特許第6094013号(P6094013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094013
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】避難装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 18/00 20060101AFI20170306BHJP
   E01C 1/04 20060101ALI20170306BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   E01D18/00 B
   E01C1/04
   E04H9/14 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-189246(P2012-189246)
(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公開番号】特開2014-37755(P2014-37755A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】503018571
【氏名又は名称】有限会社フジカ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 充弘
【審査官】 石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−184323(JP,A)
【文献】 特開2013−241786(JP,A)
【文献】 特開2009−036014(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3169231(JP,U)
【文献】 特開平05−287719(JP,A)
【文献】 特開平04−336102(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0245639(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 15/14
E01D 15/24
E01D 18/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に立設した直柱やアーチ構造体などの支承体と、多数人員が避難可能な面積をもつ避難用ステージとして利用可能なよう前記支承体に取付支持された架構体と、地上と架構体とを結ぶ登降手段とを有する避難装置であって、前記架構体は、襲来が想定される津波流を取り込み外部に排出可能に筒胴前後端を開放状とした筒胴型に形成されていることを特徴とする避難装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、津波や洪水、突風(竜巻を含む)などの非常事態発生時に近場において迅速かつ安全に避難できるようにした避難装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先の東日本大震災において発生した津波は、想定を大きく超えるもので避難場所が遠い高台に限定されていることもあって大災害を招いた。本出願人は、遠い高台でなく住民の近場で避難可能な人工的な避難装置を提供すべく研究開発を行い、震災前から多くの津波避難装置を提供している。
【0003】
【特許文献1】 特開2009−036014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
津波避難装置の一つとして、特許文献1に開示されたものがあり、同文献1は、道路や河川、あるいは鉄道等路線などを跨ぐように設けられる歩道橋を対象として津波襲来前に近場住民の避難を可能とし、特に歩行路面以外に避難ステージを設けてできるだけ多くの人が避難できるようにしたものである。
しかし、同文献1に記載された歩道橋は、歩道橋本体の渡架躯体とは別設されたステージ躯体が狭いものであるため、町内の人を多く避難させることができず、大きな問題となっている。
また、前記渡架躯体やステージ躯体などの架構体は、箱型と称する構造を使用するのが一般的であるが、その箱型架構体は、その一側面を津波が襲来する方向に直交状に対向するようになっているため、津波流や浮流物などが架構体の壁面に直角に衝突して想定しない過大な負荷を受けるだけでなく架構体には箱型構造による密閉空間が存するため過大な浮力が発生する結果、避難装置は支柱根元が抜けたりその他の個所の破損や浮上流失など予測しない被害を招くだけでなく避難者を安全に護ることができなくなるおそれがある。
【0005】
この発明は、上記問題を解決しようとするものであり、近場のできるだけ多くの住民を避難させ得るようにした避難装置を提供することを前提とし、特に津波流や浮流物などが襲来してきてもその直撃を免れしかも浮力が作用しないようにすることで装置自体への被害を軽減し避難者をも安全に護ることができるようにした避難装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、地上に立設した直柱やアーチ構造体などの支承体と、多数人員が避難可能な面積をもつ避難用ステージとして利用可能なよう前記支承体に取付支持された架構体と、地上と架構体とを結ぶ登降手段とを有する避難装置であって、前記架構体は、襲来が想定される津波流を取り込み外部に排出可能に筒胴前後端を開放状とした筒胴型に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述したようにこの発明は、地上に立設した直柱やアーチ構造体などの支承体と、避難用ステージとして利用可能なよう前記支承体に取り付けられた架構体と、地上と架構体とを結ぶ登降手段とを有する避難装置であって、前記架構体は、襲来が想定される津波流を取り込み外部に排出可能に筒胴前後端を開放状とした筒胴型に形成されていることを特徴とするので、津波流や浮流物などが襲来してきてもその直撃を免れしかも浮力が作用しないようにすることで装置自体への被害を軽減し避難者をも安全に護ることができるようにした避難装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】 この発明の一実施形態を示す避難装置の平面図。
図2図1の側面図。
図3図2のIII−III線断面図。
図4図2のIV−IV線断面図。
図5】 他の実施形態を示す平面図。
図6】 他の実施形態を示す避難装置の前部横断平面図。
図7】 他の実施形態を示す避難装置の正面図。
図8】 架構体の他の実施形態を示す模式正面図。
図9】 架構体の他の実施形態を示す模式正面図。
図10】 架構体の他の実施形態を示す模式正面図。
図11図12の平面図。
図12図11の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を説明する。各実施形態の中で説明する各技術は関係する他の実施形態においても適用することができる。
図1ないし図3は大規模型津波避難装置についての一実施形態を示すもので、同装置を洪水や竜巻発生時の避難用以外に町内会の集会や祭り、あるいは常時か一時的利用型の店舗、出店などの用途として利用することもでき、給油所や役場などの施設設置用、ソーラーや風力発電システム設置用としても利用することができる。大規模とは、数十人程度でなく数百人以上、例えば、近隣地域住民全員が避難可能な程度のものをいう。
【0010】
これらの図において、1は車道で片側1車線や複数車線のもので一方通行型であってもよく、その左右両脇には、車道1よりも少し高くした歩道(あるいは自転車歩行者道)2,2が設けられ、さらに図示しないが歩道2に面した住居などの建造物が設置される。車道1としては、様々な幅員のものがあるが、この実施形態では、片側のみで5m、両側で10m、歩道2は3m前後とされている。車道1の中央には、中央分離帯16aが短くあるいは長く設けられる。Tは津波が押し波として襲来してくる想定方向、−Tは引き波の想定方向を示し、これらT,−Tの流れ方向は、先の大震災時にもみられたように、市街地が車道1、歩道2の両脇に流れ抵抗のある店舗や住居などを存してそれらにより自ずと車道1の通行方向に対応するものと想定される。
【0011】
3は側支柱(支承体の主材)で、垂直な直柱とされ、各歩道2上にあって車道1の長手に沿って例えば、前後に50m〜100mの間隔をもって複数本垂直に立設されており、4は鋼管杭により固定される各基礎ブロック(支承体の一つ)で、その上に支持部材である取付フランジ(図示省略)とアンカーを介して側支柱3が基部固定されている。
【0012】
側支柱3は丸鋼管でもよいが、ここでは角鋼管を使用し、各角稜部を前後に向けて津波流T,−Tを切り分け得るように構成してある。この側支柱3は地上から15ないし20mの高さまで伸びている。
【0013】
5は避難用ステージ6を上面に有する架構体で、15ないし20mの高さとされる側支柱3に上端フランジ7上を取り付け、その上面を介して取付支持されている。架構体5は、車道1の中央分離帯16aに沿って配置した複数本の中央支柱16に支持することによりさらに強固に支持するようにしてもよい。
この架構体5は、図4の右欄に示すように、前後を開放状とした四角筒胴型の箱型フレーム8…の複数本を組み合わせて形成したものであって、長い箱型フレーム8…の複数本(5本)を接合板9を利用して左右幅方向に連設一体化して前後に長めの矩形構造体としてなるものである。各箱型フレーム8は前後に長いものであるので、前記接合板9を共用板として利用して前後の連結も兼ねるようにすることができる。尚、箱型フレーム8の前後に接合したラインは図示省略してある。架構体5は、10はステージ床下地材で、架構体5の左右幅方向にその長手方向を向けて架構体5の前後長手方向に複数並列となるように敷設してある。そのステージ床下地材10の上面を介して避難ステージ6を固定してある。
尚、箱型フレーム8の内隅部には、三角筒あるいは四角筒状をした補強部材11を取りつけてもよい。12は津波流取込用の前通水口、13は後通水口である。上端フランジ7は、平板状としてあるが、図4の右欄に仮想線で示すように、水平な平板部分とそれより立ち上がる辺よりなるアングル型にして架構体5の底面および側面の双方に止着具や溶接により取り付られるようにして側支柱3と架構体5との連結強化を図るようにしてもよい。9aは箱型フレーム8相互をつなぐ底つなぎ板で津波流Tの流れを阻止することなく有効な補強となる。
架構体5は前記のように前後を開放状に形成した構造体であるので、強度は充足されるのみならず、津波流や浮流物Tが襲来してきた場合、その流れは前通水口12を通じて呑み込まれて内部の通水路14を通って後通水口13より流れ出るように作用するので、架構体5に衝撃が負荷せずしかも浮力も作用しないものになって損傷なく浮き上がりのない避難装置を提供することができ、従って、避難者も安全に護られるものとなる。
【0014】
15は噴流口で、各箱型フレーム8の底面前後端に形成されており、この噴流口15は、開放口でもよいし、図のようにグレーチングなどの網状部材あるいは多孔板により形成してもよい。この噴流口15…は、架構体5の底面を流れ突き揚げるおそれのある津波流を噴上げて減衰させるものであり、図1の左側(前側)の噴流口15は津波流(押し波)Tが作用するとき、右側(後側)の噴流口17は津波流(返し流)−Tが作用するときにそれぞれ機能する。
【0015】
17は側緩衝杭、18は中央緩衝杭で、側緩衝杭17は前後の側支柱3の前方に近接して固定配置されて津波流や浮流物が側支柱3に直接当たるのを阻止するもので、中央緩衝杭18も津波流や浮流物が架構体5に直接当たるのを阻止する役目をもつ。中央緩衝杭18は、中央分離ライン上にあって側緩衝杭17よりも前後に離れた位置にあり、これら中央緩衝杭18および側緩衝杭17は三角形の頂点配置をなすとともに、その上部前側に上からみて山形をなすように水平に架設された複数本のディフェンス19が対抗することにより、浮流物を前以って受け留めながら斜め側方へと流し去り、これにより、津波流や浮流物が架構体5や側支柱3へ直撃するのを阻止するとともに、粗大な浮流物が前通水口12あるいは後通水口13まで到達しないようにし通水口12,13には津波流のみが呑み込まれてスムーズに流れ通るようにしてある。ディフェンス21には強化ネットのような編状材を付せばより細かい浮流物までも前以って捕捉することができる。ディフェンス21はロッドやパイプ、あるいはワイヤなどで形成することができ、緩衝杭17,18の前側を通るように配置することでこれら浮流物が左右に分かれて流れやすくなる。
【0016】
21は避難者用の登降手段で架構体5の左右両側に八の字状に設けられ、平時は歩道橋の階段として活用する場合もある。22は車両用の登降手段である。この避難装置においては、登降手段21のみでもよいし、車両用の登降手段22のみでもよい。車用の登降手段22のみの場合は、避難者も横サイドに添って登降できるようにすることができる。23は防護フェンスである。
尚、前記架構体5は、複数の箱型フレーム8を横つなぎ式にして形成されているが、図5に示すように、横長板の上下と左右端板とで1つの大きな箱型フレーム5aとしたものの内部に縦仕切板25…で仕切って構成してもよい。また、同図の右上欄に示すように、箱型フレーム5aの内部に斜仕切板26を配して架構体5を構成してもよく、さらに、同図の右下欄に示すように、縦仕切板25間に斜仕切板26を組み合わせて通水性を損なうことなく強度アップを図るようにしてもよい。
【0017】
図6に示すように、架構体5は、前部あるいは後部を階段状としその全体を上からみて山形をなすように形成してもよい。この場合、例えば、津波流Tが浮流物A…を伴って流れてきたとき、それら浮流物A…と前通水口12との間に隙間が空くことになって津波流Tが架構体5内に流れ込みやすくなる。
尚、この架構体5の前および後方には、前記側緩衝杭17・中央緩衝杭18・ディフェンス19でなる捕捉防護手段を配置してもよい。
【0018】
図7に示す架構体5は、その内部に菱形をした流れガイド29を対向配置するとともに、その前側および後側の内部仕切り板30を短いものとして、前通水口12から流れ込んできた津波流を斜めの振り分け通路31に流して矢印のように架構体5の外側方域へと流出させるようにしたものである。流れガイド29は架構体5の補強に有効であるだけでなく、早い段階で津波流を外側方域へとTのように流出させることで後方域への津波流の流れを分散して減衰させることもできる。尚、架構体5の両側壁面一部には、津波流を外側方へと流出させるための流出口31aが開設されている。
【0019】
図8ないし図10は架構体5の他の構成例を示す。図8の例は、箱型フレーム33の間に溝形鋼などの連結材34を設けて連結一体化したもので、通水路35は箱型フレーム33内の他に連結材34の内部空間にも形成される。連結材34は下欄のようにH形鋼とすることもできる。
図9の例は、H形鋼を桁材36とし、そのフランジ間上下を連結板37でつないで一体化したもので、強度のある架構体5とすることができる。38は通水路である。
図10の例は、溝形鋼を背中合わせにした1本の桁材39とし、それらの複数本を連結板40でつないで架構体5としたものである。この場合も上下のフランジ部分を二重構造にしてあるので、強度のある架構体5とすることができる。41は通水路である。
【0020】
図11および図12は他の実施形態を示す。同実施形態は、前記のような直柱タイプの支承体に代えて、アーチ型の支承体を構成したもので、そのアーチ部材(支承体の主材)43は、丸あるいは角パイプを円弧状に形成したもので、左右一対をなし、これらアーチ部材43は、歩道2内に固定した基礎ブロック(図示省略)上に基部フランジ44とアンカー45を介して連結固定されている。左右のアーチ部材43は互いに平行をなすが、正面から見てハの字をなすように配置してもよい。46は連結部材で、両アーチ部材43間を連結する。こうした両アーチ部材43,43間の中段位置に架構体5を固定設置してある。47は仕切り板、48は前通水口、49は後通水口であり、内部には通水路50が左右複数列形成されている。51は避難者用の登降手段であり、平時には歩道橋の階段として活用される。52は車両用の登降手段であり、車道1のいずれの方向からも走行方向に沿って乗り入れることができるようになっている。アーチ部材43は、側面ハの字状をなすものでもよい。
【0021】
こうしたアーチ型支承体は、斜め上がりの脚基部aを備えているので、前方(図11,12の左側方)から襲来してきた津波流Tや浮流物が斜め上方へ向いて作用し、抜けにくくしかも損傷を受けにくい構造になっている。後方(図11,12の右側方)からの津波流−Tの襲来に対しても同様に機能する。また、架構体5の重量を簡易な構造でもって有効に支承する。特に、架構体5にあっては、津波流Tが作用してもそれらを通水路50を通じて流し去るので、支承体には水平方向の衝撃力および負荷が小さく作用するものとなり、その結果、津波に強い避難装置とすることができる。53は避難ステージ、54は防護フェンスである。
尚、図12の左上欄に示すように、前通水口48(あるいは後通水口49)は、上端から下端へ向けて後方(前方)へ下がり傾斜する斜めカット状に形成することができる。この場合、浮流物が前通水口48を塞ぐおそれがなくなる。前通水口48は図示とは逆向きに斜めカットしたものにしてもよい。
【0022】
尚、図1ないし図12までに示す実施形態の避難装置は、車道1、歩道2のない設置地盤上に設置する場合もある。
【符号の説明】
【0023】
1…車道 2…歩道 3…側支柱 5…架構体 6、53…避難ステージ 12,48…前通水口 13,49…後通水口 14,50…通水路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12