(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鋼管杭は、施工法によっていくつかの種類に分類できる。例えば、打撃杭は、打撃工法で支持層まで打ち込まれる鋼管杭である。鋼管杭の先端部の内周面と地盤との間に生じる摩擦力(管内摩擦力)は、杭径に比例して増大する。一方、鋼管杭の先端部の断面積(閉鎖断面積)は、杭径の二乗に比例して増加する。従って、鋼管杭の杭径が大きいほど、鋼管杭の管内摩擦力が、鋼管杭の閉鎖断面積に対して相対的に小さくなり、十分な先端閉塞効果が得られなくなる。その結果、鋼管杭の先端支持力も低下する。
【0003】
従来では、鋼管杭の先端閉塞効果を向上させるために、鋼管杭の管内摩擦力を増大させる方法として、鋼管杭の先端部の内部に、鋼管杭の横断面を分割する分割部材を取り付けることにより、鋼管杭の先端部の総表面積を大きくする方法が知られている(例えば、下記非特許文献1参照)。
【0004】
図13Aは、鋼管杭100の先端部の内部に、互いに直交する複数の鋼板で構成された分割部材110が取り付けられた状態を模式的に示す図である。分割部材110は、鋼管杭100の先端部の内周面に溶接されている。
【0005】
鋼管杭100の先端閉塞効果を確実に向上させるために、鋼管杭100の長さ方向(軸線方向)における分割部材110の長さは、鋼管杭100の外径Dの2倍以上に設定されることが望ましい。しかしながら、鋼管杭100の外径Dの2倍以上の長さを有する分割部材110を鋼管杭100の内部に取付ける場合、作業者が鋼管杭100の内部に入って溶接作業を行う必要がある。その結果、作業者の肉体的な負担が増えるという問題が生じる。
【0006】
また、分割部材110の取付けによって、鋼管杭100の先端閉塞効果が向上するとともに、打撃工法によって地盤に打ち込まれる鋼管杭100の先端部と地盤との間に生じる抵抗も大きくなる。その結果、鋼管杭100に打撃を加えても、鋼管杭100が目標の支持層に到達する前に、貫入できなくなる(打ち込みが不可能になる)場合がある。
【0007】
この場合、対策として、鋼管杭100に加えられる打撃力を大きくすることが考えられる。しかしながら、打撃工法を採用する場合、杭打機などの重機が大型化する。このため、設備費用の増加や施工性の低下を招く。また、大きな騒音及び振動が発生するので、市街地のように環境規制の厳しい地域では、単純に打撃力を大きくすることは難しい。従って、大きな杭径(外径D)を有する鋼管杭100に分割部材110を取り付けたとしても、そのような鋼管杭100を打撃工法によって支持層まで打ち込むことは困難になる場合がある。
【0008】
一方、環境規制の厳しい地域では、鋼管杭の打ち込み時に発生する騒音及び振動を抑制可能な中堀工法又はセメントミルク工法が広く用いられている。これらの工法では、掘削ロッドが鋼管杭の内部に挿入された状態で、掘削ロッドによる地盤の掘削と鋼管杭の沈設とが同時に行われ、掘削ロッドによって乱された支持層に流動性固化材(セメントミルク等)が注入される。支持層に注入された流動性固化材が固化することにより、鋼管杭の先端部を覆うように根固め球根が造成される。根固め球根の造成によって、鋼管杭の先端部が閉塞されるとともに、掘削ロッドによって乱された地盤が修復される(例えば、下記特許文献1〜5及び下記非特許文献1参照)。
【0009】
図13Bは、中堀工法によって鋼管杭100が打ち込まれる様子を模式的に示す図である。鋼管杭100の先端部が支持層に到達するまで、鋼管杭100の内部に挿入された掘削ロッド120によって地盤が掘削される。鋼管杭100の先端部が支持層に到達した後、掘削ロッド120によって乱された支持層と、鋼管杭100の先端部内とに、掘削ロッド120の先端部から流動性固化材(セメントミルク等)が注入されて、根固め球根130が築造される。
【0010】
中堀工法またはセメントミルク工法を採用することにより、鋼管杭100の打ち込み時に発生する騒音及び振動を抑制することができるので、市街地等の環境規制の厳しい地域で鋼管杭100を打設することが可能である。しかしながら、上記のように、中堀工法及びセメントミルク工法では、掘削ロッド120を鋼管杭100の内部に挿入する必要があるので、先端閉塞効果を高めるための分割部材110を鋼管杭100に取り付けることはできない。
【0011】
中堀工法またはセメントミルク工法によって打設された鋼管杭100の先端部は、鋼管杭100の先端部の内部に充填されたソイルセメントと鋼管杭100の表面との間に生じる摩擦力によって拘束される。この拘束力が先端閉塞効果を発揮する。
【0012】
鋼管杭100の外径Dが大きくなるほど、先端閉塞効果が減少する。従って、上記拘束力を得るためには、鋼管杭100の先端部の内部におけるソイルセメント長(根固め球根の長さ)を長くする必要がある。また、根固め球根の伸長に伴い、多量のセメントミルク等を鋼管杭100及び地盤に注入する必要があるので、施工時間が長くなるとともに、施工費が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、厳しい環境規制の下では、鋼管杭の打ち込み時に発生する振動及び騒音を抑制可能な中堀工法又はセメントミルク工法の適用が増加している。しかしながら、打撃工法とは異なり、中堀工法又はセメントミルク工法では、掘削ロッドを鋼管杭の内部に挿入する必要があるので、鋼管杭の先端部の内部に、先端閉塞効果を高めるための分割部材を付設することができない。
【0016】
そのため、中堀工法又はセメントミルク工法を採用する場合、流動性固化材が固化することで築造された根固め球根による鋼管杭の拘束力を向上させるためには、鋼管杭の外径が大きいほど、鋼管杭の先端部内の根固め球根の長さを長くする必要がある。根固め球根の長さが鋼管杭の外径に対して適切でない場合、支持層による鋼管杭の支持力を最大限に得ることができない。そのため、構造物全体の所要の支持力を得るために、鋼管杭の本数を増加する必要があり、施工費の増加、及び施工期間の長期化などの経済的負担が増大する。
【0017】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、流動性固化材が固化することで築造された根固め球根による鋼管杭の拘束力を高めることにより、先端支持力を最大限に得ることが可能な鋼管杭及び鋼管杭の施工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決して係る目的を達成するために、以下の手段を採用する。
(1)本発明の一態様に係る鋼管杭は、鋼管で構成された杭本体と;前記杭本体の先端部の内部に
接合され、前記杭本体の横断面を複数に分割する分割部材と;前記杭本体の前記先端部の外周面及び前記杭本体の前記先端部の内周面の少なくとも一方に装着され、水及び流動性固化材を選択的に噴射する噴射ノズルと;前記噴射ノズルに前記水及び前記流動性固化材を選択的に供給する配管と;を備え
、前記分割部材は、前記流動性固化材の固化によって根固め球根を築造するための部材であるとともに、前記杭本体の軸線方向に対して平行となるように、前記杭本体の前記先端部の内部に取り付けられた鋼板であり、前記分割部材には、別の噴射ノズルが装着されている。
【0019】
(2)上記(1)に記載の鋼管杭において、
前記杭本体の軸線方向における前記分割部材の長さが、前記杭本体の外径の0.5倍以上2倍未満である。
【0023】
(
3)上記(1)
または(2)に記載の鋼管杭において、複数の前記噴射ノズルが、前記杭本体の前記先端部の前記外周面及び前記内周面の少なくとも一方に装着されており、複数の前記噴射ノズルのそれぞれの噴射方向が、前記杭本体の軸線方向と交差していてもよい。
【0024】
(
4)上記(1)〜(
3)のいずれか一つに記載の鋼管杭において、
前記分割部材は、外径が1000mmを超えた前記杭本体に設けられていてもよい。
【0026】
(
5)上記(1)〜(
4)のいずれか一つに記載の鋼管杭において、前記分割部材が貫通孔を備えていてもよい。
【0028】
(
6)上記(1)〜(
5)のいずれか一つに記載の鋼管杭において、前記噴射ノズル及び前記配管が、前記杭本体に対して着脱自在に装着されていてもよい。
【0029】
(
7)本発明の一態様に係る鋼管杭の施工法は、上記(1)〜(
6)のいずれか一つに記載の鋼管杭を、前記噴射ノズルから前記水を噴射しつつ支持層中の最大掘削深度まで打ち込む工程と;前記噴射ノズルから前記流動性固化材を噴射しつつ前記鋼管杭を所定の引上深度まで引き上げる工程と;前記噴射ノズルから前記流動性固化材を引続き噴射しつつ、前記鋼管杭を前記支持層中の定着深度まで打ち込む工程と;前記流動性固化材の固化により、前記鋼管杭の根固め球根を築造する工程と;を有する。
【0030】
(
8)本発明の他の態様に係る鋼管杭の施工法は、上記(
6)に記載の鋼管杭を、前記噴射ノズルから前記水を噴射しつつ支持層中の最大掘削深度まで打ち込む工程と;前記噴射ノズルから前記流動性固化材を噴射しつつ前記鋼管杭を所定の引上深度まで引き上げる工程と;前記噴射ノズルから前記流動性固化材を引続き噴射しつつ、前記鋼管杭を前記支持層中の定着深度まで打ち込む工程と;前記噴射ノズルからの前記流動性固化材の噴射を一旦停止した状態で、前記噴射ノズル及び前記配管を前記鋼管杭から切り離す工程と;前記噴射ノズルから前記流動性固化材を噴射しつつ、前記噴射ノズル及び前記配管を地上へ引き上げる工程と;前記流動性固化材の固化により、前記鋼管杭の根固め球根を築造する工程と;を有する。
【0031】
(
9)本発明の他の態様に係る鋼管杭の施工法は、上記(
6)に記載の鋼管杭を、前記噴射ノズルから前記水を噴射しつつ支持層中の最大掘削深度まで打ち込む工程と;前記噴射ノズルから前記流動性固化材を噴射しつつ前記鋼管杭を所定の引上深度まで引き上げる工程と;前記噴射ノズルから前記流動性固化材を引続き噴射しつつ、前記鋼管杭を前記支持層中の定着深度まで打ち込む工程と;前記噴射ノズルからの前記流動性固化材の噴射を一旦停止した状態で、前記配管の少なくとも一部を前記鋼管杭から切り離す工程と;切り離した前記配管の先端から前記流動性固化材を噴射しつつ、切り離した前記配管の一部を地上へ引き上げる工程と;前記流動性固化材の固化により、前記鋼管杭の根固め球根を築造する工程と;を有する。
【0032】
(10)上記(
7)〜(
9)のいずれか一つに記載の鋼管杭の施工法において、前記鋼管杭を前記最大掘削深度まで打ち込む工程の後、前記鋼管杭を前記引上深度まで引き上げる工程の前に、前記噴射ノズルから前記流動性固化材または前記水を噴射しつつ、前記鋼管杭を引き上げ、さらに前記鋼管杭を打ち込む工程を少なくとも1回行ってもよい。
【発明の効果】
【0033】
上記態様によれば、流動性固化材が固化することで築造された根固め球根と杭本体の先端部の内部(杭本体の先端部及び分割部材)との接触面積が増加するので、根固め球根に対する鋼管杭の拘束力を高めることができる。
従って、上記態様によれば、鋼管杭(杭本体)の外径が大きい場合に、杭本体の内部における根固め球根の長さを短くしても、接触面積は確保されており、鋼管杭の拘束力を十分に得ることができるので、支持層による鋼管杭の先端支持力を最大限に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る鋼管杭1の側面図である。
図1Bは、
図1Aに示す鋼管杭1のA−A矢視断面図である。
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態に係る鋼管杭1は、杭本体2と、分割部材3と、複数(例えば6個)の噴射ノズル4と、複数(例えば6本)の配管5とを備えている。
【0037】
杭本体2は、軸線方向AXに沿って一定の外径Dを有する鋼管で構成されている。以下では、杭本体2の2つの端部のうち、分割部材3が取り付けられる一方の端部を先端部と呼称し、他方の端部を後端部と呼称する。
【0038】
分割部材3は、矩形形状を有する一枚の平らな鋼板である。この分割部材3は、杭本体2の先端部の内部において、杭本体2の横断面を2つに分割するように取り付けられている。分割部材3は、杭本体2の軸線方向AXに対して平行となるように、杭本体2の内周面2aに溶接されている。後述するように、杭本体2の軸線方向AXにおける分割部材3の長さLは、杭本体2の外径Dの2倍未満が好ましい。
【0039】
上記のように、分割部材3として、平板状の金属部材を使用することが好ましい。特に、分割部材3として使用される鋼板は、鋼管杭1の打設及び杭先端支持力に耐え得る強度と板厚を有することが好ましい。分割部材3を杭本体2に接合する方法は特に問わない。例えば、ボルト接合を採用することができる。しかし、分割部材3と杭本体2の接合方法は溶接が好ましい。この場合、分割部材3として使用される鋼板の材質は、杭本体2の材質と同一であることが好ましいが、溶接性の良好な材質であれば、杭本体2と異なる材質でもよい。
【0040】
6個の噴射ノズル4は、杭本体2の先端部の外周面2b上において、杭本体2の周方向に沿って一定間隔で装着されている。噴射ノズル4の各々は、杭本体2の軸線方向AXに沿って、水及び流動性固化材(例えばセメントミルク)を選択的に噴射する。つまり、各噴射ノズル4の噴射方向JDは、軸線方向AXに対して平行であって且つ軸線方向AXの外向きの方向である。各噴射ノズル4から水が噴射される場合、
図1Bに示す掘削範囲4aに含まれる地盤が掘削される。本実施形態において、各噴射ノズル4は、杭本体2に対して着脱自在に装着されている。
【0041】
6本の配管5は、6個の噴射ノズル4と一対一で対応している。つまり、一つの噴射ノズル4に対して一本の配管5が接続されている。各配管5は、杭本体2の外周面2b上において、杭本体2の軸線方向AXに沿って延びるように配置されている。水及び流動性固化材は、配管5を介して噴射ノズル4へ選択的に供給される。本実施形態において、各配管5は、噴射ノズル4と同じく、杭本体2に対して着脱自在に装着されている。なお、
図1A及び
図1Bに示す本発明の一実施形態に係る鋼管杭1では、配管5と噴射ノズル4が一対一で対応した例を示したが、これに限らず、複数の噴射ノズル4に対して一本の配管から分岐した配管が接続されていてもよく、一つの噴射ノズル4に対して複数の配管が接続されていてもよい。
【0042】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る鋼管杭1の施工法について説明する。
まず、
図2A中の第1工程に示すように、鋼管杭1の先端部(つまり杭本体2の先端部)が地表GSに接触した状態で、鋼管杭1が地表GSに立設された後、鋼管杭1の後端部(つまり杭本体2の後端部)にバイブロハンマBHが装着される。バイブロハンマBHは、不図示のクレーンによって吊り下げられている。
【0043】
また、鋼管杭1の各配管5は、不図示の流体供給装置に接続されている。この流体供給装置は、作業者による操作に応じて、水及び流動性固化材を選択的に各配管5に供給する機能を有している。この時点では、流体供給装置から各配管5へ供給される流体は水に設定されている。
【0044】
続いて、
図2A中の第2工程に示すように、鋼管杭1の各噴射ノズル4から高圧水(ウオータージェット)WJが噴射されながら、バイブロハンマBHによって軸線方向AXに作用する振動が鋼管杭1に加えられる。高圧水WJの噴射及び鋼管杭1の振動によって、鋼管杭1の打設方向(鉛直下向きの方向)に存在する地盤が掘削され、打設方向に沿って鋼管杭1の打設穴DHが形成される。鋼管杭1は、自重とバイブロハンマBHの重量とによって打設穴DHに沿って沈降する。
【0045】
続いて、
図2A中の第3工程に示すように、鋼管杭1の先端部が支持層内の最大掘削深度まで到達すると、各噴射ノズル4による高圧水WJの噴射が停止されるとともに、バイブロハンマBHの振動発生動作も停止される。これにより、鋼管杭1は、最大掘削深度で停止する。このように、鋼管杭1が最大掘削深度で停止した状態で、流体供給装置から各配管5へ供給される流体が、水から流動性固化材(例えばセメントミルク)に切替えられる。
【0046】
続いて、
図2B中の第4工程に示すように、バイブロハンマBHの振動発生動作が再開され、鋼管杭1の各噴射ノズル4から流動性固化材SMが噴射されながら、鋼管杭1が所定の引上深度に戻るまで、バイブロハンマBHがクレーンによって引き上げられる。このように、鋼管杭1が最大掘削深度から引上深度まで引き上げられると、打設穴DHにおける最大掘削深度と引上深度との間の区間は、流動性固化材SMによって満たされる。
【0047】
図2B中の第5工程に示すように、鋼管杭1が引上深度に到達した後も、各噴射ノズル4から流動性固化材SMを噴射しつつ、クレーンによるバイブロハンマBHの引き上げ(つまり鋼管杭1の引き上げ)が停止される。鋼管杭1は、自重とバイブロハンマBHの重量とによって打設穴DHに沿って再び沈降を開始する。そして、
図2B中の第6工程に示すように、鋼管杭1が定着深度に到達すると、クレーンのワイヤが固定されて、打設穴DHにおける鋼管杭1の位置が定着深度で維持される。
なお、定着深度は、支持層内において、最大掘削深度よりも浅く、且つ引上深度よりも深い位置に設定されている。また、定着深度と引上深度との間の距離は、杭本体2の軸線方向AXにおける分割部材3の長さLよりも長いことが好ましい。
【0048】
そして、
図2C中の第7工程に示すように、鋼管杭1の位置が定着深度で維持された状態で、鋼管杭1の各噴射ノズル4から流動性固化材SMが噴射されながら、噴射ノズル4及び配管5が地上へ引き上げられる。噴射ノズル4及び配管5の引き上げに先立ち、噴射ノズル4から流動性固化材SMの噴射を一旦停止した状態で、噴射ノズル4及び配管5を鋼管杭1から切り離す必要がある。
図2C中の第7工程では、噴射ノズル4及び配管5を地上へ引き上げる例を示したが、噴射ノズル4と配管5との接合部から配管5を分離し、配管5のみを地上へ引き上げてもよい。または、噴射ノズル4から流動性固化材SMの噴射を一旦停止した状態で、配管5の少なくとも一部を鋼管杭1から切り離し、切り離した配管の先端から流動性固化材SMを噴射しつつ、切り離した配管の一部のみを地上へ引き上げてもよい。
そして、
図2C中の第8工程に示すように、噴射ノズル4及び配管5の引き上げ(回収)が完了し、流動性固化材SMが固化した後、バイブロハンマBHが杭本体2から外されて、鋼管杭1の施工(打設)が完了する。
【0049】
図2Cに示すように、噴射ノズル4及び配管5の回収が完了した後、打設穴DH内には、鋼管杭1の構成要素のうち、杭本体2と、杭本体2の先端部の内周面2aに取付けられた分割部材3(
図2Cでは図示省略)とが残り、打設穴DHにおける引上深度と地表GSとの間の区間にも、流動性固化材SMが充填される。
すなわち、杭本体2の外周面2bのうち、地表GSと定着深度との間に含まれる領域が流動性固化材SMによって覆われるとともに、杭本体2の内部空間(分割部材3によって分割された空間も含む)のうち、引上深度と定着深度との間の空間に流動性固化材SMが充填される。
【0050】
このような状態で流動性固化材SMが固化すると、
図3に示すように、杭本体2の先端部を覆うように、根固め球根FPB(ソイルセメント固化体)が築造される。この根固め球根FPBは、杭本体2の内部空間(分割部材3によって分割された空間も含む)のうち、引上深度と定着深度との間の空間にも隙間なく入り込んでいる。
【0051】
上記のような根固め球根FPBが築造されることにより、杭本体2の内周面2a及び分割部材3の表面が、根固め球根FPB、つまりソイルセメント固化体と接触する。その結果、根固め球根FPBと杭本体2の先端部内部との接触面積が大きくなるので、根固め球根FPBによる杭本体2の拘束力が高まる。
【0052】
既に述べたように、従来技術では、鋼管杭の外径が大きい場合、根固め球根による鋼管杭の拘束力を高めて、十分な先端閉塞効果(先端支持力)を得るためには、鋼管杭の内部における根固め球根の長さ(ソイルセメント固化体の長さ)を長くする必要がある。
【0053】
しかしながら、本実施形態によれば、上記のように、根固め球根FPBと杭本体2の先端部内部との接触面積の増加によって、根固め球根FPBによる杭本体2の拘束力を高めることができる。従って、本実施形態によれば、杭本体2の外径Dが大きい場合に、杭本体2の内部における根固め球根FPBの長さを短く設定したとしても、根固め球根FPBによる杭本体2の拘束力を十分に確保することができ、その結果、杭本体2の先端閉塞効果(先端支持力)を最大限に得ることができる。
【0054】
特に、杭本体2の外径Dが1000mmを越える場合、杭本体2の先端部における分割部材3の有無によって、根固め球根FPBによる杭本体2の拘束力は大きく異なるので、分割部材3の取付けによって得られる先端支持力の向上効果は顕著である。
【0055】
また、本実施形態では、定着深度と引上深度との間の距離を、杭本体2の軸線方向AXにおける分割部材3の長さLよりも長く設定している。そのため、
図3に示すように、杭本体2の内部空間のうち、分割部材3の上方の空間にまで根固め球根FPBが入り込んでいる。このように、本実施形態によれば、根固め球根FPBによって分割部材3の上端が覆われることにより、根固め球根FPBによるアンカー効果も得られるので、杭本体2の先端支持力をより向上させることができる。
【0056】
ここで、根固め球根FPBと一体化する分割部材3の長さLについて説明する。既に述べたように、打撃工法によって打設される鋼管杭に分割部材を取り付ける場合、分割部材の長さを鋼管杭の外径の2倍以上に設定することが好ましい。しかしながら、本実施形態では、
図3に示すように、分割部材3は、流動性固化材SMと一体化して、杭本体2の先端部とともに根固め球根FPBを築造するので、分割部材3の長さLは、流動性固化材SMと一体化する長さであれば十分である。
【0057】
分割部材3の長さLの上限は、地盤の状態及び杭本体2の外径Dに依存する。本願発明者らの試験結果によれば、根固め球根FPBによる拘束力を十分に確保するために、分割部材3の長さLは、杭本体2の外径Dの2倍未満であることが好ましい。分割部材3の長さLが杭本体2の外径Dの2倍以上の場合、作業者が杭本体2の内部に入って分割部材3の溶接作業を行う必要があるので、分割部材3の取付けのための作業時間が長くなり、作業者の肉体的な負担が増える。
【0058】
一方、分割部材3の長さLが短すぎると、分割部材3が流動性固化材SMと一体化しても、堅固な根固め球根FPBを築造するのが難しく、また、杭本体2と分割部材3との溶接部の品質及び強度を確保するのが難しい。分割部材3の長さLの下限は、地盤の状態、杭本体2の外径D、及び分割部材3による分割数に依存する。本願発明者らの試験結果によれば、分割部材3の長さLの下限は、杭本体2の外径Dの0.5倍以上が好ましい。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態では、噴射ノズル4が、杭本体2の先端部の外周面2bのみに装着されている場合を例示した。しかしながら、噴射ノズル4は、杭本体2の先端部の外周面2b、及び杭本体2の先端部の内周面2aの少なくとも一方に装着されていればよい。
【0060】
図4は、杭本体2の先端部の外周面2b及び内周面2aの両方に噴射ノズル4が装着された例を示す図である。
図4に示す例では、杭本体2の先端部の外周面2b上において、杭本体2の周方向に沿って3つの噴射ノズル4が装着され、杭本体2の先端部の内周面2a上において、杭本体2の周方向に沿って3つの噴射ノズル4が装着されている。
【0061】
杭本体2の内周面2aに装着された噴射ノズル4から高圧水を噴射することにより、鋼管杭1の打設方向に存在する地盤を効率的に掘削することができる。また、杭本体2の内周面2bが洗浄されるので、流動性固化材SMと杭本体2の内周面2aとの付着性が高まる。
【0062】
なお、鋼管杭1の先端部(つまり杭本体2の先端部)を優先的に閉塞させる場合、分割部材3により杭本体2の先端部の断面積が小さく分割されているので、杭本体2の内周面2aに配置された噴射ノズル4を引き上げつつ、その噴射ノズル4から流動性固化材SMを噴射することにより、杭本体2の内周面2a、分割部材3の表面及び流動性固化材SMを一体化する根固め球根FPBを築造することが可能となる。
【0063】
(2)上記実施形態では、噴射ノズル4の個数が6個の場合を例示したが、噴射ノズル4の個数、位置、及び配置間隔等は、地盤の状態及び杭本体2の外径Dなどに応じて適宜設定すればよい。
【0064】
(3)
図5に示すように、分割部材3に複数の貫通孔3aが設けられていてもよい。分割部材3(鋼板)に貫通孔3aを設けることにより、杭本体2の内部で固化した流動性固化材SMが貫通孔3aを介して分割部材3と一体となるので、分割部材3に対する拘束力がより向上し、杭本体2の支持力も向上する。貫通孔3aは、分割部材3に、少なくとも1つ以上設けられていればよい。貫通孔3aの数に制限はないが、分割部材3の強度、固化した流動性固化材SMの分割部材3に対する拘束力を考慮して、貫通孔3aの数を適宜設定することが好ましい。
【0065】
(4)上記実施形態では、1枚の平らな鋼板を分割部材3として用いて、杭本体2の横断面を2つに分割する場合を例示したが、杭本体1の横断面の分割数、及び分割部材3の配置は、地盤の状態や杭本体2の外径Dに応じて適宜設定すればよい。
【0066】
図6Aは、杭本体2の外周面2bに噴射ノズル4が配置され、杭本体2の中心で接合された3枚の分割部材6(平らな鋼板)によって、杭本体2の横断面が3つに分割された例を示す。
図6Bは、杭本体2の外周面2bに噴射ノズル4が配置され、2枚の円弧状の分割部材7によって、杭本体2の横断面が3つに分割された例を示す。
【0067】
杭本体2の横断面の分割数が増すと、分割部材6(または7)の表面積が増えるので、根固め球根FPBによる杭本体2の拘束力は増大する。しかしながら、分割部材6(または7)の取付け作業が煩雑になるので、杭本体2の外径Dを考慮したうえで、鋼管杭1の施工性を阻害しないように、杭本体2の横断面の分割数を適宜設定することが好ましい。
【0068】
また、杭本体2の横断面の分割数が増すと、分割部材6(または7)の表面積が増えるので、根固め球根FPBによる杭本体2の拘束力は増大する。そのため、杭本体2の軸線方向AXにおける分割部材6(または7)の長さは、分割部材3の長さLより短くてもよい。
【0069】
図7Aは、杭本体2の外周面2b及び内周面2aに噴射ノズル4が配置され、杭本体2の中心で接合された3枚の分割部材6(平らな鋼板)によって、杭本体2の横断面が3つに分割された例を示す。
図7Bは、杭本体2の外周面2b及び内周面2aに噴射ノズル4が配置され、2枚の円弧状の分割部材7によって、杭本体2の横断面が3つに分割された例を示す。
【0070】
図7A及び
図7Bに示す例では、杭本体2の外周面2b及び内周面2aに噴射ノズル4が配置されているので、内周面2aに配置された噴射ノズル4により、杭本体2の先端部における分割部分に流動性固化材SMを確実に噴射することができ、先端閉塞効果が著しく向上する。
【0071】
(5)上記のように、噴射ノズル4は杭本体2の外周面2b及び内周面2aの少なくとも一方に装着されていればよいが、鋼管杭1の打設速度を速め、また、先端閉塞効果を向上するためには、噴射ノズル4を、分割部材3(または、6、7)にも装着してもよい。
【0072】
図8は、
図1Bに示すような1枚の平らな鋼板である分割部材3の両面にも2つの噴射ノズル4が配置された例を示す。
図9Aは、
図6Aに示すような3つの分割部材6の片面に、それぞれ1つの噴射ノズル4が配置された例を示す。
図9Bは、
図6Bに示すような2つの円弧状の分割部材7の片面に、それぞれ1つの噴射ノズル4が配置された例を示す。
【0073】
噴射ノズル4の配置については、
図8、
図9A及び
図9Bに示す例に限定されない。例えば、
図8に示す例において、分割部材3の片面に2つの噴射ノズル4が配置されてもよい。
図9Aに示す例において、例えば、1つの分割部材6の両面に、合計2つ以上の噴射ノズル4が配置されてもよい。
図9Bに示す例において、1つの円弧上の分割部材7の内側に、少なくとも1つの噴射ノズル4が配置されてもよい。
【0074】
(6)上記実施形態では、各噴射ノズル4の噴射方向JDが、杭本体2の軸線方向AXに対して平行であって且つ軸線方向AXの外向きの方向である場合を例示した。しかしながら、各噴射ノズル4の噴射方向JDは、杭本体2の軸線方向AXに対して平行であって、かつ杭本体2の内周面2aの内側に向かうものであってもよい。各噴射ノズル4の噴射方向JDは、地盤の状態及び掘削効率等を考慮して設定することが好ましい。なお、各噴射ノズル4の噴射方向JDは、互いに異なっていてもよい。
【0075】
特に、硬質地盤に鋼管杭1を打設する場合は、鋼管杭1の中心部の地盤が掘削できない可能性もある。従って、地盤を容易に掘削するために、複数の噴射ノズル4が、杭本体2の先端部の外周面2b及び内周面2aの少なくとも一方に装着されている場合には、複数の噴射ノズル4のそれぞれの噴射方向JDが、杭本体2の軸線方向AXと交差することが好ましい。
【0076】
図10は、2つの噴射ノズル4の噴射方向が、杭本体2の軸線方向AXと交差する例を示す。
図10に示す例において、一枚の鋼板である分割部材3に配置された噴射ノズル4bの噴射方向JDは、杭本体2の軸線方向AXに対して平行であって、杭本体2の軸線方向AX上の点Xに向かうものである。一方、杭本体2の外周面2bに配置された、互いに対向する2つの噴射ノズル4cと4dの噴射方向JDは、杭本体2の軸線方向AX上の点Xで交差している。
【0077】
(7)杭本体2の先端部の外周面2bに、少なくとも1つの突起が設けられていてもよい。杭本体2の先端部の外周面2bに突起が設けられている場合、杭本体2の先端部を覆う根固め球根FPBと杭本体2の表面との接触面積が拡大するので、地盤による杭本体2の支持力が向上する。また、杭本体2の先端部の内周面2a及び分割部材3(または6,7)にも、少なくとも1つの突起が設けられていてもよい。
【0078】
図11Aは、外周面2bに4つの突起(鋼製プレート)が設けられた杭本体2を、軸線方向AXから視た模式図を示す。
図11Bは、外周面2bに4つの突起(鋼製プレート)が設けられた杭本体2を、軸線方向AXに直交する方向から視た模式図を示す。
図11A及び
図11Bにおいて、根固め球根FPBに埋没する杭本体2の先端部の外周面2bに、鋼製プレートである4つの突起11が、軸線方向AXに沿って溶接されている。
【0079】
なお、突起の数は、地盤の状態及び掘削効率等を考慮して、適宜設定すればよい。また、突起の形状はプレート形状に限定されないが、突起の形状は、プレート形状が好ましい。
【0080】
図12は、一枚の平らな鋼板である分割部材3に突起12(鉄筋)が設けられた例を示す。
図12に示すように、分割部材3の表面に、鉄筋である複数の突起12が、軸線方向AXに対して直交する方向に延びるように、且つ軸線方向AXに沿って一定の間隔で、溶接されている。
【0081】
なお、分割部材3(または、6、7)に設けられる突起の数は、地盤の状態及び掘削効率等を考慮して、適宜設定すればよい。また、分割部材3(または、6、7)に設けられる突起として、鉄筋の代わりに、リブ鋼板が設けられてもよい。また、突起は、溶接に限らずボルト接合などで形成してもよい。
【0082】
(8)上記実施形態では、噴射ノズル4及び配管5が、着脱自在に杭本体2に装着されている場合を例示した。この場合、上記実施形態で説明したように、鋼管杭1の施工法は、鋼管杭1を噴射ノズル4から高圧水WJを噴射しつつ支持層中の最大掘削深度まで打ち込む工程と;噴射ノズル4から流動性固化材SMを噴射しつつ鋼管杭1を所定の引上深度まで引き上げる工程と;噴射ノズル4から流動性固化材SMを引続き噴射しつつ、鋼管杭1を支持層中の定着深度まで打ち込む工程と;噴射ノズル4から流動性固化材SMの噴射を一旦停止した状態で、噴射ノズル4及び配管5を鋼管杭1から切り離す工程と;噴射ノズル4から流動性固化材SMを噴射しつつ、噴射ノズル4及び配管5を地上へ引き上げる工程と;流動性固化材SMの固化により、鋼管杭(つまり地中に残った杭本体2)の根固め球根を築造する工程とを有する。
このような上記実施形態に対し、噴射ノズル4及び配管5を地上に引き上げるのではなく、噴射ノズル4と配管5との接合部で配管5を切り離して配管5のみを地上に引き上げてもよい。または、噴射ノズル4から流動性固化材SMの噴射を一旦停止した状態で、配管5の少なくとも一部を鋼管杭1から切り離し、切り離した配管の先端から流動性固化材SMを噴射しつつ、切り離した配管の一部のみを地上へ引き上げてもよい。
また、鋼管杭1を、噴射ノズル4から水を噴射しつつ支持層中の最大掘削深度まで打ち込む工程の後、噴射ノズル4から流動性固化材SMを噴射しつつ鋼管杭1を所定の引上深度まで引き上げる工程の前に、噴射ノズル4から流動性固化材SMまたは水を噴射しつつ、鋼管杭1を引き上げ、さらに鋼管杭1を打ち込む工程を少なくとも1回行ってもよい。硬い地盤の場合は、この工程を繰り返すことで地盤を攪拌して根固め球根FPBの築造領域を十分に確保することができる。この工程では、固化を遅らせる観点から、流動性固化材SMではなく水を用いることが好ましい。
【0083】
さらに、このような上記実施形態に対して、噴射ノズル4及び配管5が杭本体2に固定されていてもよい。この変形例における鋼管杭1の施工法では、噴射ノズル4及び配管5は地上に引き上げられずに、杭本体2とともに地中に埋設される。
具体的には、この変形例における鋼管杭1の施工法は、鋼管杭1を噴射ノズル4から高圧水WJを噴射しつつ支持層中の最大掘削深度まで打ち込む工程と;噴射ノズル4から流動性固化材SMを噴射しつつ鋼管杭1を所定の引上深度まで引き上げる工程と;噴射ノズル4から流動性固化材SMを噴射しつつ、鋼管杭1を支持層中の定着深度まで打ち込む工程と;流動性固化材SMの固化により、鋼管杭1の根固め球根を築造する工程とを有する。
【0084】
つまり、この変形例における鋼管杭1の施工法では、
図2A及び
図2Bに示す第1〜第6工程まで上記実施形態の施工法と同じであるが、
図2Cに示す第7工程が省略されて、地中に鋼管杭1の構成要素の全てが残った状態で、根固め球根が築造されることになる。
【実施例】
【0085】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0086】
(実施例1) 1300mmの外径Dを有する杭本体(鋼管)を用意し、その杭本体の先端部に、杭本体の横断面を二分割する鋼板を、分割部材として溶接した。杭本体の軸線方向における分割部材の長さLは、杭本体の外径Dの0.5倍(つまり650mm)に設定された。
【0087】
6個の噴射ノズルが杭本体の外周面に装着され、4個の噴射ノズルが分割部材に装着された。これら10個の噴射ノズルに水及び流動性固化材を選択的に供給する10本の配管も杭本体に装着された。外周面に装着される噴射ノズルの配管は杭本体の外周面に沿って延長され、噴射ノズルに接続された。分割部材に装着される噴射ノズルの配管は杭本体の内周面及び分割部材に沿って延長されるとともに、杭本体と分割部材の接合部で屈折され、噴射ノズルに接続された。このように、本実施例における鋼管杭は、1300mmの外径Dを有する杭本体と、杭本体の先端部の内部に取付けられた分割部材と、10個の噴射ノズルと、10本の配管とによって構成された。
【0088】
10個の噴射ノズルから水を噴射して地盤を掘削しつつ、本実施例における鋼管杭を打設した。鋼管杭が、支持層に到達した後、噴射ノズルから噴射される流体を水から流動性固化材(セメントミルク)に切り替えて、根固め球根を築造した。
【0089】
本願発明者らは、本実施例における鋼管杭の先端支持力が11000kN程度であることを確認した。また、鋼管杭の内部をボーリングで掘削し、根固め球根の築造形状を調査したところ、分割部材の必要最大長さ(杭本体の外径Dの2倍未満)を一体化可能な、杭本体の外径Dの2倍以上の長さを有する根固め球根が築造されていたことを確認できた。
【0090】
上記先端支持力(11000kN)を発現した上記根固め球根のソイルセメントの強度を、該根固め球根からコアーを採取して、一軸圧縮試験で測定したところ、ソイルセメントの強度は15〜40MPaであった。
【0091】
ここで、上記先端支持力(11000kN)を、杭本体の横断面積(1.3m
2=(1.3m/2)
2×π)で割ると、ソイルセメントの必要強度として8.3MPaが得られる。
本実施例における根固め球根の強度は15〜40MPaであるから、必要強度8.3MPaを大幅に上回っている。
【0092】
したがって、杭本体の先端部に分割部材及び噴射ノズルが取り付けられた本実施例における鋼管杭を採用することにより、従来以上に強固な根固め球根を築造できることを確認することができた。