特許第6093859号(P6093859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6093859複数のゲストガスと水とを反応させてガスハイドレートを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093859
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】複数のゲストガスと水とを反応させてガスハイドレートを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/00 20060101AFI20170227BHJP
   C07C 7/20 20060101ALI20170227BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20170227BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20170227BHJP
   C10L 3/00 20060101ALI20170227BHJP
   C01B 17/45 20060101ALI20170227BHJP
   C07C 17/42 20060101ALI20170227BHJP
   C07C 19/08 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C07C5/00
   C07C7/20
   C07C9/04
   C01B31/20 Z
   C10L3/00 K
   C01B17/45 G
   C07C17/42
   C07C19/08
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-527362(P2015-527362)
(86)(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公表番号】特表2015-528444(P2015-528444A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】KR2013007120
(87)【国際公開番号】WO2014027787
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2015年2月23日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0090330
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】595025084
【氏名又は名称】韓国生産技術研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF INDUSTRIAL TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュ ドン
(72)【発明者】
【氏名】カン ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン ハ
(72)【発明者】
【氏名】イム ジェ イル
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0032189(KR,A)
【文献】 特開2009−114055(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0035718(KR,A)
【文献】 特開2001−010985(JP,A)
【文献】 特開2006−104385(JP,A)
【文献】 特開2004−346184(JP,A)
【文献】 特開2006−295059(JP,A)
【文献】 ハイドロフルオロカーボン−メタン−TBAB系ガスハイドレートの冷媒利用に関する研究,日本エネルギー学会大会講演要旨集,2011年,Vol.20,pp.48-49
【文献】 Fluid Phase Equilibria,2007年,251(2),pp. 145-148
【文献】 メタン+トリフルオロメタン混合ガスハイドレートの等温相平衡関係およびケージ占有性,第46回高圧討論会講演要旨集,2005年,276頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C10L
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲストガスと水とを反応させてガスハイドレートを製造する方法であって、
前記複数のゲストガスは、CHである第1ゲストガスおよびSFである第2ゲストガス、或いは、COである第1ゲストガスおよびHFCsである第2ゲストガスを含み、前記第2ゲストガスのガスハイドレート形成条件の圧力が、前記第1ゲストガスのガスハイドレート形成条件の圧力よりも低いことを特徴とする、
複数のゲストガスと水とを反応させてガスハイドレートを製造する方法。
【請求項2】
前記第1ゲストガスの標準状態(STP)における水に対する溶解度が、同一条件において前記第2ゲストガスの水に対する溶解度よりも大きいことを特徴とする、
複数のゲストガスと水とを反応させてガスハイドレートを製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1ゲストガスの標準状態(STP)における水に対する溶解度が、0.5〜10g/Lであることを特徴とする、
複数のゲストガスと水とを反応させてガスハイドレートを製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1ゲストガスのガスハイドレート形成条件が、0〜15℃の温度および10気圧以上70気圧以下の圧力であり、
前記第2ゲストガスのガスハイドレート形成条件が、0〜15℃の温度および1気圧超過10気圧未満の圧力であることを特徴とする、
複数のゲストガスと水とを反応させてガスハイドレートを製造する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスハイドレート形成条件(相平衡条件)が異なる複数のゲストガスを用いたガスハイドレートの製造方法に関し、より詳細には、水に対する溶解度が大きい第1ゲストガスおよび低圧反応が容易な第2ゲストガスを同時に反応器に注入して反応させることによって、比較的低圧状態にて高速で相平衡条件が異なる複数のゲストガスを用いてガスハイドレートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスレートハイドレート(clathrate hydrate)とは、ホスト(host)分子が水素結合を介して形成する3次元格子構造に、ゲスト(guest)分子を化学的な結合をすることなく、物理的に捕獲して閉じ込めた結晶性化合物をいう。ホスト分子が水分子で、ゲスト分子がメタン、エタン、プロパンまたは二酸化炭素のように低分子のガス分子である場合、ガスハイドレート(gas hydrate)という。
【0003】
ガスハイドレートは、1810年に英国のHumphry Davy卿によって最初に発見された。彼は英国の王立協会を対象としたBakerian Lectureで、塩素と水とを反応させる際に、氷と類似した形態の化合物が生ずるが、その温度が0℃よりも高いことを発表した。1823年にMichael Faradayが10個の水分子に対して1個の塩素分子が反応してガスハイドレートが形成されることを初めて明らかにした。以後、現在に至るまでガスハイドレートは、相変化物質(phase change material、PCM)の一つとして学術的研究が続けられており、主な研究内容として相平衡と形成/解離条件、結晶構造、多結晶の共存現象、空洞内の競争的組成変化などを挙げることができ、それ以外にも様々な微視的あるいは巨視的面における精密な研究が進められている。
【0004】
ガスハイドレートに捕獲されうるゲスト分子は、現在まで約130余種が知られており、その例として、CH、C、C、CO、H、SFなどが挙げられる。また、ガスハイドレートの結晶構造は、水素結合からなる水分子によって形成された多面体の空洞(cavity)で構成されており、ガス分子の種類と形成条件により、体心立方構造I(body-centered cubic structure I、sI)、ダイヤモンド型立方構造II(diamond cubic structure II、sII)と六方構造H(hexagonal structure H、sH)の結晶構造から成っている。sIとsIIは、客体分子の大きさによって決定され、sHにおいては、客体分子の大きさと形態が重要な要素となる。
【0005】
深海と永久凍土地域の自然に賦存するガスハイドレートのゲスト分子は、ほとんどがメタンであり、このようなメタンは燃焼時の二酸化炭素(CO)の発生が少なく、環境にやさしい清浄エネルギー源として脚光を浴びている。具体的には、ガスハイドレートは、既存の化石燃料を代替しうるエネルギー源として使用することができ、ハイドレートの構造を利用した天然ガス固体化貯蔵および輸送に用いることができ、温暖化防止のためのCOの隔離/貯蔵に用いることができ、ガスまたは水溶液の分離技術として、特に海水淡水化装置にも用いることができるので 、その活用度は非常に高い。
【0006】
また、ガスハイドレートは、これを用いた天然ガス固体化貯蔵および輸送、海水淡水化の応用技術などにおいて、比較的低圧にて高速でガスハイドレートを製造する方法が商用化の際に重要な要素となる。
【0007】
従来、ガスハイドレートの形成を促進するために、反応器内に別途に投与される促進剤、反応器の内外に設置された撹拌機、冷却ジャケットなどによって熱交換効率を向上させて、流入した物質との間の反応を促進させるが、これは促進剤を投与したり、別途の装置を使用することによってさらに経費がかかるため、低圧で経済性および生産性を満足させうる程度のガスハイドレートの形成速度を維持することは、未だ現実的に容易ではないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題点を解決するために、ガスハイドレート形成条件(相平衡条件)が異なる2つのゲストガスを注入して水と反応させることによって、高速でガスハイドレートを製造することのできる複数のゲストガスを用いたガスハイドレートの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
具体的には、第1ゲストガスは水に対する溶解度が優れており、第2ゲストガスは第1ゲストガスよりも低い圧力においてガスハイドレートを形成し、比較的低圧にて高速でガスハイドレートを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような目的を達成するために提供される本発明による第1ゲストガス、第2ゲストガスおよび水を反応させてガスハイドレートを製造する方法において、前記複数のゲストガスは、第1ゲストガスおよび前記第1ゲストガスとはハイドレート形成条件が異なる第2ゲストガスを含むことを特徴とする。
【0011】
前記第1ゲストガスの標準状態(STP)における水に対する溶解度は、同一条件における前記第2ゲストガスの水に対する溶解度よりも大きく、前記第2ゲストガスのガスハイドレート形成条件の圧力は、前記第1ゲストガスのガスハイドレート形成条件の圧力よりも低いことが好ましい。
【0012】
前記第1ゲストガスの水に対する溶解度は、標準状態(STP)で0.5〜10g/Lが好ましい。
【0013】
与えられた温度条件における前記第2ゲストガスのガスハイドレート形成条件の圧力は、前記第1ゲストガスのガスハイドレート形成条件の圧力よりも低いことが好ましい。
【0014】
前記第1ゲストガスのガスハイドレート形成条件は、0〜15℃の温度および10気圧超過70気圧以下の圧力であることが好ましい。
【0015】
前記第2ゲストガスのガスハイドレート形成条件は、0〜15℃の温度および1気圧以上10気圧未満の圧力であることが好ましい。
【0016】
前記第1ゲストガスはCHまたは天然ガスであり、前記第2ゲストガスはSF、HFCsおよびPFCsのいずれかであることが 好ましい。
【0017】
前記第1ゲストガスはCOまたはCHであり、前記第2ゲストガスはSF(Hexafluorosulfide)、HFCs(Hydrofluorocarbons)およびPFCs(Perfluorocarbons)のいずれかであることが好ましい。
【0018】
前記第1ゲストガスはメタン、天然ガスおよびCOのいずれかであり、前記第2ゲストガスはプロパン(C)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
前述のとおり、本発明による複数のゲストガスを用いたガスハイドレートの製造方法は、水に対する溶解度が相対的に大きい第1ゲストガスおよび低圧反応が容易な第2ゲストガスを反応器に注入して水と反応させることによって、従来よりも低圧状態にて高速でガスハイドレートを製造することができる。
【0020】
すなわち、従来のガスハイドレート製造方法では、単一のゲストガスを水と反応させることによって発生する経済性および生産性の面における低下をもたらしたが、本発明はこのような問題を克服することにより、水和物の製造効率の向上と同時に、より低圧におけるガスハイドレートの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によって、複数のゲストガスを用いたガスハイドレートの製造方法が適用されたガスハイドレート反応工程の全体構成図である。
図2】一実施例によって単一のゲストガスを反応器に投入した場合と、本発明によって複数のゲストガスを投入した場合とを比較したグラフである。
図3】他の実施例によって単一のゲストガスを反応器に投入した場合と、本発明によって複数のゲストガスを投入した場合とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の前記のような目的、特徴および他の利点は、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明することによって、さらに一層明らかになるであろう。記述される実施例は、発明の説明のために例示的に提供さるものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
本発明は、ガスハイドレートの形成速度の増加を要するものであって、ガスハイドレートの製造が可能なあらゆる種類のガスハイドレート反応装置に適用可能である。本発明の複数のゲストガスを用いたガスハイドレートの製造方法に使用できるガスハイドレート反応装置は、必要に応じて一体型に製造されるか、またはそれぞれ分離して製造されてもよい。また、使用形態に応じて、一部構成要素を省略して使用することができる。
【0024】
本発明が適用されるガスハイドレート反応装置は、一般的な水処理工程、天然ガスハイドレード(Natural Gas Hydrates、NGH)工程、分離精製工程、汚染ガス除去工程、温室ガスの分離貯蔵工程、水素貯蔵工程、輸送およびヒートポンプ応用工程、ならびに機器に使用することができる。より具体的には、前記水処理工程は、海水淡水化工程、排水処理工程、汽水淡水化工程、水質浄化工程、水中資源濃縮工程、製薬の分離濃縮およびビタミン精製工程などで使用が可能である。
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例による複数のゲストガスを用いたガスハイドレートの製造方法を詳細に説明する。
【0026】
以下において、「ガス」とは、ガスハイドレートのゲスト分子を意味し、海水中の水は、ホスト分子を意味する。ガスハイドレートの形成において、ガスとなりうる分子は、CH、C、C、CO、H、およびSFなど多数存在する。
【0027】
ガスハイドレート反応装置を使用することにより、中間形成された結果物をガス水和物またはペレット化されたガスハイドレート(以下、ガスハイドレート)と称し、ガスハイドレートをペレット化する工程をペレタイジング(pelletizing)と称する。
【0028】
本発明は、ガスハイドレート反応工程において求められる圧力を低下させると共に、反応速度を増加させることによって、ガスハイドレート中に含有された不純物を迅速に除去すると同時に収率を高めることができる。前記過程でガスハイドレートペレットを製造することができることは言うまでもない。
【0029】
ガスハイドレート反応装置(100)の全体的な構成の説明
まず、図1を参照して、本発明に使用されるガスハイドレート反応装置(100)の全体的な構成を調べる。
【0030】
本発明によるガスハイドレート反応装置(100)は、それぞれの反応器/供給源/タンク上に温度センサーおよび圧力センサーが位置し、前記センサーは制御部と連結して制御することができるが、これらのセンサーおよび制御部は説明の便宜上本図面では省略する。
【0031】
また、ユーザーが作動パラメーターを入力してガスハイドレート反応装置(100)の作動を制御するためのコントロールユニットを前記制御部に連結することができるが、やはり説明の便宜上本図面では省略する。
【0032】
また、本図面は本発明によるガスハイドレート反応装置(100)の一実施例を説明するための概略的な概念図に過ぎず、本発明の範囲は図面に示された各構成要素の位置、配置、連結方式などに限定されないことは言うまでもない。
【0033】
ガスハイドレート反応装置(100)は供給された水および複数のゲストガスからガスハイドレートが形成される反応器(110)、反応器(110)から形成されるガスハイドレートスラリーを圧着処理して結晶化されたガスハイドレートを製造する脱水タンク(120)、脱水タンク(120)から排出される結晶化されたガスハイドレートから一部のゲストガスおよび不純物成分を分離する貯蔵タンク(130)、反応器(110)にガスを供給するガス供給源(160)、ガス供給源(160)と反応器(110)と間の管路に配置されるガス調節弁(170)、および反応器(110)に水を供給するホスト分子の供給源(180)を含む。ガス供給源(160)は第1ゲストガス供給源(162)および第2ゲストガス供給源(164)を含み、ガス調節弁(170)は第1ゲストガス調節弁(172)および第2ゲストガス調節弁(174)を含む。ホスト分子供給源(180)と反応器(110)の間の管路には、ホスト分子調節弁(182)が配置される。
【0034】
本発明は、ガスハイドレートの形成能力の向上を主な特徴とするものであり、反応器(110)を除く脱水タンク(120)および 貯蔵タンク(130)などの構成要素は、ガスハイドレート製造工程上省略してもよい。
【0035】
反応器(110)は、不純物が含有された処理水および複数のゲストガスが流入して、処理水中の純粋な成分および複数のゲストガスが反応することにより、所定の形態の結晶としてガスハイドレートが形成される。一方、図面には示されていないが、反応器(110)内に投入された物質を攪拌するための別途の攪拌装置(図示せず)、センサー(図示せず)および前記の投入された物質が凍結した場合、これを解凍するためのヒーター(図示せず)などをさらに含んでもよい。
【0036】
反応器(110)に投入される複数のゲストガスは、水成分との反応過程において高速溶解されなければならないため、圧力範囲に大きく関係せず、基本的に水に対する溶解度の大きい物理的性質を有する第1ゲストガスが含まれなければならない。これは、第1ゲストガスが水に速く溶解されるほど、相対的に気体と液体との迅速な反応を誘導して、ガスハイドレートを迅速に形成することができるからである。
【0037】
一般的に、ガスハイドレートが製造される反応器内の物理的状態は、0〜15℃の温度範囲を維持すると同時に、70気圧以下の圧力範囲を維持するので、前記状態で円滑な溶解が可能な第1ゲストガスの使用が求められる。好ましくは、標準状態(STP)で水に対して0.5〜10g/L程度の溶解度を有する第1ゲストガスが使用されてもよい。
【0038】
前記水に対する溶解度が大きい第1ゲストガスとは別途に、低圧状態でホスト分子との容易な反応が可能になることによって、相対的に低い圧力でガスハイドレートを形成させる第2ゲストガスが求められる。本発明で求められる第2ゲストガスのハイドレート形成条件は、0〜15℃の温度範囲で1気圧以上10気圧未満の圧力であることが好ましい。前記第2ゲストガスは、反応器の作動圧力を下げることにより、投入されるエネルギーのコストを削減することができる。
【0039】
複数のゲストガスを用いた場合のガスハイドレート収率の説明
次に、図2のグラフを参照して、複数のゲストガスを用いることによって、低圧下にてガスハイドレートの形成速度が増加することについて説明する。図2は、反応時間を横軸に設定し、ガスハイドレートの形成速度を縦軸に設定した。
【0040】
本発明は、反応器(110)内部にホスト分子に対する溶解度が大きい第1ゲストガスおよび低圧下にてホスト分子との反応が容易な第2ゲストガスを含む複数のゲストガスを注入して、高速反応を可能にする。
【0041】
具体的には、複数のゲストガスが反応器に収容された状態で、水に対する溶解度が大きい第1ゲストガスは、0〜15℃の温度範囲および10気圧超過70気圧以下の圧力範囲で、単独でホスト分子との反応が可能であるが、この場合、前記第1ゲストガスの水に対する溶解度は、標準状態(STP)で0.5〜10g/Lであってもよい。一方、比較的低圧でガスハイドレートを形成することができる第2ゲストガスは、1気圧以上10気圧以下の圧力範囲で、単独でホスト分子と反応することができる。
【0042】
前記のとおり、本発明は複数のゲストガスが同一反応器(110)内に収容された状態で、圧力変数に応じてそれぞれ独立してホスト分子と反応するようになるが、これは複数のゲストガスが熱力学的に反応器(110)内で平衡をなすことにより安定した挙動が可能となる。
【0043】
図2のグラフ上で直線形態をなす第1線図(192)は、反応器内にホスト分子および単一のゲストガスであるCHガスを注入して、0.5℃、30気圧下で反応させたものであって、従来の一般的なガスハイドレートの製造工程と見なすことができる。前記第1線図(192)では、最初にガスハイドレート核が形成される時間(誘導時間)が38.17分所要されることが確認された。
【0044】
グラフ上で曲線の形をなす第2線図(194)は、反応器内にホスト分子および複数のゲストガスであるCHとSFガスを注入して、0.5℃、20気圧下で反応させたものであって、本発明の特徴的なガスハイドレート製造工程である。前記第2線図(194)では、最初にガスハイドレート核が形成される時間(誘導時間)が単一のゲストガスを使用する場合よりも減少した22分であることを確認することができる。
【0045】
図2を全体的に見ると、同一の反応温度である0.5℃の下で単一のゲストガスを注入した場合に比べて、複数のゲストガスであるCHとSFを注入した場合に、より低い圧力でも2〜3倍程度速いガスハイドレート形成速度の向上をもたらすことが分かった。例えば、横軸上に図示された反応時間60分を経過した場合に、第1、2線図(192、194)におけるゲストガスの消耗率を見ると、第1線図(192)では、約0.05molであるのに対して、第2線図(194)では、0.15molを超過する消耗率を示すことによって、約3倍程度のCH消耗率を示すことを確認することができる。
【0046】
一方、図3のグラフ上で直線形態をなす第3線図(196)は、反応器内にホスト分子と単一のゲストガスであるCOガスを注入して0.5℃、30気圧下で反応させたものであって、従来の一般的なガスハイドレートの製造工程であると見なすことができる。前記第3線図(196)では、最初にガスハイドレート核が形成される誘導時間は、18分所要されることを確認することができる。
【0047】
グラフ上で曲線形態をなす第4線図(198)は、反応器内にホスト分子および複数のゲストガスであるCOとHFCガスを注入して0.5℃、20気圧下で反応させたものであって、本発明の特徴的なガスハイドレート製造工程である。前記第4線図(198)では、最初にガスハイドレート核が形成される時間(誘導時間)が15分で、単一のCOガスを使用する場合よりも、より速くガスハイドレートが形成されることを確認することができる。
【0048】
前記図3でも、同一の反応温度である0.5℃の下で、単一のゲストガスを注入した場合に比べて、複数のゲストガスであるCOとHFCを注入した場合に、より低い圧力で反応が可能であると同時に、2〜3倍程度の反応時間の向上をもたらすことが分かる。併せて、COとHFCを注入した場合が、CHとSFを注入した場合よりも相対的にガスハイドレートの形成速度が速いことを確認することができる。
【0049】
前記結果は、既存のゲストガスとしてCHまたはCOを単独で使用する場合よりも、複数のゲストガスを同時に反応器に注入して反応させることが、反応圧力を下げると同時に、反応速度を増加させて、最終的にはガスハイドレートの形成量を増加させる。これによって、増加したガスハイドレートの形成量は、生産性および経済性の次元で肯定的に作用をする。
【0050】
以上で説明したとおり、本発明による複数のゲストガスを用いたガスハイドレートの製造方法は、水に対する溶解度が相対的に大きい第1ゲストガスおよび低圧反応が容易な第2ゲストガスを反応器に注入して、ホスト分子と反応させることによって、従来よりも低圧状態にて高速でガスハイドレートを製造することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は、前述した特定の実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、添付の特許請求範囲の思想および範疇を逸脱することなく、本発明の多数の変更および修正が可能であり、そのようなすべての適切な変更および修正の均等物なども、本発明の範囲に属するものと見なされるべきである。
図1
図2
図3