(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
電池の安全弁からは通常使用時においても、高温保存や繰り返しの充放電に伴う電池内圧の上昇により安全弁が作動し電解液や可燃ガスが排出されることがある。また、異常時においても、異常時の初期段階では電池内で緩やかにガスが発生し安全弁から電解液や可燃ガスが排出される。さらに異常な状態が継続した場合においてのみ、電池内における反応が進み急激なガス発生段階に至り安全弁から高温ガスが排出される。
【0006】
特許文献1に記載された技術においては、電池内で発生したガスを電池外に排出することにより電池ケースの膨張や破裂を防止できることが記載されている。しかし、通常使用時の高温保存や繰り返しの充放電、または異常時の初期段階において、安全弁が作動した際に電池から排出される電解液や可燃ガスが電池周辺の広範囲に飛散する可能性がある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、その主な目的は、通常使用時や異常時の初期段階に排出される電解液や可燃ガスの広範囲への飛散を防止するとともに、異常時の急激なガス発生段階において高温ガスを確実に電池外に排出することのできる、安全性に優れた密閉型電池を提供することにある。
【0008】
本発明のある様態の密閉型電池は、正極と負極との間にセパレータを介装して作製された電極群を収納する容器と、前記容器の開口部に取付けられ、少なくともひとつのガス排気孔が形成された複数の部材を含む封口体とを備え、前記複数の部材に各々形成されたガス排気孔のうち、前記容器の開口部の面積に対するガス排気孔の面積の比が3.0×10
-5以上、9.1×10
-3以下であるガス排気孔を含む部材は、異常時に発生する高温ガスより融点が低い部材で形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、電池内で発生したガスを確実に電池外に排出するとともに、電池が装着された機器に与える悪影響を最小限に抑制することのできる、安全性に優れた密閉電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態における円筒形非水電解質二次電池の構成を示した断面図である。
【0013】
図1に示すように、正極1及び負極2がセパレータ(多孔質絶縁層)3を介して捲回された電極群4が、非水電解液(不図示)とともに、有底円筒形の電池ケース15に収納されている。電極群4の上下には、それぞれリング状の絶縁板7、絶縁板8が配置され、正極1は、正極リード5を介してフィルタ13に接合され、負極2は、負極リード6を介して負極端子を兼ねる電池ケース15の底部に接合されている。
【0014】
フィルタ13は、インナーキャップ12に接続され、インナーキャップ12の突起部は、金属製の弁体10に接合されている。さらに、弁体10は、正極端子を兼ねるキャップ9に接続されている。そして、キャップ9、弁体10、インナーキャップ12、及びフィルタ13が一体となって封口体を構成し、ガスケット14を介して、電池ケース15の開口部を封口している。なお、封口体を構成するキャップ9、弁体10、インナーキャップ12、及びフィルタ13のうち、少なくともひとつは異なる部材で形成されている。
【0015】
弁体10には、電池内の圧力が所定値に達したときに破断する薄肉部10aが形成され、薄肉部10aが破断することで弁体10は安全弁として機能する。弁体10の薄肉部10aが破断することで、電池内で発生したガスや電解液はフィルタ13のフィルタ孔13a、インナーキャップ12のインナーキャップ孔12a、弁体10の破断部、及びキャップ9のキャップ孔9aを介して、電池外に排出される。
【0016】
図2(a)、(b)は、本実施形態におけるキャップおよびフィルタの形状を示した平面図である。
【0017】
図2(a)に示すように、キャップ9は異常の場合に発生する高温ガスよりも融点が低い部材である融点が700℃以下のアルミニウムにより形成されている。キャップ孔9aの開口面積は7.9×10
-3mm
2以上、2.4mm
2以下で形成されている。キャップ孔9aの開口面積を7.9×10
−3mm
2未満に設定した場合、ガス発生の初期段階でのガス排気が容易でないため、ガスにより電池内の圧力が高まり封口体が変形して破裂が発生する恐れがある。キャップ孔9aの開口面積を2.4mm
2以上に設定した場合、ガス発生の初期段階において、安全弁が作動した際に電池から排出される電解液や可燃ガスがキャップ孔9aで防げず電池外部に飛散する可能性がある。また、キャップ孔9aの開口面積は上記の範囲内であればキャップ孔9aが複数存在していても良い。本発明の実施の形態では、1つのキャップ孔9aが形成され、キャップ孔9aの開口面積が0.8mm
2として説明する。
【0018】
また、
図2(b)に示すように、フィルタ13に形成されたフィルタ孔13aの開口面積は32.3mm
2となるように形成されている。本実施例におけるフィルタ孔13aの開口面積は、現在市場に供給されている18650サイズ(直径18mm、高さ65mm)の円筒型リチウムイオン二次電池における一般的な開口面積の範囲内である。
【0019】
また、弁体10の薄肉部10aが破断したときに弁体10に形成される破断面積、およびインナーキャップ12のインナーキャップ孔12aの開口面積はキャップ9に形成されたキャップ孔9aの開口面積よりも大きくなるように形成されており、封口体におけるガス排気経路の面積は、キャップ9に形成された排気孔であるキャップ孔9aの開口面積で律則される。
【0020】
また、キャップ孔9aの開口面積はガス発生の初期段階でのガス排気能力に対応し、電池ケース15の開口部の大きさに依存する。そのため、電池ケース15の開口部の面積が変化すればキャップ孔9aの面積も変化するので、電池ケース15の開口部の面積(260mm
2)に対してキャップ孔9aの面積の比が3.0×10
-5以上、9.1×10
-3以下になるように形成されていることが好ましい。
【0021】
図3(a)、(b)は、本実施形態における電池外へのガス排出の過程を示した断面図である。
図3(a)、(b)を参照しながら、本実施形態における電池外へのガス排出の過程を説明する。
【0022】
図3(a)は、ガス発生の初期段階において、安全弁である弁体10が作動した状態を示した図である。過充電等により電池温度が次第に上昇し、密閉された電池ケース15内で電解液が気化あるいは分解する等により、電池内の圧力が安全弁の作動圧(薄肉部10aの破断圧力)を超えると、弁体10の薄肉部10aが破断する。これにより、電池内の圧力が、フィルタ13のフィルタ孔13a、インナーキャップ12のインナーキャップ孔12a、弁体10の破断部、及びキャップ9のキャップ孔9aを介して、電池外に開放される。この段階におけるガス発生は比較的低温かつ緩やかであり、弁体10が破断することにより、電解液や可燃性のガスは排気孔であるキャップ9のキャップ孔9aのごく狭い排気面積を通って緩やかに電池外に排出される。
【0023】
図3(b)は、電池において異常な状態がさらに継続し、電池内で急速な化学反応が起こり、高温ガスが急激に発生した段階において、キャップ9が発生した高温ガスにより溶融した状態を示した図である。この段階において、キャップ9は大量に噴出する高温ガスによる熱によって溶融し、拡大した開口面積の排気孔を形成する。これにより電池内で急激に発生した高温ガスはキャップ9の溶融により形成された拡大した開口面積の排気孔を介して電池外に排出される。
【0024】
このようにすると、通常使用時や異常時の比較的低温かつ緩やかなガス発生段階においては、安全弁作動時に電池内から排出される電解液や可燃ガスはごく狭い排気孔であるキャップ孔9aを介して排出されるため、電解液や可燃ガスが広範囲に飛散して電池搭載機器に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。さらに、電池における異常な状態が継続し電池内で高温ガスが急激に発生する段階においては、キャップ9は噴出する高温ガスによる熱で溶融し、電池内で急激に発生した高温ガスはキャップ9の溶融により形成された拡大した開口面積の排気孔を介して電池外に確実に排出される。結果、通常使用時や異常時の初期段階に排出される電解液や可燃ガスの広範囲への飛散を防止することで電池搭載機器に与える悪影響を最小限に抑制するとともに、異常時の急激なガス発生段階において高温ガスを確実に電池外に排出することのできる、安全性に優れた密閉電池を実現することができる。
【0025】
また、本発明において「安全弁」は、電池内の圧力が上昇したときに、電池内に発生したガスを電池外に排気する機能を備えた機構を含み、本実施形態で例示した形態に必ずしも限定されない。例えば、他の安全弁の構成として、特定圧力で開裂するガスケットやパッキンで電池を密閉する構成。または、開口部に押しつけられた樹脂やスプリング等の弾性体で電池を密閉し、内部圧力が上昇した場合には、それによる弾性体の変形で生じる隙間からガスを外部に排気する構成等を採用することができる。
【0026】
次に、
図4および
図5(a)、(b)を参照しながら、本発明の別の実施形態における、ガス排気孔が封口体の一部であるフィルタに形成されている場合を説明する。
図4は、本実施形態における円筒形非水電解質二次電池の断面図である。
図5(a)、(b)は、本実施形態におけるキャップおよびフィルタの形状を示した平面図である。
【0027】
図4および
図5(b)に示すように、フィルタ13にはガス排気孔であるフィルタ孔13aが形成されており、フィルタ13は異常の場合に発生する高温ガスよりも融点が低い部材である融点が700℃以下のアルミニウム(融点660℃)で構成されている。
【0028】
フィルタ13のフィルタ孔13aの開口面積は7.9×10
-3mm
2以上、2.4mm
2以下の範囲で形成されている。フィルタ孔13aの開口面積を7.9×10
-3mm
2未満に設定した場合、ガス発生の初期段階でのガス排気が容易でないため、ガスにより電池内の圧力が高まり封口体が変形して破裂が発生する恐れがある。フィルタ孔13aの開口面積を2.4mm
2以上に設定した場合、ガス発生の初期段階において、安全弁が作動した際に電池から排出される電解液や可燃ガスがフィルタ孔13aで防げず電池外部に飛散する可能性がある。また、フィルタ孔13aの開口面積は上記の範囲内であればフィルタ孔13aが複数存在していても良い。本発明の実施の形態では、3つのフィルタ孔13aが形成され、3つのフィルタ孔13aを合計した開口面積が1.5mm
2として説明する。また、
図5(a)に示すように、キャップ9に形成されたキャップ孔9aの開口面積は34.9mm
2となるように形成されている。本実施例におけるキャップ孔9aの開口面積は、現在市場に供給されている18650サイズの円筒型リチウムイオン二次電池における一般的な開口面積の範囲内である。また、インナーキャップ12のインナーキャップ孔12aの開口面積、および弁体10の薄肉部10aが破断したときに弁体10に形成される破断面積はフィルタ13に形成されたフィルタ孔13aの開口面積よりも大きくなるように形成されており、封口体におけるガス排気経路の面積は、フィルタ13に形成されたフィルタ孔13aの開口面積で律則される。また、フィルタ孔13aの開口面積はガス発生の初期段階でのガス排気能力に対応し、電池ケース15の開口部の大きさや電池ケースの体積等に依存する。そのため、電池ケース15の開口部の面積(260mm
2)が変化すればフィルタ孔13aの面積も変化するので、電池ケース15の開口部の面積に対してフィルタ孔13aの面積の比が3.0×10
-5以上、9.1×10
-3以下になるように形成されていることが好ましい。
【0029】
図6(a)、(b)は、本実施形態における電池外へのガス排出の過程を示した断面図である。
図6(a)、(b)を参照しながら、本実施形態における電池外へのガス排出の過程を説明する。
【0030】
図6(a)は、ガス発生の初期段階において、弁体10の薄肉部10aが破断して、安全弁である弁体10が作動した状態を示した図で、電池内の電解液や可燃性のガスは排気孔であるフィルタ13のフィルタ孔13aのごく狭い排気面積を通って緩やかに電池外に排出される。
図6(b)は、電池において異常な状態がさらに継続し、電池内で急速な化学反応が起こり、高温ガスが急激に発生した段階において、フィルタ13が発生した高温ガスにより溶融した状態を示した図である。このようにすると、フィルタ13は電池内で高温ガスが発生した際に高温ガスの熱に最初に晒される電池内に最も近い封口体構成部品であるため、より確実に排気孔であるフィルタ孔13aが溶融し、拡大した開口面積の排気経路を形成することができる。これにより異常時の急激なガス発生段階において高温ガスをより確実に電池外に排出することができる。
【0031】
次に、
図7および
図8を参照しながら、本発明の別の実施形態における、封口体内に設けられた安全弁に加え、封口体内に設けられた安全弁よりも作動圧の高い第2の安全弁を備えている場合を説明する。
図7は、本実施形態における円筒形非水電解質二次電池の断面図である。
図8は、本実施形態における円筒形非水電解質二次電池の底面図である。
【0032】
図7および
図8に示すように、電池ケース15の底部には、電池内の圧力が所定値に達したときに破断する薄肉部15aが形成され、この電池ケース15の底部に形成された薄肉部15aにより第2の安全弁が構成されている。ここで、電池ケース15の底部に形成された薄肉部15aの破断圧力は、封口体内に設けられた安全弁の作動圧力よりも大きくなるように形成されている。このようにすると、電池内で高温ガスが急激に発生する段階において、高温ガスの発生とガスの熱による排気孔の溶融に時間的な遅れが発生した場合、電池内の圧力が第2の安全弁の作動圧を超えることで電池ケース15の薄肉部15aが破断して、電池内で発生した高温ガスは、電池ケース15の破断部を介して電池外に排出される。また、高温ガスが700℃に到達せずに排気孔が溶融することなく十分なガス排気経路が封口体に形成されなかった場合においても、同様に電池内で発生した高温ガスは、電池ケース15の破断部を介して電池外に排出される。これにより異常時の急激なガス発生段階において高温ガスを確実に電池外に排出することができる。
【0033】
また、封口体内に設けられた安全弁の作動圧、及び第2の安全弁の作動圧は、一義的に決まるものではなく、使用する電池の種類や、想定されるガス発生モード(圧力上昇モード)等を考慮して、適宜決めればよい。なお、第2の安全弁の作動圧は、電池ケースの耐圧(若しくは、封口体の耐圧)よりも低く設定されるが、2〜8MPaの範囲に設定することが好ましい。第2の作動圧を2MPa未満に設定した場合、電池が落下等の何らかの弱い衝撃を受けただけで、ケース底部薄肉部が破断し、電池内から電解液が流出する恐れがある。また、第2の作動圧を8MPa以上に設定した場合、急激なガス発生に対してケース底部薄肉部破断が間に合わず封口体が変形して破裂が発生する恐れがあるからである。
【0034】
なお、排気孔の一部が溶融せずに残り、十分なガス排気経路が封口体に形成されなければ、排気孔が溶融しなかった場合に含む。
【0035】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態においては、密閉型電池として非水電解質二次電池を例に説明したが、これに限らず、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素二次電池、アルカリ乾電池等にも適用することができる。また、非水電解質二次電池も、その種類は特に限定されず、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池に適用することができる。