特許第6093952号(P6093952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 多摩川精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6093952-ステッピングモータの製造方法 図000002
  • 特許6093952-ステッピングモータの製造方法 図000003
  • 特許6093952-ステッピングモータの製造方法 図000004
  • 特許6093952-ステッピングモータの製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6093952
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ステッピングモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 37/14 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   H02K37/14 C
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-258414(P2012-258414)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-107925(P2014-107925A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】川上 克之
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−346366(JP,A)
【文献】 特開2002−051527(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0224573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内方へ向けて突出し平面でみてT字型をなす複数のステータ歯(1)を有する輪状ステータ(2)と、前記各ステータ歯(1)に設けられた2相励磁コイル(3)と、前記各ステータ歯(1)の先端歯幅部(20)間のスロットオープン(21)と、前記各ステータ歯(1)の内側に回転自在に設けられ複数のマグネット(5)を有するロータ(6)とからなり、
前記2相励磁コイル(3)を励磁して前記ロータ(6)をステップ駆動させるようにしたステッピングモータの製造方法において、
前記スロットオープン(21)のスロットオープン幅(W)は、前記各先端歯幅部(20)間の距離と等しいため、前記各先端歯幅部(20)の両端の突出量を増減加工させるか、又は、予め用意されている種々のサイズの先端歯幅部(20)を有する種々の輪状ステータ(2)の中から任意の輪状ステータ(2)を選択して、変えることにより、前記ロータ(6)のディテントトルクによる停止位置と前記2相励磁時に前記ロータ(6)が停止する位置とが一致する状態は、前記スロットオープン(21)の周方向の中心である第1中心位置(P1)と前記マグネット(5)の周方向の中心である第2中心位置(P2)とが一致あるいは前記第1中心位置(P1)と前記各マグネット(5)間の境界位置(P3)とが一致した状態とすることを特徴とするステッピングモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータの製造方法に関し、特に、輪状ステータのスロットオープン幅を調整し、ロータのディテントトルクによる停止位置と、2相励磁時にロータが停止する位置を一致させて2相励磁駆動を行うことができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のステッピングモータとしては、図3に示される、例えば、特許文献1に開示されている構成のように、内方に向けて所定角度毎に形成された4個のステータ歯1が輪状ステータ2に一体に形成され、各ステータ歯1には2相励磁コイル3が巻回されている。
前記各ステータ歯1の内側には、回転軸4の外周に6個のマグネット5を設けた構成からなるロータ6が図示しない一対の軸受を介して回転自在に設けられている。
前述の図4のステッピングモータ10において、各ステータ歯1に設けられた2相励磁コイル3に2相駆動信号を入力すると、各ステータ歯1と各マグネット5との周知の磁気作用によって所定回転角度ずつのロータ6のステッピング回転動作を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−322229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のステッピングモータは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図4のステッピングモータにおいて、ステータ歯1とマグネット5の間で磁気的吸引力(ディテントトルク)によるロータ6の回転停止位置は、1相を励磁した時の停止位置(前記ステータ歯1の周方向の中心位置と、マグネット5の周方向の中心あるいは、ステータ歯1の周方向の中心位置とマグネット5間が一致した位置)で、ディテントトルクがゼロとなりロータ6は安定停止する。
【0005】
また、ステッピングモータは、そのトルクを大とするために、2相励磁駆動によることが多いが、モータ作動時は常に通電状態であるために、ディテントトルクの停止位置は問題となることはない。
しかしながら、省電力を目的として、モータ停止時に励磁電流をオフとするような動作をさせた場合、1相励磁がオフとなった位置でディテントトルクがゼロとなるような構成では、モータ停止位置が1/2ステップずれてしまうことになる。
このように、1相励磁にすれば問題はある程度解決するが、2相励磁に比較するトルクが低下するため、1相励磁では大きいトルクを必要とする用途に適用することは困難であった。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、輪状ステータのスロットオープン幅を調整し、ロータのディテントトルクによる停止位置と、2相励磁時にロータが停止する位置を一致させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明によるステッピングモータの製造方法は、内方へ向けて突出し平面でみてT字型をなす複数のステータ歯を有する輪状ステータと、前記各ステータ歯に設けられた2相励磁コイルと、前記各ステータ歯の先端歯幅部間のスロットオープンと、前記各ステータ歯の内側に回転自在に設けられ複数のマグネットを有するロータとからなり、前記2相励磁コイルを励磁して前記ロータをステップ駆動させるようにしたステッピングモータの製造方法において、前記スロットオープンのスロットオープン幅は、前記各先端歯幅部間の距離と等しいため、前記各先端歯幅部の両端の突出量を増減加工させるか、又は、予め用意されている種々のサイズの先端歯幅部を有する種々の輪状ステータの中から任意の輪状ステータを選択して、変えることにより、前記ロータのディテントトルクによる停止位置と前記2相励磁時に前記ロータが停止する位置とが一致する状態は、前記スロットオープンの周方向の中心である第1中心位置と前記マグネットの周方向の中心である第2中心位置とが一致あるいは前記第1中心位置と前記各マグネット間の境界位置とが一致した状態とする方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるステッピングモータの製造方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、内方へ向けて突出し平面でみてT字型をなす複数のステータ歯を有する輪状ステータと、前記各ステータ歯に設けられた2相励磁コイルと、前記各ステータ歯の先端歯幅部間のスロットオープンと、前記各ステータ歯の内側に回転自在に設けられ複数のマグネットを有するロータとからなり、前記2相励磁コイルを励磁して前記ロータをステップ駆動させるようにしたステッピングモータの製造方法において、前記スロットオープンのスロットオープン幅は、前記各先端歯幅部間の距離と等しいため、前記各先端歯幅部の両端の突出量を増減加工させるか、又は、予め用意されている種々のサイズの先端歯幅部を有する種々の輪状ステータの中から任意の輪状ステータを選択して、変えることにより、前記ロータのディテントトルクによる停止位置と前記2相励磁時に前記ロータが停止する位置とが一致する状態は、前記スロットオープンの周方向の中心である第1中心位置と前記マグネットの周方向の中心である第2中心位置とが一致あるいは前記第1中心位置と前記各マグネット間の境界位置とが一致した状態とすることにより、2相励磁時の停止位置とディテントトルクの安定停止位置を一致させることができ、2相励磁駆動での停止後、励磁電流を往復にしてもロータ位置がずれることはない。また、このディテントトルクを大きくして、外力に対し軸位置が回転しないようなステップモータにすることにより、ブレーキ等の保持機能が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明によるステッピングモータを示す概略平面断面図である。
図2図1の拡大縦断面図である。
図3図1のステッピングモータの停止状態を示す拡大原理構成図である。
図4】従来のステッピングモータの停止状態を示す拡大原理構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、輪状ステータのスロットオープン幅を調整し、ロータのディテントトルクによる停止位置と、2相励磁時にロータが停止する位置を一致させて2相励磁駆動を行うことができるようにしたステッピングモータの製造方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明によるステッピングモータの製造方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは、輪状ステータ2の内面に内方へ向けて半径方向に沿って突出する複数のステータ歯であり、各ステータ歯1は平面でみてT字型をなし、その先端には周方向に沿って延設された先端歯幅部20が形成されている。
【0011】
前記各ステータ歯1の外周には2相励磁コイル3が巻き付けられており、前記各ステータ歯1の各先端歯幅部20間には所定のスロットオープン幅Wを有するスロットオープン21が4ケ所形成されていると共に、前記各先端歯幅部20も4ケ所形成されている。
【0012】
前記各ステータ歯1の先端歯幅部20の内側には、図2に示すハウジング32に設けられた一対の軸受30,31を介して回転軸4が回転自在に設けられ、この回転軸4の外周に6個の円弧状のマグネット5を有することによりロータ6が形成されている。
前述の構成のステッピングモータ10において、各2相励磁コイル3に2相励磁信号を供給することにより、各ステータ歯1と各マグネット5との周知の磁気作用によって、前記ロータ6の所定角度ずつのステッピング動作を得ることができる。
【0013】
前記スロットオープン21のスロットオープン幅Wは、前記各先端歯幅部20間の距離と等しいため、前記各先端歯幅部20の両端の突出量を増減加工させるか、又は、予め種々のサイズの先端歯幅部20を有する種々の輪状ステータ2を用意しておいて任意の輪状ステータを選択して用いることもできる。
【0014】
前述のようにして前記スロットオープン幅Wを変えることにより、前記ロータ6のディテントトルク(ステータ歯1とマグネット5の間で発生する磁気的吸引力)による停止位置と前記2相励磁時に前記ロータ6が停止する位置とが一致する状態は、前記スロットオープン21の周方向(すなわち、幅)の中心である第1中心位置P1と前記マグネット5の周方向の中心である第2中心位置P2とが一致、あるいは、前記第1中心位置P1と前記各マグネット5間の境界位置P3とが一致した状態とすることができる。
尚、前述の形態では、4個のステータ歯1と6個のマグネット5を用いた場合について述べたが、より小角度のステッピング動作とするためには、ステータ歯1とマグネット5の数を増加させた形態とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によるステッピングモータの製造方法は、輪状ステータのスロットオープン幅を調整することにより、2相励磁駆動時のロータの停止位置を自在に決めることができ、トルクの大きい2相励磁型のステッピングモータを得ることができる。
【符号の説明】
【0016】
1 ステータ歯
2 輪状ステータ
3 2相励磁コイル
4 回転軸
5 マグネット
6 ロータ
10 ステッピングモータ
20 先端歯幅部
21 スロットオープン
30,31 軸受
32 ハウジング
W スロットオープン
P1 第1中心位置
P2 第2中心位置
P3 境界位置
図1
図2
図3
図4