【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明によるロータリーソレノイドを用いたパチンコ玉発射機の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1及び
図2において、全体が枠状をなすステータ1の両面に第1、第2蓋体2,3が設けられ、この第1、第2蓋体2,3に設けられた第1、第2軸受4,5間には、ロータ6を有する回転軸7が回転自在に設けられている。
尚、前記回転軸7は、前記ロータ6を軸方向に沿って貫通している。
前記第2軸受5から外方に突出する前記回転軸7の一端7aには、鋼球20(パチンコ玉)を打つためのハンマー8が設けられている。
【0013】
前記ロータ6は、マグネットよりなり、その直径方向に着磁が形成されている。
前記ステータ1の内面には、180度対向するように内方へ突出する第1、第2突出ヨーク9,10が形成され、前記各突出ヨーク9,10には互いに直列接続された第1、第2コイル12,13が巻回して設けられている。
【0014】
前記各突出ヨーク9,10の内端には、前記ロータ6の周面に沿って曲折し全体形状が半円筒状をなす第1、第2半円筒部21,22が一体状に形成され、前記各半円筒部21,22の内端には一対の第1内端面21a及び一対の第2内端面22aが形成され、前記各第1内端面21aと各第2内端面22aとの間には、互いに磁気的に結合することのないような所定角度範囲の一対の空隙23が形成されている。
尚、前記各コイル12,13のコイル電流(励磁電流I)による第1磁束φ
1は、マグネットのロータ6による第2磁束φ
mより小となるように設定されている。
【0015】
図2は、
図1のステータ1とロータ6を用いたパチンコ玉発射機30を示す断面図であり、回転軸7の一端7aにパチンコ玉20を打つためのハンマー8が設けられている。
図4では、前記第2蓋体3に前記ハンマー8の戻り動作を停止させるためのゴム等の弾性体からなるストッパ31が前記第2蓋体3に設けられている。
前記第2蓋体3の前記ストッパ31の下方位置には、パチンコ玉20を発射するため前記パチンコ玉20を保持するためのレール32が設けられている。
【0016】
次に、動作について説明する。
図1に示した方向に励磁電流Iをコイルに流すと、磁束φ
1が生ずる。生じたφ
1によってトルクTが発生して、回転子角度θのマイナス方向へロータ6が回転するために鋼球を発射する。
パチンコ玉発射機30のパチンコ球飛距離は、パチンコ玉を発射するときの回転子の角速度ωに比例する。また、ωの時間変化である角加速度αは下式で与えられる。
α=T/J(rad/s
2) (1)
ここに、T:トルク(N・m).J:慣性モーメント(kgm
2)
パチンコ玉飛距離向上のためには、αを増加させる必要がある。従って、Tを増加させること、すなわち、回転子の初期位置から発射位置θ=0°までの角度(以下、振り角度)におけるTの面積を増加させる必要がある。そのため、ロータ6に
直径方向の着磁を施した永久磁石を用いて、振り角度を拡大する提案構造を提案している。
尚、
図3の(A)は磁束φ
1と磁束φ
m(φ
1<φ
m)の関係でロータ6が矢印の方向に回転し、
図3の(B)は磁束φ
1と磁束φ
mが吸引することにより
図3の(A)の戻る状態を示している。
【0017】
図1及び
図2に示したロータリーソレノイドを用いたパチンコ玉発射機30は、第2蓋体3に固定されたレール32によってパチンコ玉20が支持されており、ストッパ31によってハンマー8が初期位置に保持された構造である。コイル12,13は、導体径0.37mm、巻数200回のコイルボビンを使用しており、従来構造および提案構造では同一とした。また、提案構造と従来構造のロータ6の初期位置θは、それぞれ160°と54°とした。さらに、提案構造の永久磁石は、住友金属鉱山社製のNd−Fe−B系のプラスチックマグネット(Wellmax-N7S)を用いており、保持力H
c350kA/m、残留磁束密度B
r560mT、最大エネルギー積(BH)max51kJ/m
3の使用値である。
図6に励磁電流I=2Aにおけるシルクロータ角度特性を示した。提案構造において、H
e,B
r=100%を用いたFEM計算値と実測値は、θ=10−60°の範囲において差異が大きく、最大では26%の差となった。そこで、H
e,B
r=85%としたFEM計算値と実測値を比較するとθ=60−110°の範囲において差異が生じたが、最大でも9%の差となった。従って、永久磁石の特性が仕様値の85%程度しか得られなかったことから差が生じたと考えられる。また、実測値において、従来構造と提案構造の振り角度におけるTの面積は、従来構造と比較して1.35倍に増加した。
【0018】
図7にパチンコ玉飛距離の測定ブロック図を示した。また、電流励磁時間t
1は、電流を流してから鋼球を発射するまでに十分な時間(従来構造:29ms、提案構造:80ms)を実測から求めて適用した。
図8にパチンコ玉飛距離−励磁電流特性を示した。従来構造と提案構造のパチンコ玉飛距離は励磁電流I=2Aにおいて、それぞれ1.43mと2.61mであり、従来構造と比較して1.83倍に向上した。これは、ロータ6に
直径方向の着磁を施した永久磁石を用いたことによって、振り角度を拡大させることができ、Tの面積が増加したためである。すなわち、ロータ6の永久磁石とステータ1の電磁石による吸引トルクと反発トルクの2つを利用してハンマー8の可動角度を大きくして、ハンマー8の加速を向上させることができる。
【0019】
図9は本発明によるパチンコ玉発射機40の基本構成を示し、ロータ角度θ−トルクTのθ−T特性は
図10で示されるようにθ=170度(少なくとも160度まで)までトルクTを得ることができ、周知のFEMの計算に基づく磁束の分布予測は
図11から
図17で示されるように、0度、30度、60度、90度、120度、150度、180度の場合が示されている。
【0020】
図18は、比較例1のステータ1で、ロータ6の周面全てに対応する円筒状の円筒部50を用い、そのロータ角度θ−トルクTの特性は
図19に示されるようにθ=110度までしかトルクを得ることができない。
また、周知のFEMの計算に基づく磁束の分布予測は
図20から
図26で示されるように、0度、30度、60度、90度、120度、150度、180度の場合が示されている。
尚、前記ロータ6及びハンマー8は、前記回転軸7を回転中心としてロータ6の回転方向に沿って、有限角回動している。