(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所要間隔をおいて相対向して配された一対の部材を有し、その一対の部材間に架け渡されたリードフレームの自重で生じる撓みによる内方向の引っ張り力が掛かることにより、その反力でリードフレームを止める止め部と、
リードフレームを平面視した場合に、前記止め部の位置と異なる位置で、かつ、同止め部の各部材の外側に配され、前記止め部と協働してリードフレームを保持可能な保持部と、を備える
リードフレーム搬送装置。
リードフレームを、前記止め部を構成する、リードフレームの一方側の係合孔と係合してリードフレームの位置を所要位置に決める位置決めピンと、リードフレームの他方側の係合孔に通される抜け防止ピンとで止める
請求項7記載のリードフレームの搬送方法。
前記金型にリードフレームを配置する際、リードフレームを止めている前記位置決めピンの先端を、前記金型に設けた案内部材の先端に当接させ、リードフレームを同位置決ピンから前記案内部材に配置せしめる
請求項8記載のリードフレームの搬送方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の移送装置には、次のような課題があった。
すなわち、多種多様な製品に使用される樹脂モールド電子部品パッケージには、多くの種類があり、そのベースとなるリードフレームも、大きさ、形状、材質、あるいは撓み性等の性質は様々である。
【0008】
そして、上記のようにチャック爪だけでリードフレームの両側を保持する構造では、リードフレームは、保持された両側の部分より内方側が、自重によって重力方向へ撓んだ状態となる。
【0009】
この保持構造では、リードフレームが、保持される部分の間隔が比較的狭く、撓みにくいものであれば、支障なく搬送が可能である。しかし、リードフレームが、例えば、大判である、または、薄型であるなど、搬送時の撓みが大きい場合は、移動開始時、または移動停止時に、リードフレームに振動や慣性力が作用しやすい。これにより、リードフレームの撓み形状、または撓み量に変化が生じると、チャック爪の先端の突出部に載っているリードフレームが内方へずれて外れてしまい、リードフレームが落下して成形用金型の所定の位置に搬送できなくなるおそれがあった。
【0010】
また、他の従来構造として、
図11に示す装置も採用されている。この装置は、
図11において左側にある位置決めピン101をリードフレーム102の位置決め孔(符号省略)に通してリードフレーム102の位置決めを行い、更にリードフレーム102の右側の縁部をチャック爪103に載せて保持する構造である。
【0011】
この構造によれば、リードフレーム102が撓んで右側の縁部がチャック爪103から外れても、位置決めピン101で吊り支えることができ、落下することはない。しかし、何れにしても、リードフレーム102が搬送時の正規の位置から外れてしまうと、リードフレーム102を成形用金型の所定の位置に搬送することはできなかった。
【0012】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、リードフレームが、例えば、大判である、または、薄型であるなどして、搬送時の撓みが大きいものでも、リードフレームの供給元から供給先である成形用金型等の所定の位置まで、保持して搬送することができる、リードフレーム搬送装置及びリードフレームの搬送方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記の目的を達成するために本発明のリードフレーム搬送装置は、所要間隔をおいて相対向して配された一対の部材を有し、その一対の部材間に架け渡されたリードフレームの自重で生じる撓みによる内方向の引っ張り力が掛かることにより、その反力でリードフレームを止める止め部と、該止め部の各部材の外側に配され、前記止め部と協働してリードフレームを保持可能な保持部と、を備えている。
【0014】
リードフレーム搬送装置は、止め部が有する一対の部材間にリードフレームを架け渡すことにより、リードフレームは自重により重力方向に撓んでほぼ円弧状に変形する。この際、リードフレームの、各部材に掛かっている部分は、内方向、かつやや斜め下方向へ各部材を引っ張る。各部材に引っ張り力が生じると、各部材には引っ張り力と反対方向の抗力、すなわち反力が生じる。これにより、リードフレームは、重力方向に撓んだ状態で、かつ各部材により両側からその反力を以て支持された状態で止められる。
【0015】
リードフレームが、各部材により充分な反力を以て支持されている場合は、リードフレームと各部材の間の摩擦力等で、リードフレームを止めて、各部材から脱落しない状態を維持することができる。しかしながら、リードフレームが多様であることもあり、必ずしもそのように止めて支持できるとは限らない。本発明によれば、リードフレームを止めている反力が充分でなくても、止め部の各部材と協働する保持部によって保持されるので、リードフレームが脱落したり、一部が外れたりすることを防止できる。
【0016】
このように、リードフレームが、例えば、大判である、または、薄型であるなどして、搬送時の撓みが大きいものでも、協働する止め部と保持部により保持することができるので、リードフレームの供給元から供給先である成形用金型等の所定の位置まで、脱落することなく確実に搬送することができる。
【0017】
(2)本発明のリードフレーム搬送装置は、止め部が、リードフレームの一方側の係合孔と協働してリードフレームの位置を所要位置に決める位置決めピンと、リードフレームの他方側の係合孔に通される抜け防止ピンとを有する構成とすることもできる。
【0018】
この場合は、上記(1)の作用に加えて、リードフレームを止め部である位置決めピンと抜け防止ピンとで止めることにより、リードフレームの止め部に対する位置を設計上の正規の位置に設定することができる。これにより、止め部と保持部により保持されたリードフレームを、バランスよく安定した状態で保持して搬送することができる。
【0019】
(3)本発明のリードフレーム搬送装置は、抜け防止ピンが、リードフレームの一方側の係合孔と位置決めピンとが係合されて位置決めされたリードフレームの他方側の係合孔に、その孔縁に非接触で挿通可能に形成された構成とすることもできる。
【0020】
この場合は、上記(2)の作用に加えて、位置決めピンをリードフレームの一方側の係合孔に係合させることによって、リードフレームを所要位置に設定することができる。また、それと共に、抜け防止ピンがリードフレームの他方側の係合孔に挿通されるときに、係合孔の孔縁に接触しないようにしているので、引っ掛かりなどもなく、抜け防止ピンを係合孔に対し確実に挿通することができる。これにより、延いては、止め部と保持部によるリードフレームの保持をスムーズに行うことができる。
【0021】
(4)本発明のリードフレーム搬送装置は、位置決めピンの先端が、リードフレームの搬送受部となる、樹脂封止装置の金型に設けられた案内部材の先端に対して当接可能である構成とすることもできる。
【0022】
この場合は、上記(2)及び(3)の作用に加えて、金型に設けられた案内部材に、係合孔と係合してリードフレームを止めている位置決めピンの先端が当接することにより、位置決めピンと案内部材とはつながる。そして、リードフレームが金型に触れて、リードフレームの撓みが解消されると、リードフレームは下降して、位置決めピンから案内部材へ移ることができる。案内部材は、移ってきたリードフレームを案内して、金型の所定の位置、すなわち樹脂成形を行うための位置に設定することができる。
【0023】
(5)本発明のリードフレーム搬送装置は、リードフレームの金型への受け渡しにおいて、リードフレームの主面に当接するクランパーを有する構成とすることもできる。
【0024】
この場合は、上記(4)の作用に加えて、リードフレームを金型の所定の位置に配置するときに、クランパーをリードフレームの主面に当接させて、主面を押さえることができる。すなわち、樹脂成形作業を繰り返し行う金型は、リードフレームを配置するときには、通常、高温に保持されているため、金型上に配置されたリードフレームが熱により変形する場合がある。クランパーによってリードフレームの主面を押さえることで、この熱による変形を抑制または防止することができ、樹脂成形作業に支障が出ないようにすることができる。
【0025】
(6)上記の目的を達成するために本発明のリードフレームの搬送方法は、所要間隔をおいて相対向して配された一対の部材に、各部材間に架け渡されたリードフレームの自重による撓みで引っ張り力が作用することで、その反力で前記一対の部材がリードフレームを止めて搬送する工程を備えている。
【0026】
本発明のリードフレームの搬送方法によれば、止め部が有する一対の部材間にリードフレームを架け渡すことにより、リードフレームは自重により重力方向に撓んでほぼ円弧状に変形する。この際、リードフレームの、各部材に掛かっている部分は、内方向かつやや斜め下方向へ各部材を引っ張る。各部材に引っ張り力が生じると、各部材には引っ張り力と反対方向の抗力、すなわち反力が生じる。これにより、リードフレームは、重力方向に撓んだ状態で、かつ各部材により両側からその反力を以て支持された状態で止められる。
【0027】
リードフレームが、各部材により充分な反力を以て支持されている場合は、リードフレームと各部材の間の摩擦力等で、リードフレームが各部材から脱落しない状態を維持することができる。しかしながら、リードフレームが多様であることもあり、必ずしもそのように支持できるとは限らない。リードフレームを支持している反力が充分でなくても、止め部の各部材と協働する保持部によって保持されるので、リードフレームが脱落したり、一部が外れたりすることを防止できる。
【0028】
このように、リードフレームが、例えば、大判である、または、薄型であるなどして、搬送時の撓みが大きいものでも、協働する止め部と保持部により保持することができるので、リードフレームの供給元から供給先である成形用金型等の所定の位置まで、脱落することなく確実に搬送することができる。
【0029】
(7)上記の目的を達成するために本発明のリードフレームの搬送方法は、一対の部材間でリードフレームを止める止め部に対するリードフレームの位置を所定の位置に設定する工程と、前記止め部と、該止め部の前記各部材の外側に配され、同止め部と協働してリードフレームを保持する保持部により、リードフレームを保持可能とする工程と、前記止め部及び前記保持部を上昇させ、同止め部に、保持されたリードフレームの自重による撓みで引っ張り力が掛かることにより、その反力でリードフレームを止める工程と、リードフレームを樹脂封止装置の金型へ搬送し、金型の所定の位置に配置する工程と、を備えている。
【0030】
このリードフレームの搬送方法によれば、上記(6)と同様の作用を有すると共に、止め部と、止め部の各部材の外側に配され、止め部と協働してリードフレームを保持する保持部により、各部材の内側に保持されるリードフレームの邪魔にならない外側からリードフレームを保持することができる。これにより、保持部は、リードフレームを、リードフレームに干渉しにくい状態で保持することができるので、上記各作用を無理なく自然に作用させることが可能になる。
【0031】
(8)本発明のリードフレームの搬送方法は、リードフレームを、止め部を構成する、リードフレームの一方側の係合孔と係合してリードフレームの位置を所要位置に決める位置決めピンと、リードフレームの他方側の係合孔に通される抜け防止ピンとで止めるようにしてもよい。
【0032】
この場合は、上記(7)の作用に加えて、リードフレームを止め部である位置決めピンと抜け防止ピンとで止めることにより、リードフレームの止め部に対する位置を、設計上の正規の位置に自動的に設定することができる。これにより、止め部と保持部とにより保持されたリードフレームを、バランスよく安定した状態で搬送することができる。
【0033】
(9)本発明のリードフレームの搬送方法は、金型にリードフレームを配置する際、リードフレームを止めている位置決めピンの先端を、金型に設けた案内部材の先端に当接させ、リードフレームを同位置決めピンから案内部材に配置せしめるようにしてもよい。
【0034】
この場合は、上記(8)の作用に加えて、金型に設けられた案内部材に、例えば係合孔と係合するなどしてリードフレームを止めている位置決めピンの先端が当接することにより、位置決めピンと案内部材とはつながる。そして、リードフレームが金型に触れて、リードフレームの撓みが解消されると、リードフレームは下降して、位置決めピンから案内部材へ移る。案内部材は、移ってきたリードフレームを案内して、金型の所定の位置、すなわち樹脂成形を行うための位置に配置することができる。
【0035】
(10)本発明のリードフレームの搬送方法は、金型へのリードフレームの受け渡しにおいて、クランパーをリードフレームの主面に当接させるようにしてもよい。
【0036】
この場合は、上記(7)、(8)及び(9)の作用に加えて、リードフレームを金型の所定の位置に配置するときに、クランパーをリードフレームの主面に当接させて、主面を押さえることができる。すなわち、樹脂成形作業を繰り返し行う金型は、リードフレームを配置するときには、通常、高温に保持されているため、金型上に配置されたリードフレームが熱により変形する場合がある。クランパーによってリードフレームの主面を押さえることで、この熱による変形を抑制または防止することができ、樹脂成形作業に支障が出ないようにすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、リードフレームが、例えば、大判である、または、薄型であるなどして、搬送時の撓みが大きいものでも、リードフレームの供給元から供給先である成形用金型等の所定の位置まで、保持して搬送することができる、リードフレーム搬送装置及びリードフレームの搬送方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1ないし
図10を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
図1、
図3ないし
図10は、リードフレーム搬送装置Aを示しているが、図示の便宜上、中央部にある樹脂収容部14と、各図においてその右側にある保持部を表しており、左側の保持部は省略している。また、
図1、
図3ないし
図10では、後で説明するガイドシャフト15a、16aについても図示を省略している。
【0040】
リードフレーム搬送装置Aは、例えば、樹脂モールド電子部品パッケージを製造する樹脂封止装置(図示省略)を構成し、インローダーとも称される。リードフレーム搬送装置Aは、樹脂封止装置の材料供給部に置かれたマガジンから一枚ずつ切り出して整列テーブル5に置かれた成形前のリードフレームを保持し、次工程の樹脂封止を行う下金型6へ搬送するものである。
【0041】
リードフレーム搬送装置Aは、図示していない移行駆動部を有しており、上記したように材料供給部と金型6の間で移行可能である。リードフレーム搬送装置Aは、平面視で、
図2において上下方向にやや長い長方形状の枠体1を有している。枠体1は、短手側の枠部材10、11と長手側の枠部材12、13により枠組みされて形成されている。
【0042】
枠体1は、短手方向(
図2において左右方向)の中間に、枠部材10、11に架け渡すように長手方向と平行に、樹脂タブレット(符号省略)を収容する樹脂収容部14が設けられている。これにより、樹脂収容部14の左右側に、リードフレームを保持する装置を収容する空間(符号省略)が形成される。
【0043】
また、枠体1には、長手方向の枠部材12、13、及び樹脂収容部14の両端寄りの二箇所に、それらの各部材の間に架け渡すように、ガイドシャフト15、16、及びガイドシャフト15a、16aが設けられている。ガイドシャフト15、16、及びガイドシャフト15a、16aは、短手方向の枠部材10、11と平行に設けられている。
【0044】
図2で左側のガイドシャフト15、16の間には、後で説明する駆動アーム49、49aがそれぞれ互いに平行になるように架け渡して嵌装されている。駆動アーム49、49aは、図示していない駆動シリンダーを介し、ガイドシャフト15、16に沿って移動可能である。
【0045】
また、
図2で右側のガイドシャフト15a、16aの間には、駆動アーム49、49aがそれぞれ互いに平行になるように架け渡して嵌装されている。駆動アーム49、49aは、図示していない駆動シリンダーを介し、ガイドシャフト15a、16aに沿って移動可能である。
【0046】
上記枠体1の枠部材13の長手方向の中間の外側には、セットブロック130が設けられている。セットブロック130の外端部には、下方へ向けて突出した嵌合部131(
図1参照)が設けてある。セットブロック130は、リードフレームを保持する際、材料供給部の整列テーブル5(
図3ないし
図6参照)の嵌合受部50に嵌合部131を嵌合して、後で説明する止め部の整列テーブル5に対する位置決めを行うものである。
【0047】
図1を参照する。
図1では、上記したように、枠体の中央部にある樹脂収容部14と、各図においてその右側にある保持部(符号省略)を表しており、左側の保持部は省略している。また、
図1の他、
図3ないし
図10でもガイドシャフト16aについて図示を省略している。なお、左側の保持部は、以下、説明する右側の保持部と同等の構成を有している。
【0048】
枠体1の短手方向の中間にある樹脂収容部14と、枠部材13の相対向する側には、
図1で奥行き方向に所要間隔をおいて二組以上のピン保持ブロック3、3aが設けられている(なお、
図1には、一組のみ表れている)。ピン保持ブロック3、3aは、左右対称形でほぼ同じ形状を有している。
【0049】
ピン保持ブロック3は、樹脂収容部14に固定された角柱形状の下部ブロック30を有し、ピン保持ブロック3aは、枠部材13に固定された角柱形状の下部ブロック30aを有している。下部ブロック30、30aの中心には、ガイド孔31、31aが鉛直方向となるよう設けられている。
【0050】
また、下部ブロック30、30aの上には、上部ブロック32、32aが接続されている。上部ブロック32、32aには、それぞれガイド孔31、31aにつながるやや径大のバネ収容孔33、33aが設けてある。バネ収容孔33、33aには、それぞれ上方へ抜ける抜け孔34、34aが設けられている。
【0051】
ピン保持ブロック3のガイド孔31、バネ収容孔33、抜け孔34には、位置決めピン35が鉛直方向へスライド可能に嵌装されている。なお、位置決めピン35の軸線の位置は、搬送装置が下金型6の上方へ移動したときに、下金型6の案内ピン60の軸線と同一直線上に重なる位置になるように設定されている(
図7、
図8参照)。また、ピン保持ブロック3aのガイド孔31a、バネ収容孔33a、抜け孔34aには、抜け防止ピン36が、鉛直方向へスライド可能に嵌装されている。
【0052】
位置決めピン35は、ガイド孔31にスライド可能に収まっているシャフト350を有している。シャフト350の下端部は窄まっており、その先端には同径で所要長さに形成され、後で説明するピン361と共に止め部を構成するピン351が設けられている。なお、ピン351の先端部は窄まるようやや尖り、更に先端面が平面となるよう形成されている(
図1の左側拡大図参照)。ピン351は、後で説明するリードフレーム7の係合孔である位置決め孔70(
図1の左側拡大図参照)とほぼ同径に形成されている。
【0053】
また、抜け防止ピン36のシャフト360の下端部も同様に窄まっており、その先端には全長にわたり同径で所要長さに形成された止め部を構成するピン361が設けられている。ピン361は、上記ピン351よりやや径小に形成されている。これにより、位置決めピン35にリードフレーム7の位置決め孔70が係合し、位置決めピン35に対するリードフレーム7の位置が決まった状態では、リードフレーム搬送装置Aが整列テーブル5から上昇する前において(リードフレームが自重により撓まない状態において)、抜け防止ピン36のピン361がリードフレーム7の係合孔71に通るときに、係合孔71の孔縁に接触しないようになっている(
図4の右側拡大図参照)。
【0054】
なお、止め部は、
図1、
図3ないし
図10では、所要間隔をおいて相対向して配された位置決めピン35と抜け防止ピン36の一対を表しているが、これに限定するものではない。本実施の形態のように、リードフレーム7が一方向へ長い長方形状であり、その長手方向が、各図における奥行き方向とした場合は、奥行き方向に複数対(複数組)配した止め部によってリードフレーム7を止める構成とすることもある。
【0055】
この場合は、各図で奥行き方向(各図とは水平、かつ直角方向)においても、リードフレームは、位置決めピンと抜け防止ピンにより止められ、奥行き方向においても撓みが生じることは考えられる。しかし、各ピンの間の縦横のスパンの違いなどの影響で、リードフレームの一方向において先に撓みが生じてしまうと、それと水平、かつ直角方向の剛性はきわめて高くなり、自重程度では、容易には撓まない。したがって、リードフレームの保持は、実質的に各図に示す方向(リードフレームが、まず、この方向で撓むことを想定)において行われる。
【0056】
また、例えばリードフレームが正方形であり、四本のピンで保持される構造で、更に各ピン間の縦横のスパンが同じである場合、リードフレームが保持されるときに、その中央部が深く撓むことが考えられる。この場合は、対角位置にあるピン同士で、各図の対向位置にある各ピン同士と同様の作用を生じ、リードフレームを止めることが想定できる。
【0057】
また、位置決めピン35のシャフト350の上部には、シャフト350より径小で抜け孔34に挿通可能なバネ掛けシャフト352が同軸上に設けられている。シャフト350とバネ掛けシャフト352の境界には、シャフト350より径大でバネ収容孔33より径小なバネ受け353が設けられ、バネ受け353とバネ収容孔33の天部との間には、圧縮コイルバネ354が掛けられている。
【0058】
この構造によれば、位置決めピン35に対して上方向の力が作用すると、位置決めピン35は、圧縮コイルバネ354の付勢力に抗しながら、バネ掛けシャフト352を抜け孔34に通して上昇することができる。なお、抜け防止ピン36にも位置決めピン35と同様に、バネ掛けシャフト362、バネ受け363が設けられ、バネ受け363とバネ収容孔33aの天部との間には、圧縮コイルバネ364が掛けられている。なお、抜け防止ピン36については、この構造は、主に緩衝作用による破損防止を図るためのものである。
【0059】
更に、上記駆動アーム49、49aの外側となる面(相対向する面とは反対側の面)には、それぞれ所要の間隔をおいて四箇所に、保持部であるチャック爪4、4aが設けられている。なお、各駆動アーム49、49aに設けられるチャック爪4、4aの数は、これに限定されるものではなく、適宜設定が可能である。駆動アーム49側のチャック爪4は、上記位置決めピン35のピン351の外側(
図1において左側)に配され、駆動アーム49a側のチャック爪4aは、上記抜け防止ピン36のピン361の外側(
図1において右側)に配されている。駆動アーム49、49aに設けられたチャック爪4、4aは、図示しない駆動シリンダーによって、内外方向かつ互いに反対方向へ進退動することができる。
【0060】
チャック爪4、4aは、下端部にいわば「コ」字状となるように、かつ開放側が内方向を向くように左右対称形状に設けられている受部40、40aを有している。チャック爪4、4aは、内方向へ移動したときに各ピン351、361に接触しないよう、各ピン351、361とは、各図において奥行き方向へずらした位置に設けてある。なお、
図1に表れているチャック爪4、4aは、各ピン351、361の奥側にある。
【0061】
また、チャック爪4、4aは、内方向へ移動したときに受部40、40aが各ピン351、361に接触する構造とすることもできる。この場合は、チャック爪4、4aを外方向へ移動させれば、各ピン351、361と受部40、40aの先端の間に所要幅の隙間を設けることができ、リードフレームの通り抜けが可能になる。
【0062】
更に、ピン保持ブロック3、3aの下方には、チャック爪4、4aとは別に上下方向へ動くようにして、左右方向にフレームクランパー2が設けられている。フレームクランパー2は、両端部に下方へ突出したクランプ部20を有している。フレームクランパー2は、枠体1に取り付けられている図示しないガイドシャフトに昇降可能に嵌装されている。
【0063】
なお、フレームクランパー2は、外力が作用しない状態では、自重により最下部(各クランプ部20の先端が、
図3に示すように各ピン351、361の先端とほぼ同じ高さになる位置)まで落ちている。また、フレームクランパー2は、クランプ部20の先端が、内方向へ移動したときのチャック爪4、4aの受け部40、40aのやや上方に位置する高さまで上昇することができる(便宜上表した、
図1の左右側拡大図参照)。各クランプ部20は、下金型6へのリードフレーム7の受け渡しにおいて、先端をリードフレーム7の主面に当接させて押さえることができる。
【0064】
(作用)
主に
図3ないし
図10を参照して、リードフレーム搬送装置Aの作用、及びリードフレーム搬送装置Aを使用したリードフレームの搬送方法を説明する。
以下、樹脂モールド電子部品パッケージを製造する樹脂封止装置の材料供給部に置かれたマガジン内の成形前のリードフレームを一枚ずつ切り出して保持し、次工程の樹脂封止を行う下金型6へ搬送する場合を例にとり説明する。
【0065】
なお、リードフレーム搬送装置Aは、リードフレーム、あるいは撓み性などの特性が似た、リードフレーム様の材料を同様に保持して次工程への搬送を行うものであれば、上記樹脂封止装置以外の他の装置の付帯装置として転用すること、または他の分野へ転用することも可能である。
【0066】
(A−1)
リードフレーム搬送装置Aを、成形前のリードフレーム7の供給元である整列テーブル5に整列しているリードフレーム7の上方に位置させる。このとき、チャック爪4、4aは、駆動アーム49、49aにより、それぞれ外側へ移動させてあり、開いた状態となっている(
図3参照)。
【0067】
(A−2)
リードフレーム搬送装置Aを下降させて、整列テーブル5と噛み合わせる(
図4参照)。具体的には、当初は最下部まで落ちているフレームクランパー2の各クランプ部20の先端がリードフレーム7に当たると共に、セットブロック130の嵌合部131が整列テーブル5の嵌合受部50に嵌合し、リードフレーム搬送装置Aの位置が決まる。
【0068】
そして、リードフレーム搬送装置Aを更に下降させると、位置決めピン35のピン351がリードフレーム7の位置決め孔70に通り、同時に抜け防止ピン36のピン361が係合孔71に通る(
図4参照)。このとき、位置決めピン35の先部がやや尖ったピン351は、同径部分が位置決め孔70とほぼ同径であるが、円滑な挿通が可能になる。また、フレームクランパー2は、各クランプ部20が下から押されるために、チャック爪4、4aと相対的にやや上昇する。
【0069】
なお、ピン351を位置決め孔70に挿通することで、リードフレーム7の位置決めピン35に対する位置はほぼ決まるので、ピン361は係合孔71の孔縁に接触せずに挿通することができる。したがって、ピン361の引っ掛かりなどもなく、ピン361を係合孔71に対し確実に挿通することができる。これにより、次に説明するピン351、361、及びチャック爪4、4aの協働によるリードフレーム7の保持をスムーズに行うことができる。
【0070】
(A−3)
リードフレーム搬送装置Aと整列テーブル5が、上記(A−2)のように噛み合っている状態で、駆動アーム49、49aを互いに接近する方向に移動させて、チャック爪4、4aを閉じる(
図5参照)。これにより、チャック爪4、4aの受部40、40aは、それぞれの内方向の先端部が、位置決めピン35のピン351と抜け防止ピン36のピン361とは接触しないようにして移動する。
【0071】
このとき、受部40、40aは、上面の先端角部に設けられている斜面(符号省略)によって、各ピン351、361で止められているリードフレーム7の左右両側の端縁部を掬い上げることができるようにして内方へ移動するので、リードフレーム7の両側端縁部の下側、及びリードフレーム7の高さに位置している各プランプ部20の先端の下側にスムーズに入ることができる。
【0072】
このように、チャック爪4、4aは、各ピン351、361の内側に保持されるリードフレーム7の邪魔にならない側、つまり干渉しない外側(リードフレームの両端縁側)から、受部40、40aでリードフレームを保持できる位置に移動することができる。
【0073】
また、これにより、受部40、40aは、各ピン351、361に位置決め孔70、及び係合孔71を嵌め入れて止められているリードフレーム7を下から支えて、各ピン351、361から抜け落ちないようにすることができる(参考:
図1の左右側拡大図)。
【0074】
(A−4)
リードフレーム搬送装置Aをリードフレーム7と共に、整列テーブル5から上昇させる。このようにして、位置決めピン35のピン351と抜け防止ピン36のピン361との間にリードフレーム7が架け渡される。リードフレーム7は、自重により重力方向に撓んでほぼ円弧状に変形する(
図6参照)。また、フレームクランパー2は、チャック爪4、4aの図示しない凸部分によって下から支えられ、下方へ落ちることはない。
【0075】
このとき、リードフレーム7の、各ピン351、361に掛かっている各孔70、71の孔縁部分は、内方向かつやや斜め下方向へ各ピン351、361を引っ張る。各ピン351、361に引っ張り力が生じると、各ピン351、361には引っ張り力と反対方向の抗力、すなわち反力が生じる。これにより、リードフレーム7は、重力方向に撓んだ状態で、かつ各ピン351、361により両側からその反力を以て支持された状態で止められる。また、リードフレーム7の位置決めピン35に対する位置を、設計上の正規の位置に設定することができるので、リードフレーム7を、バランスよく安定した状態で保持することができる。
【0076】
更に、リードフレーム7は、上記したようにチャック爪4、4aの受け部40、40aによって、下から支えられており、仮に各ピン351、361によるリードフレーム7を支持している反力が充分でなくても、止め部の各ピン351、361と協働する受け部40、40aによって保持されるので、リードフレーム7が脱落したり、一部が外れたりすることを防止できる(
図6、
図1の左右拡大図参照)。
【0077】
このように、例えば、リードフレーム7が大判である、または、薄型であるなどして、搬送時の撓みが大きいものでも、協働する位置決めピン35と抜け防止ピン36の各ピン351、361とチャック爪4、4aの受け部40、40aにより保持することができるので、リードフレーム搬送装置Aは、供給元から供給先である下金型6の所定の位置まで、リードフレーム7を脱落することなく確実に搬送することができる。
【0078】
(A−5)
上記(A−4)のようにして、リードフレーム7を保持したリードフレーム搬送装置Aは、供給先である下金型6の上方へ移動し、所要位置で停止する(
図7参照)。この停止位置においては、リードフレーム搬送装置Aに設けられている位置決めピン35の軸線は、下金型6の案内ピン60の軸線と同一直線上に重なっている。
【0079】
(A−6)
リードフレーム搬送装置Aは下降し、下金型6と噛み合う。これにより、位置決めピン35のピン351の先端面と、案内ピン60の先端部とが当接し、位置決めピン35のピン351と案内ピン60とは、見かけ上、つながる。そして、リードフレーム搬送装置Aが更に下降すると、リードフレーム7は、中央部分の下面側が下金型6に触れて、撓みが小さくなり案内ピン60に対する掛かりが緩んでいることもあって、案内ピン60に沿って下降するようになる。また、位置決めピン35が、案内ピン60によって圧縮コイルバネ354の付勢力に抗して押し上げられる。これにより、案内ピン60がリードフレーム7の位置決め孔70に下方側から入り、リードフレーム7は、案内ピン60側へ移る(
図8参照)。
【0080】
(A−7)
リードフレーム搬送装置Aと下金型6が、上記(A−6)のように噛み合っている状態で、チャック爪4、4aを開く。受け部40、40aによる支えがなくなったリードフレーム7とチャック爪4、4aによる支えがなくなったフレームクランパー2は下降し、クランプ部20はリードフレーム7の縁部に当接してこれを押し下げ、リードフレーム7を下金型6の所定の位置にセットする(
図9参照)。また、このときのクランプ部20は、リードフレーム7を上記のように確実にセットする作用と、下金型6の余熱によるリードフレーム7の変形を抑制または防止する作用を有する。
【0081】
(A−8)
このようにしてリードフレーム7をリードフレーム搬送装置Aが下金型6の所定の位置にセットした後、下金型6は下降し、リードフレーム搬送装置Aから離れる(
図10参照)。そして、リードフレーム搬送装置Aは、供給元である整列テーブル5の方向へ移動して、上記動きを繰り返す。なお、下金型6上では、次工程としてリードフレーム7に対する樹脂封止作業が行われ、樹脂モールド電子部品パッケージ(図示省略)が製造される。
【0082】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【課題】リードフレームが大判である、または、薄型であるなどして、搬送時の撓みが大きいものでも、リードフレームの供給元から供給先である成形用金型等の所定の位置まで、保持して搬送することができるリードフレーム搬送装置を提供する。
【解決手段】リードフレーム搬送装置Aは、所要間隔をおいて相対向して配され、それらの間に架け渡されたリードフレーム7の自重で生じる撓みによる内方向の引っ張り力の反力でリードフレーム7を止める位置決めピン35と抜け防止ピン36と、位置決めピン35と抜け防止ピン36の外側に配され、これらと協働してリードフレーム7を保持可能なチャック爪4、4aを備えている。