特許第6093854号(P6093854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093854エンドトキシン検出システムに基づく検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093854
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】エンドトキシン検出システムに基づく検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/51 20060101AFI20170227BHJP
   G01N 15/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   G01N21/51
   G01N15/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-516431(P2015-516431)
(86)(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公表番号】特表2015-519576(P2015-519576A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】CN2013077191
(87)【国際公開番号】WO2013185621
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年1月6日
(31)【優先権主張番号】201210196596.8
(32)【優先日】2012年6月14日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201310228888.X
(32)【優先日】2013年6月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514318116
【氏名又は名称】南京拓▲ちゅう▼医▲薬▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING TUOZHU PHARMACEUTICAL & TECH CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】彭国平
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−032436(JP,A)
【文献】 特開2004−061314(JP,A)
【文献】 特開平11−108822(JP,A)
【文献】 特表2006−505804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/51
G01N 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径多分布検出と粒径単一分布検出とに分けられ、
前記粒径多分布検出は、
レーザー源の強度を調節するステップ1−1と、
スキャンモードレギュレータを調節して、前記レーザー源をセグメントスキャンモードに設定するステップ1−2と、
一連の濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、各濃度の前記エンドトキシン標準溶液に対して粒径多分布検出を行うステップ1−3と、
半定量演算器における検出パラメータを設定することにより、各濃度の前記エンドトキシン標準溶液の濃度限界値を検出するステップ1−4と、
試料に応じて前記半定量演算器における検出パラメータを対応するように設定し、試料に対して粒径多分布検出を行い、検出結果において、20〜300nmの範囲内でエンドトキシンの粒径分布のピークが現れない場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より低くなり、エンドトキシンの粒径分布のピークが発生する場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より高くなるステップ1−5と、を含み、
前記粒径単一分布検出は、
前記レーザー源の強度を調節するステップ2−1と、
前記スキャンモードレギュレータを調節して、前記レーザー源を全分布スキャンモードに設定するステップ2−2と、
一連の濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、各濃度の前記エンドトキシン標準溶液に対して粒径単一分布検出を行うステップ2−3と、
前記半定量演算器における検出パラメータを設定することにより、各濃度の前記エンドトキシン標準溶液の濃度限界値を検出するステップ2−4と、
試料に応じて前記半定量演算器における検出パラメータを対応するように設定し、試料に対して粒径単一分布検出を行い、検出結果において、エンドトキシンの粒径分布のピークが20nm未満の場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より低くなり、エンドトキシンの粒径分布のピークが20nmを超える場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より高くなるステップ2−5と、を含むことを特徴とする、エンドトキシン検出システムに基づく検出方法。
【請求項2】
前記半定量演算器における検出パラメータは、増幅倍率、チャネル数、遅延係数、および速度係数を含むことを特徴とする、請求項に記載のエンドトキシン検出システムの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーによる粒径の検出に基づくエンドトキシン検出システムおよびそれに対応する検出方法に関し、細菌エンドトキシンの検出分野に属する。
【背景技術】
【0002】
細菌エンドトキシンはリポ多糖であり、リポソームとも称され、グラム陰性菌細胞の外壁成分として自然界に広く存在している。かかる物質が人体の血液中に入ると発熱を引き起こし、これは一般的に発熱反応と言われている。このような物質は人体への深刻な副作用を引き起こす恐れがあるため、薬物注射剤は厳しく管理する必要がある。
【0003】
現在、レーザー粒径検出器はエンドトキシンの検出に適用されていないが、我々が比較的感度の高いマルバーンNano ZSZEW3600型レーザー粒径分析器に対して分析を行ったところ、エンドトキシン濃度が10EU/ml以上の溶液中の粒子は検出できるが、注射剤中のエンドトキシンを検出するには条件を満たさなかった。レーザー粒径検出器は、粒子の異なる角度における光散乱信号が異なる点に基づいて二点以上の多点光散乱信号に対しては粒径の分析を行えるが、粒子の濃度に対しては検出を行うことができない。
【0004】
細菌エンドトキシンの検出は、定性的検出と定量的検出の二つのタイプに分けることができる。通常の検出方法はウサギを用いた方法であり、供試品をウサギの体内に静脈注入して、所定の時間内での体温の変化状況を観察する。かかる方法は外乱要因が多く、感度が悪く、特に消熱作用薬物や解熱・解毒系注射剤において偽陰性が生じる可能性がある。薬局方におけるエンドトキシンの検出はいずれもLAL法を採用しているが、かかる方法は準備時間が長く、検出に時間がかかり、コストが高く、かつ迅速、連続およびオンラインでの検出を実現することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、検出コストを低下させると共に検出速度を向上させるために、従来の技術に存在する短所に対して二種類のエンドトキシン検出システムおよびそれに対応する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一のエンドトキシン検出システムは、レーザー源、短焦点レンズ、回折格子、長焦点レンズ、検出セル、散乱光受信器、光電変換器、信号増幅器、信号プロセッサ、データ収集器、定量演算器、およびデータディスプレイを含み、レーザー源から出力された光が順に、短焦点レンズ、回折格子、および長焦点レンズを通過してから検出セルに入り、検出セルを透過した光が、散乱光受信器により受信されてから光電変換器に入り、光電変換器の出力信号が順に、信号増幅器、信号プロセッサ、およびデータ収集器を通過してから定量演算器に入ってエンドトキシン濃度を計算し、定量演算器の出力端はデータディスプレイに接続される。
【0007】
第一のエンドトキシン検出システムに基づく検出方法の内容は以下の通りである。
【0008】
三つ以上の異なる角度で溶液中のエンドトキシン粒子の散乱光信号の強度を検出し、光散乱方程式I=K・C・f(D)・f(E)に基づいて、そのうちの任意の二つの角度の散乱光信号によりf(D)とf(E)を計算し、光散乱方程式をS=f・C+gに簡略化し、さらに残りの角度の散乱光信号を用いて溶液中のエンドトキシン濃度を計算して、定量的検出を実現する。
【0009】
上記方程式において、Iは散乱光信号の強度、Kは比例定数、Cはエンドトキシン濃度、f(D)は粒子の粒径パラメータ関数、f(E)は散乱スペクトル関数であり、SはIのIn線形化データ処理により得られる光散乱度であり、関連係数はf=K・f(D)・f(E)であり、gは補正パラメータである。
【0010】
第二のエンドトキシン検出システムは、レーザー源、光源強度調節器、スキャンモードレギュレータ、短焦点レンズ、回折格子、長焦点レンズ、検出セル、散乱光受信器、光電変換器、信号増幅器、信号プロセッサ、データ収集器、半定量演算器、およびデータディスプレイを含み、レーザー源から出力された光が順に、短焦点レンズ、回折格子、および長焦点レンズを通過してから検出セルに入り、検出セルを透過した光が、散乱光受信器により受信されてから光電変換器に入り、光電変換器の出力信号が順に、信号増幅器、信号プロセッサ、およびデータ収集器を通過してから半定量演算器に入って、エンドトキシンの限度を検出し、信号増幅器、信号プロセッサ、データ収集器、および半定量演算器の出力端は、いずれも光源強度調節器によってレーザー源に接続され、半定量演算器の出力端はさらにスキャンモードレギュレータによってレーザー源に接続され、データディスプレイは半定量演算器の出力端に接続される。
【0011】
第二のエンドトキシン検出システムに基づく検出方法は、粒径多分布検出と粒径単一分布検出とに分けられる。
【0012】
粒径多分布検出は、
レーザー源の強度を調節するステップ1−1と;
スキャンモードレギュレータを調節して、レーザー源をセグメントスキャンモードに設定するステップ1−2と;
一連の濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、各濃度のエンドトキシン標準溶液に対して粒径多分布検出を行うステップ1−3と;
半定量演算器における検出パラメータを設定することにより、各濃度のエンドトキシン標準溶液の濃度限界値を検出するステップ1−4と;
試料に応じて半定量演算器における検出パラメータを対応するように設定し、試料に対して粒径多分布検出を行い、検出結果において、20〜300nmの範囲内でエンドトキシンの粒径分布のピークが現れない場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より低くなり、エンドトキシンの粒径分布のピークが発生する場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より高くなるステップ1−5と、を含む。
【0013】
粒径単一分布検出は、
レーザー源の強度を調節するステップ2−1と;
スキャンモードレギュレータを調節して、レーザー源を全分布スキャンモードに設定するステップ2−2と;
一連の濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、各濃度のエンドトキシン標準溶液に対して粒径単一分布検出を行うステップ2−3と;
半定量演算器における検出パラメータを設定することにより、各濃度のエンドトキシン標準溶液の濃度限界値を検出するステップ2−4と;
試料に応じて半定量演算器における検出パラメータを対応するように設定し、試料に対して粒径単一分布検出を行い、検出結果において、エンドトキシンの粒径分布のピークが20nm未満の場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より低くなり、エンドトキシンの粒径分布のピークが20nmを超える場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より高くなるステップ2−5と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の技術的効果は以下の通りである。
1、検出の際に、試薬(LAL試薬)を消費する必要がないので、エンドトキシンの検出コストを大幅に低減できること;
2、光路システムを集積したことで検出感度が向上し、0.5EU/ml以上のエンドトキシン溶液を検出できること;
3、検出モードはオンライン検出とオフライン検出の二種類に分けられ、柔軟に応用でき、実用性に優れること;
4、エンドトキシンの検出時間が大幅に短縮されて迅速検出の目的を達成し、注射用水、注射剤半製品および完成品におけるエンドトキシンの限界値の迅速検出・判断に用いることができること;
5、早期警報システムが増設されて溶液のエンドトキシン濃度が基準値を超えたときに早期警報を出すことができ、オンライン監視を実現し、信頼性が高いこと。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第一のエンドトキシン検出システムの構造ブロック図である。
図2図2は、エンドトキシンの定量計算原理の模式図である。
図3図3は、本発明の第一のエンドトキシン検出システムの検出・早期警報のフローチャートである。
図4図4は、本発明の第二のエンドトキシン検出システムの構造ブロック図である。
図5図5は、粒径多分布検出の実施例において、濃度が5.0EU/mlである検出パラメータを用いたエンドトキシンの検出結果図である。
図6図6は、粒径多分布検出の実施例において、濃度が2.0EU/mlである検出パラメータを用いたエンドトキシンの検出結果図である。
図7図7は、粒径単一分布検出の実施例において、濃度が10.0EU/mlである検出パラメータを用いたエンドトキシンの検出結果図である。
図8図8は、粒径単一分布検出の実施例において、濃度が7.0EU/mlである検出パラメータを用いたエンドトキシンの検出結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(一)第一のエンドトキシン検出システム
図1に示すように、本発明の第一のエンドトキシン検出システムは、レーザー源1、短焦点レンズ2、回折格子3、長焦点レンズ4、検出セル5、散乱光受信器6、光電変換器7、信号増幅器8、信号プロセッサ9、データ収集器10、定量演算器11、およびデータディスプレイ13を含み、レーザー源1から出力された光が順に、短焦点レンズ2、回折格子3、および長焦点レンズ4を通過してから検出セル5に入り、検出セル5を透過した光が、散乱光受信器6により受信されてから光電変換器7に入り、光電変換器7の出力信号が順に、信号増幅器8、信号プロセッサ9、およびデータ収集器10を通過してから定量演算器11に入ってエンドトキシン濃度を計算し、定量演算器11の出力端はデータディスプレイ13に接続される構成となっている。
【0017】
上記エンドトキシン検出システムは、通常のレーザー粒径検出器に基づいて光路検出システムを集積する。約90度の散乱光路検出が好ましい。レーザー源1はカナダのEXFO社のFLS−2600Bダブルビーム型レーザー源を採用する。短焦点レンズ2は超低分散レンズを採用する。回折格子3は光ファイバーカプラー型の光ファイバー回折格子を採用する。長焦点レンズ4は低消耗性のNV−202mレンズを採用する。検出セル5は光学ガラスからなり、オンライン検出セルとオフライン検出セルの二種類を含む。オンライン検出セルの上下両端には液体出口と液体入口が設けられ、オンライン検出セルは液体出口と液体入口によって注射剤生産ラインのパイプに接続されかつ回路を形成して薬液の連続的な検出を実現し、気泡の干渉を排除するように液体出口と液体入口にはいずれも電磁バルブが設けられ、さらに液体入口には超音波プローブが設けられている。
【0018】
オフライン検出セルは半密閉型で取り外し可能な検出セルであり、手動で溶液を交換するように頂上部には液体添加口が設けられている。散乱光受信器6はAPI社のPicometrix LLC高速多点広角度散乱光受信器モジュールを採用し、多点間隔において対数配列をなす。光電変換器7はアメリカのHenrich社のHESMC光電変換器を採用する。信号増幅器8は増幅回路とフィルタ回路とからなり、そのうち増幅回路は三つのICL7650増幅器により差動増幅回路の形に連結され、フィルタ回路は常用のRCネットワークである。信号プロセッサ9はイタリアのVAL.COのCONVERTER−VLC.602プログラマブル信号プロセッサを採用する。データ収集器10はマキシム社のA/D変換器Max132を採用する。図2に示すように、定量演算器11の計算原理は、光散乱方程式I=K・b・C・f(D)・f(E)・f(Δλ)に基づき、式中、Iは散乱光信号の強度、Kは比例定数、bは検出溶液の厚さ、Cはエンドトキシン濃度(単位:EU/ml)、f(D)は粒子の粒径パラメータ関数、f(E)は散乱スペクトル関数、f(Δλ)は波長関数である。検出溶液の厚さ(キュベット)が固定され、波長が固定されることで、bとf(Δλ)は定数となり、光散乱方程式をI=K・C・f(D)・f(E)に簡略化できる。
【0019】
異なる濃度のエンドトキシン標準溶液で検出することにより定数Kが得られ、システムは三つ以上の異なる角度で溶液中のエンドトキシン粒子の散乱光信号の強度を検出し、I=K・C・f(D)・f(E)に基づいて、そのうちの任意の二つの角度の散乱光信号によりf(D)とf(E)を計算して、光散乱方程式をS=f・C+gに簡略化する。式中、SはIのIn線形化データ処理により得られる光散乱度であり、関連係数はf=K・f(D)・f(E)であり、gは補正パラメータである。さらに残りの角度の散乱光信号を用いて溶液中のエンドトキシンの含有量を計算して定量的検出を実現する。データディスプレイ13は金創導社の128×64ドットマトリックス表示端末を採用し、検出されたエンドトキシン濃度値を表示することに用いられる。システムがアラーム機能を備えるように、本システムにはさらに定量演算器11に接続される早期警報装置14が設けられており、早期警報装置14は集積式の成就電子社のCMS7000―500アラーム監視ソフトウェアと圧電式早期警報システムを採用する。図3に示すように、本システムの検出・早期警報のフローにおける早期警報ソフトウェアでエンドトキシン濃度限界値を予め設定することができ、検出された溶液中のエンドトキシン濃度が限界値を超えるとき、警報器が警報を出すようになっている。
【0020】
本発明の第一のエンドトキシン検出システムのオンライン検出時の使用フローは以下の通りである。生産条件に応じて、定量演算器にエンドトキシン濃度限界値および係数fとパラメータgを予め設定しておき、生産ラインを起動して溶液をオンライン検出セルに入れ、S=f・C+gに基づいてエンドトキシン濃度を計算し、該濃度が限界値未満の場合、システムは運行を維持し、該濃度が限界値を超える場合、早期警報システムが警報を出す。
【0021】
本発明の第一のエンドトキシン検出システムのオフライン検出時の操作ステップは以下の通りである。定量演算器に係数fとパラメータgを予め設定しておき、オフライン検出セルを取り出して浄水できれいに洗浄し、検出溶液で2〜3回すすいだ後に検出溶液を添加し、検出セルを本システムに配置し、S=f・C+gに基づいてエンドトキシン濃度を計算する。
【0022】
以下、第一のエンドトキシン検出システムに対するタンジン注射液のエンドトキシンのオフラインでの定量的検出の実施例を提示する。
【0023】
オフライン検出セルを交換し、作業標準のエンドトキシンを取り、検査用水を用いて100EU/mlの濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、さらに検査用水を用いて一連の濃度のエンドトキシン標準溶液に段階的に希釈する。調製されてなる一連の濃度は、それぞれ0.5、1、5、10、50EU/mlであり、溶液を検出セルに置いて検出を行い、定量演算器によってデータ回帰計算を行い、線形方程式:S=0.056C+0.165、R=0.997であり、計算結果は表1の通りである。
【0024】
【表1】
【0025】
タンジン注射液中間体(上海華源安徽錦輝製薬有限会社提供、ロット番号:05110209)を取り、本システムとLAL試薬比濁法をそれぞれ用いてエンドトキシン含有量を計算した。結果は表2の通りである。
【0026】
【表2】
【0027】
その結果、本システムにより検出されたエンドトキシン含有量とLAL試薬比濁法によるエンドトキシン含有量とは近似している。現在、LAL試薬比濁法は中国薬局方に収録された方法であり、測定結果が正確で、本システムにより検出された結果がこれと近似しており、これも本システムの信頼性を説明するものである。
【0028】
以下、第一のエンドトキシン検出システムに対するタンジン注射液のエンドトキシンのオンラインでの定量的検出の実施例を提示する。
【0029】
二つのタンジン注射液を取る。一つは正常薬液(上海華源安徽錦輝製薬有限会社提供、ロット番号:10011605)であり、他方は汚染された薬液である。二つの薬液をそれぞれオンラインで検出する。検出パラメータを設定し、fは0.056、gは0.165、エンドトキシン限界値は1EU/mlである。生産ラインを起動して検出を行い、回帰方程式S=0.056C+0.165によりエンドトキシン濃度を計算した。結果は表3の通りである。
【0030】
【表3】
【0031】
その結果、エンドトキシンの汚染が限界値を超える場合に本システムは警報を出すことができ、注射剤の生産におけるエンドトキシンの汚染状況の定量的監視が実現できる。
【0032】
(二)第二のエンドトキシン検出システム
図4に示すように、本発明の第二のエンドトキシン検出システムは、レーザー源1、短焦点レンズ2、回折格子3、長焦点レンズ4、検出セル5、散乱光受信器6、光電変換器7、信号増幅器8、信号プロセッサ9、データ収集器10、半定量演算器12、データディスプレイ13、光源強度調節器15、およびスキャンモードレギュレータ16を含み、レーザー源1から出力された光が順に、短焦点レンズ2、回折格子3、および長焦点レンズ4を通過してから検出セル5に入り、検出セル5を透過した光が、散乱光受信器6により受信されてから光電変換器7に入り、光電変換器7の出力信号が順に、信号増幅器8、信号プロセッサ9、およびデータ収集器10を通過してから半定量演算器12に入ってエンドトキシンの限度を検出し、信号増幅器8、信号プロセッサ9、データ収集器10、および半定量演算器12の出力端はいずれも光源強度調節器15によってレーザー源1に接続され、半定量演算器12の出力端はさらにスキャンモードレギュレータ16によってレーザー源1に接続され、データディスプレイ13は半定量演算器12の出力端に接続される構成となっている。
【0033】
上記エンドトキシン検出システムも同様に約90度の散乱光路検出が好ましい。レーザー源1はシングルビームまたはダブルビーム型のレーザー源を採用することが可能で、ここでもカナダのEXFO社のFLS−2600Bダブルビーム型レーザー源を採用する。光源強度調節器15はアメリカのBroadcom社のAVR―8A型エネルギーレギュレータを採用し、レーザー源1の強度を調節することに用いられる。スキャンモードレギュレータ16は粒径のスキャン範囲を制御することに用いられ、そのモードはセグメントスキャンモードと全分布スキャンモードとを含み、セグメントスキャンモードのスキャン範囲は1〜10nm(好ましくは1〜5nm)、5〜500nm(好ましくは5〜200nm)、100〜1000nm(好ましくは200〜1000nm)であり、全分布スキャンモードのスキャン範囲は1〜1000nmである。半定量演算器13に異なるエンドトキシン濃度の検出感度(濃度限界値)の検出パラメータが集積記憶される。ここで、0.5EU/mlおよび1〜10の間の自然数(EU/ml)の濃度限界値の検出パラメータが含まれ、異なる試料におけるエンドトキシン含有量の限度要求に応じて異なる検出限界を選択し、前記検出パラメータには増幅倍率、チャネル数、遅延係数、および速度係数が含まれる。
【0034】
短焦点レンズ2、回折格子3、長焦点レンズ4、検出セル5、散乱光受信器6、光電変換器7、信号増幅器8、信号プロセッサ9、データ収集器10、およびデータディスプレイ13が採用する機器の形態はいずれも第一のエンドトキシン検出システムと同一である。システムがアラーム機能を備えるように、第二のエンドトキシン検出システムにも同様に早期警報装置14が設けられており、早期警報装置14は半定量演算器13の出力端に接続され、早期警報装置14が採用する形態も第一のエンドトキシン検出システムと同一である。
【0035】
本発明の第二のエンドトキシン検出システムの検出方法は、粒径多分布検出と粒径単一分布検出とに分けられる。
【0036】
粒径多分布検出は、
レーザー源の強度を調節するステップ1−1と;
スキャンモードレギュレータを調節して、レーザー源をセグメントスキャンモードに設定するステップ1−2と;
一連の濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、各濃度のエンドトキシン標準溶液に対して粒径多分布検出を行うステップ1−3と;
半定量演算器における検出パラメータを設定することにより、各濃度のエンドトキシン標準溶液の濃度限界値を検出するステップ1−4と;
試料のエンドトキシン含有量の限度要求に応じて、半定量演算器における検出パラメータを対応するように設定し(即ち、検出感度を選択する)、試料に対して粒径多分布検出を行い、検出結果において、20〜300nmの範囲内でエンドトキシンの粒径分布のピークが現れない場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より低くなり、即ち合格であり、エンドトキシンの粒径分布のピークが発生する場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より高くなり、即ち不合格であるステップ1−5と、を含む。
【0037】
粒径単一分布検出は、
レーザー源の強度を調節するステップ2−1と;
スキャンモードレギュレータを調節して、レーザー源を全分布スキャンモードに設定するステップ2−2と;
一連の濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、各濃度のエンドトキシン標準溶液に対して粒径単一分布検出を行うステップ2−3と;
半定量演算器における検出パラメータを設定することにより、各濃度のエンドトキシン標準溶液の濃度限界値を検出するステップ2−4と;
試料のエンドトキシン含有量の限度要求に応じて、半定量演算器における検出パラメータを対応するように設定し(即ち、検出感度を選択する)、試料に対して粒径単一分布検出を行い、検出結果において、エンドトキシンの粒径分布のピークが20nm未満の場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より低くなり、即ち合格であり、エンドトキシンの粒径分布のピークが20nmを超える場合は、試料のエンドトキシン濃度が対応する濃度限界値より高くなり、即ち不合格であるステップ2−5と、を含む。
【0038】
以下、第二のエンドトキシン検出システムによる検出の実施例について説明する。
【0039】
半定量演算器のパラメータの収集:
設備および材料:a、CN−11型エンドトキシン溶液ナノ粒径分析器、b、細菌エンドトキシン作業標準品(ロット番号:150601−201176、規格:100EU・Amp−1、中国薬品生物製品検定所)、c、細菌エンドトキシン検出用水(ロット番号:100130、湛江博康海洋生物有限会社)。
【0040】
方法:作業標準のエンドトキシンを取り、検査用水を用いて100EU/mlの濃度のエンドトキシン標準溶液を調製し、さらに検査用水を用いて一連の濃度のエンドトキシン標準溶液に段階的に希釈する。ここで、一連の濃度はそれぞれ10.0EU/ml、5.0EU/ml、2.0EU/ml、1.0EU/ml、および0.5EU/mlである。
【0041】
CN−11型エンドトキシン溶液ナノ粒径分析器を起動して、30min以上予熱し、一連の標準溶液を低濃度から高濃度の順に検出セルに添加して検出を行い、パラメータ(増幅倍率、チャネル数、遅延係数、および速度係数)を設定して、ナノ粒径分析器の検出感度を調節した。好ましい検出パラメータの結果は表4に示した通りであり、表4における各エンドトキシンの検出パラメータは半定量演算器に記憶される。
【0042】
【表4】
【0043】
I.粒径多分布検出と動態比濁法でそれぞれタンジン注射液中間体のエンドトキシン含有量を測定する。
【0044】
設備および材料:a、CN−11型エンドトキシン溶液ナノ粒径分析器、b、BET−16M細菌エンドトキシン測定器、c、動態比濁法LAL試薬(ロット番号:1303270、λ=0.03EU・mL−1、規格:0.6mL・Amp−1、湛江博康海洋生物有限会社)、d、細菌エンドトキシン作業標準品(ロット番号:150601−201176、規格:100EU・Amp−1、中国薬品生物製品検定所)、e、細菌エンドトキシン検出用水(ロット番号:070130、規格:5mL・Amp−1、湛江博康海洋生物有限会社)、f、細菌エンドトキシン指示薬(ロット番号:071114、規格:3000EU・Amp−1、湛江博康海洋生物有限会社)、g、タンジン注射液中間体(ロット番号:201302191、上海華源安徽錦輝製薬有限会社)。
【0045】
方法:タンジン注射液中間体を取り、タンジン注射液中間体のエンドトキシンの限度要求に応じて、セグメントスキャンモードで多分布検出を行い、5.0EU/mlの限界値の検出パラメータ、2.0EU/mlの限界値の検出パラメータ、およびLAL試薬比濁法を選択してエンドトキシン含有量を検出した。その結果は図5図6、および表5に示した通りである。
【0046】
【表5】
【0047】
結果、本方法では、2.0EU/mlの限界値パラメータを採用した場合は不合格であると検出され、5.0EU/mlの限界値の検出パラメータを採用した場合は合格であると検出された。これは、試料エンドトキシンの濃度が5.0EU/ml未満、かつ2.0EU/mlを超える場合、LAL薬比濁法による結果と符合することを説明するものであり、本方法の信頼性が検証された。
【0048】
II.粒径単一分布検出および動態比濁法でそれぞれ消癌片注射液中間体のエンドトキシン含有量を測定する。
【0049】
消癌片注射液中間体を取り、消癌片注射液中間体のエンドトキシンの限界要求に応じて、全体分布スキャンモードで単一分布検出を行い、10.0EU/mlの限界値の検出パラメータを選択してエンドトキシン含有量をスキャンした。その結果は図7に示したように、20nmを超える範囲内には粒径分布のピークが現れなかった。エンドトキシン標準品を添加してLAL試薬動態比濁法で検出した結果、そのエンドトキシン含有量は8.0EU/mlであり、さらに7.0EU/mlの限界値の検出パラメータを選択して検出を行った。その結果は図8に示したように、粒径分布のピークが270nmまでずれ、試料のエンドトキシン濃度が7.0EU/mlの限界値を超え、LAL試薬比濁法による検出結果と符合することを証明したこととなり、本方法の信頼性が再度検証された。
【符号の説明】
【0050】
1−レーザー源
2−短焦点レンズ
3−回折格子
4−長焦点レンズ
5−検出セル
6−散乱光受信器
7−光電変換器
8−信号増幅器
9−信号プロセッサ
10−データ収集器
11−定量演算器
12−半定量演算器
13−データディスプレイ
14−早期警報装置
15−光源強度調節器
16−スキャンモードレギュレータ
図1
図2
図3
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図8