(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射線の作用によりエッチング液に対するエッチング耐性が変化する第1成分、及びエッチング液に不溶又は難溶の第2成分を含有する自己組織化組成物で塗膜を形成する工程と、
上記塗膜を露光する工程と、
上記塗膜を、露光領域に形成される第1相、この露光領域に隣接する領域に形成されかつ第1成分を主構成成分とする第2相及びそれ以外の領域に形成されかつ第2成分を主構成成分とする第3相に相分離させる工程と、
第1相及び第2相のうち少なくとも1相をエッチング液を用いて除去する工程と
を有するパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、当該パターン形成方法の実施の形態について詳説する。
【0012】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、
放射線の作用により物性が変化する第1成分を含有する自己組織化組成物(以下、「自己組織化組成物(I)」ともいう)で塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう)と、
上記塗膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、
上記塗膜を露光領域に形成される第1相、この露光領域に隣接する領域に形成される第2相及びそれ以外の領域に形成される第3相に相分離させる工程(以下、「相分離工程」ともいう)と、
第1相、第2相及び第3相のうち少なくとも1相を除去する工程(以下、「除去工程」ともいう)と
を有する。
【0013】
当該パターン形成方法によれば、上記特定の自己組織化組成物(I)を用い、上記各工程を行うことで、プレパターンの形成を要しない簡便な操作で、自己組織化による微細なパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0014】
[塗膜形成工程]
本工程では、
図1の(A)に示すように、例えば基板11の上に、自己組織化組成物(I)で塗膜12を形成する。自己組織化組成物(I)は、放射線の作用により物性が変化する第1成分を含有し、後述する露光工程後の相分離工程において、自己組織化による相分離により、第1相、第2相及び第3相を形成することができる組成物である。自己組織化組成物(I)については、後述する。
【0015】
塗膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウエハ、アルミニウムで被覆されたウエハ等の従来公知の基板等が挙げられる。
【0016】
(下層膜)
上記塗膜は、基板の直上に形成してもよいが、基板上に下層膜を形成し、この下層膜上に塗膜を形成してもよい。下層膜上に塗膜を形成することで、相分離をより制御することができ、より所望のパターンを得ることができる。また、形成する塗膜が薄膜である場合には、塗膜を下層膜上に形成することで、後の基板への転写プロセスを改善することができる。
【0017】
上記下層膜を形成するための組成物としては、市販品として、例えばARC66(ブルワーサイエンス製)、NFC HM8005(JSR製)、NFC CT08(JSR製)等が挙げられる。
【0018】
上記下層膜の形成方法としては特に限定されないが、例えば、基板上に、スピンコート法等の公知の方法により上記組成物を塗布して形成された塗膜を、加熱等により硬化する方法などが挙げられる。上記塗膜の加熱温度としては、90℃〜550℃が好ましく、90℃〜450℃がより好ましく、90℃〜300℃がさらに好ましい。上記塗膜の加熱時間としては、5秒〜600秒が好ましく、10秒〜300秒がより好ましい。上記下層膜の膜厚としては、50nm〜20,000nmが好ましく、70nm〜1,000nmがより好ましい。また、上記下層膜は、SOC(Spin on carbon)膜を含んでいてもよい。
【0019】
自己組織化組成物(I)を基板上又は下層膜上に塗布して塗膜を形成する方法は特に限定されないが、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。形成される塗膜の膜厚としては、特に限定されないが、0.01μm〜1μmが好ましく、0.01μm〜0.5μmがより好ましい。
【0020】
自己組織化組成物(I)を塗布した後、必要に応じて、プレベーク(PB)により、塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PBの温度としては、自己組織化組成物(I)の配合組成によって適宜選択されるが、30℃〜200℃が好ましく、50℃〜150℃がより好ましい。PBの時間としては、5秒〜600秒が好ましく、20秒〜300秒がより好ましい。
【0021】
[露光工程]
本工程では、
図1の(B)に示すように、上記塗膜形成工程で形成した塗膜を露光光Aで露光する。この露光により、
図1の(C)に示すように、露光領域13aにおいて、自己組織化組成物(I)に含有されていた第1成分の物性が放射線の作用により変化し、未露光領域13bにおける物性とは異なるものとなる。
【0022】
上記露光に用いる放射線としては、特に限定されず、所望するパターン等に応じて適宜選択することができるが、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、極端紫外線、電子線が好ましい。遠紫外線の中では、ArFエキシマレーザー光(193nm)、KrFエキシマレーザー光(248nm)が好ましく、ArFエキシマレーザー光がより好ましい。
【0023】
上記露光は、例えば、フォトマスクを介して行うことができ、電子線等の描画装置などを用いて行うこともできる。また、水等の液浸媒体を介して液浸露光により行うこともできる。
【0024】
本工程における放射線の作用による第1成分の物性の変化が、例えば、第1成分が後述する感放射線性酸発生体と酸解離性基含有重合体との組合せである等の化学反応を伴う場合など必要な場合には、上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。PEBの条件としては、上記化学反応等により適宜選択される。PEBの温度としては、50℃〜180℃が好ましく、70℃〜150℃がより好ましく、75℃〜130℃がさらに好ましく、80℃〜100℃が特に好ましい。PEBの時間としては、5秒〜600秒が好ましく、10秒〜180秒がより好ましい。
【0025】
[相分離工程]
本工程では、上記露光工程で露光された塗膜を、露光領域に形成される第1相、この露光領域に隣接する領域に形成される第2相及びそれ以外の領域に形成される第3相に相分離させる。「相」とは、物性の異同により区別される領域をいう。この相分離により、上記露光領域13a及び未露光領域13bから、例えば、
図1の(D)に示すように、第1相14aと、第2相14bと、第3相14cとが形成される。本工程において、上記第1相〜第3相に加えて、その他の相が形成されてもよい。
【0026】
上記相分離により形成される第1相〜第3相の形態としては、上述の配置である限り特に限定されないが、例えば、
図2(b1)〜(b3)に示すそれぞれ等が挙げられる。すなわち、
図2の(b1)では、(a)で示す露光領域23aと未露光領域23bとから、露光領域に形成される第1相24aと、この露光領域に隣接する領域に形成される第2相24bと、それ以外の領域に形成される第3相24cとに相分離する。(b2)及び(b3)では、第2相及び第3相がそれぞれ、より多くの領域に分かれた相分離構造を形成する。
【0027】
当該パターン形成方法においては、露光工程において、放射線の作用により自己組織化組成物(I)の第1成分の物性が変化して、
図1の(C)に示すように、露光領域13aが形成される。そして、この露光領域13aの存在により、この相分離工程において、自己組織化による相分離が制御され、その結果、上述の配置の第1相〜第3相が形成され得る。従って、当該パターン形成方法によれば、従来の自己組織化によるパターン形成方法のようなプレパターンの形成が不要であり、簡便な操作により自己組織化による微細パターンの形成を行うことができる。
【0028】
相分離させる方法としては特に限定されないが、例えば、上記塗膜をアニーリングする方法等が挙げられる。
【0029】
アニーリングの方法としては、例えばオーブン、ホットプレート等を用いて加熱する方法などが挙げられる。アニーリングの温度としては、80℃〜400℃が好ましく、100℃〜350℃がより好ましい。アニーリングの時間としては、10秒〜30分が好ましく、30秒〜10分がより好ましい。
【0030】
上記アニーリングは、上記露光工程におけるPEBの加熱と別途行ってもよく、PEBと同時に行ってもよい。アニーリングとPEBとを同時に行う場合、PEBの温度とアニーリングの温度は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0031】
[除去工程]
本工程では、上記相分離工程で形成された第1相、第2相及び第3相の少なくとも1相を除去する。例えば、
図1の(E)に示すように第1相14aを除去した後、さらに(F)に示すように第3相14cを除去することにより、微細なパターンを形成させることができる。
【0032】
除去する相は、特に限定されず、所望するパターンの形状によって適宜選択される。例えば、上記相分離工程において
図3の(a)に示す第1相34aと第2相34bと第3相34cとが形成された場合、第1相34aと第3相34cとを除去することにより(b1)に示すパターンが、第2相34bを除去することにより(b2)に示すパターンが、第3相34cを除去することにより(b3)に示すパターンが、第1相34aと第2相34bとを除去することにより(b4)に示すパターンが得られる。
【0033】
これらの中で、除去する相としては第1相及び第3相が好ましい。これらの相を除去することで、より微細なパターンを得ることができる。また、第2相を除去することも好ましい。この相の除去によっても、より微細なパターンを得ることができる。
【0034】
相の除去方法としては、所望の相を除去する方法であれば特に限定されないが、液体、気体等の各種エッチャントを用いる方法等が挙げられ、例えば、化学的エッチング、物理的エッチング等が挙げられる。
【0035】
上記化学的エッチングとしては、エッチャントとして、例えば、エッチング液を用いるエッチング(ケミカルウェットエッチング(湿式現像))等が挙げられる。
【0036】
上記エッチング液としては、例えば、酸、アルカリ水溶液、有機溶媒等が挙げられる。
上記酸としては、例えば、フッ化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
上記アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0037】
上記物理的エッチングとしては、例えば、エッチャントとして、CF
4、O
2ガス等を用いるケミカルドライエッチング等の反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、イオンビームエッチング等が挙げられる。
【0038】
[パターン形成工程]
本工程は、上記除去工程後、残存した相からなるパターンをマスクとして、基板をエッチングすることによりパターニングする工程である。基板へのパターニングが完了した後、マスクとして使用された相は溶解処理等により基板上から除去され、最終的にパターニングされた基板(パターン)を得ることができる。上記エッチングの方法としては、例えば、上記除去工程と同様の方法を用いることができる。この場合、エッチャントは、下層膜及び基板の材質により適宜選択することができる。例えば、基板がシリコン素材である場合には、フロン系ガスとSF
4の混合ガス等を用いることができる。また、基板が金属膜である場合には、BCl
3とCl
2の混合ガス等を用いることができる。当該パターン形成方法により得られるパターンは半導体素子等に好適に用いられ、さらに上記半導体素子はLED、太陽電池等に広く用いられる。
【0039】
次に、当該パターン形成方法で用いられる自己組織化組成物(I)について説明する。
【0040】
<自己組織化組成物(I)>
自己組織化Directed Self Assembly)とは、外的要因からの制御のみに起因せず、自発的に組織や構造を構築する現象を指す。自己組織化組成物(I)から形成された塗膜から、自己組織化により相分離して複数の相が形成され、この複数の相の一部の相を除去することにより、パターンを形成することができる。
【0041】
自己組織化組成物(I)は、放射線の作用により物性が変化する第1成分を含有する。上記放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。また、上述の物性は、除去工程における除去方法に対応する。上記放射線の作用により変化する物性としては、好ましくはエッチャントに対するエッチング耐性であり、例えば、除去工程における除去方法がエッチング液を用いる方法である場合には、この物性は上記エッチング液に対する溶解度であり、除去方法がドライエッチングによる方法である場合には、この物性はドライエッチングの速度である。
【0042】
自己組織化組成物(I)は、上記第1成分を含有し、上記相分離工程において上記第1相〜第3相を形成できる限り特に限定されず、第1成分と異なる第2成分を有していてもよく、また、これらの成分以外のその他の成分を含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
【0043】
[第1成分]
第1成分は、放射線の作用により物性が変化する物質である。第1成分としては、上記性質を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、放射線が直接作用して物性が変化する物質、放射線の作用により媒介物質を発生する物質とこの媒介物質の作用により物性が変化する物質との組合せ等が挙げられる。放射線が直接作用して物性が変化する物質としては、例えば、放射線の作用により主鎖が開裂する重合体等が挙げられる。放射線の作用により媒介物質を発生する物質とこの媒介物質の作用により物性が変化する物質との組合せとしては、例えば、放射線の作用により媒介物質である酸を発生する物質としての感放射線性酸発生体と、この媒介物質の作用により物性が変化する物質としての酸解離性基を有する重合体との組合せ等が挙げられる。「酸解離性基」とは、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基等が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。
【0044】
上記放射線の作用により主鎖が開裂する重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0045】
上記感放射線性酸発生体と酸解離性基を有する重合体との組合せのうち、上記感放射線性酸発生体としては、放射線分解性オニウムカチオンとスルホネートアニオンとからなる酸発生体等が挙げられ、例えば、下記式(1)で表される化合物からなる酸発生剤等が挙げられる。
【0047】
上記式(1)中、R
1は、炭素数1〜30の1価の有機基である。R
2は、炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基である。X
+は、1価の放射線分解性オニウムカチオンである。
【0048】
「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。R
1で表される炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜30の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−等のヘテロ原子含有基を含む基、これらの基が有する水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基等の置換基で置換した基などが挙げられる。R
2で表される炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基等の炭素数1〜10のアルカンジイル基が有する水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換した基などが挙げられる。
【0049】
上記酸解離性基を有する重合体は、酸解離性基を主鎖、側鎖及び末端のいずれに有していてもよい。上記酸解離性基を有する重合体としては、例えば、下記式(2)で表される構造単位を有する重合体等が挙げられる。
【0051】
上記式(2)中、R
3は、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R
4及びR
5は、それぞれ独立して炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造を表す。R
6は、−CO−、−SO
2−又は置換若しくは非置換の炭素数6〜18のアレーンジイル基である。R
7は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0052】
上記酸解離性基を有する重合体は、上記酸解離性基を含む構造単位以外にも、放射線の作用による物性の変化を適度なものにするため、例えば、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位、ヒドロキシ基等の極性基を含む構造単位等を有していてもよい。
【0053】
第1成分が上記感放射線性酸発生体と酸解離性基を有する重合体との組合せの場合、上記露光工程における露光領域を精度よく形成する観点から、自己組織化組成物(I)は、酸拡散制御体等を含有してもよい。
【0054】
(第2成分)
自己組織化組成物(I)は、上記第1成分以外に、第2成分をさらに含有することが好ましい。自己組織化組成物(I)が第1成分に加えて第2成分をさらに含有することで、上記露光工程後の上記塗膜には、放射線の作用により物性が変化した第1成分、放射線の作用を受けていない第1成分及び第2成分の3成分が含まれるので、第1相、第2相及び第3相からなる3つの相を形成し易くなる。
【0055】
第2成分としては特に限定されないが、上記第1成分における放射線の作用により変化する物性がエッチング耐性である場合、エッチャントに対するエッチング耐性が第1成分より高い物質であることが好ましく、上記物性がエッチング液に対する溶解度である場合、エッチング液に不溶又は難溶の物質であることが好ましい。第2成分が上記性質を有することで、上記第1成分との組合せにより、種々のパターンを形成し易くなる。
【0056】
エッチング液がアルカリ水溶液の場合、エッチング液に不溶又は難溶の第2成分としては、例えば、アルカリ不溶性重合体等が挙げられる。上記アルカリ不溶性重合体としては、例えば、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0057】
上記ポリシロキサンとしては、例えば、加水分解性シラン化合物を含む化合物の加水分解縮合物等が挙げられる。
【0058】
上記加水分解性シラン化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【0060】
上記式(3)中、R
8は、炭素数1〜30の1価の有機基である。R
9は、塩素原子又は−OR
10である。R
10は、水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアシル基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜15のアリール基である。aは、0〜3の整数である。R
8及びR
9がそれぞれ複数の場合、複数のR
8及びR
9はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0061】
上記R
8で表される炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば、上記R
1として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0062】
上記−OR
10におけるR
10で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる
【0063】
上記R
10で表される炭素数1〜6のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
【0064】
上記R
10で表される炭素数6〜15のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0065】
上記R
10で表されるアルキル基、アシル基及びアリール基が有してもよい置換基としては、例えば、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、フッ素原子、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0066】
上記R
9としては、−OR
10で表される1価の基であることが好ましく、R
10が炭素数1〜6のアルキル基であるアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
【0067】
上記式(3)で表される加水分解性シラン化合物としては、例えば
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性シラン;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリi−プロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリi−プロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、4−t−ブトキシフェネチルトリエトキシシラン、1−(t−ブトキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、t−ブトキシフェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどの2官能性シラン;トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
【0068】
ポリシロキサンは、これらの加水分解性シラン化合物のうちの1種の化合物の加水分解縮合物であってもよいし、2種以上の化合物の加水分解縮合物であってもよい。
【0069】
上記第1成分及び第2成分が重合体の場合、自己組織化組成物(I)の塗膜の自己組織化による相分離をより制御するためには、重合体の分子量としては、1,000〜100,000が好ましく、1,500〜30,000がより好ましく、2,000〜10,000がさらに好ましい。
【0070】
また、上記第1成分及び第2成分が重合体の場合、自己組織化組成物(I)の塗膜の自己組織化による相分離をより制御するためには、重合体の分子量がより均一であることが好ましい。重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、2以下が好ましく、1.4以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
【0071】
[その他の成分]
自己組織化組成物(I)は、本発明の効果を損なわない範囲において、塗膜を構成する成分として、上記第1成分及び第2成分以外に加えて、その他の成分を含有してもよい。
【0072】
[溶媒]
自己組織化組成物(I)は、通常、溶媒を含有する。上記溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0073】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0074】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0075】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0076】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0077】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、3−メトキシプロピオン酸メチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0078】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0079】
これらのうち酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが好ましく、PGMEAがより好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0080】
また、自己組織化組成物(I)は、さらに界面活性剤を含有してもよい。自己組織化組成物(I)は、界面活性剤をさらに含有することで、基板等への塗布性を向上させることができる。
【0081】
<自己組織化組成物(I)の調製方法>
自己組織化組成物(I)は、例えば、上記溶媒中で、上記第1成分、及び必要に応じて第2成分等を所定の割合で混合することにより調製することができる。自己組織化組成物(I)は、上記混合後、例えば、孔径20nm程度、特に好ましくは5nm程度のメンブレンフィルターで濾過することが好ましい。自己組織化組成物(I)の固形分濃度としては、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜30質量%がより好ましく、0.3質量%〜10質量%がさらに好ましい。
【0082】
上述の自己組織化組成物(I)の具体例としては、例えば、上記第1成分が、酸解離性基を有する重合体及び感放射線性酸発生体を含み、上記第2成分が、アルカリ不溶性重合体を含むもの(以下、この自己組織化組成物(I)を「自己組織化組成物(I−1)」ともいう)等が挙げられる。
【0083】
この自己組織化組成物(I−1)を用いた場合、例えば、露光工程では、
図1の(C)に示す露光領域13aにおいて、第1成分を構成する上記酸解離性基を有する重合体の酸解離性基が解離する。そして、次の相分離工程では相分離により、この露光領域13aの構成成分が主構成成分の第1相14aが形成され、未露光部13bの構成成分のうち、第2成分のアルカリ不溶性重合体が主構成成分の第2相14bと、第1成分の酸解離性基が解離していない重合体が主構成成分の第3層14cとが形成される。
【0084】
従って、
図4の[I]に示すように、(a)で示される相分離工程で形成される第1相44a、第2相44b及び第3相44cから、アルカリ水溶液をエッチング液として用いることにより、(b)に示すように、酸解離性基が解離した重合体を主構成成分とする第1相44aが除去される。次に、有機溶媒をエッチング液として用いることにより、(c)に示すように、酸解離性基が解離していない重合体を主構成成分とする第3相44cが除去される。このようにして、(c)に示される微細パターンを簡便な操作で得ることができる。
【0085】
また、この自己組織化組成物(I−1)を用いた場合には、
図4の[II]に示すように、(a)に示す相分離した塗膜から、上述のようにアルカリ水溶液を用いて、(b)に示すように第1相44aを除去した後、(b’)に示すように、全面露光等により、少なくとも第3相44cに放射線を照射することにより、(b”)に示すように、第3相を構成する酸解離性基を有する重合体の酸解離性基を解離させる。これにより、第3相45cはアルカリ可溶となるので、アルカリ水溶液をエッチング液として第3相45cを除去することにより、(c’)に示す微細パターンを得ることができる。自己組織化組成物(I−1)によれば、アルカリ水溶液をエッチング液として用いることにより、簡便な操作で微細パターンを得ることができる。