(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両において、ツイスト−ビームまたはツイスト−アクスルが後部サスペンション構造体としてよく使用されている。ツイスト−アクスルは、ロードホイールを車両のフレームに結合するための二つのトレーリングアームと、これらのトレーリングアームを一体に形成するように結合するクロス−ビーム部材を有している。各トレーリングアームは、車体フレームに枢着されている。車輪が凸凹な表面に遭遇したり、車両が旋回する場合のように、ロードホイールが車体フレームに対して均等に配置されない場合に、この不均等な配置により、トレーリングアームが異なる量だけ旋回され、それによって、クロス−ビーム部材をねじることになってしまう。クロス−ビーム部材の固有のねじり剛性や抵抗力により、不均等に配置された車輪に復元力を提供することになる。
【0003】
車両の乗心地や制御(すなわち、操作性)に関して、ツイスト−アクスルは、ねじり剛性の追従(コンプライアンス)要件を満たす必要がある。ねじり剛性の追従に関して、ツイスト−アクスルは、指定された範囲内でねじり剛性を有する必要があることを意味している。その一方で、ツイスト−アクスルは、荷重支持部材であり、車両の静的荷重や車両が移動する際の動的荷重などの、線形の荷重を支持するために十分な強度を有するように設計する必要がある。
【0004】
ねじり剛性またはロール剛性と荷重支持要件の両方の要件を満足するツイスト−アクスルを製造する多くの提案がなされてきた。例えば、別のトーションバーを組み込んだツイスト−アクスルを製造する提案がされている。この設計のトーションバーは、必要なねじり剛性または抵抗力を提供する。国際公開WO2006/096980号に記載されているような設計では、必要なねじり抵抗力を提供するために、クロス−ビーム部材に溶接されたトーション部材がトーションバーに置き換えられている。別々の部材により、個別の設計要件が満たされる。ただし、これらの提案は、追加の製造コストと材料コストが必要となる。また、米国特許第6616157号及び米国特許第6487886号に記載されているように、管状ブランクからクロス−ビーム部材を製造する提案がされている。このようなクロス−ビーム部材は、全体的なねじり剛性の要件を達成するために、二つの高ねじれ剛性の移行部分の間に低ねじれ剛性の中央部分を有している。この中央部分は、低ねじり剛性のU−形状、V−形状または星形−形状の二重壁の断面形状を有している。ただし、このようなクロス−ビーム部材にねじり力が作用すると、中央部分と端部部分との間に配置された移行ゾーンに応力が集中して、耐久性の問題が発生する可能性がある。米国特許第6758921号に教示されているように、移行ゾーンに所望の物性を付与して、割れを防止するために、移行ゾーンを選択的に熱処理することが提案されている。このアプローチは、追加の製造工程を導入し、さらに熱処理装置が必要となる。
【0005】
本発明の目的は、上記した欠点の少なくとも一つを軽減するか、または、防止することにある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
説明が目的であり、限定するものではないが、本発明の上述した特徴及び他の特徴は、添付した図面を参照してさらに詳細に説明される。
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に従うクロス−ビーム部材を含むツイスト−アクスルの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すツイスト−アクスルに使用するクロス−ビーム部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の3−3線に沿って示すクロス−ビーム部材の断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の4−4線に沿って示すクロス−ビーム部材の断面図である。
【
図5】
図5は、
図2の5−5線に沿って示すクロス−ビーム部材の断面図である。
【
図6】
図6は、
図2の6−6線に沿って示すクロス−ビーム部材の断面図である。
【
図7A】
図7Aは、
図2に示すクロス−ビーム部材を製造するための管状ブランクの長手方向の断面図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示す管状ブランクを形成するために使用することができる一定壁厚の最初の管状ブランクを示す図である。
【
図7C】
図7Cは、
図7Aに示す管状ブランクから形成される部分的に平坦化された管状ブランクを示す図である。
【
図8A】
図8Aは、壁厚の長手方向の輪郭の例を示す図である(一方の半分だけが示されており、他の半分は、左右対称の鏡像である)。
【
図8B】
図8Bは、
図2に示す、3つの設計ゾーンに分割された移行部分を有するクロス−ビーム部材の壁厚の長手方向の輪郭の他の例を示す図である(一方の半分だけが示されており、他の半分は、左右対称の鏡像である)。
【
図8C】
図8Cは、
図2に示す、テーパー付けられた壁厚の移行部分を有するクロス−ビーム部材の壁厚の長手方向の輪郭のさらに他の例を示す図である(一方の半分だけが示されており、他の半分は、左右対称の鏡像である)。
【
図8D】
図8Dは、クロス−ビーム部材の半分の全体に沿ってテーパー付けられた壁厚を有する壁厚の長手方向の輪郭のさらに他の例を示す図である(一方の半分だけが示されており、他の半分は、左右対称の鏡像である)。
【
図9A】
図9Aは、
図2に示すクロス−ビーム部材の他の実施の形態の例を示す平面図である。
【
図9B】
図9Bは、
図9Aに示すクロス−ビーム部材の壁厚の長手方向の輪郭(一方の半分だけが示されており、他の半分は、左右対称の鏡像である)の例を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、
図9Aに示すクロス−ビーム部材を生産するための工程のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明及びそこに記載されている実施例は、本発明の原則の特定の実施例を例示する方法で提供する。これらの実施例は、本発明の原則を説明するために提供するものであり、本発明を限定するものではない。
以下の説明では、同様の部品は、明細書及び図面を通して、それぞれ同様の参照番号を用いて記載される。
【0012】
図1には、サスペンション構造体、特に、リアサスペンション構造体におけるツイスト−アクスル100が示されている。ツイスト−アクスル100は、クロス−ビーム部材102を含んでいる。このクロス−ビーム部材は、概して長く、二つの対向する端部104を有している。ツイスト−アクスル100は、通常、二つのサイドトレーリングアーム106を備えている。
【0013】
各トレーリングアーム106は、
図1に示すように、第1の端部108と第2の端部110を有している。第1の端部108は、例えば、接続継手112を介して車両のフレーム(図示しない)に枢着される。各トレーリングアーム106は、後輪(図示しない)を支持するために、第2の端部110に隣接して固定されたホイールマウント114を有している。また、スプリングシート116、サスペンション構成部材を支持する他の支持構造体または他のアタッチメントは、トレーリングアーム106及び/またはクロス−ビーム部材102に固定されている。各トレーリングアーム106は、溶接、ボルト結合、または、他の任意の適切な手段によって、クロス−ビーム部材102に剛結合されている。トレーリングアームをクロス−ビーム部材102に接続する領域が接続領域118であり、この場合、クロス−ビーム部材102の端部104である。
【0014】
車両が凸凹な道路の路面に沿って移動すると、車輪は、道路の路面に従って上下に移動する傾向がある。車両の両側の車輪が、車両の車体に対して異なる量だけ上下に移動すると、二つのトレーリングアーム106は、車輪の不均等な垂直方向の変位により、異なる角度だけ旋回する。クロス−ビーム部材102の各端部104がトレーリングアーム106に取り付けられているため、トレーリングアーム106がクロス−ビーム部材102の両端で異なる量だけ旋回すると、この異なる量の旋回により、クロス−ビーム部材102の両端がねじれてしまうことになる。このねじれに対応して、クロス−ビーム部材は、その固有のねじり剛性のために復元力を提供する。同様に、車両が旋回した場合、車両のばね上質量の重心の中心に作用する遠心力により、車両の一方の側から他方の側に、その結果、一方の車輪から他方の車輪に車両重量がシフトして、クロス−ビーム部材のねじり抵抗のために、トレーリングアームが不均等に旋回することになる。クロス−ビーム部材は、良好な乗り心地とタイヤの路面との良好な接触により、良好な制御性を提供するように、過大なねじり剛性ではないが、十分なねじり剛性であることが望ましい。
【0015】
図2〜
図6には、分離したクロス−ビーム部材102のいくつかの選択した位置での横断面形状の例が示されている。説明したように、クロス−ビーム部材102は、概して長く、長手方向に定められた二つの端部104を有している。クロス−ビーム部材102は、中央部、すなわち、中央部分202と、二つの端部を有している。各端部は、両端104のいずれか一方に形成された端部部分204と、端部部分204と中央部分202との間に形成された移行部分206を含んでいる。中央部分202は、要求されるねじれ抵抗を提供するねじれ弾性である。この実施の形態の端部部分204は、接続領域118であり、また、ねじれ剛性である。移行部分206は、ねじれ弾性の中央部分からねじれ剛性の端部部分への移行部を提供する。後述するように、クロス−ビーム部材102は、好適には、中央部分202、移行部分206及び端部部分204が一体に構成された管状ブランクから形成されている。端部部分204は、好適には、サイドトレーリングアーム106に取り付けられるのに適している。
【0016】
クロス−ビーム部材102の横断面形状、すなわち、長手方向に対して横断する断面の断面形状は、クロス−ビーム部材の長さに沿って変化している。中央部分202の横断面は、開口した輪郭(外形)、すなわち、少なくとも二つの脚部を有する輪郭を備えている。脚部は、一端で結合されるか、少なくとも接続されて、長手方向にほぼ横切るように延びているため、他端は、開口した輪郭を形成するように互いに間隔をあけて離されている。このような開口した輪郭の例として、U−輪郭、V−輪郭、C−輪郭、X−輪郭、または、一般的な星形−形状輪郭が含まれる。このような開口した輪郭により、クロス−ビーム部材に作用するトルクによって長手方向に沿ってねじられたり、曲げられた際に、脚部の弾性形状変形とそれに続くトルクが解除された際のスプリングバックによって、中央部分202がねじり弾性にすることができる。この中央部分のねじり弾性またはねじり剛性は、例えば、クロス−ビーム部材の中央部分の開口した輪郭、断面形状、または、壁厚を有する中央部分の長さを調整することによって調整することができる。ねじれ弾性の中央部分を提供するために適している他の任意の横断面形状の輪郭を選択することもできる。
【0017】
図3及び
図4に示すクロス−ビーム部材の断面輪郭210は、一般的なU−形状を有している。U−形状の横断面輪郭210は、二つの脚部212と、これらの脚部を結合する中央接続部分214を有する。中央部分202の横断面輪郭は、平坦なループの形状を有する。このような輪郭は、管状ブランクの一部を平らにして、さらに、U−形状内に平坦な部分を形成することによって得ることができる。これは、2ステップの工程、すなわち、平坦化とその後の造形(シェーピング)の工程、または、組み合わせたワンステップの成形工程とすることができる。
【0018】
図6において見ることができるように、端部部分204は、円形、楕円、または他の非円形形状である断面形状を有している。このような形状は、端部部分をサイドトレーリングアームに取り付けるために適している。このような横断面形状はまた、前述したように、接続領域であるねじり剛性の端部部分を提供する。移行部分206の横断面形状は、中央部分202の横断面形状から端部部分204の横断面形状に移行している。
図5に示す例では、好適には、このような移行が滑らかで、かつ、緩やかである。クロス−ビーム部材がその両端104に作用する反対方向のねじり力によってねじられた場合、移行部分は、そのねじり力を中央部分に伝達する。滑らかな移行により、中央部分が、端部部分に作用して、移行部分を介して伝達されたねじり力によってねじられる場合に、移行部分に集中する増大した応力を回避することができる。
【0019】
移行部分の断面形状は、中央部分のU−形状またはV−形状の断面形状から、端部部分の楕円形状のような断面形状に移行する。移行部分は、長手方向に対して横断するように部分的に内側に押圧されているので、移行部分の形状が変化して、移行部分にねじり弾性を付与する。移行部分は、その断面形状が変化するため、端部部分の近辺よりも中央部分の近辺の方がよりねじり弾性がある。移行部分の断面形状と断面形状の長手方向の変化は、例えば、中央部分の押圧成形中に固定された端部部分を保持する成形工程によって決定することができ、或いは、移行領域用に設計された成型金型によって、ねじり弾性及び移行領域におけるねじり弾性の変化をより正確に制御することによって決定することができる。また、理解できるように、移行部分における壁厚とその長手方向の変化がねじり弾性及びその変化に影響する。
【0020】
図2を参照すると、本発明のクロス−ビーム部材102は、
図2に表した長手方向の輪郭222で示すように、好適には、長さにそって変化する壁厚tを備えている。例示したクロス−ビーム部材102は、
図3から
図6で見ることができるように、周方向にほぼ均一であり、かつ、
図2で見ることができるように、クロス−ビーム部材に沿って長手方向に変化する壁厚を有している。通常、長手方向の輪郭222は、ほぼ対称である。つまり、クロス−ビーム部材の壁厚は、クロス−ビーム部材の中心から両端に移動する際に均等に変化する。ただし、非対称な長手方向の輪郭も、例えば、任意の非対称形状または荷重条件に適応する必要がある場合には、考慮される。
【0021】
図2は、壁厚の長手方向の変化の例、すなわち、クロス−ビーム部材の長さに沿って長手方向に変化する壁厚の例を示している。
図2に示す中央部分202は、薄壁、すなわち、厚さが最も小さい壁を有している。クロス−ビーム部材の大きな壁厚は、移行部分206で発生する。好適な実施の形態では、壁厚tは、全体的な長手方向の輪郭222で示すように、一つの部分から次の部分に滑らかに移行する。移行部分の移行断面輪郭の滑らかな移行と同様に、一つの壁厚から次の壁厚へ、または、一つの部分から他の部分への壁厚の滑らかな移行は、特に、滑らかでない移行領域において、増大した局部応力の集中を回避することができる。
【0022】
前述したように、クロス−ビーム部材は、ねじり剛性のコンプライアンス要件を満たす必要がある。クロス−ビーム部材はまた、耐荷重部材であり、ねじり、曲げ、せん断、及び、軸方向荷重によって生成される応力レベルに耐えるために、必要な強度を有する必要がある。前述したように、移行部分は、両端に作用するねじり力を中央部分に伝達する。移行部分の断面形状により、クロス−ビーム部材がねじられた場合に、移行部分に応力集中が起こる可能性がある。別な問題であるが、耐久性は、頻繁にねじられることによって移行部分の高応力領域に発生する潜在的な亀裂によって影響される傾向がある。理解できるように、大きな厚さにより、特定の構造における応力を減少させることができ、また、比例して、剛性を増加させることができる。低剛性と最大許容応力要件との間の妥協点となるクロス−ビーム部材のために、一定の壁厚を選択する代わりに、クロス−ビーム部材の壁厚と長さに沿った変位が「チューニング(調整)」される。換言すると、壁厚及びその長手方向の変位は、全体の耐荷重性やねじり剛性要件及び予想される局部応力集中などの設計要求にしたがって調整される。壁厚の変化は、局部の応力集中を支持するために選択される。例えば、壁厚は、大きな応力集中が予想される領域は大きく(厚く)、そのような大きな応力集中が予想されない領域では小さい。壁厚は、また、より順応性が要求される領域では減少させることができる。壁厚の変化は、局部応力がより均等に分散されるように、局部応力集中を最小限にするように選択することができる。局部応力を均等に分散させることにより、より少ない応力集中が高応力領域に早期の故障を引き起こさないように、特に、厳しい荷重条件下にある場合に、構成部品の寿命を延ばすことができる。
【0023】
理解できるように、クロス−ビーム部材の中央部分、移行部分及び端部部分のいずれか一つを「調整する」ことができ、また、局部応力分布、全体的なねじり剛性のコンプライアンスなどの設計要件を満足しながら、クロス−ビーム部材の長さに沿って質量の分布を最適化するためにしばしば調整される。例えば、荷重支持要件が要求される場合、中央部分は、移行部分、端部部分または両方の部分よりも大きな壁厚を有することができ、或いは、中央部分は、他の部分の一つの壁厚とほぼ同じ壁厚を有することができる。同様に、他の部分も、必要に応じて、大きいまたは小さい壁厚を有することができる。任意の二つの部分、例えば、端部部分及び移行部分はまた、同じ壁厚を有することができる。さらに、クロス−ビーム部材を、中央部分と、二つの移行部分と、二つの端部部分に分割し、また、各部分がほぼ均一の壁厚を有するように処理することは、単に、説明上の便宜のためである。これらの部分のいずれかは、所望により、または、必要な場合には、各部分内に変化する壁厚を有するサブセクションに分割することができる。
【0024】
一般に、クロス−ビーム部材の壁厚は、必要に応じて、長手方向に変化する。例えば、各部分自体が、変化する壁厚を有することができる。各部分及び各部分内の壁厚の変化は、予想される局部応力に従って、なかでも、ねじり剛性の全体的な要件、荷重支持要件、材料の選択、クロス−ビーム部材の全体の寸法と各部分の長さ、耐久性の要件などの追加要件に従って、調整、すなわち、調節される。
図2に、長手方向の輪郭の一例を示す。クロス−ビーム部材102は他の形状を有することができ、
図2に示す形状に限定されないことは理解できることである。クロス−ビーム部材の形状を変更することは、局部応力分布、全体的なねじり剛性及び耐荷重能力を異ならせることができ、また、壁厚の異なる長手方向の変化につながる可能性がある。
【0025】
図2に示すように、変化する壁厚を有するクロス−ビーム部材は、後述する
図7に示すように変化する内径と一定の外径を有する管状ブランク700から形成することができる。変化する壁厚を有する管状ブランク700自体は、PCT/CA2002/00464のPCT出願に記載されているような任意の適切な技術を使用して形成することができる。このPCT出願の内容全体が、参照することによって組み込まれる。簡単に説明すると、単一の外径と変化する内径を有する管状ブランク700は、往復マンドレルとダイのアセンブリを使用する冷間成形加工により、一定の壁厚の素管720から形成することができる。ダイは、管状ブランク700の外径に対応する開口を備えたダイキャビティを有している。マンドレルは異なる直径の部分を有しているか、または、テーパー付けられた部分を有している。管状ブランクを冷間成形する場合、マンドレルは管の内側に配置され、ダイの開口部の内外に選択的に移動されるか、或いは、異なる直径の部分がダイの開口部に選択的に配置される。ダイの開口部の寸法は、最初の管(素管)の初期の外径よりも小さい。素管がダイの開口部に押し通されると、成形される管の外径がダイの開口部の寸法まで縮小される。ダイを通過した管の壁は、マンドレルによって所望の位置で圧縮され、それによって、壁は、ダイの開口部に配置されたマンドレルの部分とダイの開口部自体との間の隙間によって限定された厚さに制限される。マンドレルをダイの開口部から取り除いた場合、このような圧縮は不可能であり、また、壁の厚さは、マンドレルによって影響を受けることはない。管がダイの開口部を介して引き出されるように、マンドレルをダイの開口部の内外に選択的に移動させることによって、また、マンドレルの異なる直径の部分をダイの開口部に選択的に配置することによって、変化する壁厚の管状ブランクが得られる。管状ブランクが所望の長さ、すなわち、設計通りの長さに達した場合、管は切断され、すなわち、素管から切り離される。
【0026】
例えば、最初に、素管720がダイの開口部から引き出された場合、ダイの開口部に配置されたマンドレルの部分は、マンドレルの直径とダイの開口部の直径との間の差が、所望の壁厚の端部部分を形成するように、端部部分の壁厚の二倍の直径を有している。所望の長さの端部部分を形成した後、移行部分を形成するために、マンドレルの他の領域がダイの開口部の中で徐々に移動される。この領域のマンドレルの直径とダイの開口部の直径との間の差は、移行部分の壁厚の二倍である。マンドレルの再配置を緩やかにすると、壁厚の変化、すなわち、端部部分の壁厚から移行部分の壁厚への移行部分の壁厚も滑らかになる傾向がある。所望の長さの移行部分を形成した後、マンドレルの他の異なる領域がダイの開口部の中で徐々に移動される。この領域では、ダイの開口部の直径とマンドレルの直径との差は、中央部分の厚さの二倍である。中央部分を形成した後、マンドレルは、第2の移行部分を形成するために、再び、再配置され、その後、第2の端部部分を形成するために、再度、再配置される。次に、管は、クロス−ビーム部材に対応する変化する壁厚を有する管状ブランクを得るために切断される。
【0027】
このようにして、壁厚が変化する管状ブランクが、均一な壁厚の素管ブランクから冷間成形される場合、冷間成形工程により、変形した領域に応力が導入されるため、さらに加工するためには、冷間成形した管状ブランクは、硬くなりすぎるか、あまりにも脆弱になることがある。好適には、冷間成形した管状ブランクは、この管状ブランクをクロス−ビーム部材に形成する前に、応力が解放される。
【0028】
理解できるように、
図7Aに示す管状ブランク700は均一の外径を有しているが、このような管状ブランクを使用することは、便宜のためだけである。特に、ダイの開口部に固定されたダイセットを使用する管状ブランクの製造の便宜のためである。管状ブランク700を生産するために、他の形式のダイセットと他の成形技術を採用することができる。したがって、管状ブランクは、内径の変化、外径の変化、または、内外径の変化の組み合わせにより、変化する壁厚を有することができる。例えば、
図7Aに示す管状ブランクは、管状ブランク700の長さに沿って変化する管の内径710と一定の外径712を有している。内径と外径の間の距離が壁の厚さである。管状ブランクの長さに沿って差が変化すると、それに応じて壁の厚さも変化する。
図7Aに示す例では、管状ブランクの壁厚の変化と、管状ブランクから形成されたクロス−ビーム部材の壁厚の変化は、外径はほぼ一定のままで、内径が変化するだけである。また、管状ブランクの長さに沿って、管の内径710を一定に維持して、外径712を変化させることも可能である。その時には、壁の厚さの変化は、外径の変化だけである。当然に、内径と外径の両方を、管状ブランクの長さに沿って変化させて、管状ブランクに沿う壁厚の変化に、結果的に、クロス−ビーム部材の壁厚の変化に貢献させることができる。
【0029】
図7Aは、長手方向の壁厚702の輪郭を、
図2に示すクロス−ビーム部材の輪郭に対応させた管状ブランク700の例を示す。
図7Aに示す管状ブランクは、端部部分204に対応する二つの対向する端部領域706と、端部領域706と中央領域704との間に形成された二つの中間の移行領域708と、移行領域708の間に形成された中央領域704と、を有している。移行領域708は移行部分206に対応しており、また、中央領域704は中央部分202に対応している。以下に説明する成形工程によるいくつかの壁厚の小さな変更以外には、端部領域の壁厚は、クロス−ビーム部材の端部部分204の壁厚と本質的に同じであり、移行領域708の壁厚は、移行領域206の壁厚と本質的に同じであり、また、中央領域704の壁厚は、クロス−ビーム部材の中央部分の壁厚と本質的に同じである。このような管状ブランク700を取得後、管状ブランクは、クロス−ビーム部材を得るために、変形、たとえば、プレス成形される。
【0030】
クロス−ビーム部材102を形成するために、管状ブランク700は、最初に、中央のかなりの部分が平坦にされ、さらに、U−形状の断面輪郭の中央領域704に変形される。中央領域704をU−形状輪郭に形成することは、例えば、2ステップの工程とすることができる。2ステップの工程では、第1ステップは中央部分を平坦にすることであり、
図7Cに示すように、中央領域のかなりの部分、または、中央領域とこの中央領域に隣接する移行部分の一部が、部分的に平坦化された管状ブランク730を取得するために、平坦にされる。部分的に平坦化された管状ブランク730の平坦化された部分732は、続いて、U−形状の断面輪郭を形成するように曲げられる。もちろん、これらの二つのステップ、すなわち、平坦化加工と曲げ加工は、複合した一つのステップの工程で実行することができる。例えば、管状ブランク700は、長手方向にU−形状の表面を有する成形ダイに配置され、続いて、この成形ダイのU−形状の表面に従って、管状ブランクのかなりの部分が平坦化されると同時に変形される。例えば、成形ダイによって形づけられ、または、押圧されると共に曲げられて、中央領域704が変形されると、中間の移行領域708は、中央領域704が変形されることによって作用する力によって変形される。好適には、クロス−ビーム部材の断面輪郭は、一方の端部部分から、移行部分及び中央部分を介して、他方の端部部分に滑らかに移行する。長手方向に輪郭222の壁厚を有し、ほぼU−形状の中央領域からほぼ平坦な楕円形状の端部近傍部に移行するクロス−ビーム部材102を管状ブランクから形成することができる。
【0031】
上述したように、端部部分、移行部分及び中央部分は、一般に、一定の壁厚を有する必要はない。それらのいずれかが、これらの部分の設計要件を満たすために異なる壁厚の領域を有することができる。
図8Aは、クロス−ビーム部材の長手方向の輪郭の例を示しており、移行部分は二つの領域に分割され、端部部分の近傍は大きい壁厚を有しているが、他の領域の壁厚は小さい。
図8Bは他の例を示しており、移行部分206は、三つのゾーン、すなわち、ゾーン1、ゾーン2及びゾーン3に分割され、ゾーン1は端部部分204に隣接すると共にゾーン3は中央部分202に隣接している。ゾーン2は、ゾーン1とゾーン3との間に形成されている。これらの各ゾーンは、設計要件に従って壁の厚さを調節、すなわち、調整することができ、設計ゾーンと呼ばれる。一つの例として、ゾーン1の壁厚はゾーン2の壁厚よりも大きく、ゾーン2の壁厚はゾーン3の壁厚よりも大きく、また、ゾーン3の壁厚は中央部分の壁厚よりも大きくすることができる。別の例として、ゾーン3は最小の壁厚を有し、ゾーン2は最大の壁厚を有し、また、中央部分は、ゾーン2とゾーン3の間の壁厚を有することができる。当然ではあるが、特定の設計要件及び異なる特定の車両の制約によって、各部分の設計ゾーンの数を異ならせること、これらの各ゾーンを他の壁厚の分布とすること、及び、それらの値を中央部分と端部部分の壁厚に関連させることが可能である。
図8Cは、壁厚の変化の別の例を示している。端部部分204の壁厚は、中央部分202の壁厚よりも大きい。端部部分204と中央部分202との間の移行部分206は、テーパー付けられた壁厚、すなわち、移行部分の壁厚が中央部分に向けて連続的に減少する壁厚を有している。
図8Dは、全ての三つの部分、すなわち、端部部分204、移行部分206及び中央部分202において、壁厚が、クロス−ビーム部材の中央部分に向けて連続して減少する、さらに他の例を提供する。
【0032】
図9Aは、他の実施の形態のツイスト−アクスル100’の例を示している。ほぼ直線状のクロス−ビーム部材の代わりに、ツイスト−アクスル100’は、ほぼU−形状のクロス−ビーム部材102’を有している。U−形状のクロス−ビーム部材102’は、ほぼ直線状の中央部分202と、U−形状の脚部に形成された二つの一体のトレーリングアーム120を備えた二つの移行部分206を有している。一体のトレーリングアーム120のそれぞれは、U−形状のクロス−ビーム部材102’の接続領域118から延在している。各一体のトレーリングアーム120は末端側端部122を有しており、この末端側端部には、ホイールマウント114が固定され、車輪を接続するのに適している。中央部分202、移行部分206、接続領域118’、及び、一体に形成されたトレーリングアーム120を含むU−形状のクロス−ビーム部材102’は一体部品であり、以下に詳述するように、一つの管状ブランクから形成されている。中央部分202、移行部分206、接続領域118’の形状と横断面の輪郭は、曲げられた接続領域118を除いて、ツイスト−アクスル100のほぼ直線状のクロス−ビーム部材102と実質的に同様であるため、ここでは詳しくは説明しない。
【0033】
ツイスト−アクスル100’は、また、
図2に示すツイスト−アクスル100のトレーリングアーム106の前側部分に対応する一対のサイドアーム124を有している。各サイドアーム124は、クロス−ビーム部材102’の接続領域に固定するために適した一方の端部を有している。
図9Aに示す例では、サイドアーム124は、スプリングシート116と、クロス−ビーム部材102’の接続領域118’に溶着されている。各サイドアーム124は、例えば、接続具112を介して車両のフレームに接続するのに適した他方の端部を有している。サイドアーム124は管状とすることができるか、または、型で打ち抜くことができる。これらはまた、開断面形状または閉断面形状にすることもできる。
【0034】
クロス−ビーム部材102’は、その長さに沿って変化する壁厚を有している。壁の厚さの変化は、ねじれ弾性の中央部分とねじり剛性の接続部分を提供する。各接続領域118’の一部、ここでは一体に形成されたトレーリングアーム106は、少なくとも、ねじり剛性に形成される。壁厚は、クロス−ビーム部材に沿って、一方の末端側端部122から他方の末端側端部122に滑らかに変化する。
【0035】
図9Bは、クロス−ビーム部材102’(一方の半分だけを示し、他方の半分は鏡像である)の壁の厚さの長手方向の輪郭の例を示す。壁厚は、一体形成のトレーリングアーム120部分で約2.7mmであり、続いて、接続領域118’で約3.4mmに増加する。壁厚は、中央部分202が最小で、この例では、約1.7mmである。
図9Bに示すクロス−ビーム部材102’の例では、各接続領域118’と中央部分202との間に形成された移行部分206を有している。移行部分206は、この例では、接続領域の壁厚と中央部分の壁厚との間の壁厚を有しており、約2.3mmである。当然ながら、この例において、異なる領域の相対的な壁厚とその値を図示するだけであり、特定の設計要件及び異なる特定の車両の制約に応じて異ならせることができることは理解されるであろう。
【0036】
クロス−ビーム部材102’を形成するためには、一連のステップが必要である。
図9Cには、クロス−ビーム部材102’を形成するためのいくつかの追加のステップを含む、工程のステップが示されている。工程900は、変化する壁厚の管状ブランク700を形成する工程(ステップ910)で開始される。変化する壁厚の管状ブランクを形成する工程の詳細は、クロス−ビーム部材102の形成に関連して提供しており、ここでは繰り返して説明しない。管状ブランク700は、
図9Bに示す一例である、クロス−ビーム部材102’に対応する長手方向の壁厚の輪郭を有している。管状ブランク700は、続いて、クロス−ビーム部材の中央領域と接続領域に対応する領域などの、相当の変形が予想される領域で応力が解放される(ステップ912)。次に、追加的に、予備曲げ加工ステップ914で、応力が解放された管状ブランクが、この応力が解放された管状ブランクを「U」形状にするように、接続領域で曲げられる。次に、ステップ916で、ほぼ直線状のクロス−ビーム部材102の形成に関連して説明した前述した方法で、中央部分がほぼ開断面輪郭を形成するように形成される。前述した方法はここでは繰り返さない。次に、ステップ918で、一体成形されたトレーリングアーム120が形成される。このステップでは、一体成形されたトレーリングアーム120は、必要な寸法にすることができる。最後に、追加的に、接続領域や移行領域などの高い強度が必要とされるか望まれる領域に、加熱処理と焼入れ処理が適用される(ステップ920)と共に、これらの領域にショットピーニングが適用される(ステップ922)。利便のために、または、好適には、加熱処理と焼入れ処理は、クロス−ビーム部材102’の全体に適用することができる。同様に、部分的にまたは全体の表面の両方にショットピーニングが意図される。ショットピーニングは、管状のクロス−ビーム部材102’の内面、外面、または、内外面の両方にも適用することができる。
【0037】
前述したように、上記したステップの一部は省略可能である。例えば、特定の応用や生産の要件によって、加熱処理と焼入れ処理(ステップ920)、直後のショットピーニングのステップ922は、必要としないことがある。さらに、理解されるように、図示して説明した順序に従ういくつかのステップは、必要としない可能性がある。例えば、加熱処理及び焼入れ処理(ステップ920)と、後続のショットピーニングのステップ922は、設計要件に応じて、予備曲げ加工ステップ(ステップ914)の前に、再度、実施することもできる。
【0038】
任意の与えられた荷重要件及びねじり剛性要件のために、壁厚は、材料の選択によって影響されることを理解されたい。クロス−ビーム部材の製造に適した一つの材料は、HSLA80F鋼(YS80ksi、UTS95ksi,20%の一様な伸び)などのHSLA鋼である。HSLA鋼は、一般に、いくつかの典型的な応用では、クロス−ビーム部材を形成した後の焼入れ、焼きし処理を必要とすることなく、必要な高強度を提供するのに適している。HSLA鋼が望ましいが、他の材料を使用できることもできる。例えば、熱処理は回避する方が好ましいが、さらに重量を減少させるために、或いは、特に、低剛性値を満足するために、高い強度を有するが熱処理を必要とする他の材料を使用することも考えられる。このような一つの材料はボロン鋼である。ボロン鋼は、かなり高い強度のため、より軽量で、または、より低剛性のアクスル(車軸)を、HSLA鋼よりも簡単に荷重要件を満たすことができる。クロス−ビーム部材は、Mn22B5などのボロン鋼から製造することができる。ただし、移行部分の熱処理は、一般に、所望の降伏点を達成するために、熱処理した領域を強化する必要がある。移行部分は、中央部分がU−形状断面の輪郭に形成される前、または、後に、熱処理することができる。熱処理はまた、より高い強度が要求される特定の領域が考えられる。そのような例が、U−形状のクロス−ビーム部材を形成する記載に関連して、上述されている。
【0039】
本発明の種々の実施の形態が詳細に記載されている。当業者であれば、発明の範囲から離れることなく、数々の修正、適用、変更が可能であることを理解するだろう。上記したベストモードの変更や追加は、自然、精神または本発明の範囲から離れることなく行うことができるので、本発明は、添付した請求項だけでなく、これらの詳細に限定されるものではない。