【実施例】
【0019】
図1は、本発明によるヒートポンプ式暖房給湯装置の構成を示している。このヒートポンプ式暖房給湯装置100は、能力可変型の圧縮機1、四方弁2、冷媒と水との熱交換を行う水冷媒熱交換器3、流量調整手段である膨張弁4、熱源側熱交換器5、アキュムレータ6を順に冷媒配管11で接続した冷媒回路10を有しており、四方弁2を切り換えることによって冷媒の循環方向を切り換えることができるようになっている。
【0020】
この冷媒回路10において、圧縮機1の冷媒吐出口付近の冷媒配管11には、圧縮機1から吐出された冷媒の温度を検出するための吐出温度センサ51が備えられている。また、水冷媒熱交換器3と膨張弁4との間の冷媒配管11には、水冷媒熱交換器3が凝縮器として機能しているときに水冷媒熱交換器3から流出する冷媒の温度を、あるいは、水冷媒熱交換器3が蒸発器として機能しているときに水冷媒熱交換器3に流入する冷媒の温度を、各々検出する冷媒温度センサ53が備えられている。また、膨張弁4と熱源側熱交換器5との間の冷媒配管11には、熱源側熱交換器5が蒸発器として機能しているときに熱源側熱交換器5に流入する冷媒の温度を、あるいは、熱源側熱交換器5が凝縮器として機能しているときに熱源側熱交換器5から流出する冷媒の温度を、各々検出する熱交温度センサ54が備えられている。さらには、圧縮機1の吐出側(四方弁2と水冷媒熱交換器3との間)の冷媒配管11には、圧力センサ50が備えられている。また、熱源側熱交換器5近傍には、外気温度センサ52が設けられている。
【0021】
熱源側熱交換器5の近傍には、ヒートポンプ式暖房給湯装置100の図示しない筺体内部に外気を取り込んで熱源側熱交換器5に外気を流通させるファン7が配置されている。ファン7は、図示しない回転数を可変できるモータの出力軸(回転軸)に取り付けられている。また、膨張弁4は、ステッピングモータを用いて弁の開度をパルス制御可能としたものである。
【0022】
水冷媒熱交換器3には、冷媒配管11と給湯配管12aとが接続されている。
図1に示すように、給湯配管12aの一端は三方弁31に接続されており、この三方弁31には室内ユニット側配管12cの一端と貯湯タンク側配管12bの一端とが各々接続されている。また、給湯配管12aの他端には、室内ユニット側配管12cの他端と貯湯タンク側配管12bの他端とが接続されている。尚、
図1において、給湯配管12aと貯湯タンク側配管12bと室内ユニット側配管12cとの接続部を接続点13としている。室内ユニット側配管12cには、床暖房装置やラジエター等の室内ユニット40が設けられており、また、貯湯タンク側配管12bには、貯湯タンク70が設けられている。
【0023】
貯湯タンク70内部の下方には、スパイラル形状に形成された熱交換部71が備えられている。熱交換部71の両端は貯湯タンク側配管12bに接続されており、貯湯タンク側配管12bを流れる温水が熱交換部71に流れるようになっている。貯湯タンク70の上部には、貯湯タンク70内部に貯留されている温水を浴槽や洗面台蛇口等に供給するための給湯口73が備えられている。また、貯湯タンク70の下部には、貯湯タンク70内部に水を供給するための入水口72が備えられており、入水口72には図示しない水道管が直結されている。
【0024】
接続点13と水冷媒熱交換器3との間には、能力可変型の循環ポンプ30が設けられている。循環ポンプ30を駆動することにより、水冷媒熱交換器3で冷媒と熱交換された水が、
図1に示す矢印90の方向に循環する。尚、水冷媒熱交換器3から流出した水は、三方弁31の切り換えに応じて室内ユニット側配管12cに流れて室内ユニット40に流入する、あるいは、貯湯タンク側配管12bに流れて貯湯タンク70に流入する。そして、室内ユニット40や貯湯タンク70から流出した水は、接続点13を介して水冷媒熱交換器3に流入する。
【0025】
以上説明したように、水冷媒熱交換器3と循環ポンプ30と室内ユニット40と貯湯タンク70とが給湯配管12aと貯湯タンク側配管12bと室内ユニット側配管12cとで接続されて、ヒートポンプ式暖房給湯装置100の給湯回路12を構成している。
【0026】
給湯配管12aにおける水冷媒熱交換器3の水の入口側には、水冷媒熱交換器3に流入する水の温度である戻り温度を検出する入口温度センサ56が備えられている。また、給湯配管12における水冷媒熱交換器3の水の出口側には、水冷媒熱交換器3から流出する水の温度である往き温度を検出する往き温度検出手段である出口温度センサ57が備えられている。また、貯湯タンク70内部の上下方向の略中央部には、貯湯タンク70内部に滞留する温水の温度を検出する貯湯タンク温度センサ58が備えられている。
【0027】
以上説明した構成の他に、ヒートポンプ式暖房給湯装置100は制御手段60を有している。制御手段60は、各温度センサで検出した温度や圧力センサ50で検出した冷媒圧力を取り込み、あるいは、図示しないリモコン等による使用者からの運転要求を取り込み、これらに応じて圧縮機1やファン7や循環ポンプ30の駆動制御、四方弁2の切り換え制御、膨張弁4の開度制御や三方弁31の切り換え制御等といった、ヒートポンプ式暖房給湯装置100の運転に関わる様々な制御を行う。尚、図示は省略するが、制御手段60は、時間を計測するタイマー部や、各種センサで検出した値やヒートポンプ式暖房給湯装置100の制御プログラム等を記憶する記憶部を有している。
【0028】
図1に示すように、冷媒回路10を暖房サイクルとしてヒートポンプ式暖房給湯装置100を運転しているときは、圧縮機1から吐出された冷媒は、四方弁2、水冷媒熱交換器3、膨張弁4、熱源側熱交換器5と順に流れて再び四方弁2に流入し、アキュムレータ6を介して圧縮機1に吸入される(
図1に示す矢印80で冷媒の流れを示す)。尚、冷媒回路10を冷房サイクルとしてヒートポンプ式暖房給湯装置100を運転したときは、圧縮機1から吐出された冷媒は、四方弁2、熱源側熱交換器5、膨張弁4、水冷媒熱交換器3と順に流れて再び四方弁2に流入し、アキュムレータ6を介して圧縮機1に吸入される、というように、暖房サイクルとして運転したとき(矢印80の方向)と逆方向に流れるが、
図1においてこの場合の冷媒流れ方向の記載は省略している。
【0029】
次に、本発明のヒートポンプ式暖房給湯装置100における、冷媒回路10および給湯回路12の動作について説明する。尚、以下の説明では、ヒートポンプ式暖房給湯装置100の冷媒回路10が暖房サイクルとして運転する場合であって、室内ユニット40を駆動して暖房運転を行う場合と、貯湯タンク70に貯留されている水を所定温度に加熱する沸き上げ運転を行う場合とを例に挙げて説明する。
【0030】
まず、暖房運転を行う場合について説明する。使用者が室内ユニット40のリモコン等を操作してスイッチをオンし、暖房運転開始を指示すると、制御手段60は、循環ポンプ30を所定の回転数で起動するとともに、室内ユニット側配管12cに温水が流れるように三方弁31を切り換える。これにより、水冷媒熱交換器3と室内ユニット40との間で温水が循環する。
【0031】
また、制御手段60は、冷媒回路10が暖房サイクルとなるように四方弁2を切り換える。具体的には、制御手段60は、圧縮機1の吐出側と水冷媒熱交換器3とが接続されるよう、また、圧縮機1の吸入側と熱源側熱交換器5とが接続されるよう、四方弁2を切り換える。これにより、水冷媒熱交換器3が凝縮器として機能し、また、熱源側熱交換器5が蒸発器として機能する。
【0032】
次に、制御手段60は、圧縮機1およびファン7を起動してヒートポンプ式暖房給湯装置100の暖房運転を開始する。制御手段60は、出口水温センサ57で検出された往き温度、つまり、水冷媒熱交換器3で加熱された水の温度が、使用者が設定した暖房運転の設定温度に対応する水温(以降、目標温度と記載)となるように圧縮機1を制御する。圧縮機1から吐出された冷媒は四方弁2を通過し、水冷媒熱交換器3で水と熱交換して凝縮し、さらに膨張弁4で減圧されて熱源側熱交換器5で外気と熱交換して蒸発し、圧縮機1に吸入されて再び圧縮機1で圧縮される過程を繰り返す。
【0033】
一方、水冷媒熱交換器3で加熱された温水は、循環ポンプ30の駆動によって給湯配管12aに流出し、三方弁31を介して室内ユニット側配管12cを流れて室内ユニット40に流入する。室内ユニット40が設置されている部屋は、室内ユニット40を流れる温水の放熱によって暖房される。室内ユニット40から流出した温水は、接続点13、循環ポンプ30を介して水冷媒熱交換器3に流入し、再び冷媒と熱交換を行って加熱される。
【0034】
次に、沸き上げ運転を行う場合について説明する。暖房運転では、制御手段60は、出口水温センサ57で検出された往き温度が、使用者が設定した暖房運転の設定温度に対応する目標温度となるように圧縮機1の駆動制御を行うが、沸き上げ運転では、出口水温センサ57で検出された往き温度が、後述する貯湯タンク70に貯留されている水温の目標値である沸き上げ温度に対応する目標温度となるように圧縮機1を制御する。尚、沸き上げ運転時の冷媒回路10の制御については、上述した暖房運転時と同じであるため、以下で詳細な説明は省略する。
【0035】
貯湯タンク70に貯留されている温水は、給湯口73から流出することによって減少する。入水口72には前述したように水道管が直結されているので、水道水の水圧によって貯湯タンク70には、減少した分だけ入水口72から水が供給される。これにより、貯湯タンク70に貯留されている温水の温度は低下する。
【0036】
制御手段60は、貯湯タンク70に貯留されている温水の温度として、貯湯タンク温度センサ58で検出した貯湯タンク温度を常時監視しており、取り込んだ貯湯タンク温度が、沸き上げ温度から予め定められた所定温度(例えば、5℃)低い温度である沸き上げ開始温度以下となれば、貯湯タンク70に貯留されている温水の温度を沸き上げ温度とするために沸き上げ運転を開始する。
【0037】
制御手段60は、循環ポンプ30を所定回転数で起動するとともに、貯湯タンク側配管12bに水が流れるように三方弁31を切り換える。これにより、水冷媒熱交換器3と貯湯タンク70との間で温水が循環する。水冷媒熱交換器3で加熱された温水は、循環ポンプ30の運転によって水冷媒熱交換器3から給湯配管12aに流出し、三方弁31を介して貯湯タンク側配管12bを流れて貯湯タンク70内部に配置されている熱交換部71に流入する。貯湯タンク70に貯留されている水は、熱交換部71を流れる温水によって加熱される。熱交換部71から流出した温水は、接続点13、循環ポンプ30を介して水冷媒熱交換器3に流入し、再び冷媒と熱交換を行って加熱される。
【0038】
上述したように、ヒートポンプ式暖房給湯装置100が暖房運転や沸き上げ運転を行うときは、出口水温センサ57で検出された往き温度(以降、往き温度Tgと記載)が目標温度(以降、目標温度Ttと記載)となるように、圧縮機1の回転数が制御されるが、ヒートポンプ式暖房給湯装置100のCOPは、圧縮機1の回転数によりその値が変化する。この、圧縮機1の回転数とCOPとの関係について、
図2を用いて詳細に説明する。
【0039】
図2は、圧縮機1の回転数(以降、圧縮機回転数Rと記載)とCOPとの関係を示す図であり、縦軸はCOPの値を示し、横軸は圧縮機回転数R(単位:rps)を示している。そして、
図2では、外気温度をToとし、異なる外気温度To1とTo2(To1>To2)であるときの、それぞれの圧縮機回転数RとCOPとの関係を一例として図示している。
【0040】
ヒートポンプ式暖房給湯装置100が暖房運転や沸き上げ運転を行い、往き温度Tgが目標温度Ttに到達すると、往き温度Tgが目標温度Ttに対し所定の範囲となるよう、圧縮機1の回転数が制御される。例えば、目標温度Ttが40℃である場合、往き温度Tgが38℃(以降、下限温度Tt2と記載)以上42℃(以降、上限温度Tt1と記載)未満となるように、圧縮機1の回転数が制御される。
【0041】
往き温度Tgが目標温度Tt付近の温度となれば、室内ユニット40が設置された部屋の温度や貯湯タンク70内の水温が、各々の設定温度に近い温度となっているため、水冷媒熱交換器3から流出して室内ユニット40や貯湯タンク70で流入する温水の放熱量は少なくなる。水冷媒熱交換器3から流出する温水の放熱量が少なくなれば、往き温度Tgが目標温度Tt付近の温度で安定するので、水冷媒熱交換器3における凝縮温度がほとんど変化しなくなる。つまり、冷媒回路10における4つの過程(圧縮過程/凝縮過程/膨張過程/蒸発過程)のうち、圧縮過程を除いた3つの過程の効率はほとんど変化しない。
【0042】
一方、圧縮機1の運転効率は、圧縮機1の種類や外気温度Toにより異なるが、最適回転数Rmのときの運転効率が最大となるように設計されており、最適回転数Rmよりも回転数が上昇あるいは低下すると、圧縮機1の運転効率は悪化する。つまり、上述した冷媒回路10における4つの過程(圧縮過程/凝縮過程/膨張過程/蒸発過程)のうちの圧縮過程の効率が悪化する。これは、圧縮機1に搭載されているモータの運転効率特性によるものである。従って、ヒートポンプ式暖房給湯装置100の冷媒回路10における効率は、水冷媒熱交換器3における凝縮温度がほとんど変化しない場合、圧縮機1の運転効率に大きく左右され、圧縮機回転数Rが最適回転数Rmであるときに冷媒回路10の運転効率が最大となり、圧縮機回転数Rが最適回転数Rmより上昇あるいは低下すると、冷媒回路10の運転効率が悪化する。
【0043】
上述した往き温度Tgが上限温度Tt1と下限温度Tt2との間の温度となるように制御しているときに、往き温度Tgが上限温度Tt1以上の温度となっている場合は、圧縮機回転数Rを低下させて往き温度Tgを目標温度Ttまで低下させる必要がある。このとき、圧縮機回転数Rを最適回転数Rm以下に低下させると、冷媒回路10の効率は悪化するので、ヒートポンプ式暖房給湯装置100のCOPが悪化する。
【0044】
以上のことから、
図2に示すように、各外気温度To1、To2において、COPが最高値となる圧縮機回転数R、つまり、圧縮機1の運転効率が最大となる最適回転数Rmが存在し、外気温度To1のとき、最適回転数Rm1でCOPが最高値C1となり、外気温度To2のとき、最適回転数Rm2でCOPが最高値C2となる。ここで、Rm1<Rm2、C1>C2であり、外気温度Toが低いほど、低い圧縮機回転数Rで高いCOPとなる。そして、各外気温度To1、To2におけるCOPは、圧縮機回転数Rが各々最適回転数Rm1、Rm2より低下してもCOPが悪化する。
【0045】
以上述べた問題点を解決するために、往き温度Tgを低下させるために圧縮機回転数Rを低下させているとき、圧縮機回転数Rが最適回転数Rmより所定の割合低い圧縮機回転数(以降、下限回転数Rdと記載)となれば、往き温度Tgが上限温度Tt1より高いか否かを判断し、往き温度Tgが上限温度Tt1より高ければ圧縮機1を下限回転数Rdで運転し続け、往き温度Tgが上限温度Tt1より高ければ圧縮機1を停止する。
【0046】
例えば、
図2に示すように、各外気温度To1、To2において、圧縮機回転数Rを低下させて最適回転数Rm1、Rm2より10%低い下限回転数Rd1、Rd2となれば(
図2の点P1および点P2となれば)、往き温度Tgが上限温度Tt1より高いか否かを判断し、往き温度Tgが上限温度Tt1より高くなければ圧縮機1を下限回転数Rd1、Rd2で運転し続け、往き温度Tgが上限温度Tt1より高ければ圧縮機1を停止する。
【0047】
これにより、往き温度Tgを低下させて上限温度Tt1と下限温度Tt2の間の温度にしつつ、圧縮機回転数Rの回転数低下に起因するヒートポンプ式暖房給湯装置100のCOPの悪化を抑制できる。尚、圧縮機1を停止している間は、水冷媒熱交換器3で水の加熱が行われないが、水の熱容量が大きいことから、短時間圧縮機1が停止しても室内ユニット40や貯湯タンク70において急激に水温が低下することがない。よって、本発明を実施しても、使用者に不快感を与えることがない。
【0048】
制御手段60が、上述した往き温度Tgを上限温度Tt1と下限温度Tt2の間の温度にするために圧縮機1を制御するときは、
図3に示す圧縮機回転数テーブル200を用い、外気温度センサ52で検出した外気温度To(単位:℃)と目標温度Ttとに応じた下限回転数Rdを抽出している。そして、制御手段60は、圧縮機回転数Rを低下させているときに下限回転数Rdとなれば、往き温度Tgが上限温度Tt1より高いか否かを判断し、往き温度Tgが上限温度Tt1より高くなければ圧縮機1を下限回転数Rdで運転し続け、往き温度Tgが上限温度Tt1より高ければ圧縮機1を停止する。尚、圧縮機1を停止したことによって往き温度Tgが低下して下限温度Tt2以下となれば、制御手段60は、圧縮機1を下限回転数Rdで再起動する。
【0049】
制御手段60の図示しない記憶部には、
図3に示す圧縮機回転数テーブル200が記憶されている。この圧縮機回転数テーブル200は、予め実施された試験の結果等に基づいて作成し制御手段60に記憶されているものである。
【0050】
圧縮機回転数テーブル200は、外気温度Toと目標温度Ttとに応じて、COPが最高値となる最適回転数Rmと、最適回転数Rmから所定の割合(本実施形態では、10%)だけ低い下限回転数Rdとが定められたものである。
【0051】
図3に示すように、外気温度Toは、5℃未満、5℃以上10℃未満、10℃以上、の3つの温度範囲に区分されている。また、外気温度Toの3つの温度範囲それぞれについて、目標温度Ttは、30℃未満、30℃以上40℃未満、40℃以上、の3つの温度範囲に区分されて割り当てられている。
【0052】
例えば、外気温度Toが5℃未満のとき、目標温度Ttが30℃未満では最適回転数Rmが30rps、下限回転数Rdが27rps、と定められており、また、目標温度Ttが30℃以上40℃未満では最適回転数Rmが35rps、下限回転数Rdが32rps、と定められており、また、目標温度Ttが40℃以上では最適回転数Rmが40rps、下限回転数Rdが36rps、と定められている。つまりは、目標温度Ttが上昇するのにつれて、最適回転数Rmおよび下限回転数Rdが上昇するように定められている。
【0053】
また、目標温度Ttが40℃以上であるときの、外気温度Toの温度範囲違いの最適回転数Rmおよび下限回転数Rdを見ると、外気温度Toが5℃未満のときが、上述したように最適回転数Rmが40rps、下限回転数Rdが36rps、であるのに対し、外気温度Toが5℃以上10℃未満のときが、最適回転数Rmが35rps、下限回転数Rdが32rps、と定められ、外気温度Toが10℃以上のときが、最適回転数Rmが30rps、下限回転数Rdが27rps、と定められている。つまりは、外気温度Toが上昇するのにつれて、最適回転数Rmおよび下限回転数Rdが低下するように定められている。
【0054】
次に、
図4を用いて、圧縮機回転数テーブル200を用いて圧縮機1を制御しているときに起こる問題と、この問題を解決する本発明の動作について説明する。
図4は、圧縮機1の運転/停止と、往き温度Tgの変化とを表したタイミングチャートである。
図4において、前述した往き温度Tg、目標温度Tt、上限温度Tt1、下限温度Tt2に加えて、閾温度をTs、閾温度超過時間をti、超過限度時間をteとしている。ここで、閾温度Tsは、予め定められている目標温度Tt以上上限温度Tt1未満の温度であり、例えば、目標温度Ttが40℃、上限温度Tt1が42℃であるとき、閾温度Tsは41.5℃とされる。また、閾温度超過時間tiは、往き温度Tgが閾温度Ts以上上限温度Tt1未満となっている状態の継続時間である。また、超過限度時間teは予め定められている閾温度超過時間tiの限度時間であり、圧縮機1の運転効率が向上する継続運転時間(例えば、10分間)より長いことが好ましい。
【0055】
前述したように、本発明のヒートポンプ式暖房給湯装置100では、圧縮機回転数Rが下限回転数Rdとなれば、往き温度Tgが上限温度Tt1以上であるか否かを判断し、往き温度Tgが上限温度Tt1以上であれば圧縮機1を停止する。圧縮機1を停止しているときに、往き温度Tgが下限温度Tt2以下となれば、圧縮機1を下限回転数Rdで再起動する。そして、圧縮機1を下限回転数Rdで再起動して往き温度Tgが上昇し、再び往き温度Tgが上限温度Tt1以上となれば、圧縮機1を停止する。
【0056】
例えば、圧縮機1を下限回転数Rdで再起動して往き温度Tgが上昇しているとき、往き温度Tgが閾温度Tsを超えて(
図4の点Q1)からの時間である閾温度超過時間Ti1が短時間のうちに往き温度Tgが上限温度Tt1以上となれば、往き温度Tgが目標温度Ttよりも高い温度となっている状態で圧縮機1を運転している時間が短時間となるので、無駄なヒートポンプ式暖房給湯装置100の運転時間が短くなってCOPがさほど悪化しない。
【0057】
一方、室内ユニット40の暖房負荷(例えば、室内ユニット40が設置された部屋の日射状態)や外気温度Toによっては、
図4に示すように、往き温度Tgが閾温度Ts越えて(
図4の点Q2)からの時間である閾温度超過時間Ti2が長時間となっても上限温度Tt1に到達しない場合がある。このような場合は、室内ユニット40や貯湯タンク70で設定温度以上の温度となっている虞があり、また、往き温度Tgが上限温度Tt1以上となっていないために、圧縮機1が下限回転数Rdで継続運転されている。つまり、ヒートポンプ式暖房給湯装置100を無駄に運転している状態となっており、この状態が長時間継続(上記の例では、閾温度超過時間Ti2継続)すると、ヒートポンプ式暖房給湯装置100のCOP向上の妨げになるという問題があった。
【0058】
そこで、本発明のヒートポンプ式暖房給湯装置100では、圧縮機1を再起動して往き温度Tgが閾温度Tsとなれば時間計測を開始して、往き温度Tgが閾温度Ts以上上限温度Tt1未満となっている時間、つまり、閾温度超過時間Tiの計測を開始する。そして、閾温度超過時間Tiが、
図4で示す閾温度超過時間Ti2のように超過限度時間Te以上となれば、往き温度Tgが上限温度Tt1以上となっていなくても圧縮機1を停止する。これにより、往き温度Tgが目標温度Tt以上の温度で圧縮機1が運転され続けることを防止できるので、ヒートポンプ式暖房給湯装置100のCOPを向上させることができる。
【0059】
次に、
図5に示すフローチャートを用いて、上述した圧縮機回転数テーブル200を用いて、暖房運転時や沸き上げ運転時に制御手段60が行う圧縮機1の制御について説明する。
図5に示すフローチャートは、ヒートポンプ式暖房給湯装置100で暖房運転や沸き上げ運転を行うとき、往き温度Tgが上限温度Tt1と下限温度Tt2との間に収まるよう、圧縮機1を制御する際の処理の流れを示すものであり、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。尚、
図5では、往き温度Tgを目標温度Ttまで上昇させるときの圧縮機1の制御や膨張弁4の開度制御、等といった、本発明に関わる制御以外のヒートポンプ式暖房給湯装置100の制御に関しては、図示と説明を省略している。
【0060】
制御手段60は、暖房運転や沸き上げ運転を行っているとき、出口温度センサ57で検出した往き温度Tgを取り込み、暖房運転や沸き上げ運転の設定温度に応じて定められて記憶部に記憶されている目標温度Tt以上であるか否かを判断する(ST1)。往き温度Tgが目標温度Tt以上でなければ(ST1−No)、制御手段60は、ST1に処理を戻し、現在の圧縮機回転数Rを維持する。尚、暖房運転や沸き上げ運転を開始して往き温度Tgが目標温度Ttとなるまでは、制御手段60は、圧縮機回転数Rを起動時回転数(例えば、60rps)として圧縮機1を駆動している。また、制御手段60は、往き温度Tgを所定時間毎(例えば、30秒毎)に取り込んでいる。
【0061】
ST1において、往き温度Tgが目標温度Tt以上であれば(ST1−Yes)、制御手段60は、圧縮機回転数Rを低下させる(ST2)。尚、制御手段60は、圧縮機回転数Rを所定速度、例えば、2rps/30秒、で低下させる。
【0062】
次に、制御手段60は、圧縮機回転数Rが下限回転数Rd以下となったか否かを判断する(ST3)。尚、制御手段60は、外気温度センサ52で検出した外気温度Toを所定時間毎(例えば、30秒毎)に取り込んでおり、これと記憶している目標温度Ttとを用い、圧縮機回転数テーブル200を参照して下限回転数Rdを抽出している。
【0063】
圧縮機回転数Rが下限回転数Rd以下となっていなければ(ST3−No)、制御手段60は、ST2に処理を戻し、圧縮機回転数Rを低下させ続ける。圧縮機回転数Rが下限回転数Rd以下となっていれば(ST3−Yes)、制御手段60は、往き温度Tgが上限温度Tt1未満であるか否かを判断する(ST4)。
【0064】
往き温度Tgが上限温度Tt1未満であれば(ST4−Yes)、制御手段60は、圧縮機1を最低回転数Rdで継続運転する(ST11)。次に、制御手段60は、往き温度Tgが閾温度Ts以上となったか否かを判断する(ST12)。
【0065】
往き温度Tgが閾温度Ts以上となっていなければ(ST12−No)、制御手段60は、ST4に処理を戻す。往き温度Tgが閾温度Ts以上となっていれば(ST12−Yes)、制御手段60は、閾温度超過時間tiの計測を開始する(ST13)。
【0066】
次に、制御手段60は、往き温度Tgが閾温度Ts以上上限温度Tt1未満であるか否かを判断する(ST14)。往き温度Tgが閾温度Ts以上上限温度Tt1未満でなければ(ST14−No)、制御手段60は、ST4に処理を戻す。往き温度Tgが閾温度Ts以上上限温度Tt1未満であれば(ST14−Yes)、制御手段60は、閾温度超過時間tiが超過限度時間te以上であるか否かを判断する(ST15)。
【0067】
閾温度超過時間tiが超過限度時間te以上でなければ(ST15−No)、制御手段60は、ST14に処理を戻す。閾温度超過時間tiが超過限度時間te以上であれば(ST15−Yes)、制御手段60は、タイマーをリセットし(ST16)、ST5に処理を進める。
【0068】
ST4において、往き温度Tgが上限温度Tt1未満でなければ(ST4−No)、制御手段60は、圧縮機1を停止する(ST5)。次に、制御手段60は、往き温度Tgが下限温度Tt2以下であるか否かを判断する(ST6)。往き温度Tgが下限温度Tt2以下でなければ(ST6−No)、制御手段60は、ST5に処理を戻して圧縮機1を停止し続ける。往き温度Tgが下限温度Tt2以下であれば(ST6−Yes)、制御手段60は、最低回転数Rdで圧縮機1を再起動する(ST7)。
【0069】
次に、制御手段60は、タイマー計測を開始し(ST8)、タイマー計測開始つまり圧縮機1の再起動から所定時間が経過したか否かを判断する(ST9)。所定時間が経過していなければ(ST9−No)、制御手段60は、ST9に処理を戻して圧縮機1を最低回転数Rdで駆動させ続ける。所定時間が経過していれば(ST9−Yes)、制御手段60は、タイマーをリセットし(ST10)、ST4に処理を戻す。ここで、ST9における所定時間は、前述した圧縮機1の運転効率が向上する継続運転時間(例えば、10分間)であり、圧縮機1の運転時間が所定時間より短い場合は運転効率が悪化し、所定時間より長くなれば圧縮機1の運転効率は向上する時間である。
【0070】
以上説明した通り、本発明のヒートポンプ式暖房給湯装置は、圧縮機を下限回転数で運転して往き温度を上限温度と下限温度とで規定される温度範囲内としているときに、往き温度が目標温度より所定温度高い温度である閾温度以上上限温度未満となっている閾温度超過時間が、所定の超過限度時間以上となれば、圧縮機を停止する。これにより、往き温度が目標温度より高い温度で安定した状態で長時間圧縮機が運転されることを防ぐことができ、ヒートポンプ式暖房給湯装置のCOPを向上することができる。
【0071】
以上説明した実施形態では、下限回転数Rdを、COPが最高値なるときの圧縮機1の回転数である最適回転数Rmより所定の割合低い回転数としたが、これに代えて、下限回転数RdをCOPの最高値より所定の割合低いCOPの値(例えば、COPの最高値より5%低いCOP値)に対応する圧縮機1の回転数としてもよい。