(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の蛍光光源装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の蛍光光源装置の構成の一例の概略を示す説明図であり、
図2は、
図1の蛍光光源装置における蛍光発光部材および放熱基板の具体的な構成を示す説明用分解図である。
この蛍光光源装置10は、
図1に示すように、例えば半導体レーザよりなる励起光源11と、励起光源11から出射される励起光によって励起されて蛍光を放射する蛍光体を含有する蛍光板21を有する蛍光発光部材20とを備え、これらが互いに離間して配設されたものである。また、蛍光光源装置10には、放熱基板22が設けられている。
この図の例において、蛍光発光部材20は、励起光源11に対向するよう、当該励起光源11の光軸に対して傾斜した姿勢で配置されている。
【0011】
蛍光発光部材20は、平板状の蛍光板21の表面(
図1および
図2における上面)が、励起光入射面とされていると共に蛍光出射面とされたものである。
この蛍光発光部材20は、平板状の放熱基板22の表面(
図1および
図2における上面)に、蛍光板21の裏面(
図1および
図2における下面)が放熱板22の表面に対向した状態で配置されて接合されている。そして、放熱基板22と蛍光発光部材20との間には、矩形平板状の接合部材層26が形成されている。すなわち、蛍光発光部材20と放熱基板22とは、接合部材層26によって接合されている。
また、蛍光発光部材20は、蛍光板21の表面、励起光源11に対向するように配置されている。
【0012】
蛍光板21は、蛍光体と金属酸化物とからなる板状体、具体的には、蛍光体と金属酸化物との混合物の焼結体であって、金属酸化物の粒子からなる部分(以下、「金属酸化物部分」ともいう。)と蛍光体の粒子からなる部分(以下、「蛍光体部分」ともいう。)とが混在し、表面に金属酸化物部分が露出した状態の板状体である。
【0013】
蛍光板21は、蛍光体と金属酸化物とからなるもの、すなわち金属酸化物部分と蛍光体部分とが混在し、表面に金属酸化物部分が露出したものであることにより、当該蛍光板21に接触した状態で積層される蛍光発光部材20の構成部材(この図の例においては、後述する反射積層体30および接着層38)との間に高い密着性が得られる。
また、蛍光板21が蛍光体と金属酸化物とからなるものであることによれば、蛍光板21の内部に入射した励起光および蛍光の導光が制御されることから、蛍光出射面における発光領域が小さくなり発光輝度が向上する。また、蛍光板21の内部において、或る蛍光体部分に入射したものの吸収されることのなかった励起光の進行方向が当該蛍光体部分と金属酸化物部分との界面において変更される。そして、その或る蛍光体部分に入射したものの吸収されることのなかった励起光の一部は、他の蛍光体部分に向かって進行する。そのため、励起光を蛍光に変換するための光路長が長くなり、励起光が蛍光体部分に吸収される確率が高くなる。その結果、蛍光板21の内部に入射した励起光を有効に利用して、高い効率で蛍光に変換することができる。また、或る蛍光体部分から放射された蛍光の進行方向が他の蛍光体部分と金属酸化物部分との界面において変更されることから、蛍光が蛍光板21の内部に閉じ込められることが抑制される。その結果、蛍光発光部材20においては、蛍光板21の内部において生じた蛍光を有効に利用して、高い効率で外部に出射することができる。
【0014】
蛍光板21において、蛍光体としては、多結晶の蛍光体が用いられる。
蛍光板21を構成する蛍光体が多結晶の蛍光体であることにより、蛍光板21が高い熱伝導性を有するものとなる。そのため、蛍光板21においては励起光の照射によって発生した熱が効率よく排熱されることから、蛍光板21が高温となることが抑制される。その結果、蛍光発光部材20においては、蛍光体において温度消光が生じることに起因する蛍光光量の低減を抑制することができる。
ここに、蛍光板21を構成する多結晶の蛍光体は、例えば以下のようにして得ることができる。先ず、母材、賦活材、金属酸化物および焼成助剤などの原材料をボールミルなどによって粉砕処理することによって、サブミクロン以下の原材料微粒子を得る。次いで、この原材料微粒子を用い、例えばスリップキャスト法によって成形体を形成して焼結する。その後、得られた焼結体に対して熱間等方圧加圧加工を施すことによって、気孔率が例えば0.5%以下の多結晶の蛍光体が得られる。
【0015】
蛍光板21を構成する蛍光体は、無機蛍光体、具体的には希土類元素を発光イオン(賦活材)としてドープした複合酸化物よりなるものであることが好ましい。
【0016】
蛍光板21において、蛍光体の含有割合は、例えば20〜80質量%である。
また、蛍光体の粒子の粒径(平均粒径)は、例えば1〜10μmである。
【0017】
蛍光板21において、金属酸化物としては、排熱性(熱伝導性)および蛍光体との密着性などの観点から、酸化アルミニウム(Al
2 O
3 )などが用いられる。
【0018】
このような構成の蛍光板21は、例えば、適宜の粒径を有する蛍光体の粒子と、酸化アルミニウム(Al
2 O
3 )の粒子とを混合し、その混合物をプレスした後、焼成することによって製造することができる。
蛍光板21の材質の具体例としては、Al
2 O
3 /YAG:Ce、Al
2 O
3 /YAG:Pr、Al
2 O
3 /YAG:Sm、Al
2 O
3 /LuAG:Ceなどが挙げられる。このような蛍光板21の蛍光体において、希土類元素(賦活材)のドープ量は、0.5mol%程度である。
【0019】
蛍光板21の厚みは、励起光の蛍光への変換効率(量子収率)および排熱性の観点から、0.05〜2.0mmであることが好ましい。
【0020】
また、蛍光板21は、少なくとも励起光を拡散する光散乱体を含有し、励起光を拡散する光拡散機能を有するものであってもよい。ここに、蛍光板21は、光散乱体が励起光と蛍光とを拡散するものである場合には、励起光および蛍光を拡散する光拡散機能を有するものとなる。
蛍光板21が光拡散機能を有するものであることにより、蛍光板21の内部において、励起光の進行方向が光散乱体によって変更される。そのため、励起光を蛍光に変換するための光路長が長くなり、励起光が蛍光体部分に吸収される確率が高くなる。その結果、蛍光板21の内部に入射した励起光を有効に利用して、高い効率で蛍光に変換することができる。
また、蛍光板21が蛍光を拡散する機能を有するものである場合には、蛍光板21の内部において、蛍光の進行方向が光散乱体によって変更されることから、蛍光が蛍光板21の内部に閉じ込められることが抑制される。その結果、蛍光発光部材20においては、蛍光板21の内部において生じた蛍光を有効に利用して、高い効率で外部に出射することができる。
しかも、蛍光板21が光拡散機能を有するものであることによれば、励起光の蛍光への変換効率(量子収率)が小さくなるという弊害を生じさせることなく、蛍光板21の厚みを小さくすることができる。そして、蛍光板21の厚みを小さくすることによれば、当該蛍光板21が極めて高い排熱性を有するものとなり、また蛍光板21の外周面から蛍光が外部に出射されることを十分に抑制または防止することができる。
【0021】
蛍光板21に含有される光散乱体は、蛍光板21の金属酸化物部分を構成する酸化アルミニウム(Al
2 O
3 )や蛍光体とは異なる屈折率を有する微小粒子または粒界析出相によって構成されるものである。ここに、光散乱体を構成する微小粒子としては、例えばイットリア、窒化ケイ素、窒化アルミニウムおよびフッ化ストロンチウムなどの無機化合物よりなるものが挙げられる。
【0022】
接合部材層26を構成する接合部材としては、排熱性および低応力性の観点から、スズを含有する半田を使用することが好ましい。
接合部材として用いられるスズを含有する半田の具体例としては、例えば金スズ合金(AuSn,スズ(Sn)の含有割合20質量%,熱伝導率250W/mk)およびスズ−銀−銅合金(Sn−3Ag−0.5Cu(銀(Ag)の含有割合が3質量%、銅(Cu)の含有割合が0.5質量%、スズ(Sn)の含有割合が96.5質量%),熱伝導率55W/mk)などが挙げられる。これらのうちでは、熱伝導率が高く、スズの含有量が少ないため、金スズ合金が好ましい。具体的に説明すると、接合部材として金スズ合金を用いた場合には、熱伝導率が高いことから、接合部材としてスズ−銀−銅合金を用いた場合に比して、励起光の励起パワーが同一であっても、蛍光板21の温度を20deg程低くすることができる。また、スズの含有割合が少ないことから、反射層31の反射率の低下を抑制することができる。
また、接合部材層26の厚みは、例えば30μmである。
この図の例において、接合部材による蛍光発光部材20と放熱基板22との接合方法としては、例えばリフロー炉を用い、フラックスフリー半田シート(接合部材)を、蛍光発光部材20と放熱基板22との間に挟み、蟻酸ガスまたは水素ガスの雰囲気中において加熱を行うリフロー方式が用いられている。このように、蟻酸または水素の還元力を利用してフラックスフリー半田シートの表面酸化膜を除去してリフローを行う接合方法によれば、形成される接合部材層26にボイドが生じることがなく、良好な熱伝導性が得られる。
【0023】
放熱基板22は、蛍光発光部材20(具体的には、蛍光板21)において発生した熱を排熱するものである。
この放熱基板22は、高熱伝導性を有すると共に、蛍光板21との熱膨張係数の差が小さい材料よりなるものであることが好ましい。
具体的には、放熱基板22の構成材料の熱膨張係数は蛍光板21の構成材料の熱膨張係数以上であり、その熱膨張率の差は9×10
-6〔1/K〕以下であることが好ましい。
放熱基板22の構成材料と蛍光板21の構成材料との熱膨張係数の差が9×10
-6〔1/K〕以下であることによれば、蛍光板21の動作時温度を150℃以下に設定することにより、蛍光光源装置10の製造工程において、蛍光発光部材20と放熱基板22との接合部材(具体的には、スズを含有する半田)による接合温度が100℃程度となる。そのため、蛍光光源装置10の動作時においては、蛍光板21に圧縮応力が発生した状態となることから、蛍光板21と放熱基板22との間に、熱膨張に起因する剥離が生じることがない。
【0024】
放熱基板22の構成材料としては、銅(Cu)およびモリブデンと銅の合金(Mo−Cu)などの金属が用いられる。
ここに、放熱基板22の構成材料として用いられる銅の熱膨張係数は16.5×10
-6〔1/K〕であり、モリブデンと銅との合金(銅(Cu)の含有割合30質量%)の熱膨張係数は8.6×10
-6〔1/K〕である。一方、蛍光板21の構成材料として用いられるYAGの熱膨張係数は8.6×10
-6〔1/K〕である。
図の例において、放熱基板22は、銅よりなるものである。
【0025】
放熱基板22において、厚みは、放熱特性を考慮して適宜に定めればよく、例えば0.5〜5.0mmである。
また、放熱基板22の表面の面積は、
図1および
図2に示されているように、排熱性などの観点から、蛍光板21の裏面の面積よりも大きいことが好ましい。
また、放熱基板22は、放熱フィンの機能を兼ね備えたものであってもよい。
この図の例において、放熱基板22の厚みは2mmである。
【0026】
また、放熱基板22には、接合部材層26との接合性の観点から、
図2に示されているように、当該放熱基板22の表面(
図2における上面)に、保護膜層23および半田濡れ膜層24がこの順に積層された金属膜が形成されていることが好ましい。
この金属膜において、保護膜層23は、例えばワット浴によるめっき法によって形成されたニッケル(Ni)膜よりなり、半田濡れ膜層24は、例えばワット浴によるめっき法によって形成された金(Au)膜よりなる。
この図の例において、放熱基板22は、外表面全面(表面、裏面および周側面)が、保護膜層23および半田濡れ膜層24よりなる金属膜で覆われてなるものである。この金属膜を構成する各層の厚みは、保護膜層23が2.5μm、半田濡れ膜層24が0.03μmである。
【0027】
蛍光板21の裏面側、具体的には蛍光板21と放熱基板22との間には、蛍光板21の裏面に沿って延びるように銀反射膜よりなる平板状の反射層31が設けられている。すなわち、蛍光板21の裏面には、反射層31が対向配置されている。このように、蛍光板21は、裏面側に高反射特性を有する銀よりなる反射層31が設けられることにより、裏面に高反射機能を有するものとされている。
【0028】
反射層31は、その厚みが例えば110〜350nmである。
また、反射層31の表面(
図1および
図2における上面)の面積は、励起光および蛍光の有効利用性の観点から、蛍光板21の裏面の面積以下であることが好ましい。
この図の例において、反射層31の表面は、蛍光板21の裏面の寸法よりも僅かに小さな寸法を有しており、その全面が蛍光板21の裏面の中央部に対向している。
【0029】
そして、反射層31と蛍光板21との間には、金属酸化物多層膜よりなる増反射部32が、蛍光板21の裏面に密着した状態で設けられている。すなわち、蛍光板21の裏面には、増反射部32と反射層31とがこの順に設けられている。
金属酸化物多層膜よりなる増反射部32が設けられていることにより、蛍光板21の裏面がより一層優れた高反射機能を有するものとなる。
この図の例において、増反射部32を構成する金属酸化物多層膜は、二酸化ケイ素(SiO
2 )層32Aと酸化チタン(TiO
2 )層32Bとを有するものである。ここに、増反射部32を構成する金属酸化物多層膜の厚みは、350nmである。この増反射部32を構成する二酸化ケイ素層32Aおよび酸化チタン層32Bを含む積層膜(具体的には、二酸化ケイ素層32A、酸化チタン層32B、反射層31および後述する、反射層31の表面および裏面の各々に密着した状態の接着性改善層35A,35Bよりなる積層膜)は、電子ビーム蒸着法によって作製される。具体的には、露光によってパターニングしたレジストが配設された蛍光板21の面上に、電子ビーム蒸着法によって積層膜を成膜する。その後、レジストをリフトオフによって取り除き作製されたものである。また、増反射部32の表面(
図2における上面)は、その全面が蛍光板21の裏面の中央部に対向接触している。
【0030】
また、反射層31において、当該反射層31の表面には、接着性改善層(以下、「上面側接着性改善層」ともいう。)35Aが、当該表面に密着した状態でその全面を覆うように設けられている。また、反射層31の裏面(
図2における下面)には、接着性改善層(以下、「下面側接着性改善層」ともいう。)35Bが、当該裏面に密着した状態でその全面を覆うように設けられている。
反射層31の表裏面の各々に接着性改善層35A,35Bが設けられていることにより、反射層31と、当該接着性改善層35A,35Bを介して反射層31に積層される蛍光発光部材20の構成部材との間に高い密着性が得られる。
この図の例において、上面側接着性改善層35Aの上面(
図2における上面)には、増反射部32が密着した状態で配設されている。すなわち、上面側接着性改善層35Aと蛍光板21との間においては、増反射部32が、上面側接着性改善層35Aおよび蛍光板21の各々に密着した状態とされている。そして、反射積層体30は、反射層31と接着性改善層35A,35Bと増反射部32とによって構成されている。
【0031】
接着性改善層35A,35Bは、酸化アルミニウム(Al
2 O
3 )からなるものである。
【0032】
また、接着性改善層35A,35Bは、その厚みが1μm以下であることが好ましい。
接着性改善層35A,35Bの厚みが1μmを超える場合には、接着性改善層35A,35Bが熱伝導性の低いものとなり、蛍光光源装置10の動作時における蛍光板21の温度が高くなる。そのため、蛍光体において温度消光が生じることに起因して十分な蛍光光量を得ることができなくなる。
この図の例において、上面側接着性改善層35Aの厚みは50nmであり、下面側接着性改善層35Bの厚みは50nmである。
【0033】
接着性改善層35A,35Bは、例えば電子ビーム蒸着法などによって作製することができる。
【0034】
また、反射積層体30には、反射層31における裏面および周側面を覆うように封止層37が設けられている。
また、反射積層体30と封止層37との間、および蛍光板21の裏面の周縁と封止層37との間には、封止層37を、反射積層体30および蛍光板21に接着するための接着層38が設けられている。すなわち、接着層38は、反射層31の周側面と、下面側接着性改善層35Bにおける裏面および周側面と、蛍光板21の裏面の周縁と、封止層37とに密着した状態で設けられている。
このようにして、蛍光板21の裏面において、封止層37が接着層38を介して反射積層体30に密着して設けられており、この封止層37と接着層38と蛍光板21とにより、反射積層体30の封止構造が形成されている。
この図の例において、封止層37と接着層38とは、反射積層体30の全体を覆うように設けられており、増反射部32を構成する金属酸化物多層膜の周側面の全面には接着層38が密着した状態とされている。
また、封止層37の裏面(
図2における下面)には、チタン(Ti)層41A,41Bと白金(Pt)層42A,42Bとを有する多層膜よりなる応力緩和層41と金層43とがこの順に設けられている。ここに、封止層37に接触しているチタン層(以下、「第1チタン層」ともいう。)41Aの厚みは50nmであり、その第1チタン層41Aに接触している白金層(以下、「第1白金層」ともいう。)42Aの厚みは150nmである。また、第1白金層42Aに接触しているチタン層(以下、「第2チタン層」ともいう。)41Bの厚みは100nmであり、その第2チタン層41Bに接触している白金層(以下、「第2白金層」ともいう。)42Bの厚みは200nmである。また、金層43の厚みは500nmである。この応力緩和層41を構成するチタン層41A,41Bおよび白金層42A,42B、並びに金層43は、各々、スパッタ蒸着法によって作製されたものである。このような多層膜によって応力緩和層41が構成されていることによれば、チタンの熱膨張係数(8.5×10
-6〔1/K〕)および白金の熱膨張係数(8.9×10
-6〔1/K〕)が、蛍光板21の構成材料として用いられるYAGの熱膨張係数(8.6×10
-6〔1/K〕)に近似しているため、封止層37で発生する応力緩和が可能となる。また、白金層42A,42Bは、接合部材層26を構成する金属(具体的には、例えばスズ)の拡散防止機能を発揮する。すなわち、白金層42A,42Bは、後述する拡散防止層45と共に拡散防止層としても機能する。
【0035】
蛍光板21と封止層37と接着層38とによって反射積層体30の封止構造が形成されていることにより、反射層31が蛍光板21から剥離することがなく、また反射層31に長期間にわたって高い反射機能が得られる。
具体的に説明すると、封止層37が、金属酸化物(具体的には、酸化アルミニウム(Al
2 O
3 ))が露出している蛍光板21に接着層38を介して設けられていることから、当該接着層38と蛍光板21との接着性が、蛍光板21と反射積層体30(具体的には、増反射部32の二酸化ケイ素層32A)との接着性よりも強固となる。そのため、蛍光板21の裏面の周縁と封止層37(接着層38)との間に十分な密着性が得られる。
そして、蛍光板21と封止層37と接着層38とによって反射積層体30の封止構造が形成されていることにより、反射積層体30における構成層の剥がれが防止され、また、蛍光光源装置10の動作時において、反射積層体30が動作環境雰囲気にさらされることを防止できることから、蛍光発光部材20が優れた耐候性および耐湿性を有するものとなる。その結果、反射層31の蛍光板21からの剥離、並びに反射層31の酸化および硫化による表面劣化を防止することができる。
しかも、蛍光板21と接着層38との接着性が強固であるため、封止層37の裏面側(
図1および
図2における下面側)に厚みが1〜4μmの拡散防止層45を形成したとしても、反射層31の剥れ等が発生しない構造となる。
また、反射積層体30の封止構造が形成されていることによれば、反射積層体30が、蛍光発光部材20の構成部材(具体的には、蛍光板21、反射積層体30、接着層38および封止層37以外の構成部材)の形成過程、および蛍光発光部材20と放熱基板22との接合過程などの蛍光光源装置10の製造工程における製造環境雰囲気にさらされることを防止できる。そのため、蛍光光源装置10において、反射積層体30が所期の反射機能を有するものとなる。
【0036】
封止層37は、ニッケルまたはインジウムからなるものであり、耐候性の観点からはニッケルからなるものであることが好ましい。
また、封止層37は、その厚みが、例えば0.5μm以下とされる。
この封止層37は、スパッタ蒸着法などによって形成される。
この図の例において、封止層37は、ニッケルからなるものであり、当該封止層37の厚みは110nmである。
【0037】
接着層38は、クロム、クロム合金またはチタンなどからなるものであり、特に封止層37がニッケルからなるものである場合には、当該封止層37との密着性の観点からクロムからなるものであることが好ましい。
この接着層38は、反射積層体30と封止層37との間および蛍光板21と封止層37との間の各々において、例えば50nmの厚みを有するものである。
また、接着層38は、スパッタ蒸着法などによって形成される。
この図の例において、接着層38は、クロムよりなるものである。また、蛍光板21の裏面における接着層38が密着した領域、すなわち蛍光板21の裏面の周縁は、金属よりなる接着層38が密着して設けられることにより、反射機能を有するものとされている。すなわち、蛍光板21の裏面は、中央部が高反射機能を有し、周縁が反射機能を有するものとされている。このことによって、蛍光板21の裏面の周縁における蛍光の吸収が少なくなる。そのため、蛍光発光部材20においては、蛍光板21で発生した蛍光を効率よく取り出すことができる。
尚、本実施例では、クロムを用いたい場合について説明したが、クロムに代えてチタン、シリコン、タンタル、アルミニウム、及び、それらの酸化物の少なくとも一つを用いたものでも良い。
【0038】
蛍光発光部材20には、
図2に示されているように、封止層37の裏面側、具体的には、封止層37と接合部材層26との間に、拡散防止層45が設けられていることが好ましい。
この拡散防止層45は、拡散防止機能の観点から、1μm以上の厚みを有するものとされる。また、拡散防止層45の厚みは、反射層31の剥離防止の観点から、4μm以下であることが好ましい。
【0039】
封止層37と接合部材層26との間に拡散防止層45が設けられていることによれば、蛍光光源装置10の動作時において、蛍光発光部材20(蛍光板21)の動作時温度が200〜250℃(接合部温度が150〜200℃)となった場合であっても、接合部材層26を構成する金属(具体的には、例えばスズ)が拡散防止層45の表面(
図1および
図2における上面)上に積層された蛍光発光部材20の構成部材に拡散されることを防止できる。このような効果は、蛍光光源装置10が、蛍光板21の裏面の温度が高温(具体的には100〜200℃)となる駆動条件、具体的には、蛍光板21に対する励起光の励起密度が20〜200W/mm以上となる駆動条件で駆動される場合に顕著となる。
【0040】
拡散防止層45は、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)またはニッケル(Ni)よりなるものであり、好ましくはニッケルよりなるものである。
【0041】
また、拡散防止層45は、拡散防止層45から反射層31に負荷される応力を小さくして反射層31の剥離を防止する観点から、溶解度の高いめっき浴によるめっき法で形成することが好ましく、スルファミン酸浴によるめっき法で形成することが特に好ましい。
【0042】
このような構成の蛍光光源装置10においては、励起光源11から出射された励起光は、蛍光発光部材20における蛍光板21の表面(励起光入射面)に照射され、当該蛍光板21に入射する。そして、蛍光板21においては、当該蛍光板21を構成する蛍光体が励起される。これにより、蛍光板21において蛍光体から蛍光が放射される。この蛍光は、蛍光体に吸収されずに蛍光板21の裏面において反射層31によって反射された励起光と共に蛍光板21の表面(蛍光出射面)から外部に出射され、蛍光光源装置10の外部に出射される。
【0043】
而して、蛍光光源装置10においては、蛍光板21と封止層37と接着層38とによって反射積層体30の封止構造が形成されている。そのため、反射層31は、蛍光板21の裏面側において、上面側接着性改善層35Aおよび増反射部32を介して蛍光板21に密着した状態とされる。また、反射積層体30が大気などの環境雰囲気にさらされることがないことから、反射層31が酸化および硫化などによって表面劣化されることに起因する当該反射層31の反射率の経時的低下を防止できる。
従って、蛍光光源装置10によれば、反射層31が蛍光板21から剥離するという不具合が生じることなく、長期間にわたって反射率の低下が防止され高い発光効率を得ることができる。
【0044】
また、蛍光光源装置10においては、封止層37がニッケルよりなるものであって接着層38がクロムよりなるものであることにより、封止層37が優れた耐候性を有するものとなる。しかも、接着層38の作用によって封止層37が蛍光板21および反射積層体30により強固に密着したものとなることから、反射積層体30の封止構造の封止構造がより高い封止性を有するものとなる。そのため、反射層31における剥離並びに酸化および硫化などによる表面劣化に起因する反射率の低下が生じることが、より一層防止される。その結果、蛍光光源装置10においては、より長期間にわたって高い発光効率が得られる。
【0045】
また、蛍光光源装置10においては、反射層31が、金属酸化物多層膜よりなる増反射部32を介して蛍光板21の裏面側に形成された銀反射膜よりなるものであることにより、銀反射膜の有する高反射特性と、増反射部32による反射率向上特性とによって、蛍光板21の裏面がより一層優れた高反射機能を有するものとなる。また、反射層31と増反射部32との間に酸化アルミニウム(Al
2 O
3 )からなる接着性改善層35Aが介設されていることから、その反射層31と増反射部32との間に高い密着性が得られる。
しかも、銀反射膜よりなる反射層31は、密着性が弱く、酸化および硫化されやすいものであるものの、反射積層体30の封止構造が形成されていることから、反射層31における剥離並びに酸化および硫化などによる表面劣化に起因する反射率の低下が生じることがない。
従って、銀反射膜よりなる反射層31が金属酸化物多層膜を介して蛍光板21の裏面側に形成された蛍光光源装置10においては、長期間にわたってより一層高い発光効率が得られる。
【0046】
以上において、本発明の蛍光光源装置を具体的な例を用いて説明したが、本発明の蛍光光源装置はこれに限定されるものではない。
例えば、蛍光板は、当該蛍光板の表面に、複数の凸部が周期的に配列されてなる周期構造が形成されたものであってもよい。ここに、蛍光板の表面の周期構造は、例えば略錐形状(具体的には、錐状または錐台状)の凸部が密集した状態で二次元周期的に配列されてなるものである。また、蛍光板が表面に周期構造を有するものである場合には、その蛍光板は、製造容易性の観点から、蛍光部材と、励起光および蛍光に対する光透過性を有する周期構造体層とからなるものであってもよい。
【0047】
また、蛍光光源装置全体の構造は、
図1に示すものに限定されず、種々の構成を採用することができる。例えば、
図1に係る蛍光光源装置では、1つの励起光源(例えば、半導体レーザ)の光を用いているが、励起光源が複数あり、蛍光発光部材の前に集光レンズを配置して、集光光を蛍光発光部材に照射する形態であってもよい。また、励起光は半導体レーザによる光に限るものではなく、蛍光板における蛍光体を励起することができるものであれば、LEDによる光を集光したものでもよく、更には、水銀、キセノン等が封入されたランプからの光であってもよい。尚、ランプやLEDのように放射波長に幅を持つ光源を利用した場合には、励起光の波長は主たる放射波長の領域である。ただし、本発明においては、これに限定されるものではない。