(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094623
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】照明器具用フレネルレンズおよびそれを有する照明器具
(51)【国際特許分類】
G02B 3/08 20060101AFI20170306BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20170306BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20170306BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20170306BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20170306BHJP
【FI】
G02B3/08
H01L33/00 L
F21V5/04 650
F21S2/00 330
F21Y101:00
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-101295(P2015-101295)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-218185(P2016-218185A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年8月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000140269
【氏名又は名称】株式会社遠藤照明
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】福富 善太
(72)【発明者】
【氏名】原田 泰彦
【審査官】
小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−201075(JP,A)
【文献】
特表2015−507817(JP,A)
【文献】
特開2006−171482(JP,A)
【文献】
特開2012−089333(JP,A)
【文献】
特開2008−141152(JP,A)
【文献】
特開2005−049367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/08
G02B 13/00
H01L 33/58,33/60
F21V 5/04
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面が出射面とされ、他方面が入射面とされており、前記出射面の中心部に、中心から外方へ向かって複数段に形成された屈折型の凸レンズ面と、前記入射面の中心部の外側に、内方から外方へ向かって複数段に形成された反射型レンズ面とを有する板状レンズ部材を備え、
前記複数段に形成された凸レンズ面のうち中央位置の凸レンズ面は、他のすべての凸レンズ面に比べて、光の出射方向と直交する水平面に対する起立角度が大きくされていることを特徴とする、照明器具用フレネルレンズ。
【請求項2】
前記反射型レンズ面で反射されてレンズ部材内を透過し前記出射面の中心部の外側から出射される光は、中心光軸へ向かって傾斜する方向に出射され、
前記凸レンズ面は、前記出射面の中心部の中央領域においては、中心光軸へ向かって傾斜した方向に光を出射し、前記中心部の外縁領域においては、前記中央領域が出射する方向よりも、中心光軸から離れる方向に光を出射することを特徴とする、請求項1に記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項3】
前記中央位置の凸レンズ面の外側に位置する凸レンズ面は、その高さが、外方に向かって低くされていることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項4】
前記中央位置の凸レンズ面およびその内側に位置する凸レンズ面は、中心光軸へ向かって傾斜した方向に光軸が延びる光を出射し、
前記中央位置の凸レンズ面の外側に位置する凸レンズ面は、中心光軸に沿って光軸が延びる光を出射することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項5】
前記中央位置の凸レンズ面およびその内側に位置する凸レンズ面から出射する光は、中心光軸へ向かって30°以下の傾斜を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項6】
前記出射面の中心部に形成された複数段の前記凸レンズ面は、それぞれ、弧状の出射面を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項7】
前記反射型レンズ面は、TIR(全反射)レンズ面を含み、3段以上8段以下の段構成を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項8】
前記複数段構成の反射型レンズ面のうち、内側に位置する反射型レンズ面による出射光は、中心光軸へ向かって傾斜した傾斜角が相対的に小さくされており、外側に位置する反射型レンズ面による出射光は、前記中心光軸へ向かって傾斜した傾斜角が相対的に大きくされていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項9】
前記板状レンズ部材は、光源の光が前記入射面から入射して前記出射面の中心部に形成された複数段の凸レンズ面から出射される凸レンズの利用角度Φ1が、33°以上47°以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項10】
前記板状レンズ部材は、最外方の反射型レンズで反射されて出射される反射型レンズの利用角度Φ2が、60°以上に設計されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズ。
【請求項11】
光源としてのLEDと、
前記LEDの前方に前記板状レンズ部材の入射面の中央部が所定の間隔を隔てて対向するように配置された請求項1〜10のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズと、
を含むことを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明器具用のフレネルレンズに関し、特に、LEDを光源とするスポットライト等の照明器具に用いられるフレネルレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
照明器具に用いられるフレネルレンズの先行技術として、特許文献1に記載されたフレネルレンズおよび特許文献2に記載されたレンズ部材を例示することができる。
特許文献1に記載のフレネルレンズは、板状のレンズ部材の上面の中心部に集光性の屈折型フレネルレンズ部を設け、下面の外周部に集光性の反射型フレネルレンズ部を設けた構成を有する。
【0003】
特許文献2に記載のレンズ部材は、特許文献1に記載のフレネルレンズを改良したもので、反射型フレネルレンズ部からレンズ部材に入射した光を上面の屈折型フレネルレンズ部へ導くことにより、フレネルレンズの口径の拡大を抑えつつ光源からの出射光の受入角を拡げる構成が提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4293857号公報
【特許文献2】特許第5078419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近の照明器具は、低電力で寿命の長いLEDを光源とするものが一般的になっている。LEDを光源とした場合、当該光源が出射する光を効率良くかつ所望の照射方向へ出射するための改良されたレンズが望まれる。
フレネルレンズは、レンズの表面上に凹凸形状を設け、通常のレンズと同じ機能を持ちながら薄くて軽いというメリットを有している。このため、特許文献1や特許文献2に記載されているような照明器具用のフレネルレンズが各種提案されている。
【0006】
ところで、LEDを光源とする照明器具においては、より高光量の照明器具とすることが求められており、かかる要求を満たすためにはフレネルレンズにも種々の工夫が必要である。
この発明は、かかる背景のもとになされたもので、光源からの光の利用効率を高めるように改良された照明器具用フレネルレンズを提供することを主たる目的とする。
【0007】
また、この発明は、フレネルレンズを通して出射される光が、広角度に拡散せず、所定の方向に出射するように工夫されたスポットライトに好適なフレネルレンズを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、一方面が出射面とされ、他方面が入射面とされており、前記出射面の中心部に、中心から外方へ向かって複数段に形成された屈折型の凸レンズ面と、前記入射面の中心部の外側に、内方から外方へ向かって複数段に形成された反射型レンズ面とを有する板状レンズ部材を備え、前記複数段に形成された凸レンズ面のうち中央位置の凸レンズ面は、他の
すべての凸レンズ面に比べて、光の出射方向と直交する水平面に対する起立角度が大きくされていることを特徴とする、照明器具用フレネルレンズである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記
反射型レンズ面で反射されてレンズ部材内を透過し前記出射面の中心部の外側から出射される光は、中心光軸へ向かって傾斜する方向に出射され、前記凸レンズ面は、前記出射面の中心部の中央領域においては、中心光軸へ向かって傾斜した方向に光を出射し、前記中心部の外縁領域においては、前記中央領域が出射する方向よりも、中心光軸から離れる方向に光を出射することを特徴とする、請求項1に記載の照明器具用フレネルレンズである。
請求項3記載の発明は、
前記中央位置の凸レンズ面の外側に位置する凸レンズ面は、その高さが、外方に向かって低くされていることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の照明器具用フレネルレンズである。
【0010】
請求項4記載の発明は、
前記中央位置の凸レンズ面およびその内側に位置する凸レンズ面は、中心光軸へ向かって傾斜した方向に光軸が延びる光を出射し、前記中央位置の凸レンズ面の外側に位置する凸レンズ面は、中心光軸に沿って光軸が延びる光を出射することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズである。
請求項5記載の発明は、前記中央
位置の凸レンズ面およびその内側に位置する凸レンズ面から出射する光は、中心光軸へ向かって30°以下の傾斜を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズである。
【0011】
請求項6記載の発明は、
前記出射面の中心部に形成された複数段の前記凸レンズ面は、それぞれ、弧状の出射面を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズである。
請求項7記載の発明は、
前記反射型レンズ面は、TIR(全反射)レンズ面を含み、3段以上8段以下の段構成を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズである。
【0012】
請求項8記載の発明は、前記複数段構成の反射型レンズ面のうち、内側に位置する反射型レンズ面による出射光は、前記中心光軸へ向かって傾斜した傾斜角が相対的に小さくされており、外側に位置する反射型レンズ面による出射光は
、中心光軸へ向かって傾斜した傾斜角が相対的に大きくされていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズである。
請求項9記載の発明は、前記板状レンズ部材は、光源の光が前記入射面から入射して前記出射面の中心部に形成された複数段の凸レンズ面から出射される凸レンズの利用角度Φ1が、33°以上47°以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズである。
【0013】
請求項10記載の発明は、
前記板状レンズ部材は、最外方の反射型レンズで反射されて出射される反射型レンズの利用角度Φ2が、60°以上に設計されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズである。
【0014】
請求項11記載の発明は、
光源としてのLEDと、前記LEDの前方に前記板状レンズ部材の入射面の中央部が所定の間隔を隔てて対向するように配置された請求項1〜10のいずれか一項に記載の照明器具用フレネルレンズと、を含むことを特徴とする照明器具である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、板状レンズ部材の一方面を出射面とし、他方面を入射面として、出射面の中心部に屈折型の凸レンズを形成し、入射面の中心部の外側に反射型レンズを形成しているから、板状レンズ部材の両面を有効に活用して薄型でかつ口径の小さなフレネルレンズとすることができる。
また、複数段の凸レンズから出射される光は、中心部の中央領域においては中心光軸へ向かって傾斜した方向に光軸が延び、中心部の外縁領域においては中心光軸と平行に光軸が延びているから、出射面中心部の凸レンズから出射される光は、外方へ拡散せずに中心方向へ向かって、あるいは中心方向と平行に効率良く出射される。
【0017】
さらに、入射面に形成された反射型レンズで反射されてレンズ部材を透過して出射面の中心部の外側から出射される光は、中心光軸へ向かって傾斜した方向に光軸が延びるように出射されるから、この光も外側へ拡散せず、中心方向へ効率良く出射される。
それにより、光の利用効率を高めて、高光量の照明器具を実現可能なフレネルレンズとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る照明器具用のフレネルレンズ10の平面図である。
【
図2】
図2は、この発明の一実施形態に係る照明器具用のフレネルレンズ10の底面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すフレネルレンズ10のA−Aに沿う縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すフレネルレンズ10の中央縦断面図の右半分を拡大して描いた図である。
【
図5】
図5は、フレネルレンズ10が組み込まれた照明器具30の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、この発明の他の実施形態に係る照明器具用のフレネルレンズ100の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下には、図面を参照して、この発明の一実施形態について具体的に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る照明器具用のフレネルレンズ10の平面図であり、
図2は、フレネルレンズ10の底面図であり、
図3は、
図1に示すフレネルレンズ10のA−Aに沿う縦断面図である。
図1〜
図3を参照して、フレネルレンズ10は、平面視が円形をした円板状のレンズ部材11を有している。レンズ部材11の材質は、硝子や透明アクリル樹脂、ポリカーボネート等であり、その一方面(上面)が出射面12とされ、その他方面(下面)が入射面13とされている。
【0020】
レンズ部材11の出射面12の中心部14には、中心から外方へ向かって複数段(この実施形態では5段)の屈折型の凸レンズ140が形成されている。凸レンズ140は、レンズ部材11の中心に対して同心円状に形成されている。
また、レンズ部材11の入射面13には、その外側部15に、内方から外方へ向かって複数段(この実施形態では5段)の反射型レンズ150が形成されている。反射型レンズ150は、レンズ部材11の中心に対して同心円状に形成されている。
【0021】
なお、この明細書において、出射面12、入射面13の中心部14とは、面の中心から面の端までの面領域における中心を含む約半分程度(特に限定しないが、40〜70%)の面領域をいう。また、外側部15とは、面の中心から面の端までの面領域における中心部14の外側の面領域、すなわち、全体の面領域から中心部14に含まれる面領域を除いた残りの面領域をいう。
【0022】
なお、
図1および
図2においては、それぞれ、出射面12に形成された凸レンズ140の形状および入射面13に形成された反射型レンズ150の形状のみが示されているが、レンズ部材11は透明体であるから、実際には出射面12側から見たときは入射面13側の凹凸形状も、入射面13側から見たときは出射面12側の凹凸形状も視認できる。しかし、出射面12側および入射面13側から見た入射面13側および出射面12側に形成された各凹凸形状は、レンズ部材11の屈折率の関係等で歪んで見えるので、
図1および
図2では、説明の便宜上、レンズ部材11が透明体でないものとしてその出射面12側の形状および入射面13側の形状を示している。
【0023】
図4は、
図3に示すフレネルレンズ10の中央縦断面図の右半分を拡大して描いた図で、説明の便宜のため、奥行(立体感)を付して描かれている。
図4においては、薄墨を付した部分が、レンズ部材11の切断面を表わしている。
図4を参照して、レンズ部材11の出射面12の中心部14に形成された凸レンズ140は、同心円状に形成された5段の円(環)状凸レンズ14e,14d,14c,14a,14bを含んでいる。
【0024】
そして、複数段の凸レンズ14e,14d,14c,14a,14bは、それぞれ、弧状の出射面141,142,143,144,145を有している。
この実施形態における特徴は、凸レンズ14e,14d,14cの各弧状の出射面141,142,143から出射される光は、中心光軸(中心光軸とは、フレネルレンズ10の中心を入射面13から入射し、真っ直ぐ垂直上方に透過して出射面12の中心から真っ直ぐ前方へ出射される光の進路(光軸)をいう。)L0へ向かって傾斜した方向に光軸が延びている。この場合の傾斜角度Φ10は、Φ10=15°になるように設計されている。
【0025】
また、この実施形態では、同心円状に形成された5段構成の凸レンズ140のうち、中央に位置する凸レンズ14cの有する出射面143は、他の凸レンズ14e,14d,14a,14bの有する出射面141,142,144,145に比べて、その起立角度(起立角度とは、出射方向に直交する水平面に対する角度をいう。)αが、大きくされている。
【0026】
ここで「中央に位置する」とは、おおよそ、
(1)凸レンズ140の半径を2分する位置、または
(2)凸レンズ140の半径上で、利用角度Φ1の半分の角度に相当する位置、
をいう。
さらに、凸レンズ14cの出射面143の起立角度αを大きくしたことにより、5段の中央に位置する凸レンズ14cの高さ(レンズ部材11の出射面12における突出高さ)が、他の凸レンズ14e,14d,14a,14bに比べて最も高くなるように設計されている。
【0027】
さらに、中央に位置する凸レンズ14cの外側に位置する2つの凸レンズ14a,14bは、その高さが、外に向かって低くされている。よって、高さで3つの凸レンズを比較すると、凸レンズ14c>凸レンズ14a>凸レンズ14bとなっている。
また、出射面12の中心部に形成された5段の凸レンズ140のうち、外側の凸レンズ14a,14bの出射面144,145から出射される光は、その光軸が中心光軸L0と平行に延びる光となるように設計されている。すなわち、凸レンズ14a,14bから出射される光の出射角Φ11は、Φ11=0°に設計されている。
【0028】
フレネルレンズ10の入射面13の下方の所定位置に光源LSを配置した場合において、光源LSの光が出射面12に形成された複数段の凸レンズ140を透過して前方へ出射される角度、換言すれば、光源LSからの出射光を凸レンズ140が利用できる角度範囲である凸レンズ140の利用角度Φ1は、この実施形態ではΦ1=40°に設計されている。
【0029】
次に、入射面13に形成された反射型レンズ150に関して説明をする。
反射型レンズ150は、レンズ部材11の入射面13の外側部15に、内方から外方へ向かって複数段、具体的には5段に形成されている。5段の反射型レンズ150(151,152,153,154,155)は平面視で同心円状に配列形成されており、利用角は単レンズみなしで等間隔に形成されている。反射型レンズ150は、全て、TIR(全反射)レンズとされている。従って、光源LSからレンズ部材11の入射面13へ照射される光のうち、外側部15に形成された反射型レンズ150へ到達する光は、反射型レンズ150(151,152,153,154,155)で全反射され、レンズ部材11内を透過して、出射面12の外側部15から前方へ出射される。
【0030】
この実施形態では、レンズ部材11の出射面12には、中心部14に凸レンズ140が形成され、外側部15は外方へ向かって傾斜した出射面120を構成している。この出射面120は、入射面13側へ傾斜した下がり傾斜面となっていて、この実施形態では5°の下がり傾斜が付けられている。
出射面120に、下がり傾斜角度5°を付与することにより、出射面120を所望の屈折型凸レンズとして機能させることができ、所望の出射角で光を出射させることができる。なお、出射面120に付与する傾斜角度は、下がり傾斜で5°(−5°)に限定されるものではなく、±20°程度以内の傾斜角としてもよい。
【0031】
出射面120から出射される光は、中心光軸L0に対して中心光軸L0方向へ傾斜した光軸を有する光として出射される。より具体的には、反射型レンズ151,152で反射されて出射面120から前方へ出射される光は、中心光軸L0寄りに傾斜角度Φ21=25°を有する出射光となる。また、反射型レンズ153,154,155で反射されて出射面120から出射される光は、中心光軸L0に対して傾斜角度Φ31=35°の中心側へ傾斜した出射光となる。
【0032】
以上のような構成であるから、レンズ部材11の出射面12から出射される光は、その中心部分で中心光軸L0側へ集束され、その周囲においては中心光軸と平行に出射され、さらにその外側においては中心光軸L0側に向かって集束される光として出射される。従って、このフレネルレンズ10から出射される光は、外方へ広がって分散せず、所定の範囲内に集まるように照射されるから、当該フレネルレンズ10を用いると、所定の範囲内に高光量の光を照射することができる。換言すれば、このフレネルレンズ10は、スポットライト用のレンズとして好適なレンズということができる。
【0033】
光源LSの発する光が反射型レンズ150の最も外側のレンズ155で反射されて利用される範囲、すなわちフレネルレンズ10の最大の利用角度Φ2は、Φ2=79.4°に設計されている。
さらに、
図3に示すように、このフレネルレンズ10は、全体の形状を見ると、その下面である入射面13が、入射方向後方(光源)から見て、その中心部を中心に凹湾曲した全体形状を有している。このように、入射面13全体が中心部を中心に凹湾曲した形状とすることにより、光源の熱が入射面中央部に集中するのを防ぐことができる。すなわち、光源から入射面中央部までの距離を、入射面を凹湾曲させることによって遠ざけることができるからである。
【0034】
また、
図4を参照して、反射型レンズ150による入射−反射半径距離の関係を説明しておくと、L1=4mm(反射型レンズ151の入射−反射半径距離)、L2(反射型レンズ152,153,154,155の入射−反射半径距離)は、L2=3.5mmに設計されている。
さらに、この実施形態では、出射面12の中心部14に形成した凸レンズ140のうちの最外方の凸レンズ14bと、外側部15との境界部の段差にΦ40=3°の抜き勾配を形成している。このように抜き勾配を入れることにより、フレネルレンズ10を成型時に、金型から抜く際の逆テーパーに起因する破壊を防ぐことができる。なお、抜き勾配を入れても、光が効率よく出射されるよう光学設計(各パラメータの調整)がされている。
【0035】
図5は、照明器具用フレネルレンズ10が組み込まれた照明器具30の一例を示す斜視図である。照明器具30は、ベース31と、ベース31から伸び出るアーム32により保持されたランプ部33とを有する。ランプ部33は、短軸筒状をし、その一端面34(図では右下側面)から光を照射する。一端面内には、上述したフレネルレンズ10が配置されており、図示しないランプ部33内に内蔵された図示しないLED光源の出射光は、フレネルレンズ10を通して一端面34から右下方へ照射される。
【0036】
ベース31は、天井面や壁面等に固定されるが、アーム32で保持されたランプ部33は、その向きおよび角度を自在に可変できる。よって、ランプ部33の一端面34を所望の向き、角度に調整して、光を照射することができる。
この発明のフレネルレンズは、上記の実施例に限定されるものではなく、円板状のフレネルレンズ以外に、長方形板状のフレネルレンズにも適用することができる。
【0037】
たとえば、
図6に示すように、長方形板状レンズ部材110と、当該板状レンズ部材110の出射面12側に形成された複数段の屈折型凸レンズ140と、当該板状レンズ部材110の入射面13側に形成された複数段の反射型レンズ150とを有するフレネルレンズ100として構成することも可能である。
このようなフレネルレンズ100を用いると、直線状に等間隔で配列された複数個の光源としてのLEDが発する光を、フレネルレンズ100を通して一定幅で横に長い光として高効率に照射することができる。
【0038】
その他、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。特に、実施形態において説明したレンズの入射角、出射角、利用角度、傾斜角度、入射−反射半径距離等の具体的な数値は一例にすぎない。この発明は、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10,100 フレネルレンズ
11,110 レンズ部材
12 出射面
13 入射面
14 中心部
15 外側部
30 照明器具
120 出射面
140,14a,14b,14c,14d,14e 凸レンズ
150,151,152,153,154,155 反射型レンズ(TIRレンズ)
141,142,143,144,145 弧状の出射面
L0 中心光軸
LS 光源