特許第6094770号(P6094770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094770
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】加熱装置および加熱方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20170306BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   A23L5/10 Z
   H05B3/00 340
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-524742(P2014-524742)
(86)(22)【出願日】2013年7月1日
(86)【国際出願番号】JP2013068004
(87)【国際公開番号】WO2014010449
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-153665(P2012-153665)
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】丸山 友樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 真司
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−081194(JP,A)
【文献】 特開2007−159413(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/008421(WO,A1)
【文献】 特開2003−047413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/10
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された電極のうち少なくとも一方の電極が、複数の貫通孔を備えた電極プレートと、該貫通孔に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピンとを有し、対向する電極の間に被加熱物を配置し、該被加熱物を電気的に加熱する加熱装置であって、
前記少なくとも一方の電極が、前記電極プレートに支持された複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させた状態で保持する上下方向に移動可能な保持手段と、該保持手段による複数の導電性ピンの保持を解除する解除手段とを有することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記導電性ピンの後端部が磁性体で形成され、
前記保持手段が、前記電極プレートと平行に設けられ前記導電性ピンの後端部との間に磁力による吸引力が作用する磁性体プレートを有することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記導電性ピン後端部と前記磁性体プレートの間に非磁性体プレートが設けられ、
前記解除手段が、該非磁性体プレートと磁性体プレートを離間させる機構を有することを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
対向して配置された電極のうち少なくとも一方の電極が、複数の貫通孔を備えた電極プレートと、該貫通孔に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピンとを有し、対向する電極の間に被加熱物を配置し、該被加熱物を電気的に加熱する加熱装置を用いた加熱方法であって、
保持手段の上下方向移動により前記電極プレートに支持された複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させる導電性ピン収納工程と、
前記複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させた状態で、前記保持手段によって保持する導電性ピン保持工程と、
前記被加熱物に対する前記電極プレートの相対位置が固定された状態で前記複数の導電性ピンの保持を解除する導電性ピン解除工程と、
前記複数の導電性ピンを軸方向被加熱物側に褶動させ、複数の導電性ピンの先端を被加熱物の表面に接触させる導電性ピン接触工程を経て、
両電極間に電圧を印加して電気的に加熱することを特徴とする加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向して配置された電極のうち少なくとも一方の電極が、複数の貫通孔を備えた電極プレートと、該貫通孔に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピンとを有し、対向する電極の間に被加熱物を配置し、電極間に電圧を印加して電気的に加熱する加熱装置および加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の被加熱物を対向する電極の間に配置して電気的に加熱する加熱装置および加熱方法が知られており、使用される電極も様々な形態のものが公知である。
加熱を均一に効率良く行うため、直接通電加熱するものにあっては、電極と被加熱物とが充分に接触する必要があり、高周波電界により誘電加熱するものにあっては、被加熱物と電極の間の隙間を小さく均等に保つ必要がある。
そこで、不定形な被加熱物に対応するため、少なくとも一方の電極が、複数の貫通孔を備えた電極プレートと、該貫通孔に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピンとを有するものが提案されている(例えば、特許文献1、2等参照。)。
このように軸方向褶動可能な導電性ピンを有する電極を使用することによって、導電性ピンが被加熱物の凹凸形状に倣うため、複数の導電性ピンの先端が被加熱物の表面に均一に当接して、不定形な被加熱物であっても局所的な集中加熱を抑制し、短時間に均一に加熱可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3966888号公報
【特許文献2】国際特許公開2009/008421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2等に記載された公知の電極にあっては、被加熱物Mに上部電極501の導電性ピン510を接触させる際に、図15に示すように、電極プレート520が上昇位置にあり複数の導電性ピン510がすべて自重で下降した状態で被加熱物Mを導入し、電極プレート520を下降させることにより、複数の導電性ピン510の先端511が不定形な被加熱物Mと接触して停止し、貫通孔521内を軸方向褶動することで凹凸形状に倣うよう構成されている。
しかしながら、導電性ピン510の先端が被加熱物Mの凹凸形状の傾斜部に接触した場合、図16に示すように、導電性ピン510の褶動方向に対して垂直な方向に分力が発生し、導電性ピン510が電極プレート520の貫通孔521内で傾斜する方向に力を受けて、円滑に褶動できなくなるという問題があった。
【0005】
このため、導電性ピン510が貫通孔521内で停止し、電極プレート520の下降も停止して、複数の導電性ピン510の先端511が不定形な被加熱物Mに充分に倣うことができず、均一に効率良く加熱を行うことができないという問題があった。
また、導電性ピン510が曲がりあるいは折損したり、電極プレート520の下降のための可動部に過負荷が生じて損傷を与える虞や、食品等の被加熱物に大きな荷重が加わり、傷や潰れが生じる虞もあった。
【0006】
特許文献2に記載の電極では、電極プレート520に圧力可変ガスチャンバが結合されており、原理的にはガスチャンバ室内の圧力を負圧にすることで導電性ピン510を上昇させることが可能であるが、導電性ピン510が貫通孔521内を円滑に摺動するためには、貫通孔の内径を導電性ピンの外形より充分に大きくする必要があり、導電性ピンと貫通孔のクリアランスを通じてのガスリーク量が増加することで、現実的には多数の導電性ピン全てを安定して確実に上昇させることが困難になる問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、導電性ピンが貫通孔内を円滑に褶動し、複数の導電性ピンの先端が不定形な被加熱物に充分に倣って均一に効率良く加熱を行うことが可能であり、導電性ピンや被加熱物の損傷が防止される加熱装置および加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、対向して配置された電極のうち少なくとも一方の電極が、複数の貫通孔を備えた電極プレートと、該貫通孔に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピンとを有し、対向する電極の間に被加熱物を配置し、該被加熱物を電気的に加熱する加熱装置であって、前記少なくとも一方の電極が、前記電極プレートに支持された複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させた状態で保持する上下方向に移動可能な保持手段と、該保持手段による複数の導電性ピンの保持を解除する解除手段とを有することにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係る加熱装置の構成に加え、前記導電性ピンの後端部が磁性体で形成され、前記保持手段が、前記電極プレートと平行に設けられ前記導電性ピンの後端部との間に磁力による吸引力が作用する磁性体プレートを有することにより、前記課題を解決するものである。
本請求項3に係る発明は、請求項2に係る加熱装置の構成に加え、前記導電性ピン後端部と前記磁性体プレートの間に非磁性体プレートが設けられており、前記解除手段が、該非磁性体プレートと磁性体プレートを離間させる機構を有することにより、前記課題を解決するものである。
【0010】
本請求項4に係る発明は、対向して配置された電極のうち少なくとも一方の電極が、複数の貫通孔を備えた電極プレートと、該貫通孔に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピンとを有し、対向する電極の間に被加熱物を配置し、該被加熱物を電気的に加熱する加熱装置を用いた加熱方法であって、保持手段の上下方向移動により前記電極プレートに支持された複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させる導電性ピン収納工程と、前記複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させた状態で、前記保持手段によって保持する導電性ピン保持工程と、前記被加熱物に対する前記電極プレートの相対位置が固定された状態で前記複数の導電性ピンの保持を解除する導電性ピン解除工程と、前記複数の導電性ピンを軸方向被加熱物側に褶動させ、複数の導電性ピンの先端を被加熱物の表面に接触させる導電性ピン接触工程を経て、両電極間に電圧を印加して電気的に加熱することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本請求項1に係る発明の加熱装置、および、本請求項4に係る加熱方法によれば、被加熱物に導電性ピンを接触させる際に、複数の導電性ピンの保持を解除することで軸方向褶動させて被加熱物の凹凸形状に倣わせることができるため、導電性ピンが貫通孔内を円滑に褶動して不定形な被加熱物に充分に倣って均一に効率良く加熱を行うことが可能となる。
また、導電性ピンの褶動方向以外の力が加わることがないため、導電性ピンが曲がりあるいは折損することがないとともに、食品等の被加熱物に傷や潰れを生じさせることもない。
【0012】
本請求項2に記載の構成によれば、複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させた状態で保持する際に、複数の導電性ピンの先端を押し込む動作のみで、導電性ピンの後端部が磁性体プレートに吸着して容易に保持することが可能となる。
【0013】
本請求項3に記載の構成によれば、電極の配置、導電性ピンの重量や形状に応じて、非磁性体プレートの厚さを調節することにより、吸着力を最適に設定することが可能であり、非磁性体プレートを磁性体プレートから離間させる僅かな動作で、確実に保持の解除を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1第1参考例に係る加熱装置の概略図。
図2第1参考例に係る加熱装置の導電性ピンの概略図。
図3第1参考例に係る加熱装置の導電性ピン保持の状態説明図。
図4第1参考例に係る加熱装置の被加熱物導入時の状態説明図。
図5第1参考例に係る加熱装置の導電性ピン保持解除時の状態説明図。
図6第2参考例に係る加熱装置の概略図。
図7第3参考例に係る加熱装置の概略図。
図8第3参考例に係る加熱装置の導電性ピンの概略図。
図9】本発明の第1実施形態に係る加熱装置の導電性ピン保持の状態説明図。
図10】本発明の第1実施形態に係る加熱装置の導電性ピン解除時の状態説明図。
図11第4参考例に係る加熱装置の概略図。
図12第4参考例に係る加熱装置の導電性ピン保持の状態説明図。
図13第4参考例に係る加熱装置の導電性ピン解除時の状態説明図。
図14第4参考例に係る加熱装置の動作説明図。
図15】従来の加熱装置の概略図。
図16図15の一部拡大図。
【符号の説明】
【0015】
100、200、300、400、500 ・・・ 加熱装置
101、201、301、401、501 ・・・ 上部電極
110、210、310、410、510 ・・・ 導電性ピン
111、 311、 511 ・・・ 先端
112、212 ・・・ マグネットシート
113 ・・・ 段部
313 ・・・ リベット
120、220、320、420、520 ・・・ 電極プレート
121、221、321、421、521 ・・・ 貫通孔
422 ・・・ 電極支持プレート
130 ・・・ 保持手段
131、231 ・・・ スチール板
232 ・・・ 通孔
333 ・・・ マグネットシート
434 ・・・ 磁性体プレート
435 ・・・ ストッパピン貫通孔
140 ・・・ 解除手段
141 ・・・ ポンプ
142、242、342 ・・・ チャンバ室
143、243、343 ・・・ 空気供給孔
144、244、344、444 ・・・ 非磁性体プレート
445 ・・・ 支持バー
446 ・・・ 押圧バネ
447 ・・・ 抑え板
448 ・・・ 抑え板切替手段
449 ・・・ ストッパピン
M ・・・ 被加熱物
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の加熱装置は、対向して配置された電極のうち少なくとも一方の電極が、複数の貫通孔を備えた電極プレートと、該貫通孔に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピンとを有し、対向する電極の間に被加熱物を配置し、該被加熱物を電気的に加熱する加熱装置であって、少なくとも一方の電極が、電極プレートに支持された複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させた状態で保持する上下方向に移動可能な保持手段と、該保持手段による複数の導電性ピンの保持を解除する解除手段とを有するものであって、導電性ピンが貫通孔内を円滑に褶動し、複数の導電性ピンの先端が不定形な被加熱物に充分に倣って均一に効率良く加熱を行うことが可能であり、導電性ピンや被加熱物の損傷が防止されるものであれば、具体的な実施形態はいかなるものであっても良い。
【0017】
また、本発明の加熱方法は、対向して配置された電極のうち少なくとも一方の電極が、複数の貫通孔を備えた電極プレートと、該貫通孔に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピンとを有し、対向する電極の間に被加熱物を配置し、該被加熱物を電気的に加熱する加熱装置を用いた加熱方法であって、保持手段の上下方向移動により電極プレートに支持された複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させる導電性ピン収納工程と、複数の導電性ピンを対向する電極から離れる方向に褶動させた状態で、保持手段によって保持する導電性ピン保持工程と、被加熱物に対する電極プレートの相対位置が固定された状態で複数の導電性ピンの保持を解除する導電性ピン解除工程と、複数の導電性ピンを軸方向被加熱物側に褶動させ、複数の導電性ピンの先端を被加熱物の表面に接触させる導電性ピン接触工程を経て、両電極間に電圧を印加して電気的に加熱するものであって、導電性ピンが貫通孔内を円滑に褶動し、複数の導電性ピンの先端が不定形な被加熱物に充分に倣って均一に効率良く加熱を行うことが可能であり、導電性ピンや被加熱物の損傷を防止することができれば、具体的な実施形態はいかなるものであっても良い。
【参考例1】
【0018】
第1参考例に係る加熱装置100は、図1に示すように、導電性の板状部材からなる下部電極102と上部電極101が対向配置され、電源103によって両電極間に高周波電界が印加されるように構成されている。
下部電極102は被加熱物を載置可能な平板状の導電体で構成されている。
上部電極101は、複数の貫通孔121を備えた電極プレート120と、該貫通孔121に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピン110とを有し、電極プレート120の上部にはチャンバ室142が形成され、全ての貫通孔121がチャンバ室142内に臨むように構成されている。
チャンバ室142は、ポンプ141によって空気供給孔143から空気を供給あるいは排出することによって内圧を変更調整可能に構成されている。
導電性ピン110は、図2に示すように、被加熱物と接触する先端111の反対側に貫通孔121に係止可能な段部113が形成されるとともに、後端部にマグネットシート112が設けられている。
【0019】
チャンバ室142内の下部電極102から遠い側の面には電極プレート120と平行にスチール板131が設けられており、該スチール板131と前記マグネットシート112が磁力により吸着することで、導電性ピン110を下部電極102から離れる方向に褶動させた状態で保持する保持手段130を構成している。
また、ポンプ141によって空気供給孔143から空気を供給してチャンバ室142内の圧力を高めることで、導電性ピン110に下部電極102側に突出する方向の力を加えて保持手段130による複数の導電性ピン110の保持を解除する解除手段140を構成している。
【0020】
以上のように構成された第1参考例に係る加熱装置100の動作について説明する。
まず、図3に示すように、電極プレート120に支持された複数の導電性ピン110を下部電極102から離れる方向に褶動させる、すなわち、複数の導電性ピン110をチャンバ室142内に押し込むことで(導電性ピン収納工程)、スチール板131に導電性ピン110のマグネットシート112を磁力により吸着させて保持させる(導電性ピン保持工程)。
スチール板131と導電性ピン110のマグネットシート112との磁力による吸引力は導電性ピン110の重力よりも大きい状態、すなわち、
重力<吸引力
となることで保持される。
【0021】
この動作は、図3では、下部電極102と電極プレート120を相対的に近づけることによって行なっており、電極プレート120側を下降させてもよく、下部電極102を上昇させてもよい。
また、他の平板状の部材を用いて行ってもよく、作業者が複数の導電性ピン110を手で押し込んでもよく、ポンプ141によって空気供給孔143から空気を排出してチャンバ室142を負圧とすることで、複数の導電性ピン110をチャンバ室142内に吸引して行ってもよい。
【0022】
次に、図4に示すように、保持された、すなわち、チャンバ室142内に収容された複数の導電性ピン110の先端111と下部電極102との間隔を充分にとって、被加熱物Mを側方から導入し(被加熱物導入工程)、下部電極102の上に載置した後、上部電極101を被加熱物に充分に接近させ、図5に示すように、複数の導電性ピン110の保持を解除(導電性ピン解除工程)して複数の導電性ピン110を軸方向被加熱物M側に褶動させ、複数の導電性ピン110の先端111を被加熱物Mの表面に倣うように接触させる(導電性ピン接触工程)。
【0023】
複数の導電性ピン110の保持を解除(導電性ピン解除工程)は、図4の状態から、空気供給孔143からチャンバ室142内に空気を供給して外部より圧力を高めて導電性ピン110に下部電極102側方向への突出力を加えることにより行う。
チャンバ室142内に空気を供給すると、導電性ピン110のマグネットシート112の吸着面に圧力が加わる一方、導電性ピン110の先端111側はチャンバ室142の外にあって圧力が低い状態であることから、その圧力差によって導電性ピン110には下部電極102側方向への突出力が発生する。
この圧力差により発生する突出力と導電性ピン110の重力の合計がスチール板131と導電性ピン110のマグネットシート112との磁力による吸引力より大きくなる、
すなわち、
(重力+突出力)>吸引力
となることで保持が解除される。
【0024】
導電性ピン110の保持が解除されると、スチール板131と導電性ピン110のマグネットシート112との距離が離れて磁力による吸引力は速やかに小さくなるため、ほぼ圧力差により発生する突出力と導電性ピン110の重力の合計のみで導電性ピン110が速やかに、かつ、円滑に突出し、図5に示すように、複数の導電性ピン110の先端111が被加熱物Mの表面に倣うように接触する。
【0025】
なお、スチール板131と導電性ピン110のマグネットシート112との吸着面は、微視的には両面間に空気が流入することを阻害しない粗面であり、かつ、チャンバ室142内に空気を供給して加圧することによるスチール板131の僅かな変形や振動等が発生することもあり、チャンバ室142内に空気を供給し圧力が上昇した際に、速やかに前記圧力差により発生する突出力が作用するが、予めスチール板131、あるいは、マグネットシート112の表面を、凹凸面あるいは僅かな曲面することで両面間への空気の流入をより容易とし、より速やかに突出力を発生させて導電性ピン110の保持を解除させるようにしてもよい。
【0026】
図5の状態で、下部電極102と上部電極101の両電極間に高周波電界を印加して誘電加熱することで、複数の導電性ピン110の先端111が被加熱物Mの表面に均一に当接して、不定形な被加熱物Mであっても局所的な集中加熱を抑制し、短時間に均一に加熱可能となる。
【参考例2】
【0027】
次に、第2参考例に係る加熱装置200について説明する。
第2参考例に係る加熱装置200は、図6に示すように、第1参考例に係る加熱装置100と、上部電極201を除いて同様に構成されている。
上部電極201は、複数の貫通孔221を備えた電極プレート220と、該貫通孔221に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピン210とを有し、電極プレート220の上部にはチャンバ室242が形成され、全ての貫通孔221がチャンバ室242内に臨むように構成されている。
チャンバ室242は、ポンプによって空気供給孔243から空気を供給あるいは排出することによって内圧を変更調整可能に構成されており、空気供給孔243は、チャンバ室242内の下部電極202から遠い側の面の直下の位置に設けられている。
【0028】
チャンバ室242内の下部電極202から遠い側の面から離間した空気供給孔243の下方に、電極プレート220と平行に多数の通孔232を有するスチール板231が設けられている。
チャンバ室242はスチール板231によって上下に区分される構造となるが、多数の通孔232によって空気の流通が自由に行われ、チャンバ室242内の圧力は上下で常に均等となる。
【0029】
この構成により、スチール板231に導電性ピン210のマグネットシート212を磁力により吸着させて保持させた状態で、スチール板231のマグネットシート212との吸着面に通孔232が存在することにより、複数の導電性ピン210の保持を解除(導電性ピン解除工程)する際に、空気供給孔243から供給された空気が直接マグネットシート212の吸着面に流入して、より速やかに突出力を発生させて導電性ピン210の保持を解除させることができる。
なお、多数の通孔232に代えて、スチール板231を網状構造のものとしてもよい。
【参考例3】
【0030】
次に、第3参考例に係る加熱装置300ついて説明する。
第3参考例に係る加熱装置300は、図7図8に示すように、第1参考例に係る加熱装置100と、上部電極301を除いて同様に構成されている。
上部電極301は、複数の貫通孔321を備えた電極プレート320と、該貫通孔321に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピン310とを有し、電極プレート320の上部にはチャンバ室342が形成され、全ての貫通孔321がチャンバ室342内に臨むように構成されている。
チャンバ室342は、ポンプによって空気供給孔343から空気を供給あるいは排出することによって内圧を変更調整可能に構成されている。
導電性ピン310は、図8に示すように、中空で被加熱物と接触する先端311が閉じられた軽量の非磁性体金属(例えばアルミ)で構成されており、開放された後端部に中実の磁性体のリベット313が圧入嵌合されている。
【0031】
チャンバ室342内の下部電極302から遠い側の面には電極プレート320と平行にマグネットシート333が設けられており、該マグネットシート333と前記リベット313が磁力により吸着することで、導電性ピン310を下部電極302から離れる方向に褶動させた状態で保持する。
この構成により、導電性ピン310を極めて軽量に構成することができ、導電性ピン310の動作がより円滑となるとともに、加熱装置300全体も軽量化することが可能となる。
【実施例1】
【0032】
次に、本発明の第1実施形態に係る加熱装置について説明する。
図9に示すものは、上記各参考例に係る加熱装置100、200、300のチャンバ室142、242、342内に設けられたスチール板131、231あるいはマグネットシート333を、チャンバ室142、242、342内において上下方向に移動可動としたものである。
スチール板131、231あるいはマグネットシート333を下降させて導電性ピン110、210、310を磁力により吸着させた後に、再び上昇させて(導電性ピン収納工程)、下部電極102、202、302から離れた位置に保持させる(導電性ピン保持工程)。
このことで、上部電極101、201、301や下部電極102、202、302を移動させることなく、また、複数の導電性ピン110、210、310の先端111、211、311を押し込む動作を行うことなく、収納および保持が可能となる。
【0033】
図10に示すものは、上記各参考例に係る加熱装置100、200、300のチャンバ室142、242、342内に設けられたスチール板131、231あるいはマグネットシート333の直下に非磁性体プレート144、244、344と、スチール板131、231あるいはマグネットシート333を相対的に平行に接触、離間移動を可能に構成したものである。
複数の導電性ピン110、210、310が保持される際には、スチール板131、231あるいはマグネットシート333に接触した非磁性体プレート144、244、344を間に挟んで磁力により吸着される。
【0034】
複数の導電性ピン110、210、310の保持を解除(導電性ピン解除工程)する際には、非磁性体プレート144、244、344とスチール板131、231あるいはマグネットシート333を離間するように相対的に移動させることで磁力を弱めて、導電性ピン110、210、310の重力によって被加熱物M側に褶動させ、複数の導電性ピン110、210、310の先端111、211、311を被加熱物Mの表面に倣うように接触させる(導電性ピン接触工程)。
また、この非磁性体プレート144、244、344の厚さを必要に応じて設定したり、保持時のスチール板131、231あるいはマグネットシート333との間隔を調節することにより、吸着力を最適に設定することが可能であり、スチール板131、231あるいはマグネットシート333による導電性ピン110、210、310の保持および解除を容易に、かつ、確実に行うことができる。
【参考例4】
【0035】
次に、第4参考例に係る加熱装置400について説明する。
第4参考例に係る加熱装置400は、図11乃至図14に示すように、導電性の板状部材からなる下部電極402と上部電極401が対向配置され、他の参考例と同様に両電極間に高周波電界が印加されるように構成されている。
上部電極401は、電極プレート420が上方に設けられた電極支持プレート422によって支持バー445を介して支持されている。
電極プレート420は、他の参考例と同様に、複数の貫通孔421を備え、該貫通孔421に軸方向褶動可能に支持された複数の導電性ピン410を有している。
電極プレート420と電極支持プレート422の間には、磁性体プレート434および非磁性体プレート444が支持バー445にガイドされて摺動可能に設けられている。
【0036】
磁性体プレート434および非磁性体プレート444は、非磁性体プレート444が電極プレート420側に配置されて、押圧バネ446によって一体に電極支持プレート422側に移動するように押圧されている。
導電性ピン410は、他の参考例と同様に、開放された後端部に磁性体が設けられており、磁力によって一体となった非磁性体プレート444を間に介在させて磁性体プレート434と吸着可能に構成されている。
磁性体プレート434、あるいは、導電性ピン410の後端部のいずれを磁石等の常磁性体とするかは任意である。
【0037】
電極支持プレート422には、磁性体プレート434および非磁性体プレート444の電極支持プレート422側への移動を規制可能な抑え板447が設けられており、該抑え板447は、抑え板切替手段448によって規制位置と非規制位置に切り替え可能に構成されている。
電極支持プレート422には、磁性体プレート434側に向けてストッパピン449が設けられ、磁性体プレート434のストッパピン449に対向する位置にはストッパピン貫通孔435が設けられている。
【0038】
このストッパピン449は、図12に示すように、抑え板447により磁性体プレート434および非磁性体プレート444の電極支持プレート422側への移動が規制された位置では、非磁性体プレート444まで達することはなく、図13に示すように、抑え板447が非規制位置に切り替えられ、磁性体プレート434および非磁性体プレート444が電極支持プレート422側にさらに移動した際に、非磁性体プレート444の上方への移動を規制するように設定されている。
すなわち、抑え板447が非規制位置に切り替えられた際には、磁性体プレート434と非磁性体プレート444の間に間隙が生じ、非磁性体プレート444を間に介在させて磁性体プレート434と吸着されていた導電性ピン410の吸着が解除され、重力によって離脱するように構成されている。
【0039】
図13に示した本参考例では、非磁性体プレート444が撓むように構成されているが、磁性体プレート434および非磁性体プレート444の支持バー445によるガイドと押圧バネ446による押圧位置を適宜に設計し、非磁性体プレート444全体が平行に離脱するように構成してもよい。
また、抑え板切替手段448は、抑え板447の位置を切り替え可能な機構であればいかなるものであってもよく、その駆動源も、手動を含めいかなるものであってもよい。
また、ストッパピン449の位置や数は、図示するものに限定されず、必要に応じて適宜に設計可能である。
【0040】
以上のように構成された第4参考例に係る加熱装置400の動作について説明する。
まず、図14(a)に示すように、抑え板447を規制位置にセットして、上部電極401を下部電極402側に移動させる。
上部電極401が図14(b)に示す位置まで移動すると、全ての導電性ピン410が非磁性体プレート444を間に介在させて磁性体プレート434に吸着され(導電性ピン収納工程)、再び、上部電極401を下部電極402から離れる方向に移動させる(導電性ピン保持工程)。
【0041】
複数の導電性ピン110が磁力により吸着されたまま、上部電極401が図14(c)に示す位置まで移動され、上部電極401と下部電極402の間に被加熱物Mが導入される(被加熱物導入工程)。
次に、図14(d)に示すように、上部電極401を被加熱物に充分に接近させた状態で抑え板447が非規制位置に切り替えることにより、図14(e)に示すように、複数の導電性ピン410の保持が解除され、(導電性ピン解除工程)、複数の導電性ピン410は軸方向被加熱物M側に褶動し、先端が被加熱物Mの表面に倣うように接触する(導電性ピン接触工程)。
【0042】
この状態で、下部電極402と上部電極401の両電極間に高周波電界を印加して誘電加熱することで、複数の導電性ピン410の先端が被加熱物Mの表面に均一に当接して、不定形な被加熱物Mであっても局所的な集中加熱を抑制し、短時間に均一に加熱可能となる。
なお、上記動作は、上部電極401を移動させるものとして説明したが、上部電極401と下部電極402を相対的に近づければよく、下部電極402を上昇させても、両者ともに移動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の加熱装置および加熱方法は、特に不定形の食材の加熱に好適に適用することが可能である。
また、上記実施形態は、電極が上下で対向し上部電極にのみ導電性ピンを設けたものであるが、下部電極にも上方に突出する導電性ピンを設けてもよく、2つの電極を水平方向に対向するように配置し、一方あるいは両方の電極に水平方向に突出する導電性ピンを設けてもよい。
その際、導電性ピンの突出方向が重力方向と異なるため、上記実施形態の上部電極に設けた場合の重力相当の付勢力を、バネ等で付与してもよく、チャンバ室を有する参考例においてはチャンバ室内の圧力を高めることで付与してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16