(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連続切替機構(70)は、左端の前記植付装置(52a)に対応する前記部分条クラッチ(71a)及び右端の前記植付装置(52d)に対応する前記部分条クラッチ(71d)の入切の切替を個別に行う単一の端部伝動切替アーム(76)を回動自在に設け、該端部伝動切替アーム(76)に長孔(84)を形成し、前記突出部(86)は、該長孔(84)の内縁に接触しながら回動して前記端部伝動切替アーム(76)を回動させ、
前記左端の前記植付装置(52a)に対応する前記部分条クラッチ(71a)に一端が連結された前記長尺部材(72a)の他端を二つに分岐させ、この二つに分岐した他端の一方を前記突出部(86)がスライド可能に嵌め込まれたスリット部材(200)に連結すると共に、二つに分岐した他端の他方は前記端部伝動切替アーム(76)に連結され、
前記左端の前記植付装置(52a)に対応する前記部分条クラッチ(71a)に連結された前記長尺部材(72a)の一端を収縮部材で常に引っ張る構成とすると共に、
右端の前記植付装置(52d)に対応する前記部分条クラッチ(71d)に前記一端が連結された前記長尺部材(72d)の他端は二つに分岐しており、二つに分岐した前記他端の一方は前記スリット部材(200)に連結されており、二つに分岐した他端の他方は前記端部伝動切替アーム(76)に連結され、
前記右端の前記植付装置(52d)に対応する前記部分条クラッチ(71d)に連結された前記長尺部材(72d)の一端は、収縮部材で常に引っ張る構成としたことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
【0027】
はじめに、
図1及び
図2を参照しながら、本実施の形態の田植機8の構成について具体的に説明する。
【0028】
ここに、
図1は本発明における実施の形態の田植機8の左側面図であり、
図2は本発明における実施の形態の田植機8の上面図である。
【0029】
図1においては走行車体2を備える乗用型の8条植えの田植機8の側面視における状態が図示されており、
図2においては平面視における状態が図示されている。
【0030】
なお、田植機8は、本発明の苗移植機の一例である。また、走行車体2は、本発明の走行車体の一例である。
【0031】
田植機8は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0032】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10及び左右一対の後輪11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10が各々取り付けられている。
【0033】
又、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11が取り付けられている。
【0034】
エンジン20は、メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。
【0035】
ミッションケース12に伝達された回転動力は、ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて前輪10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18に伝達されて後輪11を駆動する。
【0036】
又、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0037】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置されている。運転席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10を操向操作する操縦ハンドル34が設けられている。
【0038】
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(
図2参照)、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
【0039】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41を備えている。上リンク40及び下リンク41は、それらの基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0040】
メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダー46が設けられており、昇降油圧シリンダー46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4が略一定姿勢のまま昇降する。
【0041】
苗植付部4は、8条植の構成で、フレームを兼ねる植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51aに供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する苗載せ台51、苗取出口51aに供給された苗を苗植付具54によって圃場に植え付ける苗植付装置52等を備えている。
【0042】
植付伝動ケース50の後部は、4つに分岐しており、分岐したそれぞれの後端部に植付駆動軸が回転自在に支承されており、この植付駆動軸の左右突出部にロータリーケース16の中央部が一体回転する構成で固定して取り付けられている。
【0043】
更にロータリーケース16の両端部に植付回動軸を回転自在に支承し、これらの2つの植付回動軸のそれぞれに苗植付具54が取り付けられている。
【0044】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、57、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、57、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植え付けられる。
【0045】
各フロート55、57、56は、圃場表土面の凹凸に対応して前端側が上下動する如く回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサー(図示せず)により検出され、その検出結果に対応して昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0046】
施肥装置5は、肥料タンク60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でセンターフロート55及びサイドフロート56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込む構成となっている。ブロアー用電動モーター53で駆動するブロアー58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバー59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送する構成となっている。
【0047】
苗植付部4には第1整地ローター27a及び第2整地ローター27b(第1整地ローター27aと第2整地ローター27bの組み合わせを単に整地ローターと言うことがある)が取り付けられている。
【0048】
又、苗載せ台51は、苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aを利用してレール上を左右方向にスライドする構成である。
【0049】
又、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗枠38が設けられている。
【0050】
つぎに、
図3を主として参照しながら、本実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の構成及び動作について具体的に説明する。
【0051】
ここに、
図3は、本発明における実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構のブロック図である。
【0052】
図3においては、植付伝動ケース50及び苗植付装置52の部分の上面視における状態が模式的に図示されており、苗植付装置52への駆動力の伝動の入切を2条ごとに制御する部分条クラッチの接続構成が示されている。
【0053】
植付伝動ケース50の後部の4つに分岐したそれぞれの後端部に、2条分の苗を植え付ける苗植付装置52が設けられている。ここでは、それらの4つの苗植付装置52を、機体の左側から順に、第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dと呼ぶこととする。
【0054】
なお、第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dは、それぞれ本発明の植付装置の一例である。また、部分条クラッチ切替機構70は、本発明の連続切替機構の一例である。また、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dは、それぞれ本発明の部分条クラッチの一例である。また、第1クラッチワイヤー72a、第2クラッチワイヤー72b、第3クラッチワイヤー72c及び第4クラッチワイヤー72dは、それぞれ本発明の長尺部材の一例である。
【0055】
第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dは、苗の植付を行う、走行車体2の左右方向に配置された三つ以上の、本実施の形態においては四つの装置である。
【0056】
第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dは、第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dへの駆動力の伝達の入切の切替を個別に行う、第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dにそれぞれ対応するクラッチである。
【0057】
部分条クラッチ切替機構70は、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dの入切の切替を連続的に行う機構である。
【0058】
後に詳述されるように、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われている状態から、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われていない状態に至るまで、駆動力の伝達の入切の切替が、左端の第1苗植付装置52aから右端の第4苗植付装置52dに向かって、又は右端の第4苗植付装置52dから左端の第1苗植付装置52aに向かって順番に行われていく。
【0059】
ここで、苗植付装置52への駆動力の伝動の入切を2条ごとに制御する部分条クラッチの構成及び動作について説明する。
【0060】
植付伝動ケース50の後部の4つに分岐したそれぞれの後端部には、各後端部に設けられているロータリーケース16及び苗植付具54への駆動力を入切する部分条クラッチが設けられており、2条分の苗を植え付ける苗植付装置52ごとの苗の植え付け動作を個別に制御出来る構成となっている。すなわち、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dによって、それぞれ、第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dへの駆動力の伝動が入切される。
【0061】
第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dは、それぞれ、第1クラッチワイヤー72a、第2クラッチワイヤー72b、第3クラッチワイヤー72c及び第4クラッチワイヤー72dによって部分条クラッチ切替機構70に接続されている。第1クラッチワイヤー72a、第2クラッチワイヤー72b、第3クラッチワイヤー72c及び第4クラッチワイヤー72dが、部分条クラッチ切替機構70によって引っ張られることにより、対応する第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dが切とされ、対応する第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dへの駆動力の伝動が切れる。
【0062】
部分条クラッチ切替機構70を操作する切替ダイヤル73が、
図2に示す通り、操縦ハンドル34の横に配置されており、作業者は、運転席31に座った状態で、切替ダイヤル73を操作することが出来、部分条クラッチの切替制御を行うことが出来る。
【0063】
つぎに、
図4及び5を主として参照しながら、本実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の構成及び動作についてより具体的に説明する。
【0064】
ここに、
図4は本発明における実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の左側面図であり、
図5は本発明における実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の上面図である。
【0065】
なお、第2切替アーム77及び第3切替アーム78は、本発明の中間部伝動切替アームの一例である。また、連続切替ギヤ82は、本発明の連続切替部材の一例である。また、アーム接触ピン86は、本発明の突出部の一例である。また、スプリング100a及び100dは、本発明の弾性部材の一例である。また、回動式ケーブルアウタ101a及び101dは、本発明の回動式部材の一例である。
【0066】
部分条クラッチ切替機構70は、第1クラッチワイヤー72a、第2クラッチワイヤー72b、第3クラッチワイヤー72c及び第4クラッチワイヤー72dと、第2切替アーム77及び第3切替アーム78と、連続切替ギヤ82と、を有する。
【0067】
第1クラッチワイヤー72a、第2クラッチワイヤー72b、第3クラッチワイヤー72c及び第4クラッチワイヤー72dは、一端が第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dに連結された、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dにそれぞれ対応するワイヤーである。
【0068】
第2切替アーム77及び第3切替アーム78は、左端の第1苗植付装置52aと右端の第4苗植付装置52dとの中間にある第2苗植付装置52b及び第3苗植付装置52cにそれぞれ対応する第2部分条クラッチ71b及び第3部分条クラッチ71cの入切の切替を個別に行うアームである。
【0069】
連続切替ギヤ82は、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dの入切の切替を連続的に行うための回動力を利用して回動させられるギヤである。
【0070】
連続切替ギヤ82の弧状の縁部に形成されている歯は、切替モーター74によって回転する切替機構駆動ギヤ83の歯と噛み合っており、連続切替ギヤ82は、切替機構駆動ギヤ83の回転に伴って、切替ギヤ回動支点87を中心に回動する。
【0071】
なお、連続切替ギヤ82の回動角度を正確に制御すべく、連続切替ギヤ82の回動角度を検出するポテンショメーター(図示省略)を設けてもよい。
【0072】
第2切替アーム77及び第3切替アーム78は、弧状の回動可能な部材である。
【0073】
左端の第1苗植付装置52aと右端の第4苗植付装置52dとの中間にある第2苗植付装置52b及び第3苗植付装置52cにそれぞれ対応する第2部分条クラッチ71b及び第3部分条クラッチ71cに一端が連結された第2クラッチワイヤー72b及び第3クラッチワイヤー72cの他端は、それぞれ対応する第2切替アーム77及び第3切替アーム78に連結されている。
【0074】
連続切替ギヤ82は、アーム接触ピン86を有する。
【0075】
アーム接触ピン86は、第2切替アーム77及び第3切替アーム78の周縁に接触しながら回動して第2切替アーム77及び第3切替アーム78を回動させるピンである。
【0076】
左端の第1苗植付装置52aに対応する第1部分条クラッチ71aに一端が連結された第1クラッチワイヤー72aの他端は、スプリング100aを介してアーム接触ピン86に連結されている。
【0077】
右端の第4苗植付装置52dに対応する第4部分条クラッチ71dに一端が連結された第4クラッチワイヤー72dの他端は、スプリング100dを介してアーム接触ピン86に連結されている。
【0078】
左端の第1苗植付装置52aに対応する第1部分条クラッチ71aに一端が連結された第1クラッチワイヤー72aは、回動させられるアーム接触ピン86によって牽引されても歪み及び曲がりが生じないように、他端が回動式ケーブルアウタ101aを利用してアーム接触ピン86に連結されている。
【0079】
右端の第4苗植付装置52dに対応する第4部分条クラッチ71dに一端が連結された第4クラッチワイヤー72dは、回動させられるアーム接触ピン86によって牽引されても歪み及び曲がりが生じないように、他端が回動式ケーブルアウタ101dを利用してアーム接触ピン86に連結されている。
【0080】
つぎに、
図4〜10を主として参照しながら、本実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構が有する連続切替ギヤ82の回動に伴う経時的な動作について詳細に説明する。
【0081】
ここに、
図6〜10は、本発明における実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の部分左側面図(その一から五)である。
【0082】
駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われている状態から、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われていない状態に至るまで、駆動力の伝達の入切の切替が、左端の第1苗植付装置52aから右端の第4苗植付装置52dに向かって順番に行われていく場合について具体的な説明を行う。
【0083】
なお、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われている状態から、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われていない状態に至るまで、駆動力の伝達の入切の切替が、右端の第4苗植付装置52dから左端の第1苗植付装置52aに向かって順番に行われていく場合についても、詳細な説明は省略するが、同様である。
【0084】
これは、構成が対称的であるので、前者の場合における第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dの役割が、後者の場合における第4苗植付装置52d、第3苗植付装置52c、第2苗植付装置52b及び第1苗植付装置52aの役割に対応しているからである。
【0085】
さて、駆動力の伝達の入切の切替が、左端の第1苗植付装置52aから右端の第4苗植付装置52dに向かって順番に行われていく場合における、切替ギヤ回動支点87を中心として反時計回りに回動する連続切替ギヤ82の回動角度は、鉛直下向き線を基準として0度、30度、60度、90度及び120度である。
【0086】
そして、回動状態(0)〜回動状態(4)はそれぞれ、そのような回動角度0度〜120度に対応する状態であり、
図6〜10に示されている。
【0087】
回動状態(0)においては、スプリング100a及び100dは僅かに伸張しているが、第1クラッチワイヤー72a及び第4クラッチワイヤー72dは僅かにしか引っ張られておらず、アーム接触ピン86は第2切替アーム77にも第3切替アーム78にも接触していない。
【0088】
回動状態(1)においては、スプリング100aはスプリング100aに加わる付勢力によって大幅に伸張しており、これに伴い第1クラッチワイヤー72aも大幅に引っ張られているが、第4クラッチワイヤー72dは僅かにしか引っ張られておらず、アーム接触ピン86は、第2回動支点80を中心とする反時計回りの第2切替アーム77の回動を開始しようとしているが、第3切替アーム78にはまだ接触していない。
【0089】
回動状態(2)においても、第4クラッチワイヤー72dは僅かにしか引っ張られておらず、アーム接触ピン86は、第2切替アーム77の回動をほぼ終了しているが、第3回動支点81を中心とする反時計回りの第3切替アーム78の回動を開始しようとしている。
【0090】
回動状態(3)においては、第4クラッチワイヤー72dはまだ僅かにしか引っ張られておらず、アーム接触ピン86は第3切替アーム78の回動もほぼ終了している。
【0091】
回動状態(4)においては、スプリング100dにも付勢力が加わるので、スプリング100dも大幅に伸張しており、スプリング100dの伸張に伴い、第4クラッチワイヤー72dも大幅に引っ張られている。
【0092】
したがって、第1部分条クラッチ71aの入切の切替が回動状態(0)と回動状態(1)との間で行われ、第2部分条クラッチ71bの入切の切替が回動状態(1)と回動状態(2)との間で行われ、第3部分条クラッチ71cの入切の切替が回動状態(2)と回動状態(3)との間で行われ、第4部分条クラッチ71dの入切の切替が回動状態(3)と回動状態(4)との間で行われる。
【0093】
なお、回動状態(3)と回動状態(4)との間では、第3クラッチワイヤー72cの一端はクラッチ側に配置されたクラッチスプリング102cを利用して引っ張られているが、アーム接触ピン86は第3切替アーム78の上側に回りこんで第3切替アーム78を押さえており、その結果として束縛されている第3切替アーム78の回動は行われないので、第3部分条クラッチ71cの入切の切替が行われてしまう懸念はない。
【0094】
また、ちょうど逆向きの動作である、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われていない状態から、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われている状態に至るまで、駆動力の伝達の入切の切替が、右端の第4苗植付装置52dから左端の第1苗植付装置52aに向かって順番に行われていく場合についても、詳細な説明は省略するが、同様である。
【0095】
これは、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dに連結された、第1クラッチワイヤー72a、第2クラッチワイヤー72b、第3クラッチワイヤー72c及び第4クラッチワイヤー72dの一端は、それぞれクラッチ側に配置されたクラッチスプリング102a、102b、102c及び102dを利用して常に引っ張られているからである。
【0096】
このように、切替アクチュエーターとしての正逆転可能な切替モーター74によって駆動される、ローラ形状のアーム接触ピン86が設けられた連続切替ギヤ82と、アーム接触ピン86によって回動させられる第2切替アーム77及び第3切替アーム78と、スプリング100a及び100dを介してそれぞれアーム接触ピン86に連結されている第1クラッチワイヤー72a及び第4部分条クラッチ71dと、を利用する構成によって全条入状態と全条切状態との間の切替を容易に行うことができる。
【0097】
上述された通り全条切状態を実現する場合において、最後のオーバーストロークで引っ張られるクラッチワイヤーに連結された部分条クラッチは、それまでの余分なストロークがあることによって切状態とならない。
【0098】
これは、クラッチワイヤーがスプリングを介してアーム接触ピンに連結されており、ある程度の引っ張りがクラッチワイヤーに印加されても、スプリングの弾性が都合よくその引っ張りを吸収するからである。
【0099】
もちろん、たとえば、上述された回動が反時計回りである場合の連続切替ギヤ82の回動角度が120度である回動状態(4)におけるアーム接触ピン86と、その場合には最後に切状態となる第4部分条クラッチ71dの回動式ケーブルアウタ101dと、の間の距離(168.97mm)は、回動が時計回りである場合の連続切替ギヤ82の回動角度がマイナス30度である回動状態におけるアーム接触ピン86と、その場合には最初に切状態となる第4部分条クラッチ71dの回動式ケーブルアウタ101dと、の間の距離(171.2mm)にほぼ一致する、乃至殆ど差の無いものとしている。
【0100】
なお、上述された、第1クラッチワイヤー72a及び第4部分条クラッチ71dがスプリング100a及び100dを介してそれぞれアーム接触ピン86に連結されている部分条クラッチ機構ではなく、アーム接触ピン86によって回動させられる端部伝動切替アームを利用する別の部分条クラッチ機構によっても、同様に全条入状態と全条切状態との間の切替を容易に行うことができる。
【0101】
そこで、
図11及び12を主として参照しながら、そのような別の実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の構成及び動作について上述された実施の形態との相違点を中心として説明する。
【0102】
ここに、
図11は本発明における別の実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の左側面図であり、
図12は本発明における別の実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の上面図である。
【0103】
なお、第1切替アーム76は、本発明の端部伝動切替アームの一例である。また、接触ピン摺動孔84は、本発明の長孔の一例である。また、スライダ200は、本発明のスリット部材の一例である。また、クラッチスプリング102a及び102dは、本発明の収縮部材の一例である。
【0104】
部分条クラッチ切替機構70は、第1切替アーム76を有する。
【0105】
第1切替アーム76は、左端の第1苗植付装置52aに対応する第1部分条クラッチ71a及び右端の第4苗植付装置52dに対応する第4部分条クラッチ71dの入切の切替を個別に行う単一のアームである。
【0106】
第1切替アーム76は、接触ピン摺動孔84を有する回動可能な部材である。
【0107】
アーム接触ピン86は、接触ピン摺動孔84の内縁に接触しながら回動して第1切替アーム76を回動させる。
【0108】
左端の第1苗植付装置52aに対応する第1部分条クラッチ71aに一端が連結された第1クラッチワイヤー72aの他端は二つに分岐しており、二つに分岐した他端の一方はアーム接触ピン86がスライド可能に嵌め込まれたスライダ200に連結されており、二つに分岐した他端の他方は第1切替アーム76に連結されている。
【0109】
右端の第4苗植付装置52dに対応する第4部分条クラッチ71dに一端が連結された第4クラッチワイヤー72dの他端は二つに分岐しており、二つに分岐した他端の一方はスライダ200に連結されており、二つに分岐した他端の他方は第1切替アーム76に連結されている。
【0110】
第1クラッチワイヤー72a及び第4クラッチワイヤー72dの他端の分岐はそれぞれ、スプリッタ201a及び201dを利用して行われており、第1クラッチワイヤー72a及び第4クラッチワイヤー72dの、二つに分岐した他端の一方のスライダ200への連結は、第1切替アーム76に設けられたケーブルアウタ202とともに、コネクタ203及びコネクタワイヤー204を利用して行われている。
【0111】
もちろん、このような分岐及び連結が実現されれば十分であるという意味においては、これらの構成要素の利用は必須ではない。
【0112】
左端の第1苗植付装置52aに対応する第1部分条クラッチ71aに連結された、第1クラッチワイヤー72aの一端は、クラッチスプリング102aによって常に引っ張られている。
【0113】
右端の第4苗植付装置52dに対応する第4部分条クラッチ71dに連結された、第4クラッチワイヤー72dの一端は、クラッチスプリング102dによって常に引っ張られている。
【0114】
駆動力の伝達の入切の切替が、左端の第1苗植付装置52aから右端の第4苗植付装置52dに向かって順番に行われていくときには、右端の第4苗植付装置52dに対応する第4部分条クラッチ71dの入切の切替が、二つに分岐した他端の一方がスライダ200によって牽引されることによって行われる。
【0115】
駆動力の伝達の入切の切替が、右端の第4苗植付装置52dから左端の第1苗植付装置52aに向かって順番に行われていくときには、左端の第1苗植付装置52aに対応する第1部分条クラッチ71aの入切の切替が、二つに分岐した他端の一方がスライダ200によって牽引されることによって行われる。
【0116】
つぎに、
図11〜18を主として参照しながら、このような別の実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構が有する連続切替ギヤ82の回動に伴う経時的な動作について詳細に説明する。
【0117】
ここに、
図13は本発明における別の実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の、スプリッタ201a及び201d並びにコネクタ203の位置と、第1クラッチワイヤー72a及び第4クラッチワイヤー72dの状態と、の説明図であり、
図14(a)〜18(a)は本発明における別の実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構の部分左側面図(その一から五)であり、
図14(b)〜18(b)は本発明における別の実施の形態の田植機8の部分条クラッチ機構のスライダ200周辺部分左側面図(その一から五)である。
【0118】
駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われている状態から、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われていない状態に至るまで、駆動力の伝達の入切の切替が、左端の第1苗植付装置52aから右端の第4苗植付装置52dに向かって順番に行われていく場合について具体的な説明を行う。
【0119】
さて、駆動力の伝達の入切の切替が、左端の第1苗植付装置52aから右端の第4苗植付装置52dに向かって順番に行われていく場合における、切替ギヤ回動支点87を中心として反時計回りに回動する連続切替ギヤ82の回動角度は、鉛直下向き線を基準として0度、30度、60度、90度及び120度である。
【0120】
そして、回動状態(0)〜回動状態(4)はそれぞれ、そのような回動角度0度〜120度に対応する状態であり、
図14〜18に示されている。
【0121】
回動状態(0)においては、アーム接触ピン86は、第1回動支点79を中心とする反時計回りの第1切替アーム76の回動を開始しようとしているが、第2切替アーム77にも第3切替アーム78にも接触していない。
【0122】
そして、コネクタ203並びにスプリッタ201a及び201dの位置は、何れもクラッチ側位置である。
【0123】
したがって、スライダ200はコネクタワイヤー204を介してクラッチスプリング102a及びクラッチスプリング102dによって引っ張られているが、コネクタワイヤー204は剛性を有しており容易には弛まないので、スライダ200が大きくクラッチ側に引っ張られてしまう懸念はなく、アーム接触ピン86のスライダ上の位置はスライダ200の下端部の位置である。
【0124】
もちろん、スライダ200が大きくクラッチ側に引っ張られてしまう懸念がある場合には、たとえば、コネクタ203がクラッチ側に移動することを規制するためのストッパーが設けられていてもよい。
【0125】
回動状態(1)においては、アーム接触ピン86は、第1切替アーム76の回動をほぼ終了しており、第2回動支点80を中心とする反時計回りの第2切替アーム77の回動を開始しようとしているが、第3切替アーム78にはまだ接触していない。
【0126】
したがって、第1切替アーム76によって大幅に引っ張られたスプリッタ201aの位置は変化して切替ギヤ側位置となっているが、コネクタ203及びスプリッタ201dの位置はまだクラッチ側位置である。
【0127】
そして、スライダ200は少なくともクラッチスプリング102dが加える付勢力によって引っ張られているので、スライダ200とケーブルアウタ202との間の距離はまだほとんど変化しておらず、アーム接触ピン86のスライダ上の位置は上向きに変化してスライダ200の下端部と中央部との間の位置となっている。
【0128】
回動状態(2)においては、アーム接触ピン86は、第2切替アーム77の回動をほぼ終了しており、第3回動支点81を中心とする反時計回りの第3切替アーム78の回動を開始しようとしている。
【0129】
もちろん、スプリッタ201aの位置はさらには変化せず切替ギヤ側位置であり、コネクタ203及びスプリッタ201dの位置も変化せずなおクラッチ側位置である。
【0130】
そして、スライダ200は少なくともクラッチスプリング102dが加える付勢力によって引っ張られているので、スライダ200とケーブルアウタ202との間の距離はなおほとんど変化しておらず、アーム接触ピン86のスライダ上の位置はさらに上向きに変化してスライダ200の中央部と上端部との間の位置となっている。
【0131】
回動状態(3)においては、アーム接触ピン86は、第3切替アーム78の回動もほぼ終了している。
【0132】
もちろん、スプリッタ201aの位置はやはり変化せず切替ギヤ側位置であり、コネクタ203及びスプリッタ201dの位置も変化せず、まだなおクラッチ側位置である。
【0133】
そして、スライダ200は少なくともクラッチスプリング102dによって引っ張られているので、スライダ200とケーブルアウタ202との間の距離はまだなおほとんど変化していないが、アーム接触ピン86のスライダ上の位置はさらに上向きに変化してスライダ200の上端部の位置となっており、これまでのように上向きには変化できない姿勢となる。
【0134】
回動状態(4)においては、アーム接触ピン86のスライダ上の位置は上述された通り上向きには変化できない姿勢となっているので、スライダ200がアーム接触ピン86によって大幅に引っ張られ、スライダ200とケーブルアウタ202との間の距離は大幅に大きくなっており、その結果としてコネクタワイヤー204によって大幅に引っ張られたコネクタ203及びスプリッタ201dの位置も変化して切替ギヤ側位置となっている。
【0135】
したがって、第1部分条クラッチ71aの入切の切替が回動状態(0)と回動状態(1)との間で行われ、第2部分条クラッチ71bの入切の切替が回動状態(1)と回動状態(2)との間で行われ、第3部分条クラッチ71cの入切の切替が回動状態(2)と回動状態(3)との間で行われ、第4部分条クラッチ71dの入切の切替が回動状態(3)と回動状態(4)との間で行われる。
【0136】
なお、ちょうど逆向きの動作である、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われていない状態から、駆動力の伝達が全ての第1苗植付装置52a、第2苗植付装置52b、第3苗植付装置52c及び第4苗植付装置52dについて行われている状態に至るまで、駆動力の伝達の入切の切替が、右端の第4苗植付装置52dから左端の第1苗植付装置52aに向かって順番に行われていく場合についても、詳細な説明は省略するが、同様である。
【0137】
これは、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dに連結された、第1クラッチワイヤー72a、第2クラッチワイヤー72b、第3クラッチワイヤー72c及び第4クラッチワイヤー72dの一端は、それぞれクラッチ側に配置されたクラッチスプリング102a、102b、102c及び102dを利用して常に引っ張られているからである。
【0138】
なお、このような逆向きの動作における回動状態(4)と回動状態(3)との間では、コネクタ203及びスプリッタ201dの位置は変化してクラッチ側位置となるが、第1切替アーム76の回動は行われず、その結果として束縛されているスプリッタ201aの位置は変化することができず切替ギヤ側位置であるので、第1部分条クラッチ71aの入切の切替が行われてしまう懸念はない。
【0139】
以上の本発明における実施の形態及び別の実施の形態について詳細に説明されたように、連続切替ギヤ82によって左右どちらかの外側端部から順に部分条クラッチが「入」又は「切」になることにより、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dの入切操作が簡単になり、作業能率及び操作性が向上する。
【0140】
つまり、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dが左右どちらか一方の外側端部から順に「切」又は「入」状態となることにより、一部の部分条クラッチが切り忘れられることを防止出来るので、不要な箇所に苗を植え付けることが防止され、苗の消費量が抑制される。
【0141】
そして、従来のように、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dの入切を行う操作レバーを走行車体2の上面に突出させる必要が無くなるので、作業者の足等が接触して第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dが「切」状態となることが防止され、苗の植え付けられなかった区間に作業者が苗を植える作業が不要となり、作業者の労力が軽減され、逆に、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dが「入」状態となることが防止され、植付の不要な箇所に苗が植え付けられることがなくなり、苗の消費量が抑えられる。
【0142】
さらに、苗植付装置52の作動及び停止が確実に行われるので、必要な箇所に苗が確実に植え付けられて作業者が苗を植え付ける作業が不要になると共に、余分な苗の植付が行われず苗の消費量が減少する。
【0143】
なお、第1部分条クラッチ71a、第2部分条クラッチ71b、第3部分条クラッチ71c及び第4部分条クラッチ71dの入切操作を行う条数に合わせて切替モーター74を自動停止させることが出来るので、作業者が切替モーター74の細かい操作を行なう必要が無く、操作性が向上する。
【0144】
また、一部の部分条クラッチを「入」又は「切」にし忘れることが防止され、必要な箇所に苗が確実に植え付けられて作業者が苗を植え付ける作業が不要になると共に、余分な苗の植付が行われず苗の消費量が減少する。
【0145】
また、全ての部分条クラッチを「切」操作して苗植付装置52を停止させることを防止出来るので、誤操作により苗の植え付けが行われなくなることが防止され、必要な箇所に苗が確実に植え付けられて作業者が苗を植え付ける作業が不要になる。
【0146】
(A)つぎに、
図1を主として参照しながら、苗植付装置52の植込杆に関連する田植機8の構成及び動作について種々の説明を行う。
【0147】
37株又は42株といった所定の株数での疎植を確実に実行できるように、株数に応じた適切な偏心率を有する偏心ギヤが組み込まれている。
【0148】
しかしながら、車体走行速度が比較的に大きい場合には、苗植付具54が過大なピッチで上下に動いてしまう、脈動が惹起されやすく、疎植がうまく実行されないことがある。
【0149】
そこで、
図19に示されているように、たとえば、疎植の実行が株間設定レバーなどによって指示されている場合においては、第1〜第8車体走行速度の内の、第7又は第8車体走行速度といった大きな車体走行速度が作業者の操作によって指示されたときにおいても、HST23のアシスト値を通常通りの第7又は第8車体走行速度に対応した本来の大きい値とはせずに、第6車体走行速度に対応したより小さい値とするアシスト値抑制処理が行われてもよい。
【0150】
ここに、
図19(a)は本発明における実施の形態の田植機8のアシスト値抑制処理が行われていないHST23のアシスト値の説明図であり、
図19(b)は本発明における実施の形態の田植機8のアシスト値抑制処理が行われているHST23のアシスト値の説明図である。
【0151】
このようなアシスト値抑制の調整は、たとえば、対象となる車体走行速度ごとに、上述された偏心ギヤが有する偏心率などを考慮した設定を利用して行うことができる。
【0152】
そして、前部の上下動が迎角制御センサーにより検出されるセンターフロート55のフロート感度抑制処理が、上記のようなアシスト値抑制処理と併せて行われることが望ましい。
【0153】
これは、アシスト値抑制処理がせっかく行われても、フロート感度抑制処理が正常に行われないで苗の植付深さが浅くなり過ぎると、植え付けられた苗が車体走行向きに倒れてしまう、所謂植付苗の前傾れが発生しやすくなり、結局のところ疎植がうまく実行されないことがあるからである。
【0154】
そこで、疎植の実行が株間設定レバーなどによって指示されている場合においては、第1〜第8車体走行速度の内の第7又は第8車体走行速度といった大きな車体走行速度が作業者の操作によって指示されたときにおいても、センターフロート55のフロート感度を通常通りの第7又は第8車体走行速度に対応した本来の大きい値とはせずに、たとえば、第6車体走行速度に対応したより小さい値とするフロート感度抑制処理が行われてもよい。
【0155】
このようなフロート感度抑制の調整は、たとえば、対象となる車体走行速度ごとに、(1)フロート油圧非検出期間であるフロート油圧不感帯を大きくする、又は(2)フロート油圧出力遅延時間を大きくする、といった設定を利用して行うことができる。
【0156】
かくして、疎植が実行されている場合においても、昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を適切に昇降させることができるので、苗の植付深さを常に一定に十分な大きさで維持するための自動植付深さ調整機能が有効に発揮される。
【0157】
なお、
図20に示されているように、たとえば、植付苗の前傾れの発生を抑制するために、上述されたフロート感度抑制処理を行うのではなく、苗載せ台51の角度、又は苗載せ台51、苗載せ台フレーム301及び苗植付具54などを含む部分の角度が植付苗の前傾れと相殺するべく変更されるように、昇降リンク機構3を介して装着されるヒッチ部300を車体走行向きとは逆向き(矢印Xで示されている)に倒すヒッチ部後傾用パワーシリンダ302を昇降リンク機構3の後側に装備してもよい。
【0158】
ここに、
図20は、本発明における実施の形態の田植機8の模式的なヒッチ部300周辺部分左側面図である。
【0159】
(B)つぎに、
図1を主として参照しながら、エンジン20のアイドリングストップに関連する田植機8の構成及び動作について種々の説明を行う。
【0160】
アイドリングストップは、車体走行停止が一定時間にわたって継続した場合、またはアイドリングストップ指示ボタンが押し下げられた場合などにおいて、エンジン20の回転数を1000rpm以下に抑える操作である。
【0161】
このようなアイドリングストップが実行されるときには、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して昇降可能に装着された苗植付部4を上昇させることが望ましい。
【0162】
これは、苗植付部4が少なくとも泥に浸かっていない程度に上昇させられていると、施肥装置5の内部圧力上昇に伴ういわゆる吹き戻しが発生したり、施肥ホース62の出口の泥詰まりが発生したりするトラブルが惹起されにくくなるので、施肥精度が低下してしまう恐れが低減されるからである。
【0163】
苗植付部4を上昇させる高さ位置は、最大リフト位置としてもよい。
【0164】
すると、アイドリングストップが解除されたときにおいて、昇降油圧シリンダー46の油圧下降による昇降リンク装置3の下降がもたらす落下エネルギーを、(1)回生エネルギーとしてバッテリー充電などにより蓄積したり、(2)エンジン20がアイドリングストップの実行時に停止している場合には、エンジン20を再始動させるためのセルモーターの補助動力として利用したりすることが、効率的に実現される。
【0165】
後者においては、
図21に示されているように、たとえば、昇降リンク装置3の下降によって回転する駆動ギヤ400にリコイルギヤ401を噛合させ、セルモーターの補助動力として利用できるように、リコイルギヤ401に巻回されるリコイル402を昇降リンク装置3の下降時に巻き込む構成を利用し、バッテリーの消耗を抑制することができる。
【0166】
ここに、
図21は、本発明における実施の形態の田植機8の模式的な昇降リンク装置3周辺部分左側面図である。
【0167】
もちろん、アイドリングストップが実行されるときには、上昇させられた苗植付部4が勝手に下降してしまわないように、昇降油圧シリンダー46の油圧系統バルブロックが併せて実行され、アイドリングストップが解除されたときには、そのような油圧系統バルブロックが併せて解除されてもよい。
【0168】
なお、上述された通りエンジン20を再始動させるときには、HST23の油圧回路設定などを利用して、エンジン20の回転数が1800rpm以上に上昇するまでの期間における不安定なHST動作を回避するために、HST23の駆動を停止させてもよい。
【0169】
また、このようなときには、アイドリングストップの実行時に動作状態であった電装品を、エンジン20を再始動させるための電力を十分に確保するために、一時的に全て非動作状態にしてもよい。