(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1で示すような従来のプレート式熱交換器の1流路あたりの流路長は、家庭用空気調和機で使用される場合、150−400mmである。これに対して、同等の熱交換効率で比較した場合、特許文献2で示すようなマイクロ流路熱交換器の1流路あたりの流路長は、10−60mmである。これは、冷媒同士の熱交換を行う効率が大きく異なるためである。よってマイクロ流路熱交換器における、流体が流路を流れる距離あたりの流体の温度変化率は、プレート式熱交換器の熱交換器に比べて非常に大きくなる。
【0006】
一般的に、熱交換器で熱交換された冷媒の温度を測定する場合、熱交換器の出口配管に温度センサーが取り付けられる。しかし冷媒と配管との熱抵抗、また配管と温度センサーとの間の熱抵抗により、測定誤差およびタイムラグが生じる。上述したように、マイクロ流路熱交換器では流体が流れる距離あたりの温度変化率が大きい。そのため、熱抵抗による測定誤差やタイムラグを最小限にすることが求められる。よって、熱交換器の出口配管ではなく、流路の途中や流路の合流部分などで、冷媒の温度を直接測定する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献2で示すようなマイクロ流路熱交換器において、流路内の冷媒温度を測定する方法は考案されていなかった。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、冷媒の温度を正確に測定することのできるマイクロ流路熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るマイクロ流路熱交換器は、複数の高温流体の流路が設けられた高温流路層と複数の低温流体の流路が設けられた低温流路層とが交互に積層して形成された流路層積層部と、前記流路層積層部に積層され、前記高温流路層および前記低温流路層の少なくともいずれか一方の前記流路に積層方向に連通する連通穴を介して前記流体が導入され、かつ温度センサーの感知点が露出する測定空間を有するセンサー配置層とを具備し、熱交換器の出入口の温度を正確に測定することが可能とする。
【0010】
また、本発明に係るマイクロ流路熱交換器において、前記高温流路層の前記高温流路、前記低温流路層の前記低温流路および前記センサー配置層の前記測定空間は、個々の基材にエッチング処理によって設けられた溝によって形成され、前記高温流路層、前記低温流路層および前記センサー配置層は、前記溝が設けられた前記各基材を重ね合わせ、接触した面どうしが拡散接合されたものであってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱交換器内の流体の温度を正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ流路熱交換器を示す斜視図、
図2は
図1のマイクロ流路熱交換器を一部分解して示す斜視図である。
【0014】
[全体の構成]
これらの図に示すように、このマイクロ流路熱交換器1は、流路層積層体である熱交換器本体2と、センサー配置層を構成する高温検知板3Aと、同じくセンサー配置層を構成する低温検知板3Bと、高温保護板4Aと、低温保護板4Bと、高温流体および低温流体の各々の入口用および出口用の接続金具5A、5B、5C、5Dとを有する。
【0015】
図中、熱交換器本体2、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bなどの各部材の下側の面を「高温側の面」、各部材の上側の面を「低温側の面」とする。熱交換器本体2の高温側の面には高温検知板3Aが接合され、熱交換器本体2の低温側の面には低温検知板3Bが接合されている。高温検知板3Aの高温側の面には高温保護板4Aが接合され、低温検知板3Bの低温側の面には低温保護板4Bが接合されている。
【0016】
熱交換器本体2は、2種類の伝熱板2A、2Bを交互に複数積層して構成される。2種類の伝熱板の構成については後で説明する。
【0017】
熱交換器本体2を構成する2種類の伝熱板2A、2Bと、高温検知板3Aと、低温検知板3Bと、高温保護板4Aと、低温保護板4Bは、例えば、熱伝導率が高い同じ種類の金属板(フォイル)からなる。より具体的には、ステンレス鋼などが用いられる。これらの金属板は積層された後、拡散接合によって互いに接合されることによって略直方体形状の積層体となる。
【0018】
以降、説明上の必要に応じて、熱交換器本体2を構成する2種類の伝熱板2A、2Bそれぞれの高温側の面と低温側の面以外の4つの面を「側面」と呼ぶこととする。
【0019】
図2に示すように、マイクロ流路熱交換器1の各側面には、各々、熱交換器本体2内の高温流路に高温流体を流入させる高温流体入口21と、熱交換器本体2内の高温流路から高温流体を流出させる高温流体出口22と、熱交換器本体2内の低温流路に低温流体を流入させる低温流体入口23と、熱交換器本体2内の低温流路から低温流体を流出させる低温流体出口24が形成されている。
【0020】
図1に示したように、高温流体入口21には、接続金具5Aが溶接などにより接合されている。この接続金具5Aには、高温流体の流入のための管8Aが着脱自在に接続される。高温流体出口22には、接続金具5Bが溶接などにより接合されている。この接続金具5Bには、高温流体の流出のための管8Bが着脱自在に接続される。低温流体入口23には、接続金具5Cが溶接などにより接合されている。この接続金具5Cには、低温流体の流入のための管8Cが着脱自在に接続される。低温流体出口24には、接続金具5Dが溶接などにより接合されている。この接続金具5Dには、低温流体の流出のための管8Dが着脱自在に接続される。
【0021】
[熱交換器本体2の構成]
次に、熱交換器本体2の構成を説明する。
前述したように、熱交換器本体2は、2種類の伝熱板2A、2Bを交互に複数積層して構成される。これらの伝熱板2A、2Bにはエッチング処理によって溝および切り欠き部などが形成されている。伝熱板2A、2Bは、溝および切り欠き部のパターンが異なっている。
【0022】
図3および
図4は2種類の伝熱板2A、2Bを示す斜視図である。ここで、
図3に示す伝熱板2Aは「高温伝熱板2A」、
図4に示す伝熱板2Bは「低温伝熱板2B」である。
【0023】
(高温伝熱板2Aの構成)
図3に示すように、高温伝熱板2Aには、高温流体の流路を形成する溝25A、30A、31Aおよび切り欠き部26A、27A、28A、29Aがそれぞれ設けられている。溝25A、30A、31Aは高温伝熱板2Aの一方の面にのみ設けられる。溝25A、30A、31Aの深さはどこも均一であってよい。切り欠き部26A、27A、28A、29Aは、高温伝熱板2Aの基材の4辺に各々対応する縁端部における所定の部位を基材の厚み分除去することによって形成される。
【0024】
以後、説明の必要に応じて、高温伝熱板2Aの各々の切り欠き部26A、27A、28A、29Aを、第1の切り欠き部26A、第2の切り欠き部27A、第3の切り欠き部28A、および第4の切り欠き部29Aと呼ぶ。
【0025】
高温伝熱板2Aにおいて、図中Y軸方向において対向して設けられる第1の切り欠き部26Aと第2の切り欠き部27Bとの間の領域には、これら第1の切り欠き部26Aと第2の切り欠き部27Bとの間を連通する複数の溝25A、30A、31Aが形成されている。なお、
図3において、溝25Aの数は3本であるが、もっと幅の小さい数多くの溝を形成するようにしても良い。
【0026】
高温伝熱板2Aにおける上記の各溝25B、30A、31Aは、X軸方向に沿って形成された複数の溝25Aと、Y軸方向に沿って形成された2本の溝30A、31Aで構成される。Y軸方向に沿って形成された2本の溝30A、31Aのうち一方の溝30Aは一端が第1の切り欠き部26Aと連通し、他方の溝31Aは一端が第2の切り欠き部27Aと連通する。X軸方向に沿って形成された複数の溝25Aは各々2本の溝30A、31Aの間を連通する。これにより、高温伝熱板2Aの高温流体入口21および高温流体出口22と、低温伝熱板2Bの低温流体入口23および低温流体出口24との位置関係を互いに90度異なるようにしている。
【0027】
(低温伝熱板2Bの構成)
図4に示すように、低温伝熱板2Bには、低温流体の流路を形成する溝25Bおよび切り欠き部26B、27B、28B、29Bがそれぞれ設けられている。溝25Bは低温伝熱板2Bの一方の面にのみ設けられる。溝25Bの深さはどこも均一であってよい。切り欠き部26B、27B、28B、29Bは、低温伝熱板2Bの基材の4辺に各々対応する縁端部における所定の部位を基材の厚み分除去することによって形成される。
【0028】
以後、説明の必要に応じて、低温伝熱板2Bの各々の切り欠き部26B、27B、28B、29Bを、第5の切り欠き部26B、第6の切り欠き部27B、第7の切り欠き部28B、および第8の切り欠き部29Bと呼ぶ。
【0029】
低温伝熱板2Bにおいて、図中X軸方向において対向して設けられる第3の切り欠き部28Bと第4の切り欠き部29Bとの間には、これら第3の切り欠き部28Bと第4の切り欠き部29Bとの間を連通する複数の溝25Bが形成されている。これら複数の溝25Bは、高温伝熱板2Aに形成された複数の溝25Aと、Y軸方向にて同じ位置に各々形成されている。
【0030】
(高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとの積層構造)
上記のような構成を有する高温伝熱板2Aおよび低温伝熱板2Bは、
図5および
図6に示すように、双方の溝25A、25B、30A、31Aが設けられた面の向きを一致させて、各々複数交互に重ね合わせて積層される。このようにして熱交換器本体2が構成される。
【0031】
この熱交換器本体2において、高温伝熱板2Aの第1の切り欠き部26Aと低温伝熱板2Bの第5の切り欠き部26Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、高温流体入口21を形成する。
【0032】
高温伝熱板2Aの第2の切り欠き部27Aと低温伝熱板2Bの第6の切り欠き部27Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、高温流体出口22を形成する。
【0033】
高温伝熱板2Aの第3の切り欠き部28Aと低温伝熱板2Bの第7の切り欠き部28Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、低温流体入口23を形成する。
【0034】
高温伝熱板2Aの第4の切り欠き部29Aと低温伝熱板2Bの第8の切り欠き部29Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、低温流体出口24を形成する。
【0035】
(高温流路と低温流路について)
図5は熱交換器本体2における高温流路を示す斜視図である。
高温流路は、高温伝熱板2Aの各溝25A、30A、31Aと低温伝熱板2Bの下側の面との間に形成される。高温流体は、高温流体入口21から流入し、溝30Aを通って複数の溝25Aに分配される。複数の溝25Aを通過した高温流体は溝31Aで合流し、高温流体出口22より流出する。このような高温流体の流れが各々の高温伝熱板2Aに対応する高温流路層において生じる。
【0036】
図6は熱交換器本体2における低温流路を示す斜視図である。
低温流路は、低温伝熱板2Bの溝25Bと高温伝熱板2Aの下側の面もしくは低温検知板3Bの下側の面との間に形成される。低温流体は、低温流体入口23から流入し、複数の溝25Bを通って低温流体出口24から流出する。このような低温流体の流れが各々の低温伝熱板2Bに対応する低温流路層において生じる。
【0037】
熱交換器本体2において高温流路層と低温流路層は交互に積層されているので、高温伝熱板2Aおよび低温伝熱板2Bの熱伝導によって高温流体と低温流体との間での熱交換が行われる。また、高温伝熱板2Aの溝25Aを流れる高温流体と低温伝熱板2Bの溝25Bを流れる低温流体は、対向流となっている。
【0038】
[熱交換器本体2出入口の流体温度の検出機能]
この実施形態のマイクロ流路熱交換器1では、熱交換器本体2内を流れる高温流体および低温流体の温度を直接測定することを可能とするために、次のような構成を採用している。
【0039】
図7は本実施形態のマイクロ流路熱交換器1のY−Z断面図である。
図7および
図2に示すように、熱交換器本体2の上側および下側の面には各々、センサー配置層を構成するための高温検知板3Aおよび低温検知板3Bが接合されている。高温検知板3Aおよび低温検知板3Bには、例えばエッチング処理などによってセンサー収容溝35A、35Bが形成されている。このセンサー収容溝35A、35Bの一端は、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bの端まで達している(
図2参照)。
【0040】
高温検知板3Aおよび低温検知板3Bは各々、センサー収容溝35A、35Bが形成された面の向きを、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bにおいて溝25A、25B、30A、31Aが形成された面の向きに一致させて積層される。これにより、高温検知板3Aのセンサー収容溝35Aは、熱交換器本体2の高温側の面(高温伝熱板2Aの高温側の面)によって塞がれた状態となり、シース熱電対などの温度センサー41Aを収容する空間として形成される。一方、低温検知板3Bのセンサー収容溝35Bと低温保護板4Bとの間にも、同様の空間が形成される。
【0041】
高温検知板3Aおよび低温検知板3Bの各々のセンサー収容溝35A、35Bは、一端が高温検知板3Aおよび低温検知板3Bの端まで形成されているので、マイクロ流路熱交換器1の側面には開口33A、33B(
図2参照)が形成される。この開口33A、33Bからセンサー収容溝35A、35Bの空間内に温度センサー41A、41Bを挿入することができる。
【0042】
温度センサー41A、41Bの挿入された空間内の隙間は、少なくとも、温度センサー41A、41Bの温度感知点43A、43Bが位置する部分を除いて充填材42A、42Bが充填される。これにより温度センサー41A、41Bの温度感知点43A、43Bは、センサー収容溝35A、35Bに連通する空間内で露出した状態となる。この温度センサー41A、41Bの温度感知点43A、43Bが露出する空間が、流体の温度を測定するための測定空間34A、34Bとなる。
【0043】
なお、測定空間34A、34Bは、温度センサー41A、41Bの温度感知点43A、43Bと流体との接触量が十分確保されるように幅広い空間とされている(
図2参照)。
【0044】
そして、本実施形態のマイクロ流路熱交換器1には、熱交換器本体2内を流れる流体を測定空間34A、34Bに導入するために連通穴32A、32Bが設けられている。
【0045】
高温検知板3Aに対応して設けられる連通穴32Aは、一端が高温検知板3Aと接合された高温伝熱板2Aにおける溝25Aの底面に開口し、他端が高温検知板3Aの測定空間34Aに開口するように、高温伝熱板2Aを積層方向に貫く穴として設けられている。
【0046】
低温検知板3Bに対応して設けられる連通穴32Bは、一端が低温検知板3Bにおける測定空間34Bの底面に開口し、他端が低温検知板3Bと接合された低温伝熱板2Bにおける溝25Bに開口するように、低温検知板3Bを積層方向に貫く穴として設けられている。
【0047】
このような構成を採用することによって、温度センサー41A、41Bを流路に突出させることがないため、熱交換器本体2内の流路において大きな流動抵抗をつくりだすことなく、熱交換器本体2内の流体の温度を直接測定することができる。
【0048】
本実施形態のマイクロ流路熱交換器1では、高温流体および低温流体の温度を直接測定して熱交換器の性能を特定することができる。このため、高温高圧ガスの温度や圧力ならびに流量の調整によって、熱交換器の性能を最大現に発揮することができる。
【0049】
流体の温度は、その流路の出入口部で測定しても良い。したがって、その流路の出入口の位置において流体の温度を温度センサー41A、41Bで測定できるように、温度測定のための位置、例えば、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bにおける温度センサー41A、41Bの位置、連通穴32A、32Bの位置などを決めればよい。
【0050】
上記の実施形態のマイクロ流路熱交換器1において、高温検知板3Aと低温検知板3Bは、熱交換器本体2の伝熱板積層方向の両端に配置されているが、本発明はこれに限定されない。
【0051】
例えば、
図8に示すように、熱交換器本体2の中間に高温検知板3Aおよび低温検知板3Bが設けられてもよい。この場合も、高温検知板3Aおよび低温検知板3Bのいずれか一方が設けられるようにしてもよい。
【0052】
なお、上述のエッチング加工では凹部を形成し流路としているが、金属箔表面に凸部を形成する、例えば金属粒子を接着剤(バインダー)と共に金属箔表面に塗布する加工(印刷加工)を行う、ことによって流路を制作する方法もある。