特許第6094483号(P6094483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094483
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】眼軸長測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20170306BHJP
   A61B 8/10 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   A61B3/10 R
   A61B3/10 U
   !A61B8/10
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-522944(P2013-522944)
(86)(22)【出願日】2012年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2012066549
(87)【国際公開番号】WO2013002332
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2011-144497(P2011-144497)
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 みゆき
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−161218(JP,A)
【文献】 特開2008−029468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼軸長測定装置は、
光干渉計を有し被検眼の眼軸長を非接触にて光学的に測定するための測定光学系と、前眼部観察像を撮像する撮像光学系とを内蔵する測定ユニットと、
前記測定ユニットと被検眼との相対位置を調整するための駆動機構と、
前記駆動機構駆動させるために検者によって操作される操作部と、
前記測定ユニットを制御すると共に、前記操作部から出力される操作信号に基づいて前記駆動機構の駆動を制御する制御器と、備え、
前記測定光学系を用いて被検眼の眼軸長を測定する光干渉測定モードと、超音波プローブを用いて被検眼の軸方向長さを測定する超音波測定モードと、との間で測定モードの切換が可能であり、
前記制御器は、前記超音波測定モードにおいて、前記超音波プローブを用いて被検眼の軸方向長さを測定する際の設定を、前記操作部から入力される操作信号に基づいて変更することを特徴とする眼軸長測定装置。
【請求項2】
駆動機構は、前記測定ユニットを上下方向に移動させるための第1駆動機構であることを特徴とする請求項1の眼軸長測定装置。
【請求項3】
駆動機構は、顎受を上下方向に移動させるための第2駆動機構であることを特徴とする請求項1の眼軸長測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置は、被検眼の眼軸長を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼軸長測定装置として、光干渉計を用いて眼軸長を測定する装置、超音波プローブを用いて眼軸長を測定する装置が知られている。
【0003】
光干渉計を用いて眼軸長を測定する装置に超音波プローブを設け、超音波を用いて眼軸長を測定するコンボ機が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−161218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波プローブを用いて眼軸長を測定する場合、受信された信号のゲイン調整、受信波形のゲート位置の調整が行われる。超音波プローブを用いて角膜厚を測定する場合、角膜上における複数の位置での測定結果が順次プロットされる。
【0006】
しかしながら、コンボ機の場合、超音波プローブを用いて眼軸長を測定する専用の装置と比較すると、操作性が損なわれたり、操作系が複雑になる可能性がありうる。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑み、光干渉と超音波のコンボ機であっても、検者が容易に超音波測定を行うことができることを技術課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】
(1)
眼軸長測定装置は、
光干渉計を有し被検眼の眼軸長を非接触にて光学的に測定するための測定光学系と、前眼部観察像を撮像する撮像光学系とを内蔵する測定ユニットと、
前記測定ユニットと被検眼との相対位置を調整するための駆動機構と、
前記駆動機構駆動させるために検者によって操作される操作部と、
前記測定ユニットを制御すると共に、前記操作部から出力される操作信号に基づいて前記駆動機構の駆動を制御する制御器と、備え、
前記測定光学系を用いて被検眼の眼軸長を測定する光干渉測定モードと、超音波プローブを用いて被検眼の軸方向長さを測定する超音波測定モードと、との間で測定モードの切換が可能であり、
前記制御器は、前記超音波測定モードにおいて、前記超音波プローブを用いて被検眼の軸方向長さを測定する際の設定を、前記操作部から入力される操作信号に基づいて変更することを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記問題点を鑑み、光干渉と超音波のコンボ機であっても、検者が容易に超音波測定を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本装置の実施態様の一つについて図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る眼軸長測定装置の外観構成図である。図2は、本実施形態に係る眼軸長測定装置の制御ブロック図である。
【0012】
本実施形態の装置の本体部10は、基台1と、顔支持ユニット2と、測定ユニット(測定部)4と、ジョイスティック5と、上下動スイッチ6と、第1駆動部7と、第2駆動部8と、モニタ9を含む。顔支持ユニット2は、基台1に取り付けられ、顎受2aと、額当て2bとを有する。第1駆動部7は、被検眼に対して測定ユニット4をXYZ方向に移動させるための機構を有する。第1駆動部7には、例えば、メカニカルに測定ユニット4を移動させる駆動機構、モータ駆動により測定ユニット4を移動させる駆動機構、又はこれらの組み合わせが用いられる。第2駆動部8は、モータを有し、モータの駆動によって顎受2aを上下動させるための機構を有する。
【0013】
第1駆動部7、第2駆動部8は、測定ユニット4と眼Eとの相対位置を調整するための駆動機構として用いられる。第1駆動部7、第2駆動部8の詳しい構成については、例えば、特開2004−174155号公報を参考にされたい。
【0014】
測定ユニット4は、測定光学系4aを内蔵する。測定光学系4aは、光源と、光干渉計と、受光素子とを有し、眼軸長を非接触にて光学的に測定する。光干渉計は、例えば、光源からの光を眼Eに導光した後、光路長を調整することにより眼底からの反射光と角膜からの反射光を干渉させる。光干渉計は、干渉された光(干渉光)を受光素子に受光させる。測定光学系4aの各部材は、制御部80に結合され、制御部80は、受光素子から出力される干渉信号に基づいて眼軸長を測定する。測定光学系4aの詳しい構成及び動作については、特開2010−184048号公報を参考文献とする。本装置は、被検者と検者とが本体部10を挟んで対向する構成となっている。
【0015】
ジョイスティック5は、検者によって操作される。上下動スイッチ6は、例えば、本体部10における検者側に設けられる。ジョイスティック5は、例えば、メカニカルな機構、電動機構からなる。第1駆動部7は、ジョイスティック5へのチルト操作に従って測定ユニット4を前後左右に移動させる。
【0016】
ジョイスティック5は、回転ノブ5aと、測定開始スイッチ5bとを有する。回転ノブ5aは、回転検知器(例えば、ロータリーエンコーダ)を有し、回転ノブの回転信号(例えば、回転速度、回転量等)を検出する。第1駆動部7は、回転ノブ5aへの回転操作に従って測定ユニット4を上下に移動させる。
【0017】
回転ノブ5aは、手動操作にて第1駆動部7を駆動させるために検者によって操作される操作部として用いられる。測定開始スイッチ5bは、測定ユニット4における測定開始のトリガ信号を入力するために検者によって操作される操作部として用いられる。
【0018】
上下動スイッチ6は、検者によって操作される。上下動スイッチ6は、例えば、本体部10における検者側に設けられる。上下動スイッチ6は、顎受2aを上方向に移動させるためのUPスイッチ6aと、顎受2bを下方向に移動させるためのDOWNスイッチ6bと、を有する。第2駆動部8は、上下動スイッチ6への操作に従って顎受2aを上下させる。
【0019】
上下動スイッチ6は、手動操作にて第2駆動部8を駆動させるために検者によって操作される操作部として用いられる。
【0020】
モニタ9は、タッチパネル付モニタであって、前眼部観察像、測定結果、測定パラメータ等を表示する。モニタ9は、例えば、本体部10における検者側に設けられる。
【0021】
制御部80は、測定ユニット4を制御して眼軸長を測定すると共に、操作部(例えば、回転ノブ5a、測定開始スイッチ5b、上下動スイッチ6等)から出力される操作信号に基づいて駆動機構(例えば、第1駆動部7、第2駆動部8)の駆動を制御する
本装置は、超音波プローブ302が予め搭載されている又は装着可能である。超音波プローブ302は、眼Eの軸方向における長さ情報を得るためのデバイスとして用いられる。超音波プローブ302(図2参照)は、トランスジューサ312を有するAモード用又はパキモード用の超音波プローブであり、超音波によって眼軸長を測定するために用いられる。超音波プローブ302は、例えば、検者に把持可能な構成を有し、ケーブルを介して本体部10に接続されている。
【0022】
超音波プローブ302によって取得されたエコー信号の強度データは、超音波信号として検出される。制御部80は、クロック発生回路311を駆動制御する。制御部80は、送信器317を介してトランスデューサ312から超音波を発信(送波)させる。眼の各組織からの反射エコーは、トランスデューサ312で受信(受波)され、増幅器318を介してA/D変換器313でデジタル信号に変換される。デジタル信号化された反射エコー情報は、サンプリングメモリ316に一旦記憶される。制御部80は、サンプリングメモリ316に記憶されたエコー情報に基づいて測定データを作成してモニタ9に表示する。
【0023】
制御系の構成について説明する。制御部80は、装置全体の制御、測定値の算出等を行う。制御部80は、測定ユニット4の各部材、超音波プローブ302、モニタ9、第1駆動部7と、第2駆動部8、メモリ85、回転ノブ5a、測定開始スイッチ5b、上下動スイッチ6、フットスイッチ400が接続されている。
【0024】
本装置は、測定ユニット4aを用いて眼の軸方向長さを測定する光干渉測定モード(第1測定モード)と、超音波プローブ302を用いて眼の軸方向長さを測定する超音波測定モード(第2測定モード)と、に設定可能であり、自動もしくは手動によって測定モードが切換可能な構成となっている。モード切換器(例えば、モード切換スイッチ、制御部70、等)は、モニタ9のタッチパネル、又は本体部20に設けられる。
【0025】
<光干渉測定モード(第1測定モード)>
以下、本装置の動作の一例について説明する。本装置は、初期設定として第1測定モードに設定される。被検者の顔は、顔支持ユニット2によって支持される。検者は、被検者に合うように顎受2aの高さを調整するため、上下動スイッチ6を操作する。制御部80は、上下動スイッチ6からの操作信号に基づいて第2駆動部8の駆動を制御することにより、顎受2aを上方向又は下方向に移動させる。
【0026】
モニタ9は、図示なき前眼部撮像光学系によって撮像された眼Eの前眼部像をモニタに表示する。検者は、モニタ9上の前眼部像を観察する。検者は、測定光学系4aの光軸を眼Eに合わせるため、ジョイスティック5及び回転ノブ5aを操作する。制御部80は、回転ノブ5aからの操作信号に基づいて第1駆動部8の駆動を制御することにより測定ユニット4を上方向又は下方向に移動させる。ジョイスティック5が電動ジョイスティックの場合、制御部80は、第1駆動部8の駆動を制御することにより測定ユニット4を前後左右方向に移動させる。
【0027】
アライメントの完了後、検者は、測定開始スイッチ5bを押す。制御部80は、スイッチ5bからの操作信号をトリガとして、眼軸長の測定を開始する。制御部80は、測定光学系4aの光源を発光させた後、測定光学系4aの干渉計の光路長を調整する。制御部80は、光路長の調整の結果、受光素子によって検出された干渉信号に基づいて眼Eの眼軸長値を得る。制御部80は、測定結果をモニタ9に表示する。
【0028】
眼Eが強度の白内障眼のような場合、測定光が混濁部によって遮光(散乱)される。その結果、受光素子に散乱光が入射してしまうため、測定精度が低下する。この対策として、検者は、超音波プローブ302を用いる第2測定モードにて眼軸長を測定する。
【0029】
<超音波測定モード(第2測定モード)>
本実施形態の装置は、第2測定モードとして、眼軸長測定モード(Aモード)、角膜厚測定モード(パキモード)を有し、設定された各モードに応じて動作する。超音波プローブ302は、各測定モードに応じて用意され、適宜、本体部10に接続される。
【0030】
超音波測定は、本体部1の右側又は左側に設置される顔支持ユニット(顔支持ユニット2とは別構成)に被検者の顔が固定された状態で行われる。その顔支持ユニットは、電動光学台に取り付けられる。
【0031】
制御部80は、超音波プローブ302を用いて眼を測定する場合において、第1測定モードでの測定に用いられる操作部(例えば、回転ノブ5a、測定開始スイッチ5b、上下動スイッチ6等)から出力される操作信号に基づいて,超音波プローブ302を用いて眼を測定する際の設定を変更する。
【0032】
以下、眼軸長測定モードでの動作の一例を説明する。図3は眼軸長測定モードでの表示画面の一例を示す図である。概して、制御部80は、上下動スイッチ6からの操作信号がエコー信号のゲインの調整に利用されるように装置全体を制御する。制御部80は、回転ノブ5aからの操作信号が網膜検出ゲートの移動に使用されるように装置全体を制御する。制御部80は、測定開始スイッチ5bからの操作信号が超音波プローブ302における超音波の送受信の開始、及び測定値の取得に利用されるように装置全体を制御する。
【0033】
例えば、制御部80は、超音波プローブ302を用いて眼軸長を測定する場合において、超音波プローブ302によって検出された受信波形Wと、所定部位に対応するゲート位置を示すゲート指標Gをモニタ9に表示する。制御部80は、回転ノブ5aから入力される操作信号に基づいて受信波形に対するゲート位置を調整する。制御部80は、上下動スイッチ6から入力される操作信号に基づいて超音波プローブ302によって検出された信号のゲインを調整する。
【0034】
例えば、制御部80は、測定開始スイッチ5bからの操作信号に応じて超音波プローブ302での超音波の送受信を開始する。制御部80は、超音波の送受信の開始後における測定開始スイッチ5bからの操作信号に応じて,超音波プローブ302によって検出された信号に基づく長さ情報を取得し、取得された長さ情報をモニタに表示する。
【0035】
まず、検者は、眼Eに対し点眼麻酔を行う。検者は、一方の手を使ってプローブ302を持った状態においてプローブ302の先端を角膜に当てると共に、他方の手を使って回転ノブ5a、測定開始スイッチ5b、上下動スイッチ6を操作する。
【0036】
検者は、プローブ302の先端を眼Eに接触させた後、眼Eからエコー信号を得るため、測定開始スイッチ5bを押す。測定開始スイッチ5bからの信号をトリガとして、制御部80は、プローブ302の動作を制御する。制御部80は、眼Eからの反射波をトランスデューサ312によって受信するため、トランスデューサ312から超音波を眼Eに照射する。
【0037】
制御部80は、プローブ302によって検出されたエコー信号の波形(Aモード波形W)をモニタ9上に表示する(図3の参照)。Aモード波形Wにおいて、左側が角膜側、右側が眼底側である。モニタ9上には、現在設定されているゲインが数値として表示され、ゲインの増減に応じて数値が増減される。Aモード波形Wと共に表示された点線マークGは、網膜エコーの検出ゲートを示す指標であり、制御部80によって表示位置が調整される。
【0038】
<ゲインの調整>
検者は、所望の波形を得るため、プローブ302の位置、角度を調整すると共に、上下動スイッチ6を操作する。Aモード波形Wの振幅が許容レベルより小さい場合、検者は、UPスイッチ6aを操作する。制御部80は、UPスイッチ6aからの操作信号に基づいて増幅器318におけるゲインを増加させる。この結果として、A/D変換器318に入力されるエコー信号の増幅率が上がり、Aモード波形Wの振幅が大きくなる。
【0039】
一方、Aモード波形Wの振幅が大きすぎる場合(例えば、飽和している場合)、検者は、DOWNスイッチ6bを操作する。制御部80は、DOWNスイッチ6bからの操作信号に基づいて増幅器318におけるゲインを減少させる。この結果として、A/D変換器318に入力されるエコー信号の増幅率が下がり、Aモード波形Wの振幅が小さくなる。
【0040】
<ゲートの調整>
混濁の影響によって網膜エコーの波形が不明瞭な場合、又は眼内レンズ等によってAモード波形上に余分なエコーが観察された場合、検者は、網膜検出ゲートを変更するため、回転ノブ5aを操作する。制御部80は、回転ノブ5aが時計回りに回転されるのに従って、眼の深い方向(右方向)に矢印Gを移動させる。制御部80は、回転ノブ5aが反時計回りに回転されるのに従って、眼の浅い方向(左方向)に矢印Gを移動させる。
【0041】
検者は、実際の網膜エコーだと思われるエコー信号の直前に検出ゲートGを合わせる。変更された検出ゲートGの位置に基づき、制御部80は、検出ゲートGより奥側(眼の深い方向)における直近のエコー信号を網膜エコーとして設定すると共に、設定された網膜エコーを測定の終点として測定値を変更する。
【0042】
所望の波形が得られた後、検者は、測定開始スイッチ5b、モニタ9上のフリーズスイッチF、又はフットスイッチ400を押す。その操作信号に応じて、制御部80は、測定を開始する。制御部80は、サンプリングメモリ316に記憶されるエコー情報に基づいて測定データを算出する。制御部80は、算出された測定データ(例えば、測定値)をモニタ9上に表示する(図3中のM参照)。測定開始スイッチ5b、モニタ9上のフリーズスイッチF、又はフットスイッチ400が複数回押された場合、制御部80は、各操作信号に応じて測定し、複数回(例えば、10回)のAモード計測における各測定結果(例えば、測定値)を示すリストMを画面の右側に表示する。測定データを取得して表示する場合、制御部80は、連続的に検出されるエコー情報に基づいて測定データを連続的に算出し、操作信号が出力されたときの測定データを取り込んで、モニタ9に表示してもよい。
【0043】
以上のように超音波を用いて眼軸長を測定することにより、白内障眼であっても特別な影響を受けることなく、信頼性の高い測定結果を得ることができる。さらに、上記のように操作系を構成することによって、光干渉式眼軸長測定装置に超音波プローブ302を取り付けた装置構成であっても、簡単な構成でかつ、操作性を損なうことなしに、眼軸長を測定できる。
【0044】
上記実施形態の一つとして、回転ノブ5aを第2モード(眼軸長計測モード)でのゲート位置の変更、上下動スイッチ6をゲインの調整に用いる構成が説明された。これに加えて、制御部80は、モニタ9に設けられたタッチパネルからの操作信号を、ゲート位置の変更、ゲインの調整において利用するようにしてもよい。
【0045】
上記実施形態では、網膜ゲートの位置調整のために回転ノブ5aを用いる構成としたが、眼のある部位に関するゲートの位置調整のために回転ノブ5aを用いる構成であればよい。例えば、制御部80は、角膜前面、水晶体前面/後面を検出するためのゲート位置の調整のために、回転ノブ5aが用いられる。
【0046】
次に、角膜厚測定モードでの動作の一例を説明する。図4図5は角膜厚測定モードでの表示画面の一例を示す図である。概して、制御部80は、上下動スイッチ6からの操作信号がエコー信号のゲインの調整に利用されるように装置全体を制御する。制御部80は、回転ノブ5aからの操作信号が測定点の選択に使用されるように装置全体を制御する。制御部80は、測定開始スイッチ5bからの操作信号が超音波プローブ302における超音波の送受信の開始、及び測定値の取得に利用されるように装置全体を制御する。
【0047】
制御部80は、超音波プローブ302を用いて角膜厚を測定する場合において、角膜上における複数の測定点を示すマップCとマップC上において現在の測定位置を示す選択表示(図4図5のB参照)をモニタ9に表示する。制御部80は、回転ノブ5aから入力される操作信号に基づいて現在の測定位置として選択する測定点を変更する。制御部80は、上下動スイッチ6から入力される操作信号に基づいて超音波プローブ302によって検出された信号のゲインを調整する。
【0048】
制御部80は、測定開始スイッチ5bからの操作信号に応じて超音波プローブ302での超音波の送受信を開始する。制御部80は、超音波の送受信の開始後における測定開始スイッチ5bからの操作信号に応じて,超音波プローブ302によって検出された信号に基づく長さ情報を取得し、取得された長さ情報をモニタに表示する。
【0049】
検者は、一方の手を使ってプローブ302を持った状態においてプローブ302の先端を角膜に当てると共に、他方の手を使って測定開始スイッチ5b、上下動スイッチ6を操作する。測定点の選択位置を変更する場合、検者は、プローブ302の先端を角膜から離した後、回転ノブ5aを操作する。その後、検者は、異なる測定点に関して、プローブ302の先端を角膜に当てる。
【0050】
制御部80は、複数の測定点を示す角膜厚マップCをモニタ9の左側に表示する。角膜厚マップCは、例えば、角膜中心を中心とする二次元マップである。マップCの種類は適宜変更可能であり、角膜中心とするスクエアマップ、ラジアルマップ、などが考えられる。各マップにおける測定点の数についても、複数から選択可能である。
【0051】
図4において、マップCは角膜中心を中心に放射状に配置されている。各測定点に関して、角膜中心に対する方向と距離は、眼Eの角膜中心に対する方向と距離を表す。実線にて示された部分C1〜C9は、測定点として設定された部分である。点線で示された部分は、測定点として設定されていない部分である。
【0052】
矩形Bで囲まれた測定点は、複数の測定点C1〜C9において現在の測定位置として選択された測定点(選択位置)を示す。初期段階においては、角膜中心に対応する測定点C1が予め選択されている。検者は、眼Eに対して点眼麻酔を行った後、プローブ302の先端を眼Eの角膜中心に接触させる。検者は、眼Eからエコー信号を得るため、測定開始スイッチ5bを押す。
【0053】
測定開始スイッチ5bからの信号をトリガとして、制御部80は、プローブ302の動作を制御する。制御部80は、眼Eからの反射波をトランスデューサ312によって受信するため、トランスデューサ312から超音波を眼Eに照射する、
制御部80は、プローブ302によって検出されたエコー信号の波形(Aモード波形W)をモニタ9上に表示する(図4の参照)。モニタ9上には、現在設定されているゲインが数値として表示され、ゲインの増減に応じて数値が増減される。
【0054】
<ゲインの調整>
検者は、所望の波形を得るため、プローブ2の位置、角度を調整すると共に、上下動スイッチ6を操作する。上下動スイッチ6からの操作信号に基づくゲインの増減については、眼軸長測定モード(Aモード)と同様である。このため、詳しい説明を省略する。
【0055】
所望の波形が得られた後、検者は、測定開始スイッチ5b、モニタ9上のフリーズスイッチF、又はフットスイッチ400を押す。その操作信号に応じて、制御部80は、測定を開始する。制御部80は、サンプリングメモリ316に記憶されるエコー情報に基づいて測定データを算出する。制御部80は、算出された測定データをモニタ9上に表示する(図4中のM参照)。選択位置での測定結果が得られると、制御部80は、選択された測定点(測定点C1)上に測定値を表示すると共に、選択位置(測定点C1)での角膜厚値としてメモリ85に記憶する。測定開始スイッチ5b、モニタ9上のフリーズスイッチF又はフットスイッチ400が複数回押された場合、制御部80は、各操作信号に応じて測定し、複数回(例えば、10回)の角膜厚計測における各測定結果(例えば、測定値)を示すリストMを画面の右側に表示する。角膜厚を取得して表示する場合、制御部80は、連続的に検出されるエコー情報に基づいて角膜厚を連続的に算出し、操作信号が出力されたときの角膜厚を取り込んで、モニタ9に表示してもよい。
【0056】
<測定点の変更>
図5は選択位置が変更された状態の画面表示の例を示す図である。角膜中心での測定が完了した後、検者は、選択位置を変更するため、回転ノブ5aを操作する。制御部80は、回転ノブ5aが回転されるのに従って、複数の測定点C1〜C9の中で選択位置として設定する測定点を変更する。制御部80は、変更された選択位置に対応する測定点を矩形Bにて囲む。
【0057】
回転ノブ5aが時計回りに回転された場合、複数の測定点C1〜C9の中での選択位置が時計回りに順次変更され、回転ノブ5aが反時計回りに回転された場合、選択位置が反時計回りに順次変更される。現在の測定点の変更に応じて、測定点C1〜C9の中で矩形Bが移動される。
【0058】
図5に示すように、測定点C2が選択された後、検者は、眼Eの角膜中心から左斜め上方の角膜部位に,プローブ302の先端を接触させる。所望の波形が得られた後、検者は、測定開始スイッチ5b、モニタ9上のフリーズスイッチF、又はフットスイッチ400を押す。その操作信号に応じて、制御部80は、プローブ302から出力されるエコー情報に基づいて角膜厚を計測する。計測された角膜厚に基づき、制御部80は、算出された測定データ(例えば、測定値)をモニタ9上に表示する。例えば、制御部80は、マップ上の測定点C2上に測定値を表示すると共に、選択位置(測定点C2)での角膜厚値としてメモリ85に記憶する。
【0059】
検者による回転ノブ5aの操作に応じて、制御部80は、測定点C1〜C9の間で、選択位置として選択される測定点を順次変更する。制御部80は、順次選択された各測定点での角膜厚をメモリ75に記憶させることにより、角膜厚の分布情報を得ていく。制御部80は、測定点C1〜C9での角膜厚の測定が完了したら、角膜厚分布の測定を終了する。制御部80は、各測定点での測定結果を含むマップMをモニタ9に表示する。
【0060】
以上のように超音波を用いて角膜厚を測定することにより、白内障眼であっても特別な影響を受けることなく、信頼性の高い測定結果を得ることができる。さらに、上記のように操作系を構成することによって、光干渉式眼軸長測定装置に超音波プローブ302を取り付けた装置構成であっても、簡単な構成でかつ、操作性を損なうことなしに、角膜厚を測定できる。
【0061】
上記実施形態の一つとして、回転ノブ5aを第2モード(角膜厚計測モード)での測定点の変更、上下動スイッチ6をゲインの調整に用いる構成が説明された。これに加えて、制御部80は、モニタ9に設けられたタッチパネルからの操作信号を、測定点の変更、ゲインの調整において利用するようにしてもよい。
【0062】
上記実施系形態の一つとして、制御部80は、測定開始スイッチ5b、モニタ9上のフリーズスイッチF、又はフットスイッチ400からの操作信号をトリガとして、測定を開始したが、これに限定されない。本実施形態では、制御部80は、予め設定された許容レベルをエコー信号の振幅が超えた時点で、自動的に測定を開始してもよい。制御部80は、複数回における測定値が安定し、かつ、規定回数分の測定値が得られるまで、連続的に測定データを取り込むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本実施形態に係る眼軸長測定装置の外観構成図である。
図2】本実施形態に係る眼軸長測定装置の制御ブロック図である。
図3】眼軸長測定モードでの表示画面の一例を示す図である。
図4】角膜厚測定モードでの表示画面の一例を示す図である。
図5】角膜厚測定モードでの表示画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
4 測定ユニット
4a 測定光学系
5 ジョイスティック
5a 回転ノブ
5b 測定開始スイッチ
6 上下動スイッチ
7 第1駆動部
8 第2駆動部
80 制御部
302 超音波プローブ





図1
図2
図3
図4
図5