【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、かかる課題を解決し得る物質としてPD−1アゴニストに着目し、さらにこれを特定の用量および用法で処方することによって上記課題を解決することを見出して、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] PD−1アゴニストを有効成分とする薬剤であって、
(a)最初の投与から1カ月以内の期間に1〜10回投与され、
(b)該PD−1アゴニストの合計投与量が20μg/kg〜1250μg/kgであり、
(c)最後の投与から3カ月以上投与の必要のないことを特徴とする自己免疫疾患の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[2] PD−1アゴニストを有効成分とする薬剤であって、
(a)最初の投与から1カ月以内の期間に1〜10回投与され、
(b)該PD−1アゴニストの合計投与量が20μg/kg〜1250μg/kgであり、
(c)最後の投与から3カ月以上投与を行わないことを特徴とする自己免疫疾患の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[3] 自己免疫疾患が、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、甲状腺機能亢進症、自己免疫性副腎機能不全、自己免疫性溶血性貧血、多発性硬化症、乾癬性関節炎、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎または強皮症である前記[1]または[2]記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[4] 自己免疫疾患が、I型糖尿病、多発性硬化症、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)である前記[1]または[2]記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[5] 自己免疫疾患が、I型糖尿病である前記[4]記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[6] I型糖尿病の患者が、発症初期の患者もしくは症状軽度の患者である前記[5]記載の症状進展抑制および/または治療剤。
[7] 発症が確認されていないI型糖尿病の素因保有者に投与される前記[5]記載の予防剤。
[8] I型糖尿病の発症初期の患者あるいは症状軽度の患者が、インスリン分泌能あるいはβ細胞機能が健常人の10%以上残存している患者である前記[6]記載の症状進展抑制および/または治療剤。
[9] 発症が確認されていないI型糖尿病の素因保有者が、
(I)糖尿病の臨床診断基準における境界型である者、
(II)発症前診断において、抗ランゲルハンス氏島抗体、抗GAD抗体、抗インスリン抗体および抗IA−2抗体から選択される1種以上が陽性の者、あるいは
(III)一または二親等以内の血族に自己免疫疾患の家族歴を持つ者である前記[7]記載の予防剤。
[10] 最後の投与から3カ月以上、
(i)インスリンの平均1日投与量が該PD−1アゴニストの最初の投与前から増加しないか、
(ii)インスリンの平均投与量が0.25IU/kg/日以下に維持できるか、
(iii)HbA
1cが7.5%未満であるか、あるいは
(iv)血中Cペプチド濃度が該PD−1アゴニストの最初の投与前の90%以上を維持できる前記[3]〜[6]のいずれかに記載または[8]記載の症状進展抑制剤。
[11] 最後の投与から4カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[12] 最後の投与から5カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[13] 最後の投与から6カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[14] 最後の投与から7カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[15] 最後の投与から8カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[16] 最後の投与から9カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[17] 最後の投与から12カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[18] 最後の投与から15カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[19] 最後の投与から18カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[20] 最後の投与から21カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[21] 最後の投与から24カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[22] 最後の投与から36カ月以上投与の必要のない前記[1]または[3]〜[10]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[23] 最後の投与から4カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[24] 最後の投与から5カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[25] 最後の投与から6カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[26] 最後の投与から7カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[27] 最後の投与から8カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[28] 最後の投与から9カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[29] 最後の投与から12カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[30] 最後の投与から15カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[31] 最後の投与から18カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[32] 最後の投与から21カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[33] 最後の投与から24カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[34] 最後の投与から36カ月以上投与を行わない前記[2]〜[9]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[35] 最初の投与から19日間に1〜10回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[36] 最初の投与から17日間に1〜10回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[37] 最初の投与から15日間に1〜10回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[38] 最初の投与から13日間に1〜10回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[39] 最初の投与から11日間に1〜10回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[40] 最初の投与から9日間に1〜10回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[41] 最初の投与から8日間に1〜9回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[42] 最初の投与から7日間に1〜8回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[43] 最初の投与から6日間に1〜7回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[44] 最初の投与から5日間に1〜6回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[45] 最初の投与から4日間に1〜5回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[46] 最初の投与から3日間に1〜4回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[47] 最初の投与から2日間に1〜3回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[48] 最初の投与日に1回投与される前記[1]〜[34]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[49] PD−1アゴニストの合計投与量が、30μg/kg〜960μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[50] PD−1アゴニストの合計投与量が、48μg/kg〜960μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[51] PD−1アゴニストの合計投与量が、48μg/kg〜480μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[52] PD−1アゴニストの合計投与量が、48μg/kg〜160μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[53] PD−1アゴニストの合計投与量が、160μg/kg〜960μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[54] PD−1アゴニストの合計投与量が、160μg/kg〜480μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[55] PD−1アゴニストの合計投与量が、480μg/kg〜960μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[56] PD−1アゴニストの合計投与量が、30μg/kg〜600μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[57] PD−1アゴニストの合計投与量が、30μg/kg〜300μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[58] PD−1アゴニストの合計投与量が、30μg/kg〜100μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[59] PD−1アゴニストの合計投与量が、100μg/kg〜600μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[60] PD−1アゴニストの合計投与量が、100μg/kg〜300μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[61] PD−1アゴニストの合計投与量が、100μg/kg〜160μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[62] PD−1アゴニストの合計投与量が、300μg/kg〜480μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[63] PD−1アゴニストの合計投与量が、300μg/kg〜600μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[64] PD−1アゴニストの合計投与量が、300μg/kg〜960μg/kgである前記[1]〜[48]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[65] PD−1アゴニストが、PD−1二重特異性抗体、PD−1アゴニスト抗体またはPD−1二重特異性タンパクである前記[1]〜[64]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[66] PD−1二重特異性抗体が、PD−1−CD3二重特異性抗体である前記[65]記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[67] PD−1−CD3二重特異性抗体が、PD−1−CD3二重特異性sc(Fv)
2である前記[66]記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[68] PD−1二重特異性抗体を構成するPD−1抗体の抗原結合部位が、国際公開第2006/121168号に記載のハイブリドーマ17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3もしくは5F4クローン由来のモノクローナル抗体の抗原結合部位である前記[65]〜[67]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[69] PD−1二重特異性抗体を構成するCD3抗体の抗原結合部位が、OKT3、OKT3γ1(ala−ala)、ChAglyCD3(国際公開第93/19196号)またはHUM291の抗原結合部位である前記[65]〜[68]のいずれかに記載の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[70] PD−1アゴニストを有効成分とする薬剤であって、
(a)インスリン分泌能あるいはβ細胞機能が健常人の10%以上残存しているI型糖尿病患者に対して、1回投与もしくは最初の投与から24時間〜11日間に2〜6回投与され、
(b)該PD−1アゴニストの合計投与量が30μg/kg〜960μg/kgであり、
(c)最後の投与から12カ月以上、
(i)インスリンの平均1日投与量が該PD−1アゴニストの最初の投与前から増加しないか、
(ii)インスリンの平均投与量が0.25IU/kg/日以下に維持できるか、
(iii)HbA
1cが7.5%未満であるか、あるいは
(iv)Cペプチド反応が該PD−1アゴニストの最初の投与前の90%以上を維持できることを特徴とするI型糖尿病の症状進展抑制および/または治療剤。
[71] PD−1アゴニストを有効成分とする薬剤であって、
(a)インスリン分泌能あるいはβ細胞機能が健常人の10%以上残存しているI型糖尿病患者に対して、1回投与もしくは最初の投与から24時間〜11日間に2〜6回投与され、
(b)該PD−1アゴニストの合計投与量が30μg/kg〜960μg/kgであり、
(c)最後の投与から12カ月以上投与を行わないことを特徴とするI型糖尿病の症状進展抑制および/または治療剤。
[72] PD−1アゴニストを有効成分とする薬剤であって、
(a)インスリン分泌能あるいはβ細胞機能が健常人の10%以上残存しているI型糖尿病患者に対して、最初の投与から3〜11日間に4〜6回投与され、
(b)該PD−1アゴニストの合計投与量が300μg/kg〜960μg/kgであり、
(c)最後の投与から12カ月以上、
(i)インスリンの平均1日投与量が該PD−1アゴニストの最初の投与前から増加しないか、
(ii)インスリンの平均投与量が0.25IU/kg/日以下に維持できるか、
(iii)HbA
1cが7.5%未満であるか、あるいは
(iv)Cペプチド反応が該PD−1アゴニストの最初の投与前の90%以上を維持できることを特徴とするI型糖尿病の症状進展抑制および/または治療剤。
[73] PD−1アゴニストを有効成分とする薬剤であって、
(a)インスリン分泌能あるいはβ細胞機能が健常人の10%以上残存しているI型糖尿病患者に対して、最初の投与から3〜11日間に4〜6回投与され、
(b)該PD−1アゴニストの合計投与量が300μg/kg〜960μg/kgであり、
(c)最後の投与から12カ月以上投与を行わないことを特徴とするI型糖尿病の症状進展抑制および/または治療剤。
[74] PD−1アゴニストを有効成分とする薬剤であって、
(a)(I)糖尿病の臨床診断基準における境界型である者、
(II)発症前診断において、抗ランゲルハンス氏島抗体、抗GAD抗体、抗インスリン抗体および抗IA−2抗体から選択される1種以上が陽性の者あるいは
(III)一または二親等以内の血族に自己免疫疾患の家族歴を持つ者に対して、最初の投与から3〜11日間に4〜6回投与され、
(b)該PD−1アゴニストの合計投与量が30μg/kg〜960μg/kgであり、
(c)最後の投与から12カ月以上発症させないI型糖尿病の予防剤。
[75] PD−1アゴニストを有効成分とする薬剤であって、
(a)(I)糖尿病の臨床診断基準における境界型である者、
(II)発症前診断において、抗ランゲルハンス氏島抗体、抗GAD抗体、抗インスリン抗体および抗IA−2抗体から選択される1種以上が陽性の者あるいは
(III)一または二親等以内の血族に自己免疫疾患の家族歴を持つ者に対して、最初の投与から3〜11日間に4〜6回投与され、
(b)該PD−1アゴニストの合計投与量が300μg/kg〜960μg/kgであり、
(c)最後の投与から12カ月以上発症させないI型糖尿病の予防剤。
[76] PD−1アゴニストが、PD−1−CD3二重特異性sc(Fv)
2である前記[70]〜[75]のいずれかに記載のI型糖尿病の予防、症状進展抑制および/または治療剤。
[77] PD−1アゴニストを自己免疫疾患患者に対して、1〜10回、最初の投与から1カ月以内の期間に投与し、該PD−1アゴニストの合計投与量が20μg/kg〜1250μg/kgであり、最後の投与から3カ月以上、該自己免疫疾患の症状進展を抑制および/または治療効果が持続する方法。
[78] 自己免疫疾患患者に対して最初の投与から1カ月以内の期間に1〜10回投与され、その合計投与量が20μg/kg〜1250μg/kgであり、最後の投与から3カ月以上、該自己免疫疾患の症状進展を抑制すること、および/または治療効果を持続させることにおける使用のためのPD−1アゴニスト。
[79] PD−1アゴニストを発症が確認されていないI型糖尿病の素因保有者に対して最初の投与から1カ月以内の期間に1〜10回投与し、該PD−1アゴニストの合計投与量が20μg/kg〜1250μg/kgであり、最後の投与から3カ月以上、I型糖尿病の発症を予防する方法。
[80] 発症が確認されていないI型糖尿病の素因保有者に対して、最初の投与から1カ月以内の期間に1〜10回投与され、その合計投与量が20μg/kg〜1250μg/kgであり、最後の投与から3カ月以上、I型糖尿病の発症を予防するためのPD−1アゴニスト。