特許第6094478号(P6094478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094478
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】色調に優れたポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20170306BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08K5/16
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-513875(P2013-513875)
(86)(22)【出願日】2013年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2013054884
(87)【国際公開番号】WO2013129371
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-43340(P2012-43340)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市原 智憲
(72)【発明者】
【氏名】栗林 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】君島 一郎
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−332353(JP,A)
【文献】 特開2011−202103(JP,A)
【文献】 特表2011−529986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77、C08K5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位からなるポリアミド骨格を主成分とするポリアミド(a)と、立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する、分子量1,000以下の化合物(b)を配合するポリアミド樹脂組成物であって、化合物(b)がN,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンまたは、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであるポリアミド樹脂組成物
【請求項2】
前記化合物(b)がポリアミド(a)100重量%に対して0.01〜5重量%を配合する請求項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
1,5−ペンタンジアミンがバイオマス由来である請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ジカルボン酸単位がアジピン酸単位および/または、セバシン酸単位である請求項1からいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調に優れたポリアミド樹脂組成物の提供に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境問題への意識の高まりから、バイオマス由来原料を用いた環境配慮型ポリマーの開発が近年盛んに進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
モノマー成分にバイオマス由来原料から得られた1,5−ペンタンジアミンを用いた環境配慮型ポリマーの開発として、例えば、ポリペンタメチレンアジパミド(以下、ナイロン56)樹脂に難燃剤を配合した例が特許文献1に開示されている。また、特許文献2には、原料製造時の副産物であるアミノ基含有六員環化合物含有率が低い1,5−ペンタンジアミンを用いてポリアミドを製造することにより、従来よりも吸水性が低く、かつ、優れた耐熱性、靱性、成形性を有するポリアミドが得られる例が開示されている。
【0004】
特許文献3では、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46またはナイロン610等のポリアミドに、トリアセトンジアミン化合物を添加して光安定化、熱安定化されたポリアミドに関する方法が開示されている。
【0005】
特許文献4では、ポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミドまたはポリ−m−フェニレンイソフタル−アミド、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド69、ポリアミド612、ポリアミド46、ポリアミド1212等のポリアミドに、ピペリジン構造を持つヒンダードアミン系耐熱安定剤を添加してポリマーを安定化させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開2011−52034号公報
【特許文献2】特開2011−202103号公報
【特許文献3】特許第2911607号公報
【特許文献4】特表2009−531505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1,5−ペンタンジアミンを構成成分とするポリアミド樹脂、特にモノマー成分にバイオマス由来原料から得られた1,5−ペンタンジアミンを用いたポリアミド樹脂は、熱により着色しやすく、従来技術では、1,5−ペンタンジアミンを構成成分とするポリアミド樹脂組成物での色調において満足したポリマーを得ることができなかった。
【0007】
すなわち特許文献1および2に記載されたような1,5−ペンタンジアミンを用いたポリアミド樹脂は熱により着色しやすいという問題を有し、現在汎用ナイロンとして広く用いられているポリヘキサメチレンアジパミド(以下、ナイロン66と称す)やポリカプラミド(以下、ナイロン6と称す)のような白色度に優れたポリアミドを得ることができないことがある。また、特許文献3、4には、1,5−ペンタンジアミンを用いたポリアミド樹脂に特有の着色に関する上記課題やその解決手段について何ら教示されていない。
【0008】
従って本発明では、1,5−ペンタンジアミンを構成成分とするポリアミド樹脂および耐熱安定剤からなる、色調に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明は以下の構成からなる。
(1)1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位からなるポリアミド骨格を主成分とするポリアミド(a)と、立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する、分子量1,000以下の化合物(b)を配合するポリアミド樹脂組成物であって、化合物(b)がN,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンまたは、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであるポリアミド樹脂組成物
(2)前記化合物(b)がポリアミド(a)100重量%に対して0.01〜5重量%を配合する(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)1,5−ペンタンジアミンがバイオマス由来である(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)ジカルボン酸単位がアジピン酸単位および/または、セバシン酸単位である(1)〜(3)いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、1,5−ペンタンジアミンを構成成分とするポリアミド樹脂および耐熱安定剤からなる、色調に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について、以下に詳述する。
【0012】
本発明は、1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位からなるポリアミド骨格を主成分とするポリアミド(a)と、立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する、分子量1,000以下の化合物(b)を配合するポリアミド樹脂組成物であって、化合物(b)がN,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンまたは、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであるポリアミド樹脂組成物である。
【0013】
本発明で用いる1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位からなるポリアミド骨格を主成分とするポリアミド(a)としては、ポリアミドを構成するジアミン成分の繰り返し単位の80モル%以上が1,5−ペンタンジアミンで構成されるポリアミドが挙げられる。本発明の効果を損なわない範囲において20モル%未満の他のジアミン成分を含んでもよいが、1,5−ペンタンジアミンが90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが最も好ましい。
【0014】
バイオマス由来の化合物から得られた1,5−ペンタンジアミンとは、モノマー合成工程において、グルコースやリジンなどのバイオマス由来の化合物から、酵素反応や、酵母反応、発酵反応などによって合成されるものである。これらの方法によれば、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンやピペリジンといった化合物の含有量が少なく、高純度の1,5−ペンタンジアミンを調整できるため、溶融貯留安定性の高いポリアミド樹脂組成物となるため好ましい。具体的には、特開2002−223771号公報、特開2004−000114号公報、特開2004−208646号公報、特開2004−290091号公報や、特開2004−298034号公報、特開2002−223770号公報、特開2004−222569号公報等に開示された1,5−ペンタンジアミン、あるいは1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸塩、1,5−ペンタンジアミン・セバシン酸塩を用いて重合されたポリアミド樹脂組成物であることが好ましく、より純度の高い原料を得やすいことから、1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸塩または1,5−ペンタンジアミン・セバシン酸塩を用いて重合されることが好ましい。またアジピン酸またはセバシン酸や、他のジアミン成分、ジカルボン酸成分については従来公知の方法で製造されたものを用いればよい。
【0015】
また、1,5−ペンタンジアミンがバイオマス由来であるかの測定方法として、例えば放射性炭素(C14)含有量を測定法する方法がある。測定方法の詳細は、世界各国(ASTM(米国材料試験協会)、CEN(ヨーロッパ標準化委員会)等で規格化されており、米国ではバイオマス割合の測定規格としてASTM−D6866法が提示されている。
【0016】
該測定法は、もともと化石の年代を決定するための放射性炭素年代測定法を規格化したものであり、既に60年にわたり利用されているため、手法・技術としては確立されたものである。現在、JBPAやJORAの定めているバイオマス度の測定にも ASTM−D6866が用いられている。
【0017】
また、ジカルボン酸としては特に限定されないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられ、なかでもアジピン酸および/またはセバシン酸が好適に用いられる。
【0018】
本発明で用いる1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位からなるポリアミド骨格を主成分とするポリアミド(a)は、本発明の効果を損なわない限り1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位からなるポリアミド骨格以外のポリアミド骨格を含んでいてもよい。他のポリアミド骨格はアミド単位として、全アミド単位に対し例えば20モル%以下、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下となるような範囲でラクタム、アミノカルボン酸、その他の共重合可能なモノマーを共重合してもよい。これらモノマーの例としては、バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ウンデカラクタム、ラウリルラクタムなどが、ω−アミノ酸類としては6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸等が挙げられ、中でもε−カプロラクタムが好ましい。
【0019】
本発明のポリアミドの相対粘度は、サンプル濃度0.01g/mLの98%硫酸溶液の25℃における相対粘度として、2.0以上が好ましい。さらに好ましくは、2.05〜7.0、特に好ましくは2.1〜6.5、最も好ましくは2.15〜6.0である。相対粘度を上記好ましい範囲とすると、機械物性の発現が十分で、溶融粘度が高すぎて成形が困難となることもない。
【0020】
本発明で用いる立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する、分子量1,000以下の化合物(b)とは、少なくとも1つのN原子は、周囲を嵩高い置換基に囲まれ、ポリアミドを構成するアミノ基および/またはカルボキシル基と反応しないN原子を有し、かつその他に少なくとも1つは、ポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応し得る含窒素官能基を有する構造をもつ化合物である。
【0021】
また、本発明の効果を発現させるには、立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する化合物(b)の分子量が1,000以下と、小さいことが必要である。分子量が小さいことで、構造的な障害が少なくなるため、ポリアミド(a)との効率的で速やかな反応が可能となる。
【0022】
該化合物(b)の分子量は800以下が好ましく、さらに好ましくは500以下である。なお、一般に分子量が100以下であると、立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する構造をとることが容易でない。
【0023】
前記立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する、分子量1,000以下の化合物(b)は、環状構造を有することが、色調に優れたポリアミド樹脂組成物の点から好ましく、環状構造としては、ピペリジン骨格、ピペラジン骨格、トリアジン骨格等が挙げられ、さらに好ましくは、前記化合物(b)が分子内に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有する化合物である。
【0024】
具体的には、例えば、N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(9−オキシル−9−アザ−8,8,10,10−テトラメチル−3−エチル−1,5−ジオキサスピロ〔5.5〕−3−ウンデシルメチル)メチルイミノジアセテート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)シトレート、トリス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラ(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンテトラアセテート、1,3−ベンゾールジカルボキサミド−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等があげられる。
【0025】
本発明の効果を発現する化合物は、N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンまたは、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0026】
本発明の効果を効率よく、かつ十分発現させるためには、分子量1,000以下の化合物(b)を本発明のポリアミド組成物100重量%に対して0.01〜5重量%配合することが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.3重量%である。分子量1,000以下の化合物(b)の配合量が上記好ましい範囲であると、色調に優れたポリアミド樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0027】
また、上記の立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する、分子量1,000以下の化合物(b)は、1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位からなるポリアミド骨格を主成分とするポリアミドの色調の改善に対して特異的に効果的であり、汎用ナイロンであるナイロン6やナイロン66に使用しても改善効果は小さい。
【0028】
上記の立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基を有する、分子量1,000以下の化合物(b)を配合する時期は特に限定はなく、前記化合物(b)の配合以降、熱によるポリアミドの着色を抑制できるが、例えば1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位を重縮合する前段階、重縮合している途中段階、もしくは重縮合後のポリアミド樹脂と溶融混合することにより配合することができる。溶融混合する際には押出機を用いて溶融混合することもできる。さらにこれら化合物を含むマスターチップをチップブレンドしたり、上記ポリアミド樹脂組成物のペレットと物理的に混合したりした後、紡糸、押出成形、射出成形などの成形に供することにより配合することもできる。ただし、該化合物のポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも1つと反応しうる含窒素官能基が、十分に反応することができる点、着色抑制効果を最大限に発揮させ得る点から、1,5−ペンタンジアミンを主成分とするジアミン単位とジカルボン酸単位を重縮合する前段階もしくは重縮合している途中段階での配合が好ましい。
【0029】
本発明のポリアミド成分には、さらに分子量調節のために公知の末端封止剤を添加することができる。末端封止剤としては、モノカルボン酸が好ましい。その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを挙げることができる。末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などを挙げることができる。本発明では、これらのモノカルボン酸を1種以上用いても良い。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂の製造方法としては、特に限定しないが、例えば1,5−ペンタンジアミンとアジピン酸および/またはセバシン酸からなるジカルボン酸の塩、および水の混合物を、加熱して脱水反応を進行させる加熱重縮合法が一般的に用いられる。また、加熱重縮合後、固相重合することによって、分子量を上昇させることも可能である。固相重合は、100℃〜融点の温度範囲で、真空中、あるいは不活性ガス中で加熱することにより進行し、加熱重縮合では分子量が不十分なポリアミド樹脂を高分子量化することができる。
【0031】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で用途に応じてその他の添加剤を配合することができる。これら添加剤は、ポリアミドの共重合時に添加、もしくはポリアミド樹脂組成物と溶融混合することにより配合することができる。溶融混合する際には押出機を用いて溶融混合することもできる。さらにこれら添加剤を含むマスターチップをチップブレンドしたり、ポリアミド樹脂組成物のペレットと物理的に混合したりした後、紡糸、押出成形、射出成形などの成形に供することにより配合することもできる。
【0032】
このような添加剤の例としては、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(酸化チタン、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホン酸アミド等)、帯電防止剤(4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組合せ等)、充填剤(グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、繊維状、針状、板状充填剤等)、他の重合体(他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)を挙げることができる。
【0033】
かくして得られる本発明のポリアミド樹脂組成物は、色調に優れるので、化合物(b)を配合していないポリアミド(a)(以下、無添加ポリアミド)に比較して色調YIを低減することができる。好ましい態様においては、当該態様のポリアミド樹脂組成物のYIを無添加ポリアミドのYIより1.5以上3未満低減することも可能性であり、より好ましい態様においては、当該態様のポリアミド樹脂組成物のYIを無添加ポリアミドのYIより3以上低減することも可能である。
【0034】
本発明のポリアミド樹脂組成物のYIの上限値としては20以下程度である。なお、ここでいうYI値は後述する方法により測定された値をいう。YIが低いことは、着色の少ないことを表す。着色が大きいと用途範囲が限定され、また製品価値の低下につながるため、YIは低いほうが好ましい。
【0035】
そして本発明のポリアミド樹脂組成物は色調に優れるため、本発明の好ましい態様によれば、例えばポリアミドとしてナイロン56を用いたポリアミド樹脂組成物の色調YIは4.8以下を達成することができ、更に好ましい態様においては3.3以下をも達成できる。ナイロン56の色調YIの下限値としては、−15程度である。同様にナイロン510の場合、色調YIとして0.8以下を達成することができ、更に好ましい態様においては−0.7以下を達成することもできる。ナイロン510の色調YIの下限値としては、−20程度である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[硫酸相対粘度(η)]
試料0.25gを濃度98wt%の硫酸100mlに溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98wt%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
[アミノ基量]
試料1gを50mLのフェノール/エタノール混合溶液(フェノール/エタノール=80/20)に、30℃で振とう溶解させて溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸量を求めた。また、上記フェノール/エタノール混合溶媒(上記と同量)のみを0.02N塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸の量を求める。そしてその差から試料1gあたりのアミノ基量を求めた。
[融点(Tm)]
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料10mgを昇温速度15℃/分にて測定して得た示差熱量曲線において吸熱側に極値を示すピークを融解ピークと判断し、極値を与える温度を融点Tm(℃)とした。なお複数の極値が存在する場合は高温側の極値を融点とした。
[黄化度(YI)]
スガ試験機(株)製のカラーコンピューターを用いてペレットのYI値を測定した。該測定方法はJIS K 7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に従って測定した。
【0037】
なお、実施例、比較例では、当該実施例・比較例で得たポリアミド樹脂組成物のYIを無添加ポリアミドのYIに比較したとき、低減した値が3以上の場合をexcellent、1.5以上3未満の場合をgood、1.5未満をbadと評価した。
参考例1(リジン脱炭酸酵素の調整)
E.coli JM109株の培養は以下のように行った。まず、この菌株をLB培地5mlに1白金耳植菌し、30℃ で24時間振とうして前培養を行った。
【0038】
次に、LB培地50mlを500mlの三角フラスコに入れ、予め115℃、10分間蒸気滅菌した。この培地に前培養した上記菌株を植え継ぎ、振幅30cmで、180rpmの条件下で、1N塩酸水溶液でpHを6.0に調整しながら、24時間培養した。こうして得られた菌体を集め、超音波破砕および遠心分離により無細胞抽出液を調製した。これらのリジン脱炭酸酵素活性の測定を定法に従って行った(左右田健次,味園春雄,生化学実験講座, vol.11上, P.179−191(1976))。
【0039】
リジンを基質とした場合、本来の主経路と考えられるリジンモノオキシゲナーゼ、リジンオキシダーゼおよびリジンムターゼによる転換が起こり得るので、この反応系を遮断する目的で、75℃で5分間、E.coli JM109株の無細胞抽出液を加熱した。さらにこの無細胞抽出液を40%飽和および55%飽和硫酸アンモニウムにより分画した。こうして得られた粗精製リジン脱炭酸酵素溶液を用いて、リジンから1,5−ペンタンジアミンの生成を行った。
参考例2(1,5−ペンタンジアミンの製造)
50mM リジン塩酸塩(和光純薬工業(株)製)、0.1mM ピリドキサルリン酸(和光純薬工業(株)製)、40mg/L−粗精製リジン脱炭酸酵素(参考例1で調製)となるように調製した水溶液1,000mlを、0.1N塩酸水溶液でpHを5.5〜6.5に維持しながら、45℃で48時間反応させ、1,5−ペンタンジアミン塩酸塩を得た。この水溶液に水酸化ナトリウムを添加することによって1,5−ペンタンジアミン塩酸塩を1,5−ペンタンジアミンに変換し、クロロホルムで抽出して、減圧蒸留(1,066.58Pa、70℃)することにより、1,5−ペンタンジアミンを得た。
参考例3(1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の50wt%水溶液の調製)
参考例2で製造した1,5−ペンタメチレンジアミン576.4gを、イオン交換水1,400g中に溶解した水溶液を、氷浴に浸して撹拌しているところに、823.6gのアジピン酸((株)カーク製)を少量ずつ添加していき、中和点近傍では40℃のウオーターバスで加温して内温を33℃とし、pHが8.32の1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の50重量%水溶液2,800gを調整した。
参考例4(1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩の40wt%水溶液の調製)
参考例2で製造した1,5−ペンタメチレンジアミン469.9gを、イオン交換水2,100g中に溶解した水溶液を、氷浴に浸して撹拌しているところに、930.1gのセバシン酸((株)カーク製)を少量ずつ添加していき、中和点近傍では40℃のウオーターバスで加温して内温を33℃とし、pHが7.80の1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩の40重量%水溶液3,500gを調整した。
(実施例1)
参考例3で得た1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の50wt%水溶液に、化合物(b)として:N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン(“Uvinul”(登録商標)4050 FF、BASF社製)を表1記載の割合で、螺旋帯撹拌翼をもった撹拌機と熱媒ジャケットを装備した内容積5Lのバッチ式重合缶に仕込んだ(原料調整工程)。
【0040】
次に重合缶内を密閉化し、充分に窒素置換した後に熱媒を加熱して水溶液を濃縮した(濃縮工程)。このとき缶内温度を200℃、缶内圧力(ゲージ圧)を0.2MPaに制圧しながら、水溶液中の原料の濃度が85wt%となるまで濃縮した。缶内の水溶液の濃度は留出水量から判断した。
【0041】
そして濃縮が終了して熱媒温度を290℃まで上昇させ、缶内圧力(ゲージ圧)1.7MPaに到達するまで昇圧した(昇圧工程)。この後缶内圧力(ゲージ圧)を1.7MPaで制圧し、缶内温度が255℃となるまで維持した(制圧工程)。さらに熱媒温度を286.5℃に変更し、50分間かけて大気圧まで放圧した(放圧工程)。さらに缶内圧力(ゲージ圧)を−13kPaまで減じ30分間維持して重合反応を停止した(減圧工程)。その後缶内に0.5MPa(絶対圧)の窒素圧をかけ、重合により得られたポリアミド樹脂組成物を直径約3mmのストランド状に押し出し、長さ約4mmにカッティングし、ペレットを得た(吐出工程)。得られたポリアミド樹脂組成物の硫酸相対粘度(η)は2.68、アミノ末端基量は5.73×10−5mol/g、Tmは254℃であった。
(実施例2〜6)
実施例1に示す原料調整工程にて、耐熱安定剤:N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン(“Uvinul”(登録商標)4050 FF、BASF社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例7〜12)
実施例1に示す原料調整工程にて用いた耐熱安定剤のかわりに、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(商品名:トリアセトンジアミン、デグサ・ヒュルス社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例13)
参考例3で得た1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩の40wt%水溶液に、耐熱安定剤:N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン(“Uvinul”(登録商標)4050 FF、BASF社製)を表1記載の割合で、螺旋帯撹拌翼をもった撹拌機と熱媒ジャケットを装備した内容積5Lのバッチ式重合缶に仕込んだ(原料調整工程)。
【0042】
次に重合缶内を密閉化し、充分に窒素置換した後に熱媒を加熱して水溶液を濃縮した(濃縮工程)。このとき缶内温度を200℃、缶内圧力(ゲージ圧)を0.2MPaに制圧しながら、水溶液中の原料の濃度が85wt%となるまで濃縮した。缶内の水溶液の濃度は留出水量から判断した。
【0043】
そして濃縮が終了して熱媒温度を280℃まで上昇させ、缶内圧力(ゲージ圧)1.7MPaに到達するまで昇圧した(昇圧工程)。この後缶内圧力(ゲージ圧)を1.7MPaで制圧し、缶内温度が255℃となるまで維持した(制圧工程)。さらに熱媒温度を275℃に変更し、50分間かけて大気圧まで放圧した(放圧工程)。さらに缶内圧力(ゲージ圧)を−29kPaまで減じ30分間維持して重合反応を停止した(減圧工程)。その後缶内に0.5MPa(絶対圧)の窒素圧をかけ、重合により得られたポリアミド樹脂組成物を直径約3mmのストランド状に押し出し、長さ約4mmにカッティングし、ペレットを得た(吐出工程)。得られたポリアミド樹脂組成物の硫酸相対粘度(η)は2.60、アミノ末端基量は4.41×10−5mol/g、Tmは215℃であった。
(実施例14)
実施例13に示す原料調整工程にて用いた耐熱安定剤のかわりに、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(商品名:トリアセトンジアミン、デグサ・ヒュルス社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例13と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例15)
実施例1に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN56/N66=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩とアジピン酸・ヘキサメチレンジアミン塩を仕込み、耐熱安定剤:N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン(“Uvinul”(登録商標)4050 FF、BASF社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例16)
実施例1に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN56/N66=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩とアジピン酸・ヘキサメチレンジアミン塩を仕込み、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(商品名:トリアセトンジアミン、デグサ・ヒュルス社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例17)
実施例1に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN56/N6=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩とε−カプロラクタムを仕込み、耐熱安定剤:N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン(“Uvinul”(登録商標)4050 FF、BASF社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例18)
実施例1に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN56/N6=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩とε−カプロラクタムを仕込み、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(商品名:トリアセトンジアミン、デグサ・ヒュルス社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例19)
実施例13に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN510/N66=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩とアジピン酸・ヘキサメチレンジアミン塩を仕込み、耐熱安定剤:N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン(“Uvinul”(登録商標)4050 FF、BASF社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例20)
実施例13に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN510/N66=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩とアジピン酸・ヘキサメチレンジアミン塩を仕込み、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(商品名:トリアセトンジアミン、デグサ・ヒュルス社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例21)
実施例13に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN510/N6=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩とε−カプロラクタムを仕込み、耐熱安定剤:N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン(“Uvinul”(登録商標)4050 FF、BASF社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(実施例22)
実施例13に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN510/N6=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩とε−カプロラクタムを仕込み、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(商品名:トリアセトンジアミン、デグサ・ヒュルス社製)を表1記載の各割合で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。実施例1〜22で得たポリアミド樹脂組成物の組成および特性を表1、表2に示す。なお、表1、表2中、耐熱剤として用いた、ヒンダードアミン系(1)(“Uvinul”(登録商標)4050 FF)の化合物名は、N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンであり、ヒンダードアミン系(2)(商品名:“TAD”)の化合物名は、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
(比較例1)
実施例1に示す原料調整工程にて、耐熱安定剤:N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミン(“Uvinul”(登録商標)4050 FF、BASF社製)を無添加で同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(比較例2〜6)
実施例1に示す原料調整工程にて、耐熱安定剤の種類と各割合で表2記載のとおりに変更し、同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(比較例7)
実施例13に示す原料調整工程にて、耐熱安定剤の種類と各割合で表2記載のとおり同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例13と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(比較例8)
実施例1に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN56/N66=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩とアジピン酸・ヘキサメチレンジアミン塩を仕込み、耐熱安定剤の種類と各割合で表2記載のとおり同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(比較例9)
実施例1に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN56/N6=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩とε−カプロラクタムを仕込み、耐熱安定剤の種類と各割合で表2記載のとおり同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例1と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(比較例10)
実施例13に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN510/N66=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩とアジピン酸・ヘキサメチレンジアミン塩を仕込み、耐熱安定剤の種類と各割合で表2記載のとおり同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例13と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(比較例11)
実施例13に示す原料調整工程にて、ポリマー構成比がN510/N6=95:5となるように1,5−ペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩とε−カプロラクタムを仕込み、耐熱安定剤の種類と各割合で表2記載のとおり同様の重合缶に仕込んだ。その後の操作は実施例13と同様の方法にてポリアミド樹脂組成物を得た。
(比較例12〜14)
アジピン酸・ヘキサメチレンジアミン塩の53重量%水溶液に、耐熱安定剤を表2記載の割合で、螺旋帯撹拌翼をもった撹拌機と熱媒ジャケットを装備した内容積5Lのバッチ式重合缶に仕込んだ(原料調整工程)。
【0047】
次に重合缶内を密閉化し、充分に窒素置換した後に熱媒を加熱して水溶液を濃縮した(濃縮工程)。このとき缶内温度を200℃、缶内圧力(ゲージ圧)を0.2MPaに制圧しながら、水溶液中の原料の濃度が85wt%となるまで濃縮した。缶内の水溶液の濃度は留出水量から判断した。
【0048】
そして濃縮が終了して熱媒温度を290℃まで上昇させ、缶内圧力(ゲージ圧)1.7MPaに到達するまで昇圧した(昇圧工程)。この後缶内圧力(ゲージ圧)を1.7MPaで制圧し、缶内温度が255℃となるまで維持した(制圧工程)。さらに熱媒温度を285℃に変更し、50分間かけて大気圧まで放圧した(放圧工程)。さらに缶内圧力(ゲージ圧)を−13kPaまで減じ30分間維持して重合反応を停止した(減圧工程)。その後缶内に0.5MPa(絶対圧)の窒素圧をかけ、重合により得られたポリアミド樹脂組成物を直径約3mmのストランド状に押し出し、長さ約4mmにカッティングし、ペレットを得た(吐出工程)。
(比較例15〜17)
ε―カプロラクタムの94重量%水溶液に、耐熱安定剤を表2記載の割合で、螺旋帯撹拌翼をもった撹拌機と熱媒ジャケットを装備した内容積5Lのバッチ式重合缶に仕込んだ(原料調整工程)。
【0049】
次に重合缶内を密閉化し、充分に窒素置換した後に熱媒温度を265℃まで上昇させ、缶内圧力(ゲージ圧)1.0MPaに到達するまで昇圧した(昇圧工程)。この後缶内圧力(ゲージ圧)を1.0MPaで制圧し、缶内温度が255℃となるまで維持した(制圧工程)。さらに熱媒温度を255℃に変更し、40分間かけて大気圧まで放圧した(放圧工程)。さらに缶内圧力(ゲージ圧)を常圧で90分間維持して重合反応を停止した(常圧工程)。その後缶内に0.5MPa(絶対圧)の窒素圧をかけ、重合により得られたポリアミド樹脂組成物を直径約3mmのストランド状に押し出し、長さ約4mmにカッティングし、ペレットを得た(吐出工程)。比較例1〜17で得たポリアミド樹脂組成物の組成および特性を表3、表4に示す。なお、表3、表4中、耐熱剤として用いた、ヒンダードアミン系(1)(“Uvinul”(登録商標)4050 FF)の化合物名は、N,N’−ビス(ホルミル)−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンであり、ヒンダードアミン系(2)(商品名:TAD)の化合物名は、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであり、ヒンダードアミン系(3)(“TINUVIN”(登録商標)770) の化合物名は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートであり、ヒンダードアミン系(4)(“TINUVIN”(登録商標)144) の化合物名は、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネートであり、ヒンダードアミン系(5)(“TINUVIN”(登録商標)765) の化合物名は、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートであり、ヒンダードアミン系(6) の化合物名は、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−N(−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンであり、ヒンダードフェノール系(“Irganox”(登録商標)1330) の化合物名は、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾールである。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0052】
植物由来原料から得られた1,5−ペンタンジアミンを構成成分とする、ナイロンであり、かつ、耐熱安定性、色調に優れているため、樹脂成形用、フィルム用、および繊維用の環境配慮型プラスチックとして好ましく適用できる。
【0053】
また、ナイロン56は、吸放湿性に優れた特性を持つため、繊維製品、特に衣料用繊維製品に好ましく適用できる。とりわけ、パンティ・ストッキングなどのインナー用途に好ましく適用できる。