特許第6094711号(P6094711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部興産株式会社の特許一覧

特許6094711ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータフィルム、および蓄電デバイス
<>
  • 特許6094711-ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータフィルム、および蓄電デバイス 図000015
  • 特許6094711-ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータフィルム、および蓄電デバイス 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094711
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータフィルム、および蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20170306BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20170306BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20170306BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20170306BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20170306BHJP
【FI】
   C08J9/00 ACES
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   B32B5/32
   B32B27/32 E
   H01M10/0566
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-116686(P2016-116686)
(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-25294(P2017-25294A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-124275(P2015-124275)
(32)【優先日】2015年6月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-149472(P2015-149472)
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】崎本 亮
(72)【発明者】
【氏名】川端 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】南雲 広樹
(72)【発明者】
【氏名】安達 大雅
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−023673(JP,A)
【文献】 特開2012−161936(JP,A)
【文献】 特開2011−028883(JP,A)
【文献】 特開2014−141644(JP,A)
【文献】 特開2010−247446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
B32B 1/00−43/00
H01M 2/14− 2/18
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンとポリプロピレンとのうちの少なくともどちらか一方を含み、
圧縮弾性率が95MPa以上150MPa以下であり、
表面と裏面について測定した膜面の表面粗さ(Ra)の平均値(Ra(ave))が0.01μm〜0.30μmである、ポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
17.3MPaの圧力を付与した後に、圧力を解放した際のガーレ値が、圧力を付与する前のガーレ値より増加し、その増加率が0.5%以上29.0%以下である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
11.5MPaの圧力を付与した後に、圧力を解放した際のガーレ値が、圧力を付与する前のガーレ値より増加し、その増加率が0.05%以上6.0%以下である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項4】
2.7MPaを付与したときの圧縮方向の応力ひずみ曲線におけるひずみ量が、0.010〜0.055である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項5】
TD方向の熱収縮が−1.0〜1.0%であり、かつMD方向の熱収縮率が0.5〜8.0%である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項6】
ポリオレフィンが、ポリエチレンもしくはポリプロピレン樹脂からなる請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項7】
ポリプロピレン層とポリエチレン層とが積層された請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項8】
ポリエチレン層の両面にポリプロピレン層を設けた請求項7に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項9】
シャットダウン温度が130〜140℃、メルトダウン温度が175以上190℃以下である請求項8に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項10】
ガーレ値が100〜600秒/100cc、膜厚が10〜40μm、突刺強度が200〜700gf、水銀ポロシメータによる極大細孔径が0.05〜0.3μmの範囲である請求項9に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項11】
前記ポリオレフィン微多孔膜上に、耐熱性微粒子を主成分とし樹脂バインダを含む耐熱多孔質層を層設した請求項1から10のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜を用いた蓄電デバイス用セパレータフィルム。
【請求項13】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜と、少なくとも前記ポリオレフィン微多孔膜に含浸される非水電解質と、を備えた蓄電デバイスであって、
2.7MPaの圧力を付与して測定したDC−R測定による抵抗値が、圧力を付与する前の抵抗値を100%としたとき、100.1〜105.0%である蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用のセパレータフィルムとして用いられるポリオレフィン微多孔膜に関し、厚み方向の耐圧特性に優れたポリオレフィン微多孔膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの中には、正負両極の短絡防止のためにポリオレフィン微多孔膜からなるセパレ−タフィルムが介在している。近年、高エネルギー密度、高起電力、自己放電の少ない蓄電デバイスとして、特にリチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等が開発、実用化されるようになってきた。
リチウムイオン二次電池の負極としては、例えば金属リチウム、リチウムと他の金属との合金、カ−ボンやグラファイト等のリチウムイオンを吸着する能力又はインターカレーションにより吸蔵する能力を有する有機材料、リチウムイオンをド−ピングした導電性高分子材料等が知られている。また正極としては、例えば(CFで示されるフッ化黒鉛、MnO、V、CuO、AgCrO、TiO等の金属酸化物や硫化物、塩化物が知られている。
【0003】
非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒にLiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO等の電解質を溶解したものが使用されている。
しかしながら、リチウムは特に反応性が強く、外部短絡や誤接続等により異常電流が流れた場合、電池温度が著しく上昇することがある。この場合、電池を組み込んだ機器に熱的ダメ−ジを与える懸念がある。このような危険性を回避するために、単層または積層のポリオレフィン微多孔膜を、リチウムイオン2次電池やリチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイス用のセパレータフィルムとして用いることが提案されている。
【0004】
これらの単層又は積層のポリオレフィン微多孔膜を蓄電デバイスのセパレ−タとして使用すると、両極間の短絡防止やデバイスの電圧の維持等を図ると共に、過度の温度上昇による発火等の危険を防止し安全を確保することができる。単層又は積層のポリオレフィン微多孔膜は、異常電流等でデバイスの内部温度が所定温度以上に上昇したときに、多孔質膜の孔を塞いで無孔化し、両極間にイオンが流れないように電気抵抗を増大させ、イオンを流す機能を停止する。過度の温度上昇による発火等の危険を防止する機能は、蓄電デバイス用のセパレ−タフィルムにとって極めて重要であり、一般に無孔化或いはシャットダウン(以下、SD)と呼ばれる。
【0005】
蓄電デバイス用のセパレ−タフィルムとしてポリオレフィン微多孔膜を用いた場合、無孔化開始温度が低すぎると、蓄電デバイスの僅かな温度上昇でイオンの流れが阻止されるため実用面で問題がある。これに対し、無孔化開始温度が高すぎると、発火等を引き起こすまでイオンの流れを阻害できない危険性があり安全面で問題がある。一般に無孔化開始温度は110〜160℃であり、好ましくは120〜150℃であると考えられている。
また、蓄電デバイス内の温度が無孔化維持上限温度を越えて上昇した場合、セパレータフィルムが溶断して破れが生じることがある。この場合、破れにより再びイオンの移動が可能となり、更なる温度上昇が引き起こされる。このような理由から、セパレータフィルムに用いられるポリオレフィン微多孔膜には、蓄電デバイス用セパレ−タとして適切な無孔化開始温度を有し、無孔化を維持できる上限温度が高く、無孔化を維持できる温度領域が広いという特性が要求されている。さらに、セパレ−タフィルムに用いられるポリオレフィン微多孔膜としては、無孔化に関する特性の他に、電気抵抗が低いこと、引張強度等の機械的強度が高いこと、厚みムラや電気抵抗等のバラツキが小さいこと等が要求される。
【0006】
蓄電デバイス用セパレータフィルムに用いられる単層又は積層多孔膜を製造する方法としては様々な提案がなされている。特に多孔化の方法から大別すると、湿式法と乾式法に分類することができる(特許文献1、2参照)。
【0007】
例えば特許文献1には、延伸することにより微多孔フィルムを製造する湿式法が開示されている。具体的には、微多孔フィルムを形成するマトリクス樹脂であるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の樹脂と、添加物とを、添加・混合した樹脂を用いてフィルムを製膜する。そして、フィルムをシート化した後に、マトリクス樹脂と添加物とからなるフィルムから添加物を抽出する。これにより、マトリクス樹脂中に空隙を形成せしめ、これを延伸することにより微多孔フィルムが製造される。添加物としては、樹脂と混和する溶媒、可塑剤、無機微粒子などが提案されている。
【0008】
微多孔フィルムの製造方法として湿式法を用いた場合、溶媒等の添加物を含有させることにより押出時の樹脂粘度を低下させることができる。そのため、多層膜の原料である高分子として、高分子量の原料を用いた製膜が可能となり、突き刺し強度や破断強度などの機械物性が向上させることが容易となる。しかし、溶媒の抽出工程に時間と労力を要し、生産性の向上が困難であった。
【0009】
また、湿式法で得られた微多孔膜の細孔径は比較的大きく、空孔率に対し透気度(ガーレ値)が低い傾向がある。このような微多孔膜は、自動車用途のような高レートの充放電を行うとデンドライトが比較的容易に生成される等の問題があった。また、SD特性を向上させようとした場合にメルトダウン特性が低下する、もしくは調整が困難となるような問題もあった。
【0010】
乾式法としては例えば特許文献2に示すように、延伸時の開裂を利用して空隙を形成する方法が提案されている。具体的には、溶融押出時に高ドラフト比の設定を採用することにより、シート化した延伸前のフィルム中のラメラ構造を制御する。これを一軸延伸することでラメラ界面での開裂を発生し、空隙が形成される。
【0011】
微多孔膜の製造方法として乾式法を採用した場合、湿式法では必須となっていた溶媒の抽出工程を必要としない。そのため湿式法に比べて生産性に優れるが、延伸速度が制限されるため、更なる生産性の向上は困難であった。
【0012】
乾式法で得られた多孔膜の細孔径は、湿式法と比較すると小さく、空孔率に対しガーレ価が高い傾向がある。そのため、例えば、自動車用途向けの蓄電デバイスのような高レートの充放電を行った場合においても、デンドライトの生成等を効果的に抑制できると考えられている。
ところで、電池の安全性を高める為に、セパレータに耐熱性が求められている。特に、無機粒子をセパレータフィルムに塗工することで、耐熱塗工層を形成させることで耐熱性が向上することが知られている(特許文献7)。
【0013】
近年、自動車用途向け蓄電デバイスが実用化されるようになり、高容量化、高レート化が進んでいる。蓄電デバイスが充放電を繰り返す事により、デバイス内部では正・負極活物質の膨張・収縮を繰り返す。モジュール自体が充放電にて膨張・収縮しない様に、デバイスや、蓄電デバイスを複数個スタックしてモジュールとする際に、拘束部材により蓄電デバイスに圧力を加えながら、モジュール用のケースに収納することが一般的に知られている(特許文献3参照)。
【0014】
自動車用途向け蓄電デバイスとして、例えばリチウムイオン二次電池では、扁平状に巻回した後に厚み方向に押しつぶして缶に収納する方式や、ラミネート式のセルが用いられることが知られている。このような蓄電デバイスでは、使用環境においては外部からの拘束部材等により、セパレータフィルムの積層方向に一定の圧力が作用し続けることになる。さらに、デバイス内部では、充放電の度に、膨張・収縮による圧力がセパレータフィルムの積層方向に作用する。
【0015】
一方、デバイス高容量化を図る為、デバイスを構成する正・負極活物質の高密度化が進み、デバイス内に占める活物質の割合が増し、非水電解質液の割合が減じている。デバイスを充放電する度に、セパレータフィルムが圧縮された後に元の厚みに戻る、といった挙動が繰り返され、非水電解液がセパレータ内の空孔から放出・再導入が繰り返される。このため、デバイス内の空間における非水電解液の占める割合が低くなると、放出された非水電解液がセパレータの空孔に内に十分に戻りきれない状況が発生する可能性がある。
さらに、正・負極活物質からの圧力を受けやすいセパレータの表面近傍が強く圧縮されることから、セパレータの表面近傍で非水電解液の分布が不均一になりやすく、非水電解液が不足した箇所付近に接している正・負極活物質が充放電に十分に寄与できなくなる。その結果、電極内で充電状態の不均一化が進行し、正・負極活物質が劣化する、等といった、セパレータフィルムの積層方向の耐性に起因する充電デバイスの特性低下が指摘されている(特許文献4参照)。
【0016】
上記のような問題を解決するために、特許文献5に示されるように、セパレータフィルムの積層方向の外力に対しスポンジのように柔軟に追随するセパレータフィルムが提案されている。
しかしながら、柔軟に追随するだけでは、セパレータフィルムの圧縮により排出された非水電解質が戻りきれないがために発生する特性低下を抑制できない。
他方、特許文献6に示されるように、短絡や低温サイクル特性が優秀な電池を供給する為に、圧縮方向の外力に対し一定の耐久性を示すセパレータも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭55−131028号公報
【特許文献2】特公昭55−32531号公報
【特許文献3】特許第5459139号公報
【特許文献4】特開2007−087690号公報
【特許文献5】特許第4209985号公報
【特許文献6】特許第5031791号公報
【特許文献7】特許第5259721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、例えば自動車用途向け蓄電デバイスのように、デバイスの外部から膨張・収縮を抑制するような拘束部材を用いたり、デバイスを圧縮するような工程が含まれる蓄電デバイスに用いられるセパレータフィルムには、厚み方向に対するより優れた耐久性が求められている。さらに、シャットダウンやメルトダウン、熱収縮率等の安全性、そしてセパレータフィルムとしての特性とのバランスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記の課題に鑑みて試行錯誤した結果、蓄電デバイス用セパレータを構成するポリオレフィン微多孔膜の厚み方向の荷重に対する耐性がより改善され、かつ、安全性も維持でき、セパレータフィルムとしての特性のバランスに優れた、ポリオレフィン微多孔膜を見出すに至った。
【0020】
本発明のポリオレフィン微多孔膜が有する特徴は以下の(1)〜(9)のとおりである。
(1)
本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜は、圧縮弾性率が95MPa以上150MPa以下であることを特徴としている。圧縮弾性率は、好ましくは100MPa以上145MPa以下であり、より好ましくは105MPa以上145MPa以下であり、さらに好ましくは105MPa以上130MPa以下である。
(2)
上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜において、17.3MPaの圧力付与した後に、圧力を解放した際のガーレ値が、圧力を付与する前のガーレ値より増加し、その増加率が0.5%以上29.0%以下であってもよい。
(3)
上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜において、11.5MPaの圧力を加えた後に、圧力を解放した際のガーレ値が、圧力を付与する前のガーレ値より増加し、その増加率は0.1%以上6.0%以下であってもよい。
また、5.8MPa以下の圧力を加えた後に、圧力を解放した際のガーレ値が、圧力を付与する前のガーレ値より増加し、その増加率は0.0%以上2.9%以下であってもよい。
上記11.5MPa以上かつ23.1MPa以下の範囲では、付与される圧力に応じたガーレの増加率は、だいたい0.01〜2.50%/MPaである。
また、11.5MPa以上かつ17.3MPa以下の範囲では、付与される圧力の増加に応じたガーレ値の増加率はだいたい0.01〜1.70%/MPaであり、好ましくは0.01〜1.00%/MPaである。
(4)
また上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜において、は、膜面の表面粗さ(Ra)を表面と裏面について測定し、その平均値(Ra (ave))が0.01μm〜0.30μmの範囲であってもよい。膜面の表面粗さは、より好ましくは、0.05〜0.25μmの範囲であり、さらに好ましくは0.05〜0.23μmの範囲である。
蓄電デバイス用セパレータフィルム(以下、単にセパレータという)に用いるポリオレフィン微多孔膜の厚みについては精度も重要視されてきている。厚み方向に圧縮されるような用途に用いられる際には、表面粗さRaの値が大きいと圧縮によりセパレータ表面が潰れることによりセパレータ自体の厚みも変化すると共に、セパレータに空いている微多孔の大きさも変化する。そのため、略0.30μm以下の表面粗さに調整することが望ましい。この表面粗さはセパレータに空いている孔の大きさに起因し、略0.01μm以上となる。
(5)
上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜において、2.7MPaを付与したときの圧縮方向の応力ひずみ曲線におけるひずみ量が、0.010〜0.055であってもよい。ひずみ量は、好ましくは0.020〜0.050であり、より好ましくは0.030〜0.050である。
(6)
上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜において、TD方向の熱収縮が−1.0〜1.0%であり、かつMD方向の熱収縮率が0.5〜8.0%であることが好ましい。TD方向の熱収縮は、好ましくは−0.5〜1.0%である。
(7)
上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜において、シャットダウン温度(SD温度;無孔化温度)は、130〜140℃、メルトダウン温度(MD温度;無孔化維持温度)は175以上190℃以下であることが好ましい。
(8)
上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜において、ガーレ値が100〜600秒/100ccであり、且つ、膜厚が10〜40μmであり、かつ、突刺強度が200〜700gfであり、かつ、水銀ポロシメータによる極大細孔径が0.05〜0.30μmの範囲であってもよい。
(9)
上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜では、ポリオレフィンが、ポリエチレンとポリプロピレンとのうちの少なくともどちらか一方を含んでもよい。中でも、ポリオレフィン微多孔膜が、ポリエチレンおよびポリプロピレン樹脂からなり、ポリエチレン層の少なくとも一方の面上にポリプロピレン層を設けた構成であることが好ましい。さらに、上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン層の両面にポリプロピレン層を設けた層構造を有することが好ましい。
(10)
本発明の一態様にかかる蓄電デバイスは、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜と、少なくともこのポリオレフィン微多孔膜に含浸される非水電解液と、を備えており、2.7MPaの圧力を付与した状態で測定したDC−R測定による抵抗値が、圧力を付与する前の抵抗値を100%としたとき、100.1〜105.0%である。
上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜を用いた蓄電デバイス用セパレータとして、ポリオレフィン微多孔膜上にフッ素系樹脂などの有機物やアルミ化合物やチタン化合物などの無機物を塗布したものを用いてもよい。
(11)
本発明の一態様にかかる蓄電デバイスは、上記態様にかかるポリオレフィン微多孔膜の上に無機粒子を主成分とした耐熱多孔質層を塗工等の工程により層設することも可能である。この耐熱多孔質層は、耐熱性微粒子を主成分として樹脂バインダを含むものである。耐熱多孔質層の厚みは1〜15μmであり、好ましくは、1.5〜10μm、さらに好ましくは、2.0〜8.0μmである。耐熱塗工層の厚みが、1μm以下では必要とする耐熱性が得られず、厚みが15μm以上になると、耐熱性微粒子の接着性が悪く、これら微粒子が欠落する等の不具合が生じることがある。
耐熱多孔質層は、樹脂バインダとして耐熱性微粒子100質量部に対して0.1〜5質量部のN−ビニルアセトアミドの重合体または水溶性セルロース誘導体と、耐熱性微粒子100質量部に対して1質量部以上の架橋アクリル樹脂とを含み、耐熱多孔質層における樹脂バインダの含有量は、耐熱性微粒子100質量部に対して1.1〜30質量部であることが好ましい。また、樹脂多孔質膜と耐熱多孔質層との180°での剥離強度は、0.6N/cm以上5N/cm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜は、厚み方向に優れた耐久性を有する。そのため、本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜を蓄電デバイス用のセパレータとして用いることにより、蓄電デバイスの外部から膨張・収縮を抑制するような拘束部材を用いる場合や、デバイスを圧縮するような工程行う場合においても、セパレータフィルムは優れた耐性を発揮する。つまり、本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜を用いたセパレータフィルムは、圧縮された場合でも蓄電デバイスの特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1と比較例1の応力−ひずみ曲線を示した。
図2】実施例1と比較例1の微多孔膜に印加した圧力と、ガーレ値の変化率を示した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜は、例えば自動車用途向け蓄電デバイスのように、デバイスの外部から膨張・収縮を抑制するような拘束部材を用いたり、デバイスを圧縮するような工程が含まれる蓄電デバイス用のセパレータにおいても、厚み方向へのより優れた耐久性が示される。その結果、本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして用いることにより、蓄電デバイスの特性を維持できることを見出した。以下に一例として本発明を説明するが、本発明の内容は以下の内容に限定されるものではない。
【0024】
以下に、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等のなどの蓄電デバイスに用いられるセパレータについて説明する。セパレータの形状は、例えばリチウムイオン二次電池の形状等に応じて適宜調整するとよい。同様に、正極および負極の形状もリチウムイオン二次電池の形状に応じて適宜調整するとよい。
【0025】
セパレータは、例えばポリオレフィン微多孔膜で構成され、単層構造もしくは多層構造を有する。セパレータは、ポリオレフィンからなる樹脂層のみで構成してもよいが、ポリオレフィンからなる樹脂層と、この樹脂層の表面上に形成された多孔質の耐熱層とを備えてもよい。また、セパレータは、さらに接着層を備えてもよい。耐熱層を備えた場合、耐熱層は樹脂層の熱収縮を抑え、樹脂層の破膜に起因する電池の内部短絡を防止する機能を高められることが期待できる。耐熱層は、樹脂層の一方の面にのみに設けてもよいし、両方の面に設けてもよい。
【0026】
ポリオレフィン微多孔膜の樹脂材料としては、例えば、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン系の樹脂を用いることができる。樹脂層の構造は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造としては、PP層と、PP層上に積層されたPE層と、このPE層上に積層されたPP層とから構成される三層構造があげられる。多層構造の層数は三層に限らず、二層であっても四層以上であってもよい。
【0027】
セパレータとしては、例えば、一軸延伸または二軸延伸されたポリオレフィン微多孔膜を好適に用いることができる。長手方向(MD方向)に一軸延伸されたポリオレフィン微多孔膜は、適度な強度を備えつつ、幅方向の熱収縮が少ないため、特に好ましい。一軸延伸されたポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして用いると、長尺シート状の正極および負極とともに巻回された場合、長手方向の熱収縮も抑制することが可能となる。このため、長手方向に一軸延伸されたポリオレフィン微多孔膜は、巻回された電極体を構成するセパレータとして特に好適である。
【0028】
ポリオレフィン微多孔膜の厚みは、特に限定されない。ポリオレフィン微多孔膜の厚みは、例えば、8μm〜40μm程度が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の厚みが厚すぎると、イオン伝導性が低下する傾向が見られる。これに対し、ポリオレフィン微多孔膜の厚みが薄すぎると、破膜が生じやすくなる傾向が見られる。ポリオレフィン微多孔膜の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)により、微多孔膜の断面を撮影した画像を画像解析すること、もしくは、打点式の厚み測定装置等により求めることができる。
【0029】
以下に、上述のセパレータを作製するための原反を製造する工程について説明する。
本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜は、例えば、原反の製造工程、ラミネート工程、延伸工程の3つの工程を経ることで製造される。
各層を構成するポリプロピレン及びポリエチレンは、それぞれ各層で分子量が等しくても、異なっていてもよい。ポリプロピレンは、立体規則性の高いものが好ましい。またポリエチレンは、密度が0.960以上の高密度ポリエチレンがより好ましい。ポリエチレンには、中密度ポリエチレンを用いることもできる。これらポリプロピレンとポリエチレンには界面活性剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0030】
[原反工程]
セパレータを作製するための原反フィルムは、厚みが均一で、原反フィルムを複数枚積層させた後に延伸することにより多孔化する性質を備えていればよい。原反フィルムは、セパレータの構成に応じて、複数種のものを作製する。原反フィルムの成形方法は、Tダイによる溶融成形が好適である。この他に、インフレーション法や湿式溶液法等を採用することもできる。原反フィルムをTダイにより、溶融成形する場合、一般に樹脂の溶融温度より20〜60℃高い温度で行う。また、この際のドラフト比の設定は、10〜1000とすることが好ましく、50〜500とすることがより好ましい。また、原反フィルムの引取速度は、特に限定はされないが、10〜200m/min.で成形されることが一般的である。引取速度は、最終的に得られるポリオレフィン微多孔膜の特性(複屈折及び弾性回復率は延伸後のポリオレフィン微多孔膜の孔径、空孔率、層間剥離強度、機械的強度等)に影響するので重要な要素の一つである。また、ポリオレフィン微多孔膜の表面粗さを一定の値以下に抑える為には、原反フィルムの厚みの均一性が重要である。原反の厚みに対する変動係数(C.V.)は、0.001〜0.030の範囲に調整することが望ましい。
【0031】
原反フィルムを積層した後、もしくは、多層原反押出押装置にて原反フィルムを製膜した後に、原反フィルム(多層フィルム)の外層となる樹脂層に、微粒子を混合してもよい。微粒子は、原反フィルムの易滑剤として機能する。微粒子は、原反フィルムの表面粗さや、延伸工程後の多孔質フィルムの表面粗さに影響を及ぼさない程度の量を混合することが好ましい。
【0032】
微粒子は、無機絶縁体からなる粒子(以下単に「無機絶縁体粒子」という)を用いることが好ましい。無機絶縁体粒子は、電気絶縁性を有する無機材料である。樹脂層に混合する無機絶縁体粒子は、酸化電位が、リチウムに対して+4.5V以上であることが好ましい。酸化電位が十分高いことで、無機絶縁体粒子を含むポリオレフィン微多孔膜をリチウムイオン二次電池用セパレータとして用いた場合の信頼性及び安全性が高まる。また、リチウムイオン二次電池の電気化学的な安定性も高まる。この観点から、無機絶縁体粒子の酸化電位は、リチウムに対して+5.0V以上であることがより好ましい。
【0033】
無機絶縁体粒子を構成する無機絶縁体としては、酸化物、水酸化物、無機窒化物、難溶性のイオン結晶、共有結合性結晶、粘土等を用いることができる。酸化物及び水酸化物としては、Si、Al、Ti、Mg、Zn、Na、Ca、Liから群から選ばれる1種又は2種以上の無機元素を主成分とするものが挙げられる。無機窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などが挙げられる。難溶性のイオン結晶としては、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。共有結合性結晶としては、シリコン、ダイヤモンドなどが挙げられる。粘土としては、モンモリロナイトなどが挙げられる。
特定元素を主成分とする酸化物は、該酸化物換算で、該特定元素の質量比率が50質量%以上であることが好ましい。例えば、酸化物としては、単一元素の酸化物として、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、TiO、マグネシア、酸化亜鉛等が挙げられる。2種以上の無機元素の酸化物(複合酸化物)の例としては、アルミノシリケート、MgAl24等が挙げられる。アルミノシリケートは、x1M1O・x2M2O・yAl・zSiO・nHOで表される。M1はNa、Liから選ばれる1種以上であり、M2はCa、Ti、Mgから選ばれる1種以上であり、x1及びx2はそれぞれ独立して0以上2.0以下の数であり、yは0.5以上2.0以下の数であり、zは1.0以上5.0以下の数であり、nが0以上の数である。無機金属の水酸化物としては、水酸化アルミニウム等が挙げられる。無機元素の酸化物又は水酸化物は、鉱物資源由来物質またはこれらの人造物を含む。無機絶縁体は、1種又は2種以上の無機絶縁体を組み合わせて用いることもできる。無機絶縁体粒子は、上述のいずれのものでも用いることができるが、アルミノシリケート等の複合酸化物が特に好ましい。
【0034】
無機絶縁体粒子の平均粒径Dは、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましく、1μm以上3μm以下であることが更に好ましい。また、無機絶縁体粒子の添加量は、添加する樹脂層に対する重量比で例えば、500〜8000ppm程度が好ましく、1000〜6000ppmがより好ましく、2500〜5000ppmがさらに好ましい。
【0035】
[ラミネート工程]
原反工程により製造されたポリプロピレンフイルムと、ポリエチレンフイルムとを積層する工程について記載する。
ポリプロピレンフイルムとポリエチレンフイルムとは、熱圧着によって積層される。複数枚のフィルムの積層は、加熱されたロール間に積層フィルムを通し、熱圧着により行う。詳細には、各フィルムを複数組の原反ロールスタンドから巻きだし、それぞれを積層し、加熱されたロール間でニップすることで、各フィルムが圧着され、積層される。積層時には、各フィルムの複屈折及び弾性回復率が実質的に低下しないように熱圧着することが必要である。層構成は、三層構成の場合や二層構成の場合等、限定されない。三層構成の場合として、例えば、三層の表と裏がポリプロピレンで中央がポリエチレンになるように、即ち外層がポリプロピレンで内層がポリエチレンになるように積層する(PP/PE/PP)構成、外層にポリエチレン、内層がポリプロピレンになるように積層する(PE/PP/PP)構成等が挙げられる。また、二層構成の場合として、ポリプロピレンとポリエチレンとを張り合わせた(PP/PE)構成がある。層構成は、限定されるものではないが、外層がポリプロピレンで内層がポリエチレンになるように3層積層する(PP/PE/PP)構成が最も好適である。この構成は、カールが少なく、外傷を受け難い。また、この構成のポリオレフィン微多孔膜は、耐熱性、機械的強度等にも優れる。さらに、この構成のポリオレフィン微多孔膜を蓄電デバイス用セパレータとした場合の安全性、信頼性等の特性も満たす。
【0036】
複数層の原反フィルムを熱圧着させる加熱されたロ−ルの温度(熱圧着温度)は、120〜160℃であることが好ましく、125〜150℃がより好ましい。温度が低すぎると、フィルム間の剥離強度が弱く、その後の延伸工程で剥がれが生じる。また逆に高すぎると、ポリエチレンが溶融し、フィルムの複屈折及び弾性回復率が大きく低下する。ポリオレフィン微多孔膜の剥離強度は、3〜90g/15mmの範囲が好適である。積層フィルムの厚みは、特に制限されないが、一般には10〜60μmが適当である。
【0037】
[延伸工程]
積層フィルムは、延伸工程にてPP、PEの各層が同時に多孔質化される。
延伸工程は、熱処理ゾーン(オーブン1)、冷延伸ゾーン、熱延伸ゾーン(オーブン2)、熱固定ゾーン(オーブン3)の4つのゾーンにより行われる。
【0038】
積層フィルムは、延伸される前に熱処理ゾーンにて熱処理される。熱処理は、加熱空気循環オ−ブンもしくは加熱ロ−ルにより行われる。積層フィルムの熱処理は、積層フィルムを定長もしくは長さが10%以上増加しないように引っ張った引張下で行われる。熱処理温度は、110〜150℃の範囲が好ましく、115〜140℃の範囲がより好ましい。温度が低いと十分に多孔化せず、また高すぎるとポリエチレンの溶融が生じる。熱処理時間は3秒〜3分間程度でよい。
【0039】
熱処理された積層フィルムは、冷延伸ゾーンにて延伸される。その後、熱延伸ゾーンを経て、多孔化し、積層多孔質フィルムとなる。いずれか一方の延伸だけではポリプロピレンとポリエチレンが十分に多孔化されにくく、積層多孔質フィルム(ポリオレフィン微多孔膜)を電池用セパレータとして用いた際の特性が悪くなる。
【0040】
冷延伸ゾーンにおける温度は、マイナス20℃〜プラス50℃であることが好ましく、20〜40℃がより好ましい。延伸温度が低すぎると、作業中にフィルムの破断が生じ易くなる。一方、延伸温度が高すぎると、多孔化が不十分になる。低温延伸の倍率は、3〜200%の範囲が好ましく、5〜100%の範囲がより好ましい。低温延伸の倍率が低すぎると、空孔率が小さいものしか得られず、低温延伸の倍率が高すぎると、所定の空孔率と孔径のものが得られなくなる。
【0041】
低温延伸した積層フィルムは、熱延伸ゾーンで高温延伸される。高温延伸の温度は70〜150℃が好ましく、80〜145℃がより好ましい。この範囲を外れると十分な多孔化がされにくい。高温延伸の倍率(最大延伸倍率)は、100〜400%の範囲である。最大延伸倍率が低すぎると積層多孔質フィルム(ポリオレフィン微多孔膜)のガス透過率が低くなり、最大延伸倍率が高すぎると、積層多孔質フィルム(ポリオレフィン微多孔膜)のガス透過率が高くなりすぎる。
【0042】
低温延伸と高温延伸とをした後、オーブンで熱緩和を行う。熱熱緩和は、延伸時に作用した応力残留によるフィルムの延伸方向への収縮を防ぐために、延伸後のフィルム長さが10〜300%減少する程度、予め熱収縮させる工程である。熱緩和時の温度は、70〜145℃が好ましく、80〜140℃がより好ましい。熱緩和時の温度が高すぎると、PE層が融解してしまい、セパレータとして用いにくい。また、熱緩和時の温度が低すぎると熱緩和が十分でなく、セパレータとして用いた際の熱収縮率が大きくなる。すなわち、製品の熱収縮率が大きくなり蓄電デバイス用セパレータとして好ましくない。
【0043】
次いで、熱延伸ゾーンを経た熱処理フィルムは、熱固定ゾーンにて熱延伸方向の寸法が変化しないように規制して加熱処理される。熱固定は、加熱空気循環オ−ブンもしくは加熱ロ−ルにより行われる。この場合も、熱処理フィルムを定長もしくは長さが10%以上増加しないように引っ張った引張下で行う。熱固定温度は、110〜150℃の範囲が好ましく、115〜140℃の範囲がより好ましい。熱固定温度が低いと十分な熱固定効果が得られず、熱収縮率が高くなる。また熱固定温度が高すぎるとポリエチレンの溶融が生じて不都合である。
本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜は、原反フィルムの製膜時の厚み精度に優れた原反フィルムを作製し、この原反フィルムを積層し、かつ、延伸、熱収縮後に熱固定を行うことで得られる。そのため、ポリオレフィン微多孔膜は、圧縮の特性に優れ、寸法安定性がよく、所期の課題を満たすことができる層間剥離強度の高いものとなる。
【0044】
上記のようなポリオレフィン微多孔膜を作製するためには、原反工程における厚みの変動係数(C.V.)を0.001〜0.03の範囲に調整することが重要である。ポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、原反フィルムを複数枚別々に製膜して、多層に張り合わせる上記の工程だけでなく、個別の押出機より押し出された樹脂を、ダイの中で合流させ、共に押し出す方法を用いることも可能である。
このようにして得られた多層構造の原反フィルムを、上述と同等の延伸工程に処することで、圧縮の特性優れ、寸法安定性がよく、所期の課題を満たすことができる層間剥離強度の高い、ポリオレフィン微多孔膜が得られる。
さらに、微粒子を混合した原反フィルムから作成したポリオレフィン微多孔膜は、特に巻回型の電池を製造する際に、中心の軸となる金属製の巻回機の部品とのすべり性が改善されている。そのため、電池の製造工程における歩留まりを改善できる。
【0045】
また、本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜の片面、もしくは両面に、無機粒子とバインダを混合し、塗工工程を経る等の手法にて、耐熱塗工層を付与してもよい。さらに、フッ素系樹脂を塗工してボンディング層を付与しても良い。
特に耐熱塗工層を付与しても、圧縮の特性が大きく劣化しないことが好ましい。耐熱塗工膜は、たとえば、特許文献7に記載の公知の手法により得ることができる。
【0046】
蓄電デバイス用セパレ−タとして用いられる本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、30〜80%が好ましく、35〜60%がより好ましい。また、ポリオレフィン微多孔膜の極大孔径は0.02〜2μmが好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましい。空孔率及び極大効率は、製造条件の選択により、多少変化する。空孔率が低すぎると、電池用セパレ−タとして使用したときの機能が十分得られない。また空孔率が大きすぎると、電池用セパレ−タとして使用したときの機械的強度が悪くなる。また極大孔径が小さ過ぎると、電池用セパレ−タとして使用したときイオンの移動性が悪く、抵抗が大きくなる。また極大孔径が大きすぎると、イオン移動が大きすぎて適当でない。
【0047】
本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜のガーレ値は、80〜1500秒/100ccが好ましく、100〜800秒/100ccがより好ましい。電池用セパレ−タとして使用する場合、ガーレ値が大きすぎると、イオンの流れが抑制される。これに対し、ガーレ値が低すぎるとイオンの流れが速すぎて故障時の温度上昇を高めることになる。ポリオレフィン微多孔膜の層間剥離強度は、3〜80g/15mmが好ましい。層間剥離強度が低いと、例えば電池用セパレ−タの製造工程でフィルムの剥がれ、カ−ル、伸び等が生じ易く製品の品質面で問題が生じる場合がある。ポリオレフィン微多孔膜の全体の厚みは、蓄電デバイス用セパレ−タとしての機械的強度、性能、小型化等の面から5〜40μmが適当である。
【0048】
耐熱多孔質層は、フィラー(充填材)とバインダとを含有する。耐熱多孔質膜は、ポリオレフィン微多孔膜上に層設される。耐熱多孔質層は、フィラーとバインダと溶媒とを混合させて耐熱多孔質層を形成するためのスラリーを調製し、そのスラリーをポリオレフィン微多孔膜上に塗布して乾燥させることで得られる。
【0049】
フィラーは、電気絶縁性が高く、融点がポリエチレン層およびポリプロピレン層よりも高い無機物、無機酸化物、または無機水酸化物のうちの少なくとも1つから選択される粒子を用いることができる。例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、マグネシア、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化鉄、セリア、イットリア等から選択される一種または二種以上を粒子状に調製したものを使用するとよい。
【0050】
フィラー形状は、特に制限されない。例えば粒子状、繊維状、フレーク状等が使用可能であり、粒子状のフィラーが好適である。フィラーの平均粒径は、例えば0.1μm〜2.5μm程度とすることができ、0.2μm〜1.0μmが好ましく、0.3μm〜0.8μmが更に好ましい。
【0051】
バインダには、例えば、N−ビニルアセトアミドの重合体、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルの重合体を主成分とするもの)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、PEおよびPP等のポリオレフィン系樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系樹脂、ポリビニリデンフロライド(PVDF)等のフッ素系樹脂等を用いることができる。これらは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
バインダの形態は、特に制限されない。粒子状のものを用いてもよいし、溶液状に調製したものを用いてもよい。粒子状のバインダを用いる場合、バインダの粒径に特に制限はなく、例えば平均粒径が0.05μm〜0.5μm程度のものを用いてもよい。また、耐熱性微粒子100質量部に対して0.1〜5質量部のN−ビニルアセトアミドの重合体または水溶性セルロース誘導体と、耐熱性微粒子100質量部に対して1質量部以上の架橋アクリル樹脂とを含む樹脂バインダを用い、耐熱多孔質層における樹脂バインダの含有量を耐熱性微粒子100質量部に対して1.1〜30質量部としてもよい。
【0053】
ポリオレフィン微多孔膜上に上述のスラリーを塗布する方法として、例えば、ダイコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スプレーコーター、ブラッシュコーター、スクリーンコーターを用いて塗布することができる。
【0054】
スラリーを塗布した後の乾燥条件として、例えば、PE層の融点よりも低い温度(例えば、70℃〜130℃程度)に保持して乾燥させる方法、あるいは低温減圧下に保持して乾燥させる方法等が挙げられる。
【0055】
乾燥後の耐熱多孔質層の厚みは、例えば1μm〜15μm程度とすることが好ましく、1.5μm〜10μm程度とすることがより好ましく、2.0〜8.0μmとすることがさらに好ましい。耐熱多孔質層が厚すぎると、セパレータの取扱性や加工性が低下し、ヒビや剥落等の不具合が起こりやすくなる場合がある。耐熱多孔質層が薄すぎると、耐熱多孔質層の短絡防止効果が弱まり、電解液の保持特性が低下する、等の問題が発生することがある。耐熱塗工層の厚みが1μm以下となると、必要とする耐熱性が得られない。耐熱塗工層の厚みが15μm以上になると、微粒子の接着が悪くなり、微粒子が欠落する等の不具合が生じる。ポリオレフィン微多孔膜と耐熱多孔質層との剥離強度は特に制限されないが、高い剥離強度を有するものが好ましい。
【0056】
[非水電解液]
非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状エステルが好適に挙げられる。広い温度範囲、特に高温での電気化学特性が相乗的に向上するため、鎖状エステルが含まれることが好ましく、鎖状カーボネートが含まれることが更に好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートの両方が含まれることがもっとも好ましい。「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
【0057】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)から選ばれる一種又は二種以上が挙げられ、ECとVCの組み合わせ、PCとVCの組み合わせが特に好ましい。
【0058】
また、非水溶媒がエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを含むと電極上に形成される被膜の安定性が増し、高温、高電圧サイクル特性が向上する。エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対し、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは7体積%以上である。その上限としては、好ましくは45体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは25体積%以下である。
【0059】
鎖状エステルとしては、非対称鎖状カーボネートとして、メチルエチルカーボネート(MEC)、対称鎖状カーボネートとして、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、鎖状カルボン酸エステルとして酢酸エチル(以下、EA)が好適に挙げられる。鎖状エステルの中でも、MECとEAのような非対称かつエトキシ基を含有する鎖状エステルの組み合わせが可能である。
【0060】
鎖状エステルの含有量は、特に制限されない。鎖状エステルの含有量は、非水溶媒の総体積に対して、60〜90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%以上であれば非水電解液の粘度が高くなりすぎず、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が低下して広い温度範囲、特に高温での電気化学特性が低下するおそれが少なくなる。
鎖状エステルの中でもEAが占める体積の割合は、非水溶媒中に1体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましい。その上限としては、10体積%以下がより好ましく、7体積%以下であると更に好ましい。非対称鎖状カーボネートは、エチル基を有することが好ましく、メチルエチルカーボネートであることが特に好ましい。
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、広い温度範囲、特に高温での電気化学特性向上の観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が10:90〜45:55が好ましく、15:85〜40:60がより好ましく、20:80〜35:65が特に好ましい。
【0061】
[電解質塩]
電解質塩としては、リチウム塩が好適に挙げられる。
リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiN(SOF)、LiN(SOCFからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、LiPF、LiBF及びLiN(SOF)から選ばれる1種又は2種以上が更に好ましく、LiPFを用いることが最も好ましい。
【0062】
[非水電解液の製造]
非水電解液は、例えば、非水溶媒を混合し、これに電解質塩及び該非水電解液に対して溶解助剤などを特定の混合比率で混合させた組成物を添加する方法により得られる。この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0063】
本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜は、下記の第1、第2の蓄電デバイスに使用することができ、非水電解質として液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用できる。本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜は、電解質塩にリチウム塩を使用するリチウムイオン電池(第1の蓄電デバイス)用やリチウムイオンキャパシタ(第2の蓄電デバイス)用のセパレータとして用いることが好ましく、リチウムイオン電池用に用いることがより好ましく、リチウムイオン二次電池用に用いることが更に好ましい。
【0064】
[リチウムイオン二次電池]
本発明の一態様にかかる蓄電デバイスとしてリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液を有する。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウムイオン二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiCo1−x(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、及びCuから選ばれる1種又は2種以上の元素)、LiMn、LiNiO、LiCo1−xNi、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnOとLiMO(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、及びLiNi1/2Mn3/2から選ばれる1種以上が好適に挙げられる。
【0065】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラックなどから選ばれる1種又は2種以上のカーボンブラック等が挙げられる。
【0066】
正極は、以下の手順で作製できる。まず、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の結着剤と混合する。この混合物に、溶剤を加えて混練して正極合剤を得る。得られた正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製板等に塗布して、乾燥、加圧成型し、所定条件のもとに加熱処理することで作製される。
【0067】
リチウムイオン二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、又はLiTi12等のチタン酸リチウム化合物等を一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力の観点から、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することがより好ましい。
特に複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合又は結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、鱗片状天然黒鉛を球形化処理した粒子、を用いることが好ましい。
【0068】
負極は、上記の正極と同様の手順で得られる。上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練し、負極合剤を得る。得られた負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、所定条件のもとに加熱処理することにより作製できる。
【0069】
[リチウムイオン二次電池]
本発明の一態様にかかる蓄電デバイスの1つであるリチウムイオン二次電池の構造に特に限定はない。例えば、コイン型電池、円筒型電池、角型電池、又はラミネート電池等を適用できる。
【0070】
巻回型のリチウムイオン二次電池は、例えば、電極体が非水電解液と共に電池ケースに収容された構成を有する。電極体は、正極と負極とセパレータとによって構成されている。非水電解液の少なくとも一部は、電極体に含浸されている。
【0071】
巻回型のリチウムイオン二次電池では、正極に、長尺シート状の正極集電体と、正極活物質を含み且つ正極集電体上に設けられた正極合材層と、を含む。負極には、長尺シート状の負極集電体と、負極活物質を含み且つ負極集電体上に設けられた負極合材層と、を含む。
セパレータは、正極および負極と同様に、長尺シート状に形成される。正極および負極は、それらの間にセパレータを介在させ筒状に巻回される。巻回後の電極体の形状は円筒状に限られない。例えば、正極とセパレータと負極とを巻回した後、側方から圧力を加えることにより、偏平形状に形成してもよい。
【0072】
電池ケースは、有底円筒状のケース本体と、ケース本体の開口部を塞ぐ蓋とを備える。蓋およびケース本体は例えば金属製であり、互いに絶縁されている。蓋は正極集電体に電気的に接続され、ケース本体は負極集電体に電気的に接続されている。蓋が正極端子、ケース本体が負極端子をそれぞれ兼ねるようにしてもよい。
【0073】
リチウムイオン二次電池は、−40〜100℃、好ましくは−10〜80℃で充放電することができる。また、巻回型リチウムイオン二次電池の内圧上昇の対策として、電池の蓋に安全弁を設ける対策や、電池のケース本体やガスケット等の部材に切り込みを入れる対策も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を蓋に設けることもできる。
【0074】
[巻回型リチウムイオン二次電池の製造]
リチウムイオン二次電池の製造手順の一例について以下に説明する。
まず、正極、負極、およびセパレータをそれぞれ作製する。次に、それらを重ね合わせて円筒状に巻回し、電極体を組み立てる。次いで、電極体をケース本体に挿入し、ケース本体内に非水電解液を注入する。これにより、電極体に非水電解液が含浸する。ケース本体内に非水電解液を注入した後、ケース本体に蓋を被せ、蓋およびケース本体を密封する。巻回後の電極体の形状は円筒状に限られない。例えば、正極とセパレータと負極とを巻回した後、側方から圧力を加えることにより、偏平形状に形成してもよい。
【0075】
上記では巻回型リチウムイオン二次電池について記載したが、本発明はこれに限らず、ラミネート型リチウムイオン二次電池に適用してもよい。
例えば、正極または負極の電極を一対のセパレータによってサンドイッチして包装してもよい。本実施形態にあっては、電極を袋詰電極にしている。セパレータは、電極よりもやや大きいサイズを有している。電極の本体を一対のセパレータで挟み込みつつ、電極端部から出っ張ったタブをセパレータから外部に突出させる。重ねられた一対のセパレータの側縁同士を接合して袋詰めにし、このセパレータで袋詰めされた一方の電極と他方の電極とを交互に積層し電解液を含浸させることでラミネート型電池を作製する。このとき、厚みを薄型化するために、これらセパレータおよび電極を厚み方向に圧縮してもよい。
【0076】
上記のリチウムイオン二次電池は、各種用途向けの二次電池として利用可能である。例えば、自動車等の車両に搭載され、車両を駆動するモータ等の駆動源用の電源として好適に利用することができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等があげられる。かかるリチウムイオン二次電池は、単独で使用されてもよく、直列および/または並列に複数の電池を接続して使用してもよい。
【0077】
[リチウムイオンキャパシタ]
本発明一態様にかかる蓄電デバイスの他の例として、リチウムイオンキャパシタがあげられる。リチウムイオンキャパシタは、本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜、非水電解液、正極、負極を有し、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が用いられる。電解液には少なくともLiPF等のリチウム塩が含まれる。
【実施例】
【0078】
次に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら一実施例に限定されるものではない。
【0079】
[剥離強度測定]
延伸フィルムサンプルからTD:15mm×MD:200mmの試験片を、中心部、両端部(端部より10mm内側)、各A面、B面、合計6点のサンプルを採取した。ORIENTEC社製引張試験機(RTC−1210A)にて、層間剥離強度を測定した。測定条件は、100Nのロードセルを用い、チャック間距離50mm、クロスヘッドスピード50mm/min.の条件とした。また測定試料は、予め測定接着面の一部を剥がした試料を作成し、引張試験機にT状態にセットした。剥離開始後、120mm、140mm、160mm、180mm、200mm剥離時の剥離強度の平均値を剥離強度として評価した。
【0080】
[膜厚測定]
試料よりMD50mm、全幅にわたるテープ状の試験片を5枚用意する。5枚の試験片を重ね、測定点が25点になるように等間隔に、ファインプリューフ社製電気マイクロメーター(ミリトロン 1240 触針5mmφ(フラット面、針圧 0.75N))を用い厚みを測定した。測定値の1/5の値を各点の一枚あたりの厚さとした。
[厚みの変動係数 (C.V.)]
フィルム厚みの変動係数(C.V.)は、上記幅方向25点の厚み測定結果の標準偏差
【数1】
を、算術平均
【数2】
で除することで求めた。変動係数(C.V.)は、フィルム幅方向の厚みのバラツキの指標として評価した。
【0081】
[透気度(ガーレ値)の測定]
延伸フィルムからMD方向に80mm、全幅の試験片を採取し、中央部と左右の端部(端面から50mm内側)の3点について、B型ガーレ式デンソメーター(株式会社東洋精機社製)を用い、JIS P8117に準じて、測定を行った。3点の平均値をガーレ値として評価した。
【0082】
[引張強度、引張伸度の測定]
ASTM D−822に準じ、測定を行った。
幅10mm、長さ100mmの短冊状の試験片を幅方向(TD)及び、長さ方向(MD)から、それぞれ中央部と左右の端部(端面から10mm内側)の3点採取した。
【0083】
引張試験機(−ORIENTEC.RTC−1210A)にて、100Nのロードセルを用い、チャック間距離50mm、クロスヘッドスピード50mm/min.の条件にて実施した。
【0084】
引張強度は、試験片破断時の荷重W(kg)、試験片の断面積S(mm2、厚さは厚さ測定の平均値を用いる)から以下の式より算出した。
【数3】
【0085】
引張伸度は、試験前の試験片の標点間距離L(mm)、破断時の標点距離L(mm)から以下の式より算出した。
【数4】
MD方向の引張強度は、少数第2位を四捨五入し、小数第1位に丸めた。TD方向の引張強度は、少数第3位を四捨五入し、小数第2位に丸めた。
引張伸度は、少数第1位を四捨五入し、整数にまるめた。
各測定値の平均値を引張強度、引張伸度として評価した。
【0086】
[突刺し強度、突刺し伸度]
延伸フィルムから、MD方向に約30mm、TD方向に全幅にわたるテープ状の試験片を取採した。カトーテック株式会社製、ハンディー圧縮試験機にR=0.5mmのニードル試験アタッチメントを装着し、90mm/minの速度で固定された試験片の中心を突いたときに、試験片が破れる荷重を測定した。
測定は20点行い、20点の平均を持って突刺強度とした。
【0087】
[目付重量]
試料より幅方向に両サイドより型枠を用い100mm×100mmの試験片を2枚採取し、採取した2枚の各試験片の重量を0.1mg迄測定した。
【0088】
測定した重量から以下の式より目付重量を算出した。
【数5】
結果は、少数第3位を四捨五入して少数第2位に丸めて2点の平均を求めた。
【0089】
[熱収縮率]
試料より試験片(200×200mm)を両側10mm内側から採取した。各試験片の幅方向(TD)及び長さ方向(MD)の各1ヶ所に、標点間距離180mmの標点を中央部に記入し、標点間寸法を鋼尺にて測定した。標線間寸法を記入した試料を紙に挟み、ヤマト科学製、熱風循環式 型式:DK−43にて105℃にて2時間加熱処理を行った。加熱処理された試料を紙に挟んだまま取り出し、室温にて60分間放冷を行い、標点間寸法を鋼尺にて測定した。
【0090】
加熱収縮率は、加熱前標線間長さをL1(mm)、加熱後の標線間長さをL2(mm)とし以下の式により算出した。
【0091】
【数6】
【0092】
[圧縮弾性率]
50mm角のセパレータサンプルを積層し、5mm厚のサンプルを作製した。
サンプルに10mmφの金属円柱を押し当て、ORIENTEC.RTC−1250A にて、500Nのロードセルを用い、チャックロスヘッドスピード0.5mm/min.の条件にて圧縮方向の応力−ひずみ曲線を作製した。応力−ひずみ曲線の傾きが一定になった部分の傾きから、圧縮の弾性率を算出した。ここで、応力とは単位面積(mm)当たりの圧縮荷重(N)=圧縮の応力(N/mm)であり、単位はMPaである。例えば、10mmφの金属柱で100Nの荷重を加えた場合の応力は、100N/(5mm×5mm×π)≒1.27MPaである。ひずみとは圧縮の応力を加えた際に変形した変位量を、初期厚み(5mm)で除した値であり、単位は無い。例えば、試験により初期の厚みである5mmから4.8mmに変形した場合、変位量は、0.2mm、ひずみ量は、0.2mm/5mm=0.04となる。
【0093】
[2.7MPaを付与した際のひずみ量]
上記圧縮弾性率を算出させる要領で描写した応力−ひずみ曲線において、応力が2.7MPaに達した際の、試料のひずみ量を読み取った値を評価した。
【0094】
[圧縮後の透気度変化率]
50mm×60mmのサイズに切り出したセパレータを20枚積層し、プレス機にて室温で5.8〜28.9MPaの圧力にて1分間加圧した。加圧後のサンプルを取り出し、透気度を評価した。
加圧前のセパレータの透気度(G0)と、加圧後のセパレータ透気度(G1)から以下の式により加圧後の透気度変化率を求めた。
【数7】
【0095】
[表面粗さ]
ポリオレフィン微多孔膜の表面粗さは、菱化システムズ社製の白色干渉計(Vertscan 3.0)を用い、対物レンズを×5倍の条件下で、MD1270μm×TD960μmの範囲の画像を採取した。採取した画像のMD方向、任意の2箇所について線分析を行い、表面粗さ(Ra)を計測した。また、微多孔膜の表裏について同様の測定を行い、その平均値をRa(ave)として評価した。なお、ポリオレフィン微多孔膜の一方の面を表面とし、他方の面を裏面として本測定を実行した。
【0096】
[極大細孔径]
ポリオレフィン微多孔膜の極大細孔径は、カンタクロームインスツルメンツ社製、全自動細孔分布測定装置(PoreMaster 60−GT型)を用い、サンプル重量約0.15g、細孔直径0.0065〜10μmの範囲の計測結果から、極大細孔直径を算出し、評価に用いた。
【0097】
[実施例1]
以下に、本実施例のポリオレフィン微多孔膜の製造方法の一例について示すが、製造方法は以下に限らず他の方法を用いてもよい。例えば、以下の方法の他にも、Tダイを用いた共押し出し工程と延伸工程とでポリオレフィン微多孔膜を作製してもよい。
【0098】
[PP原反の製膜]
吐出幅1000mm、吐出リップ開度2mmのTダイを使用し、重量平均分子量が470,000、分子量分布が6.7、ペンタッド分率が94%、融点が161℃のポリプロピレン樹脂を、Tダイ温度200℃で溶融押出した。吐出フィルムは、90℃の冷却ロ−ルに導かれ、37.2℃の冷風が吹きつけられて冷却された後、40m/min.で引き取った。得られた未延伸ポリプロピレンフィルムの膜厚は8.1μm、複屈折は16.1×10−3、弾性回復率は150℃、30分熱処理後で88%であった。得られた原反フィルムの原反の厚みに対する変動係数(C.V.)は、0.015であった。
【0099】
[PE原反の製膜]
吐出幅1000mm、吐出リップ開度2mmのTダイを使用し、重量平均分子量が320,000、分子量分布が7.8、密度が0.961g/cm、融点が133℃、メルトインデックス0.31の高密度ポリエチレンを、173℃で溶融押出した。吐出フィルムは、115℃の冷却ロ−ルに導かれ、39℃の冷風を吹きつけて冷却した後、20m/min.で引き取った。得られた未延伸ポリエチレンフィルムの膜厚は9.4μm、複屈折は36.7×10−3、50%伸長時の弾性回復率は39%であった。得られた原反フィルムの原反の厚みに対する変動係数(C.V.)は、0.016であった。
【0100】
[ラミネート工程]
この未延伸PP原反と未延伸PE原反とを使用し、両外層がPPで内層がPEのサンドイッチ構成の三層の積層フィルムを以下のようにして製造した。
三組の原反ロ−ルサンドから、未延伸PP原反と未延伸PE原反をそれぞれ速度6.5m/min.で巻きだし、加熱ロ−ルに導き、ロール温度147℃のロールにて熱圧着した。その後、同速度で30℃の冷却ロ−ルに導いた後に巻き取った。巻出し張力はPP原反が5.0kg、PE原反が3.0kgであった。得られた積層フィルムは膜厚24.0μmで、剥離強度は67.4g/15mmであった。
【0101】
[延伸工程]
この三層の積層フィルムは、125℃に加熱された熱風循環オ−ブン(熱処理ゾーン:オーブン1)中に導かれ、加熱処理が行われた。次いで熱処理した積層フィルムは、冷延伸ゾーンにて、35℃に保持されたニップロ−ル間で18%(初期延伸倍率)に低温延伸された。供給側のロ−ル速度は2.8m/min.であった。引き続き130℃に加熱された熱延伸ゾーン(オーブン2)にて、ロ−ル周速差を利用してロ−ラ間で190%(最大延伸倍率)になるまで熱延伸した。その後、引きつづき125%(最終延伸倍率)まで熱緩和させ、次いで熱固定ゾーン(オーブン3)にて、133℃にて熱固定され、連続的にポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0102】
得られたポリオレフィン微多孔膜の圧縮弾性率、2.7MPa加圧時のひずみ量、膜厚、ガーレ値、引張強度、引張伸度、加熱収縮率、空孔率(重量法)、突刺し強度、目付重量、表面粗さ、シャットダウン温度、メルトダウン温度、極大細孔径の測定結果を表1に示す。またポリオレフィン微多孔膜にはカ−ルはなく、ピンホ−ルは認められなかった。
【0103】
[比較例1]
公知の方法を用いて湿式法により、ポリエチレン単層の微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜の膜厚は19.7μmであった。物性値等の測定結果を表1に示す。
【0104】
[実施例2]
[リチウムイオン二次電池の作製]
94質量%のLiNi1/3Mn1/3Co1/3と、3質量%のアセチレンブラック(導電剤)とを混合した。混合物を、予め準備しておいた3質量%のポリフッ化ビニリデン(結着剤)を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。
この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cmであった。
【0105】
95質量%の人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)を、予め準備しておいた5質量%のポリフッ化ビニリデン(結着剤)を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。
この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cmであった。
【0106】
正極シート、実施例1のポリオレフィン微多孔膜、負極シートの順に積層し、非水電解液を加えて、ラミネート型電池を作製した。
非水電解液としては、1.2MのLiPF6、EC/MEC/DMC=3/3/4で配合割合した電解液を用いた。
【0107】
[DC−R試験]
作製したラミネート型電池(電池容量:50mAh)を用いて、0℃の温度条件のもと、SOC(State Of Charge)50%の状態から500mAを10秒間放電することによって、電圧降下量からオームの法則(R=ΔV/0.5)より電池内抵抗を算出した。さらに、ラミネート型セルを2.7MPaの圧力を掛けながら、DC−R測定を行い、未加圧時と加圧時の内部抵抗の上昇率を算出した。
【0108】
[比較例2]
実施例2ではPP/PE/PPの三層構造を有する乾式ポリオレフィン微多孔膜に、強さが異なる圧力を加えて電池内抵抗の変化をモニタした。比較例2では、湿式法によって作製されたPEからなる単層構造のポリオレフィン微多孔膜(比較例1)を用いてDC−R試験を行った。ポリオレフィン微多孔膜として湿式のPE単層ポリオレフィン微多孔膜を使用した以外は、実施例2と同様にして電池内抵抗の変化をモニタした。結果を表6に示す。
【0109】
[実施例3]
PP原反の膜厚を6.2μm、PE原反の膜厚を8.0μmとした以外は、実施例1と同様にして作成した。得られたPP原反のC.V.は0.020で、PE原反のC.V.は0.018であった。これらの原反を用い作成した微多孔膜の膜厚は16.3μmであった。その他の物性値を表1に示す。
【0110】
[実施例4]
PP原反の膜厚を10.8μm、PE原反の膜厚を9.4μmとした以外は、実施例1と同様にして作成した。得られたPP原反のC.V.は0.012で、PE原反のC.V.は0.016であった。これらの原反を用い作成した微多孔膜の膜厚は25.0μmであった。その他の物性値を表1に示す。
【0111】
[実施例5]
PP原反の膜厚を14.4μm、PE原反の膜厚を7.6μmとした以外は、実施例1と同様にして作成した。得られたPP原反のC.V.は0.009で、PE原反のC.V.は0.022であった。これらの原反を用い作成した微多孔膜の膜厚は30.1μmであった。その他の物性値を表1に示す。
【0112】
[実施例6]
PP原反の膜厚を40.0μmとし、PP層の単独膜を実施例1の延伸工程と同様にして延伸し、多孔質膜を作製した。得られたPP原反のC.V.は0.010であった。これらの原反を用い作成した微多孔膜の膜厚は32.2μmであった。その他の物性値を表1に示す。
【0113】
[比較例3]
公知の方法を用いて湿式法により、ポリエチレン単層のセパレータを作製した。膜厚は18.2μmであった。物性値等の測定結果を表1に示す。
【0114】
[比較例4]
公知の方法を用いて湿式法により、ポリエチレン単層のセパレータを作製した。膜厚は26.0μmであった。物性値等の測定結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
[実施例7]
PP/PE/PPの3層を溶融状態のままTダイの中で張り合わせ、共に口金から押し出す方法で、PP/PE/PPが積層された状態の原反を製膜した。原反の厚みは、14.8μm、積層原反のC.V.は0.015であった。積層された原反を、実施例1の同様の延伸工程にて加工することで、12.5μm厚の微多孔膜を作製した。作製した微多孔膜の物性を表2に示す。
【0117】
[実施例8]
原反の膜厚を、19.2μmとした以外は、実施例7と同様にしてPP/PE/PPの三層構造の微多孔膜を作製した。微多孔膜の膜厚は16.3μmであった。物性値等の測定結果を表2に示す。
【0118】
[実施例9]
実施例1の微多孔膜に、略5μmの耐熱塗工層を塗工・乾燥させることで、24.9μm厚の微多孔膜を作製した。作製した微多孔膜の物性を表2に示す。なお、フィラーとしてベーマイトを用いてスラリーを調製して耐熱多孔質層を形成した。
【0119】
[実施例10]
実施例3のPP原反の製膜時に、PP樹脂に対し、無機絶縁体粒子として、アルミノシリケート(平均粒径2μm)を重量で4000ppmとなるように添加し、混合した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0120】
[実施例11]
実施例1のPP原反の製膜時に、PP樹脂に対し、無機絶縁体粒子として、アルミノシリケート(平均粒径2μm)を重量で4000ppmとなるように添加し、混合した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0121】
[実施例12]
実施例4のPP原反の製膜時に、PP樹脂に対し、無機絶縁体粒子として、アルミノシリケート(平均粒径2μm)を重量で4000ppmとなるように添加し、混合した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0122】
[実施例13]
実施例7と同様に、PP/PE/PPの3層を溶融状態のままTダイの中で張り合わせる方法で、共に口金から押し出す方法でPP/PE/PPが積層された状態の原反を製膜する際、PP層の樹脂量に対し無機絶縁体粒子として、アルミノシリケート(平均粒径2μm)を重量で4000ppmとなるように添加し、混合した以外は、実施例7と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0123】
[実施例14]
実施例8と同様に、PP/PE/PPの3層を溶融状態のままTダイの中で張り合わせる方法で、共に口金から押し出す方法でPP/PE/PPが積層された状態の原反を製膜する際、PP層の樹脂量に対し無機絶縁体粒子として、アルミノシリケート(平均粒径2μm)を重量で4000ppmとなるように添加し、混合した以外は、実施例8と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0124】
【表2】
【0125】
上記の手順に従って得られた実施例1、3〜14および比較例1、2〜4のポリオレフィン微多孔膜に、所定の圧力を加え、圧力を解放した後にガーレ値および膜厚を測定した。結果を表3〜6に示した。なお、上側の表は実測値をまとめたものであり、下側の表は上側の表に記載された実測値に基づいて膜厚減少率およびガーレ増加率をまとめたものである。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】
【0129】
図1に実施例1と比較例1の応力−ひずみ曲線を示した。応力―ひずみ曲線の傾きから、圧縮弾性率を算出し、応力値が2.7MPa時のひずみ量を読み取った。
【0130】
実施例1と比較例1の微多孔膜に印加した圧力と、ガーレ値の変化率を図2に示した。
【0131】
【表6】
【0132】
実施例1、3〜14と比較例1、3、4とを比較すると、実施例1のポリオレフィン微多孔膜は、17.3MPaの圧力付与したときのガーレ値の増加率が0.5%以上、29.0%以下であった。特に、11.5MPaの圧力を加えた場合では、ガーレ値の増加率は0.05以上6.0%以下であった。さらに、5.8MPaの圧力を加えた場合ではガーレ値の増加率が0.0以上2.9%以下であった。
【0133】
11.5MPa以上かつ23.1MPa以下の範囲では、付与される圧力に応じたガーレの増加率は1.4%/MPa以下であった。11.5MPa以上かつ17.3MPa以下の範囲では、付与される圧力に応じたガーレの増加率は、だいたい0.01〜1.70%/MPaであり、実施例3〜6については0.01〜0.60%/MPaであった。
これに対して比較例3,4に記載の湿式ポリオレフィン微多孔膜では、5.8MPaの圧力を加えた場合でも急峻にガーレ値が増加した。
また実施例10〜14に示すように、易滑材として機能する無機絶縁体粒子を混合した場合でも、ガーレ値が急激に増加することもなかった。
【0134】
このため、本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜を用いて非水電解液電池を組み上げた場合、例えば17.3MPaといった比較的高い圧力を電池に加えてもガーレ値がほとんど変化せず、電池特性への影響を低減することができる。
他方、比較例に示したポリオレフィン微多孔膜を用いて非水電解液電池を組み上げた場合、電池に圧力を加えた直後からガーレ値が急峻に変化し、このため電池特性に比較的大きく影響してしまう。
【0135】
表6に示すように、本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜を用いて組み上げたラミネート型電池では、圧縮された後でも電池内抵抗の変化が比較的小さかった。
他方、湿式のポリオレフィン微多孔膜を用いて組み上げたラミネート型電池では、圧縮された後の電池内抵抗の変化が大きかった。
以上のことから、本発明のポリオレフィン微多孔膜を用いてリチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスを組み上げた場合、圧縮された場合でもガーレ値が変化しにくく、このため電池特性、例えば電池内抵抗が加圧時でも変化しにくい蓄電デバイスを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の一態様にかかるポリオレフィン微多孔膜を使用すれば、外部から膨張・収縮を抑制するような拘束部材や、デバイスを圧縮するような工程に対して優れた耐性を発揮する蓄電デバイスを得ることができる。特にハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、バッテリー電気自動車に搭載されるリチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスとして使用することで、これら自動車の信頼性を高めることができる。
図1
図2