(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の酸化防止ガス吹き出しユニット100は、内部に酸化防止ガス流路30が形成された中空板状の基体部20と、キャピラリ12が抜き差しされるように基体部20に設けられ、酸化防止ガス流路30に連通する孔24と、基体部20の外表面に取り付けられるヒータ50と、を備えている。
【0020】
図1に示すように、基体部20は、酸化防止ガス流路30を形成する溝(後で説明する)が表面に形成された本体21と、本体21の上に取り付けられて本体21に形成された溝の開放端を塞ぎ、該溝と共に酸化防止ガス流路30を形成する薄い平板状の蓋22と、を備えている。したがって、蓋22の本体21と反対側の表面(上面)は基体部20の外表面となる。基体部20の外表面である蓋22の上面には、蓋22と同一の平面形状のフィルム状のヒータ50が取り付けられ、ヒータ50の上には、蓋22と同一の平面形状のカバープレート23が取り付けられている。カバープレート23には、ヒータ50の電極51が露出している。また、本体21には酸化防止ガスが供給される酸化防止ガス供給管25が接続されている。
【0021】
図2に示すように、酸化防止ガス流路30に連通する孔24の側面には、貫通穴71が設けられ、この貫通穴71の中には、トーチ電極70が配置されている。トーチ電極70は、キャピラリ12の先端から延出するワイヤテール13との間で放電を行うことによってワイヤテール13の先端をフリーエアボール14に形成する。
【0022】
ボンディング動作の際には、
図1に示すキャピラリ12は図示しないボンディングアームに取り付けられた超音波ホーン11によって上下方向(Z方向)に移動してワイヤテール13の先端に形成したフリーエアボール14を半導体ダイあるいは基板の電極に押し付けてワイヤを電極に接合(ボンド)する。酸化防止ガス吹き出しユニット100は、超音波ホーン11が取り付けられているボンディングヘッド(図示せず)に取り付けられ、超音波ホーン11、キャピラリ12と共にXY方向に移動する。酸化防止ガスは窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガスであってもよいし、例えば、水素などの還元性のガスを混合したガスを用いてもよい。
【0023】
図3に示す様に、本体21は、酸化防止ガス供給管25が取り付けられている根元部分から先端に向って幅が小さくなる略台形状の第一部分21aと、キャピラリ12が貫通する孔24を含む先丸長方形の第二部分21bとを備えている。第一部分21aの表面には浅い折れ曲がった溝31と、各溝31の間の帯状の山部32が設けられている。第一部分21aの根元側の溝31には、酸化防止ガス供給管25に連通する酸化防止ガス供給穴26が設けられている。また、第二部分21bの外周側の表面には、溝31につながる直線状部分と第二部分21bの先端の半円形状に沿った三日月型の部分とを有する溝33が設けられている。
図5に示すように、本実施形態では、上流側流路30a、下流側流路30bの深さ(
図3に示す溝31,33の深さ)は深さH
1で同一である。
【0024】
第二部分21bの中央には、溝31,33よりも深い凹部40が形成されている。溝33と凹部40とは接続流路34によって連通している。
図5に示す様に凹部40の深さはH
2である。凹部40の中には、複数の突起35,36a,36b,37a,37b,38a,38bが設けられている。
図3、
図4(b)に示すように、突起35は、凹部40の底面41から突出し、接続流路34側が凹部となっている半円筒型の突起であり、突起36a,36bは凹部40の左右の側面42から突起35の側面に向ってそれぞれ突出した板型の突起であり、突起37a,37bは、突起35と突起36a,36bとの間の各隙間の孔24側に凹部40の底面41から突出した板状の突起であり、突起38a,38bは、凹部40の底面41から突出し、孔24の周囲に沿って互いに離間して設けられた円弧状の突起である。
図3に示すように、突起38a,38bの孔24側には凹部40の底面41よりも高くなっている段部39a,39bが設けられている。
【0025】
凹部40の孔24側の本体21には、凹部40よりも浅い溝60が設けられている。溝60の本体21の表面からの深さは
図5に示すように深さH
3である。また、
図5に示すように、段部39a,39bの本体21の表面からの深さも深さH
3である。
【0026】
図5に示すように、山部32、各突起35,36a,36b,37a,37b,38a,38bの上面と、本体21の蓋22が取り付けられる表面とは同一の高さとなっている。また、
図3に示すように、蓋22は、本体21外形と同一の外形から溝60の部分と、孔24の周囲部分をU字型に切り欠いた形状であり、このU字型の切り欠き22aの円弧部分の半径は、突起38a,38bの孔24側の円弧面の半径よりも少し小さい半径となっている。このため、
図3に示すように、本体21の上に平板の蓋22を取り付けると、溝31,33の周囲の本体21の表面と、山部32の上面と、各突起35,36a,36b,37a,37b,38a,38bの上面とが蓋22の底面に密着し、蓋22と溝31、33、山部32とは浅い第一の流路30Aを構成する。第一の流路30Aは、本体21の第一部分21aの表面近傍に形成される折れ曲がり流路である上流側流路30aと本体21の第二部分21bの表面近傍に形成される直線流路に続く三日月型の流路である下流側流路30bとを含む。また、蓋22と凹部40と各突起35,36a,36b,37a,37b,38a,38bとは孔24に連通する第二の流路30Bを構成する。第一の流路30Aと第二の流路30Bとは接続流路34によって連通している。したがって、酸化防止ガス流路30は、上流側流路30aと下流側流路30bを含む第一の流路30Aと、第一の流路と孔24との間の第二の流路30Bと、によって構成される。
【0027】
図3に示すように、第一の流路30Aの下流側流路30bの直線状の部分は、第二の流路30Bと平行して配置され、下流側流路30bの三日月型の部分は、第二の流路30Bの外周に沿って第二部分21bの外面との間に配置されている。したがって、下流側流路30bは第二部分21bの先端側の第二の流路30Bの周囲を取り囲んでいる。
【0028】
蓋22のU字型の切り欠き22aの領域にあたる孔24の周囲と溝60の部分は蓋22が被さらず、開放された状態となるので、蓋22の表面側からは孔24が見通せる。また、溝60は蓋22の側が開放された溝型流路61を構成すると共に、超音波ホーン11が降下した際に超音波ホーン11が本体21にぶつからないような逃げを構成する。
【0029】
図3に示すように、フィルム状のヒータ50、カバープレート23もそれぞれ蓋22と同様の形状であり、それぞれ蓋22のU字型の切り欠き22aと同様の形状の切り欠き50a,23aを有している。従って、本体21の表面に蓋22、ヒータ50、カバープレート23を重ね合わせると、各U字型の切り欠き50a,23aも孔24の周囲と溝60の部分に被さらず、
図1に示すように、キャピラリ12は、各U字型の切り欠き22a,50a,23aの部分を通して孔24に挿通できる。本実施形態では、本体21、蓋22、カバープレート23はそれぞれセラミック製であり、
図3に示すように、本体21、蓋22、ヒータ50、カバープレート23の順に重ね合わせて焼結形成されたり、接着剤で組み立てられたりする。
【0030】
図3、
図4(a)、
図4(b)に示すように、蓋22と溝31と山部32とで構成される折り返し型の上流側流路30aは、下流に向かうにつれてしだいに流路断面積が狭くなり、第一部分21aから第二部分21bに向かう最下流の直線状の流路は流路断面積が一番小さくなっている。上流側流路30aの上記直線状の部分は、本体21の第二部分21bに設けられている下流側流路30bの直線状の部分につながっている。蓋22と溝33と溝33の周囲の本体21の表面とで構成され、直線状の部分と三日月型の部分を含む下流側流路30bの直線状の部分は下流側流路30bの中で流路断面積が一番小さくなっている。下流側流路30bの三日月型の部分は、第二部分21bの先端に向かうに従ってしだいに流路断面積が大きくなり、第二部分21bの先端を越えるとしだいに流路断面積が狭くなって第二部分21bの第一部分21aと反対側の位置まで延びている。下流側流路30bの三日月型の部分の流路断面積は上流側流路30aの折り返し部分よりも流路断面積が小さくなっている。
【0031】
図4(b)に示すように、下流側流路30bの直線状部分の下側の部分の第二部分21bの壁21wの中には、第二の流路30Bの中を流れる酸化防止ガスをプラズマ化する電極75bが埋め込まれている。また、孔24に対して対称の位置にある第二部分21bの壁21wにも、電極75aが埋め込まれている。
【0032】
図4(a)に示すように、電極75a、75bは、それぞれ第二の流路30Bを構成する凹部40の側面42を表面とする壁21wの中に、対向する二枚を一対として埋め込まれている。各上側の電極75a,75bは接続線76によって直流パルス電源78に接続され、各下側の電極75a,75bは接続線77によって直流パルス電源78に接続されている。
図4(a)に示すように、図中左側の壁21wの中に上下に対向して配置される二枚の電極75aは、一つの電極対75Aであり、図中右側の壁21wの中に上下に対向して配置される二枚の電極75bは、一つの電極対75Bである。したがって、本実施形態の酸化防止ガス吹き出しユニット100は、2つの電極対を備えている。
【0033】
図4(a)に示すように、各電極対75A,75Bの各電極75a,75bの間にそれぞれ高圧パルス電圧が印加されると、雲マークで示すように、各電極対75A,75Bの埋め込まれている近傍の各壁21wの第二の流路30B側の表面、つまり、凹部40の側面42と各突起38a,38bとの間において酸化防止ガスがプラズマ化され、酸化防止ガスプラズマ85a,85bとなる。
【0034】
図5に示す様に、上流側流路30aと下流側流路30bとは、本体21の表面近傍に配置された浅い流路であり、蓋22は薄い平板であり、
図3に示すように、ヒータ50は、蓋22の上流側流路30a、下流側流路30bの全領域にわたって配置されているので、酸化防止ガスはヒータ50によって効果的に加熱される。先に説明したように、上流側流路30aと下流側流路30bとを接続する直線状の部分は、流路断面積が一番小さくなっている部分であり、酸化防止ガスは、この部分でもっとも流速が早くなる。また、下流側流路30bの三日月型の部分の流路断面積は上流側流路30aの折り返し部分よりも流路断面積が小さくなっているので、三日月型の部分に流入した酸化防止ガスは上記の直線状の部分よりも少し遅い程度の流速となる。第二部分21bの先端を越えた領域(下流側)に配置されている下流側流路30bの三日月型の部分は、先端が閉じられているので、酸化防止ガスは内部に滞留している。
【0035】
図3、
図4(b)に示すように、酸化防止ガスは、本体21の第一部分21aの溝31に設けられた酸化防止ガス供給穴26から上流側流路30aの中に流入し、図中の矢印で示すように流れの方向を変えながら浅い上流側流路30aの折り返し部分を流れていく。上流側流路30aから下流側流路30bの三日月型の部分は、溝31が浅いので酸化防止ガスがヒータの熱を効率よく吸収する。長い折り返し部分を流れるうちに酸化防止ガスの温度は徐々に上昇していく。そして、酸化防止ガスは上流側流路30aと下流側流路30bとを接続する直線状の部分に流入するとさらに温度が上昇していく。更に、酸化防止ガスは、第二部分21bの先端の手前の領域(上流側)に配置されている下流側流路30bの三日月型の部分でもしだいに温度が上昇していく。本実施形態における酸化防止ガスの温度上昇の一例を示すと、フィルム状のヒータ50の厚さが0.015mm、入力電力が1Wの場合、0.3リットル/minの酸化防止ガスを常温から130℃程度まで上昇させることができる。この際、ヒータ50の温度は150℃程度である。また、第二部分21bの先端を越えた領域(下流側)に配置されている下流側流路30bの三日月型の部分は、先端が閉じられているので、温度の上昇した酸化防止ガスが内部に滞留する。
【0036】
高温の酸化防止ガスは、接続流路34から第二の流路30Bに流入する。先に述べたように、第二の流路30Bは、蓋22と深さH
2の凹部40と各突起35,36a,36b,37a,37b,38a,38bによって構成されているので、蓋22と深さH
1の浅い溝31,33とで構成される第一の流路30Aよりも流路断面積が格段に大きくなっている。したがって、第二の流路30B内では酸化防止ガスの流速は第一の流路30Aの流速に比べて非常に遅くなる。このため、ヒータ50によって温度を上昇させるほどの加熱はされないが、ヒータ50によって高温状態が保持される。
【0037】
また、先に述べたように、第一の流路30Aの下流側流路30bの直線状の部分は、第二の流路30Bと平行して配置され、下流側流路30bの三日月型の部分は、第二の流路30Bの外周に沿って第二部分21bの外面との間に配置されているので、第二の流路30Bは高温となった酸化防止ガスが流れる、あるいは滞留する下流側流路30bによってその一部を取り囲まれている。このため、第二の流路30Bの中での酸化防止ガスの温度の低下が抑制され、ヒータ50からの入熱とあいまって第二の流路30Bの中の酸化防止ガスの温度が高温状態に保たれる。
【0038】
図4(b)に示すように、第二の流路30Bに流入した高温の酸化防止ガスは各突起35,36a,36b,37a,37b,38a,38bによってその方向が変更される。接続流路34から流入した酸化防止ガスは、突起35によって流れの方向を凹部40の側面42に向って変更され、突起36a,36bによって流れの方向を凹部40の中心側に変更され、突起37a,37bによって流れの方向を左右方向に変更され、突起38a,38bによって流れの方向を孔24の中心24cの方向に変更され、突起38a,38bの間及び突起38a,38bと凹部40の側面42との間の吹き出し口45a,45b,45cに流れ込む。つまり、各突起35,36a,36b,37a,37b,38a,38bは高温の酸化防止ガスの流れを少なくとも2回変更するラビリンスを構成し、高温の酸化防止ガスは、突起38a,38bの間及び突起38a,38bと凹部40の側面42との間の吹き出し口45a,45b,45cに均等に流入していく。
【0039】
このうち、突起38a,38bと凹部40の側面42との間に流れこんだ高温の酸化防止ガスは、
図4(a)に示す直流パルス電源78により高圧パルス電圧が印加される各電極対75A,75Bによってプラズマ化され、高温の酸化防止ガスプラズマ85a,85bとなる。高温の酸化防止ガスプラズマ85a,85bは各吹き出し口45a,45bから孔24の中心24cに向かって吹き出す。また、突起38aと38bとの間に流れこんだ高温の酸化防止ガスはプラズマ化されずに吹き出し口45cから孔24の中心24cに向って吹き出す。
【0040】
吹き出し口45a,45bから孔24の中心24cに向かって吹き出した高温の酸化防止ガスプラズマ85a,85bの一部及び吹き出し口45cから孔24の中心24cに向って吹き出した高温の酸化防止ガスの一部は、
図5に示すように孔24を通って本体21の下面から下向きに流出し、他の一部は、溝60によって構成される溝型流路61を通って水平方向に流出する。
【0041】
第二の流路30Bは、本体21の表面近傍に配置された第一の流路30Aから流入した高温の酸化防止ガスを高温状態に保ったまま本体21の高さ方向に拡散させるので、高さ方向の広い範囲に高温の酸化防止ガスを吹き出すことができる。また、吹き出し口45a,45bの手前に設けられた電極対によって高温の酸化防止ガスを高温の酸化防止ガスプラズマ85a,85bとして吹き出し口45a,45bから吹き出すことができる。また、孔24は、凹部40の底面41に設けられているので、外部の空気の流れによって吹き出し口45a,45b,45cから吹き出す高温の酸化防止ガスプラズマ、酸化防止ガスの流れが乱されることがない上、突起38a,38bが孔24の周囲に壁を形成し、
図5に示すように、突起38a,38bの各段部39a,39bが溝60の底面と同一の高さまで延びているので、
図5の雲マークに示すように孔24の周囲に高温の酸化防止ガスの濃度が高い酸化防止ガスプラズマ領域85を形成することができる。本実施形態では、先に述べた、0.3リットル/minのような少ない酸化防止ガスの流量でも温度が130℃程度で酸化防止ガスの濃度がほぼ100%の酸化防止ガスプラズマ領域85を形成することができる。
【0042】
図5に示すように、孔24の中心24cにキャピラリ12の中心を合わせ、酸化防止ガスプラズマ領域85の中にキャピラリ12の先端のワイヤテール13が入るように超音波ホーン11の高さを調整した後、孔24の側面に設けられた貫通穴71の中に配置されたトーチ電極70とワイヤテール13との間に放電を発生させ、ワイヤテール13をフリーエアボール14に形成する。
【0043】
この際、フリーエアボール14が形成される酸化防止ガスプラズマ領域85は、高温高濃度の酸化防止ガスプラズマによって覆われている。プラズマ中では粒子は電離しているので、フリーエアボール14を形成する際の放電電圧は、プラズマ化していない酸化防止ガスの中で放電を発生させるために必要な電圧よりもずっと低い電圧で行うことができる。このため、トーチ電極70の表面のスパッタリング現象の発生が抑制され、トーチ電極70の汚れによる放電特性の低下等が発生せず、安定して良好なフリーエアボール14を形成することができる。
【0044】
また、酸化防止ガスプラズマ領域85の温度は高温に保たれているので、高温高濃度の酸化防止ガスの中でフリーエアボール14の形成を行うことができる。このため、フリーエアボール14の異型化(球形にならない)を抑制することができることに加えて、プラズマガスにH
2を導入した場合には、酸化防止ガスプラズマの洗浄力により形成されたフリーエアボール14の表面の酸化被膜を除去し、フリーエアボール14の表面を清浄な状態とすることができる。
【0045】
そして、形成したフリーエアボール14に130℃程度の高温の酸化防止ガスを均等に吹き着付けることにより、清浄な表面を持つフリーエアボール14を高温に保ってボンディングすることができるので、十分な接合強度を持つボンディングを行うことができる。フリーエアボールの温度を高温に保つことによって、フリーエアボールがやわらかい状態でボンディングをすることが可能となること、ワイヤを構成する銅などの金属材料の加工硬化が抑制されること、フリーエアボールの温度の急激な低下を抑制することにより内部の不純物が低減され、フリーエアボールが硬くなることを抑制することができることなどにより、ボンディングの際の押圧力、基板の加熱温度を少なくできることから、ダメージフリーボンディング(ボンディングにより基板等に損傷が発生することがほとんど無いボンディング)を行うことができる。これにより、ボンディング品質を向上させることができる。更に、フリーエアボールの温度を上げると、ボンディングの際の金属接合の際の拡散もよくなるので、超音波振動の印加が少なくて済み、更にボンディング品質を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の酸化防止ガス吹き出しユニット100は、ヒータ50が取り付けられた本体21の表面近傍に配置した浅い第一の流路30Aによって効果的に酸化防止ガスの温度を上昇させ、第一の流路30Aよりも深い第二の流路30Bによって高さ方向に酸化防止ガスを拡散させると共に孔24の周囲からフリーエアボール14に向って均等に吹き出させることによって、少ない流量の酸化防止ガスによってフリーエアボール14を効果的に加温あるいは保温することができ、十分な接合強度を持つボンディングを行うことができ、効果的にボンディング品質を向上させることができる。
【0047】
更に、少量の酸化防止ガスによってフリーエアボール14を効果的に加温あるいは保温することができるので、酸化防止ガス流路30を小さくすることができ、全体の構成をコンパクトにすることができる。
【0048】
更に、第二の流路30Bは高温の酸化防止ガスが流れるあるいは滞留する下流側流路30bによってその周囲の一部が取り囲まれているので、第二の流路30Bの中の酸化防止ガスの温度を効果的に高温状態に保つことができ、高温の酸化防止ガスプラズマ及び酸化防止ガスをフリーエアボール14に吹き付けることができる。
【0049】
本実施形態では、酸化防止ガスをヒータ50によって加熱することとして説明したが、例えば、ヒータ50に代わってあるいはヒータ50とともに、上流側流路30aに沿って電極を配置してプラズマを発生させて上流側流路30aを流れる酸化防止ガスを加熱するようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、直流パルス電源78から高圧パルス電圧が各電極対75A,75Bに印加されると酸化防止ガスがプラズマ化されることとして説明したが、電源は高圧パルス電圧を各電極対75A,75Bに印加して酸化防止ガスをプラズマ化できるものであれば直流パルス電源78に限らず、例えば、入射波と反射波とをマッチングされるマッチングボックス、あるいは、整合装置を備える高周波電源を用い、高周波電源の高周波電極と接地電極とを電極対75Aの各電極75a、および、電極対75Bの各電極75bに接続するようにしてもよい。
【0051】
次に
図6を参照しながら本実施形態の酸化防止ガス吹き出しユニット100の他の電極配置について説明する。先に、
図1から
図5を参照しながら説明したのと同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0052】
本実施形態の酸化防止ガス吹き出しユニット100は、先に
図1から
図5を参照して説明した実施形態のうち、凹部40の中に配置され突起38a,38bを大きな形状とし、図中左側の第二部分21bの側面42の近傍の壁21wの中に電極対75Aの一方の電極75aを埋め込み、突起38aの側面42側の内部に電極対75Aの他方の電極75aを埋め込み、図中右側の第二部分21bの側面42の近傍の壁21wの中に電極対75Bの一方の電極75bを埋め込み、突起38bの側面42側の内部に電極対75Bの他方の電極75bを埋め込むようにしたものである。なお、突起38a,38bは本体21の第二部分21bに設けられた凹部40の底面41から突出しており、本体21と一体で成型されているものである。したがって、突起38a,38bは基体部20の壁に相当する。
【0053】
先に
図1から
図5を参照して説明した実施形態と同様、本実施形態では、突起38aと凹部40の側面42との間の吹き出し口45aに流れ込んだ酸化防止ガスは電極対75Aによってプラズマ化され、突起38bと凹部40の側面42との間の吹き出し口45bに流れ込んだ酸化防止ガスは電極対75Bによってプラズマ化される。
【0054】
本実施形態は、先に
図1から
図5を参照して説明した実施形態と同様の効果を奏する。
【0055】
次に、
図7から
図10を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。
図1から
図5を参照して説明したのと同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
図7に示すように、酸化防止ガス吹き出しユニット200の基体部であるケーシング220は、セラミックス製の上半ケーシング220aと下半ケーシング220bを組み合わせたもので、各ケーシング220a,220bの上下の壁221a,221bには、超音波ホーン11に固定されたキャピラリ12が貫通する孔224a,224bが同軸にそれぞれ設けられている。各孔224a,224bとは孔224を構成する。上半ケーシング220aの上側の表面(ケーシング220の外表面)には、上半ケーシング220aと同一の大きさのフィルム状のヒータ250が取り付けられており、ヒータ250の上にはセラミックス製のカバープレート223が取り付けられている。上半ケーシング220aには、ヒータ250への通電を行う2つの電極251と、内部に埋め込まれている酸化防止ガスをプラズマ化する電極に直流パルス電圧を供給する電極279aが設けられている。また、下半ケーシング220bにも、内部に埋め込まれている酸化防止ガスをプラズマ化する電極に直流パルス電圧を供給する電極279b(図示せず)が設けられている。また、ケーシング220の根本側には、酸化防止ガスを供給する酸化防止ガス供給管225が取り付けられ、下半ケーシング220bの下面側(ケーシング220の下面側)には、キャピラリ12の先端から延出するワイヤテール13をフリーエアボール14に形成するトーチ電極270が配置されている。
【0056】
図8に示すように、上下半の各ケーシング220a,220bの内側には、上下半の各ケーシング220a,220bを組み合わせた際に内部に
図9に示す酸化防止ガス流路230を形成する凹部231a,231bが形成され、孔224a,224bの周囲には、内部に円環状のプラズマ発生用電極275a,275bが埋め込まれたボス233a,233bが突出している。ボス233a,233bの各先端面234a,234bは、各ケーシング220a,220bの合わせ面よりも低くなっており、上下半の各ケーシング220a、220bを合わせた際に各ボス233a,233bの各先端面234a,234bの間に隙間が形成されるように構成されている。
【0057】
上下半の各ケーシング220a,220bの各孔224a,224bの設けられている側と反対側の端部(根元側の端部)には、半円形断面の各窪み235a,235bがそれぞれ設けられている。この半円形断面の各窪み235a,235bは、上下半の各ケーシング220a,220bが組合されると、酸化防止ガス供給管225が取り付けられる円筒形の孔を形成する。また、凹部231a,231bには、酸化防止ガス供給管225から流入した酸化防止ガスの流れの方向を変更し、ケーシング220の表面に取り付けたヒータ250と酸化防止ガスとの間の熱交換を促進する突起232a,232b,232c,232dが配置されている。突起232a,232bは、凹部231a,231bの幅方向の中央部に設けられ、その両端と凹部231a,231bの側面との間には隙間がある。また、突起232c,232dは、凹部231a,231bの各側面から凹部の中心方向に向かって延び、凹部231a,231bの幅方向の長さは凹部の幅よりも短く、凹部231a,231bの両側面から延びる各突起232c,232dの先端の間には、隙間がある。突起232a,232bと突起232c,232dとは酸化防止ガス供給管225から各孔224a,224bに向って交互に配置されている。このため、突起232a,232b,232c,232dと凹部231a,231bによって構成される酸化防止ガス流路230は、酸化防止ガス供給管225から孔224に流れる際にその流れの方向が数回変更されることになる。つまり、突起232a,232b,232c,232dは酸化防止ガスの流れの方向を2回以上変更するラビリンスを形成する。
【0058】
図9を参照しながら、以上のように構成された上半ケーシング220aと下半ケーシング220bとを組み合わせた際の構成を説明する。上半ケーシング220aと下半ケーシング220bとを各凹部231a,231bが向き合うように重ね合わせると、上下半の各ケーシング220a,220bの周囲の合わせ面が互いに密着するとともに、各突起232a〜232dの各表面が互いに密着し、内部に折り返しのある酸化防止ガス流路230が形成される。また、各ボス233a,233bの各先端面234a,234bは、上下半の各ケーシング220a,220bの合わせ面よりも高さが低くなっているので、上下半の各ケーシング220a,220bを組み合わせた場合には、各先端面234a,234bの間には隙間ができる。この隙間は、酸化防止ガスを各孔224a,224bにより構成される孔224の中心に向かって吹き出す吹き出し口245となる。上下半の各ケーシング220a,220bの各壁221a,221bに設けられた各孔224a,224bは上下半の各ケーシング220a,220bを組み合わせた際には対向した位置に同心に配置され、各ボス233a,233bは各孔224a,224bと同心状に形成される。各ボス233a,233bの各先端面234a,234bは互いに対向した位置となっている。したがって、各プラズマ発生用電極275a,275bは、対向して配置される一対の電極であり、各ボス233a,233bは、それぞれ上下半の各ケーシング220a,220bの壁221a,221bの一部であるから、各プラズマ発生用電極275a,275bはそれぞれ上下半の各ケーシング220a,220bの壁221a,221bの中に埋め込まれているものである。
【0059】
図9に示すように、上下半の各ケーシング220a,220bの各壁221a,221bに埋め込まれた各電極279a,279bの一部は上下半の各ケーシング220a,220bの各壁221a,221bの表面から露出している。そして、各電極279a,279bと各ボス233a,233bに埋め込まれた各プラズマ発生用電極275a,275bとの間は各壁221a,221bの中に埋め込まれた接続線276a,277bによって接続されている。
【0060】
図10を参照して以上のように構成された酸化防止ガス吹き出しユニット200の動作について説明する。酸化防止ガスは、
図7に示す酸化防止ガス供給管225から
図10に示す矢印のように酸化防止ガス流路230に流入する。酸化防止ガスは、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスでもよいし、水素等の還元性のガスを混合してもよい。プラズマ発生用電極275a,275bは接続線276,277によって直流パルス電源278に接続されている。最初、プラズマ発生用電極275a,275bに通電する前は、酸化防止ガスは、酸化防止ガス流路230からボス233a,233bの周囲に流れ、各ボス233a,233bの各先端面234a,234bの外周側から内側の孔224a,224bに向かって水平に流れ、孔224a,224bを通ってそれぞれ上下方向に流れ出ている。このため、酸化防止ガス流路30の圧力は大気圧よりも若干高い圧力となっており、各孔224a,224bから酸化防止ガス流路230には大気が入り込まず、酸化防止ガス吹き出しユニット200の酸化防止ガス流路230は、酸化防止ガスが充満した酸化防止ガス雰囲気に保たれる。
【0061】
また、ケーシング220の上面に取り付けられたヒータ250には図示しない電源から電力が供給され、その温度が上昇していく。
図9に示すように、酸化防止ガス供給管225から酸化防止ガス流路230に流入した酸化防止ガスは、突起232a〜232dによって構成される折り返し流路を孔224に向って流れていくにしたがって加熱され、その温度が上昇していく。そして、高温となった酸化防止ガスは、孔224a,224bを通ってそれぞれ上下方向に流れ出る。
【0062】
直流パルス電源278から供給される直流パルス電力が各プラズマ発生用電極275a,275bに通電されると、各ボス233a,233bの各先端面234a,234bの間の吹き出し口245に酸化防止ガスのプラズマが発生する。酸化防止ガスのプラズマは、円環状のプラズマ発生用電極275a,275b間で発生し、その後、酸化防止ガスの流れに沿って各孔224a,224bの中心に向かって流れ、各孔224a,224bの中を上下に向かって流れて行く。そして、各孔224a,224bの内部および各ボス233a,233bの間の吹き出し口245には、高温の酸化防止ガスの濃度が高くプラズマ化した酸化防止ガスプラズマが滞留する酸化防止ガスプラズマ領域285が形成される。
【0063】
図10に示すように、キャピラリ12の中心を各孔224a,224bの中心すなわち孔224の中心に合わせ、キャピラリ12の先端から延びるワイヤテール13の先端が酸化防止ガスプラズマ領域285の中心のケーシング220の中央に来るまで超音波ホーン11によってキャピラリ12を降下させたのち、ケーシング220の下側に配置されているトーチ電極270に通電し、トーチ電極270とワイヤテール13との間で放電を発生させ、ワイヤテール13をフリーエアボール14に形成する。
【0064】
本実施形態の酸化防止ガス吹き出しユニット200は、先に
図1から
図5を参照して説明した実施形態と同様、プラズマ化していない酸化防止ガスの中で放電を発生されるために必要な放電電圧よりもずっと低い放電電圧でスパークを発生させることができ、トーチ電極270の表面のスパッタリング現象の発生が抑制され、トーチ電極270の汚れによる放電特性の低下等が発生せず、安定して良好なフリーエアボール14を形成することができる。また、酸化防止ガスプラズマ領域285の温度は高温に保たれているので、高温高濃度の酸化防止ガスの中でフリーエアボール14の形成を行うことができ、フリーエアボール14の異型化(球形にならない)を抑制することができことに加えて、フリーエアボール14の表面を清浄な状態とすることができる。
【0065】
更に、本実施形態の酸化防止ガス吹き出しユニット200は、ケーシング220の中の吹き出し口245に大気が入り込まない状態でプラズマを発生させるので、発生させたプラズマが酸化プラズマにならない。このため、フリーエアボール14の表面を酸化させること無く洗浄を行うことができ、温度が高く清浄な表面を持つフリーエアボール14によってボンディングを行うことができるので、ボンディング品質を向上させることができる。
【0066】
本実施形態では、直流パルス電源278から高圧パルス電圧が各プラズマ発生用電極275a,275bに通電されると酸化防止ガスがプラズマ化されることとして説明したが、電源は高圧パルス電圧を各プラズマ発生用電極275a,275bに通電して酸化防止ガスをプラズマ化できるものであれば直流パルス電源78に限らず、例えば、入射波と反射波とをマッチングされるマッチングボックス、あるいは、整合装置を備える高周波電源を用い、高周波電源の高周波電極と接地電極とを各プラズマ発生用電極275a,275bに接続するようにしてもよい。
【0067】
次に、
図11を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。
図7から
図10を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
図11(a)に示すように、本実施形態は、先に
図7から
図10を参照して説明した実施形態の下半ケーシング220bの孔224bの側面に壁221bを貫通する貫通穴271を設け、その貫通穴271の中にトーチ電極270を配置したものである。また、上下半の各ケーシング220a,220bの各ボス233a,233bの表面にそれぞれ扇形の突起235a,235bを4つずつ設けたものである。
図11(a)に示すように、各突起235a,235bの各先端面は互いに密着し、
図11(b)に示すように、各突起235a,235bは、孔224の中心224cに向かって酸化防止ガスを吹き出す4つの吹き出し口245を構成している。
【0068】
本実施形態は、先に
図7から
図10を参照して説明した実施形態の効果に加え、先に説明した実施形態よりも酸化防止ガスを孔224の中心に向かって均等に吹き出すことができ、より効果的にボンディング品質を向上させることができるという効果を奏する。
【0069】
図12、
図13を参照して本発明の他の実施形態について説明する。
図1から
図6を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態は、
図13に示すように、ヒータ50の大きさが蓋22、カバープレート23の外形よりも少し小さく、カバープレート23の周囲にヒータ50の端部を覆う突起を設けるようにしたものである。したがって、
図12に示すようヒータ50の端面は外部に露出せず、外部からヒータ50は見えなくなっている。
【0070】
本実施形態は、ヒータ50の端面が外部に露出していないので、より効果的に流路内の酸化防止ガスを加熱することができる。なお、フィルムヒータ50が非常に薄い場合には、
図13に示すように、カバープレート23の周囲に突起を設けない構成としてもよい。
【0071】
図14を参照しながら本発明のもう一つの他の実施形態について説明する。先に説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
図14に示すように、本実施形態は、先に説明した実施形態のフィルムヒータ50に代えて、蓋22の表面に発熱抵抗体50bのパターンを取り付けたものである。本実施形態は先に説明した実施形態と同様の効果を奏する。
【0072】
図15、
図16を参照して本発明の他の実施形態について説明する。
図7から
図10を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態も先に
図12,
図13を参照して説明した実施形態と同様、
図16に示すように、ヒータ50の大きさがケーシング220、カバープレート223の外形よりも少し小さく、カバープレート223の周囲にヒータ250の端部を覆う突起を設けるようにしたものである。したがって、
図15に示すようヒータ250の端面は外部に露出せず、外部からヒータ250は見えなくなっている。本実施形態は、
図7から
図10を参照して説明した実施形態の効果に加えてヒータ250の端面が外部に露出していないので、より効果的に流路内の酸化防止ガスを加熱することができる。なお、フィルムヒータ250が非常に薄い場合には、カバープレート223の周囲に突起を設けない構成としてもよい。
【0073】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲により規定されている本発明の技術的範囲ないし本質から逸脱することない全ての変更及び修正を包含するものである。