特許第6094022号(P6094022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094022
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】遺伝子導入ベクターおよびその調製法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-72745(P2009-72745)
(22)【出願日】2009年2月26日
(65)【公開番号】特開2010-193875(P2010-193875A)
(43)【公開日】2010年9月9日
【審査請求日】2012年2月22日
【審判番号】不服2015-7477(P2015-7477/J1)
【審判請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】503356668
【氏名又は名称】加藤 敬一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敬一
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】坂山 憲史
【合議体】
【審判長】 中島 庸子
【審判官】 長井 啓子
【審判官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−012503(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/28367(WO,A1)
【文献】 特開2001−2565(JP,A)
【文献】 International Journal of Pharmaceutics,vol.200,pp.73−86(2000)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
BIOSIS/MEDLINE/CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベシクル表面上に遺伝子を固定化し、そのベシクルをさらに粒径の大きいベシクルの内水相中に包括して、その包括されたベシクルが粒径の大きいベシクルの内水相中で運動の自由度を有する、二重構造ベシクルである遺伝子導入ベクターであって、両ベシクルは、Span(登録商標)80を主成分とし、カチオニック界面活性剤を含むカチオニックSpan(登録商標)80ベシクルであることを特徴とする、ベクター
【請求項2】
粒径の大きいベシクルの表面に抗体が固定化されていることを特徴とする、請求項1記載のベクター
【請求項3】
Span(登録商標)80とカチオニック界面活性剤を混合して調製した、カチオニックSpan(登録商標)80ベシクルの表面上に遺伝子を固定化した小粒径ベシクルを、さらに大粒径のベシクルの中に内包する二重ベシクルの調製法。
【請求項4】
Span(登録商標)80とカチオニック界面活性剤を混合して調製した、カチオニックSpan(登録商標)80ベシクルの表面上に遺伝子を固定化した小粒径ベシクルを、さらに表面に抗体を固定化した大粒径のベシクルの中に内包する二重イムノベシクルの調製法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内遺伝子導入効率に優れた遺伝子ベクターとしてのカチオニックSpan(登録商標)80ベシクルからなる二重ベシクルを用いる遺伝子導入技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療などの生体内遺伝子導入を試みるとき、血中に遺伝子ベクターを投与することになる。この場合ベクターに固定化された遺伝子は血中のDNaseなどの攻撃を受け分解され易い。そのため従来のような、遺伝子をベクター表面に固定化したものは生体内ではその有効性が低下する。さらに、細胞形質内に導入された遺伝子ベクターは、血中での攻撃を受けるため、細胞形質内での遺伝子ベクターとしての機能が低下する。また、エンドサイトーシスで導入された遺伝子ベクターでは、その遺伝子活性が低下する。そのため血中、および細胞形質内で有効に機能するベクターの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2003−001097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遺伝子導入に際して、導入効率の良い遺伝子ベクターを開発することを目的とする。従来のリポソームを用いた遺伝子導入では、リポソームの外表面に遺伝子を固定化しているため、血中ではその遺伝子がDNaseなどの攻撃を受け、活性劣化する。また目的細胞に取り込まれる場合のメカニズムはエンドサイトーシス(細胞貪食)であるため、細胞形質内で遺伝子が核まで送達される効率が悪い。このような状況下、効率の良い遺伝子ベクターを用いた遺伝子導入技術の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
遺伝子ベクターとして、表面に遺伝子を固定化したベシクル(小粒径ベシクル)を、そのベシクルよりもさらに大きいベシクル(大粒径ベシクル)に内包した、いわゆる二重ベシクルを調製する。これらのベシクルにはカチオン界面活性を混合させ、カチオニックなベシクルとして用い、目的細胞への親和性を増強させた。この二重ベシクルは、膜融合能に優れたSpan(登録商標)80ベシクルが基本となっており、高効率の生体内遺伝子導入が期待できる。この導入機能は以下の4段階からなる。▲1▼まず、上記の二重構造を有する大粒径のベシクルを血中に投与して、そのベシクルに内包した小粒径ベシクル表面の遺伝子を、血中のDNaseなどの攻撃から保護した状態で、目的細胞まで送達する。▲2▼大粒径ベシクルが目的細胞に到達後は、その大粒径ベシクルが目的細胞と融合して、内包した遺伝子固定化小粒径ベシクルを細胞形質内に放出する。▲3▼その放出された小粒径ベシクルが、細胞形質内で遺伝子ベクターの役割を果して、遺伝子を核まで効率良く送達して、▲4▼核内への遺伝子導入を図る。
【発明の効果】
【0006】
生体内遺伝子導入において、細胞との融合能、生体安全性に優れたSpan(登録商標)80のベシクルを用いて、血中と細胞形質内での二段構えの遺伝子送達機能を付与した。そのため、高効率で安全な遺伝子導入が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】使用した遺伝子
図2】種々のベシクル模型図
図3プラスミド外付けベシクルを内包した二重ベシクル(VPV)の位相差顕微鏡写真
図4】種々のベシクルによる相対遺伝子発現量のグラフ(ヒト骨肉腫細胞株(OST)の場合)
図5】種々のベシクルによる相対遺伝子発現量のグラフ(ヒトEGFR抗原組み込みマウス細胞 (ERM5−1細胞)の場合)
【符号の説明】
【0008】
1.使用した癌細胞
OST:ヒト骨肉腫細胞
ERM5−1:ヒトEGFR抗原組み込みマウス細胞
2.使用したベシクル
VPV: プラスミド外付けベシクルを内包したベシクル
IVPV:プラスミド外付けベシクルを内包したイムノベシクル
VP: プラスミド内包ベシクル
PV: プラスミド外付けベシクル
VV: ベシクル内包ベシクル
3.使用した遺伝子:pEGFPLuc
4.IAOE:Isocyanic Acid Octadecyl Ester
5.DOTAP:カチオニック界面活性剤(化学式:C4383NOS)
6.BufferP1:プラスミドDNA調製用の再懸濁バッファー、Resuspension Buffer(RNase A not included)
7.BufferP2:プラスミドDNA調製用の溶解バッファー、Lysis Buffer
8.BufferP3:プラスミドDNA調製用の中和バッファー、Neutralization Buffer
9.BufferQC:プラスミドDNA調製用の洗浄バッファー、Wash Buffer
10.BufferQF:プラスミドDNA調製用の溶出バッファー、Elution Buffer
11.BufferQBT:プラスミドDNA調製用の平衡バッファー、Equilibration Buffer
【発明を実施するための形態】
【0009】
レポーター遺伝子として、遺伝子導入されるとルシフェラーゼを産性するpEGFPLucを用いて、そのプラスミドを大腸菌で培養して増殖させた。一方、二段階乳化法により調製する界面活性剤Span(登録商標)80ベシクルを基本として、種々のベシクルを調製し、上記の遺伝子のベクターとして用いた。
このSpan(登録商標)80ベシクルには、膜強化剤として微量の大豆レシチンおよびコレステロールを混合し、さらにはカチオン界面活性剤であるDOTAPを上記のSpan(登録商標)80中に20wt%の割合で混合させ、カチオニックSpan(登録商標)80ベシクルとして用いた。このベシクル粒径はエクストルダーによる粒径制御や二次乳化後の長時間撹拌により、約150nm以下に調製した。
▲1▼この小粒径のカチオニックSpan(登録商標)80ベシクルの表面にp−L−Lysinを媒体としてプラスミドを結合させて、いわゆるプラスミド外付けベシクル(PV)を調製した。▲2▼一方、カチオニックSpan(登録商標)80ベシクル内にプラスミドを内包したベシクル(VP)も二段階乳化法により調製した。▲3▼さらに上記のPVを内包した二重ベシクル(VPV)も調製した。▲4▼またこのVPVベシクルの表面に抗体を固定化したIVPVも調製した。このような4種類のベシクルを用いて、以下の癌細胞に対する遺伝子導入実験を行った。使用した癌細胞はヒト骨肉腫細胞(OST)およびヒトEGFR抗原組み込みマウス細胞(ERM5−1)である。OST細胞の遺伝子導入実験に対しては、PV、VP、VPVの三種類のベクターを、また、ERM5−1に対する遺伝子導入実験では、PV、VP、VPV、IVPVの4種類を用いた。IVPVの抗体には、ERM5−1細胞表面の抗原EGFRを標的させるために、抗EGFR抗体を用いた。
これらの実験から、二重ベシクルVPVの内部に存在するPVが、ベシクルと細胞が融合した後、細胞形質内で核まで遺伝子を送達させるベクターとして機能し、遺伝子導入効率を上昇させることを実証した。
【実施例】
【実施例1】
【0010】
【実施例1】ERM5−1細胞、OST細胞のメンテナンスは以下のように行った。
▲1▼細胞が入った10mlシャーレの上澄みを除去し、5mlの滅菌PBSで洗浄し、▲2▼0.025%トリプシンを1ml添加後、細胞をインキュベーターに移し、約30秒インキュベートする。▲3▼その後、血清をトリプシンと同量添加して、6mlのDMEM培地で細胞をはがし、▲4▼遠心管にその細胞溶液を移して遠心処理する(1000rpm、5min)。▲5▼その上澄みを除去する。▲6▼一方、新しいシャーレに血清1ml、DMEM培地8mlを添加する。▲7▼(▲5▼)で沈殿した細胞を、希釈したい量の培地で懸濁する。▲8▼この細胞懸濁液1mlを上記(▲6▼)のシャーレに添加し、▲9▼そのシャーレを速やかにインキュベーターに移す。
【実施例2】
【0011】
【実施例2】使用したプラスミドを図1に示す。プラスミド調製法は以下のように行った。▲1▼(LB培地の調製法)NaCl 1g、BactoYeastExtract 1g、ポリペプトン2g、蒸留水200mlを加え攪拌する。オートクレーブ滅菌(121℃、20min)し、ある程度冷えたら冷蔵保存する。▲2▼(50mg/mlカナマイシンの調製)カナマイシン500mg、蒸留水10mgをビーカーに測り取り、攪拌する。ドラフト内でシリンジに移し、フィルターを通して、15ml遠心管(3本)に分けて凍結保存する。▲3▼(LBプレートの作成)LB培地300ml、寒天4.5gを三角フラスコに入れ、オートクレーブ滅菌(121℃、20min)後、65℃近傍で50mg/mlカナマイシン600μlを加える。その溶液を10mlシャーレに約10mlずつ分注し、固まったら冷蔵保存する。▲4▼(大腸菌の形質転換)試験管にLB培地2ml、大腸菌培養液0.1mlを入れる。37℃で二時間振盪する(166min−1)。この大腸菌1.5mlをエッペンチューブに移し、遠心処理後(12000rpm,30秒)、上澄みを吸引除去して、50mMCaCl 0.5mlを加え、ボルテックスする。100μlをエッペンチューブに移し、目的のプラスミド10μlを加え、氷上に20分間以上放置する。その後、試験管にLB培地1mlと上記放置の大腸菌を入れ、37℃で1時間振盪する(166min−1
ート一面にぬる。▲5▼(大腸菌培養)▲1▼15ml遠心管にLB培地2ml、50mg/mlカナマイシン4μlを入れる。▲2▼前日培養したシャーレ(上記LBプレートにぬったもの)から大腸菌のコロニーをセルスクレーパを用いて採取し、(▲1▼)の培地に加える。▲3▼37℃で10〜20時間振盪する(166min−1)。▲4▼LB培地20ml、50mg/mlカナマイシン40μlを入れた100ml三角フラスコに、(▲3▼)の溶液を加える。▲5▼これを37℃で7〜8時間振盪する(100〜110min−1)。▲6▼LB培地1000ml、50mg/mlカナマイシン2mlを入れた2L三角フラスコに、(▲5▼)の溶液を加える。▲7▼37℃で10〜20時間振盪する。(100〜110min−1)▲6▼(Plasmidの調製)Maxiprep Kit Protcol(QIAGEN Plasmid Maxi Kit,lot No.42147533)により、以下のようにした。▲1▼大腸菌の培養液を遠心管に移し、4℃で5000×g,10分間遠心操作しバクテリア細胞を収集する。▲2▼遠心後、上澄みを棄て、バクテリアペレットを10mlのBuffer P1でペレットが無くなるまで懸濁する。▲3▼これに10mlのBuffer P2を添加後4〜6回静かに転倒混和して充分に混合し、5分間室温に放置する。▲4▼これに10mlのBuffer P3(4℃に冷却しておく)を添加後、直ちに4〜6回静かに転倒混和して充分に混合した後、20分間氷上でインキュベートする。▲5▼これを、4℃,7000×g以上で30分間遠心操作する。遠心後、プラスミドDNA(上澄み液)を素早く回収する。▲6▼回収した上澄み液を4℃,7000×g以上で15分間再度遠心操作して、プラスミドDNAを含む上澄み液を素早く回収する。▲7▼10mlのBuffer QBTにより平衡化しておいたQIAGEN−tip500(プラスミド精製用オープンカラム)(▲6▼)で回収した上澄み液を添加し、自然落下により樹脂に浸透させる。▲8▼このQIAGEN−tip500を2×30mlのBuffer QCで洗浄する。▲9▼その後、15mlのBuffer QFを用いてプラスミドDNAを溶出する。▲10▼この溶出液に、10.5mlの室温のイソプロパノールを添加し、よく混合した後、直ちに4℃、5000×g以上で60分間遠心操作する。遠心後、上澄み液を捨てる。▲11▼DNAペレットを5mlの室温70%エタノールで洗浄し5000×g以上で60分間遠心操作する。▲12▼上澄み液を捨て、5000×g以上で1分間遠心操作する。▲13▼上澄み液をピペット
に溶解する。▲15▼分光光度計によりこの溶液のプラスミドDNA濃度を測定し、濃度を1mg/mlになるように調整する。
【実施例4】
【0012】
【実施例4】種々のベシクルの調製法を以下に示す。なおここで調製した遺伝子ベクターとしてのベシクルの模型図を図2に示す。
相を構成する溶液)の調整>0011段落で記載したプラスミド20μl(濃度500μg/ml)、Poly−L−Lysine70μl、TE buffer 60μlを加えて、15分間放置した。<ベシクルの調製>▲1▼5mlの茶瓶(1)にSpan(登録商標)80を52.8mg,5mlの茶瓶(2)にTween80を24mg計り取る。▲2▼(▲1▼)の茶瓶(2)にTE buffer 3.0mlを加え撹拌子を入れて撹拌させる。▲3▼(▲1▼)の茶瓶(1)にDOTAP13.2mg、コレステロール3mg,レシチン6mg,ヘキサン2.0mlを加える。((コレステロール+レシチン)の量は全量の12%になるようにする。コレステロール:レシチン=1:2になるようにする)。▲4▼(▲3▼)の茶瓶(1)の溶液中に内水(Plasmid溶液)150μlを滴下しながらホモジナイザーにより撹拌する。(回転数10000rpm、(15秒攪拌+15秒休み)を8セット。)▲5▼茶瓶(1)をヘキサンで洗いながらすり付きナスフラスコに入れ替え、エバポレーターでヘキサンを除去する。▲6▼そのナスフラスコの中に、(▲2▼)で撹拌しておいたTween80溶液を加える。(ナスフラスコの壁面についたクリームを割り箸でこすり落とし分散させる。)▲7▼ホモジナイザーで分散させる。(回転数3500rpm、1min)▲8▼先程の茶瓶(2)に移し変え、撹拌子を入れて一昼夜冷蔵庫で撹拌する。<ベシクルの精製>▲1▼瓶のふたを緩めて15分程度撹拌する。▲2▼遠心管に3mlのベシクル溶液を移し変える。▲3▼そのベシクル溶液を遠心にかける。(50000rpm,2hour,4℃)▲4▼遠心後、上層の油玉を取り除く。
【0013】
瓶(1)にSpan(登録商標)80を52.8mg、5mlの茶瓶(2)にTween80を24mg計り取る。▲2▼茶瓶(2)にTE buffer3.0mlを加え撹拌子を入れて撹拌させる。▲3▼(▲1▼)の茶瓶(1)にDOTAP13.2mg、コレステロール3mg,レシチン6mg,ヘキサン2.0mlを加える。((コレステロール+レシチン)の量は全量の12%になるようにする。コレステロール:レシチン=1:2になるようにする。)▲4▼この茶瓶(1)に内水(TE buffer)150μlを滴下しながらホモジナイザーにより撹拌する。(回転数10000rpm、(15秒攪拌+15秒休み)を8セット。)▲5▼茶瓶(1)の溶液をヘキサンで洗いながらすり付きナスフラスコに入れ替え、エバポレーターでヘキサンを除去する。▲6▼そのナスフラスコの中に(▲2▼)で撹拌しておいたTween80溶液を加え、ナスフラスコの壁面についたクリームを割り箸でこすり落とし分散させる。▲7▼そのナスフラスコをホモジナイザー処理する(回転数3500rpm、1min)。▲8▼この処理した溶液を、上記の空の茶瓶(2)に戻し、撹拌子を入れて一昼夜冷蔵庫で撹拌する(こうして長時間撹拌することにより、ベシクル粒径が約30〜150nmの小粒径のベシクルが調製される)。▲9▼均一なベシクルを調製するときは、100nmのメンブランを用いたエクストルダーを用いて粒径制御をして、約100nmのほぼ均一な小粒径ベシクルにした。<ベシクルの精製>▲1▼上記(▲8▼)の一昼夜撹拌保存した茶瓶(2)のふたを緩めて15分程度撹拌する。▲2▼このベシクル溶液3mlを遠心管に移し変える。▲3▼ベシクル溶液を遠心にかける(50000rpm,4hour,4℃)。▲4▼遠心後、上層の油玉を取り除き、精製ベシクル(V)を調製する。▲5▼Plasmid4.2μl,Poly−L−Lysine 15μl、(▲4▼)で精製したベシクル10μlをそれぞれエッペンチューブに加え、15分間放置する。こうしてPoly−L−Lysineを結合媒体として、ベシクル表面に、Plasmidを結合させたPlasmid外付けベシクル(PV)を調製する。
【0014】
の調製>▲1▼5mlの茶瓶(1)にSpan(登録商標)80を52.8mg,5mlの茶瓶(2)にTween80を24mg計り取る。▲2▼茶瓶(2)にTE buffer3.0mlを加え撹拌子を入れて撹拌させる。▲3▼(▲1▼)の茶瓶(1)にDOTAP13.2mg、コレステロール3mg,レシチン6mg,ヘキサン2.0mlを加える((コレステロール+レシチン)の量は全量の12%になるようにする。コレステロール:レシチン=1:2になるようにする)。▲4▼内水(0013段落で調製したplasmid外付けベシクル懸濁液)を150μl入れながらホモジナイザーにより撹拌する。(回転数10000rpm、(15秒攪拌+15秒休み)を8セット。)▲5▼(▲3▼)の茶瓶(1)の溶液をヘキサンで洗い落としながら、すり付きナスフラスコに移し、エバポレーターでヘキサンを除去する。▲6▼(▲2▼)で撹拌しておいたTween80溶液をそのナスフラスコに加える。(ナスフラスコの壁面についたクリームを割り箸でこすり落とし溶解させる。)▲7▼そのナスフラスコの溶液をホモジナイザーで分散させる(回転数3500rpm、1min)。▲8▼これを茶瓶(2)に移し変え、3時間撹拌して、ヘキサンを完全除去し、一昼夜冷蔵庫で保存する。こうして比較的大粒径のVPVベシクル(平均粒径で300nmであるが、マイクロサイズのベシクルも生成する)が調製される。<ベシクルの精製>▲1▼(▲8▼)の一昼夜撹拌保存した茶瓶(2)のふたを緩めて15分程度撹拌する。▲2▼このベシクル溶液3mlを遠心管に移し、▲3▼そのベシクル溶液を遠心にかける。(50000rpm,2hour,4℃)▲4▼遠心後、上層の油玉を取り除き、Plasmid外付けベシクルを内包するベシクル(VPV)を調製する。<二重ベシクルの確認>▲1▼このようにして調製したVPVのベシクルの顕微鏡写真を図3に示すが、大粒径ベシクル内に小粒径ベシクルが存在している様子が確認できる。実際には、蛍光物質FITCを内包させた小粒径ベシクルを調製して、それを大粒径ベシクルに内包させた。蛍光測定により、その小粒径ベシクルが大粒径ベシクル内に内包されている事を確認した。
【0015】
IAOE−proteinA調製>▲1▼エッペンチューブにproteinA 100μl,Carbonate buffer 100μlを採取して攪拌する。▲2▼別のエッペンチューブにIAOE10mg,N−Nジメチルホルムアミド1〜2滴を入れ、(▲1▼)の溶液を50μl加える。▲3▼湯槽上で2時間放置する(30分毎に攪拌)。<ベシクル調製>▲1▼5mlの茶瓶(1)にSpan(登録商標)80を132mg,5mlの茶瓶(2)にTween80を48mg計り取る。▲2▼(▲1▼)の茶瓶(2)にpH9.0 Carbonate buffer 3.0ml,IAOE−proteinA 50μlを加え撹拌子を入れて撹拌する。▲3▼(▲1▼)の茶瓶(1)にDOTAP 26.4mg、コレステロール6mg,レシチン12mg,ヘキサン3.0mlを加える。((コレステロール+レシチン)の量は全量の12%になるようにする。コレステロール:レシチン=1:2になるようにする)。▲4▼その茶瓶(1)にベシクルの内水となる水溶液を300μl滴下しながらマイクロホモジナイザーで攪拌する(回転数20000rpm、3min)。▲5▼(▲4▼)の茶瓶(1)の溶液をヘキサンで洗い落としながらすり付きナスフラスコに入れ替え、エバポレーターでヘキサンを除去する。▲6▼そのナスフラスコに、(▲2▼)で撹拌しておいた、茶瓶(2)のTween80溶液、およびIAOE−proteinの混合溶液を加え、ナスフラスコの壁面についたクリームを割り箸でこすり落とし溶解させる。▲7▼そのナスフラスコ中の溶液をホモジナイザー処理した後(回転数3500rpm、1min)、▲8▼(▲6▼)の空になった茶瓶(2)に移し変え、3時間撹拌してヘキサンを除去する。▲9▼その後、蔵庫内で保存し、残ったヘキサンを除去する。<ベシクルの精製>▲1▼その一昼夜保存の瓶のふたを緩めて15分程度撹拌する。▲2▼そのベシクル溶液3mlを遠心管に移し変える。▲3▼それを遠心にかける(50000rpm,2hour,4℃)。▲4▼遠心後、上層の油玉を取り除いた後、▲5▼EGFR抗体を75μl加え、冷蔵庫内で48時間放置する。こうして、ベシクル表面にその抗体を固定化して、IVPVを調製する。
【実施例3】
【0016】
【実施例3】ERM5−1細胞およびOST細胞への遺伝子導入をする方法を以下に示す。▲1▼(遺伝子外付けベシクル(PV)の場合) ▲1▼遺伝子導入実験を行う前日に、6穴プレートに約2×10個/mlに調整したERM5−1細胞をプレーティングしておく。▲2▼また遠心管にPlasmid 4.2μl,Poly−L−Lysine 15μl,DMEM培地1.5mlをそれぞれ混合し、15分間室温に放置する。▲3▼その後、あらかじめ調製しておいたDOTAP含有ベシクル液(0013段落の<ベシクル精製>の▲4▼に記載)6μlを(▲2▼)のプラスミド溶液にそれぞれ添加し、15分間室温に放置し、PV溶液を調製する。▲4▼上記の(▲1▼)で予めプレーティングしておいたERM5−1細胞をPBSで一回洗浄した後、そのERM5−1細胞に上記(▲3▼)のPV液を1穴あたり0.5ml添加する。▲5▼37℃、5%CO下で3時間保温後、水溶液を全て吸い取った後、DMEM培地を1ml加えて培地交換する。さらに24時間培養して、遺伝子導入実験を行った。▲2▼PV以外のベシクル(VP,VPV,IVPV)は下記の方法によった。▲1▼遺伝子導入実験を行う前日に、12穴プレートに約2×10個/mlに調整したERM5−1細胞を1mlずつプレーティングする。▲2▼プレートの上澄みを除去しPBSで細胞を洗浄後、10%FBS−DMEM培地を0.50ml入れた後、予め濁度調ておいた各ベシクルサンプルを、上記の細胞に25μl添加する。▲3▼3時間後、水溶液を全て吸い取った後、DMEM培地を1ml加えて培地交換する。その後、37℃、5%CO下で24時間インキュベートする。こうして上記種々のベシクルによる遺伝子導入実験を行う。▲3▼Luciferase assay(pEGFP−luc)>なお、この方法は本件の全ての遺伝子導入量の評価に用いた。▲1▼各wellをPBSで二回洗浄後Lysis buffer500μl加え、上記の遺伝子導入された細胞を溶解する。▲2▼この細胞溶解液をセルスクレーパーで1.5mlチューブに回収し、氷上におく。▲3▼LuminescenserJNRを立ち上げ、基質投入管を蒸留水で洗浄後、基質(ルシフェリン)でリンスする。▲4▼その氷上のサンプルを遠心処理(13000rpm,4℃,1min)して、不溶物を除去して、上澄みを96wellプレートに20μlずつ加え波長562nmでLuminescenserにより発光量を測定する。こうして、遺伝子導入量を評価した。
【実施例4】
【0017】
【実施例4】
上記のようにして行ったOST細胞への遺伝子導入実験の結果を図4に、またERM5−1への遺伝子導入の結果を図5に示す。図4では、二重ベシクルのVPVの遺伝子導入はVPの約4倍、PVの約40倍になり、二重ベシクルVPVの遺伝子ベクターとしての優位性が示された。一方、図5に示すように、ERM5−1細胞では、二重ベシクルVPVの遺伝子導入はVPの約2.7倍、PVの1.5倍となり、やはりVPVの優位性が示された。さらには、外側のベシクルに抗体を取り付けたIVPVではVPVの約2.8倍となり、抗体固定化の効果が明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5