【実施例】
【0033】
以下では、フロー電池を具体的に作製した例について、実験例として説明する。なお、本発明は、以下の実験例に限定されるものではない。
【0034】
[実験例1]
(フロー電池の作製)
実験例1では、
図1のように構成されたフロー電池を作製した。正極の電極組成物において、固体活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO
4、以下LFPと略す。宝泉社製SLFP−PD60)を、メディエータとしてケイバナドモリブデン酸(H
6[SiV
2Mo
10O
40]・29H
2O、以下SiVMoと略す。日本無機化学工業製)を用いた。また、負極の電極組成物において、固体活物質としてリン酸チタンリチウム(LiTi
2(PO
4)
3、以下LTPと略す。)を、メディエータとして、正極と同じSiVMoを用いた。なお、LTPとしては、以下のように作製したものを用いた。まず、チタンイソプロポキシド、酢酸リチウム、リン酸一アンモニウムを所定量混ぜた後、加水分解した固形物を、Ar雰囲気下700℃で24時間加熱焼成した。その後、焼成粉末表面をスクロースで表面被覆し、Ar雰囲気下700℃で焼成して表面カーボン被覆したものを用いた。
【0035】
実験例1の電池は、具体的には、以下のように作製した。まず、固体活物質としてのLFP95質量部とバインダーとしてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5質量部とを混練し塊状にした。これをミキサーにかけて粉砕し、篩で1mm〜0.5mmのサイズの粒子を選別し、これを正極固体活物質粒子とした。また、固体活物質としてLTPを用いた以外は正極と同様にして、負極固体活物質粒子を得た。また、水酸化リチウム及び0.1Mフタル酸バッファーでpHを4.65に調整した、10質量%SiVMoの3M硝酸リチウム水溶液を作製し、これを正極用及び負極用のメディエータ含有電解液とした。
【0036】
次に、
図1に示すフロー電池を以下のように組み立てた。まず、ケース内に、イオン交換膜と、イオン交換膜を介して対向する正極電極及び負極電極と、を配設した。イオン交換膜としてはLiイオン交換したナフィオン膜(ナフィオンは登録商標)を用い、正極電極及び負極電極としてはいずれも厚さ3mm、4cm
2のカーボンフェルトを用いた。次に、正極側のリザーバ容器内に、上述した正極固体活物質粒子(LFP)2g及びメディエータ含有電解液18mLを投入し、負極側のリザーバ容器内にメディエータ含有電解液18mLを投入した。なお、各リザーバ容器には、あらかじめ、固体活物質粒子の流出を防止するフィルタを配設し、固体活物質粒子がフロー電池内を流動しないように構成した。
【0037】
(サイクリックボルタモメトリー)
メディエータ含有電解液及びLFP、LTPについて、サイクリックボルタモメトリーを行った。具体的には、メディエータ含有電解液のCVは、上記組成のメディエータ含有電解液を用い、作用極を直径3mmのグラッシーカーボン電極、対極は白金ワイヤ、参照極は飽和KClのAg/AgCl電極とし、窒素雰囲気下、掃引速度20mV/secでCV評価した。LFP及びLTPに関しては、LFP又はLTPを80質量部に、導電助剤としてケッチェンブラックを10質量部、バインダーとしてPTFE10質量部を混練したものを5mgとり、ステンレスメッシュに挟み込んだ電極を用い評価した。その他の条件はメディエータ含有電解液のCVと同じとした。実験例1のメディエータ含有電解液、LFP、LTPのサイクリックボルタモグラム(CV)を
図3に示す。
図3より、LFP、LTPの酸化還元電位(標準電位)は飽和塩化カリウムの銀/塩化銀電極に対し、それぞれ0.265V,−0.695Vであることが求まった。
【0038】
図3より、メディエータ(SiVMo)含有電解液は、LFPの酸化還元電位(標準電位0.265V)より高電位側に標準電位を有するブロードな酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=0.412V/0.336V/0.374V)と、LFPの酸化還元電位より低電位側に標準電位を有するブロードな酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=0.283V/0.101V/0.192V)を有することがわかった。各酸化還元ピークの標準電位は、LFPの標準電位に対する電位差が0.11V、−0.07Vであり、LFPの酸化還元電位に近いことがわかった。また、その間がブロードで傾斜電位を示すことがわかった。また、
図3より、メディエータ(SiVMo)含有電解液は、LTPの酸化還元電位(標準電位−0.695V)より高電位側に標準電位を有するブロードな酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=−0.499V/−0.643V/−0.571V)と、LTPの酸化還元電位よりも低電位側に標準電位を有するブロードな酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=−0.689V/−0.811V/−0.75V)を有することがわかった。各酸化還元ピークの標準電位は、LTPの標準電位に対する電位差が0.12V、−0.06Vであり、LTPの酸化還元電位に近いことがわかった。また、その間がブロードで傾斜電位を示すことがわかった。なお、pHを変化させてCVを測定したところ、SiVMo液はpH3−10.5の広いpH域で安定に動作することも確認した。一方、pH1以下ではLFPは比較的早期に劣化し、酸化還元ピークを示さなくなった。
【0039】
(充放電試験)
まず、上述したフロー電池を用い、正極及び負極のそれぞれについてメディエータ含有電解液をローラーポンプでフロー電池内に流速30mL/分で流動させ、電流50mAで充放電を行った。その後、負極側のリザーバ容器内に、上述した負極固体活物質粒子(LTP)1gを投入し、引き続き、充放電を行った。
【0040】
図4に、実験例1の充放電波形を示した。負極をみると、LTP投入前では負極側の電位(銀/塩化銀基準)変化はプラトーを示さずキャパシタ的な傾斜電位を示した。これに対して、LTP投入後には一定のプラトーを充放電とも示すようになり、容量も大幅に増大した。
図5に、実験例1の容量増加の様子を示した。17サイクル以降は、100mAhの充電容量規制で放電容量をみたものである。LTPの仕込み量は約120mAhであるので、100mAh容量規制下では全量充電はできないが、少なくとも50%のLTPは利用されていることが分かった。またクーロン効率も高かった。
図6,7には、充放電電流変化時の各極及びセルの電圧変化を示した。
図6,7を見てわかるように、50mAの大電流を流した場合でも、正極、負極の分極は0.11Vと文献1に比べ大幅に小さい。また、膜抵抗分のロスが重畳しているセル電圧をみても分極は0.55Vと小さい。これは固体活物質とメディエータの電位差が小さいことに加え、傾斜電位を示す効果と推察された。以上のことから、正負極共通メディエータを用い固体活物質を含有させることによって、非常に優れた充放電が可能なフロー電池が構築できたことが分かった。また、両極のメディエータを同じものとしたことから、正負極メディエータのクロスコンタミネーションを防止する効果もあると推察された。
【0041】
[実験例2]
(フロー電池の作製)
実験例2では、
図1のように構成されたフロー電池を作製した。正極の電極組成物において、固体活物質としてLFPを、メディエータとしてリンバナドモリブデン酸(H
5[PV
2Mo
10O
40]・31H
2O、以下PVMと略す。日本無機化学工業製)を用いた。また、負極の電極組成物において、固体活物質としてLTPを、メディエータとしてケイタングステン酸(H
4[SiW
12O
40]・24H
2O、以下SiWOと略す。日本無機化学工業製)を用いた。
【0042】
実験例2の電池は、具体的には、以下のように作製した。正極固体活物質粒子(LFP)及び負極固体活物質粒子(LTP)を、実験例1と同様にして得た。また、水酸化リチウム及び0.1Mフタル酸バッファーでpHを4.90に調整した、10質量%PVMの3M硝酸リチウム水溶液を作製し、これを正極用のメディエータ含有電解液とした。また、水酸化リチウム及び0.1Mフタル酸バッファーでpHを4.9に調整した、10質量%SiWOの3M硝酸リチウム水溶液を作製し、これを負極用のメディエータ含有電解液とした。その他の構成は実験例1と同じとした。
【0043】
(サイクリックボルタモメトリー)
正極用メディエータ含有電解液及び負極用メディエータ含有電解液について、実験例1と同様にサイクリックボルタモメトリーを行った。実験例2の正極用メディエータ含有電解液、負極用メディエータ含有電解液及び上述したLFP、LTPのCVを
図8に示す。
【0044】
図8より、正極用メディエータ(PVM)含有電解液は、LFPの酸化還元電位(標準電位0.265V)より高電位側に標準電位を有するブロードな酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=0.420V/0.293V/0.357V)と、LFPの酸化還元電位より低電位側に標準電位を有するブロードな酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=0.232V/0.179V/0.205V)を有することがわかった。各酸化還元ピークの標準電位は、LFPの標準電位に対する電位差が0.09V、−0.06Vであり、LFPの酸化還元電位に近いことがわかった。また、その間がブロードで傾斜電位を示すことがわかった。また、
図8より、メディエータ(SiWO)含有電解液は、LTPの酸化還元電位より高電位側に標準電位を有する明瞭な酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=−0.346V/−0.417V/−0.382V)と、LTPの酸化還元電位よりも低電位側に標準電位を有する明瞭な酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=−0.729V/−0.851V/−0.815V)を有することがわかった。各酸化還元ピークの標準電位は、LTPの標準電位に対する電位差が0.31V、−0.12Vであり、LTPの酸化還元電位に比較的近いことがわかった。
【0045】
(充放電試験)
実験例1と同様に充放電試験を行った。
図9,10に、実験例2の充放電波形を示した。LTP投入前の充放電波形である
図9では、負極の波形は充放電時ともほぼ同じ電位にCVで見られた酸化還元電位に対応した複数のプラトーが明確に確認された。これに対して、LTP投入後には、
図10に示すようにプラトー波形となった。充放電電流変化時の各極及びセルの電圧変化を上述した
図6、7に示した。固体活物質との電位差が大きな負極側を見ると、放電時20mA以上で分極が大きくなる様子が分かった。電位差及びメディエータ濃度、流速から求まるSiWO酸化体の量に対応する電流値は15mAであり、その付近で変曲しているものと推察された。したがって、電流値を電位差・濃度・流速から求まる電流値以下に制御すれば分極をより低減できると推察された。
【0046】
[実験例3]
(フロー電池の作製)
実験例3では、
図2に示すように構成されたフロー電池を作製した。正極の電極組成物において、実験例2と同様、固体活物質としてLFPを、メディエータとしてPVMを用いた。負極では、電極組成物を用いず、負極電解液として1M硝酸リチウム+1M硝酸亜鉛水溶液を用いた。また、電極として金属亜鉛板を用いた。
【0047】
実験例3の電池は、具体的には、以下のように作製した。正極固体活物質粒子(LFP)及び正極用のメディエータ(PVM)含有電解液を、実験例2と同様にして得た。また、1M硝酸リチウム+1M硝酸亜鉛水溶液を調製し、これを負極電解液とした。
【0048】
次に、
図2に示すフロー電池を以下のように組み立てた。まず、ケース内に、イオン交換膜と、イオン交換膜を介して対向する正極電極及び負極電極と、を配設した。イオン交換膜としてはLiイオン交換したナフィオン膜を用い、正極電極としては4cm
2のカーボンフェルトを用い、負極電極としては金属亜鉛板を用いた。次に、正極側のリザーバ容器内に、メディエータ含有電解液18mLを投入し、図示しない負極側の電解液タンク内に上記負極電解液を投入した。なお、正極側のリザーバ容器には、あらかじめ、固体活物質粒子の流出を防止するフィルターを配設し、固体活物質粒子がフロー電池内を流動しないように構成した。
【0049】
(充放電試験)
まず、上述したフロー電池を用い、正極では、メディエータ含有電解液をローラーポンプでフロー電池内に流速30mL/分で流動させ、負極では、負極電解液をローラーポンプでフロー電池内に流速30mL/分で流動させ、充放電を行った。その後、正極側のリザーバ容器内に上述した正極固体活物質粒子(LFP)2gを投入し、引き続き、充放電を行った。なお、LFP投入後も、電極組成物のうちメディエータ含有電解液のみを流動させた。
【0050】
図11に、実験例3の充放電波形を示した。正極において、LFP投入前に比べてLFP投入後では容量が大幅に増加しており、負極が金属亜鉛でも動作することが分かった。また、実験例3では亜鉛の分極が比較的大きかったが、それを低減できれば、フロー電池の放電電圧をより高めることができると推察された。
【0051】
[実験例4]
(フロー電池の作製)
実験例4では、
図1のように構成されたフロー電池を作製した。正極の電極組成物において、固体活物質としてリン酸バナジウムナトリウム(Na
3V
2(PO
4)
3、以下NVPと略す。)を、メディエータとしてPVMを用いた。また、負極の電極組成物において、固体活物質としてリン酸チタン酸ナトリウム(NaTi
2(PO
4)
3、以下NTPと略す)を、メディエータとしてSiWOを用いた。なお、ここで用いたNVPとしては、バナジウムアセチルアセトナト、酢酸ナトリウム、リン酸一アンモニウムを所定量混ぜ反応させた後、濃縮生成した固形分を、Ar雰囲気下940℃3時間熱処理したものを用いた。また、ここで用いたNTPは、酢酸リチウムの代わりに酢酸ナトリウムを用いた以外は、上述したLTPと同様に作製した、表面カーボン被覆したものを用いた。
【0052】
実験例4の電池は、具体的には、以下のように作製した。正極固体活物質粒子(NVP)及び負極固体活物質粒子(NTP)を、実験例1と同様にして得た。また、水酸化ナトリウム及び0.15Mリン酸バッファーにてpHを3.0に調整した、10質量%PVMの3M硝酸ナトリウム水溶液を作製し、これを正極用のメディエータ含有電解液とした。また、水酸化ナトリウムと0.15Mリン酸バッファーにてpHを3.6に調整した、10質量%SiWOの3M硝酸ナトリウム水溶液を作製し、これを負極用のメディエータ含有電解液とした。イオン交換膜としてはNaイオン交換したナフィオン膜を用いた。その他の構成は実験例1と同じとした。なお、実験例4では、負極側のリザーバ容器内に、充放電試験当初から、負極固体活物質粒子(NTP)1gを投入し、一方、正極側のリザーバ容器内には、充放電試験当初には、正極固体活物質粒子(NVP)を投入しなかった。
【0053】
(サイクリックボルタモメトリー)
正極用メディエータ含有電解液、負極用メディエータ含有電解液及びNTPについて、実験例1と同様にサイクリックボルタモメトリーを行った。実験例4の正極用メディエータ含有電解液、負極用メディエータ含有電解液、及び上述したNVP、NTPのCVを
図12に示す。
図12より、NVP、NTPの酸化還元標準電位は、それぞれ0.478V、−0.764Vであった。
【0054】
また、
図12より、正極用メディエータ(PVM)含有電解液は、NVPの酸化還元電位(標準電位0.478V)の近くに標準電位を有するブロードな酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=0.428V/0.364V/0.396V)を有することがわかった。酸化還元の標準電位は、NVPの標準電位に対する電位差が−0.08Vであり、NVPの酸化還元電位に近いことがわかった。また、
図12より、メディエータ(SiWO)含有電解液は、NTPの酸化還元電位(標準電位−0.764V)の近くに標準電位を有するブロードな酸化還元ピーク(酸化ピーク/還元ピーク/標準電位=−0.768V/−0.921V/−0.804V)を有することがわかった。酸化還元の標準電位は、NTPの標準電位に対する電位差が−0.04Vであり、NTPの酸化還元電位に比較的近いことがわかった。
【0055】
(充放電試験)
まず、上述したフロー電池を用い、正極及び負極のそれぞれについてメディエータ含有電解液をローラーポンプでフロー電池内に流速30mL/分で流動させ、充放電を行った。その後、正極側のリザーバ容器内に、上述した正極固体活物質粒子(NVP)1gを投入し、引き続き、充放電を行った。
【0056】
図13に、実験例4の充放電波形を示した。NVP投入前に比して、NVP投入後には、充放電とも容量が増大することが分かった。このことから、Liイオンを用いた系だけではなく、Naイオンを用いた系でも、また、NVPを正極活物質として用いても、メディエータ含有電解液と固体活物質との酸化還元電位の電位差が小さければ、良好に動作することが分かった。
【0057】
[実験例5]
(フロー電池の作製)
混合電解液の影響を見るため、実験例5では、負極の電極組成物において、固体活物質としてLTPに代えてNTPを用い、正極及び負極の電極組成物において、3Mの硝酸リチウムに代えて6MのLi
0.5Na
0.5NO
3を用いた以外は、実験例2と同様にフロー電池を作製した。なお、実験例5では、充放電試験当初から、負極側のリザーバ容器内に、負極固体活物質粒子(NTP)1gを投入した。
【0058】
(充放電試験)
実験例2と同様に充放電試験を行った。
図14に、実験例5の充放電波形を示した。負極での作動イオンがナトリウム、正極での作動イオンがリチウムと、各極で作動イオンが異なる混合電解液を用いた場合でも、良好な動作が確認できた。
【0059】
[実験例6]
(フロー電池の作製)
実験例6では、
図1のように構成されたフロー電池において、正極のリザーバ容器に固体活物質粒子の流出を防止するフィルターを配設せず、メディエータ含有電解液のみならず、固体活物質粒子も含む電極組成物がフロー電池内を流動するものを作製した。なお、ここでは、正極の固体活物質粒子として、バインダーを用いずにLFP(宝泉社製、直径5±2μm)粉末をそのまま用いた。その他の構成については、正極の電極組成物において、固体活物質としてのLFPを2gから5質量%に変更し、正極電極をカーボンフェルトに代えて多孔質ステンレスを用いた以外は、実験例5と同様にフロー電池を作製した。なお、実験例6では、充放電試験当初には、正極用メディエータ(PVM)含有電解液に代えてPVMを含まない正極用電解液(LFPスラリー)を用い、充放電試験の途中でPVMを添加して正極用メディエータ含有電解液とした。
【0060】
(充放電試験)
実験例5と同様に充放電試験を行った。
図15〜17に、実験例6の充放電波形を示した。PVM無しではほとんど充放電できなかったものが、PVM添加によって大幅に容量が増加した(
図15参照)。また、PVMのみでは10mAh/gの容量であったものが(
図16参照)、LFPスラリーにPVMを加えたものでは、容量制限50mAh/gでも充放電できており(
図17参照)、大幅に容量が増加することが分かった。これらのことから、固体活物質粒子も流動させるタイプの電解液を用いた場合にも、メディエータ添加することで容量が増大することがわかった。
【0061】
[実験例7]
実験例7では、実験例1のSiVMoのバナジウム組成の影響を検討するため、pHを変化させながら、H
4+x[SiV
xMo
12-xO
40]においてx=0,1,2,3,4に変化させた化合物について、CV 評価を行った。
図18〜22に、実験例7のH
4+x[SiV
xMo
12-xO
40]のCVを示した。メディエータとして機能するのに必要な、0〜0.7V領域及び−0.3〜−0.9V領域の酸化還元ピークに対するpHの影響をみたところ、pH3〜pH10の弱酸から弱アルカリ領域でより再現性よく働くのは、x=2,3であることがわかった。x=0,1ではpH6以上になると全領域の酸化還元ピークが消失し、x=4では逆にpH5.5以下で−0.5V〜−0.9Vの領域での還元ピークが消失し不可逆反応が起きると推察された。但し、x=4はpH11以上の強アルカリ域では安定に働いた。以上のことから、電解液をpH3〜10の弱酸性から弱アルカリ性の広いpH領域で使用する正負極同一メディエータとしてはH
4+x[SiV
xMo
12-xO
40]においてx=2,3であるものがより適していることが分かった。また、アルカリ下で安定な活物質を用いる場合には、強アルカリで安定なx=4であるものがより適していることが分かった。
【0062】
[実験例8]
実験例8では、メディエータを入れずに実験例1〜3と同様の操作を行ったが、充放電はできなかった。
【0063】
[実験例9]
実験例9では、メディエータを入れずLFPスラリーを流す実験例6の系において、LFPのスラリーの導電性が向上するようにケッチェンブラック0.75質量部を混ぜたスラリーを用いて、充放電試験を行った。この実験例では、電流を2mAと小さくしても充放電はほとんどできず、容量も0.1mAh以下と小さかった。