(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)として、1H−ベンゾトリアゾール、1H−トリルトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾールおよび1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着性組成物〕
本実施形態に係る粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という。)は、金属部材と接触して使用される粘着剤を構成するための粘着性組成物である。金属部材としては、好ましくは静電容量方式のタッチパネルにおける電極としての銅メッシュが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0023】
粘着性組成物Pは、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)を15質量%超30質量%以下含有し、カルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)とを含有し、好ましくはさらに架橋剤(C)を含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0024】
上記粘着性組成物Pにおける(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを上記の量で含有することにより、得られる粘着剤は、高温高湿条件(例えば、85℃、85%RHの条件下にて240時間)を施した後、常温常湿に戻したときの白化が抑制され、すなわち、耐湿熱白化性に優れたものとなる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で水酸基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤中に、所定量の水酸基が残存することとなる。水酸基は親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤中に存在すると、粘着剤が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤に浸入した水分との相溶性が良く、その結果、粘着剤の白化が抑制されることとなる。
【0025】
ただし、上記のように親水性基が所定量粘着剤中に存在すると、粘着剤は水を取り込み易くなり、当該粘着剤に接触する金属部材を腐食させ易くなる。しかしながら、本実施形態に係る粘着性組成物Pは、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)を含有することにより、接触する金属部材が腐食することを抑制することができる。
【0026】
なお、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)の存在により、後述する架橋剤(C)と(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との反応性が低下する傾向にあるが、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で水酸基含有モノマーを含有すると、架橋剤(C)と(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との反応が良好に進行する。
【0027】
一方、上記粘着性組成物Pにおける(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、カルボキシル基含有モノマーを含有しないため、カルボキシル基(酸)による金属部材の腐食も防止することができる。
【0028】
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(C)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
前述した通り、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを15質量%超30質量%以下含有する。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるモノマー単位としての水酸基含有モノマーの含有量が15質量%以下であると、粘着剤層が耐湿熱白化性に劣るものとなる。一方、水酸基含有モノマーの含有量が30質量%を超えると、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)を含有したとしても、粘着剤に取り込まれる水分量が多くなり過ぎて、金属部材を腐食し易くなる。
【0030】
かかる観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを16〜25質量%含有することが好ましく、特に18〜20質量%含有することが好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを含有しない。ここで、「カルボキシル基を有するモノマーを含有しない」とは、カルボキシル基を有するモノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシル基含有モノマーを全く含有しない他、カルボキシル基による金属部材の腐食が生じない程度にカルボキシル基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下の量で含有することを許容するものである。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。なお、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルから後述のハードモノマーは除かれる。
【0033】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましく、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルによれば、得られる粘着剤の誘電率を低くし、タッチパネルの誤作動を抑制することができる。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30〜85質量%含有することが好ましく、特に40〜75質量%含有することが好ましく、さらには50〜65質量%含有することが好ましい。
【0035】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が70℃以上のハードモノマーを含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するモノマー単位として、上記ハードモノマーを含有させることにより、得られる粘着剤は、凝集力が向上し、耐久性に優れたものとなる。特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するモノマー単位として(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルを使用する場合には、凝集力が低くなる傾向があるため、上記ハードモノマーを使用することが好ましい。上記ハードモノマーのホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)は、75〜200℃であることが好ましく、特に80〜180℃であることが好ましい。
【0036】
上記ハードモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリロイルモルホリン(Tg145℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg89℃)、アクリルアミド(Tg165℃)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記ハードモノマーの中でも、粘着性や透明性等の他の特性への悪影響を防止しつつハードモノマーの性能をより発揮させる観点から、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンがより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記ハードモノマーを10〜45質量%含有することが好ましく、15〜30質量%含有することが特に好ましい。上記ハードモノマーを10質量%以上含有することにより、当該モノマー単位による耐久性の改善効果を見込むことができる。一方、上記ハードモノマーを45質量%以下の含有量とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中におけるそれ以外のモノマー単位の相対的な不足を防止し、得られる粘着剤の粘着性および耐湿熱白化性を優れたものとすることができる。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、水酸基含有モノマーの作用を妨げないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は30万〜100万であり、40万〜90万であることが好ましく、特に50万〜70万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0042】
粘着性組成物Pの粘着主剤である(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が30万以上であることにより、得られる粘着剤の耐久性が向上し、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が100万以下であることにより、粘着性組成物Pの塗工性が良好になる。
【0043】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(2)ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)
ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)としては、例えば、1H−ベンゾトリアゾール、1H−トリルトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2、2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール等が挙げられる。中でも、1H−ベンゾトリアゾール、1H−トリルトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾールおよび1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾールが好ましい。これらによれば、接触する金属部材の腐食を特に効果的に抑制することができる。上記のベンゾトリアゾール系防錆剤(B)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
粘着性組成物P中におけるベンゾトリアゾール系防錆剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01〜2.0質量部であることが好ましく、特に0.05〜1.0質量部であることが好ましく、さらには0.1〜0.5質量部であることが好ましい。ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)の含有量が0.01質量部以上であることにより、金属部材の腐食抑制効果が十分に得られる。また、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)の含有量が2.0質量部以下であれば、粘着性に悪影響を与えない。
【0046】
(3)架橋剤(C)
粘着性組成物Pは、架橋剤(C)を含有することが好ましい。粘着性組成物Pは、架橋剤(C)を含有することで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を架橋して三次元網目構造を形成し、得られる粘着剤の凝集力を向上させる。
【0047】
架橋剤(C)としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する反応性基(モノマー単位である水酸基含有モノマーの水酸基)と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(C)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0049】
粘着性組成物P中における架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることが好ましく、さらには0.02〜1質量部であることが好ましい。
【0050】
架橋剤(C)の含有量が上記の範囲にあることにより、得られる粘着剤の凝集力が好ましいものとなり、粘着剤の耐久性が向上する。
【0051】
(4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0052】
特に耐久性を改善する観点から、粘着性組成物Pには、添加剤としてシランカップリング剤が添加されることが好ましい。シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよいものが好ましい。また、粘着シート1が光学用途の場合には、光透過性を有するシランカップリング剤が好適である。
【0053】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
シランカップリング剤の添加量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して0.01〜1.0質量部であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量部であることが好ましい。
【0055】
(5)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)とを混合するとともに、所望により、架橋剤(C)および添加剤を加えることで製造することができる。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマー単位の混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0058】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0059】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)、ならびに所望により、架橋剤(C)、添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
【0061】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0062】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0063】
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、粘着性組成物Pの希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0064】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤層が形成される。
【0065】
粘着性組成物Pを架橋させて得られる粘着剤は、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)によって、接触する金属部材の腐食を抑制することでき、かつ、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する水酸基によって、優れた耐湿熱白化性を発揮する。
【0066】
本実施形態に係る粘着剤は、1.0MHzにおける誘電率が2.0〜8.0であることが好ましく、特に2.0〜7.0であることが好ましく、さらには2.0〜6.0であることが好ましい。粘着剤の誘電率が2.0〜8.0であることにより、粘着剤に起因するタッチパネルの誤作動を効果的に抑制することができる。なお、粘着剤の誘電率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0067】
〔粘着シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。ただし、粘着シート1において剥離シート12a,12bは必須の構成要素ではなく、粘着シート1の使用時に剥離・除去されるものである。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0068】
(1)粘着剤層
粘着剤層11は、前述した粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤から構成される。粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、10〜300μmであることが好ましく、特に25〜250μmであることが好ましく、さらには50〜100μmであることが好ましい。粘着剤層11の厚さが10μm以上であることにより、優れた粘着力が十分に発揮され、粘着剤層11の厚さが300μm以下であることにより、加工性が良好になる。また、粘着剤層11の厚さが25〜100μmであると、光学用途、特にタッチパネル用途として好適なものとなる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0069】
(2)剥離シート
剥離シート12a,12bとしては、特に限定されることはなく、公知のプラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0070】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0071】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0072】
(3)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0073】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0074】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0075】
(4)ヘイズ値
本実施形態における粘着剤層11は、ヘイズ値(JIS K7136:2000に準じて測定した値)が、1.0%以下であることが好ましく、特に0.8%以下であることが好ましく、さらには0.6%以下であることが好ましい。ヘイズ値が1.0%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途として好適なものとなる。なお、粘着剤層11のヘイズ値は、後述する耐湿熱白化性の評価試験後においても上記範囲内にあることが特に好ましい。
【0076】
(5)粘着シートの使用
上記粘着シート1を使用することにより、例えば、
図2に示す静電容量方式のタッチパネル2を製造することができる。タッチパネル2は、表示体モジュール3と、その上に粘着剤層4を介して積層された第1のフィルムセンサー5aと、その上に粘着剤層11を介して積層された第2のフィルムセンサー5bと、その上に粘着剤層11を介して積層されたカバー材6とを備えて構成される。
【0077】
上記のタッチパネル2における粘着剤層11は、上記粘着シート1の粘着剤層11である。
【0078】
上記表示体モジュール3としては、例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール、電子ペーパー等が挙げられる。
【0079】
粘着剤層4は、上記粘着シート1の粘着剤層11によって形成してもよいし、他の粘着剤または粘着シートによって形成してもよい。後者の場合、粘着剤層4を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられるが、中でもアクリル系粘着剤が好ましい。
【0080】
本実施形態における第1のフィルムセンサー5aおよび第2のフィルムセンサー5bは、それぞれ基材フィルム51と、基材フィルム51に形成された金属メッシュからなる電極52とを備える。基材フィルム51としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム等が使用される。
【0081】
電極52を構成する金属メッシュの金属としては、銅、銀等が挙げられるが、特に銅が好ましい。銅によれば、抵抗値を10Ω/□以下に下げることができ、タッチパネルを大型化することができる。ただし、銅は、白金、金、銀等の貴金属と比較して、また、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電材料と比較して、腐食し易い。しかし、前述した粘着性組成物Pから形成された粘着剤層11によれば、銅メッシュからなる電極52の腐食を抑制することができる。
【0082】
第1のフィルムセンサー5aの電極52および第2のフィルムセンサー5bの電極52は、通常、一方がX軸方向の回路パターンを構成し、他方がY軸方向の回路パターンを構成する。
【0083】
本実施形態における第2のフィルムセンサー5bの電極52は、
図2中、第2のフィルムセンサー5bの上側に位置している。一方、第1のフィルムセンサー5aの電極52は、
図2中、第1のフィルムセンサー5aの上側に位置しているが、これに限定されるものではなく、第1のフィルムセンサー5aの下側に位置してもよい。
【0084】
カバー材6は、通常、ガラス板またはプラスチック板を主体とする。ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、ポリメチルメタクリレート等からなるアクリル板、ポリカーボネート板などが挙げられる。
【0085】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層等の機能層が設けられていてもよいし、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム等の光学部材が積層されていてもよい。
【0086】
本実施形態において、上記カバー材6は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層7の有無による段差を有している。印刷層7は、カバー材6における粘着剤層11側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0087】
印刷層7を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層7の厚さ、すなわち段差の高さは、3〜45μmであることが好ましく、5〜35μmであることがより好ましく、7〜25μmであることが特に好ましく、7〜15μmであることがさらに好ましい。
【0088】
また、印刷層7の厚さ(段差の高さ)は、粘着剤層11の厚さの3〜30%であることが好ましく、特に3.2〜20%であることが好ましく、さらには3.5〜15%であることが好ましい。これにより、粘着剤層11は、印刷層7による段差に追従し易く、段差近傍に浮きや気泡等が発生することが抑制される。
【0089】
上記タッチパネル2の製造方法の一例を、以下に説明する。
粘着シート1として、第1の粘着シート1および第2の粘着シート1を用意する。第1の粘着シート1から一方の剥離シート12aを剥離し、露出した粘着剤層11(第1の粘着剤層11)を、第2のフィルムセンサー5bの電極52と接するように、当該第2のフィルムセンサー5bと貼合する。また、第2の粘着シート1から一方の剥離シート12aを剥離し、露出した粘着剤層11(第2の粘着剤層)を、第1のフィルムセンサー5aの電極52と接するように、当該第1のフィルムセンサー5aと貼合する。
【0090】
そして、第2の粘着シートにおける他方の剥離シート12bを剥離し、露出した第2の粘着剤層11が、上記第2のフィルムセンサー5bにおける第1の粘着剤層11が積層された側とは反対側の面(第2のフィルムセンサー5bの基材フィルム51の露出面)に接するように、両者を貼合する。これにより、剥離シート12b、第1の粘着剤層11、第2のフィルムセンサー5b、第2の粘着剤層11および第1のフィルムセンサー5aが順次積層されてなる積層体が得られる。
【0091】
次に、上記積層体の第1のフィルムセンサー5a側の面(第1のフィルムセンサー5aの基材フィルム51の露出面)に、剥離シート上に設けられた粘着剤層4を貼合する。続いて、上記積層体から剥離シート12bを剥離し、露出した第1の粘着剤層11に対して、カバー材6の印刷層7側が当該粘着剤層11に接するように、当該カバー材6を貼合する。これにより、カバー材6、第1の粘着剤層11、第2のフィルムセンサー5b、第2の粘着剤層11、第1のフィルムセンサー5a、粘着剤層4および剥離シートが順次積層されてなる構成体が得られる。
【0092】
最後に、上記構成体から剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層4が表示モジュール3に接するように、当該構成体を表示モジュール3に貼合する。これにより、
図2に示されるタッチパネル2が製造される。
【0093】
上記タッチパネル2が高温高湿条件(例えば、85℃、85%RHの条件下にて240時間)におかれた後、常温常湿に戻されたときにも、粘着剤層11(第1の粘着剤層11,第2の粘着剤層11)は耐湿熱白化性に優れるため、白化することが抑制される。具体的には、粘着剤層11のヘイズ値は、1.0%以下を維持することができる。
【0094】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0095】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0097】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル共重合体の調製
アクリル酸2−エチルヘキシル60質量部、メタクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル20質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0098】
2.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)としての1H−ベンゾトリアゾール(城北化学工業社製,製品名「BT−120」)0.3質量部と、架橋剤(C)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)0.15質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度25質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0099】
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸n−ブチル
[ベンゾトリアゾール系防錆剤(B)]
防錆剤B1:1H−ベンゾトリアゾール(城北化学工業社製,製品名「BT−120」)
防錆剤B2:1H−トリルトリアゾール(シプロ化成社製,製品名「SEETEC TT−R」)
防錆剤B3:1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(城北化学工業社製,製品名「BT−LX」)
防錆剤B4:1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール(城北化学工業社製,製品名「TT−LX」)
【0100】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382150」,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0101】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382120」,厚さ:38μm)の剥離処理面が上記塗布層に接するように、当該軽剥離型剥離シートを上記塗布層に貼合した。その後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを製造した。
【0102】
〔実施例2〜5,比較例1〜2〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、ならびにベンゾトリアゾール系防錆剤(B)の種類を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0103】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0104】
〔試験例1〕(耐湿熱白化性評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、70mm×70mmサイズの無アルカリガラス(厚さ:1mm)2枚で挟み、その積層体を50℃、0.5MPaの条件で30分間オートクレーブ処理し、これをサンプルとした。
【0105】
得られたサンプルを、85℃、85%RHの湿熱条件下にて240時間保管した。その後、23℃、50%RH(常温常湿)の雰囲気に戻し、粘着剤層のヘイズ値を測定した。ヘイズ値は、サンプルを上記常温常湿の雰囲気に戻してから30分以内に、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH−5000」)を用いて測定した。測定したヘイズ値に基づき、以下の基準により耐湿熱白化性を評価した。結果を表1に示す。
○:ヘイズ値が1.0%以下であった
×:ヘイズ値が1.0%超であった
【0106】
〔試験例2〕(腐食抑制評価)
(1)銅メッシュ積層フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製,製品名「PET100A4100」,厚さ:100μm)と、片面を黒化処理した銅箔(古河サーキットフォイル社製,製品名「BW−S」,厚さ:10μm)と、ポリウレタン系接着剤(武田薬品工業社製,タケラックA310/タケネートA10/酢酸エチル=12/1/21(質量比))とを用意した。
【0107】
上記ポリウレタン系接着剤を使用して、上記銅箔の黒化処理面とは反対側の表面と、上記PETフィルムとを貼合し、PETフィルム/接着剤層/銅箔からなる積層体を得た。
【0108】
得られた積層体の銅箔側(黒化処理面)にカゼインを塗布し、乾燥させて、感光性樹脂層とした。そして、パターンが形成されたマスクを介して上記感光性樹脂層に対して紫外線の密着露光を行い、水で現像した。マスクとしては、線幅10μm、ピッチ300μmのパターンを有するものを使用した。次いで、硬化処理を施した後、100℃でベーキングを行い、レジストパターンを形成した。
【0109】
レジストパターンが形成された積層体に、レジストパターン側から塩化第二鉄溶液(ボーメ度:42,温度:30℃)を噴射してエッチングを行い、水洗いした。次いで、アルカリ溶液を用いてレジストパターンを剥離した後、洗浄および乾燥処理を行った。このようにして、PETフィルム/接着剤層/銅メッシュからなる銅メッシュ積層フィルムを得た。
【0110】
(2)腐食抑制評価
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、上記銅メッシュ積層フィルムの銅メッシュ側に貼付した。その後、粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層に対して、PETフィルム(東洋紡績社製,製品名「PET A4100」,厚さ:100μm)を貼付し、PETフィルム/接着剤層/銅メッシュ/粘着剤層/PETフィルムからなる積層体を得て、これをサンプルとした。
【0111】
上記サンプルを、85℃、85%RHの湿熱条件下にて250時間保管した。その後、銅メッシュの腐食の有無を目視により確認し、以下の基準により腐食抑制の性能を評価した。結果を表1に示す。
○:銅メッシュに腐食がなかった
×:銅メッシュに腐食があった
【0112】
〔試験例3〕(誘電率の算出)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、実施例および比較例と同様にして厚さ100μmの粘着剤層を形成し、その粘着剤層に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼合した後、50mm×50mmに裁断した。得られた積層体について、インピーダンスアナライザ(日本ヒューレット・パッカード社製,「HP−4194A」)を使用して静電容量(C1)を測定した。また、上記厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを2枚重ねて50mm×50mmに裁断し、同様にして静電容量(C2)を測定した。そして、C1からC2を差し引いて、粘着剤の静電容量(C3)を算出した。この静電容量C3に基づき、下記の式から粘着剤の誘電率ε
sを算出した。結果を表1に示す。
【0113】
ε
s=(C3×d)/(ε
0×S)
ε
s:粘着剤の誘電率
ε
0:真空の誘電率(8.854×10
−12)
C3:粘着剤の静電容量
S:粘着剤層の面積
d:粘着剤層の厚さ
【0114】
上記の結果より、粘着剤層の誘電率ε
sが2.0〜8.0のものを良好(○)、8.0超のものを不良(×)と評価した。この評価結果も併せて表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
表1から分かるように、実施例で得られた粘着シートは、耐湿熱白化性および腐食抑制効果に優れ、また、誘電率も十分に低く良好であった。