特許第6094084号(P6094084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094084
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20170306BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20170306BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20170306BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20170306BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170306BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20170306BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K5/3415
   C08K5/101
   C08K5/098
   B60C1/00 Z
   B60C17/00 B
   B60C1/00 C
   B60C1/00 B
   B60C15/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-169679(P2012-169679)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28887(P2014-28887A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年7月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 誠人
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−182355(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/084285(WO,A1)
【文献】 特開2001−342293(JP,A)
【文献】 特開2012−017388(JP,A)
【文献】 特開2010−059252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00−21/02
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00
B60C 15/06
B60C 17/00−17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを含むジエン系ゴム100重量部に対し、ビスマレイミド又はアクリレートを0.5〜5重量部、亜鉛量15重量%以上の芳香族カルボン酸亜鉛塩を含むカルボン酸亜鉛塩を1〜5重量部配合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100重量%中、前記天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを50重量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ビスマレイミド又はアクリレートの配合量(A)と、前記芳香族カルボン酸亜鉛塩を含むカルボン酸亜鉛塩の配合量(B)との重量比(A/B)が、A/B=0.3〜1.2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のタイヤ用ゴム組成物でランフラットライナー、ベルト層、ビードフィラー、サイドゴムから選ばれる少なくとも1つの部材を形成した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを含みながら高温加硫時のリバージョンを抑制すると共に加工性を改良するようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に空気入りタイヤの構造部材には、天然ゴムやイソプレンゴムを含むゴム組成物が使用されている。天然ゴム及びイソプレンゴムは高温で加硫すると、チオフェン、メルカプタン等の架橋に関与しない結合へ変化するリバージョン(加硫戻り)が起きる。このため天然ゴム及びイソプレンゴムを含むゴム組成物のモジュラス、強度、硬度などの機械的特性が低下する問題があった。
【0003】
この対策として特許文献1は、加硫戻り防止剤としてビスマレイミド系化合物を添加することを提案している。しかし、ビスマレイミド系化合物を添加すると、ゴム組成物の粘度が増大し加工性が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−42076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを含みながら高温加硫時のリバージョンを抑制すると共に加工性を改良するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを含むジエン系ゴム100重量部に対し、ビスマレイミド又はアクリレートを0.5〜5重量部、亜鉛量15重量%以上の芳香族カルボン酸亜鉛塩を含むカルボン酸亜鉛塩を1〜5重量部配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを含むジエン系ゴム100重量部に対し、ビスマレイミド又はアクリレートを0.5〜5重量部配合し高温加硫時のリバージョンを抑制すると共に、亜鉛量15重量%以上の芳香族カルボン酸亜鉛塩を含むカルボン酸亜鉛塩を1〜5重量部配合したのでゴム組成物の粘度を小さくし加工性を改良することができる。
【0008】
天然ゴム及び/又はイソプレンゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中50重量%以上であることが好ましく、タイヤ用ゴム組成物のモジュラス、強度、硬度などの機械的特性をより高くすることができる。
【0009】
このタイヤ用ゴム組成物をランフラットライナー、ベルト層、ビードフィラー、サイドゴムから選ばれる少なくとも1つの部材に使用した空気入りタイヤは、優れた生産性を有すると共に、タイヤ耐久性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを含むジエン系ゴムをゴム成分にする。好ましくは天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを主成分にするとよく、ゴム組成物のモジュラス、強度、硬度などの機械的特性を高くすることができる。
【0011】
天然ゴム及び/又はイソプレンゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中、好ましくは50重量%以上、より好ましくは90〜100重量%にするとよい。天然ゴム及びイソプレンゴムの含有量が50重量%未満であると、ゴム組成物のモジュラス、強度、硬度などの機械的特性を十分に高くすることができないことがある。
【0012】
天然ゴム及びイソプレンゴム以外のジエン系ゴムとしては、例えばブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム等を例示することができる。なかでもブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムが好ましい。これら天然ゴム及びイソプレンゴム以外のジエン系ゴムは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ビスマレイミド又はアクリレートを配合することにより、天然ゴム及びイソプレンゴムを高温加硫したときのリバージョンを抑制する。高温加硫時のリバージョン抑制効果は、ゴム組成物を低温(例えば150℃以下)で加硫したときのモジュラスに対する、ゴム組成物を高温(例えば170℃以上)で加硫したときのモジュラスの低下率を小さくすることで確認することができる。
【0014】
本発明において、ビスマレイミドとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるものを用いることができる。好適なビスマレイミドとしては、例えばN,N′−1,2−フェニレンビスマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンビスマレイミド、N,N′−(4,4′−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル]メタン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン等を例示することができる。なかでも1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンが好ましい。
【0015】
本発明において、アクリレートとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるものを用いることができる。好適なアクリレートとしては、1分子中のアクロイル基の数が好ましくは2以上、より好ましくは3以上であるとよい。アクリレート1分子中のアクロイル基の数が2未満であると、高温加硫時のリバージョンを抑制する効果が十分に得られない虞がある。アクリレートとしては、例えば1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビス(4−アクリロキシ)ポリエトキシフェニルプロパンオリゴエステルジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、オリゴエステルポリアクリレート等を例示することができる。なかでもトリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい。
【0016】
ビスマレイミド又はアクリレートの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、0.5〜5重量部、好ましくは1.0〜4.0重量部にする。ビスマレイミド及びアクリレートの配合量が0.5重量部未満であると、リバージョンを抑制する効果が十分に得られない。また高温加硫時のモジュラスが劣る。アクリレートの配合量が5重量部を超えると、ゴム組成物の粘度が増大し加工性が悪化する。
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、芳香族カルボン酸亜鉛塩を配合することにより、ゴム組成物の粘度を小さくし加工性を改良する。またゴム組成物を高温加硫した加硫物の発熱性(60℃のtanδ)を小さくすることができる。さらに芳香族カルボン酸亜鉛を配合することによりモジュラス、強度、硬度などのゴム組成物の機械的特性を改良することができる。芳香族カルボン酸亜鉛塩の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、1〜5重量部、好ましくは1.5〜4.0重量部にする。芳香族カルボン酸亜鉛塩の配合量が1重量部未満であると、ゴム組成物の粘度を小さくする効果が得られない。また芳香族カルボン酸亜鉛塩の配合量が5重量部を超えると、高温加硫した加硫物の発熱性(60℃のtanδ)が却って悪化する。
【0018】
本発明において、芳香族カルボン酸亜鉛塩としては、ベンゼン環にCOOHを有し他の任意の置換基を有してもよい芳香族カルボン酸の亜鉛塩であり、亜鉛量が15重量%以上であるものとする。芳香族カルボン酸亜鉛塩の亜鉛量を15重量%以上にすることにより、加工性を改良することができる。また発熱性を小さくすることができる。
【0019】
亜鉛量が15重量%以上の芳香族カルボン酸亜鉛塩としては、例えばストラクトール社製Activator 73Aが挙げられる。
【0020】
芳香族カルボン酸亜鉛以外のカルボン酸亜鉛塩としては、脂肪族カルボン酸亜鉛を挙げることができる。脂肪族カルボン酸亜鉛を芳香族カルボン酸亜鉛塩と併せて配合することにより加工性の改良と共に、高温加硫した加硫物の発熱性を小さくすることができる。
【0021】
脂肪族カルボン酸亜鉛としては、炭素数が10〜40のカルボン酸の亜鉛塩(脂肪酸亜鉛)が好ましく、例えばストラクトール社製Struktol A50P、ラインケミー社製Aktiplast PP、川口化学工業社製エクストンL−2−G等が挙げられる。
【0022】
本発明において、ビスマレイミド又はアクリレートの配合量(A)と、芳香族カルボン酸亜鉛塩を含むカルボン酸亜鉛塩の配合量(B)との重量比(A/B)は、好ましくはA/B=0.1〜2.0、より好ましくはA/B=0.3〜1.2であるとよい。重量比(A/B)をこのような範囲内にすることにより、加工性を改良すると共に、発熱性を小さくすることができる。
【0023】
本発明では、補強性充填剤を配合することができる。補強性充填剤としては、例えばカーボンブラック、シリカ、クレイ、タルク、アルミナ、二酸化チタン、シリケート等を例示することができる。なかでもカーボンブラック、シリカ、クレイが好ましい。これらの補強性充填剤を配合することにより、ゴム組成物の補強性を高くすることができる。
【0024】
カーボンブラック及びシリカは、通常タイヤ用ゴム組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、カーボン微ラックのJIS K6217−4に基づき測定するDBP吸収量が好ましくは80〜110cm3/100g、JIS K6217−3に基づき測定するCTAB比表面積が好ましくは30〜100m2/g、JIS K6217−2に基づき測定する窒素吸収比表面積が30〜110m2/gであるとよい。シリカは、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカ、表面処理シリカを例示することができ、なかでもJIS K6217−3に基づき測定するCTAB吸着比表面積が好ましくは80〜250m2/g、JIS K6217−2に基づき測定する窒素比吸収比表面積が好ましくは100〜280m2/gの範囲であるとよい。
【0025】
タイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0026】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのキャップトレッド部、アンダートレッド部、サイドゴム(サイドウォール部)、ビード部、ビードフィラー、リムクッション、カーカス層、ベルト層、ベルトカバー層などのコード用被覆ゴム、タイゴム、ガーニッシュ、ランフラットタイヤにおける断面三日月型のサイド補強ゴム層(本明細書において「ランフラットライナー」ということがある。)などのタイヤケーシング材料として好適に使用することができる。特にビードフィラー、リムクッション、ランフラットライナー、ベルト層コード用被覆ゴム、サイドゴムにより好適に使用することができる。これらのタイヤケーシング材料に本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用すると、天然ゴム及びイソプレンゴムの特性を最大にし、タイヤ耐久性を改良することができる。本発明のゴム組成物をこれらの部材に使用した空気入りタイヤは、生産性に優れ、高い品質の製品を安定的に生産することができる。同時に、耐疲労性、耐摩耗性及びタイヤ耐久性が優れる。
【0027】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
共通配合として表1に示す添加剤を含む表2〜4の配合からなる18種類のゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜18)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.5リットル密閉式バンバリーミキサーで5分間混練しマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.5リットル密閉式バンバリーミキサーで、硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、タイヤ用ゴム組成物を調製した。なお、表1に示す共通配合は、表2〜4に記載されたジエン系ゴム100重量部に対する配合量(重量部)を意味する。
【0029】
得られた18種類のゴム組成物の加工性(ムーニー粘度)、リバージョン抑制効果(高温加硫時のモジュラス、モジュラス保持率)及び発熱性(60℃のtanδ)を以下の方法で評価した。
【0030】
加工性(ムーニー粘度)
得られたゴム組成物をJIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、実施例4,5及び比較例12,13を除き、比較例1の値を100とする指数で表わし表2,3の「加工性」の欄に示した。実施例4及び比較例12については、比較例12の値を100にする指数にして表4の「加工性」の欄に示した。実施例5及び比較例13については、比較例13の値を100にする指数にして表4の「加工性」の欄に示した。この指数が小さいほどムーニー粘度が小さく加工性が優れることを意味する。
【0031】
リバージョン抑制効果(高温加硫時のモジュラス、モジュラス保持率)
得られた18種類のゴム組成物を所定形状の金型を使用して、170℃で10分間プレス加硫した高温加硫ゴム試験片と、148℃で20分間プレス加硫した低温加硫ゴム試験片を作成しダンベル状3号形(厚さ2mm)の形状に打ち抜いた。この高温加硫ゴム試験片及び低温加硫ゴム試験片のモジュラスとして、JIS K6251に準拠し、東洋精機製作所社製恒温槽付き全自動引張り試験機ストログラフAR−Tを使用し引張り速度500mm/分、温度23℃で高温加硫時の100%モジュラス及び低温加硫時の100%モジュラスをそれぞれ測定した。得られた高温加硫時の100%モジュラスは、実施例4,5及び比較例12,13を除き、比較例1の値を100にする指数にして表2,3の「モジュラス」の欄に示した。実施例4及び比較例12については、比較例12の値を100にする指数にして表4の「モジュラス」の欄に示した。実施例5及び比較例13については、比較例13の値を100にする指数にして表4の「モジュラス」の欄に示した。この指数が大きいほど高温加硫時の100%モジュラスが高いことを意味する。
【0032】
また、得られた18種類のゴム組成物について、低温加硫時の100%モジュラスに対する高温加硫時の100%モジュラスの比をそれぞれ算出し、高温加硫時のモジュラス保持率を求めた。得られた高温加硫時のモジュラス保持率は、比較例1の値を100にする指数にして表2,3の「モジュラス保持率」の欄に示した。この指数が大きいほど高温加硫時のモジュラス保持率が高く、リバージョンが抑制されたことを意味する。なお比較例1のゴム組成物の高温加硫時の100%モジュラスは1.9MPa、低温加硫時の100%モジュラスは2.4MPaであった。
【0033】
発熱性(60℃のtanδ)
得られた18種類のゴム組成物を所定形状の金型を使用して、170℃で10分間プレス加硫し試験片を作成した。得られた試験片の動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで温度60℃におけるtanδを測定した。得られた結果は、実施例4,5及び比較例12,13を除き、比較例1の値を100とする指数で表わし表2,3の「発熱性」の欄に示した。実施例4及び比較例12については、比較例12の値を100にする指数にして表4の「発熱性」の欄に示した。実施例5及び比較例13については、比較例13の値を100にする指数にして表4の「発熱性」の欄に示した。この指数が小さいほどtanδ(60℃)が小さく発熱性が小さく優れることを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
表1において使用した原材料を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸NY
・アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーNS−P
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
表2〜4において使用した原材料を下記に示す。
・NR:天然ゴム、RSS#3
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
・CB:カーボンブラック、N550、東海カーボン社製シーストF
・ビスマレイミド:1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、フレキシス社製perkalink900
・アクリレート:トリメチロールプロパントリアクリレート、1分子中のアクロイル基の数n=4、サートマー社製SR354
・脂肪酸亜鉛:ストラクトール社製Struktol A50P
・芳香族カルボン酸亜鉛−1:亜鉛量20重量%、ストラクトール社製Activator 73A
・芳香族カルボン酸亜鉛−2:亜鉛量12重量%、ストラクトール社製Activator 73LM
【0040】
表3,4の結果から明らかなように、実施例1〜5のタイヤ用ゴム組成物は、高温加硫時の100%モジュラス及びモジュラス保持率を従来レベル以上に改良すると共に、ムーニー粘度が低く加工性が向上することが認められた。また発熱性が低くタイヤにしたときの転がり抵抗が小さく燃費性能が向上することが認められた。
【0041】
表2の比較例2は、比較例1に対しビスマレイミドを配合したことにより高温加硫時の100%モジュラス及びモジュラス保持率が高くなるがムーニー粘度が高くなり加工性が悪化する。比較例3は、ビスマレイミド、アクリレート及び芳香族カルボン酸亜鉛を配合していないので、モジュラス保持率を十分に高くすることができない。比較例4はビスマレイミド及びアクリレートを配合していないので、発熱性が悪化する。
【0042】
比較例5は、芳香族カルボン酸亜鉛を配合せずに脂肪族カルボン酸亜鉛を配合したので、発熱性を小さくする効果が得られない。
【0043】
比較例6は、芳香族カルボン酸亜鉛の亜鉛量が15重量%未満であり、かつビスマレイミド及びアクリレートを配合していないので、加工性を改良する効果が得られない。比較例7は、芳香族カルボン酸亜鉛の亜鉛量が15重量%未満であるので、加工性を改善する効果が得られない。
【0044】
表3の比較例8は、ビスマレイミドの配合量が0.5重量部未満であるので、高温加硫時の100%モジュラス及びモジュラス保持率を高くする効果が十分に得られない。また加工性及び発熱性を改良する効果が得られない。比較例9は、ビスマレイミドの配合量が5重量部を超えるので、加工性及び発熱性が悪化する。
【0045】
比較例10は、芳香族カルボン酸亜鉛を含むカルボン酸亜鉛の配合量が1重量部未満であるので、加工性が悪化する。比較例11は、芳香族カルボン酸亜鉛を含むカルボン酸亜鉛の配合量が5重量部を超えるので、発熱性が悪化する。
【0046】
表4において、比較例12は、芳香族カルボン酸亜鉛を含むカルボン酸亜鉛の配合量が5重量部を超えると共に、ビスマレイミド及びアクリレートを配合していないので、モジュラス保持率が悪化する。また加工性及び発熱性を改良する効果が得られない。比較例12は、芳香族カルボン酸亜鉛を含むカルボン酸亜鉛の配合量が5重量部を超えるので、モジュラス保持率が悪化する。また加工性及び発熱性を改良する効果が得られない。