(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切断目印が、前記第二の折り工程によって折られた折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法と異ならせることによって設けられる厚み方向から視て異なる位置に形成された折り目である請求項8記載の冊子の製造方法。
前記切断目印が、前記第二の折り工程によって折られた折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法よりも所定寸法長くすることにより、任意の一の折り目を面方向に突出させることによって設けられる請求項8又は9記載の冊子の製造方法。
前記原紙の印刷方向が、短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された紙片からなる冊子単位で各頁の向きが等しくなる所定の方向パターンの繰り返しによってなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の冊子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、書籍や手帳など、各頁の模様が異なる冊子が種々提案されている。ここで、「模様」とは、デザインや色彩の他、文字の内容といったものも含むものとする。これらの冊子は、接着剤による無線綴じ、平綴じ・中綴じ(例えば、特許文献1参照)など、その綴じ方に関しても、種々の方法が用いられている。
【0003】
しかしながら、これら各頁のデザインが異なる従来の冊子では一冊子単位で例えば16頁単位の版を基にオフセット印刷がなされるため、1冊の冊子あたりのページ数は16頁単位で制限される。そしてこれらの冊子に落丁や乱丁が生じる確率は、この版の数に応じて高くなる。また斯かる従来の冊子では、印刷する部数に拘わらず同じ数の版が必要となる。そのため小ロットの印刷には割高となり一般に向いていないとされている。
【0004】
そこで、乱丁や落丁を回避する目的で、冊子を構成し得る頁数を印刷した長尺状の原紙を適宜折り畳み、しかる後に中綴じ・平綴じを行う冊子の製造方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしこれら従来の冊子についても、上記の綴じ方うち、平綴じや中綴じで綴じられているため、上記従来の冊子同様、中各頁を大きく開き難い、すなわち見開き性が悪いものとなっている。
【0005】
他方、見開き性が優れた冊子としては、各頁の模様を等しくした、ノートとして用いられる冊子が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
しかしながらこのようなノートとして用いられる冊子は一種類の版で足りるため、版の管理の負担は少ないが、各頁毎に印刷内容が異なる冊子を当該ノートとして用いられる冊子と同じ構造を適用した場合、版の数は必要な頁の数の用意が必要で上記従来の冊子よりも多くなる為、版の管理や作成の負担も大きくなる。
【0007】
また、一定頁数毎に、例えば上述の16頁単位で冊子単位を作成して、各冊子単位を重層させて、見開き性に優れた冊子を作成することも可能であるが、冊子単位を重層させる順番を間違えたり、欠落させたりするようなことが生ずれば、落丁、乱丁に至らせることもあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上に挙げた不具合のうち、乱丁、落丁を無くしながら且つ小ロットの製造への対応、さらには見開き性に優れた冊子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち本発明に係る冊子の製造方法は、印刷された長尺状の原紙を長手方向に沿って折る第一の折り工程と、長手方向に二つ折りされた前記原紙を短寸方向に沿って所定間隔で複数回交互に折る第二の折り工程と、前記第一の折り工程で前記原紙の長手方向に沿って折って形成した側縁部を綴じる綴じ工程と、綴じられた前記原紙の前記側縁部以外の縁部を前記各頁を綴じ位置以外の位置で分離するために裁断する裁断工程とを具備することを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、冊子を構成し得る原紙を、そして冊子を構成する一連の原紙はつながったまま、そのままの状態で綴じ工程に移ることができるので落丁、乱丁の可能性を有効に排除することができ、さらには小ロットの製造へも好適に対応し得るものとなる。
【0014】
そして綴じ位置において原紙により多くの接着剤を含ませて見開き性にも優れたものとしつつ完成した冊子の綴じ位置の強度を有効に向上させるためには、第一の折り工程が前記原紙を平行に折るようにして、綴じ工程を、前記原紙の長手方向に折られた側縁部に接着剤を塗工して綴じるものとしておくことが好ましい。このようなものであれば長手方向に沿って折られた側縁部はつながったままで接着剤を塗工されるため、接着剤を塗布する折り目が揃い易く、綴じ品質が高く安定したものとなる。
【0015】
ここで「接着剤」とは、水やその他の液体である溶媒中に溶けるか或いは分散し、塗布時には接着剤成分と溶媒とが紙に染み込み、塗布後には溶媒のみが蒸発又は揮発する態様をなすものが含まれる。よって、合成された有機化合物のような狭義の接着剤に限定されず、従来からある糊もその概念に含まれるものである。
【0016】
また、第一の折り工程における原紙の折り方は、実際に原紙を折る工程に先んじ前処理の有無を問わず、勿論原紙に何ら前処理を施さずに折る工程であっても良い。しかしながら原紙を予め折り易くしておくためには、前記第一の折り工程において前記原紙の長手方向に折られる前に前記側縁部を形成する箇所に折り線を形成している態様を挙げることができる。
【0017】
そして、さらに多くの接着剤を原紙に含ませ、綴じ位置の更なる強度の向上を得るとともに原紙を予め折りやすくしておく他の工程としては、第一の折り工程において、前記原紙の長手方向に折られる側縁部を形成する箇所にミシン目を形成しておくことが好ましい。
【0018】
加えて、原紙から効率良く冊子を量産していくための望ましい態様として、前記原紙の短寸方向に沿って折られた所定箇所で前記原紙を切り出す切り出し工程を設けた態様を挙げることができる。
【0019】
特に、より簡便に切り出し工程を行いつつ、完成した冊子の見栄えも担保し得るようにするためには、切り出し工程において前記原紙を切断する箇所に切断目印を設けるとともに、裁断工程において前記切断目印を切除するようにすればよい。
【0020】
切断目印は、作業者によって視認され得るものや、機械によって検知し得るものであればどのような態様のものでも良いが、作業者による視認や光学センサによる検知にふさわしい態様として、前記切断目印を、前記原紙に描画することにより設ける態様を挙げることできる。ここで「描画」とは、原紙に模様や印を印刷する態様のみならず、手書きやインクを浸すことにより原紙に視覚的な目印を形成する態様を広く含む概念である。
【0021】
他方、切断目印は、上記のような描画による形成の他、前記原紙に形成された形状により設けられるものであっても良い。この場合の形状とは、原紙の折り畳み位置や形状を工夫するという態様のみならず、たとえば原紙の所要の位置にエンボス加工をはじめとしたプレスや孔を穿つなど、原紙の形状を変更する種々の態様を挙げることができる。
【0022】
そして原紙の形状を変更する態様の切断目印のなかで、切り出し工程をより正確に行い得る態様として、前記切断目印を、前記第二の折り工程によって折られた折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法と異ならせることによって設けられる厚み方向から視て異なる位置に形成された折り目とすることが望ましい。
【0023】
特に外観上も視認し易い切断目印の具体的な態様として、前記第二の折り工程によって折られた折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法よりも所定寸法長くすることにより、任意の一の折り目を面方向に突出させることによって切断目印を設ける態様を挙げることができる。
【0024】
そして任意の一の折り目を面方向に突出させることによって切断目印を設ける場合、切り出し工程は、突出させた前記任意の位置の折り目を含む前記原紙を厚み方向に切断するようにすれば、効率の良い切り出し工程を実現し得る。
【0025】
原紙に印刷する方向は各頁によっても、綴じ方向や折り方向によっても異なるが、原紙の印刷方向は、短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された紙片からなる冊子単位で各頁の向きが等しくなる所定の方向パターンの繰り返しによってなるものとすればよい。
【0026】
つまり、本発明に係る冊子の製造方法に用いられる原紙は、印刷方向が、前記第二の折り工程により短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された紙片からなる冊子単位で各頁の向きが等しくなる所定の方向パターンの繰り返しによってなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、乱丁、落丁を無くしながら且つ小ロットの製造への対応に優れた冊子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。
【0031】
本実施形態に係る冊子1の製造方法によって製造された冊子1は、例えばダイヤリーとして好適に使用され得るものである。
【0032】
この冊子1は、
図1に示すように、表裏を覆う表紙6と、表紙6に挟まれた表裏でそれぞれ頁5を構成する紙片4と、これら表紙6及び紙片4を背から覆うクロス7とを有している。そして
図2に示すように、表紙6を開いた場合に、見開きの2頁で一週間分の予定が書き込めるよう、各頁5の模様すなわちデザインは、それぞれ異ならせて印刷されている。
【0033】
ここで、本実施形態に係る冊子1の製造方法は、
図3及び
図4に示すように、両面が連続的に印刷された長尺状の原紙2を長手方向に沿って折る第一の折り工程S1と、長手方向に二つ折りされた前記原紙2を短寸方向に沿って所定間隔で複数回交互に折る第二の折り工程S2と、短寸方向に沿って折られた所定箇所で前記原紙2を切り出す切り出し工程S3と、切り出された前記原紙2の長手方向に沿って折られた側縁部をエマルション系又は溶剤系の接着剤を塗工する無線綴じを行う綴じ工程S5と、綴じられた前記原紙2の前記側縁部以外の縁部を前記各頁5を綴じ位置以外の位置で分離するために裁断する裁断工程S6とを具備することを特徴とする。
【0034】
以下、斯かる冊子1の製造方法について、
図3及び
図4を参照して具体的に説明する。
【0035】
第一の折り工程S1は、原紙2の長手方向である、紙目の方向に沿って原紙2を二つ折りする工程である。具体的には、二つ折りする箇所にミシン目m1を形成するミシン目形成手順S11と、ミシン目m1を形成した箇所を二つ折りにする折り畳み手順S12とを有している。
【0036】
第二の折り工程S2は、第一の折り工程S1に直交する方向、すなわち、原紙2の短寸方向に所定間隔にジグザグ状に折り畳む工程である。具体的には、原紙2の紙目方向に直交する方向に等間隔でミシン目m2を形成するミシン目形成手順S21と、ミシン目m2に沿って交互に折り畳む交互折り手順S22とを有している。
【0037】
切り出し工程S3は、所定箇所に設けられた切断目印9の位置で原紙2を短寸方向に切る工程である。ここで本実施形態では、原紙2に設けられた切断目印9の位置で原紙2を切断することにより、1つの冊子1に相当する長さの原紙2を誤り無く切り出すことができる。
【0038】
表紙付与工程S4は、切り出し工程S3により切り出された前記原紙2の外側に表紙6を付与する工程である。
【0039】
綴じ工程S5は、切り出された原紙2の長手方向に折られた側縁部を綴じる工程である。具体的には、綴じ工程S5は、原紙2及び前記表紙6を糊付けする糊付け手順S51と、原紙2及び表紙6の背部にクロス7を巻くクロス巻き手順S52とを有している。
【0040】
裁断工程S6は、
図4に示すように、綴じ工程S5により綴じられた両端、つまりクロス7の両端及びクロス7に対向する、いわゆる小口を裁断することにより、冊子1の成形を行う工程である。斯かる裁断工程S6において、原紙2に設けられた切断目印9が切除され、完成した冊子1には切断目印9が何ら残ることはない。
【0041】
そして、本実施形態に係る冊子1の製造方法により製造された冊子1は、
図5に示すように、切り出された原紙2がそれぞれ第一の折り工程S1により設けられ、紙目方向沿って形成したミシン目m1の位置でエマルションタイプの接着剤を染み込ませるようにしている。これにより、各紙片4の正確な位置決めによる綴じ品質の担保、そして各紙片4の確実な接着、加えて冊子1の良好な見開き性をそれぞれ高い品質で実現している。
【0042】
またこの原紙2は、
図6に示すように、長尺状の紙に対し、両面をインクジェット方式のプリンタによりデジタルデータを基に印刷されたものを使用している。本実施形態ではプリンタによって印刷された原紙2を
図3に示すようにロール状に巻いておき、製本の際にあらためて引き出し、切り出しを行っているが、勿論プリンタから出力された原紙2をそのまま製本するようにしても良い。
【0043】
しかして本実施形態では、
図7及び
図8に示すように、原紙2に対して各頁5の内容を印刷する印刷方向が、短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された紙片4からなる冊子単位3で各頁5の向きが等しくなる所定の方向パターンPの繰り返しによって行われている。換言すれば、本実施形態に係る冊子1を製造するための原紙2は、印刷方向が、前記第二の折り工程S2により短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された4枚の紙面からなる8頁の冊子単位3で各頁5の向きが等しくなる所定の方向パターンPの繰り返しによって、
図9に示すように任意の頁数に印刷されている。
【0044】
具体的に説明すると、
図7及び
図8では、第二の折り工程S2を谷折りで開始して短寸方向にジグザク折りされる場合の8頁分の冊子単位3の印刷方向を示すものである。
図7及び
図8には、所定の方向パターンPが印刷された最小単位である単一の冊子単位3を示している。
【0045】
そして
図9に示すように、この冊子単位3に印刷された方向パターンPの繰り返しにて各頁5の印刷の向きを設定していくことにより、8頁以上である所望の頁5の数を任意に設定することができる。
【0046】
すなわち冊子1の頁数に拘わらず、この冊子単位3における8頁分の向きすなわち方向パターンPの繰り返しによって一連の印刷作業により印刷することができる。これにより、正しい方向に印刷された冊子単位3の連なりによってなる任意の頁5の数を有する冊子1を得ることができる。このことは、版を順番通りに配列させるという従来の冊子の製造の考え方とは一線を画していることが明らかである。換言すれば、各製造工程において落丁、乱丁の起こる余地が完全に排除されていることを意味する。
【0047】
他方、第二の折り工程S2を山折りで開始して短寸方向にジグザグ折りされる場合の冊子単位3の場合、
図10に示すような方向パターンPに従って印刷すればよい。係る方向パターンPは
図7〜
図9に示したものと比べ、それぞれの頁5に付した印刷の向きが天地逆となっているものである。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る冊子1の製造方法は、第一の折り工程S1にて長手方向に沿って折られた側縁部はミシン目m1によってつながったままで接着剤8を塗工するため、接着剤8を塗布した箇所が互いにずれ難く規則正しく揃っており、綴じ品質が高く安定したものとなっている。そして冊子1を構成する一連の原紙2は印刷されたときからつながったまま、そのままの状態で綴じ工程S5に移ることができるので落丁、乱丁の可能性を完全に排除し得たものとなっている。加えて、エマルション系又は水溶性の接着剤を塗工する無線綴じによって冊子1が綴じられているので、見開き性にも優れた冊子1となっている。特に本実施形態では、これまでの冊子の製造にあった「版」というものを全く扱わないため、例えば1冊からの冊子の製造でも好適に対応することができる。斯かる効果は、小ロットの出版において特に有効に発揮される。
【0049】
そして本実施形態では綴じ工程S5において原紙2の長手方向が紙目の方向に沿って綴じるようにしているので、冊子1の綴じ位置に皺や変形が起きることを有効に回避し得る。
【0050】
そして綴じ位置において原紙2により多くの接着剤を含ませて完成した冊子1の綴じ位置の強度を有効に向上させるために本実施形態では、綴じ工程S5を、切り出された前記原紙2の長手方向に折られた側縁部を綴じるものとしている。
【0051】
そして、さらに多くの接着剤を原紙2に含ませ、綴じ位置の更なる強度の向上を得るために本実施形態では、第一の折り工程S1において、ミシン目を形成しておき、接着剤をより多く染み込ませ得るものとしている。
【0052】
また、原紙2から多数の冊子を好適に量産すべく切り出し工程S3を行いつつ、完成した冊子1の見栄えも担保し得るようにするために本実施形態では、切り出し工程S3において前記原紙2を切断する箇所に切断目印9を設けるとともに、裁断工程S6において前記切断目印9を切除するようにしている。
【0053】
特に本実施形態では、原紙2の印刷方向は、短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された紙片4からなる冊子単位3で各頁5の向きが等しくなる所定の方向パターンPの繰り返しによってなるものとしている。
【0054】
つまり、本発明に係る冊子1の製造方法に用いられる原紙2は、印刷方向が、前記第二の折り工程S2により短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された紙片4からなる冊子単位3で各頁5の向きが等しくなる所定の方向パターンPの繰り返しによってなることを特徴とするものである。
【0055】
そして本発明に係る原紙2を正確且つ速やかに印刷するために本実施形態では、デジタルデータを基にしたインクジェット方式により印刷するようにしている。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0057】
<変形例>
以下、本実施形態の変形例について示すが、当該変形例において、上記実施形態の構成要素に対応するものについては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略するものとする。
【0058】
図11に示すように、第一の折り工程S1において紙目の方向に3つW字状に折りたんだ後、第二の折り工程S2を行う場合の8枚の紙片4及び16頁単位の冊子単位3の方向パターンPを示している。
【0059】
このようなものであっても上記実施形態同様、方向パターンPの繰り返しにより、所要の頁数の冊子1を製造することができる。
【0060】
すなわち本発明に係る第一の折り工程S1は、二つ折りに限られることはなく、複数折る工程としても、印刷方向が、前記第二の折り工程S2により短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された紙片4からなる冊子単位3で各頁5の向きが等しくなる所定の方向パターンPの繰り返しである原紙2であるので、好適に本発明に係る冊子1の製造方法に適用し得る。
【0061】
以上に記した第一実施形態に係る冊子1の製造方法では切断目印9を原紙2に対して印刷、すなわち描画することによって設ける態様をとすることにより、より明確に切断目印9を視認し得るものとしている。
【0062】
しかしながら本発明において切断目印9を設ける態様は勿論、本実施形態の如く原紙2に対して色彩等を付与する態様に限られるものではなく、例えば後述するように前記切断目印9が、前記原紙2に形成された形状により設けられる態様としても良い。
【0063】
<第二実施形態>
続いて本発明の第二実施形態について
図12乃至
図22を参照して説明する。当該実施形態において、上記実施形態の要素に相当するものについては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係る冊子1の製造方法は、
図12及び
図13に示すように、両面が連続的に印刷された長尺状の原紙2を長手方向に沿ってミシン目m1を形成せずに折る折り線形成手順S11aを含んだ第一の折り工程S1と、原紙2を交互に折る際の折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法と異ならせることによって折り目Fを厚み方向から視て異なる位置に形成することによって切断目印9を形成する本実施形態に係る第二の折り工程S2を有するとともに、前記第一の折り工程S1において前記原紙2の長手方向に折られた前記側縁部の表面を研磨することにより研磨部kを形成する研磨部形成工程S7を前記綴じ工程S5に至る前に設けている態様を示している。また冊子1を形成するに際しての表紙付与工程S4、綴じ工程S5及び裁断工程S6については上記実施形態と同じであるために詳細な説明を省略する。
【0065】
そして本実施形態では斯かる冊子1の製造方法における、少なくとも第一の折り工程S1、第二の折り工程S2、切り出し工程S3及び研磨部形成工程S7を、本実施形態に係る製造装置Mによって実現することにより、冊子1を構成する連続用紙Rを製造している。
【0066】
以下、斯かる冊子1の製造方法及び製造装置Mについて、
図12及び
図13を参照して具体的に説明する。
【0067】
製造装置Mは、長尺状の原紙2を長手方向に沿って折る長手折り機構M1と、短寸方向に沿って所定間隔で複数回交互に折る交互折り機構M2と、交互折り機構M2によって折られた折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法と異ならせることによって形成された厚み方向から視て異なる位置に形成された折り目Fである切断目印9に基づいて前記原紙2を所定長さに切り出す切り出し機構M3とを具備することを特徴とする。また本実施形態の製造装置Mは上記長手折り機構M1、交互折り機構M2、切り出し機構M3に加え、前記長手折り機構M1によって折られた折り線f1を研磨することにより研磨部kを形成する研磨部形成機構M7を具備させてもよい。なお当該製造装置Mでは、原紙2を所定速度で送る送り機構や連続用紙Rを搬出するためのベルトコンベア等の搬出機構や原紙2を送る速度や搬出速度を制御するための制御機構を備えているものであるがこれらの機構は既存の構造を種々利用することができるため、詳細な説明を省略する。
【0068】
長手折り機構M1は、
図12乃至
図14に示すように、原紙2の長手方向である、紙目の方向に沿って折り線f1を形成するための金属円板M11aと、この金属円板M11aによって押圧された原紙2を受けるための弾性を有するロールであるゴムロールM11bと、原紙2を折り線f1の位置で二つ折りする長手折り部M12とを有している。すなわち本実施形態に係る第一の折り工程S1は上記実施形態に係るミシン目形成手順S11に代えて、折り線形成手順S11aを備えている。
【0069】
交互折り機構M2は、原紙2に後述する通常間隔α及び切り出し間隔βを形成するように設けられたレジマークrの位置を検知するためのセンサM21と、センサM21によって検知したレジマークrの位置でセンサM21が検知した結果に応じて種々の速度で回転しながら原紙2を押圧することによりミシン目m2を形成するミシン目形成カッタM22と、このミシン目形成カッタM22に押圧される原紙を支持する下ロールM23と、形成されたミシン目m2の位置で原紙2を交互に折り畳む折り板M24とを有している。すなわち本実施形態ではミシン目形成手順S21を、原紙2に予め印刷等により設けられたレジマークrの位置に応じてミシン目m2を形成するものとしている。そして本実施形態では、
図12及び
図13、
図16、
図17及び
図19に示すように、前記切断目印9が、前記第二の折り工程S2によって折られた折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法よりも所定寸法長くすることにより、任意の一の折り目Fを面方向に突出させることによって設けられる。
【0070】
切り出し機構M3は、上記のようにして交互に折られた原紙2の一部を面方向に突出させて設けられた切断目印9の位置で原紙2を厚み方向から切断するものである。当該切り出し機構M3を構成し得るカッタ等の形状や具体的な動作については、既存の種々の構成を適用し得るため、詳細な説明を省略する。すなわち本実施形態に係る切り出し工程S3とは、突出させた前記任意の折り目Fを含む前記原紙2を厚み方向に切断するものである。
【0071】
研磨部形成機構M7は、交互折り機構M2による第一の折り工程S1によって形成された折り線f1の位置を研磨することにより原紙2の表面を削ることで、綴じ工程S5において用いられる例えば水性の接着剤が研磨部kから原紙2に染み込みやすくするためのものである。具体的に説明すると、
図18に示すように研磨部kを形成することにより切り出された原紙2がそれぞれ研磨部kの位置で接着剤を染み込ませるようにしている。これにより上記実施形態同様に、各紙片4の正確な位置決めによる綴じ品質の担保、そして各紙片4の確実な接着、加えて冊子1の良好な見開き性をそれぞれ高い品質で実現している。
【0072】
しかして本実施形態では、切断目印9を形成すべく、交互に折られた原紙2が、所定単位の連続用紙Rを構成する単位毎に同一方向に一の折り目Fが突出するようにしている。具体的に説明すると、
図16及び
図17に示すように本実施形態においても、原紙2に対して各頁5の内容を印刷する印刷方向が、短寸方向に沿って折られた位置を境に形成された紙片4からなる冊子単位3で各頁5の向きが等しくなる所定の方向パターンPの繰り返しによって行われている。そして同図では便宜上、単一の連続用紙Rを冊子単位3を2つ連ねた、ページ数が計16あるものとして示しているが勿論、連続用紙Rを構成すべく冊子単位3が連なる数はなんら限定されるものではない。そして連続用紙Rを構成する冊子単位3の数に関係無く、連続用紙Rにおける最初の頁5及び最後の頁5の紙目方向の寸法がその他の頁5の寸法よりも大きくなるようにレジマークrの位置を設定している。つまり最初及び最後の頁5を形成するレジマークr間の間隔を切り出し間隔βとし、それ以外の頁5を形成するレジマークr間の間隔を通常間隔αとしている。
【0073】
そして上記の通りレジマークrを設けておくことにより
図12、
図13及び
図19に模式的に示すように、任意の一の折り目Fが連続用紙R毎に単一方向に突出し、この折り目Fを含む原紙2の一部を切断目印9として利用している。これにより、切り出し工程S3は、交互に折られた原紙2の一辺に形成された切断目印9の箇所を厚み方向から切断するのみで、交互に折られた原紙2は、それぞれ連続用紙R毎に容易に切り分けられる。
【0074】
以上のように本実施形態によれば、前記第一の折り工程S1において前記原紙2の長手方向に折られる側縁部を形成する予定の箇所に予め折り線f1を設けることにより、第一の折り工程をS1をスムーズに行い得るものとしている。また前記側縁部の表面を研磨することにより研磨部kを形成する研磨部形成工程S7を前記綴じ工程S5に至る前に設けているので、上記実施形態同様に多くの接着剤を原紙2に含ませ、綴じ位置の更なる強度の向上を実現している。
【0075】
そして本実施形態によれば、切断目印9を、前記原紙2に形成された形状により設けるようにしているので、作業者による視覚的な視認や光学センサ等の格別の機構をなんら用いることなく、単純な動作であっても正確に連続用紙Rを切り出し得るものとなっている。
【0076】
そして原紙2から冊子1を生産する工程において切断目印9を設けるための格別の工程を何ら追加することなく切断目印9を設けるべく、本実施形態では切断目印9を、前記第二の折り工程S2によって折られた折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法と異ならせることによって設けられる厚み方向から視て異なる位置に形成された折り目Fとしている。
【0077】
特に本実施形態では外観上も視認し易く且つ機械的な切断による連続用紙Rの切り出しを行い得るように、前記第二の折り工程S2によって折られた折り目間の寸法を隣接する折り目間の寸法よりも所定寸法長くすることにより、任意の一の折り目Fを面方向に突出させることによって切断目印9を設けている。
【0078】
これにより切り出し工程S3は、突出させた前記任意の一の折り目Fを含む前記原紙2を厚み方向に切断するようにすれば、効率の良い切り出し工程S3を実現している。
【0079】
<変形例>
上述した本発明の第二実施形態では
図19等に示すように、任意の一の折り目Fをそれぞれ同方向に突出させることにより切断目印9を形成する態様を開示したが勿論、
図20に示すように任意の折り目Fを平面視で二方向で突出させることにより切断目印9を形成するものとしても良い。斯かる態様は、原紙2に設けたレジマークr間の間隔である通常間隔α及び切り出し間隔βの配置を適宜調整することにより容易に実現することが可能である。
【0080】
このようなものであっても、切り出し工程S3は交互に折られた原紙2を厚み方向に切断するという単純な工程とすることができる。
【0081】
続いて
図21及び
図22は、通常間隔αで交互に折り畳まれた連続用紙Rを厚み方向に交互に配置している態様を示している。これらの図に示している態様では切り出し工程S3は同図に示すように交互に折られた原紙2の面方向から切断することが望ましいが、切り出し工程S3により切り出された各連続用紙Rを容易に個々の連続用紙Rに分けることができる。
【0082】
さらに各部の具体的な構成は、上述した実施形態及び変形例のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0083】
例えば、上記実施形態では表紙やクロスを用いたダイヤリーに本発明を適用した態様を開示したが、勿論、他の目的の冊子としたものであってもよい。そして上記実施形態では原紙により1冊の冊子を製造する態様のみを開示したが勿論、複数冊分の冊子を上記実施形態の如く製造し、裁断工程において例えば等分することにより、一度に複数の冊子を同時に製造する態様を適用してもよい。また原紙や紙目方向の折り線の数といった具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0084】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。