【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、生成されたタンパク質が相当に多量に存在し、また、好ましくない副作用を避けるようにする方法を開発するかまたは変形することにある。
【0011】
前記目的は、容器が金粒子を含有する、最初に言及した類型の方法を提供することによって達成される。
【0012】
用語「容器」は、以下では、液体を所定時間保存するための閉じることができる器または閉じることができる保存器を意味し、前記器または保存器は収容する液体に対して漏れ防止性である。
【0013】
金を薬物として用いることは、医薬において昔から知られている。19世紀末頃、金は特に結核治療のための薬物として用いられた。リューマチ性関節炎が一種の感染疾病という間違った仮定により、金がこの疾病に対する薬物として用いられた。この療法は成功的であって、今日まで多年間用いられた(Kean and Kean 2008)。ヒト軟骨細胞に対する試験管内(in vitro)研究は、金化合物(金チオリンゴ酸塩:aurothiomalate)が軟骨細胞による酸化窒素(NO)の生成を抑制することを示した。酸化窒素は、炎症誘発性サイトカインIL−1およびTNFαの破壊効果を媒介する(Green et al.2006)。これは、減少したコラーゲンおよびプロテオグリカンの産生、軟骨細胞のアポトーシスおよびメタロプロテアーゼの刺激を招く(Vuolteenaho et al.2005)。
【0014】
従来技術に公知された治療方法において、金は、筋肉内にまたは経口投与される。しかし、これらの投与方法および適切な金薬剤を用いることによっては、試験管内研究から公知の所望する効果がある程度のみ達成される。
【0015】
本発明による方法に初めて用いられる、閉鎖系において、金粒子と、ヒトまたは動物の自己由来(autologous)または相同(homologous)の体液、特にその血液サンプルとの組み合わせは、驚くべきことに、(i)従来の公知の方法に比べ、明らかにより高い濃度の所望するタンパク質、特に血液の場合は、サイトカイン(特にIL−1、IL−6、IL−8、IL−10、G−CSF、MCP−1、MIP−1、RANTES、TNF−α、GRO−α、MCP−3、MIFおよびIL−1RA)だけでなく、(ii)培養時間の間に生理学的タンパク質の老化抑制に起因したより優れた品質の考慮中のタンパク質、および(iii)タンパク質ゲルゾリン(gelsolin)の顕著な蓄積を提供する。ゲルゾリンは、全ての動物細胞(ヒト細胞を含む)内に、また細胞外に(例えば、血漿内に)偏在するアクチン結合タンパク質であり、Ca
2+依存的アクチンフィラメントを断片化し再重合化することを防止し、また、アクチン−フィラメント結合および分離方法の調節に核心作用を有するか/充足する。ゲルゾリンは、細胞質抽出物から発見し確認され、また、運動性(motile)細胞におけるその偏在と系統発生的な保存は、細胞内の調節タンパク質として必須的な役割を提示する。その後、ゲルゾリンは、哺乳動物の血漿からも生じ、また、そこでアクチンを解重合(depolymerize)するものとして明らかになった。このような、いわゆる血漿ゲルゾリン(pGelsolin、pGS)は、細胞質ゲルゾリン(cGelsolin、cGS)のイソ型(isoform)であり、また、N−末端において付加的な23個のアミノ酸を有するという点で構造的に相違する。血漿ゲルゾリンの生理学的な作用は、依然として数多くの研究作業の主題でもある(DiNubriu、2007およびこれに引用された文献)。ゲルゾリンは、細胞運動性、食菌作用、アポトーシスおよび血小板の活性化のような重要な細胞作用を調節する(Silacci et al.2004、Trickey et al.2004)。リューマチ性関節炎にかかったヒトの場合、ゲルゾリンの血漿濃度が減少する(Osborn et al.2008)。組織退行を含む他の疾患の場合および特に敗血症の場合、前記ゲルゾリンの血漿濃度もまた減少する(Suhler et al.1997、Osborn et al.2008、Lee et al.2007)。従来技術は、血漿ゲルゾリンが体の過度な炎症反応を吸収するための緩衝剤として作用することを示す(DiNubile 2008)。
【0016】
本発明による方法を利用して生産されたタンパク質、特にゲルゾリンおよびサイトカインは、容器内に位置した液体の他の成分と共に直接的な方式により、すなわち、例えば遠心分離、滅菌濾過または他の容器への伝達のような追加の操作を行うことなく、患者に再投与することができる(しかし、必ずしもそうではない)。その結果、タンパク質溶液の汚染を避け、且つ、タンパク質を投与する間の患者の感染危険を最小化する。
【0017】
本発明による方法の本発明による変形において、前記金粒子は、試験管内で培養した後に体液、例えば血清から除去して廃棄される。この利点は、前記体液、例えば前記血清を投与する間または投与した後、金誘導された悪い効果を完全に避けるものである。
【0018】
本発明による方法の本発明による好ましい変形において、前記金粒子および体細胞(例えば、血液細胞)およびその他の不溶性凝集物は、試験管内で培養した後に体液(例えば、血清)から除去して廃棄される。自己由来のヒト体液、および特に製造された前記種類の血清は容認性が卓越し、さらに、悪い影響は予想されない。
【0019】
前記方法に用いられた金粒子は、好ましくは所定構造および/または所定大きさを有する。10nm〜500μm範囲の粒子大きさを有する微細粒子および/またはナノ粒子が特に好適である。
【0020】
金粒子が試験管内での培養後に体液、例えば血清から除去して廃棄される本発明による方法の変形において、好ましくは約1μmの大きさの金粒子が、より好ましくは10ml当たり10
3〜10
4の金粒子量として前記方法に用いられる。前記用途の場合、容量が約10mlである容器(例えば、注射器)が実際に有用であるとして明らかになった。
【0021】
実際の使用で成功的であるものとして立証された一実施例において、前記金粒子は、1mlの体液当たり0.3mgの量で容器内に存在する。原則的には、1ml当たり0.1〜10mgの濃度が好適であると考慮される。
【0022】
容器の内部構造は、好ましくは、ヘパリン、クエン酸塩、EDTAまたはCPDAのような抗凝固剤を有しないが、本発明が基本とする作業の一部として、驚くべきことに、これらの物質の不在下でよりはこれらの物質の存在下で幾つかのタンパク質が生合成されることが明らかになったためである。特に体液である血液および抗凝固剤であるヘパリンの場合、ヘパリンおよびその他の抗凝固剤の不在下でよりは、例えば容器内壁のコーティングとしてヘパリンの存在下で相当に低いサイトカインの産生が得られた。
【0023】
可能な容器は特に注射器であり、これは、培養容器として用いることができるだけでなく、それと同時に体液を得るための収集機構として、および/またはタンパク質を患者に投与するための投与機構として好適であるためである。
【0024】
しかし、他の可能な容器は密封可能なポーチであり、これは、特に比較的に大きい体積である場合、相応する体積の注射器に比べてより柔軟に取り扱いして保存することができ、また、技術的に簡単で信頼性のある方式で注射器にカップリングすることができるためであり、また、前記注射器を介して充填や空にすることができるためである。
【0025】
本発明による方法は、血液細胞からタンパク質を生成(生合成)し蓄積するのに特に好適である。したがって、特に血液、好ましくは血清が体液として考慮される。
【0026】
驚くべきことに、前記治療有効性タンパク質ゲルゾリンは、本発明による方法を利用して生成され、また、特に効果的に、すなわち相当の量に蓄積される。したがって、本発明による方法は、特にゲルゾリンを得るためのものである。
【0027】
体液で充填された容器に対する培養条件に関しては、20℃〜41℃、好ましくは37℃の温度で、12〜72時間、好ましくは24時間の培養時間が良好な結果をもたらすことが実際に明らかになった。
【0028】
上述した目的は、体液から治療有効性タンパク質を試験管内で生合成し蓄積(試験管内誘導)するための容器を提供することによって達成され、これは、容器が金粒子を含有し、また体液サンプルを収集し、保存し、再分配するのに好適であるという事実と、内容物が中空(hollow)針(カニューレ、注射針)によって注射されるように中空針(カニューレ、注射針)とカップリング可能であるという事実を特徴とする。
【0029】
前記容器を利用し、上述したタンパク質の製造方法を実施することができ、また、それと関連する利点を利用することができる。前記製造されたタンパク質は、カップリング可能な中空針によって所望する投与部位に直接投与、特にヒトまたは動物の体内に導入することができる。
【0030】
前記金粒子は、好ましくは所定構造および/または所定大きさを有する。微細粒子および/またはナノ粒子(10nm〜500μmの粒子大きさ)が特に好適である。容器中の金粒子の適切な量は、1mlの体液当たり0.1mg〜10mg、好ましくは1mlの体液当たり0.3mgである。
【0031】
前記容器は、好ましくは注射器またはポーチである。注射器の利点は、培養容器として用いられるだけでなく、それと同時に体液を得るための収集機構および/またはタンパク質を患者に投与するための投与機構として用いられるということである。ポーチの利点は、比較的に大きい体積である場合、相応する体積の注射器に比べ、より柔軟に取り扱いして保存することができ、また、充填や空にするために注射器にカップリングできるということである。
【0032】
特に好適な容器は、内部の空洞に特定デザインを有しない市販の注射器(例えば、5〜100ml注射器)である。前記金粒子(例えば、Bio−Rad Laboratoriesから入手したGold Microcarriers、カタログ165−2264)は、注射器のシリンダーに導入される。
【0033】
注射器、特に注射器シリンダーの内壁およびシリンダー内にある注射器プランジャー(plunger)の一部は、好ましくはプラスチック、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ポリプロピレン(中性S−Monovettes、Sarstedt)または類似する物質またはその混合物からなる。
【0034】
前記容器は、血液細胞からタンパク質、特にゲルゾリンを製造(生合成)し、また蓄積するのに特に好適である。したがって、特に血液、好ましくは血清が体液として考慮される。
【0035】
本発明による方法を利用して体液から生成されたタンパク質は、前記体液および金粒子と共にまたは金粒子なしで疾病治療のための薬物として用いられる。
【0036】
本発明による方法を利用して製造された前記タンパク質−濃縮された(protein−enriched)、および特にサイトカイン−濃縮されたおよびゲルゾリン−濃縮された体液、特に血清はより安全であり、低価で迅速に製造することができ、また、悪い影響が特に少ないため、通常の相応する薬物製剤に対する代案を提示する。
【0037】
したがって、本発明は、体液、特に血清と金粒子の混合物を培養(例えば、20℃〜41℃、好ましくは37℃の温度で、12〜72時間、好ましくは24時間)することにより、その次、金粒子および好ましくは(すなわち、場合に応じて)付加的に血液細胞およびその他の不溶性成分を体液、特に血清から除去して廃棄(好ましくは、遠心分離および/または滅菌濾過により)することにより、金粒子、好ましくは約1μmの大きさであり、また、好ましくは10ml容器当たり10
3〜10
4の金粒子(または1mlの血液/容器当たり1μmの直径を有する金粒子0.3mg)量として金粒子を含有する容器に収集される体液、特に血清によって得ることができる、薬物として用いるためのまたは薬物を製造するためのタンパク質−濃縮された体液、特にサイトカイン−濃縮されたおよびゲルゾリン−濃縮された血清を提供する。
【0038】
本発明は、自己由来または相同血液および金粒子の薬物として、または薬物製造のための用途を提供する。すなわち、本発明は、薬物として用いるための自己由来または相同血液および金粒子からなる物質混合物、または活性成分の組み合わせとして蓄積されたタンパク質をはじめとする自己由来または相同血液および金粒子からなる物質混合物を含む薬物を提供する。
【0039】
本発明による薬物は、簡単であり、安価であり、危険が少なく、さらに効果的な治療を許容する。
【0040】
記載された薬物は、退行性関節疾患、特に関節症および腱損傷(腱炎)の治療に特に好適である。特に金粒子と培養されてから粒子を除去した薬物は、関節症および組織退行および/またはゲルゾリンの欠乏と関連する他の疾病を治療するのに非常に好適なものとして考慮される。
【0041】
本発明による薬物の一特定実施例は、培養後、ゲルゾリンに対する関連標準血液レベルの少なくとも2倍であるゲルゾリン含量を有する、金粒子と培養された体液(特に、血液)であることを特徴とする。本内容において、用語「ゲルゾリンに対する関連標準血液レベル」は、薬物によって処理される患者グループの血液におけるゲルゾリンに対する医療的または獣医科的な標準値を意味する。前記患者グループは、動物学的な種、および人種、性別および年齢の面を特徴とする。このようなゲルゾリン−豊かな薬物は、患者の血液におけるゲルゾリンの欠乏と関連する疾病、例えば敗血症または中風(Stroke)の治療用として考慮される。
【0042】
培養された血液−金混合物は、全体的にまたは部分的に投与される。必要な場合、例えば、血液から細胞および細胞断片を除去するために、また、それと同時に注射体積を減少させるために、(動物またはヒト)患者に投与する前に遠心分離および/または滅菌濾過の処理を行うことができる。
本発明は、以下で例示的な実施例および関連図面を用いてより詳しく説明する。