(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエーテルポリアミド(A)のジアミン構成単位中におけるポリエーテルジアミン化合物(a−1)に由来する構成単位の割合が5〜50モル%である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ用インナーライナー。
キシリレンジアミン(a−2)が、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ用インナーライナー。
α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)が、アジピン酸、セバシン酸又はこれらの混合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ用インナーライナー。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔樹脂組成物〕
本発明の空気入りタイヤ用インナーライナーは、ジアミン構成単位が上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来する構成単位を含み、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)に由来する構成単位を含む、ポリエーテルポリアミド(A)を含有する樹脂組成物を成形してなる。
当該樹脂組成物は、必要に応じて、さらにポリエーテルポリアミド(A)以外の熱可塑性樹脂、及びその他の添加剤を含有してもよい。
なお、本発明において当該樹脂組成物は、ポリエーテルポリアミド(A)と共に(A)成分以外の熱可塑性樹脂やその他の添加剤を含有する組成物に限らず、ポリエーテルポリアミド(A)のみからなる場合も含まれる。
【0011】
本発明で用いる樹脂組成物の全量に対するポリエーテルポリアミド(A)の含有量は、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
ポリエーテルポリアミド(A)の含有量が70質量%以上であれば、ガスバリア性、耐屈曲性、成形性、及び柔軟性のいずれもが良好な空気入りタイヤ用インナーライナーとなり得る。
【0012】
〔ポリエーテルポリアミド(A)〕
本発明に用いられるポリエーテルポリアミド(A)は、ジアミン構成単位が下記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来する構成単位を含み、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)に由来する構成単位を含む。
本発明において、ポリエーテルポリアミド(A)を含有する樹脂組成物を成形材料として用いることで、ガスバリア性、耐屈曲性、成形性、及び柔軟性のいずれもが良好な空気入りタイヤ用インナーライナーとなり得る。
【0013】
【化2】
(式(1)中、x+zは1〜60、yは1〜50を表し、−OR
1−は各々独立に−OCH
2CH
2CH
2−、−OCH(CH
3)CH
2−又は−OCH
2CH(CH
3)−を表し、−OR
2−は−OCH
2CH
2CH
2CH
2−又は−OCH
2CH
2−を表す。)
【0014】
[ジアミン構成単位]
ポリエーテルポリアミド(A)を構成するジアミン構成単位は、上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来する構成単位を含む。
ポリエーテルポリアミド(A)のジアミン構成単位中における、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来する構成単位の合計含有量は、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%、より更に好ましくは90〜100モル%である。
【0015】
<ポリエーテルジアミン化合物(a−1)>
ポリエーテルポリアミド(A)を構成するジアミン構成単位は、上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)に由来する構成単位を含む。
上記一般式(1)における(x+z)は1〜60であり、好ましくは2〜40、より好ましくは2〜30、更に好ましくは2〜20、より更に好ましくは2〜15である。
また、yは1〜50であり、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。
x、y、zの値が上記範囲より大きい場合、溶融重合の反応途中に生成するキシリレンジアミンとジカルボン酸とからなるオリゴマーやポリマーとの相溶性が低くなり、重合反応が進行しづらくなる。
また、上記一般式(1)における−OR
1−は各々独立に−OCH
2CH
2CH
2−、−OCH(CH
3)CH
2−又は−OCH
2CH(CH
3)−を表す。
【0016】
ポリエーテルジアミン化合物(a−1)の数平均分子量は、好ましくは180〜7000、より好ましくは200〜5000、更に好ましくは300〜3500、より更に好ましくは400〜2500、より更に好ましくは500〜1800である。
ポリエーテルジアミン化合物の平均分子量が上記範囲内であれば、柔軟性やゴム弾性等のエラストマーとしての機能を発現するポリマーを得ることができ、低温時での柔軟性が良好な空気入りタイヤ用インナーライナーを得ることができる。
【0017】
上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)は、ガスバリア性、耐屈曲性、成形性、及び柔軟性のいずれもが良好な空気入りタイヤ用インナーライナーとする観点から、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表されるポリエーテルジアミン化合物であることが好ましい。
【0019】
上記一般式(1−1)中、x1+z1は1〜60、y1は1〜50を表し、−OR
1−は−OCH
2CH
2CH
2−、−OCH(CH
3)CH
2−又は−OCH
2CH(CH
3)−を表す。
また、上記一般式(1−2)中、x2+z2は1〜60、y2は1〜50を表し、−OR
1−は−OCH
2CH
2CH
2−、−OCH(CH
3)CH
2−又は−OCH
2CH(CH
3)−を表す。
【0020】
上記一般式(1−1)における(x1+z1)の数値は1〜60であり、好ましくは2〜40、より好ましくは2〜30、更に好ましくは2〜20、より更に好ましくは2〜15である。また、y1の数値は1〜50であり、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。
上記一般式(1−2)における(x2+z2)の数値は1〜60であり、好ましくは2〜40、より好ましくは2〜30、更に好ましくは2〜20、より更に好ましくは2〜15である。また、y2の数値は1〜50であり、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。
【0021】
上記一般式(1−1)で表されるポリエーテルジアミン化合物の数平均分子量は、好ましくは204〜7000、より好ましくは250〜5000、更に好ましくは300〜3500、より更に好ましくは400〜2500、より更に好ましくは500〜1800である。
上記一般式(1−2)で表されるポリエーテルジアミン化合物の数平均分子量は、好ましくは180〜5700、より好ましくは200〜4000、更に好ましくは300〜3000、より更に好ましくは400〜2000、より更に好ましくは500〜1800である。
【0022】
なお、これらのポリエーテルジアミン化合物(a−1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
<キシリレンジアミン(a−2)>
ポリエーテルポリアミド(A)を構成するジアミン構成単位は、キシリレンジアミン(a−2)に由来する構成単位を含む。
キシリレンジアミン(a−2)としては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物が好ましく、メタキシリレンジアミン、又はメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物がより好ましく、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物が更に好ましい。
キシリレンジアミン(a−2)がメタキシリレンジアミンに由来する場合、得られるポリエーテルポリアミド(A)は、機械的特性や表面特性に優れたものとなる。
キシリレンジアミン(a−2)が、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物に由来する場合、得られるポリエーテルポリアミド(A)は柔軟性、結晶性、溶融成形性、成形加工性、強靭性に優れ、さらに高耐熱性、高弾性率を示す。
【0024】
なお、これらのキシリレンジアミン(a−2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
キシリレンジアミン(a−2)として、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物を用いる場合には、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンの総量に対するパラキシリレンジアミンの割合は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下、より更に好ましくは5〜70モル%である。
パラキシリレンジアミンの割合が上記範囲であれば、得られるポリエーテルポリアミドの融点が、該ポリエーテルポリアミドの分解温度に近接せず、好ましい。
【0026】
ポリエーテルポリアミド(A)のジアミン構成単位中における、キシリレンジアミン(a−2)に由来する構成単位の割合は、ガスバリア性、耐屈曲性、成形性、及び柔軟性のいずれもが良好な空気入りタイヤ用インナーライナーとする観点から、好ましくは50〜99モル%、より好ましくは70〜97モル%、更に好ましくは75〜95モル%、より更に好ましくは80〜95モル%である。
【0027】
<その他のジアミン化合物>
ポリエーテルポリアミド(A)を構成するジアミン構成単位として、上述したように、上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)に由来する構成単位を含むが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他のジアミン化合物に由来する構成単位を含んでもよい。
【0028】
ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)以外のジアミン構成単位を構成しうるジアミン化合物としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
その他のジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
[ジカルボン酸構成単位]
ポリエーテルポリアミド(A)は、ジカルボン酸構成単位が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)に由来する構成単位を含む。
ポリエーテルポリアミド(A)のジカルボン酸構成単位中における、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)に由来する構成単位の含有量は、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%である。
【0030】
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、結晶性、高弾性の観点から、アジピン酸、セバシン酸がより好ましく、結晶性、高弾性に加えてガスバリア性の観点からはアジピン酸がより好ましい。これらのジカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ポリエーテルポリアミド(A)を構成するジカルボン酸構成単位は、上述したように、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)に由来する構成単位を含むが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他のジカルボン酸に由来する構成単位を含んでもよい。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)以外のジカルボン酸構成単位を構成しうるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
ジカルボン酸成分として、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)とイソフタル酸との混合物を使用する場合、ポリエーテルポリアミド(A)の耐熱性及び成形加工性を向上させることができる。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)とイソフタル酸とのモル比(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)/イソフタル酸)は、50/50〜99/1が好ましく、70/30〜95/5がより好ましい。
【0033】
[ポリエーテルポリアミド(A)の物性]
ポリエーテルポリアミド(A)は、キシリレンジアミン(a−2)と炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)とから形成される高結晶性のポリアミドブロックをハードセグメントとし、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)由来のポリエーテルブロックをソフトセグメントとすることで、得られる空気入りタイヤ用インナーライナーについて、ガスバリア性、耐屈曲性、成形性、及び柔軟性を、いずれも良好にすることができる。
【0034】
ポリエーテルポリアミド(A)の相対粘度は、好ましくは1.1〜3.0の範囲、より好ましくは1.1〜2.9の範囲、更に好ましくは1.1〜2.8の範囲である。
なお、ポリエーテルポリアミド(A)の相対粘度は、試料0.2gを96質量%硫酸20mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96質量%硫酸そのものの落下時間(t
0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
0
【0035】
ポリエーテルポリアミド(A)の融点(Tm)は、耐熱性及び溶融成形性の観点から、好ましくは170〜270℃の範囲、より好ましくは175〜270℃の範囲、更に好ましくは180〜270℃の範囲、より更に好ましくは185〜260℃の範囲である。
なお、ポリエーテルポリアミド(A)の融点は、示差走査熱量計を用いて測定され、具体的には、実施例に記載の方法で測定された値を意味する。
【0036】
ポリエーテルポリアミド(A)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000〜50000、より好ましくは3000〜30000、更に好ましくは5000〜25000、より更に好ましくは7000〜22000である。
なお、ポリエーテルポリアミド(A)の数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法で測定された値を意味する。
【0037】
[ポリエーテルポリアミド(A)の製造]
ポリエーテルポリアミド(A)の製造は、特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。
例えば、ジアミン成分(ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)等のジアミン)とジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)等のジカルボン酸)とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリエーテルポリアミド(A)を製造することができる。
【0038】
また、ジアミン成分(ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)等のジアミン)を溶融状態のジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)等のジカルボン酸)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリエーテルポリアミド(A)を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
この際、ジアミン成分のうち、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)については、ジカルボン酸成分とともに予め反応槽内に仕込んでおいてもよい。ポリエーテルジアミン化合物(a−1)を予め反応槽内に仕込んでおくことで、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)の熱劣化を抑制することができる。その場合もまた、反応系を均一な液状態で保つために、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)以外のジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0039】
ジアミン成分(ポリエーテルジアミン化合物(a−1)及びキシリレンジアミン(a−2)等のジアミン)と、ジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(a−3)等のジカルボン酸)とのモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)は、好ましくは0.9〜1.1、より好ましくは0.93〜1.07、更に好ましくは0.95〜1.05、より更に好ましくは0.97〜1.02である。モル比が上記範囲内であれば、高分子量化が進行しやすくなる。
【0040】
重合温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは160〜280℃、更に好ましくは170〜270℃である。重合温度が上記温度範囲内であれば、重合反応が速やかに進行する。また、モノマーや重合途中のオリゴマー、ポリマー等の熱分解が起こりにくいため、得られるポリエーテルポリアミドの性状が良好なものとなる。
【0041】
ジアミン成分を滴下し始めてからの重合時間は、好ましくは1〜5時間である。重合時間を上記範囲内とすることにより、ポリエーテルポリアミド(A)の分子量を十分に上げることができ、さらに得られたポリエーテルポリアミドの着色を抑えることができる。
【0042】
ポリエーテルポリアミド(A)は、リン原子含有化合物を添加して溶融重縮合(溶融重合)法により製造されることが好ましい。溶融重縮合法としては、常圧で溶融させたジカルボン酸成分中にジアミン成分を滴下し、縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法が好ましい。さらに、ジアミン成分のうち、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)については、ジカルボン酸成分とともに予め反応槽内に仕込み溶融させておき、そこにキシリレンジアミン成分を滴下し、縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法がより好ましい。
【0043】
ポリエーテルポリアミド(A)の重縮合系内には、その特性が阻害されない範囲で、リン原子含有化合物を添加できる。
添加できるリン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられる。
これらの中でも、アミド化反応を促進する効果が高く、且つ優れた着色防止効果を有するとの観点から、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が好ましく、次亜リン酸ナトリウムがより好ましい。
【0044】
なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
重縮合系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、良好な外観及び成形加工性の観点から、ポリエーテルポリアミド(A)中のリン原子濃度換算で、好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは5〜1000ppm、更に好ましくは10〜1000ppmである。
【0045】
また、ポリエーテルポリアミド(A)の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。
加えて、重縮合中のポリマーの着色を防止するためにはリン原子含有化合物を十分な量存在させる必要があるが、場合によってはポリマーのゲル化を招くおそれがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。
【0046】
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物、又はアルカリ金属酢酸塩が好ましい。
具体的なアルカリ金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等が挙げられる。
【0047】
重縮合系内にアルカリ金属化合物を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が、好ましくは0.50〜1.00、より好ましくは0.55〜0.95であり、更に好ましくは0.60〜0.90である。
上記範囲内であると、リン原子含有化合物のアミド化反応促進を適度に抑制する効果があり、反応を抑制しすぎることにより重縮合反応速度が低下し、ポリマーの熱履歴が増加してポリマーのゲル化が増大することを避けることができる。
【0048】
また、ジカルボン酸としてセバシン酸を使用する場合には、そのナトリウム原子濃度は、好ましくは1〜500ppm、より好ましくは10〜300ppm、更に好ましくは20〜200ppmである。
上記の範囲であると、ポリエーテルポリアミドを合成する際の反応性がよく、適切な分子量範囲にコントロールしやすく、さらに、前述のアミド化反応速度調整の目的で配合するアルカリ金属化合物の使用量を少なくすることができる。また、ポリエーテルポリアミドを溶融成形する際に粘度増加を抑制することができ、成形性が良好となると共に、成形加工時にコゲの発生を抑制できることから、得られる空気入りタイヤ用インナーライナーの品質が向上する傾向にある。
【0049】
溶融重縮合で得られたポリエーテルポリアミド(A)は、一旦取り出され、ペレット化された後、乾燥処理をして使用される。また、更に重合度を高めるために固相重合してもよい。
乾燥処理及び固相重合で用いられる加熱装置としては、公知の装置を使用することができるが、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置、並びにナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた回転ドラム式の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。
【0050】
〔(A)成分以外の熱可塑性樹脂〕
本発明で用いる樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない程度で、更に(A)成分以外の熱可塑性樹脂を含んでもよい。
熱可塑性樹脂を含有することで、得られる空気入りタイヤ用インナーライナーの機械的特性等を向上させることができる。
【0051】
ただし、本発明で用いる樹脂組成物は、ポリエーテルポリアミド(A)を含有しているため、(A)成分以外の熱可塑性樹脂を含有しなくても、十分に優れた特性を有する空気入りタイヤ用インナーライナーを得ることができる。
また、(A)成分以外の熱可塑性樹脂の含有量が多すぎると、(A)成分との相溶性が低下し、ポリエーテルポリアミド(A)が有している機械的特性や表面特性が損なわれる場合がある。
上記観点から、本発明で用いる樹脂組成物中に含まれる、ポリエーテルポリアミド(A)以外の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%である。
【0052】
樹脂組成物中に含まれる(A)成分以外の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0053】
ポリアミド樹脂としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6T(Tは、テレフタル酸成分単位を表す。以下において同じ))、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン6I(Iは、イソフタル酸成分単位を表す。以下において同じ))、ポリヘキサメチレンテレフタルイソフタルアミド(ナイロン6TI)、ポリヘプタメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6(MXDは、m−キシリレンジアミン成分単位を表す。以下において同じ))、ポリメタキシリレンセバカミド(ナイロンMXD10)、ポリパラキシリレンセバカミド(ナイロンPXD10(PXDは、p−キシリレンジアミン成分単位を表す。))、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとアジピン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂(ナイロン1,3−/1,4−BAC6(BACは、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン成分単位を表す。))及びこれらの共重合アミド等が挙げられる。
【0054】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキレート樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−テレフタレート−4,4’−ビフェニルジカルボキシレート共重合樹脂、ポリ−1,3−プロピレン−テレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂が好ましい。
【0055】
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン又はα−オレフィンとのランダム若しくはブロック共重合体等のポリプロピレン;これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
なお、ポリエチレンの多くは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。
また、ポリオレフィン樹脂には、少量のアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体によって変性された変性ポリオレフィン樹脂が含まれる。変性は、通常、共重合又はグラフト変性によって行われる。
【0056】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0057】
〔その他の添加剤〕
本発明で用いる樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、充填剤、補強剤、粘着付与剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本発明で用いる樹脂組成物中に含まれる、上述のその他の添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、上記ポリエーテルポリアミド(A)100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0〜5質量部である。
【0059】
〔空気入りタイヤ用インナーライナーの製造方法〕
本発明の空気入りタイヤ用インナーライナーの製造方法としては、公知の方法により製造することができる。
例えば、上述のポリエーテルポリアミド(A)と、必要に応じて添加される上述の(A)成分以外のその他の樹脂及びその他の添加剤とを樹脂組成物を調製し、当該樹脂組成物を用いて、スクリュー押出機・ロール等で混練し、公知の成形方法により任意の厚さの空気入りタイヤ用インナーライナーを得る方法が挙げられる。
樹脂組成物を調製する方法としては、タンブラー、ミキサー、ブレンダー等で混合する方法が挙げられる。
成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形等が挙げられる。
成形時の温度条件としては、ポリエーテルポリアミド(A)の変質を防止する観点から、ポリエーテルポリアミド(A)の融点をTm(℃)とした場合、好ましくはTm(℃)〜Tm+80(℃)、より好ましくはTm(℃)〜Tm+60(℃)である。
【0060】
〔空気入りタイヤの構造〕
図1は、空気入りタイヤ7の一例を示すトレッド幅方向かつタイヤ径方向に沿う部分断面図である。
この空気入りタイヤ7は、ビードコア1と、ビードコア1の周りに巻回されたカーカス2と、カーカス2のタイヤ半径方向内側に配設されたインナーライナー3と、カーカス2のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配設された2枚のベルト層4を有するベルト部と、ベルト部のタイヤ半径方向外側に配設されたトレッド部5及びサイドウォール部6とから構成されている。
このインナーライナー3が、上記樹脂組成物より成形してなっている。
【0061】
〔空気入りタイヤの製造方法〕
次に、上記空気入りタイヤ7の製造方法を説明する。
先ず、タイヤ成形ドラムの周面上に、インナーライナー3としての積層体を巻き付ける。次いで、このインナーライナー3上にカーカス2を構成するゴム部材を巻き付け、更にその上にベルト層4を構成するゴム部材、トレッド部5を構成するゴム部材、サイドウォール部6を構成するゴム部材等を巻き重ねた後、ドラムを抜き取ってグリーンタイヤとする。
このグリーンタイヤを、通常120℃以上、好ましくは125〜200℃、より好ましくは130〜180℃の温度で加熱・加硫処理することにより、空気入りタイヤ7が得られる。
【0062】
本発明の空気入りタイヤ用インナーライナーは、厚さを薄くしても十分な耐久性を保持できるため、ガスバリア性及び耐屈曲性等を良好とすることができ、軽量化を図ることができる。
本発明の空気入りタイヤ用インナーライナーの厚さは、ガスバリア性及び耐屈曲性等を良好に保つ観点、及び軽量化の観点から、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは30〜900μm、更に好ましくは50〜800μmである。
【0063】
本発明の空気入りタイヤ用インナーライナーの引張破断伸び率(測定温度23℃、湿度50%RH(相対湿度))は、柔軟性の観点から、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、更に好ましくは250%以上、更に好ましくは300%以上である。
本発明の空気入りタイヤ用インナーライナーの引張弾性率(測定温度23℃、湿度50%RH)は、柔軟性及び機械強度の観点から、好ましくは100MPa以上、より好ましくは200MPa以上、更に好ましくは300MPa以上、更に好ましくは400MPa以上、更に好ましくは500MPa以上である。
引張弾性率及び引張破断伸び率の測定は、JIS K7161に準じて行われる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。
【0065】
(1)相対粘度(ηr)
以下の製造例で得たポリエーテルポリアミド又はポリアミド0.2gを精秤し、96質量%硫酸20mlに20〜30℃で撹拌し、完全に溶解させ、溶液を調製した。その後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に当該溶液を5ml取り、25℃の恒温槽中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96質量%硫酸そのものの落下時間(t
0)も同様に測定した。t及びt
0から次式(1)により相対粘度を算出した。
式(1):相対粘度=t/t
0
【0066】
(2)数平均分子量(Mn)
以下の製造例で得たポリエーテルポリアミド又はポリアミドをフェノールとエタノール混合溶媒(フェノール/エタノール=4/1(体積比))、及びベンジルアルコール溶媒にそれぞれ溶解させ、カルボキシル末端基濃度とアミノ末端基濃度を塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定により求めた。数平均分子量(Mn)は、アミノ末端基濃度及びカルボキシル末端基濃度の定量値から次式(2)により算出した。
式(2):数平均分子量=2×1,000,000/([NH
2]+[COOH])
[NH
2]:アミノ末端基濃度(μeq/g)
[COOH]:カルボキシル末端基濃度(μeq/g)
【0067】
(3)示差走査熱量測定(ガラス転移温度、結晶化温度及び融点)
示差走査熱量の測定はJIS K7121、K7122に準じて行った。示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:「DSC−60」)を用い、以下の製造例で得たポリエーテルポリアミド又はポリアミドをDSC測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行った。測定条件は、昇温速度10℃/分で、300℃で5分保持した後、降温速度−5℃/分で100℃まで測定を行い、以下の製造例で得たポリエーテルポリアミド又はポリアミドのガラス転移温度Tg、結晶化温度Tch及び融点Tmを求めた。
【0068】
(製造例1)ポリエーテルポリアミドA1の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、セバシン酸748.33g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6565g及び酢酸ナトリウム0.4572gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)335.12gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学(株)製)143.62g(MXDA/PXDA=70/30(モル比))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)XTJ−542」、米国HUNTSMAN社のカタログによれば、上記一般式(1−1)における−OR
1−が−OCH(CH
3)CH
2−又は−OCH
2CH(CH
3)−であり、x1+z1の概数が6.0、y1の概数が9.0であり、概略分子量は1000である。)185.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドA1を得た。なお、ポリエーテルポリアミドA1の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.45、[COOH]=55.19μeq/g、[NH
2]=70.61μeq/g、Mn=15898、Tg=50.3℃、Tch=83.0℃、Tm=208.1℃。
【0069】
(製造例2)ポリエーテルポリアミドA2の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、セバシン酸667.43g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6587g及び酢酸ナトリウム0.4588gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)283.16gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学(株)製)121.35g(MXDA/PXDA=70/30(モル比))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)XTJ−542」、詳細は上記と同じ)330.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドA2を得た。なお、ポリエーテルポリアミドA2の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.31、[COOH]=81.62μeq/g、[NH
2]=68.95μeq/g、Mn=13283、Tg=12.9℃、Tch=69.5℃、Tm=204.5℃。
【0070】
(製造例3)ポリエーテルポリアミドA3の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、セバシン酸768.55g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6644g及び酢酸ナトリウム0.4628gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)344.18gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学(株)製)147.50g(MXDA/PXDA=70/30(モル比))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)ED−900」、米国HUNTSMAN社のカタログによれば、上記一般式(1−2)における−OR
1−が−OCH(CH
3)CH
2−又は−OCH
2CH(CH
3)−であり、x2+z2の概数が6.0、y2の概数が12.5であり、概略分子量は900である。)171.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドA3を得た。なお、ポリエーテルポリアミドA3の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.48、[COOH]=66.91μeq/g、[NH
2]=82.80μeq/g、Mn=13360、Tg=27.6℃、Tch=72.8℃、Tm=207.6℃。
【0071】
(製造例4)ポリエーテルポリアミドA4の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、セバシン酸687.65g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6612g及び酢酸ナトリウム0.4605gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)291.74gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学(株)製)125.03g(MXDA/PXDA=70/30(モル比))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)ED−900」、詳細は上記と同じ)306.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドA4を得た。なお、ポリエーテルポリアミドA4の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.36、[COOH]=66.35μeq/g、[NH
2]=74.13μeq/g、Mn=14237、Tg=16.9℃、Tch=52.9℃、Tm=201.9℃。
【0072】
(製造例5)ポリエーテルポリアミドA5の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、アジピン酸555.37g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6490g及び酢酸ナトリウム0.4521gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。270℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)326.06gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学(株)製)139.74g(MXDA/PXDA=70/30(モル比))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)XTJ−542」、詳細は上記と同じ)380.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドA5を得た。なお、ポリエーテルポリアミドA5の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.36、[COOH]=64.82μeq/g、[NH
2]=100.70μeq/g、Mn=12083、Tg=79.3℃、Tch=107.1℃、Tm=251.4℃。
【0073】
(製造例6)ポリエーテルポリアミドA6の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、アジピン酸584.60g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6626g及び酢酸ナトリウム0.4616gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)343.22gとパラキシレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学(株)製)147.10g(MXDA/PXDA=70/30(モル比))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)ED−900」、詳細は上記と同じ)360.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドA6を得た。なお、ポリエーテルポリアミドA6の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.34、[COOH]=75.95μeq/g、[NH
2]=61.83μeq/g、Mn=14516、Tg=33.2℃、Tch=73.9℃、Tm=246.2℃。
【0074】
(製造例7)ポリエーテルポリアミドA7の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸584.60g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6832g及び酢酸ナトリウム0.4759gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)490.32gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)XTJ−542」、詳細は上記と同じ)400.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーA7を得た。なお、ポリエーテルポリアミドA7の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.38、[COOH]=110.17μeq/g、[NH2]=59.57μeq/g、Mn=11783、Tg=71.7℃、Tch=108.3℃、Tm=232.8℃。
【0075】
(製造例8)ポリエーテルポリアミドA8の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸584.60g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6613g及び酢酸ナトリウム0.4606gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)489.34gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)ED−900」、詳細は上記と同じ)359.28gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーA8を得た。なお、ポリエーテルポリアミドA8の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.35、[COOH]=73.24μeq/g、[NH2]=45.92μeq/g、Mn=16784、Tg=42.1℃、Tch=89.7℃、Tm=227.5℃。
【0076】
(製造例9)ポリアミドB1の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、アジピン酸584.5g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6210g及び酢酸ナトリウム0.4325gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)544.80gを滴下し約2時間重合を行い、ポリアミドB1を得た。なお、ポリアミドB1の物性値は、以下のとおりである。
ηr=2.10、[COOH]=104.30μeq/g、[NH
2]=24.58μeq/g、Mn=15500、Tg=86.1℃、Tch=153.0℃、Tm=239.8℃。
【0077】
(製造例10)ポリアミドB2の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、セバシン酸829.2g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6365g及び酢酸ナトリウム0.4434gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学(株)製)390.89gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学(株)製)167.53g(MXDA/PXDA=70/30(モル比))の混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリアミドB2を得た。なお、ポリアミドB2の物性値は、以下のとおりである。
ηr=2.20、[COOH]=81.8μeq/g、[NH
2]=26.9μeq/g、Mn=18400、Tg=65.9℃、Tch=100.1℃、Tm=213.8℃。
【0078】
(製造例11)ポリエーテルポリアミドB3の製造
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に、12−アミノラウリン酸(東京化成工業(株)製)753.66g、アジピン酸56.84g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.5798g及び酢酸ナトリウム0.4038gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。240℃まで徐々に昇温しながら、そこへポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:「ジェファーミン(登録商標)XTJ−542」、詳細は上記と同じ)388.89gを滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドB3を得た。なお、ポリエーテルポリアミドB3の物性値は、以下のとおりである。
ηr=1.25、[COOH]=87.27μeq/g、[NH
2]=73.12μeq/g、Mn=12470、Tm=165.0℃。Tg、Tchは観測されず。
【0079】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
表1に示す種類の上記製造例1〜11で製造したポリエーテルポリアミド又はポリアミドからなる樹脂組成物を用い、ポリエーテルポリアミド又はポリアミドの融点Tm+20〜融点Tm+30℃にて押出成形を行い、下記物性の評価を行う上での試験片として、厚さ100μmフィルム状成形体を作製した。
同様に上記製造例1〜11で製造したポリエーテルポリアミド又はポリアミドからなる樹脂組成物を用い、ポリエーテルポリアミド又はポリアミドの融点Tm+20〜融点Tm+30℃にて射出成形を行い、厚さ4mmの試験片をそれぞれ作製した。
作製した試験片を用いて、以下の方法にて各物性の評価をした。評価結果を表1に示す。なお、以下の評価試験において、試験片を用いて得られた物性の評価は、空気入りタイヤ用インナーライナーの物性としてみなすことができる。
【0080】
(1)曲げ弾性率評価
恒温槽付試験機(5960ツインコラム卓上モデル試験システム、インストロン社製)を用いて、ISO178に準拠して、作製した厚さ4mmの試験片の−30℃、30℃、及び120℃での曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0081】
(2)耐ピンホール性評価
作製した厚さ100μmの試験片をバッチ式の同時二軸延伸機にて縦2倍、横2倍に延伸し、210℃で熱固定処理を行い、厚さ25μmの延伸フィルムを作製し、ゲルボフレックス(理学工業(株)製)を用いて、ゲルボフレックスの軸方向を測定方向とし、23℃、60%RH(相対湿度)での環境下で、当該延伸フィルムの1000回屈曲時における単位面積(210mm角)当たりのピンホール数を測定した。ピンホールの測定は、ピンホールテスター(微弱電流放電法)を用いて行った。ピンホールの数が少ないほど、屈曲時の変形で破断、あるいはクラックが生じにくいため、タイヤ用インナーライナーとして適している。
【0082】
(3)引張試験(引張破断伸び率)
JIS K−7161に準じて行った。作製した厚さ100μmの試験片を10mm×100mmに切り出し、株式会社東洋精機製作所製ストログラフを用いて、測定温度23℃、湿度50%RH、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minの条件で引張試験を実施し、引張破断伸び率を求めた。
【0083】
(4)ガスバリア性
ASTM D3985に準じて測定した。具体的には、酸素透過率測定装置(モコン社製、商品名「OX−TRAN 2/21A」)を用いて、作製した厚さ100μmの試験片の23℃、60%RH(相対湿度)での環境下における、酸素透過係数(単位:ml・mm/m
2・day・atm)を測定した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1にとおり、実施例1〜8では、低温(−30℃)、室温(30度)及び高温(120℃)において優れた曲げ特性を有しており、ガスバリア性が良好であった。そのため、実施例1〜8の樹脂組成物を空気入りタイヤ用インナーライナーとして用いた場合、空気入りタイヤの耐久性も向上し得ると考えられる。
一方、比較例1及び2では、低温時での曲げ弾性率の測定試験中に割れが生じ、低温での曲げ特性が劣る結果となった。
さらに、比較例3では、高温時での曲げ弾性率の値が低く、高温で使用した場合に機械強度が低下する点で問題を有する。また、ガスバリア性の試験においては、酸素透過量が多すぎてオーバーレンジしたため、測定不能となり、ガスバリア性が劣る結果となった。