特許第6094557号(P6094557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094557
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   B60N2/08
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-216862(P2014-216862)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-107792(P2015-107792A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-222347(P2013-222347)
(32)【優先日】2013年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】小島 康敬
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レールと、
前記第1レールの長手方向に沿って前記第1レールに相対移動可能に連結される第2レールと、
前記第2レール内に回動可能に支持される係止部材と、を備え、
前記第2レールは、その第2レールの長手方向に直交する幅方向に対面する第1及び第2の側壁部を備え、
前記第1及び第2の側壁部には、前記係止部材の一部が挿入される収容孔が形成され、
前記係止部材は、
本体部と、
前記本体部の厚さ方向からみて前記本体部からその幅方向に沿って両側に延出するとともに、その先端部が前記収容孔を形成する側面に沿って転動し得るように少なくとも一部が曲面状に形成された回転軸部と、
前記回転軸部を介した前記係止部材の回動位置に応じて前記第1レールに係止した係止位置と前記第1レールから離間した解除位置との間で移動する係止爪とを備え
前記第1の側壁部の前記収容孔における前記長手方向及び前記幅方向に直交する高さ方向の一端部と前記第2の側壁部の前記収容孔における前記高さ方向の他端部とを結ぶ仮想的な直線の長さを軸側許容長さとし、
前記本体部において前記回転軸部が形成される2つの側面のうち一方の側面と、他方の側面に形成される前記回転軸部の先端とを結ぶ仮想的な直線の長さを軸側最大回転長さとし、
前記軸側許容長さを前記軸側最大回転長さより大きく設定したシートスライド装置。
【請求項2】
第1レールと、
前記第1レールの長手方向に沿って前記第1レールに相対移動可能に連結される第2レールと、
前記第2レール内に回動可能に支持される係止部材と、を備え、
前記第2レールは、その第2レールの長手方向に直交する幅方向に対面する第1及び第2の側壁部を備え、
前記第1及び第2の側壁部には、前記係止部材の一部が挿入される収容孔が形成され、
前記係止部材は、
本体部と、
前記本体部の厚さ方向からみて前記本体部からその幅方向に沿って両側に延出するとともに、その先端部が前記収容孔を形成する側面に沿って転動し得るように少なくとも一部が曲面状に形成された回転軸部と、
前記回転軸部を介した前記係止部材の回動位置に応じて前記第1レールに係止した係止位置と前記第1レールから離間した解除位置との間で移動する係止爪とを備え
前記回転軸部は、前記幅方向に対面するように前記係止部材の本体部に対して曲げられたように形成されるシートスライド装置。
【請求項3】
第1レールと、
前記第1レールの長手方向に沿って前記第1レールに相対移動可能に連結される第2レールと、
前記第2レール内に回動可能に支持される係止部材と、を備え、
前記第2レールは、その第2レールの長手方向に直交する幅方向に対面する第1及び第2の側壁部を備え、
前記第1及び第2の側壁部には、前記係止部材の一部が挿入される収容孔が形成され、
前記係止部材は、
本体部と、
前記本体部の厚さ方向からみて前記本体部からその幅方向に沿って、前記本体部と同じ高さにおいて前記本体部の幅方向に延びる平面と同一平面をなすように前記本体部の両側に延出するとともに、その先端部が前記収容孔を形成する側面に沿って転動し得るように少なくとも一部が曲面状に形成された回転軸部と、
前記回転軸部を介した前記係止部材の回動位置に応じて前記第1レールに係止した係止位置と前記第1レールから離間した解除位置との間で移動する係止爪とを備えたシートスライド装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のシートスライド装置において、
前記回転軸部の先端面は、
高さ方向に突出する前記回転軸部の先端側が前記長手方向に沿って除去される平面部と、
前記長手方向における前記平面部の両側に形成されるとともに、前記幅方向からみて同一の仮想円弧上に位置し、前記長手方向に対面する前記収容孔の側面に転動可能に接触する2つの曲面部とを有するシートスライド装置。
【請求項5】
請求項に記載のシートスライド装置において、
前記回転軸部の2つの曲面部に接する前記収容孔における2つの側面間の距離は、前記高さ方向における前記第1レール側に向かうほど小さく設定されるシートスライド装置。
【請求項6】
請求項1〜の何れか一項に記載のシートスライド装置において、
前記回転軸部の前記先端部の一部のみが曲面状に形成されたシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用のシート位置を車両の前後方向に調整可能に構成された車両用シートスライド装置が知られている。
車両用シートスライド装置は、第1レールに相当するロアレールと、このロアレールに対し移動可能に連結された第2レールに相当するアッパレールと、これらロアレール及びアッパレール間に形成される空間内に配置された係止部材とを備える。
【0003】
詳しくは、図15に示すように、係止部材120は、その先端側に幅方向Wに突出した複数の係止爪124を有する。アッパレール130における幅方向Wに対向する2つの面には係止爪用孔149が形成されている。アッパレール130内に係止部材120が設置された状態で、各係止爪124が係止爪用孔149を通じて幅方向Wにアッパレール130から突出する。よって、各係止爪124の先端は、アッパレール130の外側に露出した状態となる。
【0004】
また、係止部材120は、その長手方向の略中央に、幅方向Wの両側に突出した回転軸部128を有する。この回転軸部128は、プレス機を通じた打ち出しにより形成されている。
【0005】
また、アッパレール130において幅方向Wに対面する側壁130a,130bには軸通孔131が形成されている。係止部材120の両回転軸部128は、軸通孔131に挿通されている。これにより、係止部材120は、アッパレール130内において回動可能に支持される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、係止部材120の支持構成として、アッパレール130の側壁130a,130b及び係止部材120に対して支持ピンを挿通する構成も存在する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−52843号公報
【特許文献2】特開2008−184033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1及び2の構成では、係止部材を回動可能に支持する構成が複雑であった。
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡易な構成で係止部材を回転可能に支持するシートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1〜3に記載のシートスライド装置は、第1レールと、前記第1レールの長手方向に沿って前記第1レールに相対移動可能に連結される第2レールと、前記第2レール内に回動可能に支持される係止部材と、を備え、前記第2レールは、その第2レールの長手方向に直交する幅方向に対面する第1及び第2の側壁部を備え、前記第1及び第2の側壁部には、前記係止部材の一部が挿入される軸収容孔が形成され、前記係止部材は、本体部と、前記本体部における長手方向に延出する第1及び第2の側面と、前記本体部の厚さ方向からみて前記本体部からその幅方向に沿って両側に延出するとともに、その先端部が前記軸収容孔を形成する側面に沿って転動し得るように少なくとも一部が曲面状に形成された回転軸部と、前記回転軸部を介した前記係止部材の回動位置に応じて前記第1レールに係止した係止位置と前記第1レールから離間した解除位置との間で移動する係止爪とを備えている。
【0010】
この構成によれば、回転軸部は、その本体部から幅方向に沿って両側に延出するように形成される。また、回転軸部の先端部が軸収容孔の側面に沿って転動可能となるように、先端面の少なくとも一部が曲面状に形成される。この回転軸部は、例えば係止部材の本体部と一体の板材からプレス加工によって形成することができる。よって、係止部材を容易に製造することができる。また、シートスライド装置において、より簡易な構成で係止部材を回転可能に支持することができる。
【0011】
また、請求項1に記載のシートスライド装置においては、前記第1の側壁部の前記軸収容孔における前記長手方向及び前記幅方向に直交する高さ方向の一端部と前記第2の側壁部の前記軸収容孔における前記高さ方向の他端部とを結ぶ仮想的な直線の長さを軸側許容長さとし、前記本体部において前記回転軸部が形成される2つの側面のうち一方の側面と、他方の側面に形成される前記回転軸部の先端とを結ぶ仮想的な直線の長さを軸側最大回転長さとし、前記軸側許容長さを前記軸側最大回転長さより大きく設定されている。
【0012】
第2レールに係止部材を組み付けるにあたって、一方側の回転軸部を、第1の側壁部の軸収容孔に第2レールの内側から挿入していく。その挿入後に、他方の回転軸部を第2の側壁部の軸収容孔に挿入するように、係止部材を回転させていく。このとき、軸側許容長さが軸側最大回転長さより大きく設定されることで、他方側の回転軸部が、第2の側壁部における軸収容孔の縁部に接触して回転軸部の挿入が妨げられることが抑制される。よって、他方側の回転軸部が、第2の側壁部における軸収容孔内に挿入可能となる。このため、係止部材を第2レールに容易に組み付け可能となる。
また、請求項2に記載のシートスライド装置においては、前記回転軸部は、前記幅方向に対面するように前記係止部材の本体部に対して曲げられたように形成されている。
この構成によれば、回転軸部を幅方向にたわみ易い形状とすることができる。このため、容易に回転軸部を第2レールの軸収容孔内に圧入させることができる。
また、請求項3に記載のシートスライド装置においては、回転軸部は、前記本体部の厚さ方向からみて前記本体部からその幅方向に沿って、前記本体部と同じ高さにおいて前記本体部の幅方向に延びる平面と同一平面をなすように前記本体部の両側に延出するとともに、その先端部が前記収容孔を形成する側面に沿って転動し得るように少なくとも一部が曲面状に形成されている。
【0013】
上記シートスライド装置について、前記回転軸部の先端面は、前記高さ方向に突出する前記回転軸部の先端側が前記長手方向に沿って除去される平面部と、前記長手方向における前記平面部の両側に形成されるとともに、前記幅方向からみて同一の仮想円弧上に位置し、前記長手方向に対面する前記軸収容孔の側面に転動可能に接触する2つの曲面部とを有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、回転軸部における先端側に長手方向に沿って除去された平面部を形成することで、上記軸側最大回転長さを小さくすることができる。よって、回転軸部を軸収容孔へ挿入するための条件である軸側許容長さを軸側最大回転長さより大きく設定し易くなる。
【0015】
上記シートスライド装置について、前記回転軸部の2つの曲面部に接する前記軸収容孔における2つの側面間の距離は、前記高さ方向における前記第1レール側に向かうほど小さく設定されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、軸収容孔における2つの側面間の距離が高さ方向における第1レール側に向かうほど小さく設定されている。このため、軸収容孔における2つの側面で、長手方向両側の2点で回転軸部が内接可能となる。従って、仮に第2レール又は係止部材の製造ばらつきなどで軸収容孔及び回転軸部間に組付けばらつきが生じたとしても、片側の軸収容孔及び回転軸部が当接する2点と、反対側の軸収容孔及び回転軸部が当接する1点又は2点とで係止部材が第2レールによって支えられる。よって、第2レール内における係止部材のがたつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シートスライド装置において、より簡易な構成で係止部材を回転可能に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態におけるシートスライド装置の構成を示す斜視図。
図2図1のシートスライド装置を装着したシートの側面図。
図3図2のA−A線断面図。
図4図3のB−B線断面図。
図5】係止部材の上面図。
図6図5のC−Cの断面図。
図7図5のD−Dの断面図。
図8】(a)はアッパレールの断面図、(b)は係止爪を係止爪用孔に挿入する際のアッパレールの断面図。
図9】(a)はアッパレールの断面図、(b)は回転軸部を軸収容孔に挿入する際のアッパレールの断面図。
図10】第2の実施形態におけるシートスライド装置の構成を示す斜視図。
図11】(a)図10に示す係止部材の平面図、(b)図10に示す係止部材の側面図、(c)図10に示す係止部材の底面図。
図12】(a)図10に示す係止部材を斜め上方からみた上面側斜視図、(b)図11に示す係止部材を斜め上方からみた下面側斜視図。
図13図12(b)に示す回転軸部の部分拡大図。
図14】(a)図10に示すスプリングの上面図、(b)図10に示すスプリングの側面図。
図15】背景技術におけるアッパレール及び係止部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
図1図9を参照して本発明の一実施形態について説明する。
<概略構成>
図1に示すように、車両用シートスライド装置1は、第1レールに相当するロアレール30と、第2レールに相当するアッパレール40と、係止部材20と、スプリング50とを備える。
【0023】
ロアレール30は、その長手方向Lに延出するとともに、車両フロア2上に固定されている。この長手方向Lは車両の前後方向と同一方向である。アッパレール40は、ロアレール30に対して長手方向Lに相対移動可能に、ロアレール30に装着されている。
【0024】
ロアレール30及びアッパレール40は、長手方向Lに直交する幅方向Wでそれぞれ対をなして配設されている。図2に示すように、対をなすアッパレール40上には、乗員の着座部を形成するシート5が固定されている。
【0025】
両アッパレール40間には、解除ハンドル60が連結されている。この解除ハンドル60は、両アッパレール40からシート5の前方に操作可能に延出している。この解除ハンドル60が車両フロア2の方向に押し操作されることで、アッパレール40がシート5とともにロアレール30に対して移動可能となる。以下、車両用シートスライド装置1の構成について詳細に説明する。
【0026】
<ロアレール>
図3に示すように、ロアレール30は、ロア連結壁部32と、一対のロア側壁部31と、一対のロア折返し壁部33とを備える。
【0027】
ロア連結壁部32は直方板状に形成されるとともに、車両フロア2上に固定的に設置されている。ロア側壁部31はロア連結壁部32における幅方向Wの両側から略直角に折り曲げられるように形成されている。また、ロア折返し壁部33は、ロア側壁部31の先端側がロアレール30の内側に折り曲げられるように形成されている。
【0028】
図1に示すように、ロアレール30の両ロア折返し壁部33の基端(上端)には、それぞれの長手方向Lに沿って複数の四角形のロック孔33aが形成されている。これらロック孔33aは、一定間隔で形成されるとともに高さ方向H(幅方向W及び長手方向Lに対して直交する方向)における上方に開口している。
【0029】
図4に示すように、各ロック孔33aは、幅方向Wからみて車両フロア2の方向に向かうにつれて孔幅Wh1が小さくなる略台形形状で形成されている。すなわち、ロック孔33aにおける幅方向Wに対向する両側面33b,33c間の距離は車両フロア2の方向に向かうにつれて小さく形成されている。
【0030】
高さ方向Hに対してロック孔33aにおいて長手方向Lに対向する2つの側面33b,33cが交わる角度を歯部圧力角θa1,θa2と規定する。本例では、歯部圧力角θa2は高さ方向Hに対して時計回りに所定角度だけ回転した角度である。歯部圧力角θa1は高さ方向Hに対して反時計回りに所定角度だけ回転した角度である。
【0031】
<アッパレール>
図3に示すように、アッパレール40は、アッパ連結壁部45と、第1及び第2のアッパ側壁部44a,44bと、一対のアッパ折返し壁部46とを備える。
【0032】
アッパ連結壁部45は、上記ロア連結壁部32と同様に直方板状に形成されている。両アッパ側壁部44a,44bは、アッパ連結壁部45における幅方向Wの両側から車両フロア2の方向に略直角に折り曲げられるように形成されている。また、アッパ折返し壁部46は、アッパ側壁部44a,44bの先端側がアッパレール40の外側に折り曲げられるように形成されている。
【0033】
アッパレール40がロアレール30に組み付けられた状態においては、アッパレール40におけるアッパ側壁部44a,44b及びアッパ折返し壁部46間に、ロアレール30のロア折返し壁部33が位置する。このアッパレール40がロアレール30に組み付けられた状態においては、アッパレール40はロアレール30に沿って移動可能となるとともに、アッパレール40がロアレール30から当該ロアレール30と離間する方向に外れることが抑制される。
【0034】
また、図1に示すように、アッパレール40における長手方向Lの中間には、それぞれの長手方向Lに並設された複数(3個)の係止爪用孔49a〜49cが形成されている。各係止爪用孔49a〜49cの間隔は、上記各ロック孔33aの間隔と略同一である。係止爪用孔49a〜49cは、幅方向Wに貫通するとともに、高さ方向Hに長く、僅かに湾曲した略長方形状で形成されている。また、係止爪用孔49a〜49cは、各アッパ側壁部44a,44bからアッパ連結壁部45の一部に及ぶ範囲に亘って形成されている。
【0035】
さらに、各アッパ折返し壁部46の先端(上端)には、それぞれの長手方向Lに並設された複数(3個)の嵌入溝46aが各係止爪用孔49a〜49cに対応する位置に形成されている。これら嵌入溝46aは、上方に開口している。これら嵌入溝46a及び係止爪用孔49a〜49cは、ロアレール30の隣り合う複数(3個)のロック孔33aと合致可能な位置に配置されている。
【0036】
また、各アッパ側壁部44a,44bには、幅方向Wに開口した軸収容孔47が形成されている。軸収容孔47は、係止爪用孔49a〜49cより解除ハンドル60側に形成されている。
【0037】
図4に示すように、軸収容孔47は、高さ方向Hにおける車両フロア2の方向に向かうにつれて孔幅Wh2が小さくなる略台形形状に形成されている。すなわち、軸収容孔47における幅方向Wに対向する両側面47a,47b間の距離は車両フロア2の方向に向かうにつれて小さく形成されている。
【0038】
高さ方向Hに対して軸収容孔47において長手方向Lに対向する2つの側面47a,47bが交わる角度を軸部圧力角θb1,θb2と規定する。本例では、軸部圧力角θb2は高さ方向Hに対して時計回りに所定角度だけ回転した角度である。軸部圧力角θb1は高さ方向Hに対して反時計回りに所定角度だけ回転した角度である。軸部圧力角θb1,θb2は、歯部圧力角θa1,θa2より大きく設定されている。
【0039】
また、図1に示すように、アッパレール40における両アッパ側壁部44a,44bとアッパ連結壁部45との境界部分にはスプリング保持孔48が形成されている。このスプリング保持孔48は、軸収容孔47より解除ハンドル60側に形成されている。
【0040】
図8(a)に示すように、第2のアッパ側壁部44bの係止爪用孔49aにおける右下角部と、第1のアッパ側壁部44aの係止爪用孔49aにおける左上角部とを結ぶ直線の長さを爪側許容長さL1と規定する。この爪側許容長さL1は、係止部材20を長手方向Lに沿って回転させつつ、後述する係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLを係止爪用孔49a内に挿入させるために必要な長さである。他の係止爪用孔49b,49cの爪側許容長さL1は係止爪用孔49aよりも大きい。
【0041】
図9(a)に示すように、第2のアッパ側壁部44bの軸収容孔47における右下角部と、第1のアッパ側壁部44aの軸収容孔47における右上角部とを結ぶ直線の長さを軸側許容長さL2と規定する。この爪側許容長さL1は、係止部材20を長手方向Lに沿って回転させつつ、後述する回転軸部26を軸収容孔47内に挿入させるために必要な長さである。
【0042】
<転動部材>
また、図3に示すように、各アッパ折返し壁部46及びこれに対向するロア側壁部31間には、前後一対の転動部材16が設けられている。アッパレール40は、ロアレール30との間で転動部材16を転動させる態様で、ロアレール30に対し長手方向Lに摺動自在に支持されている。
【0043】
<係止部材>
図1に示すように、係止部材20は、ロアレール30及びアッパレール40間に形成される空間に長手方向Lに沿うように設置されている。
【0044】
図5に示すように、係止部材20は、本体部21と、2組の係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLと、回転軸部26と、入力部28とが一体的に形成されてなる。この係止部材20は金属板がプレス加工されることで製造される。
【0045】
本体部21は長手方向Lに延出した略長方板状に形成されている。また、各係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLは本体部21における先端部23(解除ハンドル60と反対側の端部)に形成されている。係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLは、先端部23における長手方向Lに延出する両側面29L,29Rに形成されるとともに、幅方向Wに突出した角棒状に形成されている。一方の側面29Rに3つの係止爪22aR〜22cRが形成され、他方の側面29Lには3つの係止爪22aL〜22cLが形成されている。各係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLは、長手方向Lに沿って上記ロアレール30のロック孔33aと同一の間隔で配置されている。
【0046】
図6に示すように、長手方向Lからみて先端部23及び係止爪22aL〜22cLがなす長方形状における対角線の長さを爪側最大回転長さL3と規定する。本例では、爪側最大回転長さL3は先端部23の図中の左下角部と係止爪22aL〜22cLの右上角部との間を結ぶ対角線の長さである。この爪側許容長さL1が上述した爪側最大回転長さL3より大きいとき、係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLの係止爪用孔49a〜49cへの挿入が可能となる。具体的な組み付け方法については後述する。また、入力部28は本体部21における先端部23と反対側の端部に形成されている。
【0047】
図1に示すように、係止部材20の回転軸部26は、その先端面26aが長手方向Lに沿うように、係止部材20の本体部21に対して車両フロア2の方向に湾曲して形成される。両回転軸部26は、幅方向Wにおいて対面している。
【0048】
図4に示すように、回転軸部26の先端面26aは、長手方向Lにおける両端側が曲面部26bとして形成され、それら曲面部26b間が長手方向Lに延出する平面部26cとして形成されている。図4の2点鎖線で示すように、両曲面部26bは、係止部材20の回転中心O1を中心として描かれる同一の円弧に沿うように形成されている。その円弧の車両フロア2側の一部が除去されるように平面部26cが形成されている。
【0049】
回転軸部26の両曲面部26bは、軸収容孔47における2つの側面47a,47bに対して、長手方向Lの両側の2点P1,P2で内接する。従って、仮にアッパレール40又は係止部材20の製造ばらつきなどで軸収容孔47及び回転軸部26間に組付けばらつきが生じたとしても、片側の軸収容孔47及び回転軸部26が当接する2点P1,P2と、反対側の軸収容孔47及び回転軸部26が当接する1点又は2点とで支持されている。よって、アッパレール40内における係止部材20のがたつきを抑制することができる。
【0050】
図7に示すように、長手方向Lからみて本体部21及び一方の回転軸部26がなす外形の各頂点を結んだ直線のうち最大となる直線の長さを軸側最大回転長さL4と規定する。本例では、軸側最大回転長さL4は、一方の回転軸部26の左下の角部と、本体部21の右上の角部との間を結ぶ長さである。
【0051】
この軸側許容長さL2が最大回転長さL4より大きいとき、後述するように、回転軸部26の軸収容孔47への組み付けが可能となる。具体的な組み付け方法については後述する。
【0052】
図4に示すように、両回転軸部26はそれぞれ軸収容孔47に挿入されている。そして、両回転軸部26の先端面26a(特に両曲面部26b)が軸収容孔47の長手方向Lに対向する両側面47a,47bに接している。このため、各曲面部26bが、各軸収容孔47の両側面47a,47bを転動することで、係止部材20が両回転軸部26(回転中心O1)を中心に回動可能となる。この係止部材20の回動に伴い、係止部材20の係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLは、ロアレール30のロック孔33aに嵌合した係止位置と、ロック孔33aから脱出した解除位置との間で移動可能となる。
【0053】
<スプリング>
図1に示すように、スプリング50は、1本の線材が略コ字状に曲げられて形成されている。また、スプリング50は、ロアレール30及びアッパレール40間に形成される空間であって係止部材20の上面(アッパ連結壁部45側の面)に位置する。
【0054】
スプリング50は、保持部51と、付勢部52と、当接部53と、逃げ部54とをそれぞれ2つずつ有する。スプリング50は、これら各部同士が離間する方向に弾性変形可能に形成される。
【0055】
保持部51は、長手方向Lに延出する線材の途中に、幅方向Wの外側に突出する略U字状で形成されている。すなわち、保持部51は一定の半径を有する半円状に形成されている。各保持部51は、アッパレール40の内側から各スプリング保持孔48に挿通される。これにより、スプリング50がアッパレール40内に保持される。なお、図1のスプリング50は、アッパレール40内に保持されているときの状態を示している。
【0056】
付勢部52は、スプリング50の先端側に形成されるとともに、係止部材20の上面であって、係止部材20の先端部23を車両フロア2の方向に付勢する。
当接部53は、付勢部52と保持部51との間に位置するとともに、スプリング50における保持部51より付勢部52側において最も外側に位置する。よって、アッパレール40内にスプリング50が位置するとき、幅方向Wにおいて各当接部53が各アッパ側壁部44a,44bに付勢する。この付勢力によって、幅方向Wにおけるスプリング50の位置が決まる。また、当接部53が係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLに近い位置に設定されることで、付勢部52の係止部材20の上面に対する位置を所望の位置とすることができる。
【0057】
逃げ部54は、長手方向Lにおける保持部51の両側の線材が幅方向Wの内側に曲げられて形成される。この逃げ部54を通じて、各保持部51が各スプリング保持孔48に挿通されたとき、スプリング50における保持部51の両側が、各スプリング保持孔48の周縁部に当接することが抑制される。例えば、スプリング50における保持部51の両側が、各スプリング保持孔48の周縁部に当接すると、当接部53及び付勢部52の姿勢が係止部材20に対してずれるおそれがある。この点、逃げ部54を形成することで、当接部53及び付勢部52を所望の姿勢とすること、ひいてはスプリング50を通じて適切に係止部材20に付勢力を加えることができる。
【0058】
<シート位置調整に係る作用>
次に、シート5の位置を調整する際の作用について説明する。
解除ハンドル60に操作力が加えられていない状態においては、スプリング50からの付勢力を通じて、係止部材20の係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLは、ロアレール30のロック孔33a内に保持されている。これにより、ロアレール30に対するアッパレール40の移動が規制されている。
【0059】
ここで、解除ハンドル60を持ち上げるように操作すると、解除ハンドル60の先端部61が係止部材20の入力部28を車両フロア2側に押圧する。これにより、係止部材20の回転軸部26を中心とした図4の反時計回りへの力がスプリング50及び係止部材20に加わる。係止部材20の入力部28を通じてスプリング50の係止部材20への付勢力を超える力が入力されると、係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLがロアレール30から離間し、係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLがロック孔33aから脱出する。このとき、ロアレール30に対するアッパレール40の移動が許容される。よって、シート5の車両前後方向における位置調整が可能となる。
【0060】
<係止部材20のアッパレール40への組み付けに係る作用>
係止部材20をアッパレール40へ組み付けるためには、各係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLを各係止爪用孔49a〜49cへ挿入し、各回転軸部26を各軸収容孔47へ挿入する必要がある。これら挿入は同時に行われる。
【0061】
ここでは、まず、各係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLを各係止爪用孔49a〜49cへ挿入する際の作用について説明する。
図8(b)に示すように、まず、一方側の各係止爪22aR〜22cRを第1のアッパ側壁部44aの各係止爪用孔49aにアッパレール40の内側から挿入していく。このとき、アッパレール40内において係止部材20が傾斜した状態にある。その挿入が完了すると、他方側の各係止爪22aL〜22cLを第2のアッパ側壁部44bの各係止爪用孔49aに挿入させるべく、図8(b)の矢印で示すように、係止部材20を、一方側の各係止爪22aR〜22cR側を支点として図中の時計回りに回転させていく。このとき、爪側許容長さL1が爪側最大回転長さL3より大きく設定されることで、他方側の係止爪22aL〜22cLが、第2のアッパ側壁部44bにおける係止爪用孔49aの下縁部に接触して係止爪22aL〜22cLの係止爪用孔49a内への挿入が妨げられることが抑制される。よって、他方側の係止爪22aL〜22cLが、第2のアッパ側壁部44bにおける係止爪用孔49a内に挿入可能となる。
【0062】
例えば、爪側許容長さL1が爪側最大回転長さL3以下の場合、上記係止部材20を図中の時計回りに回転させていく際、他方側の係止爪22aL〜22cLの先端が、第2のアッパ側壁部44bにおける係止爪用孔49aの下縁部に接触する。よって、係止部材20をアッパレール40へ組み付けることができない。
【0063】
次に、各回転軸部26を各軸収容孔47へ挿入する際の作用について説明する。
図9(b)に示すように、まず、一方側の回転軸部26を第1のアッパ側壁部44aの軸収容孔47にアッパレール40の内側から挿入していく。このとき、アッパレール40内において係止部材20が傾斜した状態にある。その挿入が完了すると、他方側の回転軸部26を第2のアッパ側壁部44bの軸収容孔47に挿入させるべく、図9(b)の矢印で示すように、係止部材20を、一方側の回転軸部26側を支点として図中の時計回りに回転させていく。
【0064】
このとき、軸側許容長さL2が軸側最大回転長さL4より大きく設定されることで、他方側の回転軸部26が、第2のアッパ側壁部44bにおける軸収容孔47の下縁部に接触して回転軸部26の軸収容孔47内への挿入が妨げられることが抑制される。よって、他方側の回転軸部26が、第2のアッパ側壁部44bにおける軸収容孔47内に挿入可能となる。
【0065】
例えば、軸側許容長さL2が軸側最大回転長さL4以下の場合、上記係止部材20を図中の時計回りに回転させていく際、他方側の回転軸部26が、第2のアッパ側壁部44bにおける軸収容孔47の下縁部に接触する。よって、係止部材20をアッパレール40へ組み付けることができない。
【0066】
また、以下の方法により、回転軸部26をアッパレール40の軸収容孔47内に圧入してもよい。具体的には、両回転軸部26を接近させる態様で両回転軸部26に外力を加える。この外力により、係止部材20を幅方向Wに圧縮させてアッパレール40に挿入していく。これにより、回転軸部26をアッパレール40の軸収容孔47内に挿入させることができる。この回転軸部26は、背景技術における円柱状の回転軸部に比べて、幅方向Wにたわみ易い形状である。このため、この圧入を通じても、容易に回転軸部26をアッパレール40の軸収容孔47内に挿入させることができる。
【0067】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)回転軸部26は、その先端面26aが長手方向Lに沿うように、係止部材20の本体部21に対して湾曲して形成される。また、回転軸部26の先端面26aが軸収容孔47の周面に沿って転動可能となるように、先端面26aにおける長手方向Lの両端に曲面部26bが形成されている。この回転軸部26は係止部材20の本体部21と一体の板材からプレス加工によって形成することができる。よって、回転軸部26を有する係止部材20を容易に製造することができる。また、従来技術に比べて、より簡易な構成で係止部材20をアッパレール40内に回転可能に支持することができる。
【0068】
また、回転軸部26が本体部21に対して湾曲して形成されることで、円柱状の回転軸部の場合と比較して、軸側最大回転長さL4を小さくすることができる。
(2)アッパレール40に係止部材20を組み付けるにあたって、一方側の回転軸部26を、第1のアッパ側壁部44aの軸収容孔47にアッパレール40の内側から挿入していく。その挿入後に、他方側の回転軸部26を第2のアッパ側壁部44bの軸収容孔47に挿入するように、係止部材20を回転させていく。このとき、軸側許容長さL2が軸側最大回転長さL4より大きく設定されることで、他方側の回転軸部26が、第2のアッパ側壁部44bにおける軸収容孔47の縁部に接触して回転軸部26の挿入が妨げられることが抑制される。よって、他方側の回転軸部26が、第2のアッパ側壁部44bにおける軸収容孔47内に挿入可能となる。このため、係止部材20をアッパレール40に容易に組み付け可能となる。
【0069】
(3)回転軸部26における先端側が長手方向Lに沿って除去されることで、上記軸側最大回転長さL4を小さくすることができる。よって、回転軸部26を軸収容孔47へ挿入するための条件である軸側許容長さL2を軸側最大回転長さL4より大きく設定し易くなる。
【0070】
また、回転軸部26における2つの曲面部26bを通じて回転軸としての機能が実現される。この構成では、図4の2点鎖線で示す回転中心O1を中心として描かれる円柱状の回転軸と同様に機能させつつ、より簡易な構成を実現することができる。
【0071】
(4)軸収容孔47において、回転軸部26と接する2つの側面47a,47b間の距離は、高さ方向Hにおける車両フロア2の方向に向かうほど小さくなる。この構成によれば、回転軸部26の両曲面部26bは、軸収容孔47における2つの側面47a,47bに対して、長手方向Lの両側の2点P1,P2で内接する。従って、仮にアッパレール40又は係止部材20の製造ばらつきなどで軸収容孔47及び回転軸部26間に組付けばらつきが生じたとしても、片側の軸収容孔47及び回転軸部26が当接する2点P1,P2と、反対側の軸収容孔47及び回転軸部26が当接する1点又は2点とで支持されている。よって、アッパレール40内における係止部材20のがたつきを抑制することができる。
【0072】
(5)アッパレール40に係止部材20を組み付けるにあたって、一方側の係止爪22aR〜22cRを、第1のアッパ側壁部44aの係止爪用孔49a〜49cにアッパレール40の内側から挿入していく。その挿入後に、他方側の係止爪22aL〜22cLを第2のアッパ側壁部44bの係止爪用孔49a〜49cに挿入させるべく、係止部材20を回転させていく。このとき、爪側許容長さL1が爪側最大回転長さL3より大きく設定されることで、他方側の係止爪22aL〜22cLが、第2のアッパ側壁部44bにおける係止爪用孔49a〜49cの縁部に接触して係止爪22aL〜22cLの挿入が妨げられることが抑制される。よって、他方側の係止爪22aL〜22cLが、第2のアッパ側壁部44bにおける係止爪用孔49a〜49c内に挿入可能となる。このため、係止部材20をアッパレール40に容易に組み付け可能となる。
【0073】
(6)歯部圧力角θa1,θa2より軸部圧力角θb1,θb2が大きく設定されている。ここで、側面33b,33c,47a,47bの圧力角θa1,θa2,θb1,θb2が大きいほど、係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cL又は回転軸部26が側面33b,33c,47a,47bに加える力が大きくなり、それに伴い係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cL又は回転軸部26に加わる反力も大きくなる。このため、例えば係止部材20に衝撃が加わった場合にも、上記の関係に圧力角を設定することで、回転軸部26に加わる反力が、係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLに加わる反力よりも大きくなる。よって、衝撃が加わったときには、回転軸部26を先に軸収容孔47から脱出させることで、係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLをロック孔33a内に保持させることができる。これにより、意図せず係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cLがロック孔33aから脱出して、ロアレール30がアッパレール40に対して相対移動可能となることが抑制される。
【0074】
(7)ロック孔33aの2つの側面33b,33cにおける歯部圧力角θa1,θa2がそれぞれ同一に設定され、軸収容孔47の2つの側面47a,47bにおける軸部圧力角θb1,θb2がそれぞれ同一に設定されている。これにより、ロック孔33a及び軸収容孔47の長手方向Lの形状が対称となる。よって、ロック孔33a及び軸収容孔47の形成が容易となる。
【0075】
(8)第1のアッパ側壁部44aの係止爪用孔49a内における図8(b)の上側端部に一方側の係止爪22aR〜22cRが押し当てられた状態で係止部材20が長手方向Lを回転軸として時計回りに回転されたとき、第2のアッパ側壁部44bの係止爪用孔49aは他方側の係止爪22aL〜22cLが侵入可能な大きさに形成されている。第1のアッパ側壁部44aの係止爪用孔49aも同様の観点で形成されている。この構成により、係止部材20をアッパレール40に容易に組み付け可能となる。
【0076】
(9)回転軸部26は、本体部21に対して幅方向Wにたわみ易いように湾曲して形成されている。このため、係止部材20をアッパレール40に圧入させ易くなる。
<第2の実施形態>
図10図15を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の車両用シートスライド装置1は、図10に示すように、第1の実施形態とほぼ同一の構成要素を備える。第1の実施形態は、第2の実施形態と比較して、特に、係止部材及びスプリングの構成が異なる。
【0077】
具体的には、第1の実施形態においては、回転軸部26は湾曲している。第2の実施形態においては、図11(a)〜図11(c)、図12(a)及び図12(b)に示すように、回転軸部27は、係止部材20の長手方向Lに延出する長方形の平板状に形成されるとともに、係止部材20の本体部21に対して同一平面を形成している。すなわち、回転軸部27は、図11(b)に示すように本体部21の幅方向Wからみて本体部21と同じ高さにおいて、図11(a)に示すように本体部21からその幅方向Wに沿って両側に直線状に延出する。2つの回転軸部27は、それぞれ本体部21から反対方向に延出している。
【0078】
図13に示すように、本体部21の幅方向Wからみて、各回転軸部27は、本体部21の高さ方向に延出する一対の側面27cを備える。各側面27cは、その車両フロア2に近い端部に形成される曲面27bを備える。この曲面27bは、車両フロア2に向かうにつれて、回転軸部27の中央部に向かって湾曲するように形成されている。第1の実施形態と同様に、両回転軸部26はそれぞれ軸収容孔47に挿通される。このとき、両曲面27bは、それぞれ軸収容孔47の軸用側面47bに接している。これにより、第2の実施形態の係止部材20も、アッパレール40に対して回動可能に支持される。第2の実施形態の車両用シートスライド装置1は、第1の実施形態と同様に作用する。
【0079】
図14(a),図14(b)に示すように、第2の実施形態において、スプリング50は、その先端に位置する一対の先端57を備える。各先端57は、それぞれ幅方向Wの内側に折り曲げられることで、スプリング50の長手方向Lに対して略直角に延出する。また、各先端57は、スプリング50の長手方向Lに沿って隣接して位置する。
【0080】
以上、説明した実施形態によれば、特に、第1の実施形態と比較して以下の作用及び効果が得られる。
(9)何れの実施形態においても、車両用シートスライド装置1に対して車両前後方向(長手方向L)に沿う衝突力が加わった場合、回転軸部26,27は、軸収容孔47の軸用側面47a,47bを通じて本体部21の下方において衝突力を受ける。例えば、車両が後方からの衝撃を受けた場合、回転軸部26は、軸用側面47bを通じて図4の点P2に対して図中の左方向への衝突力を受ける。このように、係止部材20がその本体部21の下方において衝突力を受けるため、係止部材20には、その入力部28が解除ハンドル60の先端部61に接近する方向への回転モーメントが生じる。第1の実施形態においては、係止部材20には、その本体部21に対して車両フロア2に向かって位置する回転軸部26に上記衝突力が加えられる。第2の実施形態においては、係止部材20には、車両の高さ方向Hにおいて本体部21と同一の位置に存在する回転軸部27に上記衝突力が加えられる。係止部材20への回転モーメントは、衝突力が加えられる作用点が本体部21から車両フロア2に近づくにつれて大きくなることが知られている。よって、上記衝突に際して係止部材20に加わるモーメントは、第1の実施形態より第2の実施形態の方が小さくなる。このため、第2の実施形態においては、上記衝突の際、係止部材20に加えられるモーメントが比較的小さいため、係止部材20がモーメントにより変形することが抑制される。係止部材20の変形が抑制されるため、車両前後方向の衝突荷重を確実に受けることができ、衝突力が加わった際のロック状態の保持の安定性が向上する。
【0081】
(10)スプリング50の一対の先端57は、それぞれ幅方向Wの内側に延出する。この場合、両先端57は、それぞれ係止部材20に線接触可能である。よって、スプリング50が係止部材20に接触する面積が大きくなる。従って、スプリング50によって係止部材20がより安定して保持される。
【0082】
(11)回転軸部27は、本体部21の幅方向Wからみて本体部21と同じ高さにおいて、本体部21からその幅方向Wに沿って両側に直線状に延出する。この構成では、より簡単に係止部材20に回転軸部27を形成することができる。長手方向Lからみて本体部21及び一方の回転軸部26がなす外形の各頂点を結んだ直線のうち最大となる直線の長さである軸側最大回転長さL4を短く設定することができる。
【0083】
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1の実施形態においては、回転軸部26は、その先端面26aが長手方向Lに沿うように、係止部材20の本体部21に対して車両フロア2の方向に湾曲して形成されていたが、回転軸部26は本体部21に対して略直角に曲げ形成されていてもよい。
【0084】
・上記各実施形態においては、ロアレール30が車両フロア2に固定され、アッパレール40がロアレール30に対して相対移動可能に構成されていた。しかし、アッパレール40とロアレール30とを反対にしてもよい。
【0085】
・上記各実施形態における車両用シートスライド装置1を車両以外に適用してもよい。
・上記各実施形態における係止部材20の係止爪22aR〜22cR,22aL〜22cL及び係止爪用孔49a〜49cの数は適宜変更可能である。
【0086】
・第1の実施形態においては、回転軸部26の先端面26aには平面部26cが形成されている。しかし、この平面部26cを省略して、回転軸部26の先端面26aの全域を曲面状に形成してもよい。この場合、軸収容孔47を円柱状に形成してもよい。
【0087】
・上記実施形態における係止部材20は鋳造等を利用して製造されてもよい。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)前記係止爪は前記係止部材の本体部における前記長手方向に延出する両側面から前記係止爪用孔を通じて前記第2レールの外側に延出し、
前記第1の側壁部の係止爪用孔における前記長手方向及び前記幅方向に直交する高さ方向の一端部と前記第2の側壁部の係止爪用孔における前記高さ方向の他端部とを結ぶ仮想的な直線の長さを爪側許容長さとし、
前記係止部材の本体部における前記両側面のうち一方の側面と、他方の側面に形成される前記係止爪の先端とを結ぶ仮想的な直線の長さを爪側最大回転長さとし、前記爪側許容長さを前記爪側最大回転長さより大きく設定したシートスライド装置。
【0088】
第2レールに係止部材を組み付けるにあたって、一方側の係止爪を、第1の側壁部の係止爪用孔に第2レールの内側から挿入していく。その挿入後に、他方側の係止爪を第2の側壁部の係止爪用孔に挿入するように、係止部材を回転させていく。このとき、爪側許容長さが爪側最大回転長さより大きく設定されることで、他方側の係止爪が、第2の側壁部における係止爪用孔の縁部に接触して係止爪の挿入が妨げられることが抑制される。よって、他方側の係止爪が、第2の側壁部における係止爪用孔内に挿入可能となる。このため、係止部材を第2レールに容易に組み付け可能となる。
【0089】
(ロ)前記係止爪用孔は、前記各側壁部において前記幅方向に貫通するとともに、前記高さ方向に開口しないシートスライド装置。
この構成によれば、係止爪用孔は高さ方向に開口しないため、係止部材を第2レールに組み付けた後に、係止爪が係止爪用孔内に保持される。よって、係止部材が第2レールから外れることが抑制される。
【符号の説明】
【0090】
1…車両用シートスライド装置、2…車両フロア、5…シート、16…転動部材、20…係止部材、21…本体部、22aL〜22cL,22aR〜22cR…係止爪、23…先端部、26,27…回転軸部、26a…先端面、26b…曲面部、26c…平面部、28…入力部、30…ロアレール、31…ロア側壁部、32…ロア連結壁部、33…ロア折返し壁部、33a…ロック孔、40…アッパレール、44a…第1のアッパ側壁部、44b…第2のアッパ側壁部、45…アッパ連結壁部、46…アッパ折返し壁部、46a…嵌入溝、47…軸収容孔、48…スプリング保持孔、49a〜49c…係止爪用孔、50…スプリング、51…保持部、52…付勢部、53…当接部、54…逃げ部、60…解除ハンドル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15