(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、(A)活性エステル系硬化剤の含有量が0.5質量%〜20質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物の含有量が10質量%〜60質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g〜150mgKOH/gであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物が、1分子中にカルボキシル基と2個以上のラジカル重合性不飽和基とを併せ持つ化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)活性エステル系硬化剤及び(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物を含有することを特徴とする。
【0009】
<(A)活性エステル系硬化剤>
本発明の感光性樹脂組成物において使用される(A)活性エステル系硬化剤は、硬化物としたときの耐熱性を向上させながら、誘電正接を低く、かつ耐水性を高くすることができ、しかもアルカリ現像も可能とする。(A)活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましい。(A)活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。
【0010】
硬化物としたときの耐熱性の向上の観点から、(A)活性エステル系硬化剤としては、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを縮合反応させた反応物から得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物が更に好ましい。そして、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させた反応物から得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が更に一層好ましい。そして、(A)活性エステル系硬化剤は、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させた反応物から得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が殊更好ましい。また、活性エステル化合物は、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。(A)活性エステル系硬化剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0011】
用いられ得るカルボン酸化合物としては、たとえば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも硬化物としたときの耐熱性の向上の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。チオカルボン酸化合物としては、たとえば、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0012】
フェノール化合物又はナフトール化合物の例としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0013】
なかでも硬化物としたときの耐熱性の向上、溶解性の向上の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に一層好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエニルジフェノールが殊更好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましい。チオール化合物の例としては、具体的には、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
【0014】
ジシクロペンタジエニル構造を含む活性エステル系硬化剤としては、より具体的には下式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
式(1)中、2個あるRは、互いに独立にフェニル基又はナフチル基である。kは0又は1を表す。nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.5である。
【0017】
誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基であることが好ましい。kは0であることが好ましい。また、nは0.25〜1.5であることが好ましい。
【0018】
活性エステル系硬化剤としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販の活性エステル系硬化剤を用いることもできる。市販されている活性エステル系硬化剤の例としては、具体的には、ジシクロペンタジエニル構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が好ましく、なかでもナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤としては、たとえば、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC8000−65T(DIC(株)製)が挙げられ、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤としては、たとえば、EXB9416−70BK(DIC(株)製)が挙げられ、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤としては、たとえば、DC808(三菱化学(株)製)が挙げられ、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤としては、たとえば、YLH1026(三菱化学(株)製)が挙げられる。
【0019】
(A)活性エステル系硬化剤の含有量は、硬化物としたときの耐熱性を向上させ、さらには誘電正接を低下させ、かつ耐水性を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、(A)活性エステル系硬化剤を0.5質量%以上含むことが好ましく、1質量%以上含むことがより好ましく、2質量%以上含むことが更に好ましい。一方、アルカリ現像性の低下を防止するという観点から、(A)活性エステル系硬化剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、20質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下とすることが更に好ましい。
【0020】
<(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物>
本発明における(B)カルボキシ基含有ラジカル重合性化合物は、カルボキシル基を有し、アルカリ現像を可能とする化合物であれば特に制限はないが、1分子中にカルボキシル基と2個以上のラジカル重合性不飽和基とを併せ持つ化合物が好ましい。例えば、エポキシ樹脂に不飽和カルボン酸を反応させた不飽和エポキシエステル樹脂、さらに酸無水物を反応させた酸ペンダント型不飽和エポキシエステル樹脂等が挙げられる。
【0021】
ここで「エポキシ樹脂」としては、分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物であれば使用可能であり、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフトール型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型等のビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂にエピクロロヒドリンを反応させて3官能以上に変性したビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂にエピクロロヒドリンを反応させて3官能以上に変性したビスフェノールF型エポキシ樹脂が、現像性、絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物の硬化物を実現する点からより好ましい。
【0022】
ここで「不飽和カルボン酸」としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が感光性樹脂組成物の光硬化性の向上の点から好ましい。従って、(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物の好ましい一実施態様としては、エポキシ樹脂及び不飽和カルボン酸を反応させた化合物であって、エポキシ樹脂がビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であり、不飽和カルボン酸がアクリル酸又はメタクリル酸である化合物である。
【0023】
さらに酸無水物を反応させた酸ペンダント型不飽和エポキシエステル樹脂を得る場合には、「酸無水物」としては、たとえば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸が硬化物の現像性及び絶縁信頼性向上の点から好ましい。
【0024】
酸ペンダン卜型不飽和エポキシエステル樹脂は、触媒存在下に、前記の不飽和カルボン酸とエポキシ樹脂とを反応させた後、得られた反応物である不飽和エポキシエステル樹脂と酸無水物とを反応させることにより得ることができる。
【0025】
この際に用いる触媒の量は、不飽和カルボン酸とエポキシ樹脂と酸無水物との合計重量に対して、2重量%以下であり、好ましくは0.0005重量%〜1重量%の範囲であり、特に好ましくは0.001重量%〜0.5重量%の範囲である。触媒としては、例えば、N−メチルモルフォリン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1,4−ジエチルイミダゾール、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の各種アミン化合物類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)ホスホニウム塩、トリフェニルホスホニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等のホスホニウム塩類であって、代表的な対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有するホスホニウム塩類;トリメチルスルホニウム塩、ベンジルテトラメチレンスルホニウム塩、フェニルベンジルメチルスルホニウム塩またはフェニルジメチルスルホニウム塩等のスルホニウム塩類であって、代表的な対アニオンとして、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有するスルホニウム塩類;燐酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸のような酸性化合物類等が挙げられる。反応は、50℃〜150℃の範囲で行うことができ、80℃〜120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0026】
従って、(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物の好ましい一実施態様としては、エポキシ樹脂、不飽和カルボン酸及び酸無水物を反応させた化合物であって、エポキシ樹脂がビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であり、不飽和カルボン酸がアクリル酸又はメタクリル酸であり、酸無水物が無水コハク酸又は無水テトラヒドロフタル酸である化合物である。
【0027】
市販されている酸ペンダント型不飽和エポキシエステル樹脂としては、ZFR−1533H(日本化薬(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水テトラヒドロフタル酸の反応物)、ZAR−2000(日本化薬(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水コハク酸の反応物)、PR−3000(昭和電工(株)製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)等が挙げられる。
【0028】
(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物の製造では、保存安定性の向上という観点から、エポキシ樹脂のエポキシ基のモル数と、不飽和カルボン酸と酸無水物との合計のカルボキシル基のモル数との比が、1:0.8〜1.3の範囲であることが好ましく、1:0.9〜1.2の範囲であることがより好ましい。
【0029】
また、(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物は、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を向上させるという観点から、酸価が0.1mgKOH/g以上であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上であることがより好ましく、1mgKOH/g以上であることが更に好ましい。他方で、硬化物の微細パターンが現像により溶け出す事を防止し、絶縁信頼性を向上させるという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、90mgKOH/g以下であることが更に好ましい。ここで、酸価とは、(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物に存在するカルボキシル基の残存酸価のことであり、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、下記式により酸価を算出する。
式:A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
【0030】
なお、上記式中、Aは酸価(mgKOH/g)を表し、VfはKOHの滴定量(mL)を表し、Wpは測定樹脂溶液質量(g)を表し、Iは測定樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を表す。
【0031】
(B)カルボキシル基含有ラジカル重合性化合物は、アルカリ現像性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を10質量%以上とすることが好ましく、15質量%以上とすることがより好ましく、20質量%以上とすることが更に好ましく、25質量%以上とすることが更に一層好ましく、30質量%以上とすることが殊更好ましい。他方で、耐熱性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を60質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以下とすることが更に好ましい。
【0032】
<(C)光重合開始剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(C)光重合開始剤を含有させることにより、樹脂組成物を効率的に光硬化させて硬化物とすることができる。(C)光重合開始剤は、特に制限されないが、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤や、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、ベンゾイルエチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサンド等が挙げられ、また、スルホニウム塩系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等も使用できる。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0033】
さらに、光重合開始助剤として、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類を加えてもよいし、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類などのような光増感剤を加えてもよい。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0034】
(C)光重合開始剤は、感光性樹脂組成物を十分に光硬化させ、絶縁信頼性を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を0.1質量%以上とすることが好ましく、0.5質量%以上とすることがより好ましく、1質量%以上とすることが更に好ましい。一方、感度過多による寸法安定性の低下を防止するという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を6質量%以下とすることが好ましく、4質量%以下とすることがより好ましく、2質量%以下とすることが更に好ましい。
【0035】
<(D)エポキシ樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物においては、更に(D)エポキシ樹脂を含有させることにより、絶縁信頼性を向上させることができる。
本発明で使用する(D)エポキシ樹脂は、特に制限なく使用でき、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂等が挙げられる。かかるエポキシ樹脂はいずれか1種を使用するか2種以上を併用してもよい。また、かかるエポキシ樹脂は反応性の観点から、エポキシ当量が95〜400の範囲の樹脂であることが好ましく、150〜300の範囲の樹脂であることがより好ましい。なお、エポキシ当量(g/eq)とは、JIS K7236に規定の1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。
【0036】
(D)エポキシ樹脂としては、なかでも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、たとえば、DIC(株)製の「HP7200」(エポキシ当量264)、「HP7200H」(エポキシ当量280)、「HP7200HH」(エポキシ当量283)、日本化薬(株)製の「XD−1000」(エポキシ当量252)、「XD−1000−L」(エポキシ当量247)、「XD−10002L」(エポキシ当量242)等が挙げられ、ビフェニル型エポキシ樹脂としては、たとえば、日本化薬(株)製の「NC3000」(エポキシ当量約291)、「NC3000H」(エポキシ当量290)、「NC3000L」(エポキシ当量272)、東都化成(株)製の「GK3207」(エポキシ当量約226)、三菱化学(株)製の「YX4000HK」(エポキシ当量約190)等が挙げられる。
【0037】
(D)エポキシ樹脂は、耐熱性、絶縁信頼性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を3重量%以上とすることが好ましく、6質量%以上とすることがより好ましく、9質量%以上とすることが更に好ましい。他方で、現像性の低下を防止するという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、その含有量を20質量%以下とすることが好ましく、18質量%以下とすることがより好ましく、16質量%以下とすることが更に好ましい。
【0038】
<(E)硬化促進剤>
本発明の感光性樹脂組成物においては、更に(E)硬化促進剤を含有させることにより、硬化物の耐熱性、接着性、耐薬品性等を向上させることができる。
(E)硬化促進剤としては、特に限定されないが、たとえば、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0039】
アミン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
グアニジン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0041】
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
ホスホニウム系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物において、硬化促進剤(金属系硬化促進剤を除く)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、0.005質量%〜1質量%の範囲であることが好ましく、0.01質量%〜0.5質量%の範囲であることがより好ましい。0.005質量%未満であると、硬化が遅くなり硬化時間が長く必要となる傾向にあり、1質量%を超えると樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向となる。
【0044】
金属系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、たとえば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物において、金属系硬化促進剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、金属系硬化触媒に基づく金属の含有量が25ppm〜500ppmの範囲であることが好ましく、40ppm〜200ppmの範囲であることがより好ましい。
【0046】
<(F)無機充填材>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(F)無機充填材を含有させることにより、熱膨張率を低下させることができる。(F)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、中空シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが特に好適である。シリカとしては球状のシリカが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されている球状溶融シリカとしては、たとえば、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
【0047】
(F)無機充填材の平均粒径は、絶縁信頼性の向上、光硬化性の向上という点から1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、0.6μm以下であることが更に好ましく、0.4μm以下であることが更に一層好ましい。他方で、無機充填材の凝集を防止するという点から、(F)無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。なお、無機充填材としては、耐湿性、分散性を向上させるため、シランカップリング剤(エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤等)、チタネート系カップリング剤、シラザン化合物等の表面処理剤で表面処理してあるものが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
エポキシシラン系カップリング剤としては、たとえば、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、アミノシラン系カップリング剤としては、たとえば、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、メルカプトシラン系カップリング剤としては、たとえば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販のエポキシシラン系カップリング剤としては、たとえば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0049】
チタネート系カップリング剤としては、たとえば、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0050】
シラザン化合物としては、たとえば、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサ(t−ブチル)ジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサオクチルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジ−n−オクチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジメチルテトラフェニルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、1,3−ジプロピルテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン等を挙げることができ、特にヘキサメチルジシラザンが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0051】
(F)無機充填材は、感光性樹脂組成物の分散性の向上の観点から、シラザン化合物で表面処理した無機充填材を用いることが好ましい。そしてシラザン化合物で表面処理した後に、シランカップリング剤で表面処理することで、更なる分散性の向上を図ることができる。表面処理に用いられるシラザン化合物の量は、無機充填材100質量%に対して0.001質量%〜0.3質量%であることが好ましく、0.005質量%〜0.2質量%であることがより好ましい。ヘキサメチルジシラザンで表面処理した球状溶融シリカとしては、たとえば、(株)アドマテックス製「SC2050」が挙げられる。また表面処理に用いられるシランカップリング剤の量は、無機充填材100質量%に対して0.1質量%〜6質量%であることが好ましく、0.2質量%〜4質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜3質量%であることが更に好ましい。
【0052】
(F)無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製LA−500、LA−750等を使用することができる。
【0053】
(F)無機充填材を配合する場合の含有量は、硬化物の線熱膨張率を低下させ、硬化物の歪みを防止するという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。他方で、(F)無機充填材を配合する場合の含有量は、アルカリ現像性の低下の防止、光硬化性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
【0054】
<(G)有機充填材>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(G)有機充填材を含有させることにより、硬化物の応力を緩和させることができ、硬化物としたときにクラックの発生を防止することができる。(G)有機充填材としては、たとえば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。
【0055】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体であるものならばどのようなゴム粒子でもよく、たとえば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER−91(日本合成ゴム(株)社製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、ガンツ化成(株)社製)パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)社製)などが挙げられる。
【0056】
ポリアミド微粒子としては、アミド結合を有する樹脂の50μm以下の微粒子であればどのようなポリアミド微粒子でもよく、たとえば、ナイロン等の脂肪族ポリアミド、ケブラー等の芳香族ポリアミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。ポリアミド微粒子としては、具体的には、VESTOSINT 2070(ダイセルヒュルス(株)社製)や、SP500(東レ(株)社製)などが挙げられる。
【0057】
(G)有機充填材の平均粒径は、0.005μm〜1μmの範囲であることが好ましく、0.2μm〜0.6μmの範囲であることがより好ましい。(G)有機充填材の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。(G)有機充填材の平均粒径は、例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(FPAR−1000;大塚電子(株)製)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0058】
(G)有機充填材を配合する場合の含有量は、耐熱性の向上、レーザー加工性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、0.1質量%〜6質量%が好ましく、0.5質量%〜4質量%がより好ましい。
【0059】
<(H)反応性希釈剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(H)反応性希釈剤を含有させることにより、光反応性を向上させることができる。(H)反応性希釈剤としては、例えば、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する室温で液体、固体又は半固形の感光性(メタ)アクリレート化合物が使用できる。
【0060】
代表的な感光性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノまたはジアクリレート類、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド若しくはε−カプロラクトンの付加物の多価アクリレート類、フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等フェノール類、あるいはそのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルから誘導されるエポキシアクリレート類、メラミンアクリレート類、及び/又は上記のアクリレートに対応するメタクリレート類などが挙げられる。これらのなかでも、多価アクリレート類または多価メタクリレート類が好ましく、例えば、3価のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N,N',N'−テトラキス(β−ヒドロキシエチル)エチルジアミンの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、3価以上のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3−(メタ)アクリロイル−2−ヒドロキシルオキシプロピル)ホスフェート、ジ(3−(メタ)アクリロイル−2−ヒドロキシルオキシプロピル)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(3−(メタ)アクリロイル−2−ヒドロキシルオキシプロピル)ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等のリン酸トリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これら感光性(メタ)アクリレート化合物はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0061】
(H)反応性希釈剤を配合する場合の含有量は、光硬化を促進させ、かつ硬化物としたときにべたつきを防止するという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、0.5質量%〜10質量%が好ましく、2質量%〜8質量%がより好ましい。
【0062】
<(I)熱可塑性樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(I)熱可塑性樹脂を含有させることにより硬化物の可とう性を向上させることができる。このような(I)熱可塑性樹脂としては、たとえば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は5000〜200000の範囲であるのが好ましい。この範囲よりも小さいとフィルム成型能や機械強度向上の効果が十分発揮されない傾向にあり、この範囲よりも大きいとシアネートエステル樹脂およびナフトール型エポキシ樹脂との相溶性が十分でなく、硬化後の表面凹凸が大きくなり、高密度微細配線の形成が困難となる傾向にある。
【0064】
なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0065】
(I)熱可塑性樹脂を配合する場合の含有量は、フィルム成型能を向上させ、かつ硬化物としたときにべたつきを防止するという観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、0.1質量%〜10質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0066】
<(J)有機溶剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(J)有機溶剤を含有させることによりワニス粘度を調整できる。(J)有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。有機溶剤を用いる場合の含有量は、感光性樹脂組成物の塗布性の観点から適宜調整することができる。
【0067】
<(K)その他の添加剤>
本発明の感光性樹脂組成物では、本発明の目的を阻害しない程度に、(K)その他の添加剤を更に配合することができる。(K)その他の添加剤としては、例えば、メラミン、有機ベントナイト等の微粒子、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤、ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、リン系化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等の熱硬化樹脂、等の各種添加剤を添加することができる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(K)を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより、樹脂ワニスとして製造することができる。
【0069】
本発明の感光性樹脂組成物は、後述の硬化条件で硬化処理することによって、耐熱性がより向上し、誘電正接が低く、かつ耐水性が高い、アルカリ現像可能な硬化物を提供することができる。以下、これらの特性について詳述する。
【0070】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述の<誘電正接の測定>により測定することができる。誘電正接は、具体的には、空洞共振摂動法により周波数を5.8GHzとし、測定温度を23℃として測定することができる。高周波での発熱防止、信号遅延および信号ノイズの低減という観点から、誘電正接は0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましく、0.02以下であることが更に一層好ましく、0.0169以下であることが殊更好ましい。他方で、誘電正接の下限値は特に制限は無いが、0.005以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましい。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の耐水性は、後述の<耐水性の測定>で説明する測定方法により測定することができる。耐水性は、プリント配線板作製時のひずみ防止、絶縁信頼性の向上という観点から、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることが更に好ましく、1.19%以下であることが更に一層好ましい。一方、耐水性の下限値は特に制限は無いが、0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.5%以上であることが更に好ましい。
【0072】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性は、後述の<耐熱性の評価>で説明する測定方法により測定することができる。耐熱性の指標としては、硬化物に熱履歴を与えた際の硬化物の劣化を防止するという点で、ガラス転移点を採用するのがよい。ガラス転移点は160℃以上であることが好ましい。ガラス転移点の上限値は特に制限されないが、300℃以下であることが好ましい。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層とした多層プリント配線板)、層間絶縁層用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層とした多層プリント配線板)、メッキ形成用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成された多層プリント配線板)として好適に使用することができる。
【0074】
<感光性フィルム>
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂ワニス状態で支持基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることで樹脂組成物層を形成して、感光性フィルムとすることができる。また、予め支持体上に形成された感光性フィルムを支持基板に積層して用いることもできる。本発明の感光性フィルムは様々な支持基板に積層させることができる。支持基板としては主に、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。
【0075】
<支持体付き感光性フィルム>
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物層が支持体上に層形成された支持体付き感光性フィルムの形態で好適に使用することができる。つまり、支持体付き感光性フィルムは感光性樹脂組成物の層が支持体上に形成されている。支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
市販の支持体としては、例えば、王子製紙株式会社製の製品名「アルファンMA−410」、「E−200C」、信越フィルム株式会社製等のポリプロピレンフィルム、帝人株式会社製の製品名「PS−25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は、樹脂組成物層の除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。支持体の厚さは、5μm〜50μmの範囲であることが好ましく、10μm〜25μmの範囲であることがより好ましい。この厚さが5μm未満では、現像前に行う支持体剥離の際に支持体(支持フィルム)が破れやすくなる傾向があり、他方で、厚さが50μmを超えると、支持体上から露光する際の解像度が低下する傾向がある。また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0076】
また、紫外線等の活性エネルギー線による露光時の光の散乱を低減するため、支持体は透明性に優れるものが好ましい。支持体は、具体的には、透明性の指標となる濁度(JIS−K6714で規格化されているヘーズ)が0.1〜5であるものが好ましい。さらに樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。
【0077】
支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層側を保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm〜40μmの範囲であることが好ましく、5μm〜30μmの範囲であることがより好ましく、10μm〜30μmの範囲であることが更に好ましい。この厚さが1μm未満では、保護フィルムの取り扱い性が低下する傾向があり、40μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。なお、保護フィルムは、樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0078】
本発明の支持体付き感光性フィルムは、当業者に公知の方法に従って、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成することにより製造することができる。具体的には、まず、真空脱泡法等で感光性樹脂組成物中の泡を完全に除去した後、感光性樹脂組成物を支持体上に塗布し、熱風炉あるいは遠赤外線炉により溶剤を除去し、乾燥せしめ、ついで必要に応じて得られた樹脂組成物層上に保護フィルムを積層することにより支持体付き感光性フィルムを製造することができる。具体的な乾燥条件は、樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の有機溶剤量によっても異なるが、30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスにおいては、80℃〜120℃で3分間〜13分間で乾燥させることができる。樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、樹脂組成物層の総量に対して5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを防止するという観点から、5μm〜500μmの範囲とすることが好ましく、10μm〜200μmの範囲とするのがより好ましく、15μm〜150μmの範囲とするのが更に好ましく、20μm〜100μmの範囲とするのが更に一層好ましく、20μm〜60μmの範囲とするのが殊更好ましい。
【0079】
感光性樹脂組成物の塗布方式としては、たとえば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0080】
<多層プリント配線板>
次に、感光性樹脂組成物を用いて多層プリント配線板の製造方法の例を説明する。
【0081】
(塗布及び乾燥工程)
感光性樹脂組成物を樹脂ワニス状態で直接的に回路基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることにより、回路基板上に感光性フィルムを形成する。回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0082】
塗布方式としては、スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられているが、その他にも均一に塗布できる塗布方式であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、ブレードコート方式、ナイフコート方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、ロールコート方式、グラビアコート方式、オフセット印刷方式、ディップコート方式、刷毛塗り、その他通常の塗布方式はすべて使用できる。塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃〜120℃で3分間〜13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0083】
(ラミネート工程)
また、支持体付き感光性フィルムを用いる場合には、樹脂組成物層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。ラミネート工程において、支持体付き感光性フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて感光性フィルム及び回路基板をプレヒートし、樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の感光性フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。
【0084】
ラミネート工程の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃〜140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm
2〜11kgf/cm
2(9.8×10
4N/m
2〜107.9×10
4N/m
2)、圧着時間を好ましくは5秒間〜300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0085】
(露光工程)
塗布及び乾燥工程、あるいはラミネート工程により、回路基板上に感光性フィルムが設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。活性光線としては、たとえば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0086】
(現像工程)
露光工程後、樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、パターンを形成することができる。
【0087】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられ、なかでもアルカリ水溶液による現像工程が好ましい。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0088】
現像液として使用されるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられ、金属イオンを含有せず、半導体チップに影響を与えないという点で水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が好ましい。
これらのアルカリ性水溶液には、現像効果の向上のため、界面活性剤、消泡剤等を現像液に添加することができる。上記アルカリ性水溶液のpHは、例えば、8〜12の範囲であることが好ましく、9〜11の範囲であることがより好ましい。また、上記アルカリ性水溶液の塩基濃度は、0.1質量%〜10質量%とすることが好ましい。上記アルカリ性水溶液の温度は、樹脂組成物層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、20℃〜50℃とすることが好ましい。
【0089】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0090】
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%〜90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0091】
本発明のパターン形成においては、必要に応じて、上記した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa〜0.3MPaが好ましい。
【0092】
(ポストベーク工程)
上記現像工程終了後、ポストベーク工程を行い、絶縁層(硬化物)を形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05J/cm
2〜10J/cm
2程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分間〜180分間の範囲、より好ましくは160℃〜200℃で30分間〜120分間の範囲で選択される。
【0093】
(穴あけ工程)
絶縁層を形成した後、所望により、回路基板上に形成された絶縁層に穴あけ工程を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
【0094】
(メッキ工程)
次に、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法を使用することができる。蒸着法(真空蒸着法)は、例えば、支持体を真空容器内に入れ、金属を加熱蒸発させることにより絶縁層上に金属膜形成を行うことができる。スパッタリング法も、例えば、支持体を真空容器内に入れ、アルゴン等の不活性ガスを導入し、直流電圧を印加して、イオン化した不活性ガスをターゲット金属に衝突させ、叩き出された金属により絶縁層上に金属膜形成を行うことができる。
【0095】
湿式メッキの場合は、形成された絶縁層の表面に対して、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行うことによって凸凹のアンカーを形成する。膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50℃〜80℃で5分間〜20分間膨潤液に浸漬させることで行われる。膨潤液としてはアルカリ溶液が挙げられ、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。酸化剤による粗化処理は、絶縁層を60℃〜80℃で10分間〜30分間酸化剤溶液に浸漬させることで行われる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5重量%〜10重量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、30℃〜50℃で3分間〜10分間中和液に浸漬させることで行われる。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントPが挙げられる。
次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0096】
<半導体装置>
本発明の多層プリント配線板を用いることで半導体装置を製造することができる。本発明の多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置、すなわち本発明の多層配線板を備える半導体装置を製造することができる。「導通箇所」とは、「多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0097】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法などが挙げられる。
【0098】
「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップを多層プリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことであり、更に、下記のBBUL方法1)、BBUL方法2)の実装方法に大別される。
BBUL方法1)アンダーフィル剤を用いて多層プリント配線板の凹部に半導体チップを実装する実装方法
BBUL方法2)感光性フィルムを用いて多層プリント配線板の凹部に半導体チップを実装する実装方法
【0099】
BBUL方法1)は、具体的には下記の工程1)〜工程6)を含む。
工程1)多層プリント配線板の両面から導体層を除去し、レーザー、機械ドリルによって貫通孔を形成する。
工程2)貫通孔が形成された多層プリント配線板の片面に粘着テープを貼り付けて、貫通孔の中に半導体チップの底面を粘着テープ上に固定するように配置する。このときの半導体チップは貫通孔の高さより低くなるように配置することが好ましい。
工程3)貫通孔と半導体チップとの隙間にアンダーフィル剤を注入、充填することによって、半導体チップを貫通孔に固定する。
工程4)その後粘着テープを剥がして、半導体チップの底面を露出させる。
工程5)半導体チップの底面側に本発明の感光性フィルムをラミネートし、半導体チップを被覆する。
工程6)感光性フィルムを硬化後、レーザーによって穴あけし、半導体チップの底面にあるボンディングパッドを露出させ、既に説明した粗化処理、無電解メッキ、電解メッキを行うことで、配線と接続する。必要に応じて更に感光性フィルムを積層してもよい。
【0100】
BBUL方法2)は、具体的には下記の工程1)〜工程6)を含む。
工程1)多層プリント配線板の両面の導体層上に、フォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー工法でフォトレジスト膜の片面のみに開口部を形成する。
工程2)開口部に露出した導体層をエッチング液により除去し、絶縁層を露出させ、その後両面のレジスト膜を除去する。
工程3)レーザーやドリルを用いて、露出した絶縁層を全て除去して穴あけを行い、凹部を形成する。レーザーのエネルギーは、銅のレーザー吸収率を低くし、絶縁層のレーザー吸収率を高くするようにエネルギーが調整できるレーザーが好ましく、炭酸ガスレーザーがより好ましい。このようなレーザーを用いることで、レーザーは導体層の開口部の対面の導体層を貫通することがなく、絶縁層のみを除去することが可能となる。
工程4)半導体チップの底面を開口部側に向けて凹部に配置し、本発明の感光性フィルムを開口部の側から、ラミネートし、半導体チップを被覆して、半導体チップと凹部との隙間を埋め込む。このときの半導体チップは凹部の高さより低くなるように配置することが好ましい。
工程5)感光性フィルムを硬化後、レーザーによって穴あけし、半導体チップの底面のボンディングパッドを露出させる。
工程6)既に説明した粗化処理、無電解メッキ、電解メッキを行うことで、配線を接続し、必要に応じて更に感光性フィルムを積層する。
【0101】
半導体チップの実装方法の中でも、半導体装置の小型化、伝送損失の軽減という観点や、半田を使用しないため半導体チップにその熱履歴が掛からず、さらに半田と樹脂とのひずみを将来的に生じ得ないという観点から、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法が好ましく、BBUL方法1)、BBUL方法2)がより好ましく、BBUL方法2)が更に好ましい。
【実施例】
【0102】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例の説明において、「部」は「質量部」を意味する。
【0103】
まず、本明細書での物性評価における測定方法及び評価方法について説明する。
【0104】
<評価用積層体の形成>
厚さ18μmの銅層をパターニングした回路が形成されているガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック(株)製)による処理にて粗化を施した。次に後述する実施例、比較例により得られた支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層が銅回路表面と接するように配置し、真空ラミネーター(ニチゴーモートン株式会社製、VP160)を用いて積層し、前記銅張積層板と、前記樹脂組成物層と、前記支持体とがこの順に積層された積層体を形成した。圧着条件は、真空引きの時間20秒間、圧着温度70℃、圧着圧力0.2MPa、加圧時間20秒間とした。該積層体を室温1時間以上静置し、該積層体の支持体上から、丸穴パターンを用い、直径80μmの丸穴が形成できるよう、パターン形成装置を用いて、450mJ/cm
2の紫外線で露光を行った。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。該積層板上の樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaにて最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像した。スプレー現像後、1J/cm
2の紫外線照射を行い、さらに165℃、60分間の加熱処理(実施例4では更に190℃、30分間の加熱処理)を行い、直径80μmの開口部を有する絶縁層を該積層体上に形成した。これを評価用積層体とした。
【0105】
<評価用硬化物の形成>
実施例、比較例で得られた支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層に450mJ/cm
2の紫外線で露光を行い光硬化させた。その後、樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaにて最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像した。スプレー現像後、1J/cm
2の紫外線照射を行い、さらに165℃、60分間の加熱処理(実施例4では更に190℃、30分間の加熱処理)を行い、絶縁層形成した。その後、支持体を剥がし取って、評価用硬化物とした。
【0106】
<解像性の評価>
解像性の評価として、評価用積層体に対してパターニング形成した丸穴をSEMで観察(倍率1000倍)し、下記基準で評価した。
○:丸穴の形状が良好で、捲くれや剥がれがない。
×:丸穴の形状が現像により広がってしまい、捲くれや剥がれがある。
なお、比較例3では、すぐに不溶化してしまい、そもそも丸穴の形成が不可能であったため、「×」と評価した。
【0107】
<現像性の評価>
現像性の評価として、評価用積層体に形成された丸穴の底部の残渣をSEMにて観察(倍率1000倍)し、丸穴の底部の残渣の有無を下記基準で評価した。
○:直径80μmの丸穴から露出した基板上(底部)に現像残渣はなく、現像残渣除去性に優れている
×:直径80μmの丸穴から露出した基板上(底部)に現像残渣があり、現像残渣除去性が劣っている
なお、比較例3では、すぐに不溶化してしまい、そもそも丸穴の形成が不可能であったため、「×」と評価した。
【0108】
<誘電正接の測定>
評価用硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価サンプル1とした。この評価サンプル1についてアジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製HP8362B装置を用い空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。2本の評価サンプル1について測定を行い、平均値を算出した。
【0109】
<耐水性の測定>
評価用硬化物を5cm四方に切り出して評価サンプル2とした。続いて、評価サンプル2の質量を測定し、質量測定後の評価サンプル2を沸騰状態の純水に入れ、評価サンプル2が全てつかるようにした状態で1時間放置した。その後、評価サンプル2を取り出し、表面の水分を十分ふき取り、吸水後の質量を0.1mgまで量り、下記式により耐水性WA(%)を求めた。4つの評価サンプル2について測定を行い、平均値を算出した。
【0110】
式:WA=((W1−W0)/W0)×100
上記式中、W0は吸水前の評価サンプルの質量(g)を表し、W1は吸水後の評価サンプルの質量(g)を表す。
【0111】
<耐熱性の評価>
評価用硬化物を、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、評価サンプル3とした。続いて、熱機械分析装置TMA-SS6100(セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。評価サンプル3を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。耐熱性の指標として、2回目の測定における寸法変化シグナルの傾きが変化する点からガラス転移点温度(℃)を算出した。
【0112】
<実施例1〜4、比較例1〜3>
表1に示す配合割合で各成分を配合し、3本ロールを用いて混錬し、樹脂ワニスを調整した。次に、かかる樹脂ワニスを厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(R310−16B、三菱樹脂株式会社製、商品名)上にダイコーターにて均一に塗布、乾燥し、厚さ20μmの樹脂組成物層が形成された支持体付き感光性フィルムを得た。乾燥は熱風対流式乾燥機を用いて60℃で30分間乾燥させた。これらの測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0113】
また、評価用積層体に形成された現像後の丸穴の写真図を表2に示す。実施例1では良好な形状を有し、捲くれや剥がれが無く、現像残渣も無く、解像性及び現像性に優れることが分かる。比較例1では捲くれや剥がれが有り、現像残渣も有り、解像性及び現像性に劣ることが分かる。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
使用した材料は下記の通りである。
(A)成分
・HPC8000−65T(DIC(株)製):ジシクロペンタジエニルジフェノール型活性エステル系硬化剤、固形分65%のトルエン溶液
・EXB9416−70BK(DIC(株)製):ナフタレン骨格含有活性エステル系硬化剤、固形分70%のメチルイソブチルケトン溶液
(B)成分
・ZFR−1533H(日本化薬(株)製):ビスフェノールF型エポキシアクリレート、固形分68%のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート溶液、酸価70mgKOH/g
・ZAR−2000(日本化薬(株)製):ビスフェノールA型エポキシアクリレート、固形分65%のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート溶液、酸価99mgKOH/g
・PR−3000(昭和電工(株)製):クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、固形分68%のソルベントナフサとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとの1:1溶液、酸価50mgKOH/g
(C)成分
・イルガキュア907(BASFジャパン(株)製):2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]モルホリノ−1−プロパノン
(D)成分
・HP−7200H(DIC(株)製):ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量280
(E)成分
・DICY7(三菱化学(株)製):ジシアンジアミド
(F)成分
・球状溶融シリカ((株)アドマテックス製「SC2050」、平均粒径0.5μm)100質量部に対してアミノシラン(信越化学社製「KBM573」)0.5質量部で表面処理したもの
(G)成分
・AC3816N(ガンツ化成(株)製):ゴム粒子
(H)成分
・DCPA(共栄社化学工業(株)製):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
(J)成分
・EDGAc(エチルジグリコールアセテート)
・MEK(メチルエチルケトン)
(K)その他の添加剤
・メラミン(日産化学工業(株)製)
・FG7351(東洋インキ製造(株)製):フタロシアニンブルー
・DETX−S(日本化薬(株)製):2、4−ジエチルチオキサントン
・TD2090−60M(DIC(株)製):フェノールノボラック樹脂、固形分60%のMEK溶液
・LA7054−60M(DIC(株)製):トリアジン含有フェノールノボラック樹脂、固形分60%のMEK溶液
・PT30−85I(ロンザジャパン(株)製):フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂、固形分85%のイプゾール溶液
【0117】
上記表1の結果から、本発明の感光性樹脂組成物を用いた実施例では解像性、現像性を有し、誘電正接が低く、かつ耐水性が高い感光性樹脂組成物を提供できることがわかった。一方、比較例1、2では、熱硬化成分として(A)成分ではなくフェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤を用いているため、現像性及び解像性が悪く、感光性樹脂組成物として使用できるものではなかった。また、比較例3では、直ぐに不溶化してしまい、そもそも丸穴の形成自体が不可能であり、感光性樹脂組成物として使用できるものではなかった。