【実施例】
【0061】
以下に本発明で実施したベンゾトリアゾール誘導体の単量体の合成法、重合体の合成法及び化合物の特性を示す。ただし、単量体の合成方法はこれらに限定されるものではなく、重合体の合成方法はラジカル重合開始剤を用いた溶液重合法としたがこれに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
[中間体;5−カルボキシ−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの合成]
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、水400ml、炭酸ナトリウム25.6g(0.242モル)、4−アミノ−3−ニトロ安息香酸78.7g(0.432モル)を入れて溶解させ、36%亜硝酸ナトリウム水溶液89.2g(0.465モル)を加えた。この溶液を2000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、水400ml、62.5%硫酸168.8g(1.077モル)を入れて混合し、3〜7℃に冷却したものに滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を得た。3000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、水880ml、水酸化ナトリウム19.5g(0.488モル)、炭酸ナトリウム42.6g(0.402モル)、シリンガ酸88.2g(0.445モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、2,6−ジメトキシ−4−(4−カルボキシ−2−ニトロフェニルアゾ)フェノールを114.7g得た。
【0063】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2,6−ジメトキシ−4−(4−カルボキシ−2−ニトロフェニルアゾ)フェノールを80.0g(0.230モル)、イソプロピルアルコール400ml、水400ml、水酸化ナトリウム41.6g(1.040モル)を入れて溶解させ、二酸化チオ尿素100.0g(0.925モル)を70〜75℃で加え、同温度で8時間撹拌させ、62.5%硫酸でpH4に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、5−カルボキシ−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを36.0g得た。収率38%(4−アミノ−3−ニトロ−安息香酸から)であった。
【0064】
(実施例2)
[化合物(a);2−メタクリロイルオキシエチル 2−(3,5−ジメトキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化27】
化合物(a)
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5−カルボキシ−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを20.0g(0.0634モル)、N,N−ジメチルホルムアミド200ml、炭酸ナトリウム9.5g(0.0896モル)、ポリエチレングリコール400を2.5g、ヨウ化カリウム1.0g、n−オクチルクロライド26.0g(0.1749モル)を入れて、140℃で4時間還流撹拌した。トルエン500ml、水100ml、酢酸20mlを加え撹拌し、50℃で静置して下層部の水層を分離して除去し、水100mlで水洗した。トルエンを回収した後にイソプロピルアルコール250ml、水250ml、水酸化ナトリウム11.5g(0.2875モル)を加え、70〜80℃で1時間加水分解した。62.5%硫酸でpH5に調整し、15℃まで冷却した。析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄して乾燥し、5−カルボキシ−2−(3、5−ジメトキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを21.4g得た。融点は175℃。
【0065】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5−カルボキシ−2−(3、5−ジメトキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを10.6g(0.0248モル)、トルエン65ml、N,N−ジメチルホルムアミド0.5ml、塩化チオニル4.4g(0.0370モル)をいれて、60〜70℃で1時間撹拌した。トルエン及び未反応の塩化チオニルを減圧で回収し、トルエン65ml、2−ヒドロキシエチル メタクリレートを28.9g(0.2221モル)加えて、120℃で2時間還流撹拌した。水100mlで4回水洗し、トルエンを減圧で回収した後にメタノール100mlを加えて5℃まで冷却し、析出した結晶をろ過してメタノールで洗浄して乾燥し、白色結晶を11.1g得た。この白色結晶をメタノール、トルエンの混合溶媒で2回再結晶し、減圧下40℃で乾燥し、化合物(a)を9.7g得た。収率57%(5−カルボキシ−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)であった。融点は60℃。
【0066】
また、HPLC分析により、化合物(a)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A−212 6.0×150mm 5μm
カラム温度:40℃
移動相: メタノール/水=99/1
流速:1.0ml/min
<測定結果>
HPLC面百純度:96.4%
なお、以下の実施例3も本実施例と同様の測定条件でHPLC測定を行った。
【0067】
また、化合物(a)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。
測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:JEOL ECX-400
共振周波数:400MHz(1H−NMR)
溶媒:クロロホルム−d
1H−NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、tはtriplet、ddはdoublet doublet、mはmultipletの略とする。以下の実施例すべてにおいても同様である。
得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。なお、以下の実施例3及び4も本実施例と同様の測定条件でNMR測定を行った。
δ=8.73(s,1H,benzotriazol−H),8.06(d,1H,J=8.4Hz,benzotriazol−H),7.96(d,1H,J=8.4Hz,benzotriazol−H),7.65(s,2H,benzene−H),6.17(s,1H,=CH
2−H),5.61(s,1H,=CH
2−H),4.64(m,2H,O−CH
2−CH
2−O−H),4.54(m,2H,O−CH
2−CH
2−O−H),4.05(t,2H,benzene−O−CH
2−H),4.00(s,6H,benzene−(O−CH
3)
2−H),1.97(s,3H,CH
3−H),1.79(t,2H,CH
2−H),1.48(m,2H,CH
2−H),1.32(m,8H,(CH
2)
4−H),0.89(t,3H,CH
3−H),
【0068】
(実施例3)
[化合物(b);2−メタクリロイルオキシエチル 2−(3−メトキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化28】
化合物(b)
【0069】
シリンガ酸をバニリン酸とした以外は実施例1及び2と同様にして、化合物(b)を収率13%(4−アミノ−3−ニトロ安息香酸から)で得た。融点85℃、HPLC面百純度97.1%であった。
【0070】
また、化合物(b)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=8.72(s,1H,benzotriazol−H),8.05(d,1H,J=9.0Hz,benzotriazol−H),7.96(d,1H,J=7.2Hz,benzotriazol−H),7.93(m,2H,benzene−H),7.01(d,1H,J=9.2Hz,benzene−H),6.17(s,1H,CH
2−H),5.61(t,1H,CH
2−H),4.64(m,2H,O−CH
2−CH
2−O−H),4.54(m,2H,O−CH
2−CH
2−O−H),4.10(t,2H,benzene−O−CH
2−H),4.03(s,3H,benzene−O−CH
3−H),1.97(s,3H,CH
3−H),1.89(dd,2H,J=7.6Hz,J=7.2Hz,J=7.2Hz,CH
2−H),1.49(t,2H,CH
2−H),1.34(m,8H,(CH
2)
4−H),0.89(t,3H,CH
3−H)
【0071】
(実施例4)
[化合物(c);メチル 2−[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−3,5−ジメトキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化29】
化合物(c)
【0072】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5−カルボキシ−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを2.0g(0.00634モル)、N,N−ジメチルホルムアミド40ml、炭酸カリウム1.5g(0.0109モル)、ヨウ化メチル0.9g(0.00634モル)を入れて、室温で4時間撹拌した。トルエン100ml、水20ml、酢酸4mlを加え撹拌し、50℃で静置して下層部の水層を分離して除去し、水20mlで水洗した。トルエンを減圧回収して、イソプロピルアルコール50mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄して乾燥し、メチル 2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートを1.2g得た。
【0073】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メチル 2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートを1.2g(0.00364モル)、N,N−ジメチルホルムアミド40ml、炭酸ナトリウム0.8g(0.00755モル)、ポリエチレングリコール400を0.3g、ヨウ化カリウム0.1g、2−クロロエタノール1.0g(0.0124モル)を入れて、140℃で24時間還流撹拌した。トルエン50ml、水20ml、酢酸2mlを加えて撹拌し、50℃で静置して下層部の水層を分離して除去し、水20mlで水洗した。トルエンを減圧回収した後にイソプロピルアルコール50mlを加え、25℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄して乾燥し、メチル 2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメトキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートを1.0g得た。
【0074】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メチル 2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメトキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートを1.0g(0.00268モル)、トルエン50ml、メタクリル酸0.24g(0.00279モル)、メタンスルホン酸0.06g、BHT0.01gを入れて、120℃で24時間還流撹拌した。水20ml、炭酸ナトリウム1.0gを加えて撹拌し、50℃で静置して下層部の水層を分離して除去し、更に水20ml、酢酸2mlを加えて撹拌し、50℃で静置して下層部の水層を分離して除去した。トルエンを回収した後にメタノール50mlを加えて15℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、メタノールで洗浄した後に乾燥し、白色結晶を0.9g得た。この白色結晶をメタノールで再結晶して乾燥し、化合物(c)を0.8g得た。収率29%(5−カルボキシ−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)であった。融点は110℃。
【0075】
また、HPLC分析により、化合物(c)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:Inersil ODS−3 4.6×150mm 5μm
カラム温度:25℃
移動相: アセトニトリル/水=6/4(リン酸3ml/L)
流速:1.0ml/min
<測定結果>
HPLC面百純度:99.0%
【0076】
また、化合物(c)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=8.71(s,1H,benzotriazol−H),8.07(d,1H,J=9.0Hz,benzotriazol−H),7.95(d,1H,J=8.8Hz,benzotriazol−H),7.65(s,2H,benzene−H),6.12(s,1H,=CH
2−H),5.57(d,1H,J=1.6Hz,=CH
2−H),4.48(t,2H,O−CH
2−CH
2−O−H),4.35(t,2H,O−CH
2−CH
2−O−H),4.00(s,3H,−CO−O−CH
3−H),3.99(s,6H,benzene−(O−CH
3)
2−H),1.95(s,3H,CH
3−H)
【0077】
[単量体の光学特性]
実施例1〜4で得られた化合物(a)、(b)、(c)のクロロホルム溶液での吸収及び発光特性を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
なお、実施例1〜4で得られた化合物(a)、(b)、(c)の吸収スペクトル、発光及び励起スペクトル、蛍光量子効率の測定条件は次の通りである。
【0080】
<吸収スペクトル>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜 500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0081】
<発光及び励起スペクトル>
装置:FP−6600(日本分光(株)製)
測定波長:200〜 600nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0082】
<蛍光量子効率>
装置:C10027(浜松ホトニクス(株)製)
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0083】
(実施例5)
100ml4つ口フラスコにジムロート冷却器、水銀温時計、窒素ガス吹き込み管、撹拌装置を取り付け、重合性化合物としての化合物(b);2−メタクリロイルオキシエチル 2−(3−メトキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート(以下、「FS−57」と記す。)を2.5g、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と記す。)を2.5g、および、溶媒としてのトルエンを10g,メチルエチルケトン(以下、「MEK」と記す。)を10g、および、重合開始剤としての1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(以下、「ACN」と記す。)を0.1g仕込み、撹拌しながら窒素ガス流量5ml/minで1時間フラスコ内を窒素置換後に昇温を行い、反応液温度88〜91℃で10時間還流状態にて重合反応を行い、共重合体溶液25.1gを得た。得られた共重合体溶液25.1gにMEK250gを加え、希釈溶解液275.1gとして500ml滴下ロートより5000mlビーカー中のメタノール2500mlに1時間かけて滴下を行い共重合体を白色結晶として析出させた。次いで、ろ紙(アドバンテック社 No.5C)を用いてろ過を行い、白色結晶と溶剤を分離させた後に得られた共重合体の白色結晶を40℃恒温環境下で24時間減圧乾燥させ溶剤成分の除去を行い、以下に示す共重合体(a)4.55gを得た。
【0084】
【化30】
共重合体(a)
【0085】
(実施例6)
実施例5における重合性化合物をFS−57 2.5g、MMA 2.0g、N−ビニルカルバゾール(以下、「VCZ」と記す。) 0.5gとした以外は実施例5と同様の操作を行い、以下に示す共重合体(b)4.60gを得た。
【0086】
【化31】
共重合体(b)
【0087】
(実施例7)
実施例5における重合性化合物をFS−57 2.5g、ブチルメタクレレート(以下、「BMA」と記す。)2.0g、VCZ 0.5gとした以外は実施例5と同様の操作を行い、以下に示す共重合体(c)4.62gを得た。
【0088】
【化32】
共重合体(c)
【0089】
(実施例8)
実施例5における重合性化合物をFS−57 0.075g、VCZ 4.925gとした以外は実施例5と同様の操作を行い、以下に示す共重合体(d)4.66gを得た。
【0090】
【化33】
共重合体(d)
【0091】
(実施例9)
実施例5における重合性化合物を化合物(a);2−メタクリロイルオキシエチル 2−(3,5−ジメトキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート(以下、「FS−90」と記す。)2.5g、MMA 2.5g、とした以外は実施例5と同様の操作を行い、以下に示す共重合体(e)4.53gを得た。
【0092】
【化34】
共重合体(e)
【0093】
(実施例10)
実施例5における重合性化合物をFS−90 2.5g、VCZ 2.5gとした以外は実施例5と同様の操作を行い、以下に示す共重合体(f)4.55gを得た。
【0094】
【化35】
共重合体(f)
【0095】
(実施例11)
実施例5における重合性化合物をFS−90 0.25g、VCZ 4.75gとした以外は実施例5と同様の操作を行い、以下に示す共重合体(g)4.72gを得た。
【0096】
【化36】
共重合体(g)
【0097】
[共重合体の収率、分子量、熱分解温度]
上記の実施例5〜11により得られた共重合体(a)〜(g)の合成処方仕込み量、収率、分子量、熱分解温度を表2に示す。共重合体の単量体からの収率は、単量体仕込み量と精製後、最終的に得られた共重合体の量から算出した。
【0098】
共重合体の分子量はGPCシステムHLC−8320GPC EcoSEC(東ソー株式会社)を用い、溶離液をテトラヒドロフラン、分離カラムをTSKgel GMHXL-L(東ソー株式会社)として、ポリスチレン検量線を用いたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、多分散度(Mw/Mn)を測定した。
【0099】
また、共重合体の熱分解温度は示差熱・熱重量同時測定装置EXSTAR TG/DTA6200(株式会社日立ハイテクサイエンス)を用いて測定した。
【0100】
【表2】
【0101】
[共重合体の溶媒中における光学特性]
上記の実施例5〜11により得られた共重合体(a)〜(g)のクロロホルム中での吸収及び発光特性を表3に示す。
【0102】
(比較例)
同じベンゾトリアゾール誘導体化合物であるが、一般式(5)と異なる構造である、化合物(d);2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、化合物(e);メチル 2−(4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートについても、上記実施例5〜11と同様に吸収及び発光特性を表3に示す。また、従来の有機蛍光色素である化合物(f);4,4‘−ビス(2−メトキシスチリル)ビフェニル(東京化成工業(株)製)についても上記実施例5〜11と同様に吸収及び発光特性を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
表3より、一般式(5)と異なる構造である化合物(d)及び(e)は、モル吸光係数と蛍光量子効率は高いが、最大発光波長が青色有機蛍光色素としては短波長によりすぎているため、きれいな青色発光を得ることができず、また、ストークスシフトが小さいために濃度消光を起こす問題があることがわかる。従来品である化合物(f)は、モル吸光係数と蛍光量子効率は高いが、ストークスシフトが小さく、濃度消光を起こす問題がある。
【0105】
本発明品は、有機蛍光色素として有用とされる10000をはるかに越えるモル吸光係数を持ち、蛍光量子効率は概ね60%以上を示して一般的な有機蛍光色素より高く、きれいな青色発光が得られる450nm付近に最大発光波長をもち、ストークスシフトは80〜120nmと大きいために濃度消光を起こしにくく、青色有機蛍光色素に求められる光学特性のすべてで優れた値を示すため、有用な発光材料であることがわかる。
【0106】
なお、実施例5〜11により得られた共重合体(a)〜(g)及び比較例の化合物(d)、(e)、(f)の吸収スペクトル、発光及び励起スペクトル、蛍光量子効率の測定条件は次の通りである。
【0107】
<吸収スペクトル>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0108】
<発光及び励起スペクトル>
装置:FP−6600(日本分光(株)製)
測定波長:200〜600nm
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0109】
<蛍光量子効率>
装置:C10027(浜松ホトニクス(株)製)
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0110】
[共重合体のフィルム中における光学特性]
上記実施例5により得られた共重合体(a)のポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」と記す。)フィルム中での吸収及び発光特性を、表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
表4より、PMMAフィルム中で最大発光波長はきれいな青色発光が得られる450nm付近であり、ストークスシフトは80nm以上で大きく、蛍光量子効率は94%と特に大きい値を示したことから、樹脂中でもその吸収及び発光特性が優れているのがわかる。実施例5により得られた共重合体(a)のPMMAフィルムの作製条件、吸収スペクトル、発光及び励起スペクトル、蛍光量子効率の測定条件は次の通りである。
【0113】
<PMMAフィルム作製>
PMMA:和光純薬工業(株)製 10mg
共重合体:0.5mg
トルエン:0.7ml
成膜法:スピンコート
膜厚:120nm
【0114】
<吸収スペクトル>
装置:UV−3600((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
【0115】
<発光及び励起スペクトル>
装置:FP−6600(日本分光(株)製)
測定波長:200〜600nm
【0116】
<蛍光量子効率>
装置:C10027(浜松ホトニクス(株)製)
【0117】
[共重合体の電界発光特性]
共重合体を有機電界発光素子材料として用いた場合の特性評価は、実施例9で得られた共重合体(e)を素子構成材料として用いて実際に有機電界発光素子の作製を行って実施した。下記の手順で湿式塗布型有機電界発光素子を作製した。
【0118】
ITOが膜厚150nmで処理されたガラス基材のエッチングを行い、中性洗剤、イオン交換水、アセトン、イソプロピルアルコール、オゾン洗浄の6工程で基材の洗浄を行った。
【0119】
基材のエッチング面にホール注入層として導電性高分子(PEDOT:PSS)溶液をスピンコートでコーティングし、125℃にて1時間乾燥を行い膜厚40nmの層を形成した。
【0120】
ホール輸送材料としてポリビニルカルバゾール(PVCZ)10mg、電子輸送材料として2−(4−tert−ブチルフェニル) −5−(4−ビフェニリル)
−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)3mg、発光材料として実施例9で得られた共重合体0.042mgを脱水トルエン0.7mlに溶解した素子構成材料の混合溶液を、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内でスピンコートにてコーティングし、125℃で50分間乾燥を行い、膜厚100nmの発光層を形成した。
【0121】
試料を真空蒸着装置にセットし、真空条件下で塩化セシウム(CsCl)を1nm蒸着後、続いてアルミニウム(Al)を250nm蒸着して陰極を形成した。次に陰極表面にガラス板を紫外線硬化樹脂で貼り付け、紫外線照射を行い封止して有機電界発光素子とした。
【0122】
浜松ホトニクス(株)製C9920−11輝度配向特性測定装置を用いて、得られた有機電界発光素子の最大輝度、電力効率、電流効率、外部量子効率、色度座標、EL波長を測定して特性評価を行った。素子性能評価の測定結果を表5に示す。
【0123】
【表5】