(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態では、ホースが建設機械用の油圧ホース(高圧ホース)である場合について説明する。
図1に示すように、ホース10Aは、ゴムチューブ層12と、第1〜第4の補強層14A〜14Dと、第1〜第3の中間ゴム層16A〜16Cと、カバーゴム層18と、樹脂チューブ20とを備えている。
【0009】
ゴムチューブ層12は、作動油(流体)が流通する流路を形成するものである。
第1の補強層14Aは、ゴムチューブ層12の外側に積層され、ゴムチューブ層12の外側にスチールワイヤがスパイラル状に巻回されることで構成されている。
第1の中間ゴム層16Aは、第1の補強層14Aの外側に積層されている。
【0010】
第2の補強層14Bは、第1の中間ゴム層16Aの外側に積層され、第1の中間ゴム層16Aの外側にスチールワイヤが第1の補強層14Aとは逆向きでスパイラル状に巻回されることで構成されている。
第2の中間ゴム層16Bは、第2の補強層14Bの外側に積層されている。
【0011】
第3の補強層14Cは、第2の中間ゴム層16Bの外側に積層され、第2の中間ゴム層16Bの外側にスチールワイヤが第2の補強層14Bとは逆向きでスパイラル状に巻回されることで構成されている。
第3の中間ゴム層16Cは、第3の補強層14Cの外側に積層されている。
【0012】
第4の補強層14Dは、第3の中間ゴム層16Cの外側に積層され、第3の中間ゴム層16Cの外側にスチールワイヤが第3の補強層14Cとは逆向きでスパイラル状に巻回されることで構成されている。
カバーゴム層18は、最も外側に配置された外側補強層である第4の補強層14Dの外側に積層されている。
【0013】
樹脂チューブ20は、第4の補強層14Dとカバーゴム層18との間に巻装され、その内部に所定量の着色剤あるいは蛍光剤が封入されている。
樹脂チューブ20は、
図1に示すように、第4の補強層14Dに該第4の補強層14Dのスチールワイヤと逆向きでスパイラル状に巻回されている。
樹脂チューブ20は、ホース10Aの製造工程における加硫工程において、第3の中間ゴム層16Cおよびカバーゴム層18のゴムを介して第4の補強層14Dに巻装され取着される。
樹脂チューブ20は弾性変形可能であり、樹脂チューブ20を構成する合成樹脂材料は、カバーゴム層18および第4の補強層14Dに及ぶ外傷が発生した場合に、容易に破壊し、かつ、ホース10Aの変形に追従して変形し得るものが好ましい。
このような合成樹脂材料として、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)など従来公知の様々な合成樹脂材料が使用可能である。
【0014】
樹脂チューブ20は、内径が大きいほど、封入される着色剤あるいは蛍光剤の容積を大きく確保する上で有利となるが、樹脂チューブ20の外径が大きくなるほど、ホース10Aの外径も大きくなることから、以下に例示する範囲とすることが好ましい。
樹脂チューブ20の内径は、例えば0.1mm〜1.0mmが好ましい。
樹脂チューブ20の外径は、例えば内径が0.1mmであれば、0.3〜0.4mmが好ましく、例えば内径が1.0mmであれば、1.4〜1.6mmが好ましい。
【0015】
また、樹脂チューブ20の編組密度は、50〜90%とすることが、ホース10Aが外傷を受けた際に樹脂チューブ20が確実に破壊され、かつ、編組作業性を確保する上で好ましい。
編組密度が50%を下回ると、ホース10Aが外傷を受けた際に樹脂チューブ20が破壊されない可能性が生じ、編組密度が90%を上回ると、編組作業性が低下する。
【0016】
着色剤および蛍光剤は、視認性を確保する観点からすると、カバーゴム層18に対して識別可能な色相または明度または彩度を有していることが好ましい。
例えば、カバーゴム層18が黒色であった場合は、着色剤および蛍光剤の色相は、白色、黄色、オレンジ色、ピンク色であることが、視認性を高める上で有利となる。
また、着色剤および蛍光剤の主成分は、以下に説明する理由から合成樹脂エマルジョンであることが好ましい。
すなわち、ホース10Aが外傷を受けて補強層が露出した場合、外傷部で樹脂チューブ20から漏洩した着色剤および蛍光剤の主成分である合成樹脂エマルジョンが空気に触れてあたかも速乾性の接着剤のように硬化し、露出した補強層の短期的な保護を図ることができる。
ホースが外傷を受けて補強層が露出したままで放置されると、やがてスチールワイヤに錆が発生して強度が低下し、ホース破損となるおそれが懸念される。
これに対して、本実施の形態のように着色剤および蛍光剤の主成分として合成樹脂エマルジョンを用いると、合成樹脂エマルジョンが補強層のスチールワイヤを被覆した状態で硬化するため、限られた期間ではあるものの補強層の保護(スチールワイヤの錆を抑制)を図る上で有利となる。
【0017】
次に、本実施の形態のホース10Aの作用効果について説明する。
建設機械に接続されて使用されているホース10Aが例えば構造物にぶつかるなどして外傷を受けたものとする。
外傷がカバーゴム層18および第4の補強層14Dに及び、外傷箇所における樹脂チューブ20の部分が破れると、樹脂チューブ20から着色剤あるいは蛍光剤が染み出して、カバーゴム層18の外面に漏洩する。
カバーゴム層18の外面に漏洩する着色剤あるいは蛍光剤の量は、樹脂チューブ20に封入されているため、従来例のカプセルに封入された量に比べて格段に多く、また、カバーゴム層18の外面に漏洩する着色剤あるいは蛍光剤の面積は、従来例の切れ目から露出する色付きゴムシート層の面積に比べて格段に大きい。
したがって、漏洩した着色剤あるいは蛍光剤に基いてホース10Aに外傷が生じたことを簡単かつ確実に視認する上で有利となる。
【0018】
また、カバーゴム層18の外面に漏洩する着色剤あるいは蛍光剤は、着色剤あるいは蛍光剤の所定量が樹脂チューブ20に封入されているため、時間経過と共に増えて広範囲にわたって染み出し、ホース10Aに外傷が生じたことを簡単かつ確実に視認する上でより有利となる。
また、ホース10Aが建設機械の動作によって屈曲される場合には、ホース10Aの屈曲動作によって樹脂チューブ20内の着色剤あるいは蛍光剤が押し出され、広範囲にわたって染み出し、ホース10Aに外傷が生じたことを簡単かつ確実に視認する上でより有利となる。
また、ホース10Aのゴムチューブ層12に実施の形態のように作動油が流通する場合には、樹脂チューブ20にホース10Aの半径方向外方に向かう圧力が加わり、その圧力によって樹脂チューブ20内の着色剤あるいは蛍光剤が押し出されて広範囲に染み出し、ホース10Aに外傷が生じたことを簡単かつ確実に視認する上でより有利となる。
【0019】
また、本実施の形態では、樹脂チューブ20は、外側補強層にスパイラル状に巻回されている。
そのため、樹脂チューブ20は、ホース10Aの屈曲に追従して変形しやすく、ホース10Aの可撓性を確保する上で有利となる。
また、樹脂チューブ20は、各補強層を構成するスチールワイヤと同様にスパイラル状に巻回すればよいため、既存の編組機を用いて樹脂チューブ20を巻回でき、製造設備のコストの増大を抑制する上でも有利となる。
また、漏洩した着色剤あるいは蛍光剤に基いて外傷が認められた場合、ホース10Aのそれ以上の使用を停止することにより、各補強層のスチールワイヤが錆びて劣化してホース10Aの強度が低下したり、あるいは、外傷がゴムチューブ層12に到達して作動油が漏洩するといった事態を未然に回避することができる。
【0020】
図3は、建設機械にホース10Aが用いられた場合の説明図である。
クレーン50のアーム52に建設機械としての杭打ち機54が吊り下げられており、この杭打ち機54に油圧供給源56から作動油がホース10Aを経由して供給され、ホース10Aが高所に位置している。
このように高所に位置しているホース10Aが外傷を受けた場合、樹脂チューブ20から着色剤あるいは蛍光剤が染み出してカバーゴム層18の外面の広範囲に漏洩するため、地上からであっても、ホース10Aの外面に漏洩した着色剤Pあるいは蛍光剤Pを容易に視認することができ、高所に位置するホース10Aの外傷を地上から簡単かつ確実に視認することができる。
【0021】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同様の部分、部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態は、
図2に示すように、樹脂チューブ20が第4の補強層14D(外側補強層)にブレード状に編組されている点が第1の実施の形態と相違しており、他の点は第1の実施の形態と同様である。
【0022】
このような第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、ホース10Bが外傷を受けて樹脂チューブ20が破れると、樹脂チューブ20から漏洩した着色剤あるいは蛍光剤に基いてホース10Bに外傷が生じたことを簡単かつ確実に視認する上で有利となる。
【0023】
また、樹脂チューブ20は、第4の補強層14Dにブレード状に編組されているため、第1の実施の形態と同様に、ホース10Bの屈曲に追従して変形しやすく、ホース10Bの可撓性を確保する上で有利となる。
また、樹脂チューブ20は、既存の編組機を用いて編組でき、製造設備のコストの増大を抑制する上で有利となる。
【0024】
なお、実施の形態では、ホース10Bが4層の補強層14A〜14Dを備える場合について説明したが、補強層は1層、2層、3層、あるいは、5層以上であってもよいことは無論である。
【0025】
また、実施の形態では、ホース10Bが建設機械用の油圧ホース(高圧ホース)である場合について説明したが、本発明は、低圧ホースにも無論適用可能である。
低圧ホースの場合、補強層はそれほどの強度が要求されないため、補強層は、スチールワイヤに代えて繊維コードがスパイラル状に巻回されることで、あるいは、繊維コードがブレード状に編組されることで構成される。
また、ホースを流通する流体は、作動油に限定されるものではなく、様々な液体、あるいは、様々な気体であってもよいことは無論である。