特許第6094285号(P6094285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6094285-吸収体用基材 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094285
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】吸収体用基材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20170306BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20170306BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20170306BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20170306BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20170306BHJP
   A61L 15/46 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   A61F13/15 141
   A61F13/511 200
   A61F13/511 300
   A61F13/514 100
   A61F13/514 120
   A61F13/53 300
   A61L15/18 200
   A61L15/46 200
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-52362(P2013-52362)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-176510(P2014-176510A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝人
(72)【発明者】
【氏名】三上 英一
(72)【発明者】
【氏名】伏見 速雄
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−263858(JP,A)
【文献】 特開2010−154928(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/044169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性表面シートと、液不透過性裏面シートと、これら両シートの間に配置された吸収シートとを構成要素とする吸収体用基材において、
少なくとも1つの構成要素が、セルロース繊維に消臭機能を有する無機化合物粒子が添加されたセルロース繊維シートであり、
前記セルロース繊維シートの比表面積(前記比表面積は窒素吸着法により測定)が、10m/g以上であることを特徴とする吸収体用基材。
【請求項2】
前記セルロース繊維シートの平均孔径が1〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の吸収体用基材。
【請求項3】
前記セルロース繊維は、平均繊維径が1〜1000nmのセルロース微細繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の吸収体用基材。
【請求項4】
前記セルロース繊維シートに含まれるセルロース繊維と無機化合物粒子の比率が、10000:1〜1:1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収体用基材。
【請求項5】
前記無機化合物粒子の平均粒子径が1〜2000nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収体用基材。
【請求項6】
前記無機化合物粒子が、金属にシリカが結合した粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収体用基材。
【請求項7】
前記無機化合物粒子が、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、金、白金、銀、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウム、ゼオライトから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収体用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ等の衛生用品に用いられる吸収体の基材(吸収体用基材)に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収体用基材は、紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等に排泄物等に含まれる水分を吸収する吸収体の基材として使用されている。しかし、紙おむつ等の衛生用品使用時に排泄物に含まれる例えば、尿、便などの有害成分や微生物の作用により発生する悪臭が問題となっている。従って、吸収体用基材に例えば、消臭、抗菌等の効果のある機能性成分を含有させ、吸収体用基材にこれらの機能を付加させることができれば上記問題を解決することが可能であると考えられる。又、吸収体用基材に含有させる成分は人体の皮膚に接触する可能性があるため、安全性の高いものが望まれている。
吸収体用基材に機能を付加した例として、グレープフルーツ種子等の抗菌成分を含有した吸収剤組成物(特許文献1)、針葉樹木から抽出された消臭成分を含有した吸収体(特許文献2)等が報告されている。しかし、これらの吸収体用基材には、抗菌剤や消臭剤などの化学物質を使用しており、充分な効果を得るためには、吸収体に大量の化学物質を含有させる必要があり、コストの上昇が懸念される。化学物質の含有量が低くても効果を発揮する吸収体用基材の開発が望まれている。
もし、吸収体の基材の物性を変えることにより機能性物質の効果が発揮され易い状態にすることができれば、さらに効果を増大させることができる。また、添加する機能性物質の添加量を低減できるため、製造コストを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−208787号公報
【特許文献2】特開平11−241030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、おむつ等の衛生用品使用時に発生する悪臭に対して優れた吸着効果を有する吸収体用基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明を含有する。
(1)液透過性表面シートと、液不透過性裏面シートと、これら両シートの間に配置された吸収シートとを構成要素とする吸収体用基材において、少なくとも1つの構成要素の比表面積(前記比表面積は窒素吸着法により測定)が、10m/g以上であることを特徴とする吸収体用基材。
【0006】
(2)前記吸収性素材の構成要素の平均孔径が1〜1000nmであることを特徴とする(1)に記載の吸収体用基材。
【0007】
(3)前記吸収性素材の構成要素がセルロース繊維を含有することを特徴とする(1)項または(2)に記載の吸収体用基材。
【0008】
(4)前記セルロース繊維は、平均繊維径が1〜1000nmのセルロース微細繊維であることを特徴とする(3)項に記載の吸収体用基材。
【0009】
(5)前記吸収性素材の構成要素がセルロース繊維以外に無機化合物粒子を含有することを特徴とする(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の吸収体用基材。
【0010】
(6)前記セルロース繊維と無機化合物粒子を含有するシートに含まれるセルロース繊維と無機化合物粒子の比率が、10000:1〜1:1であることを特徴とする(5)項に記載の吸収体用基材。
【0011】
(7)前記無機化合物粒子の平均粒子径が1〜2000nmであることを特徴とする(5)項または(6)項に記載の吸収体用基材。
【0012】
(8)前記無機化合物粒子が、金属にシリカが結合した粒子であることを特徴とする(5)項〜(7)項のいずれか1項に記載の吸収体用基材。
【0013】
(9)前記無機化合物粒子が、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、金、白金、銀、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウム、ゼオライトから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする(5)項〜(7)項のいずれか1項に記載の吸収体用基材。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸収体用基材は、おむつ等の衛生用品使用時に発生する悪臭に対して優れた吸着効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の吸収体用基材の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
図1に示すように、本発明の吸収体用基材10は、液透過性表面シート11、液不透過性裏面シート12、及び吸収シート13の構成要素から構成される。吸収シート13は、液透過性表面シート11と液不透過性裏面シート12の中間に挟み込まれた構造を有する。
本発明では、液透過性表面シート11、液不透過性裏面シート12、及び吸収シート13のうちの少なくとも1つの構成要素が下記の物性を有する。
【0017】
[比表面積]
前記吸収体用基材の構成要素の比表面積(窒素ガス吸着法で測定)は、10m/g以上であり、30〜200m/gであることが好ましく、50〜200m/gであることがより好ましい。比表面積を前記範囲にすることにより、吸収体用基材の構成要素に無機化合物粒子を添加する場合、添加した無機化合物粒子がセルロース繊維に吸着する面積が大きくなるため、少量の無機化合物粒子の添加でも悪臭物質に対する効果が発揮される。
【0018】
[密度]
前記吸収体用基材の構成要素の密度は、0.3〜1.0g/cmが好ましく、0.3〜0.9g/cmがさらに好ましい。前記構成要素の密度を調節する方法は特に限定されるものではないが、各構成要素(シート)を抄紙する際に、有機溶剤の添加量を調節することにより密度を制御することができる。本発明の密度はJIS P8118:1998に準じて測定する。
【0019】
用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール系化合物、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルなどのグライム類;1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。水への溶解性に優れ、沸点と表面張力と分子量のバランスが良いエチレングリコール系化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルが、多孔性が得られやすいため特に好ましい。これらの有機溶媒は2種以上併用することもできる。
【0020】
[平均孔径、空孔率]
前記吸収性素材の構成要素の平均孔径は、1〜1000nmであることが好ましい。平均孔径が前記下限値以上であれば、吸着効果をより高くできる。
前記吸収体用基材の構成要素の空孔率は、30〜80%が好ましく、40〜80%がさらに好ましい。本発明の空孔率は、JIS P8118に準じてシートの密度を測定し、その値から計算によって求める。
【0021】
[坪量]
本発明の吸収体用基材を構成する構成要素の坪量は、5〜100g/mが好ましく、10〜80g/mがさらに好ましい。坪量が5g/m未満ではシート剛度が小さいためハンドリング性が悪く、また厚さが薄いためシートとしての引張破断強度が小さく、加工の際に紙切れを起こしやすい。一方、100g/mを超えると抄紙の際に濾水時間がかかるため、生産性の面で不適切である。本発明の坪量はJIS P8124:1998に準じて測定する。
【0022】
本発明の吸収体用基材は、リグノセルロースを含有する。リグノセルロース原料としては、特に限定するものではないが、例えば、木本性植物(針葉樹、広葉樹)、草本性植物を用いるのが好ましい。木本性植物をクラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法などで蒸解した化学パルプ、レファイナー、グラインダーなどの機械処理によってパルプ化した機械パルプ、薬品による前処理の後、機械処理でパルプ化したセミケミカルパルプ、或いは古紙パルプなどを例示でき、それぞれ未晒(漂白前)もしくは晒(漂白後)の状態で使用することができる。また、非木材パルプとしては、例えば綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフなどを木材パルプと同様の方法でパルプ化した繊維が挙げられる。
【0023】
(セルロース繊維)
セルロース繊維は上記リグノセルロースを含有する原料を公知公用の方法で微細化して得ることが可能である。例えば、植物繊維含有原料をグラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナーなどの機械的作用を利用する湿式粉砕でセルロース系繊維を細くする方法などが挙げられる。また、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル)触媒酸化、オゾン処理、酵素処理などの化学処理を施してから微細化する方法もある。勿論、木材を微粉砕後、脱リグニンなどの処理を行って得ることも可能である。一般的に、上記の方法で0.01〜20質量%程度のセルロース繊維懸濁液が得られる。
【0024】
本発明の吸収体用基材には、セルロース繊維を含有させることもでき、微細セルロース繊維を含有させることもできる。微細セルロース繊維を含有させる場合は、平均繊維径が1000nm以下のセルロース微細繊維を含有させる。吸収体用基材に含有させるセルロース微細繊維の繊維径は、1〜1000nmが好ましく、20〜500nmがさらに好ましい。吸収体用基材を構成要素(シート)の全質量に対して、1〜1000nmのセルロース微細繊維を1〜50質量%含有させることが好ましく、20〜500nmのセルロース微細繊維を構成要素の全質量に対して1〜50質量%含有させることがさらに好ましい。繊維径が1000nmを超えると繊維間の空隙を埋めることが困難になり、繊維間の水素結合を補強する効果が小さくなるため好ましくない。
本発明のセルロース微細繊維の繊維径は走査型または透過型電子顕微鏡で観察した際に測定したものである。セルロース微細繊維は幅に分布があるため、2000〜100000倍の間に、顕微鏡の倍率を変え、測定回数を増やして測定し、繊維径を特定する。
【0025】
セルロース繊維の長さは特に限定するものではないが、叩解時のフィブリル化と同時に生じる他の現象として、パルプ繊維の切断という短繊維化現象が発生し、紙力強度の低下を引き起こすことも考えられるため、長さは幅の10倍以上が好ましく、50倍以上がさらに好ましく、100倍以上が最も好ましい。そのようにするためには、例えば、繊維長の長い針葉樹パルプを選ぶことが有効である。
繊維の長さも繊維径と同様に走査または透過型電子顕微鏡で、視野に入るように倍率を変えて観察し、測定する。
【0026】
セルロース繊維を配合したパルプスラリーは、通常の抄紙で用いられる長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機、さらに手抄き等公知の抄紙方法で抄紙されシート化が可能である。
【0027】
上記一般紙用パルプとセルロース繊維以外に、本発明の吸収体用基材は他の紙と同様に填料、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤などの化学添加剤をセルロース繊維含有パルプスラリーに適宜添加する。
【0028】
本発明の吸収体用基材を構成する構成要素には、無機化合物粒子を添加することができる。前記無機化合物粒子はナノ粒子(粒子径1〜2000nm)であることが、無機化合物粒子が有する効果が高まるため好ましい。無機化合物粒子のナノ粒子としては、粒子径が2nm〜300nmであることが好ましく、4nm〜200nmがさらに好ましく、6nm〜100nmが特に好ましい。ここで、上記ナノ粒子の粒子径は動的光散乱法による一次粒子の平均粒子径あるいは透過型電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径である。無機化合物粒子の添加方法は特に限定されない。
【0029】
本発明において用いられる無機化合物粒子としては、抗菌、消臭等の機能性を有する無機化合物粒子が挙げられる。具体的には、二酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe)、酸化イットリウム(Y)、酸化インジウム(InO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO)、二酸化セリウム(CeO)、四酸化三マンガン(Mn)、五酸化ニオブ(Nb)、炭化珪素(SiC)、炭化ホウ素(BC)、窒化アルミニウム(AlN)、ホウ化チタン(TiB)等が挙げられる。
また、金属のナノ粒子も本発明の無機化合物のナノ粒子として使用可能である。具体例としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、白金、ルテニウム、亜鉛、パナジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムなどが挙げられる。
また、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、シリカに前記無機化合物粒子が結合したナノプラチナーシリカ粒子等や、前記無機化合物粒子を含有する市販の抗菌剤や消臭剤等も特に制限なく用いることができる。
【0030】
セルロース繊維と無機化合物粒子の混合比率は10000:1〜1:1が好ましく、10000:1〜5:1がさらに好ましく、10000:1〜10:1が特に好ましい。
【0031】
前記吸収体用基材を構成する液透過性表面シート、液不透過性裏面シート、及び吸収シートから構成される構成要素のうちの少なくとも1つの構成要素の物性を前記範囲にすることにより、吸収体用基材が、悪臭に対して優れた吸着効果を有する。悪臭物質としては、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、ノネナール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の吸収体用基材を衛生用品(おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等)に用いられる吸収体の基材として用いることにより、尿、便中に含まれる悪臭物質の低減が可能となる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、例中の部、及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0034】
<実施例1>
針葉樹晒クラフトパルプ(王子ホールディングス社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)は550ml)を濃度4.0%になるように水を加え、ディスインテグレーターで離解して、パルプ分散液を得た。このパルプ分散液を長径250mmのグラインダー部を有する増幸産業社製のマスコロイダーを用いて、処理回数3回で解繊処理を行って微細化した。得られた解繊液の上澄み濃度は3.25%であった。また、上澄み中の微細繊維の幅は60〜700nmの範囲にあり、平均繊維幅は140nmであった。
上記解繊液の上澄みの濃度が約3%になるように水を加えて希釈し、ホモミキサーで攪拌してセルロース微細繊維分散液を得た。このセルロース微細繊維分散液の固形分濃度を測定したところ、3.0%であった。
ナノプラチナ−シリカ粒子((株)エブリウェアー製、PN−100SP)をセルロース微細繊維分散液の固形分100重部に対し1部となるように添加した。
以上の操作で調製したセルロース微細繊維とナノプラチナ−シリカ粒子を含有する分散液を508ナイロンメッシュシート上で厚さが均一になるようにアプリケータ(クリアランス1mm)で表面を均し、さらに下部より吸引脱水した後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME、東邦化学社製、商品名:「ハイソルブMDM」、分子量134、沸点162℃、表面張力28N/m)を湿紙状態のシートの固形分100部に対して1200部を添加した。下部より吸引後、105℃に加熱したシリンダドライヤで0.2MPaに加圧しながら乾燥させた。以上の操作で無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シートを得た。
下記の液透過性表面シート、吸収シート、液不透過性裏面シートを用いて、吸収シートを液透過性表面シートと液不透過性裏面シートの中間に挿入した。次に、液透過性表面シートと液不透過性裏面シートを貼り付け、吸収シートが液透過性表面シートと液不透過性裏面シートとの間に包み込み、吸収体用基材を作製した。
【0035】
(液透過性表面シート)
液透過性表面シートとしては、無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シートを用いた。
(吸収シート)
綿状パルプ150g/m、ポリアクリル酸ナトリウム(高吸収性ポリマー)135g/m、熱融着性繊維(ポリエステル/ポリエチレン)15g/m、を均一に分布させたものを不織布で包み込み、表面温度150℃の熱プレスロールにて吸収体全体の緊度が0.10g/cmとなるように調製し、吸収シートを得た。
(液不透過性裏面シート)
液不透過性裏面シートとしては、不織布を用いた。
【0036】
<臭い評価試験>
前記で作製した吸水性物品をポリフッ化ビニル製バッグ)3Lに入れ、密封後、ポリフッ化ビニル製バッグ内に1mlのアンモニアガスを注入し、ポリフッ化ビニル製バッグを密閉し60分間静置した。10人の被験者が各々ポリフッ化ビニル製バッグ内の臭い下記の5段階評価で判定した。10名の評価結果の平均値を表1に示す。
[臭い評価法]
1:無臭である。
2:何の臭いかわからないが、ややかすかに何かを感じる強さである。
3:何の臭いであるかわかる弱い臭いである。
4:明らかに感じる臭いである。
5:強い臭いである。
【0037】
<実施例2>
実施例1において、ジエチレングリコールジメチルエーテルを湿紙状態のシートの固形分100部に対して600部を添加した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表1に示す。
【0038】
<実施例3>
実施例1において、ジエチレングリコールジメチルエーテルを湿紙状態のシートの固形分100部に対して300部を添加した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表1に示す。
【0039】
<実施例4>
実施例1において、マスコロイダーの処理回数を1回にした以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表1に示す。
【0040】
<比較例1>
針葉樹晒クラフトパルプ(王子ホールディングス社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)は550ml)を濃度4.0%になるように水を加え、ディスインテグレーターで離解して、パルプ分散液を得た。この分散液の濃度が約0.2%になるように水を加えて希釈し、ホモミキサーで攪拌して微細繊維分散液を得た。この分散液の固形分濃度を測定したところ、0.2%であった。
ナノプラチナ−シリカ粒子((株)エブリウェアー製、PN−100SP)を分散液の固形分100部に対し1部となるように添加した。
このように調製した分散液を508ナイロンメッシュシート上に展開し、下部より吸引脱水した後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME、東邦化学社製、商品名:「ハイソルブMDM」、分子量134、沸点162℃、表面張力28N/m)を湿紙状態のシートの固形分100部に対して1200部を添加した。下部より吸引後、105℃に加熱したシリンダドライヤで0.2MPaに加圧しながら乾燥させた。以上の操作で、無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シートを得た。得られたシートを用いて、実施例1と同様の方法で吸収体用基材を作製し、臭いの評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、吸収体用基材の液透過性表面シートとして、ナノプラチナ−シリカ粒子を含有するセルロース微細繊維シートを用いた試験において、セルロースシートに含まれるセルロース微細繊維の比表面積が大きい程、アンモニア吸着効果が高かった。
【0043】
<実施例5>
実施例1の<吸収シート>において、「綿状パルプ」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、実施例1の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0044】
<実施例6>
実施例2の<吸収シート>において、「綿状パルプ」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、実施例2の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て実施例2と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0045】
<実施例7>
実施例3の<吸収シート>において、「綿状パルプ」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、実施例3の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て実施例3と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0046】
<実施例8>
実施例4の<吸収シート>において、「綿状パルプ」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、実施例4の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て実施例4と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0047】
<比較例2>
比較例1の<吸収シート>において、「綿状パルプ」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、比較例1の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て比較例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すように、吸収体用基材の吸収シートとして、ナノプラチナ−シリカ粒子を含有する。セルロース微細繊維シートを用いた試験において、セルロースシートに含まれるセルロース微細繊維の比表面積が大きい程、アンモニア吸着効果が高かった。
【0050】
<実施例9>
実施例1の<液不透過性裏面シート>において、「不織布」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、実施例1の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
【0051】
<実施例10>
実施例2の<液不透過性裏面シート>において、「不織布」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、実施例2の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て実施例2と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
【0052】
<実施例11>
実施例3の<液不透過性裏面シート>において、「不織布」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、実施例3の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て実施例3と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
【0053】
<実施例12>
実施例4の<液不透過性裏面シート>において、「不織布」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、実施例4の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て実施例4と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
【0054】
<比較例3>
比較例1の<液不透過性裏面シート>において、「不織布」の代わりに「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」を用いた。また、比較例1の<液透過性表面シート>において、「無機化合物粒子を含むセルロース微細繊維シート」の代わりに「不織布」を用いた。それ以外の操作は全て比較例1と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示すように、吸収体用基材の液不透過性裏面シートとして、ナノプラチナ−シリカ粒子を含有するセルロース微細繊維シートを用いた試験において、セルロースシートに含まれるセルロース微細繊維の比表面積が大きい程、アンモニア吸着効果が高かった。
【0057】
<実施例13>
実施例1において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0058】
<実施例14>
実施例2において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て実施例2と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0059】
<実施例15>
実施例3において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て実施例3と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0060】
<実施例16>
実施例4において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て実施例4と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0061】
<比較例4>
比較例1において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て比較例1と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4に示すように、セルロース微細繊維を含有するシートに無機化合物粒子として銀を添加した試験において、セルロースシートに含まれるセルロース微細繊維の比表面積が大きい程、アンモニア吸着効果が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、悪臭物質に対して吸着効果の高い吸収体用基材が得られる。
【符号の説明】
【0065】
10 吸収体用基材
11 液透過性表面シート
12 液不透過性裏面シート
13 吸収シート
図1