特許第6094741号(P6094741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094741
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G04B 25/04 20060101AFI20170306BHJP
   G04G 13/02 20060101ALI20170306BHJP
   G04C 21/02 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G04B25/04
   G04G13/02 Z
   G04C21/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-46059(P2013-46059)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-173959(P2014-173959A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】北原 政昭
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−044540(JP,A)
【文献】 特開平10−319146(JP,A)
【文献】 特開2008−177675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 25/04
G04C 21/02
G04G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器ケースと、
この機器ケース内に組み込まれるモータケースと、
このモータケース内に固定された振動モータと、
前記モータケースを前記機器ケースの一部に固定し、前記振動モータで発生した振動を前記機器ケースの外部に伝える振動伝達締結部材と、を備え、
前記振動伝達締結部材は、前記機器ケースの前記一部に設けられた貫通孔および前記モータケースに設けられた取付部の取付孔に挿入し、前記機器ケースの外部に突出するビス部材と、このビス部材に取り付けられ、前記機器ケースの前記一部に前記モータケースの前記取付部を固定する抜止め部材と、を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
機器ケースと、
この機器ケース内に組み込まれるモータケースと、
このモータケース内に固定された振動モータと、
前記モータケースを前記機器ケースの一部に固定し、前記振動モータで発生した振動を前記機器ケースの外部に伝える振動伝達締結部材と、
前記振動モータを前記モータケース内に押し付ける押え板と、を備え、
前記振動モータと前記押え板との間には、弾性部材が配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子機器において、前記振動モータを前記モータケースの内面に密着させて固定する接着固定部材を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器において、前記振動モータを前記モータケース内に押し付ける押え板を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、前記振動モータと前記押え板との間には、弾性部材が配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電子機器において、前記モータケースと前記機器ケースとの間には、緩衝部材が配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子機器において、前記振動伝達締結部材には、防水リングが設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
振動モータで発生した振動をケースの外部に伝える振動伝達締結部材を備え、
前記振動伝達締結部材は、前記ケースに設けられた貫通孔に挿入し、前記ケースの外部に突出するビス部材と、このビス部材に取り付けられ、前記ケースに前記振動モータを固定する抜止め部材と、を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
振動モータで発生した振動を前記ケースの外部に伝える振動伝達締結部材と、
前記振動モータを前記ケース内に押し付ける押え板と、を備え、
前記振動モータと前記押え板との間には、弾性部材が配置されていることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計や携帯電話機などの振動報知機能を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計においては、特許文献1に記載されているように、腕時計ケースの裏蓋に振動モータを取り付け、この振動モータで発生した振動が裏蓋を介して腕などに伝達されるように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−142540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような腕時計では、振動モータで発生した振動を腕などに伝えるために、振動モータで裏蓋を振動させる必要がある。このため、振動モータに大きな電流を流して、振動モータを強力に振動させなければならないため、消費電力が多くなり、電池の消耗が激しく、電池交換の頻度が多くなるという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、少ない消費電力で効率良く振動モータの振動を外部に伝えることができる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、機器ケースと、この機器ケース内に組み込まれるモータケースと、このモータケース内に固定された振動モータと、前記モータケースを前記機器ケースの一部に固定し、前記振動モータで発生した振動を前記機器ケースの外部に伝える振動伝達締結部材と、を備え、前記振動伝達締結部材は、前記機器ケースの前記一部に設けられた貫通孔および前記モータケースに設けられた取付部の取付孔に挿入し、前記機器ケースの外部に突出するビス部材と、このビス部材に取り付けられ、前記機器ケースの前記一部に前記モータケースの前記取付部を固定する抜止め部材と、を備えていることを特徴とする電子機器である。
また、この発明は、機器ケースと、この機器ケース内に組み込まれるモータケースと、このモータケース内に固定された振動モータと、前記モータケースを前記機器ケースの一部に固定し、前記振動モータで発生した振動を前記機器ケースの外部に伝える振動伝達締結部材と、前記振動モータを前記モータケース内に押し付ける押え板と、を備え、前記振動モータと前記押え板との間には、弾性部材が配置されていることを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、振動モータで発生した振動によってモータケースを振動させることができ、このモータケースの振動を振動伝達締結部材で機器ケースの外部に伝えることができる。このため、振動モータによって機器ケースの一部または全部を振動させる必要がないので、少ない消費電力で振動モータを振動させて、効率良く振動モータの振動を外部に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態を示した拡大断面図である。
図2図1に示された腕時計において裏蓋の内面側を示した要部の拡大斜視図である。
図3図2に示された腕時計の裏蓋の要部を示した拡大平面図である。
図4図3に示された裏蓋のA−A矢視における要部の拡大断面図である。
図5図2に示された腕時計の裏蓋を上下反転させて示した要部の拡大斜視図である。
図6図2に示された裏蓋、これに組み付けられたモータケース、振動モータ、押え板、および振動伝達締結部材を示し、(a)は裏蓋を示した要部の拡大斜視図、(b)はモータケースを示した拡大斜視図、(c)は振動モータを示した拡大斜視図、(d)は押え板を示した拡大斜視図、(e)は振動伝達締結部材のビス部材および抜止め部材を示した拡大斜視図である。
図7図4に示された裏蓋に対するモータケースの取付構造の変形例を示した要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図6を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上側開口部には、時計ガラス2がパッキン2aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の下部には、裏蓋3が防水リング3aを介して取り付けられている。
【0010】
また、この腕時計ケース1の内部には、図1に示すように、時計モジュール4が設けられている。この時計モジュール4は、時計機能に必要な各種の部品(図示せず)を備えているほか、報知機能としての振動発生部Rを備えている。この振動発生部Rは、図2図6に示すように、振動を発生する振動モータ5と、この振動モータ5が取り付けられるモータケース6とを備えている。
【0011】
振動モータ5は、図6(c)に示すように、モータ部5a、一対の偏心回転部5b、および回路部5cを有し、モータ部5aが一対の偏心回転部5bを偏心回転させることにより、振動を発生するように構成されている。この振動モータ5は、図2図4に示すように、腕時計ケース1内に組み込まれるモータケース6に取り付けられるように構成されている。
【0012】
モータケース6は、図2図4、および図6(b)に示すように、上部および両側が開放された箱状に形成され、その内部に振動モータ5のモータ部5aが収納された状態で、腕時計ケース1の一部である裏蓋3の内面(図4では上面)に取り付けられるように構成されている。このモータケース6は、振動モータ5の軸方向(長手方向)に対して直交する方向(図3では上下方向)に位置する両側部の下部に、一対の取付部6aがそれぞれモータケース6の外部側方に向けて突出して設けられている。
【0013】
また、このモータケース6の一対の取付部6aには、図4および図6(b)に示すように、裏蓋3に設けられた一対の貫通孔3aにそれぞれ対応する取付孔6bが上下に貫通して設けられている。さらに、このモータケース6は、合成樹脂または金属のいずれで形成されていても良いが、軽量化を図って振動効率を高めるために合成樹脂で形成されていることが望ましい。
【0014】
この場合、振動モータ5は、図2図4に示すように、モータケース6の両側に振動モータ5の一対の偏心回転部5bを突出させた状態で、モータ部5aがモータケース6の内面に両面粘着テープまたは接着剤などの接着固定部材8によって密着して固定されている。また、この振動モータ5は、押え板9によってモータ部5aがモータケース6内に押し付けられるように構成されている。
【0015】
この押え板9は、ステンレスなどの金属板からなり、図2図4、および図6(d)に示すように、モータケース6の上部に配置される押え部10と、この押え部10の両側に設けられた一対の脚部11とを有している。この場合、押え部10には、振動モータ5の回路部5cが挿入する開口部10aが設けられている。
【0016】
また、一対の脚部11は、図2図4、および図6(d)に示すように、モータケース6の長手方向と直交する両側の外面に沿って垂下され、その各下端部がモータケース6の外側に向けて折り曲げられ、この折り曲げられた折曲部11aがモータケース6の取付部6a上に配置された状態で、後述する振動伝達締結部材7によってモータケース6の取付部6aと共に裏蓋3に取り付けられるように構成されている
【0017】
すなわち、この押え板9は、図2図4、および図6(d)に示すように、振動モータ5のモータ部5aがモータケース6内に配置された状態で、押え部10がモータケース6の上部に配置された際に、振動モータ5の回路部5cが押え部10の開口部10a内に挿入されると共に、一対の脚部11の各折曲部11aがモータケース6の各取付部6a上に配置され、この状態で各折曲部11aが振動伝達締結部材7によってモータケース6の各取付部6aと共に裏蓋3に取り付けられるように構成されている。
【0018】
この場合、押え板9の押え部10と振動モータ5のモータ部5aとの間には、図4に示すように、弾性部材12が配置されている。これにより、振動モータ5は、押え板9が振動伝達締結部材7によってモータケース6と共に裏蓋3に取り付けられた際に、弾性部材12を介して押え部10がモータ部5aをモータケース6内に押し付けることにより、モータ部5aが弾性部材12の弾性力によってモータケース6内に押し付けられて固定されるように構成されている。
【0019】
ところで、裏蓋3の12時側(図6(a)では右上側)に位置する個所には、図6(a)に示すように、一対の貫通孔3aがそれぞれ上下に貫通して設けられていると共に、一対の凹部3bがそれぞれ設けられている。一対の貫通孔3aは、図4に示すように、モータケース6の一対の取付部6aにそれぞれ設けられた各取付孔6bに対応して設けられている。
【0020】
また、一対の凹部3bは、図2および図6(a)に示すように、モータケース6の両側に突出した振動モータ5の一対の偏心回転部5bに対応して設けられている。これにより、振動モータ5は、一対の偏心回転部5bがモータ部5aによって偏心回転する際に、一対の偏心回転部5bがこれに対応する一対の凹部3bによって裏蓋3の内面に接触しないように構成されている。
【0021】
一方、振動伝達締結部材7は、図4図5および図6(e)に示すように、裏蓋3の裏面側から裏蓋3の貫通孔3aを通り、モータケース6の取付部6aの取付孔6bに挿入して上方に突出するビス部材13と、このビス部材13に取り付けられて、モータケース6の取付部6aを裏蓋3に取り付ける抜止め部材14とを備えている。
【0022】
ビス部材13は、図4図5および図6(e)に示すように、裏蓋3の貫通孔3a、モータケース6の取付部6aの取付孔6b、および押え板9の脚部11の折曲部11aに設けられた挿入孔11bに順次裏面側から挿入する軸部13aと、裏蓋3の裏面(図5では上面)に当接する頭部13bとを有している。この場合、ビス部材13は、軸部13aが裏蓋3の貫通孔3a、モータケース6の取付部6aの取付孔6b、および押え板9の脚部11の折曲部11aに設けられた挿入孔11bのすべてを重ね合わせた長さよりも長く形成されている。
【0023】
これにより、ビス部材13は、軸部13aが、裏蓋3の貫通孔3a、モータケース6の取付部6aの取付孔6b、および押え板9の脚部11の折曲部11aに設けられた挿入孔11bに挿入されて、頭部13bが裏蓋3の裏面に当接した際に、軸部13aの上端部が押え板9の脚部11における折曲部11aの上方に突出するように構成されている。この軸部13aの上端部には、抜止め部材14が取り付けられる取付溝13cが環状に設けられている。
【0024】
抜止め部材14は、図4および図6(e)に示すように、Eリングなどの抜止めリングであり、ビス部材13の軸部13aが裏蓋3の貫通孔3a、モータケース6の取付部6aの取付孔6b、および押え板9の脚部11の折曲部11aに設けられた挿入孔11bに順次挿入されて、軸部13aの上端部が押え板9の脚部11における折曲部11aの上方に突出した際に、この突出した上端部の取付溝13cに装着されることにより、ビス部材13が裏蓋3の裏面側に抜け出さないように構成されている。
【0025】
これにより、振動伝達締結部材7は、図4に示すように、押え板9の脚部11における折曲部11aの上方に突出した軸部13aの上端部の取付溝13cに抜止め部材14が装着された際に、ビス部材13の頭部13bが裏蓋3の裏面に当接して、押え板9の脚部11の折曲部11aをモータケース6の取付部6aに押し付けると共に、モータケース6の取付部6aを裏蓋3の内面に押し付けることにより、押え板9およびモータケース6を裏蓋3に取り付けて固定し、この状態で振動モータ5の振動を裏蓋3の裏面側の外部に伝えるように構成されている。
【0026】
この場合、振動伝達締結部材7のビス部材13には、図4および図6(e)に示すように、複数の防水リング15が軸方向に沿って取り付けられている。すなわち、ビス部材13の軸部13aの外周面には、複数の環状溝13dが軸方向に沿って所定間隔で設けられている。複数の防水リング15は、それぞれゴムなどの弾性材料からなり、その各外周部が軸部13aの外周面から突出した状態で、軸部13aの各環状溝13dにそれぞれ装着されている。
【0027】
これにより、複数の防水リング15は、図4に示すように、ビス部材13の軸部13aが裏蓋3の貫通孔3aおよびモータケース6の取付部6aの取付孔6bに挿入された際に、裏蓋3の貫通孔3aの内周面およびモータケース6の取付部6aにおける取付孔6bの内周面にそれぞれ圧接して、裏蓋3の貫通孔3aの防水、およびモータケース6の取付部6aにおける取付孔6bの防水を図るように構成されている。
【0028】
次に、このような腕時計の作用について説明する。
まず、裏蓋3に振動モータ5を取り付ける場合には、予め、振動モータのモータ部5aをモータケース6内に取り付ける。このときには、振動モータ5の一対の偏心回転部5bをモータケース6の両側に突出させた状態で、モータ部5aをモータケース6内に配置すると共に、このモータ部5aをモータケース6の内面に両面粘着テープや接着剤などの接着固定部材8によって密着させて固定する。
【0029】
この状態で、モータケース6に押え板9を配置する。このときには、押え板9の押え部10をモータケース6の上部に対応させ、この状態で押え部10と振動モータ5のモータ部5aとの間に弾性部材12を配置する。そして、押え部10をモータケース6の上部に配置して、モータ部5aの回路部5cを押え部10の開口部10aに挿入すると共に、一対の脚部11をモータケース6の両側の外面に沿って移動させて、一対の脚部11の各折曲部11aをモータケース6の両側部に位置する各取付部6a上に配置させる。
【0030】
この状態で、モータケース6を裏蓋3の内面に配置して、モータケース6の各取付部6aの各取付孔6bを裏蓋3の一対の貫通孔3aに対応させると共に、モータケース6の両側に突出した振動モータ5の一対の偏心回転部5bを裏蓋3の一対の凹部3bにそれぞれ対応させる。そして、振動伝達締結部材7のビス部材13を、裏蓋3の裏面側から各貫通孔3a、モータケース6の各取付部6aの各取付孔6b、および押え板9の一対の脚部11の各折曲部11aに設けられた各挿入孔11bに順次下側から挿入させる。
【0031】
このときには、予め、ビス部材13の軸部13aに設けられた複数の環状溝13dに複数の防水リング15をそれぞれ装着させて、各防水リング15の外周部を軸部13aの外周面から突出させる。この状態で、ビス部材13の軸部13aを、裏蓋3の裏面側から各貫通孔3aに挿入すると共に、モータケース6の各取付部6aの各取付孔6bに挿入させ、かつ押え板9の一対の脚部11の各折曲部11aに設けられた各挿入孔11bに挿入させて、ビス部材13の軸部13aを上方にて突出させる。
【0032】
これにより、ビス部材13の各防水リング15が裏蓋3の貫通孔3aの内周面およびモータケース6の取付部6aの取付孔6bの内周面にそれぞれ圧接して、裏蓋3の貫通孔3aの防水、およびモータケース6の取付部6aにおける取付孔6bの防水が図られる。この状態で、ビス部材13の頭部13bを裏蓋3の裏面に当接させて、押え板9の一対の脚部11の各折曲部11aの上方に突出したビス部材13の軸部13aの上端部に位置する取付溝13cに抜止め部材14を取り付ける。
【0033】
これにより、振動伝達締結部材7によって押え板9の脚部11の折曲部11aがモータケース6の取付部6aに押し付けられると共に、モータケース6の取付部6aが裏蓋3の内面に押し付けられて、押え板9およびモータケース6が裏蓋3に取り付けられる。このときには、押え板9の押え部10が振動モータ5のモータ部5aをモータケース6内に押し付けると共に、押え部10とモータ部5aとの間に配置された弾性部材12の弾性力によってモータ部5aをモータケース6内に弾力的に押し付ける。
【0034】
このようにして、振動モータ5が固定されたモータケース6が裏蓋3に取り付けられた腕時計ケース1を腕に取り付けて使用する場合には、裏蓋3の裏面およびこの裏蓋3の裏面から外部に突出したビス部材13の頭部13bが腕に接触する。この状態で、振動モータ5のモータ部5aが回転すると、このモータ部5aの回転によって一対の偏心回転部5bが偏心回転して振動を発生する。
【0035】
すると、振動モータ5の振動によってモータケース6が振動し、このモータケース6の振動が振動伝達締結部材7のビス部材13に伝達され、この伝達された振動によってビス部材13が振動する。このときには、振動伝達締結部材7のビス部材13に取り付けられた防水リング15によって、ビス部材13の振動が、裏蓋3に伝わり難く、裏蓋3の裏面側の外部に効率良く伝達される。これにより、裏蓋3の裏面に位置して腕に接触しているビス部材13の頭部13bが振動するので、このビス部材13の頭部13bの振動が腕に伝わることになる。
【0036】
このように、この腕時計によれば、腕時計ケース1と、この腕時計ケース1内に組み込まれるモータケース6と、このモータケース6内に固定された振動モータ5と、モータケース6を腕時計ケース1の一部である裏蓋3に固定し、振動モータ5で発生した振動を腕時計ケース6の外部に伝える振動伝達締結部材7とを備えていることにより、少ない消費電力で振動モータ5を振動させて、効率良く振動モータ5の振動を外部に伝えることができる。
【0037】
すなわち、この腕時計によれば、腕時計ケース1を腕に取り付けた状態で、振動モータ5が振動すると、この振動モータ5の振動によってモータケース6を振動させることができ、このモータケース6の振動を振動伝達締結部材7によって腕に伝えることができる。このため、腕時計ケース1の裏蓋3を振動させる必要がないので、少ない消費電力で振動モータ5を振動させて、モータケース6を確実にかつ良好に振動させることができ、これにより振動モータ5の振動を効率良く腕に伝えることができる。
【0038】
また、この腕時計では、振動伝達締結部材7が、腕時計ケース1の裏蓋3に設けられた貫通孔3a、およびモータケース6に設けられた取付部6aの取付孔6bに挿入するビス部材13と、このビス部材13に取り付けられて、腕時計ケース1の裏蓋3にモータケース6の取付部6aを取り付ける抜止め部材14とを備えていることにより、ビス部材13と抜止め部材14とでモータケース6を裏蓋3に確実にかつ良好に取り付けることができると共に、ビス部材13によって振動モータ5で発生した振動を裏蓋3の外部に確実にかつ良好に伝達することができる。
【0039】
この場合、振動伝達締結部材7の抜止め部材14は、Eリングなどの抜止めリングであり、ビス部材13の軸部13aに環状に設けられた取付溝13cに装着されて、モータケース6を裏蓋3に取り付ける構成であることにより、振動モータ5の振動によってモータケース6および振動伝達締結部材7のビス部材13が振動しても、抜止め部材14が緩んで脱落することがないため、モータケース6を裏蓋3に確実にかつ良好に取り付けることができる。
【0040】
また、この腕時計では、振動モータ5のモータ部5aをモータケース6の内面に密着させて固定する接着固定部材8を備えているので、この接着固定部材8によって振動モータ5のモータ部5aをモータケース6の内面に密着させた状態で、確実にかつ良好に固定することができ、これにより振動モータ5の振動をモータケース6に確実に伝達することができるので、モータケース6を振動モータ5の振動に応じて良好に振動させることができる。
【0041】
また、この腕時計では、振動モータ5をモータケース6内に押し付ける押え板9を備えているので、この押え板9によって振動モータ5をモータケース6に確実に押え付けることができ、これによっても振動モータ5の振動をモータケース6に確実に伝達することができるので、モータケース6を振動モータ5の振動に応じて確実にかつ良好に振動させることができる。
【0042】
この場合、押え板9は、モータケース6の上部に配置される押え部10と、モータケース6の取付部6aに取り付けられる一対の脚部11とを備えているので、振動伝達締結部材7によってモータケース6を裏蓋3に取り付ける際に、この振動伝達締結部材7によって一対の脚部11をモータケース6の取付部6aと共に裏蓋3に取り付けることができ、これにより取付作業の効率化を図ることができると共に、部品点数の削減をも図ることができる。
【0043】
さらに、この腕時計では、振動モータ5と押え板9との間に弾性部材12が配置されているので、押え板9によって振動モータ5をモータケース6に押え付ける際に、弾性部材12の弾性力によって振動モータ5をモータケース6に押え付けることができ、これにより振動モータ5をモータケース6の内面に良好に密着させることができるので、振動モータ5の振動をモータケース6に良好に伝達することができる。
【0044】
また、この腕時計では、振動伝達締結部材7に防水リング15が設けられているので、この防水リング15によって裏蓋3の貫通孔3aの防水、およびモータケース6の取付部6aの取付孔6bの防水を図ることができると共に、モータケース6の振動によって振動伝達締結部材7が振動した際に、その振動が裏蓋3に伝わるのを防いで、振動伝達締結部材7によってモータケース6の振動を効率良く外部に伝えることができる。
【0045】
すなわち、防水リング15は、振動伝達締結部材7のビス部材13を裏蓋3の貫通孔3aおよびモータケース6の取付部6aの取付孔6bに挿入した際に、裏蓋3の貫通孔3aの内周面およびモータケース6の取付部6aにおける取付孔6bの内周面にそれぞれ圧接するので、裏蓋3の貫通孔3aの防水およびモータケース6の取付部6aの取付孔6bの防水を確実にかつ良好に図ることができるほか、振動伝達締結部材7の振動を裏蓋3に伝え難くして効率良く外部に伝えることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、モータケース6を直接裏蓋3の内面に配置させて取り付けた場合について述べたが、これに限らず、例えば図7に示す変形例のように、モータケース6と裏蓋3との間に緩衝部材20を配置して、モータケース6を裏蓋3の内面に取り付けるように構成しても良い。
【0047】
このように構成すれば、緩衝部材20を介してモータケース6を裏蓋3に取り付けた状態で、振動モータ5を振動させてモータケース6を振動させた際に、緩衝部材20によってモータケース6の振動が裏蓋3に伝わらないように緩衝することができる。このため、振動モータ5の振動によってモータケース6のみを確実にかつ良好に振動させることができるので、上述した実施形態よりも、少ない消費電力で振動モータ5を振動させて、モータケース6を効率良く良好に振動させることができると共に、その振動を振動伝達締結部材7によって外部に良好に伝えることができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、振動伝達締結部材7のビス部材13を腕時計ケース1の裏蓋3およびモータケース6の取付部6aに取り付ける抜止め部材14として、Eリングなどの抜止めリングを用いた場合について述べたが、これに限らず、例えば割りピンなどのピン部材を用いても良い。この場合には、モータケース6の取付部6aの取付孔6bから突出するビス部材13の軸部13aの先端部にピン挿入孔を設ければ良い。
【0049】
また、これに限らず、ビス部材13に取り付けられて、腕時計ケース1の裏蓋3にモータケース6の取付部6aを取り付ける抜止め部材14は、ダブルナットでも良い。この場合には、モータケース6の取付部6aの取付孔6bから突出するビス部材13の軸部13aの先端部にねじ部を設け、このねじ部に2つのナットを螺合させて互いに締め付けることにより、振動モータ5の振動によってダブルナットが緩まないように構成すれば良い。
【0050】
また、上述した実施形態では、振動伝達締結部材7に複数の防水リング15を設け、これら複数の防水リング15を、裏蓋3の貫通孔3aの内周面およびモータケース6の取付部6aにおける取付孔6bの内周面にそれぞれ圧接させた構成である場合について述べたが、これに限らず、振動伝達締結部材7に設ける防水リング15は、裏蓋3の貫通孔3aの内周面に圧接する箇所だけに設けた構成であっても良い。
【0051】
さらに、上述した実施形態では、押え板9を振動伝達締結部材7によってモータケース6と共に裏蓋3に取り付けた場合について述べたが、これに限らず、例えば押え板9を別部材でモータケース6に取り付けるように構成しても良く、また押え板9を別部材で裏蓋3に取り付けるように構成しても良い。
【0052】
なおまた、上述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えば懐中時計などの携帯型の時計にも適用することができるほか、必ずしも時計に限らず、携帯電話機などの携帯型の電子機器にも広く適用することができる。この場合には、携帯電話機などの電子機器の機器ケースの底部または側部にモータケース6を振動伝達締結部材7によって固定するように構成すれば良い。
【0053】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0054】
(付記)
請求項1に記載の発明は、機器ケースと、この機器ケース内に組み込まれるモータケースと、このモータケース内に固定された振動モータと、前記モータケースを前記機器ケースの一部に固定し、前記振動モータで発生した振動を前記機器ケースの外部に伝える振動伝達締結部材とを備えていることを特徴とする電子機器である。
【0055】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子機器において、前記振動伝達締結部材は、前記機器ケースの前記一部に設けられた貫通孔および前記モータケースに設けられた取付部の取付孔に挿入し、前記機器ケースの外部に突出するビス部材と、このビス部材に取り付けられ、前記機器ケースの前記一部に前記モータケースの前記取付部を固定する抜止め部材とを備えていることを特徴とする電子機器である。
【0056】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子機器において、前記振動モータを前記モータケースの内面に密着させて固定する接着固定部材を備えていることを特徴とする電子機器である。
【0057】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子機器において、前記振動モータを前記モータケース内に押し付ける押え板を備えていることを特徴とする電子機器である。
【0058】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電子機器において、前記振動モータと前記押え板との間には、弾性部材が配置されていることを特徴とする電子機器である。
【0059】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電子機器において、前記モータケースと前記機器ケースとの間には、緩衝部材が配置されていることを特徴とする電子機器である。
【0060】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子機器において、前記振動伝達締結部材には、防水リングが設けられていることを特徴とする電子機器である。
【符号の説明】
【0061】
1 腕時計ケース
3 裏蓋
3a 貫通孔
5 振動モータ
6 モータケース
6a 取付部
6b 取付孔
7 振動伝達締結部材
8 接着固定部材
9 押え板
10 押え部
11 脚部
12 弾性部材
13 ビス部材
14 抜止め部材
15 防水リング
20 緩衝部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7