(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下方を向いた底面と、上方を向いた天面と、前方を向いた前面と、後方を向いた後面とを備えたカートンを、上記前面および後面が傾いて底面および天面が相互に接近した成形前の状態から、上記前面および後面を起立させて底面および天面が相互に離隔した成形状態とするカートン成形装置において、
成形前のカートンが供給される搬送面と、上記搬送面よりも上部に突出した状態で成形状態のカートンの前面に当接する前面側保持部材および成形状態のカートンの後面に当接する後面側保持部材と、これら前面側保持部材および後面側保持部材を移動させる駆動手段とを備え、
上記駆動手段は、上記前面側保持部材および後面側保持部材を無端状の移動軌跡に沿って循環案内する循環通路と、上記前面側保持部材および後面側保持部材の少なくともいずれか一方に設けた永久磁石または電磁コイルのいずれか一方と、上記循環通路に沿って配置した上記永久磁石または電磁コイルのいずれか他方とを備え、
さらに上記駆動手段の電磁コイルに電流を供給して前面側保持部材および後面側保持部材の少なくともいずれか一方を個別に移動させる制御手段を設けて、上記前面側保持部材と後面側保持部材との間に成形前のカートンが位置すると、前面側保持部材と後面側保持部材とが接近するように前面側保持部材よりも後面側保持部材を相対的に速く移動させ、これにより上記カートンの前面および後面を起立させて成形状態とすることを特徴とするカートン成形装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、
図1はカートンCを成形するカートン成形装置1の側面図を示し、(a)〜(c)は当該カートン成形装置1の動作を説明する図となっている。
上記カートンCは環状に連結され、上方を向いた天面C1と、下方を向いた底面C2と、搬送方向下流側の前方を向いた前面C3と、搬送方向上流側の後方を向いた後面C4とを有し、これら各面にはそれぞれカートンCの側部開口を閉鎖するための図示しないフラップが連結されている。
また上記カートンCは、上記前面C3および後面C4が倒れて扁平状となった成形前の状態で供給され、これら前面C3および後面C4を起立させて底面C2および天面C1を相互に離隔させることで、略長方形に位置した成形状態とすることができる。
上記カートン成形装置1は、上記成形前のカートンCを収容したカートンマガジン2と、上記カートンCがその上面を搬送される搬送面3と、上記カートンマガジン2から成形前のカートンCを取り出してこれを上記搬送面3に供給するカートン供給手段4と、上記搬送面3の下方に設けられて上記カートンCの底面C2を吸着保持する下側吸着手段5と、上記搬送面3よりも上部に突出した状態で成形状態のカートンCの前面C3に当接する前面側保持部材6と、成形状態のカートンCの後面C4に当接する後面側保持部材7と、これら前面側保持部材6および後面側保持部材7を移動させる駆動手段8とを備え、これらは図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
【0009】
上記カートンマガジン2には、成形前のカートンCが複数積層した状態で保持されており、その下端部に位置したカートンCから順に、上記カートン供給手段4が吸着保持するようになっている。
上記搬送面3は平滑に形成されており、上記カートン供給手段4が供給したカートンCはこの搬送面3に摺接しながら搬送されるようになっており、図示しない下流側には、上記カートンCのフラップを閉鎖する工程や、カートンCに物品を収容する工程等の各作業位置が設定されている。
本実施例において、上記扁平な状態とされた成形前のカートンCは、天面C1および後面C4が上方を、上記底面C2および前面C3が下方を向いた状態で搬送面3に供給されるようになっている。
【0010】
上記カートン供給手段4は、上記カートンCの天面C1を吸着保持する上側吸着手段11と、当該上側吸着手段11を移動させて上記成形前のカートンCを上記カートンマガジン2から上記搬送面3へと移動させる移動手段としての回転テーブル12とを備えている。
上記上側吸着手段11は両端に2つの吸着ヘッド11aを備え、またこの上側吸着手段11は上記回転テーブル12の外周部分に自転可能に設けられており、上記回転テーブル12の回転に伴って公転するようになっている。
具体的には、上記吸着ヘッド11aは
図1(a)において一点鎖線で示す移動軌跡で移動し、一方の吸着ヘッド11aが上記カートンマガジン2の下端部に位置するカートンCの天面C1を吸着保持すると、上側吸着手段11は回転テーブル12の回転に伴って公転するとともに自転し、当該保持したカートンCの底面C2が下方となるように上記搬送面3に載置するようになっている。
その後吸着ヘッド11aは、後述するように所定時間だけ上記カートンCの天面C1を吸着保持した状態を維持し、これにより吸着ヘッド11aは搬送面3から上方へと離隔しながら、天面C1を上方へと引き上げるようになっている。
【0011】
上記下側吸着手段5は搬送面3の下方に設けられており、その上部に設けられてカートンCの底面C2を吸着保持する吸着ヘッド5aと、当該吸着ヘッド5aを搬送面3における上流側の所定の位置と下流側の所定の位置との間で往復動させ図示しない移動手段とから構成されている。
上記移動手段は上記吸着ヘッド5aを上記カートン供給手段4に同期して移動させ、上記上側吸着手段11によって成形前のカートンCが搬送面3に載置されると、上記吸着ヘッド5aを成形前のカートンCの底面C2を吸着保持可能な位置に位置させるようになっている。
その後移動手段は、上記カートンCが搬送面3を搬送されながら成形されることから、上記底面C2の移動に同期して吸着ヘッド5aを下流側に移動させ、
カートンCが成形状態となると吸着ヘッド5aは底面の吸着を解除し、新たに供給される成形前のカートンCの底面C2を吸着可能な位置へと移動される。
【0012】
上記前面側保持部材6および後面側保持部材7は略同形状を有しており、それぞれ搬送面3に対して垂直に設けられた板状の部材となっており、成形後のカートンCの前面C3および後面C4にそれぞれ密着するようになっている。
上記駆動手段8はいわゆるリニアモータであって上記前面側保持部材6および後面側保持部材7を移動させる、無端状の移動軌跡を構成する長円状の循環通路21を備え、上記前面側保持部材6および後面側保持部材7にはそれぞれに図示しない永久磁石が、上記循環通路21には図示しない複数の電磁コイルが設けられている。
上記循環通路21は、上記搬送面3の側方に隣接して設けられており、上記前面側保持部材6および後面側保持部材7を搬送面3の上部に露出させた部分では搬送方向上流から下流へと移動させ、搬送面3の下方に位置した部分では搬送方向とは反対向きに移動させるようになっている。
【0013】
上記制御手段は上記循環通路21における各電磁コイルへの電流の供給を制御し、前面側保持部材6および後面側保持部材7の移動を個別に制御することが可能となっている。
また上記循環通路21の所要の位置に、上記前面側保持部材6および後面側保持部材7の位置を検出する図示しない位置センサを設け、この位置センサからの信号により、制御手段は各前面側保持部材6および後面側保持部材7の位置を認識している。
このような構成により、上記制御手段は、上記循環通路21におけるすべての前面側保持部材6および後面側保持部材7の位置を認識するとともに、これらの位置および速度を個別に制御することが可能となっている。
また上記カートン供給手段4の回転テーブル12には回転角度を検出する図示しないエンコーダが設けられており、制御手段はこの回転テーブル12の回転角度によって上記上側吸着手段11に保持された成形前のカートンCの位置を認識し、前面側保持部材6および後面側保持部材7を同期させて移動させるようになっている。
【0014】
上記構成を有するカートン成形装置1の動作を、
図1(a)〜(c)を用いて説明する。
まず上記カートン供給手段4が作動し、上側吸着手段11がカートンマガジン2の下端部に位置する成形前のカートンCの天面C1を吸着保持すると、その後上側吸着手段11が回転テーブル12の回転に伴って公転し、吸着保持した成形前のカートンCを、その底面C2および前面C3が下方を向いた状態で上記搬送面3に載置する((a)の状態)。
このとき、上記下側吸着手段5は当該供給された成形前のカートンCの底面C2の位置に待機しており、成形前のカートンCが搬送面3に載置されると、上記底面C2を吸着保持する。
【0015】
一方、上記制御手段は、上記回転テーブル12の回転角度から成形前のカートンCの位置を認識しており、上記駆動手段8は当該成形前のカートンCの位置に同期して上記前面側保持部材6および後面側保持部材7を移動させる。
具体的には、上記前面側保持部材6は上記搬送面3に載置される成形前のカートンCの搬送方向下流側に位置しており、成形前のカートンCが搬送面3に載置されると、当該成形前のカートンCにおける天面C1と前面C3との境界(前方の境界)がその後方から当接するようになっている。
一方、上記後面側保持部材7は上記搬送面3に載置される成形前のカートンCの搬送方向上流側に位置しており、成形前のカートンCが搬送面3に載置されると、これに同期して移動し、後面C4と底面C2との境界(後方の境界)にその後方から当接するようになっている。
つまり、上記カートン供給手段4が搬送面3に成形前のカートンCを供給すると、制御手段はその下流側および上流側に上記前面側保持部材6および後面側保持部材7が当接するように、これらを制御するようになっている。
【0016】
図1(b)は上記カートンCが(a)に示す成形前の状態から上記前面C3および後面C4が若干起こされた、成形途中の状態を示している。
上記上側吸着手段11および上記下側吸着手段5は、上記成形前のカートンCが搬送面3に載置された後も、この
図1(b)の状態においても上記カートンCの天面C1および底面C2の吸着をそれぞれ維持している。
上記上側吸着手段11は上記回転テーブル12の回転に伴って公転を継続するとともに自転しており、このため上記吸着ヘッド11aは搬送面3より下流側に移動しながら斜め上方へと移動し、これにより当該吸着ヘッド11aに吸着されたカートンCの天面C1が上方に引き上げられることとなる。
一方、上記下側吸着手段5はカートンCの底面C2を吸着保持した状態を維持していることから、上側吸着手段11と下側吸着手段5とが上下に離隔し、これにより成形前のカートンCの天面C1と底面C2とが上下に離隔することとなる。
このようにしてカートンCの天面C1と底面C2とが離隔すると、それまで倒れていた前面C3および後面C4が起き上がるため、天面C1と前面C3との境界(前方の境界)および後面C4と底面C2との境界(後方の境界)が搬送面3の搬送方向において接近することとなる。
このため上記下側吸着手段5は、この底面C2の位置に同期して上記移動手段により移動するようになっている。
【0017】
一方、制御手段にはあらかじめ成形中におけるカートンCの前方の境界および後方の境界の位置が設定されており、上記前面側保持部材6および後面側保持部材7をこれらの境界の位置に同期させて移動させるようになっている。
つまり、上記
図1(a)から(b)の状態となる間、成形前のカートンCはカートン供給手段4の吸着ヘッド11aによって搬送面3の下流側に移動しており、これに伴って前方の境界および後方の境界も移動することとなる。
具体的には、カートンCにおける上記天面C1が底面C2より離隔し、前面C3および後面C4が起き上がることで、後方の境界は前方の境界よりも高速に下流側に移動することとなる。
そこで制御手段は、前面側保持部材6よりも後面側保持部材7を相対的に速く移動させて、前面側保持部材6と後面側保持部材7とが接近するように移動させ、これにより成形前のカートンCが上流側および下流側から押圧され、これにより上記カートンCの前面C3および後面C4が起立することとなる。
【0018】
上記
図1(b)の状態によれば、カートン供給手段4の上側吸着手段11がカートンCの天面C1を吸着保持してこれを上方に移動させることで、成形前のカートンCを成形するためのきっかけが得られ、かつ上記下側吸着手段5がカートンCの底面C2を吸着保持していることから、天面C1を底面C2から確実に離脱させることが可能となっている。
仮に前面側保持部材6と後面側保持部材7とを接近させて成形前のカートンCが上流側および下流側から押圧しただけでは、成形前のカートンCの前面C3および後面C4が起立せずに座屈して変形してしまう恐れがある。
【0019】
図1(c)は、
図1(b)の状態から上記カートン供給手段4の上側吸着手段11がカートンCの天面C1から離脱し、さらにカートンCの前面C3および後面C4がさらに起立した状態を示している。
制御手段は、上記上側吸着手段11が離脱した後も、前面側保持部材6と後面側保持部材7とが接近するように前面側保持部材6よりも後面側保持部材7を相対的に速く移動させており、これにより成形前のカートンCはその前方の境界および後方の境界がそれぞれ前面側保持部材6および後面側保持部材7によって挟持されて接近し、これにより上記前面C3および後面C4がさらに起立するようになっている。
その際上記下側吸着手段5も、カートンCの底面C2が下流側に移動するのに同期して、当該カートンCの底面C2を吸着保持したまま下流側に移動するようになっている。
【0020】
その後、制御手段はさらに前面側保持部材6と後面側保持部材7とを接近させて、上記カートンCの前面C3および後面C4を垂直に起立させ、カートンCの前面C3が前面側保持部材6に当接し、後面C4が後面側保持部材7にそれぞれ当接したカートンCの成形状態となる。
一方、カートンCが成形状態となると、上記下側吸着手段5が底面C2から離脱し、その後上記移動手段により搬送面3を上流側に移動して、新たに供給される成形前のカートンCの底面C2を吸着保持するようになっている。
上記成形状態のカートンCは、上記制御手段が上記前面側保持部材6および後面側保持部材7を同じ速度で等間隔を維持したまま下流側に移動させることにより、成形状態を維持したまま搬送され、搬送面3の所要の位置に設定された上記フラップの閉鎖工程やカートンCに物品を収容する工程等の各作業位置に位置させる。
なお、上記下側吸着手段5については、上記カートンCが成形状態となる前に底面C2より離脱してもよい。
そして搬送面3の下流端に達した前面側保持部材6と後面側保持部材7とは、上記循環通路21に沿って搬送面の下方に移動し、さらに上流側に移動して新たな成形前のカートンCを成形するために待機する。
【0021】
次に、本実施例のカートン成形装置1において、異なる大きさのカートンCを成形する場合について説明する。
異なる大きさのカートンCとして、上記天面C1および底面C2の長さが上記実施例のカートンCよりも長いものや短いもの、またこれと同様、前面C3および後面C4の長さが上記実施例のカートンCと異なるものがある。
これらのカートンCを搬送面3に載置すると、成形前のカートンCでは例えば天面C1と後面C4との合計した長さが異なるため、上記前方の境界と後方の境界との距離が上記実施例とは異なることとなる。
しかしながら、本実施例では前面側保持部材6と後面側保持部材7とは制御手段によって個別に制御可能であるため、例えば天面C1と後面C4との合計した長さや、成形後におけるカートンCの天面C1の長さを設定すれば、上記前面側保持部材6と後面側保持部材7とによってカートンCを成形することができる。
つまり、特許文献1のようなリンク機構を用いずとも、多様な大きさのカートンCを成形することが可能であり、その際の設定も容易に行うことが可能となっている。
【0022】
また本実施例のカートン成形装置1によれば、上記制御手段によって前面側保持部材6と後面側保持部材7とを上記搬送面3における任意の位置に移動させることができるため、カートンCに対して所要の作業を行う作業位置を特許文献1のように所定の間隔で設定する必要がなく、各作業位置における処理手段の大きさ等に合わせて自由なレイアウトを採用することができる。
また、各作業位置において、前面側保持部材6および後面側保持部材7の間隔を維持したまま速度を変化させれば、また各作業位置での作業時間を変化させることも可能であり、また各作業位置と作業位置との間における速度を変化させるといったことも可能である。
【0023】
なお上記実施例では、
図1(b)において前面側保持部材6と後面側保持部材7とを接近させて、成形前のカートンCをその前方および後方から押圧しているが、この押圧については
図1(c)以降で行うようにし、それまでは単に前面側保持部材6と後面側保持部材7とがカートンCに当接またはその近傍に位置した状態を維持するようにしてもよい。
また、成形前の扁平なカートンCを搬送面3に供給する際、天面C1および前面C3が上方を、上記底面C2および後面C4が下方を向いた状態で供給されるようにすることも可能である。
さらに、上記実施例において、上記前面側保持部材6と後面側保持部材7とを駆動する駆動手段8として、これら前面側保持部材6と後面側保持部材7とに永久磁石を、循環通路21に電磁コイルを設けているが、これと反対の構成としてもよい。
そして、上記実施例では前面側保持部材6と後面側保持部材7とに永久磁石を設けて、これらを上記制御手段により個別に制御しているが、これらのうちいずれか一方の保持部材にだけ永久磁石を設け、上記制御手段が当該一方の保持部材の位置および速度を制御する構成としてもよい。
例えば、上記後面側保持部材7に永久磁石を設けてこれを制御手段によって個別に制御するようにし、他方の前面側保持部材6をモータ等の駆動手段により上記循環通路を一定の速度で移動させる構成とすることが可能である。
その場合、上記制御手段が上記後面側保持部材7の速度を上記前面側保持部材6の速度よりも速くし、これにより前面側保持部材6と後面側保持部材7とを接近させて上記カートンCの成形を行うことができる。