットサポート16が設けられている。
【0023】
また、各駆動輪20の更に外側(座シートの幅方向における外側)には、駆動輪20を操作するためのハンドリム30がそれぞれ設けられている。このハンドリム30,30は、輪状をなすとともに各駆動輪20に対して略平行に配されており、利用者が左右の手でそれぞれ握って前方に押すように回転させることで左右の駆動輪20,20を前進回転させ車椅子1を前進させるものである。なお、その直径L3は駆動輪20の直径L2よりも小さいものとされている(
図7参照)。このハンドリム30,30のうち、進行方向における左側のハンドリム30に対し、補助椅子50が着脱可能に取り付けられている。具体的には、布状のマジックテープ(登録商標)による固定部材(補助椅子固定部材40)を用いて、折り畳まれ平坦な板状となった補助椅子50の上端部51の一部(最外周部を含む)とハンドリム30の一部とを共に巻きつけるように、また下端部52の一部(最外周部を含む)とハンドリム30の一部とを共に巻きつけるように、それぞれ縛り付けることによって、ハンドリム30に対し取り付けられた状態となっている。なお、補助椅子固定部材40はこれに限らず他の形態及び他の固定態様を用いても良い。
【0024】
このように、補助椅子50が折り畳まれ駆動輪20及びハンドリム30と略平行となるように、ハンドリム30に対して取り付けられた収容状態においては、一枚の板状をなし、座シート12の幅方向(ここでは車椅子の進行方向に対する左方向)において収まり良いものとなっている。なお、収容状態における補助椅子50の厚みは、ここでは約4センチに設定されている。
【0025】
続いて、補助椅子50についてその詳細を説明する。ここでは、収容状態かつ補助椅子50が展開される直前の姿勢、つまり
図1に示した状態を正規位置として、上下左右とはその平面視における上下左右をそれぞれ言うものとし、上端部とは上方に位置するように収容される一端部を言い、下端部とは下方に位置するように収容される他端部を言うものとする。
補助椅子50は、
図1,3に示すように、その収容状態における平面視において略矩形状をなし、その長手方向における両端部(最外周部を含む上端部51,最外周部を含む下端部52)がハンドリム30の輪状に倣う曲線状とされている一方、その短手方向における両端部53,53は、直線状とされている。言い換えると、長方形の短辺がハンドリム30の輪状に倣う丸みを帯びた一枚の板状をなしている。なお、この平面視における長手方向における最長部L5の長さ(最大外径)が、ハンドリム30の直径L3に相当するものとされている(
図7参照)。なお、この最長部L5の長さ(最大外径)がハンドリム30の直径L3以下とされていることが必要である。
【0026】
補助椅子50は、
図2,3に示すように、ハンドリム30に対して取り付けられる取付本体部60と、展開されて着座可能な展開状態とされた際に座面を構成する座面構成部材70,70と、同じく展開状態において脚部を構成する脚部構成部材80とを含んで構成されており、すべて同じ厚みとされている。取付本体部60は、補助椅子の外径を決定する略矩形状をなす枠体66と、該枠体の中に形成されその展開状態において着座する人員の腰部や大腿部を側方(ハンドリム30側)からカバーする平板部65とを含んでなる。この平板部65は、枠体66のうち上端部61(補助椅子50における上端部51に相当)寄りにその内側面61Nより所定の間隔を空けた位置に設けられており、平板部65の左右端部63,63は枠体の長辺(補助椅子50の短手方向における両端部53,53に相当)と連なるような形状となっている。
【0027】
これにより、取付本体部60のみを平面視すると、平板部65の上方には上側溝部S1が形成されることとなり、人員が指を挿入して上端部側の枠体61(51)を掴みやすい構成となっている。なお、この上側溝部S1を構成する所定の間隔とは、ハンドリム30に対して取り付けるための布状の補助椅子固定部材40を、上端部51側の枠体66に巻きつけてもなお人員が指を挿入できるだけの十分な間隔とされている。一方、平板部65の下方には上方の上側溝部S1に対し相対的に大きな空間S2が形成されることとなる(
図5,
図6参照)。平板部65における上端部651は、枠体66における上端部61(51)の曲線に倣った形状とされる一方、下端部652は、略水平な直線状とされている。また、下端部652における略中央には、後述する脚部構成部材80の先端81(上端部)を収容するための脚部先端用凹部68が設けられている。この取付本体部60は、補助椅子50の展開状態においても展開されることのない部材である。
【0028】
座面構成部材70は、2枚の左右対称に構成された長手状の板状部材からなり、枠体66の中において平板部65の下方に形成された空間S2を埋めるような形状とされている。具体的には、各座面構成部材70の短手方向における両端部73,73は直線状とされ、取付本体部60の枠体66内に収容された状態においてその長辺と並行となるように配される。また、左右の各座面構成部材70の短手方向における長さは、それぞれ、枠体66内の短手方向における長さの半分以下に設計されている。
【0029】
各座面構成部材70の長手方向における上端部71(一端部)は直線状とされ、第1ヒンジP1を介して取付本体部60の平板部65における下端部652にそれぞれ連結されている。第1ヒンジP1,P1は、各座面構成部材70における上端部71と、平板部65における下端部652と、の間であって、収容状態における外側寄りに設けられている(
図1,6,7参照)。一方、長手方向における下端部72(他端部)は枠体66における下端部62(補助椅子50における下端部52に相当)に倣うような曲線を描くとともに、それぞれ収容状態における内側(中央側)寄りの一部のみが下方へと突出するような形状とされている。この突出箇所は、第2ヒンジP2を挿通可能とするための第2ヒンジ用突部75とされている。つまり、第2ヒンジ用突部75は、その長手方向における長さが、第2ヒンジ用突部が設けられていない箇所における長手方向における長さよりも相対的に長く設定されている。ただし、座面構成部材70,70を第1ヒンジP1,P1を介して取付本体部60の枠体66内に収容した状態においても、第2ヒンジ用突出部75の先端面75Mと枠体66における下端部62の内側面62Nとの間には所定の隙間が確保されるような長さ寸法とされている。これにより、座面構成部材70,70を取付本体部60内に収容してもなお、布状の補助椅子固定部材40を枠体66における下端部61(51)に巻きつけることが可能とされている。
【0030】
なお、第2ヒンジ用突部75が設けられていない箇所における長手方向における長さは、その収容状態において、下端部72が、枠体66における下端部62(52)の内側面62Nよりも所定の間隔を空けた位置となるように設計されている。このため、座面構成部材70,70を取付本体部60における空間S2内に収容した状態においてもなお、各座面構成部材70の下方であって第2ヒンジ用突出部75を除いた箇所に、人員が指を挿入して枠体66を掴めるよう下側溝部S3,S3がそれぞれ形成されるような構成となっている(
図2〜4参照)。
【0031】
これら2枚の座面構成部材70,70が、その上端部71,71は、第1ヒンジP1,P1を介して取付本体部60の平板部65における下端部652にそれぞれ連結されつつ、各第2ヒンジ用突部75を下方かつ内側に配した姿勢で枠体66の中(空間S2内)に収める際には、これら座面構成部材70,70の間に所定の間隔を確保し、直線状の溝部S4が形成されるように配する(
図4参照)。このようにして形成された溝部S4は、脚部構成部材80(平板部65の脚部先端用凹部68に収容される先端81箇所を除いた部分)を収容するための脚部用溝部S4であり、脚部構成部材80の形状に倣ったものとされている。
【0032】
このように左右の座面構成部材70,70を配することで、座面構成部材70には、脚部構成部材80を収容可能な脚部用溝部S4が形成されている、とも言える。これにより、座面構成部70,70と脚部構成部材80は、その収容状態において座シート12の幅方向に重畳することなく枠体66内に収まるような形状及び配置となっており、収容状態における補助椅子50が一枚の板状をなす構成となっている。なお、取付本体部60の平板部65であって収容状態における外側面には、脚部先端用凹部68が設けられている箇所の上方に、脚部構成部材80の先端を係止するための係止部69が設けられており、収容状態において車椅子1の走行による振動や脚部構成部材80の自重によって、脚部構成部材80が展開してしまわないような構成となっている。
【0033】
脚部構成部材80は、長尺状の板部材からなり、展開され脚部として機能する際に十分な強度を確保できるような太さ寸法とされている。この脚部構成部材80は、その展開状態において基部となる下端部82側が、各座面構成部材70の第2ヒンジ用突部75に第2ヒンジP2を介して連結されている。具体的には、各座面構成部材70の第2ヒンジ用突部75,75の間に脚部構成部材80の下端部82を配し、これらを左右方向に貫通するように第2ヒンジP2が通されている。一方、その展開状態において接地する先端となる上端部81側には、その先端面81Mにゴム製の滑り止め部材88,88が2つ並列するように設けられている。以後、「脚部の全長」「脚部構成部材の全長」と言う際には、この滑り止め部材88,88を含む脚部構成部材80の全長を言うものとする。
【0034】
図3に示すように、脚部構成部材80の全長(長さ寸法)L8は、座面構成部材70における最長部の長さの寸法(第2ヒンジ用突部75が設けられている箇所における全長)L7よりも大きく構成されている。脚部構成部材80は、その収容状態において、基部(下端部82)が下方に位置する姿勢かつ第2ヒンジP2を介して座面構成部材70,70に連結された状態で、脚部用溝部S4内に収容され、その先端81は取付本体部60の平板部65における脚部先端用凹部68内に収容されている。つまり、脚部先端用凹部68内に収容される先端81の長さは、脚部構成部材80の全長L8と座面構成部材70の最長部における全長L7との寸法差D1である。また、この寸法差D1は、取付本体部60を構成する枠体66のうち最長部における下端部62(52)の外側面62M(52M)と駆動輪20の外側面(接地する面)20Mとの寸法差D2に相当するように設計されている(
図7参照)。また、脚部構成部材80の先端81付近であって、その収容状態において第1ヒンジP1,P1付近に相当する箇所には、脚部構成部材80を引き出す際に人員が指を挿入できるよう展開操作用孔部85が設けられている。
【0035】
ここで、取付本体部60と座面構成部材70,70と脚部構成部材80との互いの連結関係をみてみると、座面構成部材70,70の上端部(一端部)71,71が第1ヒンジP1,P1を介して取付本体部60に取り付けられる一方、座面構成部材70,70の下端部(他端部)72,72には第2ヒンジP2を介して脚部構成部材80が取り付けられている。つまり、取付本体部60の平板部65における下端部652には各第1ヒンジP1を介して各座面構成部材70の上端部71がそれぞれ連結され、これら座面構成部材70,70の下端部72,72には、第2ヒンジP2を介して脚部構成部材80の基部(下端部82)が連結されており、すべての部材が連なった状態とされている。そしてこれらの連なった各部材を第1ヒンジP1,P1及び第2ヒンジP2を利用して折り畳むことにより、ハンドリム30と略平行な板状に取り付け、収容状態とすることが可能とされている。またこれにより、補助椅子50をハンドリム30に取り付けた状態のままで、収容状態と展開状態との間を切り替え自在な構成とされている。補助椅子50は、一枚の略矩形状をなす板部材を部分的に複数切り抜いて、それぞれ座面構成部材70,70や脚部構成部材80を形成するような構成とされている、とも言える。
【0036】
<収容状態から展開状態への展開態様>
続いて、補助椅子50がその収容状態から展開状態へと展開される態様を
図4〜7を参照しつつ説明する。
展開状態とは、補助椅子50がハンドリム30に対して取り付けられた状態のまま、その折り畳み状態から展開された着座可能な状態を言う。収容状態から展開状態に展開する際には、補助椅子50を正規位置とした状態において、まず、
図4に示すように係止部69のロックを外した後、上方に位置する脚部構成部材80の展開操作用孔部85に指を挿入し、その先端81を外側へ(
図1における座シート12の幅方向外側へ)と引き出す。そして、
図5に示すように更に下端部82を含む脚部構成部材80全体を外側へと引き出すことに伴い、該下端部82に第2ヒンジP2を介して連結されている座面構成部材70,70の下端部72,72も外側へと引き出されることとなる。更に、脚部構成部材80及び座面構成部材70,70を外側へ引き出しつつ、第2ヒンジP2を利用して脚部構成部材80の先端81側を外側に向かって180度回転するように回動させ、最終的にその先端81が下方を向くように脚部構成部材80を鉛直方向に起立させ、その先端面81Mに設けられた滑り止め部材88,88の先端面88M,88Mを接地させる(
図6,7参照)。
【0037】
このとき脚部構成部材80が180度回転され、下端側に収容されていた下端部82が上方に移動することに伴って、該下端部82に第2ヒンジP2を介して連結されている座面構成部材70,70の下端部72,72が上方へと持ち上げられるような体勢となり、最終的に座面構成部材70,70が略水平姿勢となる。つまり、座面構成部材70,70は、第2ヒンジP2を介して連結されている脚部構成部材80が展開状態とされることに伴い、その収容状態から座シート12の幅方向外側に向かって引き出し展開されることで展開状態とされ、脚部に対して略垂直となる。言い換えると、第2ヒンジP2を介して脚部構成部材80を座シート12の幅方向外側に向かって回動させつつ、第1ヒンジP1,P1を介して座面構成部材70,70を座シート12の幅方向外側に向かって脚部構成部材80の回動方向(
図5のY1方向)とは反対向き(
図5のY2方向)に回動させることで、収容状態から展開状態への切り替えが可能となっている。
【0038】
こうして脚部構成部材80と座面構成部材70,70とが引き出され展開状態となった際、座面構成部材70,70は、収容状態では外側を向くように配されていた外側面70Uが上方を向く形で水平姿勢となり、その上に人が着座可能な座面として機能する。一方、脚部構成部材80は、座面及び該座面に着座する人を支持する脚部として機能する。展開状態では、
図7に示すように、脚部(脚部構成部材80)が鉛直方向に起立される一方、座面(座面構成部材70,70)が水平に展開されることとなる。ここで、上述したように、脚部構成部材80の全長L8と座面構成部材70の最長部における全長L7との寸法差D1は、取付本体部60を構成する枠体66のうち最長部における下端部62(52)の外側面62M(52M)と駆動輪20の外側面20M(接地する面)との寸法差D2に相当するように設計されている。このため、その収容状態においては接地する駆動輪20の直径L2よりも小さいハンドリム30の直径L3内(ひいては取付本体部60の枠体66内)に収まっている脚部構成部材80が、展開状態とされた際には、その先端面(接地面88M,88M)を確実に接地させることができる。また、脚部の長さ(L8)が、座面における第1ヒンジから地面までの座面高Hに相当するため、その先端面88M,88Mが接地した状態で、脚部によって支持される座面を水平姿勢に維持することが可能となる。
【0039】
<展開状態から収容状態への収容態様>
次に、この展開状態から、補助椅子50がその収容状態へと収容される態様を説明する。
簡潔に言うと、上述した展開動作を逆工程に行うことで、補助椅子50を収容状態とする。具体的には、脚部として機能している脚部構成部材80の先端面81Mに設けられた滑り止め部材88,88を地面から離隔させ、第2ヒンジP2を利用して先端81が上方に指向し基部(下端部82)が下方に指向するまで回動させる。また、基部に対して第2ヒンジP2を介して連結された座面として機能している座面構成部材70,70を、その下端部72,72(第2ヒンジP2付近)が下方に指向するように折り畳み、取付本体部60の枠体66(空間S2)内に収容する。回動させた脚部構成部材80もまた、その基部(下端部82)が下方に位置し、先端81が上方に位置するようにした状態で、脚部用溝部S4及び脚部先端用凹部68内に収容する。
【0040】
このように、脚部構成部材80は、その先端面(接地面88M,88M)が上方に指向するまで回動されつつハンドリム30側に収容される一方、脚部構成部材80に対して第2ヒンジP2を介して連結された座面構成部材70,70は、脚部構成部材80の回動に伴って脚部構成部材80に対して相対的に折り畳まれハンドリム30側に収容されることとなる。言い換えると、座面構成部材70,70が第1ヒンジP1,P1を介して駆動輪20と略平行となるまで回動されてなる一方、脚部構成部材80が第2ヒンジP2を介して駆動輪20と略平行となるまで座面構成部材70,70とは反対向きに回動されて座面構成部材70の溝部S4内に収容されることで、補助椅子50が収容状態となる。なお、補助椅子50の収容状態において、その上端部51側には上側溝部S1が形成され、下端部52側には下側溝部S3,S3が形成されているため、ハンドリム30と補助椅子50を一緒に把持することができ、駆動輪20の回転操作をスムーズに行い車椅子1を走行させることができる。
【0041】
続いて、上記実施形態による作用・効果について説明する。
上記のような車椅子1によると、座シート12の幅方向外側に設けられたハンドリム30に対し補助椅子50が取り付けられているため、車椅子利用者用の座シート12とは別に、第三者が着座する椅子が確保されることとなる。これにより、車椅子利用者と第三者が共に着座することが可能となる。また、通常自走式の車椅子に備えられているハンドリム30を補助椅子50の取付箇所として利用しているため、補助椅子50用の取付部を新たに設ける必要がない。また、補助椅子50はハンドリム30に対して着脱可能に取り付けられているため、不要時にはハンドリム30から取り外すことも可能である。
【0042】
上記のような車椅子1によると、補助椅子50は、その収容状態においては、ハンドリム30と略平行かつ、その平面視における最大外径L5が駆動輪20の直径L2よりも小さいハンドリム30の直径L3内に収まるように収容されるため、駆動輪20を操作すべくハンドリム30を回転させる際にも、使用されていない補助椅子50が回転操作の障害となりにくい。これにより、補助椅子50がハンドリム30に対して取り付けられた収容状態においても車椅子1の走行が可能となる。また、補助椅子50はその収容状態において、駆動輪20やハンドリム30と略平行に配され略平坦な板状をなすため、座シート12の幅方向(車椅子1の進行方向に対する左側幅方向)において収まり良く、意匠性に優れたものとなる。
【0043】
上記のような車椅子1によると、補助椅子50の収容状態において、平面視における最外周部51,52がハンドリム30の輪状に倣うため意匠性に優れる。また、駆動輪20の回転操作の際、ハンドリム30と補助椅子50の最外周部51,52を共に把持することができるため、補助椅子50が取り付けられた状態においても、駆動輪20の回転操作をスムーズに行うことができる。
【0044】
上記のような車椅子1によると、収容状態と展開状態と間の切り替えをスムーズに行うことが可能となる。また、上記のような車椅子1によると、補助椅子50の展開状態において、脚部構成部材80は鉛直方向に起立してその先端81が接地し、座面構成部材70,70は該脚部として機能する脚部構成部材80に対して略垂直となるため、補助椅子50を適正な角度で組み立てることが可能となり、座面上に着座する人の体重を支持することができる。
【0045】
また、補助椅子50が展開されて着座可能とされる展開状態において、その座面高Hは、座面構成部材70,70と取付本体部60とを連結している第1ヒンジP1,P1が上方を向く状態において該第1ヒンジP1,P1から地面までの長さによって決定される。ここで、脚部構成部材80の長さ寸法L8を、座面構成部材70,70における最長部の長さ寸法L7よりも大きく構成しており、かつ脚部構成部材80を座シート12の幅方向外側に向かって約180度回転するように展開させるため、その先端81をより確実に接地させることが可能となる。つまり、脚部構成部材80の長さ寸法L8のうち、座面構成部材70,70における最長部の長さ寸法L7よりも大きく構成したその寸法差D1が、補助椅子50のうち下方に位置する最外周部52(52M)と地面との間の距離D2を稼いでおり、補助椅子50を適正な角度で組み立てることが可能となる。
【0046】
<その他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、自走式タイプのものを用いて説明したが、この他、介護者が移動操作を行うことを前提とした車椅子(所謂介助用車椅子)や、電動車椅子や、子どもサイズの子ども用車椅子等あっても、駆動輪の外側にハンドリムが設けられた車椅子であれば、本願発明を用いることができる。
(2)上記実施形態では、進行方向における左側のハンドリムに対し、補助椅子を取り付けているが、進行方向における右側のハンドリムに対して補助椅子を取り付けても良い。
(3)補助椅子の材質には、木の他、軽量化や剛性確保を考慮し多種多様な材質を用いることが可能である。
【解決手段】利用者が着座する座シート12の幅方向外側に配される駆動輪20の更に外側に、前記駆動輪20を操作するためのハンドリム30が設けられた車椅子1であって、前記ハンドリム30に対し、補助椅子50が着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。