特許第6094761号(P6094761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アースローゲン ゲーエムベーハーの特許一覧 ▶ シュナイダー,ウルリッヒの特許一覧

<>
  • 特許6094761-自己タンパク質の製造方法 図000003
  • 特許6094761-自己タンパク質の製造方法 図000004
  • 特許6094761-自己タンパク質の製造方法 図000005
  • 特許6094761-自己タンパク質の製造方法 図000006
  • 特許6094761-自己タンパク質の製造方法 図000007
  • 特許6094761-自己タンパク質の製造方法 図000008
  • 特許6094761-自己タンパク質の製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094761
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】自己タンパク質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20170306BHJP
   A61K 38/00 20060101ALN20170306BHJP
   A61K 35/16 20150101ALN20170306BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20170306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   C07K14/47
   !A61K37/02
   !A61K35/16 Z
   !A61P19/02
   !A61P43/00 111
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-517009(P2013-517009)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-537516(P2013-537516A)
(43)【公表日】2013年10月3日
(86)【国際出願番号】DE2011001322
(87)【国際公開番号】WO2012010128
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年4月22日
(31)【優先権主張番号】102010026500.4
(32)【優先日】2010年7月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513005372
【氏名又は名称】アースローゲン ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】513005383
【氏名又は名称】シュナイダー,ウルリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ウルリッヒ
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0108612(US,A1)
【文献】 特表2001−515088(JP,A)
【文献】 特表2009−530613(JP,A)
【文献】 Nanomedicine (2009) vol.5, issue 2, p.106-117
【文献】 J. Immunol. Methods (2007) vol.328, issue 1-2, p.201-203
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液又は血清および金粒子を含む、血清をつくるための薬物として用いるための物質混合物であって、
ゲルゾリンに対する関連標準血液レベルの少なくとも2倍であるゲルゾリン含量を有する物質混合物。
【請求項2】
前記薬物は、ゲルゾリンの欠乏と関連する疾病の治療用に好適なものとして考慮される、請求項1に記載の物質混合物。
【請求項3】
前記薬物は、組織退行と関連する疾病の治療用に好適なものとして考慮される、請求項1に記載の物質混合物。
【請求項4】
前記疾病は関節症であり、また前記薬物は関節症の治療用に好適なものとして考慮される、請求項3に記載の物質混合物。
【請求項5】
金粒子を含有する容器内に血清収集されるステップと、前記血清と金粒子の混合物培養されるステップと、次に前記金粒子血清から除去され廃棄されるステップを含む、薬物として用いるためのサイトカイン−濃縮およびゲルゾリン−濃縮された血清を作成する方法
【請求項6】
ゲルゾリンに対する関連標準血液レベルの少なくとも2倍であるゲルゾリン含量を有する前記血清を作成する、請求項5に記載の方法
【請求項7】
前記金粒子および血液細胞および/またはその他の不溶性成分は、血清から除去して廃棄される、請求項5または6に記載の方法
【請求項8】
前記金粒子は10nm〜1μmの大きさである、請求項5〜7のうちいずれか1項に記載の方法
【請求項9】
前記金粒子は、10ml容器当たり10〜10の金粒子量、または1mlの血液/容器当たり10nm〜1μm直径を有する金粒子量0.3mgで存在する、請求項5〜8のうちいずれか1項に記載の方法
【請求項10】
前記薬物は、組織退行と関連する疾病の治療用に好適なものとして考慮される、請求項5〜9のうちいずれか1項に記載の方法
【請求項11】
前記疾病は関節症であり、また、前記薬物は関節症の治療用に好適なものとして考慮される、請求項10に記載の方法
【請求項12】
前記薬物は、ゲルゾリンの欠乏と関連する疾病の治療用に好適なものとして考慮される、請求項5〜9のうちいずれか1項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に体液を充填し、培養して、治療有効性タンパク質を体液から形成させる、容器内で少なくとも1つの治療有効性タンパク質またはタンパク質混合物を製造する方法に関する。また、本発明は、前記方法を実施するための容器、および上記の通りに製造されたタンパク質を活性成分として含有する薬物に関する。
【背景技術】
【0002】
退行性関節疾患は、ヒトおよび動物のいずれにも非常に重要である。ヒトの場合、関節症は、老人患者に特発的に(公知の危険因子により)発生するか、または外傷(post−trauma)によって若い患者に合併症として発生することがある。しかし、両方の形態は、関節痛および機能制限のような同一の臨床症状を有し、また、発病患者にとって非常に制限された生活の質をもたらす。過荷重、不適切な荷重、関節不安定性またはその他の感染のような様々な原因が関節軟骨(articularcartilage)の機械的および酵素的な損傷と共に軟骨細胞のアポトーシス(apoptosis)を招き、さらには、II型コラーゲンおよびの損失も招く。ここで、退行とリペアー(repair)間の不均衡が存在する。軟骨退行は、発病の中心ではあるが、前記疾患は、軟骨だけでなく、関節嚢と軟骨下骨にも影響を及ぼす。軟骨損傷の場合、分解産物は、滑液(synovial fluid)に到達して滑膜炎を招く。また、関節嚢の損傷は、直接的に炎症性メディエータの放出を招き、さらに、深刻な外傷を受けた関節嚢も関節不安定性を招く。周期的な高荷重の場合、軟骨下骨板は骨密度の増加によって適応する。しかし、このような硬化の結果として、骨は次第に固まってさらにつぶれ易くなる。これは、第1には、衝撃吸収能の減少を招いて、上に置いた軟骨に対してより荷重を与えるようになり、第2には、軟骨下骨板と石灰化した骨(mineralized bone)との間の転移に剪断力を招く。関節症および/または骨関節炎および/またはその他の関節疾患にかかった馬の場合、滑液において、炎症誘発性(proinflammatory)(炎症−促進)サイトカイン腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン1(IL−1)およびインターロイキン6(IL−6)とプロスタグランジンE2(PGE2)およびメタロプロテアーゼの濃度増加が測定されてきた。関節症にかかったヒトの場合、炎症誘発性サイトカインの濃度が血液および滑液においてやはり増加した。
【0003】
炎症誘発性(炎症−促進)サイトカインTNFα、IL−1およびIL−6は、滑膜のB型滑膜細胞(Synoviocyti secretorii)により、滑膜から炎症細胞によって、および軟骨細胞によって分泌され、またマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)およびアグリカナーゼの放出とプロスタグランジン(PGE2)または酸化窒素(NO)のような他の炎症性メディエータの放出を刺激する。メタロプロテアーゼは、軟骨のマトリックス(II型コラーゲン、プロテオグリカンを含む)を分解する酵素である。また、IL−1およびTNFαは、II型コラーゲンの産生を直接的に抑制する。
【0004】
大半の場合、退行性関節疾患に対する通常の療法としては炎症の対症(symptomatic)治療が行われており、すなわち、適切な薬物を用いた全身的または関節内の炎症抑制からなる。これらは、時々、ヒアルロン酸と組み合わせられるコルチコステロイドを含み、関節内に投与され、また、最も多く用いられる。また、軟骨保護剤も時々投与される。しかし、これらの薬物療法は色々な悪い効果を有する。
【0005】
対症療法(非ステロイド性およびステロイド性消炎剤が基本)に対する代案は、「疾病調節(disease−modifying)薬物」とも呼ばれるサイトカイン抑制剤または軟骨保護剤を用いた治療によってなされる(Qvist et al.2008)。これらは、患者の血液から内因性(自己)タンパク質を得、これを個別薬物として患者に再投与する療法を含む。
【0006】
WO 9909051号は、(動物またはヒト)患者から以前に得た体液サンプルによって治療有効性、自己(内因性)タンパク質を製造する方法および前記方法を実施するための注射器を開示する。言及した前記方式によって得ることができるタンパク質は、エリスロポエチン、インスリン、インターフェロン、インターロイキン4、インターロイキン10、溶解性腫瘍壊死因子受容体およびインターロイキン−1受容体拮抗剤である。前記タンパク質は、注射器において製造して提供される。
【0007】
注射器内に配列された粒子、特に硫酸クロムによって含浸したガラス球を含む注射器の内部構造は、所望するタンパク質の生合成を刺激するように、固定化した誘導剤によってコーティングされる。体液サンプルとして血液の場合、抗炎症性タンパク質を形成する血液中に含まれた単球を刺激するための誘導剤として、免疫グロブリン、より好ましくは免疫グロブリンGが考慮される。
【0008】
前記方法は、注射器に患者から得た体液を充填して培養することによって実施される。前記治療有効性タンパク質は体液から形成される。
【0009】
このような方式によって濃縮された体液は、注射器に滅菌保存されてもよく、また、必要な場合は、追加の処理を行うことなく、または、例えば遠心分離および/または滅菌濾過した後に患者に直接に再導入することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、生成されたタンパク質が相当に多量に存在し、また、好ましくない副作用を避けるようにする方法を開発するかまたは変形することにある。
【0011】
前記目的は、容器が金粒子を含有する、最初に言及した類型の方法を提供することによって達成される。
【0012】
用語「容器」は、以下では、液体を所定時間保存するための閉じることができる器または閉じることができる保存器を意味し、前記器または保存器は収容する液体に対して漏れ防止性である。
【0013】
金を薬物として用いることは、医薬において昔から知られている。19世紀末頃、金は特に結核治療のための薬物として用いられた。リューマチ性関節炎が一種の感染疾病という間違った仮定により、金がこの疾病に対する薬物として用いられた。この療法は成功的であって、今日まで多年間用いられた(Kean and Kean 2008)。ヒト軟骨細胞に対する試験管内(in vitro)研究は、金化合物(金チオリンゴ酸塩:aurothiomalate)が軟骨細胞による酸化窒素(NO)の生成を抑制することを示した。酸化窒素は、炎症誘発性サイトカインIL−1およびTNFαの破壊効果を媒介する(Green et al.2006)。これは、減少したコラーゲンおよびプロテオグリカンの産生、軟骨細胞のアポトーシスおよびメタロプロテアーゼの刺激を招く(Vuolteenaho et al.2005)。
【0014】
従来技術に公知された治療方法において、金は、筋肉内にまたは経口投与される。しかし、これらの投与方法および適切な金薬剤を用いることによっては、試験管内研究から公知の所望する効果がある程度のみ達成される。
【0015】
本発明による方法に初めて用いられる、閉鎖系において、金粒子と、ヒトまたは動物の自己由来(autologous)または相同(homologous)の体液、特にその血液サンプルとの組み合わせは、驚くべきことに、(i)従来の公知の方法に比べ、明らかにより高い濃度の所望するタンパク質、特に血液の場合は、サイトカイン(特にIL−1、IL−6、IL−8、IL−10、G−CSF、MCP−1、MIP−1、RANTES、TNF−α、GRO−α、MCP−3、MIFおよびIL−1RA)だけでなく、(ii)培養時間の間に生理学的タンパク質の老化抑制に起因したより優れた品質の考慮中のタンパク質、および(iii)タンパク質ゲルゾリン(gelsolin)の顕著な蓄積を提供する。ゲルゾリンは、全ての動物細胞(ヒト細胞を含む)内に、また細胞外に(例えば、血漿内に)偏在するアクチン結合タンパク質であり、Ca2+依存的アクチンフィラメントを断片化し再重合化することを防止し、また、アクチン−フィラメント結合および分離方法の調節に核心作用を有するか/充足する。ゲルゾリンは、細胞質抽出物から発見し確認され、また、運動性(motile)細胞におけるその偏在と系統発生的な保存は、細胞内の調節タンパク質として必須的な役割を提示する。その後、ゲルゾリンは、哺乳動物の血漿からも生じ、また、そこでアクチンを解重合(depolymerize)するものとして明らかになった。このような、いわゆる血漿ゲルゾリン(pGelsolin、pGS)は、細胞質ゲルゾリン(cGelsolin、cGS)のイソ型(isoform)であり、また、N−末端において付加的な23個のアミノ酸を有するという点で構造的に相違する。血漿ゲルゾリンの生理学的な作用は、依然として数多くの研究作業の主題でもある(DiNubriu、2007およびこれに引用された文献)。ゲルゾリンは、細胞運動性、食菌作用、アポトーシスおよび血小板の活性化のような重要な細胞作用を調節する(Silacci et al.2004、Trickey et al.2004)。リューマチ性関節炎にかかったヒトの場合、ゲルゾリンの血漿濃度が減少する(Osborn et al.2008)。組織退行を含む他の疾患の場合および特に敗血症の場合、前記ゲルゾリンの血漿濃度もまた減少する(Suhler et al.1997、Osborn et al.2008、Lee et al.2007)。従来技術は、血漿ゲルゾリンが体の過度な炎症反応を吸収するための緩衝剤として作用することを示す(DiNubile 2008)。
【0016】
本発明による方法を利用して生産されたタンパク質、特にゲルゾリンおよびサイトカインは、容器内に位置した液体の他の成分と共に直接的な方式により、すなわち、例えば遠心分離、滅菌濾過または他の容器への伝達のような追加の操作を行うことなく、患者に再投与することができる(しかし、必ずしもそうではない)。その結果、タンパク質溶液の汚染を避け、且つ、タンパク質を投与する間の患者の感染危険を最小化する。
【0017】
本発明による方法の本発明による変形において、前記金粒子は、試験管内で培養した後に体液、例えば血清から除去して廃棄される。この利点は、前記体液、例えば前記血清を投与する間または投与した後、金誘導された悪い効果を完全に避けるものである。
【0018】
本発明による方法の本発明による好ましい変形において、前記金粒子および体細胞(例えば、血液細胞)およびその他の不溶性凝集物は、試験管内で培養した後に体液(例えば、血清)から除去して廃棄される。自己由来のヒト体液、および特に製造された前記種類の血清は容認性が卓越し、さらに、悪い影響は予想されない。
【0019】
前記方法に用いられた金粒子は、好ましくは所定構造および/または所定大きさを有する。10nm〜500μm範囲の粒子大きさを有する微細粒子および/またはナノ粒子が特に好適である。
【0020】
金粒子が試験管内での培養後に体液、例えば血清から除去して廃棄される本発明による方法の変形において、好ましくは約1μmの大きさの金粒子が、より好ましくは10ml当たり10〜10の金粒子量として前記方法に用いられる。前記用途の場合、容量が約10mlである容器(例えば、注射器)が実際に有用であるとして明らかになった。
【0021】
実際の使用で成功的であるものとして立証された一実施例において、前記金粒子は、1mlの体液当たり0.3mgの量で容器内に存在する。原則的には、1ml当たり0.1〜10mgの濃度が好適であると考慮される。
【0022】
容器の内部構造は、好ましくは、ヘパリン、クエン酸塩、EDTAまたはCPDAのような抗凝固剤を有しないが、本発明が基本とする作業の一部として、驚くべきことに、これらの物質の不在下でよりはこれらの物質の存在下で幾つかのタンパク質が生合成されることが明らかになったためである。特に体液である血液および抗凝固剤であるヘパリンの場合、ヘパリンおよびその他の抗凝固剤の不在下でよりは、例えば容器内壁のコーティングとしてヘパリンの存在下で相当に低いサイトカインの産生が得られた。
【0023】
可能な容器は特に注射器であり、これは、培養容器として用いることができるだけでなく、それと同時に体液を得るための収集機構として、および/またはタンパク質を患者に投与するための投与機構として好適であるためである。
【0024】
しかし、他の可能な容器は密封可能なポーチであり、これは、特に比較的に大きい体積である場合、相応する体積の注射器に比べてより柔軟に取り扱いして保存することができ、また、技術的に簡単で信頼性のある方式で注射器にカップリングすることができるためであり、また、前記注射器を介して充填や空にすることができるためである。
【0025】
本発明による方法は、血液細胞からタンパク質を生成(生合成)し蓄積するのに特に好適である。したがって、特に血液、好ましくは血清が体液として考慮される。
【0026】
驚くべきことに、前記治療有効性タンパク質ゲルゾリンは、本発明による方法を利用して生成され、また、特に効果的に、すなわち相当の量に蓄積される。したがって、本発明による方法は、特にゲルゾリンを得るためのものである。
【0027】
体液で充填された容器に対する培養条件に関しては、20℃〜41℃、好ましくは37℃の温度で、12〜72時間、好ましくは24時間の培養時間が良好な結果をもたらすことが実際に明らかになった。
【0028】
上述した目的は、体液から治療有効性タンパク質を試験管内で生合成し蓄積(試験管内誘導)するための容器を提供することによって達成され、これは、容器が金粒子を含有し、また体液サンプルを収集し、保存し、再分配するのに好適であるという事実と、内容物が中空(hollow)針(カニューレ、注射針)によって注射されるように中空針(カニューレ、注射針)とカップリング可能であるという事実を特徴とする。
【0029】
前記容器を利用し、上述したタンパク質の製造方法を実施することができ、また、それと関連する利点を利用することができる。前記製造されたタンパク質は、カップリング可能な中空針によって所望する投与部位に直接投与、特にヒトまたは動物の体内に導入することができる。
【0030】
前記金粒子は、好ましくは所定構造および/または所定大きさを有する。微細粒子および/またはナノ粒子(10nm〜500μmの粒子大きさ)が特に好適である。容器中の金粒子の適切な量は、1mlの体液当たり0.1mg〜10mg、好ましくは1mlの体液当たり0.3mgである。
【0031】
前記容器は、好ましくは注射器またはポーチである。注射器の利点は、培養容器として用いられるだけでなく、それと同時に体液を得るための収集機構および/またはタンパク質を患者に投与するための投与機構として用いられるということである。ポーチの利点は、比較的に大きい体積である場合、相応する体積の注射器に比べ、より柔軟に取り扱いして保存することができ、また、充填や空にするために注射器にカップリングできるということである。
【0032】
特に好適な容器は、内部の空洞に特定デザインを有しない市販の注射器(例えば、5〜100ml注射器)である。前記金粒子(例えば、Bio−Rad Laboratoriesから入手したGold Microcarriers、カタログ165−2264)は、注射器のシリンダーに導入される。
【0033】
注射器、特に注射器シリンダーの内壁およびシリンダー内にある注射器プランジャー(plunger)の一部は、好ましくはプラスチック、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ポリプロピレン(中性S−Monovettes、Sarstedt)または類似する物質またはその混合物からなる。
【0034】
前記容器は、血液細胞からタンパク質、特にゲルゾリンを製造(生合成)し、また蓄積するのに特に好適である。したがって、特に血液、好ましくは血清が体液として考慮される。
【0035】
本発明による方法を利用して体液から生成されたタンパク質は、前記体液および金粒子と共にまたは金粒子なしで疾病治療のための薬物として用いられる。
【0036】
本発明による方法を利用して製造された前記タンパク質−濃縮された(protein−enriched)、および特にサイトカイン−濃縮されたおよびゲルゾリン−濃縮された体液、特に血清はより安全であり、低価で迅速に製造することができ、また、悪い影響が特に少ないため、通常の相応する薬物製剤に対する代案を提示する。
【0037】
したがって、本発明は、体液、特に血清と金粒子の混合物を培養(例えば、20℃〜41℃、好ましくは37℃の温度で、12〜72時間、好ましくは24時間)することにより、その次、金粒子および好ましくは(すなわち、場合に応じて)付加的に血液細胞およびその他の不溶性成分を体液、特に血清から除去して廃棄(好ましくは、遠心分離および/または滅菌濾過により)することにより、金粒子、好ましくは約1μmの大きさであり、また、好ましくは10ml容器当たり10〜10の金粒子(または1mlの血液/容器当たり1μmの直径を有する金粒子0.3mg)量として金粒子を含有する容器に収集される体液、特に血清によって得ることができる、薬物として用いるためのまたは薬物を製造するためのタンパク質−濃縮された体液、特にサイトカイン−濃縮されたおよびゲルゾリン−濃縮された血清を提供する。
【0038】
本発明は、自己由来または相同血液および金粒子の薬物として、または薬物製造のための用途を提供する。すなわち、本発明は、薬物として用いるための自己由来または相同血液および金粒子からなる物質混合物、または活性成分の組み合わせとして蓄積されたタンパク質をはじめとする自己由来または相同血液および金粒子からなる物質混合物を含む薬物を提供する。
【0039】
本発明による薬物は、簡単であり、安価であり、危険が少なく、さらに効果的な治療を許容する。
【0040】
記載された薬物は、退行性関節疾患、特に関節症および腱損傷(腱炎)の治療に特に好適である。特に金粒子と培養されてから粒子を除去した薬物は、関節症および組織退行および/またはゲルゾリンの欠乏と関連する他の疾病を治療するのに非常に好適なものとして考慮される。
【0041】
本発明による薬物の一特定実施例は、培養後、ゲルゾリンに対する関連標準血液レベルの少なくとも2倍であるゲルゾリン含量を有する、金粒子と培養された体液(特に、血液)であることを特徴とする。本内容において、用語「ゲルゾリンに対する関連標準血液レベル」は、薬物によって処理される患者グループの血液におけるゲルゾリンに対する医療的または獣医科的な標準値を意味する。前記患者グループは、動物学的な種、および人種、性別および年齢の面を特徴とする。このようなゲルゾリン−豊かな薬物は、患者の血液におけるゲルゾリンの欠乏と関連する疾病、例えば敗血症または中風(Stroke)の治療用として考慮される。
【0042】
培養された血液−金混合物は、全体的にまたは部分的に投与される。必要な場合、例えば、血液から細胞および細胞断片を除去するために、また、それと同時に注射体積を減少させるために、(動物またはヒト)患者に投与する前に遠心分離および/または滅菌濾過の処理を行うことができる。
本発明は、以下で例示的な実施例および関連図面を用いてより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】対照群と比較し、本発明による方法を実施する前(T0)および後(T24)の様々な患者の血清のタンパク質プロファイルのMID−FTIR分光分析。青色は、時間T0におけるタンパク質プロファイルを示し、緑色は、時間T24における、本発明による方法を利用して処理されたサンプルのタンパク質プロファイルを示し、赤色は、時間T24における対照血清のタンパク質プロファイルを示す。
図2】前記タンパク質の複合分析(multiplex analysis)の結果を示す。 GS=ゲルゾリン IL−4=インターロイキン−4 IL−10=インターロイキン−10 IL−13=インターロイキン−13 IL−1Ra=インターロイキン−1受容体拮抗剤 IL−1β=インターロイキン−1β TNF−a=腫瘍壊死因子α G−CSF=顆粒球−コロニー刺激因子 GM−CSF=顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子 IFN−g=インターフェロンγ SCGF−β=造血幹細胞成長因子 MIP−1a=マクロファージ炎症性タンパク質−1a MIP−1β=マクロファージ炎症性タンパク質−1β VEGF=血管内皮成長因子 IL−18=インターロイキン−18 MCP−3=マクロファージ走化性タンパク質 SDF−a=ストロマ由来因子 塩基性FGF=線維芽細胞成長因子 GROa=成長−調節された発癌遺伝子α 時間T0(「TO」)における血液サンプル、および24時間培養した後、一方では追加の処理を行うことなく(「対照群」)、また他の一方ではWO 9909051号による処理(「StdT」)、または本発明(「本発明」)による方法によって処理する。
図3】各再調査時間において、本発明による治療前後に全ての調査された馬の膨潤程度のグラフを示す。
図4】各再調査時間において、本発明による治療前後に全ての調査された馬の跛行(lameness)程度のグラフを示す。
図5】膝関節症にかかった患者の治療前後のKOOS点数を示す。
図6】第1(T1)、第2(T2)および第3(T3)注射後、時間経過に伴って膝関節症にかかった患者の滑液における流出(effusion)およびゲルゾリン濃度を示す。
図7】治療後の移植物/軟骨製剤のプロテオグリカンの放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
実施例1:本発明による方法による血液サンプル、また、本発明による容器における、タンパク質の生産をMID−FTIR分光測定法および複合分析によって確認
11人の相異なる患者(番号1−11)の各々から2個の9ml血液サンプルを本発明による容器、すなわち2.7mgの金粒子(1μmの直径を有する)で予め充填された9ml注射器に収集した。同一供給源(患者)から同量の血液サンプルを、いかなる金粒子も含有しない類似する9ml注射器内に収集した。前記サンプルは、相異なる時期に、すなわち血液を取った直後の時間T0、および37℃で24時間培養した後の時間T24において分析した。
【0045】
前記サンプルは、中赤外線範囲(スペクトル範囲4000cm−1〜400cm−1)でフーリエ変換赤外分光測定器、すなわちMID−FTIR分光測定器(例えば、Micro−Biolytics GmbH/EsslingenからのAquaSpec方法)によって分析した。フーリエ変換赤外分光測定器をサポートする測定原理は、物質に電磁波を照射して特定の周波数範囲が吸収されることを基礎とする。赤外線放射線は、エネルギー的に分子結合の振動レベル範囲にあるため、吸収は結合の振動刺激を招く。これは、測定されたスペクトルにおいて屈折の形態として見ることができる(ダイアグラム)。したがって、必要なエネルギーまたは振動数は特定結合の特徴であるため、物質を確認し、構造を明確にすることができる。
【0046】
FTIR分光測定は、生物学的巨大分子において、構造的、反応−誘導された変形の分析に特に好適である。この方法を利用し、生物学的系、特にタンパク質−含有水性液体を調査することができる。前記サンプルは変形するか破壊されることもなく、また生体分子の天然条件下で作業が実施され、すなわちサンプルの固定も相異なる種類のサンプル製造も必要でないため、「実際状態」を測定することができる。
【0047】
タンパク質の全ての分子構成成分は赤外分光範囲で吸収バンドを有するため、タンパク質のほぼ全ての領域が観察され、またタンパク質の構造に対する詳細な情報も得ることができる。
【0048】
MID−FTIR分光測定方法は、タンパク質の構造およびタンパク質の濃度の測定において、自動化し、再現可能な変化の確認定量を許容する。非常に低いタンパク質濃度(0.1mg/ml未満)および非常に少ない構造の変化も検出することができる。
【0049】
本発明の内容による方法を実施する時、金粒子を有するかまたは有しない血液サンプルは、分光学的測定セル(透過セル)内の「実際状態」で分析しており、これは、非常に精密であり、生体に適合し、且つ、水性サンプルに適合であった。内部検量を利用し、溶解したタンパク質の濃度およびその二次構造(αヘリックス、βシート)は、各々の測定されたサンプルに対して自動に決定した。
【0050】
前記測定の結果は図1にグラフで示す。本発明により、金粒子の存在下で培養されたサンプルの生物学的挙動は、対照群サンプルの生物学的挙動と相異なることを示す。時間T0において全てのサンプルの測定された値は青色で示し、上部−左側の象限(quadrant)において優勢である。24時間の培養時間で本発明による方法を実施した後に測定された値は緑色で示し、下部−左側の象限内またはその近くにおいて優勢である。これは、血液を培養する間、生理学的タンパク質の老化(ageing)が金の付加によって抑制されることを示す。24時間培養した後の対照群サンプルの測定された値は赤色で示し、上部−右側の象限において優勢である。このような右側への移動はタンパク質構造の老化を示す。
【0051】
際立ってコード化した微細粒子(例えば、ミュンヘンに所在するBio−Rad Laboratoriesから入手可能なBioPlexTTM 200システム)を基本にした多変数分析法(同意語:複合分析)を利用し、本発明による方法と関連するサンプル(「本発明」)、WO 9909051号による方法と関連するサンプル(「StdT」)、およびいかなる処理もしない相応する対照群をもって、下記タンパク質を時間T0およびT24において定量測定した。
【0052】
ゲルゾリン(GS)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−1受容体拮抗剤(IL−1Ra)、インターロイキン−1β(IL−1β)、腫瘍壊死因子α(TNF−a)、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロンγ(IFN−g)、造血幹細胞成長因子(SCGF−β)、マクロファージ炎症性タンパク質−1a(MIP−1a)、マクロファージ炎症性タンパク質−1β(MIP−1β)、血管内皮成長因子(VEGF)、インターロイキン−18(IL−18)、マクロファージ走化性タンパク質(MCP−3)、基質(stromal)由来因子(SDF−a)、線維芽細胞成長因子(塩基性FGF)、成長−調節された発癌遺伝子α(GROa)。これらのタンパク質は、組織退行および組織リペアーに重要な役割をする。
前記分析結果を表1に示し、また、図2にグラフで示す。
【0053】
これらは、本発明によって処理されたサンプル(「本発明」)の場合は、24時間後にゲルゾリン濃度に相当な増加(10因子)が発生した反面、対照サンプルの場合は(「対照群T24」および「StdT T24」)、ゲルゾリンの蓄積よりはゲルゾリンの消失が発見されることを示す。腫瘍壊死因子α(TNF−a)、マクロファージ走化性タンパク質(MCP−3)、および成長−調節された発癌遺伝子α(「GROa」)の濃度は、対照群サンプル(「対照群T24」および「StdT T24」)よりは、本発明によって処理されたサンプル(「本発明」)の方が、実質的に(TNF−a:30−40因子;MCP−3:20−30因子)または少なくとも明らかに(GROa:2因子)より高かった。
【0054】
実施例2:動物における薬物効能の研究
A)軟質−組織の膨潤
有望な臨床研究の一部として、腱炎(骨に対する付着領域において腱(tendon)に対する退行性変化)による顕著な軟質組織の膨潤を有する8匹の馬を本発明による薬物で処理した。
【0055】
前記薬物を製造するために、金粒子−含有注射器形態の本発明による容器に関心動物から得た血液を充填し、37℃領域の温度で24時間培養した。培養期間の末期に、薬物は、前記期間の間に合成し蓄積されたタンパク質、特にサイトカインおよびゲルゾリン、および金粒子を含有する、注射器に位置した血液の形態で完成され、また直接に、また直ちに使われることができる。前記薬物は、注射器内で製造されたため、移さず、よって汚染および物質の損失なしで注射によって動物に投与される。
【0056】
現在の研究のために、各馬に対し、時間T0において4種の薬物−服用量を製造し、すなわち4個の金粒子−含有注射器に考慮中の動物から得た血液を充填し、37℃領域の温度で24時間培養した。
【0057】
これらの薬物注射剤を各場合において1週の間隔をおいて各馬に投与した。最初の投与は時間T24において実施し、また、第2回目、第3回目および第4回目の投与は、1週後、2週後、および3週後に実施した。第2回目、第3回目および第4回目の投与のための薬物−含有注射器は、使う時まで−20℃に保存した。
【0058】
膨潤状態は、1週後、2週後、3週後、3ケ月後、6ケ月後および1年後に確認し、0〜5基準を利用して評価した(0=全く膨潤されず、5=深刻な膨潤)。
全ての8個の場合において、3週後ぶりに顕著な膨潤の減少が発見された。6ケ月後および1年後にも、全ての馬は膨潤から完全に自由であった。治療する間にいかなる悪い効果も明らかになっていない。
この研究の結果は図3にグラフで示す。
【0059】
B)跛行(Lameness)
他の馬研究において、跛行するという臨床症状(12個の肢が影響を受ける)を示す11匹の馬を本発明による薬物で治療した。跛行する症例の医療的な原因は、6個の症例では関節内/関節上での退行性軟骨変化(n=6)であり、また、6個の症例では軟質−組織疾患(n=6)であった。
【0060】
薬物を製造するために、各馬の場合、金粒子−含有注射器形態の本発明による4個の容器に考慮中の動物から得た血液を充填し、また37℃領域の温度で24時間培養した。培養期間の末期に、薬物は、前記期間の間に合成し蓄積されたタンパク質、特にサイトカインおよびゲルゾリン、および金粒子を含有する、注射器に位置した血液の形態で完成された。注射体積を最小化するために、5000rpmで10分間遠心分離により、後に続く遠心分離方法によって血球分画を除去した。各上清のみを注射に用いた。
【0061】
これらの薬物注射剤を各場合において1週の間隔をおいて各馬に投与した。最初の投与は時間T24において実施し、また、第2回目、第3回目および第4回目の投与は、1週後、2週後および3週後に実施した。第2回目、第3回目および第4回目の投与のための薬物−含有注射器は、使う時まで−20℃に保存した。
【0062】
跛行は、1週後、2週後、3週後、3ケ月後、6ケ月後および1年後に確認し、また、跛行の程度はAAEE(American Association of Equine Practioners)に従い、0−4基準(0=全く跛行せず、5=深刻な跛行)を利用して評価した。
【0063】
全ての12個の場合において、3週後ぶりに顕著な跛行の減少が発見された。6ケ月後および1年後にも、全ての馬は症状から完全に自由であり、特に跛行から自由であった。治療する間にいかなる悪い効果も明らかになっていない。
この研究の結果は図4にグラフで示す。
【0064】
実施例3:金粒子を含有する本発明による容器の製造
用いられた金粒子は金粉末であった(粒子大きさ1μm、ミュンヘンに所在するBio−Rad Laboratories)。前記金粒子は、製造者によって推薦されたように先に滅菌される。所望する量の金粒子/金粉末、例えば30mgを1mlの70%エタノールと共に混合し、軽く攪拌(混合器、vortexer)しながら10分間培養し、1分間沈降させてから遠心分離した後に上清を除去した。その次、前記金粒子は、各場合において、1mlの滅菌二重−蒸留した水を用いて3回洗浄した。最終遠心分離によって最後の洗浄過程と上清を抽出した後、前記金粒子を滅菌PBSに再懸濁し、また、所望する濃度、例えば60mg/mlに調節した。連続的な攪拌下で、ピペットを利用して10μlの金粒子溶液を除去し、また、Sarstedt(REF02.1726.001)から得たS−Monovette−中性/9ml(92x16mm)に移した。前記Monovetteは、先ず滅菌作業台(スクリューキャップ)において開き、10μl金−粒子溶液を注射器の内壁に加えた後に再び閉じた。充填されたMonovetteは、使う時まで室温に保存した。本発明による方法を実施する時に使うために、9mlの体液(例えば、血液)を前記製造されたMonovetteに充填し、金−粒子/PBS溶液と混合した。
【0065】
実施例4:ヒトにおける薬物効率の研究
有望な経時的研究の一部として、放射能的に検出された膝関節症にかかった総9人の患者または13個の関節を登録医師が治療を行った。関節症の程度は、チェルグレン−ローレンス基準に従って等級3−4に評価された(Kellgren J.H.and Lawrence J.S.:「Radiological Assessment of Osteo−Arthrosis」、Ann.rheum.Dis.(1957)、16、494−501)。全ての患者は、先ず金で処理されてから粒子を除去し、本発明による自己血清によって関節腔内注射を各々1週間隔で4回投与を受けた。関節腔内の流出があれば、注射前に各場合において排水され、排水された量を収録し、また、その後の加工のために−20℃で1ml分量(aliquot)で冷凍させた。この治療の臨床結果は、処理前および許可された点数評価システム(同意語:スコア)「KOOS」を利用し、治療してから1、3、6および12ケ月後に記録した(Roos E.M.,Roos H.P.,Lohmander L.S.,Ekdahlc.,Beynnon B.D.:「Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS−development of a self−administered outcome measure」、J.Orthop.Sports Phys.Ther.1998、28:88−96)。最大に得ることができる点数は100であった。点数が高いほど、達成した結果がより優れるものであった。結果を図5にグラフで示す。
【0066】
変数「症状」および「スポーツ活動度」と関連するKOOS点数の評価は、3ケ月および6ケ月後に臨床症状において著しい向上を示した(参照:図5)。
【0067】
1人患者の場合において、初めには相当な流出があった。前記流出は、注射治療前に各場合において排出されており、流出量を収録し、また、ゲルゾリン濃度に対して滑液吸引物(synovial aspirate)を試験した。ゲルゾリン濃度は流出による希釈の程度によって異なるため、ゲルゾリン濃度は尿素濃度を基本にした(Kraus et al.:Urea as a Passive Transport Marker for Arthritis Biomarker Studies、ARTHRITIS & RHEUMATISM Vol.46、No.2、February 2002、pp.420−427)。その結果は図6にグラフで示す。
【0068】
本発明により製造された血清、すなわち金粒子と共に培養した後、(全ての)粒子が除去された血清を関節腔内に投与することにより、関節腔内のゲルゾリンの濃度を明らかに増加させることができた(参照:図6)。それと同時に、流出量に減少があり(参照:図6)、また、臨床症状ににおいて明らかな向上があった。
【0069】
この研究は、関節症の治療、および一般的にゲルゾリン欠乏症と関連する疾病の治療に対する証拠を提供する。
【0070】
実施例5:試験管内の軟骨衝撃モデルにおいて本発明による軟骨保護効果の表示
関節症が発病する間に関節軟骨に対する機械的過負荷の影響は十分に知られている。軟骨移植物に対する機械的荷重の影響を試験する試験管内モデル、例えば、ヒューザーおよびデービスからのモデル(Huser C.A.and Davies M.E.:「Validation of an in vitro single−impact load model of the initiation of osteroarthritis−like changes in articular cartilage」、J Orthop Res.,Apr 2006;24(4):725−732)がよく確立し立証されている。このようなモデルにおいて、軟骨退行の開始に対する良好な指標は、試験された軟骨−骨サンプルの培養培地におけるプロテオグリカン含量の測定である。
【0071】
本発明を招いた調査を進行する間、6匹の動物を含むミニ豚「Goettinger minipig」に対する動物−実験研究において、10金粒子をそれぞれ含有した9ml注射器を利用し、動物当たり各場合において4個の血液サンプル(9ml)を収集し、また、本発明による方法に従って37℃で24時間培養した。培養期間後、前記血液サンプルを注射器のシリンダーにおいて遠心分離し、また、各注射器(または、注射器のシリンダー)の場合、上清は滅菌フィルタを介して新しい/新規の金粒子を有しない注射器のシリンダーに移した。
【0072】
血液サンプルの収集と並行して、軟骨サンプルも各大腿骨頭から無菌条件下で考慮中の動物から収集し、また、8x8x10mm(長さ/幅/高さ)ブロックに切断した。前記軟骨は、全ての移植物の場合において肉眼で完全であった。衝撃試験に用いる前に、前記軟骨サンプルは、10%ヒト血清(HS)、100U/mlペニシリン、100U/mlゲンタマイシンおよび1.25U/mlアムホテリシンBが補充されたDMEM培地に維持させた。
【0073】
サンプルを収集する日に、衝撃試験を実施した。このために、軟骨−骨サンプルブロック/移植物を、各場合において、ポリメチルメタクリレートからなるシリンダードロップタワー(drop tower)内に滅菌条件下で収集し、衝撃プランジャー(plunger)の下に距離をおき、33cm高さおよび4cm軸で測定された。前記衝撃プランジャーは、高さ5cmおよび直径3.94cmの大きさのシリンダー形態であり、その重量は493gであった。前記衝撃プランジャーは、糸を介して高さ7g、高さ/厚さ1cmおよび直径0.6cmを有する実際の衝撃器ディスク(衝撃器単位)に連結された。
【0074】
サンプルに対する高さが15cmである衝撃器ディスク(衝撃器)を含有する衝撃プランジャーの自由落下により、ドロップタワー内にある軟骨−骨サンプルブロック当たり1回の衝撃を加えた。衝撃は、28.3mmの軟骨の表面積上に0.736Jであった。
【0075】
軟骨−骨サンプルブロック/移植物は次の3つのグループに分けられた。
●衝撃処理を受けない移植物=「衝撃が加えられない対照群」=「0対照群」
●衝撃処理を受けた移植物=「衝撃が加えられた対照群」=「衝撃対照群」
●衝撃処理された後、本発明により製造されたタンパク質−濃縮された血清と共に培養された移植物。
【0076】
衝撃処理に続き、前記処理された骨−軟骨製剤および0対照群をPBSによって3回洗浄し、12−ウェル培養板に伝達した。各移植物に3mlの各処理培地を提供し、標準化した条件(37℃、5%CO)下で、培養器で培養した。培養培地は72時間ごとに交換した。
【0077】
本発明により製造されたタンパク質−濃縮された血清は、移植物の場合、0日および7日に考慮中の移植物グループに付加した。2日、7日および14日に、培養培地中のプロテオグリカンの含量を全試片に対して測定した。このために、バイオカラーリミテッド(英国のキャリックファーガスに所在)から入手したBlyscan Glycosaminoglycan Assayを使った。その結果を図7にグラフで示す。プロテオグリカンの含量は、平均グリコサミノグリカン(GAG)濃度(μg/培地ml)に特定される。
【0078】
プロテオグリカンの放出分析は、全ての3つのグループにおいて、すなわち0対照群および2つの衝撃処理された/衝撃が加えられた移植物(軟骨−骨製剤)において、プロテオグリカン量が時間経過に伴って増加することを示す。
【0079】
しかし、本発明により製造されたタンパク質−濃縮された血清によって処理された移植物/軟骨−骨製剤の場合は、そのような増加は、衝撃処理を受けない対照群(0対照群)の場合より若干強い程度である反面、相応する血清処理を受けない衝撃−処理された/衝撃処理された移植物(軟骨−骨製剤)は非常に高い増加を示した。
したがって、この試験は、本発明による薬物の軟骨保護効果に対する証拠を提供する。
【0080】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7