特許第6094489号(P6094489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6094489固体電解コンデンサ素子及びその製造方法
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  • 特許6094489-固体電解コンデンサ素子及びその製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094489
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/032 20060101AFI20170306BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H01G9/02 321
   H01G9/24 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-555137(P2013-555137)
(86)(22)【出願日】2012年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2012080540
(87)【国際公開番号】WO2013111438
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-14708(P2012-14708)
(32)【優先日】2012年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100094709
【弁理士】
【氏名又は名称】加々美 紀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】大野 留治
(72)【発明者】
【氏名】赤木 正美
(72)【発明者】
【氏名】内田 友子
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−290088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/032
H01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極体表面に、少なくとも誘電体層と、固体電解質層と、第1の樹脂成分を含むカーボン層と、第2の樹脂成分を含む導電体層とを備える固体電解コンデンサ素子において、
前記第1の樹脂成分及び前記第2の樹脂成分が共に水酸基を有し、
前記カーボン層表面の水素結合性成分値γ〔mN/m〕と前記導電体層表面の水素結合性成分値γ〔mN/m〕との差Δγ(=γ−γ)が、−3≦Δγ≦3〔mN/m〕の範囲内にあることを特徴とする固体電解コンデンサ素子。
【請求項2】
前記第1の樹脂成分及び/又は前記第2の樹脂成分が、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ素子。
【請求項3】
前記導電体層が銀を導電成分とするものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ素子。
【請求項4】
陽極体表面に、少なくとも誘電体層と、固体電解質層と、カーボン層と、導電体層とを備える固体電解コンデンサ素子の製造方法において、
水酸基を有する第1のバインダ樹脂を含むカーボンペーストを用いて前記カーボン層を形成する工程と、
水酸基を有する第2のバインダ樹脂を含む導電ペーストを用いて前記導電体層を前記カーボン層上に形成する工程を含み、
前記カーボンペースト及び前記導電ペーストは、前記カーボン層表面の水素結合性成分値γ〔mN/m〕と前記導電体層表面の水素結合性成分値γ〔mN/m〕との差Δγ(=γ−γ)が、−3≦Δγ≦3〔mN/m〕の範囲内となるように組合されて使用されることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記第1のバインダ樹脂及び/又は前記第2のバインダ樹脂が、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、硬化してウレタン樹脂となる組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体電解コンデンサ素子、その製造方法及び導電ペーストに関し、特には、熱衝撃によるESR(等価直列抵抗)の劣化が抑制され、且つ、製品毎のESR変化のばらつきが小さく、歩留まりの良い固体電解コンデンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に固体電解コンデンサ素子の一例を示す。図1の固体電解コンデンサ素子1は、タンタル、ニオブ、チタン、アルミニウム等の弁作用金属を焼結させた焼結体11の表面に酸化被膜12が形成され、その上に、固体電解質層13、カーボン層14、導電体層15を含む構造を備えている。ここで焼結体11は陽極体として、酸化被膜12は誘電体層として用いられ、また固体電解質層13上のカーボン層14及び導電体層15は陰極体として用いられる。
酸化被膜12は、焼結体自体が酸化されたものが好ましく用いられるが、他の酸化物であっても良い。
また固体電解質層13としては、二酸化マンガンや導電性高分子等が広く用いられている。
通常、カーボン層14は、樹脂(バインダ樹脂とも言う)と溶剤を含むビヒクル中にカーボン粉末を分散させたカーボンペーストを塗布、乾燥させることによって形成される。このカーボン層14は、固体電解質層13と導電体層15との間の接触抵抗を下げ、ESRを低下させることができると考えられている。
また、通常、導電体層15は、ビヒクル中に銀等の金属粉末を分散させた導電ペーストを塗布、乾燥及び/又は硬化させることによって形成される。
【0003】
このようなカーボン層と導電体層を備えた固体電解コンデンサ素子は、特許文献1や特許文献2に記載されているように、従来から広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−168966号公報
【特許文献2】特開2008−004583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の小型化、デジタル化、省電力化に伴い、これら機器に使用される固体電解コンデンサ素子に対してESR(等価直列抵抗)の低減が強く要望されている。
また、固体電解コンデンサ素子の初期特性としてのESRが低いだけでなく、ESRの経時変化と、これによって生じる製品毎(素子毎)のESRのばらつきを小さくしたいという要望も出ている。すなわち、固体電解コンデンサ素子は、当該素子の製造時のみならず、その後の熱履歴によりESRが変化することがある。例えば、素子の製造時に乾燥加熱工程が複数回行われ、その後、リフローはんだを行う際や、更には最終製品として完成後の使用時の発熱によりESRが劣化(増大)する場合がある。その変化の度合いが素子毎に大きく異なり、時間の経過と共にESRのばらつきが大きくなることは品質管理上の観点から好ましくない。
従来、上述したESR劣化やばらつきの問題を解決するために固体電解コンデンサ素子中の各層、例えばカーボン層や導電体層のそれぞれに対し個別の改良が試みられてきているが、十分な結果が得られていない。
【0006】
以上のような背景から本発明者等は各層に関する改良を検討すると共に、各層の組合せ、特にカーボン層と導電体層の組合せについて数多くの実験並びに検討を繰り返し行った結果、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は上述した問題点を解決するために成されたものであり、ESRの初期特性が良好なだけでなく、熱衝撃によるESR劣化が小さく、ESR変化のばらつきも抑制された固体電解コンデンサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決する本発明は、以下を特徴とする。
(1) 陽極体表面に、少なくとも誘電体層と、固体電解質層と、第1の樹脂成分を含むカーボン層と、第2の樹脂成分を含む導電体層とを備える固体電解コンデンサ素子において、
前記第1の樹脂成分及び前記第2の樹脂成分が共に水酸基を有し、
前記カーボン層表面の水素結合性成分値γ〔mN/m〕と前記導電体層表面の水素結合性成分値γ〔mN/m〕との差Δγ(=γ−γ)が、−3≦Δγ≦3〔mN/m〕の範囲内にあることを特徴とする固体電解コンデンサ素子。
(2) 前記第1の樹脂成分及び/又は前記第2の樹脂成分が、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)に記載の固体電解コンデンサ素子。
(3) 前記導電体層が銀を導電成分とするものであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の固体電解コンデンサ素子。
(4) 陽極体表面に、少なくとも誘電体層と、固体電解質層と、カーボン層と、導電体層とを備える固体電解コンデンサ素子の製造方法において、
水酸基を有する第1のバインダ樹脂を含むカーボンペーストを用いて前記カーボン層を形成する工程と、
水酸基を有する第2のバインダ樹脂を含む導電ペーストを用いて前記導電体層を前記カーボン層上に形成する工程を含み、
前記カーボンペースト及び前記導電ペーストは、前記カーボン層表面の水素結合性成分値γ〔mN/m〕と前記導電体層表面の水素結合性成分値γ〔mN/m〕との差Δγ(=γ−γ)が、−3≦Δγ≦3〔mN/m〕の範囲内となるように組合されて使用されることを特徴とする製造方法。
(5) 前記第1のバインダ樹脂及び/又は前記第2のバインダ樹脂が、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、硬化してウレタン樹脂となる組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(4)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長時間にわたる高温負荷試験を行っても従来品と比べてESRの劣化が小さく、製品毎の経時的なESR変化のばらつきも抑制された固体電解コンデンサ素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】固体電解コンデンサ素子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、カーボン層及び導電体層を有する固体電解コンデンサ素子に適用することができ、以下、図1に示した固体電解コンデンサ素子に対して適用した例で説明する。
なお、本明細書中では、未乾燥/未硬化の状態のペースト中にある樹脂を「バインダ樹脂」と称し、当該ペーストを乾燥及び/又は硬化して形成された層中に含まれる「樹脂成分」と区別するものとし、以下では「第1のバインダ樹脂」を含むペーストを乾燥及び/又は硬化させた層中に含まれる樹脂を「第1の樹脂成分」、「第2のバインダ樹脂」を含むペーストを乾燥及び/又は硬化させた層中に含まれる樹脂を「第2の樹脂成分」と言う。
【0011】
カーボン層14には、カーボン粉末と第1の樹脂成分が含まれている。本発明において使用できるカーボン粉末に限定はないが、固体電解コンデンサ素子において一般的に用いられていることからグラファイト粉末が好ましい。
当該カーボン粉末は、第1のバインダ樹脂と溶剤とを含むビヒクル中に均一に分散され、カーボンペーストとされる。このカーボンペーストを固体電解質層13の上に塗布後、乾燥及び/又は硬化することによりカーボン層が得られる。
【0012】
導電体層15には、金属粉末と第2の樹脂成分が含まれている。当該金属粉末は、第2のバインダ樹脂と溶剤とを含むビヒクル中に均一に分散され、導電ペーストとされる。この導電ペーストをカーボン層14(または乾燥及び/又は硬化される前のカーボンペースト層)の上に塗布後、乾燥及び/又は硬化することにより導電体層が得られる。
本発明において使用できる金属粉末に限定はないが、導電性やコスト上の観点から、銀粉末や、銅、ニッケル、アルミニウム等の銀以外の他の金属の何れか1種又は2種以上の粒子の表面に銀を被覆した複合粉末、或いは銀と前記他の金属の何れか1種又は2種以上との合金粉末(以下、併せて「銀系粉末」と称する)を用いることが好ましい。銀系粉末を用いることにより、銀を導電成分とする導電体層を得ることができ、銀系粉末に前記のように銀以外の他の金属が含まれている場合は「銀を導電成分とする導電体層」とはそのような他の金属をも含む導電体層であることを意味する。本発明の金属粉末としては、これらの銀系粉末の中から1種だけを用いても良いが、2種以上を混合して用いても良く、またパラジウムや白金、銅、金属酸化物等の他の導電性粉末を前記銀系粉末に混合して用いても良い。
【0013】
上述したカーボンペースト及び導電ペーストには、その他に、通常、必要に応じて適宜配合される界面活性剤、消泡剤、可塑剤、分散剤等の添加剤や、無機フィラー等が添加されていても良い。これらの添加剤等を加えることによって、印刷性や形成される膜の特性を調整することができる。
【0014】
本発明においては、カーボン層に含まれる第1の樹脂成分と、導電体層に含まれる第2の樹脂成分は共に水酸基を有する。どちらか一方或いは両方の樹脂成分が水酸基を有していない場合には、ヒートサイクル試験後に接触抵抗値が上昇し、ESRが劣化する。
【0015】
第1、第2の樹脂成分が共に水酸基を有するために、カーボンペースト及び導電ペーストに用いる第1、第2のバインダ樹脂としては、水酸基を有するバインダ樹脂の1種又は2種以上を使用する。このようなバインダ樹脂の一例としては、積水化学工業製BH−S,KS−5等のブチラール樹脂、日立化成製ヒタロイド6500や大成ファインケミカル製8AT−935、8UAシリーズ146,301,318,347,366等のアクリル樹脂、新日鐵化学製エポトートYR207,YDF−2001、長嶋特殊塗料製R−53、三菱化学製エピコート1001等のエポキシ樹脂、新日鐵化学製YP−50,YP−70等のフェノキシ樹脂、群栄化学工業製PL−2222等のフェノール樹脂、DIC製尿素樹脂P−138,P−196M,G−1850や三井化学製メラミン樹脂ユーバン20SE,22R,80S等のアミノ樹脂の他、硬化させてウレタン樹脂となる組成物(例えば、DIC製エピクロンH−201等のエポキシ変性ポリオール樹脂とDIC製D−550等のブロック化イソシアネートを含む組成物)等が挙げられる。
ESRの劣化や製品毎の経時的なESR変化のばらつきの改善のためには、特に第1及び第2の樹脂成分に含まれる水酸基の重量は、共に、当該樹脂成分の総量に対して2〜10重量%であることが好ましい。このような樹脂成分を用いることにより、塗膜の耐湿性が損なわれて漏れ電流が増大する等の問題が生ずることなく、優れた改善効果が得られる。
【0016】
なお、本発明は、水酸基を有するバインダ樹脂に更に水酸基を有していないバインダ樹脂を加えて混合し、これを含むペーストを乾燥/硬化させてカーボン層や導電体層を形成する態様を除外するものではない。その場合、水酸基を有していないバインダ樹脂は、各ペースト中におけるバインダ樹脂総量の30重量%未満とすることが好ましく、より好ましくは10重量%未満である。
【0017】
本発明は、互いに接するカーボン層と導電体層が備える物性の中で、両層の固体表面における水素結合性成分値γの差を後述する範囲内に制御/調整することにより、接触抵抗値の劣化やばらつき、ひいてはESRの劣化やばらつきを改善したものである。
【0018】
ここで水素結合性成分値γはOwens−Wendtの方法によって求めることができる。具体的には表面エネルギーγ、分散力成分値γ、水素結合性成分値γが既知の2種類の液体を、カーボン層及び導電体層のそれぞれの表面に滴下して接触角θを測定し、下式1から得られる連立方程式を解くことで、固体表面の水素結合性成分値γと分散力成分値γを求める。
〔式1〕 γ・(1+cosθ)=2(γ・γ1/2+2(γ・γ1/2
後述する例においては、表面エネルギーγ、分散力成分値γ、水素結合性成分値γが既知の2種類の液体として水(γ=72.8mN/m、γ=21.8mN/m、γ=51.0mN/m)とヨウ化メチレン(γ=50.8mN/m、γ=49.5mN/m、γ=1.3mN/m)を用い、ゴニオメーター式接触角測定機(株式会社エルマ製 MODEL G−I)を用いて接触角θを測定した。そして、カーボン層表面の水素結合性成分値γをγ、分散力成分値γをγとし、また導電体層表面の水素結合性成分値γをγ、分散力成分値γをγとして、前述の各値を式1に代入することによって得られる連立方程式からγ、γ、γ、γの各値を求めた。
【0019】
その結果、本発明者等は、カーボン層表面の水素結合性成分値γと、導電体層表面における水素結合性成分値γの差Δγ(=γ−γ)に関して−3≦Δγ≦3が満たされている場合に、接触抵抗値の劣化やばらつき、ひいてはESRの劣化やばらつきが改善されていることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0020】
なお、後述するように、本発明者等は分散力成分値γや表面自由エネルギーγ(=γ+γ)についても同様に検討を行ったが、接触抵抗値やESRに対する相関や影響を特に見出すことはできず、分散力成分値γや表面自由エネルギーγは本発明における制御因子として有効であることが認められなかった。本発明では接触抵抗値やESRの改善において水素結合性成分値γが極めて有効な制御因子であることを見出し、本発明に到ったのであり、それ故に、水素結合性成分値γを制御因子として用いることは本発明の特徴の一つである。
【0021】
カーボン層や導電体層の各表面における水素結合性成分値γは、カーボンペーストや導電ペーストに含まれるカーボン粉末や金属粉末、その他、必要に応じて添加される添加剤によっても変わるため一概には言えないが、ペーストに含まれるバインダ樹脂の種類の他、当該バインダ樹脂の極性官能基(アミノ基、カルボキシル基、水酸基、アセチル基等)の含有量や、カーボン粉末や金属粉末の表面処理(例えば疎水化処理等)の有無によって調整することができる。
【0022】
以上の要件を満足するカーボンペースト及び導電ペーストを組合わせて準備する以外は、本発明の固体電解コンデンサ素子は、従来例と同様に焼結体11、酸化被膜12、固体電解質層13、カーボン層14、導電体層15を形成することによって製造することができる。
【実施例】
【0023】
<導電ペーストの準備>
導電ペーストとして、銀粉末を含む以下の10種類の銀ペーストを準備した。
〔試料A−1〕
銀粉末53.0重量%、ブチラール樹脂(積水化学工業製BH−Sと積水化学工業製KS−5を1:1で混合したもの)を樹脂固形量15重量%としてベンジルアルコールに溶解したワニス30.0重量%及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート17.0重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−1を調製した。
〔試料A−2〕
銀粉末53.0重量%、ブチラール樹脂(KS−5)を樹脂固形量15重量%としてベンジルアルコールに溶解したワニス30.0重量%及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート17.0重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−2を調製した。
〔試料A−3〕
銀粉末53.0重量%、ブチラール樹脂(BH−S:KS−5=1:1)を樹脂固形量15重量%としてベンジルアルコールに溶解したワニス30.0重量%、アクリル樹脂(大成ファインケミカル製8AT−935)1.0重量%及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート16.0重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−3を調製した。
〔試料A−4〕
銀粉末53.0重量%、ブチラール樹脂(KS−5)を樹脂固形量15重量%としてベンジルアルコールに溶解したワニス30.0重量%、アクリル樹脂(8AT−935)1.0重量%及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート16.0重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−4を調製した。
〔試料A−5〕
銀粉末42.0重量%、フェノール樹脂(群栄化学工業製PL−4222)9.5重量%、ブチラール樹脂(KS−5)を樹脂固形量15重量%としてベンジルアルコールに溶解したワニス30.0重量%、エポキシ樹脂(新日鐵化学製エポトートYR207)1.0重量%及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート17.5重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−5を調製した。
〔試料A−6〕
銀粉末71.0重量%、エポキシ変性ポリオール樹脂(DIC製エピクロンH−201BT60)5.5重量%、ブロック化イソシアネート(DIC製D−550)7.5重量%及びターピネオール16.0重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−6を調製した。
〔試料A−7〕
銀粉末73.5重量%、メラミン樹脂(三井化学製ユーバン20SE60)9.0重量%、エポキシ樹脂(長嶋特殊塗料製R−53)4.0重量%、硬化促進剤(キングインダストリーズ製Nacure5225)1.0重量%及びターピネオール12.5重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−7を調製した。
〔試料A−8〕
銀粉末53.0重量%、ポリビニルアセテート樹脂(日本合成化学製PV−500)を樹脂固形量15重量%としてベンジルアルコールに溶解したワニス30.0重量%及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート17.0重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−8を調製した。
〔試料A−9〕
銀粉末53.0重量%、ポリエチレンビニルアセテート樹脂(日本ユニカー製NUC−3160)を樹脂固形分15重量%としてベンジルアルコールに溶解したワニス30.0重量%及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート17.0重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−9を調製した。
〔試料A−10〕
銀粉末66.5重量%、スチレンブタジエン樹脂24.0重量%(藤倉応用化工製SBR−5)及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート9.5重量%を、三本ロールミルを用いて混練攪拌することにより銀ペーストA−10を調製した。
【0024】
<導電体層の分析>
準備した各試料をスクリーン印刷法によりアルミナ基板上に塗布して、乾燥及び/又は硬化後の膜厚が約20μmの導電体層を形成し、その後、前述した方法で水素結合性成分値γと分散力成分値γを算出した。その結果を表1に示す。また樹脂成分中の水酸基の有無は、日本分光製FT−IRフーリエ変換赤外線分光光度計6200を用い、水酸基の吸収スペクトル3500cm−1付近のピークの有無によって判定し、表1中にその結果を併記した。
【0025】
【表1】
【0026】
<カーボンペーストの準備>
カーボンペーストとして、グラファイト粉末を含む以下の3種類のグラファイトペーストを準備した。
〔試料G−1〕
グラファイト粉末4.8重量%、ポリエチレンビニルアセテート樹脂32.5重量%(NUC−3160)及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート62.7重量%を、ボールミルを用いて混練攪拌することによりグラファイトペーストG−1を調製した。
〔試料G−2〕
グラファイト粉末8.3重量%、ノボラックエポキシ樹脂12.5重量%(新日鐵化学製YDF−2001)、硬化剤2.2重量%(長嶋特殊塗料製ハードナ―N)及び2−ブトキシエタノール77.0重量%を、ボールミルを用いて混練攪拌することによりグラファイトペーストG−2を調製した。
〔試料G−3〕
グラファイト粉末6.3重量%、ブチラール樹脂4.0重量%(BH−S:KS−5=1:1)及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート89.7%を、ボールミルを用いて混練攪拌することによりグラファイトペーストG−3を調製した。
【0027】
<カーボン層の分析>
準備した各試料をスプレーコート法によりアルミナ基板上に吹きつけて、乾燥及び/又は硬化後の膜厚が約20μmのカーボン層を形成した。その後、前述した方法により水素結合性成分値γと分散力成分値γを算出した。その結果を表2に示す。また前述した方法により判定した樹脂成分中の水酸基の有無を、表2に併記した。
【0028】
【表2】
【0029】
<カーボン層と導電体層の組合せに関する実験>
準備した導電ペーストとカーボンペーストを組合せ、ESR値に対する影響が最も大きい接触抵抗を計測した。
【0030】
〔実験例1〕
アルミナ基板上に試料G−1のグラファイトペーストを用いて厚さ約20μmのカーボン層を形成し、その上に、試料A−1の銀ペーストを用いて1mm×20mmの細線形状パターンを等間隔に複数個形成した後、150℃で60分間の乾燥及び/又は硬化によって試料基板を作成した。また、同様にして同じ試料基板を計50個準備した。
【0031】
準備した50個の試料基板に対し、TLM(Transmission Line Model)法に基づき接触抵抗を測定した後、−55℃〜125℃の熱負荷試験を300回繰り返し行った。こうしてヒートサイクル試験を経た50個の試料基板に対し、再度、接触抵抗を測定した。
得られたデータから以下の「変動係数(CV値)」と「接触抵抗変化率」を算出した。
〔式2〕 〔変動係数(CV値)〕=〔ヒートサイクル試験後の接触抵抗値の標準偏差〕÷〔ヒートサイクル試験後の接触抵抗値の平均値〕×100
〔式3〕 〔接触抵抗変化率(%)〕=(〔ヒートサイクル試験後の接触抵抗値の平均値〕÷〔ヒートサイクル試験前の接触抵抗値の平均値〕×100)−100
変動係数(CV値)が大きければ大きいほど、熱衝撃による接触抵抗の変化(ひいてはESRの変化)のばらつきが大きく、また接触抵抗変化率が大きければ大きいほど、熱履歴による接触抵抗の劣化(ひいてはESRの劣化)が大きいことを意味している。なお、接触抵抗変化率がマイナスであるものは、熱履歴によってオーミックコンタクトが向上したことを意味している。
【0032】
実験例1で得られた「変動係数(CV値)」と「接触抵抗変化率」を表3に記載した。なお表3に、試料A−1、試料G−1で使用した樹脂成分中の水酸基の有無の組合せ、水素結合性成分値の差Δγ(=γ−γ)、更に参考として分散力成分値の差Δγ(=γ−γ)を併記した。
【0033】
【表3】
【0034】
〔実験例2〜30〕
表3に記載されている試料の組合せで、実験例1と同様の試験と測定を行った。その結果を表3に併記した。
【0035】
<評価・検討>
表3中に*が付与されている例は本発明の範囲外である。
同表から明らかなように、導電体層、カーボン層のどちらか一方だけでも水酸基を有していない場合は、熱履歴により接触抵抗が上昇しているのに対し、共に水酸基を有している場合は接触抵抗が下がるか、上昇した場合でも1%未満に収まっている。
また、水素結合性成分値の差Δγの絶対値が3以下の場合、変動係数CV値は3.5以下であり、熱履歴によるばらつきが非常に抑えられているが、Δγの絶対値が3を越えると変動係数CV値が急激に上昇する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、電子部品や電気部品に用いられる固体電解コンデンサ素子に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 固体コンデンサ素子
11 弁作用金属焼結体(陽極体)
12 酸化被膜(誘電体層)
13 固体電解質層
14 カーボン層
15 導電体層
図1