【実施例1】
【0017】
[全体構成について]
図1は、第1の実施形態による冷凍サイクルの一例としての空気調和装置1の全体構成を示す概略図である。本実施例の空気調和装置1の冷媒回路は、圧縮機10と、凝縮器20と、膨張手段40と、蒸発器50とが冷媒配管により順次接続されている。また、圧縮機10と蒸発器50とを接続する吸入側配管82と、圧縮機10とがそれぞれ後述する配管を介してレシーバ70に接続されている。
【0018】
図1において、圧縮機10で圧縮された高温高圧のガス冷媒は吐出側配管81を介して凝縮器20に流入し、凝縮器20内で外気と熱交換することによって凝縮し、高圧の液冷媒となって冷媒配管83へと流出する。凝縮器20から流出した高圧の液冷媒が膨張手段40を通過すると、減圧され膨張し、低温低圧の液冷媒となって冷媒配管84へと流出する。膨張手段40から流出した低温低圧の液冷媒が蒸発器50に流入すると、冷媒が外気と熱交換することによって蒸発し低圧のガス冷媒となる。その後、吸入側配管82を介して圧縮機10へと吸入される。本実施例の冷凍サイクル主回路は上記したように構成されている。
【0019】
なお、この冷凍サイクルは、冷媒の流通方向が一定の非可逆サイクルであるが、冷媒の流通方向を変更可能な可逆サイクルであってもよい。
【0020】
次に、圧縮機10とレシーバ70と吐出側配管81および吸入側配管82との関係を
図2を用いて説明する。
【0021】
[圧縮機]
図2は、第1の実施形態による圧縮機10とレシーバ70と吐出側配管81および吸入側配管82の関係を示す断面図である。圧縮機10は、制御手段60により回転数が制御されるモータ(例えば、三相ブラシレスモータ)によって駆動される能力可変型圧縮機である。本実施例では、内部高圧型のロータリ圧縮機を例として説明する。ただし、本発明は内部高圧型であればこれに限定されず、例えば、スクロール圧縮機等の他の形式の圧縮機であってもよい。圧縮機10は、図示しない室外機筐体内に縦置きされる円筒状の密閉容器11(シェル)を備える。密閉容器11は、円筒状の胴部11aと、胴部11aの上端側に一体的に被せられる上蓋11bと、胴部11aの底部を塞ぐ底蓋11cとから構成され、通常、胴部11aは鋼板を円筒形状に加工したもので、上蓋11bと底蓋11cは鋳物製である。密閉容器11内には、冷媒の圧縮機構部12と、圧縮機構部12を駆動する電動機13とが収納されているが、ロータリ圧縮機の場合、圧縮機構部12が下部に配置され、電動機13は圧縮機構部12の上部に配置される。
【0022】
圧縮機構部12は、図示しないシリンダ筐体と、電動機13によりシリンダ筐体内で偏心して回転するロータリピストンとを含み、シリンダ筐体に形成されている冷媒吸入ポートに吸入側配管82が接続されている。
【0023】
また、シリンダ筐体にはロータリピストンによって圧縮された冷媒を密閉容器11内に向けて吐出する冷媒吐出ポート14が形成されており、その冷媒吐出ポート14から吐出された冷媒は、密閉容器11の上蓋に連結されている吐出側配管81により冷凍サイクルに供給されている。
【0024】
通常、電動機13には、ステータコア13a(固定子)の内側にロータ13b(回転子)を配置してなるインナーロータ型電動機が用いられる。ステータコア13aは、胴部11aの内周面に例えば焼き嵌め等により固定される。ロータ13bは、ロータリピストンに連結される出力軸13cを有し、出力軸13cを介して図示しない軸受け部材によりステータコア13a内に回転可能に保持される。
【0025】
密閉容器11内には、上記軸受け部材等の圧縮機10内の摺動部を潤滑するための冷凍機油15が所定量封入される。冷凍機油15は底蓋11c側に貯留されるが、出力軸13cには、図示しない例えば容積型ポンプに連通する油吸い上げ穴が全長にわたって形成されており、下端部には給油口13dが設けられている。冷凍機油15は上述した容積型ポンプにより、ロータ13bの回転に伴って電動機13の上部側にまで吸い上げられ、上記摺動部を潤滑した後、例えばステータコア13aと胴部11aとの間に形成されている図示しない隙間を通って底蓋11c側に戻される。
【0026】
吸入側配管82の低圧冷媒は、シリンダ筐体に設けられた冷媒吸入ポート14を通って直接圧縮機構部12に吸入される。圧縮機構部12で圧縮され高圧冷媒となった後冷媒吐出ポートから密閉容器11内へと吐出される。その後、密閉容器11の上蓋11bを貫通し密閉容器11内に開口している吐出側配管81を通り冷凍サイクルに供給されている。したがって、密閉容器11内は高圧の冷媒が充満している。
【0027】
また、密閉容器11を構成する胴部11aにおける少なくとも圧縮機10の運転停止時に冷凍機油が浸からない位置に第1圧縮機開口部16が設けられ、底蓋11cに第2圧縮機開口部17が設けられており、第1圧縮機開口部16には後述する圧力バランス管92が接続され、第2圧縮機開口部17には後述する油移動管93が接続されている。
【0028】
[レシーバ]
図2において、レシーバ70は、底面が少なくとも圧縮機10の運転停止中の圧縮機10内の冷凍機油15の油面より上方に配置された密閉容器である。なお、圧縮機10内の冷凍機油15の油面は、圧縮機の運転時や停止時などで変位するが、冷凍機油15がいかなる状態においてもレシーバ70の底面は油面より上方に配置する。レシーバ70は、上面に第1上面開口部71と第2上面開口部72を有し、底面近傍に底面開口部73を有している。第1上面開口部71は加圧管91を介して吐出側配管81に接続され、第2上面開口部72は圧力バランス管92を介して第1圧縮機開口部16接続されている。底面開口部73は油移動管93を介して第2圧縮機開口部17を通過し圧縮機10内の給油口13d近傍に接続されている。上記した減圧管91、圧力バランス管92および油移動管93にはそれぞれ制御手段60により開閉制御される第1開閉弁101、第2開閉弁102、第3開閉弁103が設けられている。
【0029】
[オイル濃度検知手段]
次にオイル濃度検知手段120について説明する。冷凍機油15の濃度は、圧縮機10内の冷凍機油15が存在する部分の圧力と、その温度とにより一義的に決まる。したがって、本実施例のオイル濃度検知手段120は、圧縮機10の機外で冷凍機油15貯留部に対応する位置に配置され、密閉容器11の胴部11aを介して冷凍機油15の温度を検出する温度センサ121と、吐出側配管81に設けられ、圧縮機10から吐出された冷媒の凝縮圧力を検出する圧力センサ122と、制御手段60に含まれ、温度センサ121と圧力センサ122との検出値から圧縮機10内のオイル濃度を推定するオイル濃度推定部123とから構成されている。ここで求めた値に基づいて、第1開閉弁101、第2開閉弁102、第3開閉弁103の制御を行う。
【0030】
温度センサ121は、圧縮機10の機外で好ましくは冷凍機油15貯留部に対向する位置の胴部11aに外付けされる。胴部11aは熱伝導率のよい鋼板製であるため、間接的であるにしても密閉容器11内の冷凍機油15の温度をほぼ正確に検出できる。
【0031】
圧力センサ122は、吸入側配管82に接続され、圧縮機10から吐出された冷媒の凝縮圧力を検出する。
【0032】
温度センサ121と圧力センサ122で検出された各検出信号は、図示しないA/D変換器を介して制御手段60のオイル濃度推定部123に与えられる。
【0033】
低外気温下での暖房運転起動時には、冷凍機油15は底蓋11c側の貯留部に滞留しており(いわゆる寝込んでおり)、温度センサ121にて検出される温度は冷凍機油15の温度とみなしてよい。
【0034】
温度センサ121と圧力センサ122により冷凍機油温度と吸入圧力がわかると、圧力飽和温度が算出でき、それと実温度(冷凍機油温度)との差は冷凍機油15に対する液相冷媒の溶解度を表す。したがって、冷凍機油温度と吸入圧力から冷凍機油15の濃度を推定できる。オイル濃度推定部123は、冷凍機油15の温度をTcomp、圧力センサ122から出力される冷媒の蒸発飽和圧力をPcとして、蒸発飽和圧力Pcを蒸発飽和温度Tcに換算した上で、冷凍機油温度Tcompと蒸発飽和温度Tcとの温度差ΔT(=Tcomp−Tc)を求める。冷凍機油15の濃度はこの温度差ΔTとして推定される。(以下、オイル濃度推定値ΔTという。)
【0035】
[制御手段]
図1において、制御手段60は、主に圧縮機10の回転数を制御し、さらに、後述するオイル濃度推定部123を含み、第1開閉弁101、第2開閉弁102、第3開閉弁103の開閉制御を行う。
【0036】
また、凝縮器20の近傍には制御手段60により回転数が制御されるモータ(によって駆動される室内ファン30が設けられている。室内ファン30は、気流を発生させることによって、凝縮器20に流れる冷媒と外気との熱交換を促進させている。
【0037】
ところで、圧縮機10の運転停止時は、冷凍機油15は、密閉容器11内で冷媒が溶け込み希釈される。特に、圧縮機10が低外気温下(例えば−20℃程度)で長時間停止した状態では、空気調和装置1の冷凍サイクル内の冷媒が冷凍機油15を多く溜め込んでいる圧縮機10に集中し、その後圧縮機10内で冷媒が液化して圧縮機10内の冷凍機油15に溶け込んだ寝込み状態となる。この状態で圧縮機10を起動すると、冷媒が寝込んだ濃度かつ粘度の低い冷凍機油15が圧縮機10内の摺動部に供給されるため、潤滑不良となり焼き付けを起こすという問題が生じる。また、寝込み状態により生じるオイルフォーミングが起こり、冷凍機油15が圧縮機10外に持出されるため、圧縮機10内の冷凍機油15の油面が低下し、冷凍機油15が正常に圧縮機10内の摺動部に供給されなくなる問題が生じる。
【0038】
このことから、圧縮機10の起動時における圧縮機10内の冷凍機油15の濃度が高い状態であることが重要である。以下に、本発明の圧縮機10の起動時に高濃度のオイルを供給する動作について
図2を用いて説明する。
【0039】
[オイル回収動作]
まず、圧縮機10内の冷凍機油15をレシーバ70に回収する際の制御手段60による第1開閉弁101、第2開閉弁102、第3開閉弁103の開閉制御について、
図2を用いて説明する。
【0040】
圧縮機10の運転中、オイル濃度検知手段120によりオイル濃度推定値ΔTを検出する。制御手段60は、オイル濃度推定値ΔTが予め設定されている設定値Adeg.以上である場合には、密閉容器11の底蓋11c側に滞留している冷凍機油15の濃度が十分高いと推定し、第1開閉弁101、第3開閉弁103を開にする。第1開閉弁101を開にすることでレシーバ70と吸入側配管82とは減圧管91を介して連通し、レシーバ70内が低圧となる。さらに、第3開閉弁103を開にすることで密閉容器11の底蓋11c側に滞留していた冷凍機油15がレシーバ70内の圧力と圧縮機10内の圧力との差圧により油移動管93を介してレシーバ70に流れ込む。その後、制御手段60は所定時間(予め差圧と油移動管93の管径とから冷凍機油15の移動速度の関係を把握し、第3開閉弁103の開ける時間を調整する。)が経過したら第1開閉弁101、第3開閉弁103を閉にする。以上の動作で、圧縮機10内の高濃度の冷凍機油15の一部をレシーバ70に回収することができる。
【0041】
冷凍機油の回収動作をした後、レシーバ70は冷凍機油15と共に高圧冷媒が入ったまま冷凍サイクルから遮断される。また、圧縮機10は停止すると冷凍サイクル内で差圧がなくなり冷凍サイクル全体で均圧となる。すると、遮断されたレシーバ70内はサイクル全体で均圧となった圧縮機10より高圧になる。したがって、レシーバ70から圧縮機10へ冷凍機油15を供給する際に開閉弁103を開けると、圧縮機10に高圧のレシーバ70が接続され、圧縮機10内の圧縮機構部12で冷媒吸入ポート側より冷媒吐出ポート14側が高圧になり、動作しなくなるという問題が生じる。これを防止するため、圧縮機10の運転停止後に第1開閉弁101を開にする。
【0042】
その後、均圧になったら第1開閉弁101を閉にし、圧縮機10の運転停止中は、レシーバ70は冷凍サイクルと接続されていない状態を保つ。これによって、圧縮機10の運転停止時にレシーバ70内に冷媒が流入しなくなるので、レシーバ70内の冷凍機油15に冷媒が寝込むのを防止し、圧縮機10の起動時まで冷凍機油15を高濃度に保つことができる。
【0043】
[オイル供給動作]
次に、レシーバ70に回収した冷凍機油15を圧縮機10に供給する際の制御手段60による第1開閉弁101、第2開閉弁102、第3開閉弁103の開閉制御について説明する。
【0044】
圧縮機10の起動時、オイル濃度検知手段120によりオイル濃度推定値ΔTを検出する。ΔTと予め設定され、この値を下回るとレシーバ70から圧縮機10へ冷凍機油15の供給を行う設定値Bとの関係がΔT<Bだった場合、制御手段60は、密閉容器11の底蓋11c側に滞留している冷凍機油15が冷媒により希釈され濃度が低下していると推定して、第2開閉弁102、103を開にする。第2開閉弁102を開にすることで、レシーバ70と圧縮機10とは圧力バランス管92を介して連通し、レシーバ70内の圧力と圧縮機10内の圧力とが均圧になる。さらに、第3開閉弁103を開にすることで、レシーバ70の底面近傍と圧縮機10の給油口13d近傍とが油移動管93を介して連通する。これにより、底面が少なくとも圧縮機10運転の運転停止時の圧縮機10内の冷凍機油の油面より上方に位置しているレシーバ70から圧縮機10へ冷凍機油15が油面のレベル差によって移動する。以上の動作で、レシーバ70内に回収した高濃度の冷凍機油15は圧縮機10内の給油口13d近傍に供給される。
【0045】
以上の動作により、圧縮機10の運転停止中は冷凍サイクルから遮断したレシーバ70内で高濃度の冷凍機油15を貯留しているので、サイクル配管内の冷媒が圧縮機10に集中してもレシーバ70内の冷凍機油15に寝込むことはなく、電源遮断時でも高濃度を保つことができる。また、圧縮機10の起動時に高濃度の冷凍機油15を圧縮機10内の給油口13d近傍に直接供給するようにしているので、圧縮機10への冷凍機油の供給が円滑に行われ、潤滑不良を防止する。また、オイルフォーミングにより冷凍機油15が圧縮機10外へ持ち出されてもレシーバ70から冷凍機油15を供給するので油面低下の心配がない。
【実施例2】
【0046】
次に第2の実施形態における空気調和装置1を
図3ないし4を用いて説明する。
図3は、第2の実施形態による冷凍サイクルの一例としての空気調和装置1の全体構成を示す概略図である。本実施例の空気調和装置1の冷媒回路は、圧縮機10と、凝縮器20と、膨張手段40と、蒸発器50とが冷媒配管により順次接続されているという構成については第1の実施形態と同じであるため、詳細な説明を省略する。本実施例が第1の実施形態と異なる点は、圧縮機10とレシーバ70と吐出側配管81と吸入側配管82との接続構成、および、それらを接続する配管に設けられた後述する開閉弁の開閉制御である。
【0047】
本実施例の圧縮機10は、第1圧縮機開口部16と第2圧縮機開口部17とに加え、胴部11aもしくは底蓋11cの圧縮機10の運転中や停止中に関わらず常時冷凍機油15が浸かっている位置に第3圧縮機開口部18を設けられており、第3圧縮機開口部18には油回収管95が接続されている。
【0048】
本実施例のレシーバ70は、底面が少なくとも圧縮機の運転停止時の圧縮機内の冷凍機油の油面のどの状態においても上方に位置するレシーバ上段76と、底面が圧縮機10の底面と同一の高さの面となるように併設されたレシーバ下段77とで構成されている。レシーバ上段76は上面に第1上面開口部71と第2上面開口部72とが設けられ、レシーバ上段76の底面近傍に第1側面開口部73が設けられている。第1上面開口部71は吸入側配管82と減圧管91を介して接続され、第2上面開口部72は、第1圧縮機開口部92と圧力バランス管92を介して接続されている。第1側面開口部73には第2圧縮機開口部を通り圧縮機10内の給油口13d近傍と油移動管93を介して接続されている。レシーバ下段77は側面の上方に第2側面開口部74が設けられ、側面の底面近傍に第3側面開口部75が設けられている。第2側面開口部は吐出側配管81と加圧管94を介して接続され、第3側面開口部75は第3圧縮機開口部18と油回収管95を介して接続されている。また、レシーバ上段76とレシーバ下段77とは差圧管78で接続されており、差圧管78はレシーバ下段77の底面近傍と、レシーバ上段76の上方に開口している。上述した減圧管91、圧力バランス管92、油移動管93、加圧管94および油回収管95には、それぞれ制御手段60により制御される第1開閉弁101、第2開閉弁102、第3開閉弁103、第4開閉弁104および第5開閉弁105が設けられている。
【0049】
次に、圧縮機10内の冷凍機油15をレシーバ70に回収する際の制御手段60による第1開閉弁101、第2開閉弁102、第3開閉弁103、第4開閉弁104および第5開閉弁105の開閉制御について、
図4を用いて説明する。
【0050】
[オイル回収動作]
圧縮機10の運転中、オイル濃度検知手段120によりオイル濃度推定値ΔTを検出する。制御手段60は、オイル濃度推定値ΔTが予め設定されている設定値Adeg.以上である場合には、密閉容器11の底蓋11c側に滞留している冷凍機油15の濃度が十分高いと推定し、第2開閉弁102、第5開閉弁105を開にする。第2開閉弁102を開通することでレシーバ上段76と圧縮機10とを接続する圧力バランス管92が連通し、レシーバ70内の圧力と圧縮機10内の圧力とが均圧となる。さらに、第5開閉弁105を開にすることで密閉容器11の底蓋11c側に滞留していた冷凍機油15が油面のレベル差により油回収管95を介してレシーバ下段77に流れ込む。その後、制御手段60は所定時間(レシーバ70内の冷凍機油15の油面と圧縮機10内の冷凍機油15の油面が同じレベルになるのに必要な時間)が経過したら第2開閉弁102、第5開閉弁105を閉にする。
【0051】
その後、レシーバ下段77に冷凍機油15が溜った状態で第1開閉弁101と第4開閉弁104を開にする。第1開閉弁101を開にすることで、吸入側配管82と接続する減圧管91が連通され、レシーバ上段76内が減圧され、第4開閉弁104を開にすることで、吐出側配管81と加圧管94が連通され、レシーバ上段77内が加圧される。このようにレシーバ上段76内の圧力とレシーバ下段77内の圧力とに差圧が生じるので、レシーバ下段77に溜った冷凍機油15は、レシーバ下段77の底面近傍に開口した差圧管78を介してレシーバ上段76に押し上げられる。以上の動作で、圧縮機10内の高濃度の冷凍機油15の一部をレシーバ70に回収することができる。
【0052】
冷凍機油の回収動作をした後、レシーバ70は冷凍機油15と共に高圧冷媒が入ったまま冷凍サイクルから遮断される。圧縮機10は停止すると冷凍サイクル内で差圧がなくなり冷凍サイクル全体で均圧となる。すると、遮断されたレシーバ70内はサイクル全体で均圧となった圧縮機10より高圧となる。したがって、レシーバ70から圧縮機10へ冷凍機油15を供給する際に開閉弁103を開けると、圧縮機10に高圧のレシーバ70が接続され、圧縮機10が逆圧により動作しなくなるという問題が生じる。これを防止するため、運転停止後に第1開閉弁101を開にする。
【0053】
その後、均圧になったら第1開閉弁101を閉にし、圧縮機10の運転停止中は、レシーバ70は冷凍サイクルと接続されていない状態を保つ。これによって、圧縮機10の運転停止時にレシーバ70内に冷媒が流入しなくなるので、レシーバ70内の冷凍機油15に冷媒が寝込むのを防止し、圧縮機10の起動時まで冷凍機油15を高濃度に保つことができる。
【0054】
[オイル供給動作]
次に、レシーバ70に回収した冷凍機油15を圧縮機10に供給する際の制御手段60による第1開閉弁101、第2開閉弁102、第3開閉弁103、第4開閉弁104および第5開閉弁105の開閉制御について説明する。
【0055】
圧縮機10の起動時、オイル濃度検知手段120によりオイル濃度推定値ΔTを検出する。ΔTと予め設定され、この値を下回るとレシーバ70から圧縮機10へ冷凍機油15の供給を行う設定値Bとの関係がΔT<Bだった場合、制御手段60は、密閉容器11の底蓋11c側に滞留している冷凍機油15が冷媒により希釈され濃度が低下していると推定して、第2開閉弁102、103を開にする。第2開閉弁102を開にすることで、レシーバ上段76と圧縮機10とは圧力バランス管92を介して連通し、レシーバ上段76内の圧力と圧縮機10内の圧力とが均圧になる。さらに、第3開閉弁103を開にすることで、レシーバ上段76の底面近傍と圧縮機10の給油口13d近傍とは油移動管93を介して連通する。これにより、底面が少なくとも圧縮機10の運転停止時の圧縮機10内の冷凍機油の油面より上方に位置しているレシーバ上段76から圧縮機10へ冷凍機油15がレベル差によって移動する。以上の動作で、レシーバ70内に回収した高濃度の冷凍機油15を圧縮機10内の給油口13d近傍に供給することができる。
【0056】
以上の動作により、圧縮機10の運転停止中は冷凍サイクルから遮断したレシーバ70内で高濃度の冷凍機油15を貯留しているので、サイクル配管内の冷媒が圧縮機10に集中してもレシーバ70内の冷凍機油15に寝込むことはなく、電源遮断時でも高濃度を保つことができる。また、圧縮機10の起動時に高濃度の冷凍機油15を圧縮機10内の給油口13d近傍に直接供給するようにしているので、圧縮機10への冷凍機油の供給が円滑に行われ、潤滑不良を防止する。また、オイルフォーミングにより冷凍機油15が圧縮機10外へ持ち出されてもレシーバ70から冷凍機油15を供給するので油面低下の心配がない。