特許第6094825号(P6094825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6094825複合粉末だし取り用調味料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094825
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】複合粉末だし取り用調味料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20170306BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20170306BHJP
   A23L 17/20 20160101ALI20170306BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20170306BHJP
【FI】
   A23L27/00 A
   A23L27/10 B
   A23L27/10 Z
   A23L17/20
   A23L19/00 101
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-123563(P2014-123563)
(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公開番号】特開2016-2026(P2016-2026A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2015年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】307003951
【氏名又は名称】ナニワフード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】松田 良彦
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−295439(JP,A)
【文献】 特開昭48−075769(JP,A)
【文献】 特開2012−143163(JP,A)
【文献】 特開平11−239461(JP,A)
【文献】 特開2006−238837(JP,A)
【文献】 特開2001−197868(JP,A)
【文献】 特開平08−033459(JP,A)
【文献】 特開平06−303938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
PubMed
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚節貝類を煮出して抽出した魚節貝類ガラと魚節貝類だし抽出液を得る第1の熱履歴工程と、
前記第1の熱履歴工程で得た魚節貝類だし抽出液のみに対して鰹節を添加してさらに加熱する第2の熱履歴工程と、
昆布および椎茸を加熱せずにペースト加工して非ガラペーストを得る第3の熱履歴工程と、
それら熱履歴が3通りに異なる前記第1の熱履歴工程で得た前記魚節貝類ガラと、前記第2の熱履歴工程で得た前記魚節貝類だし抽出液と、前記第3の熱履歴工程で得た非ガラ粉末とを混合して粉末化する粉末化工程を備え、
それら熱履歴が3通りに異なり、かつ、前記魚節貝類と、前記昆布および椎茸という異種の原材料同士を混合して一体化することにより、だしの重層性を奏出せしめた複合粉末だし取り用調味料の製造方法。
【請求項2】
乾燥キノコ類を煮出して抽出したキノコ類ガラとキノコ類だし抽出液を得る第1の熱履歴工程と、
前記第1の熱履歴工程で得たキノコ類だし抽出液のみをさらに加熱濃縮する第2の熱履歴工程と、
加熱せずに鰹節を粉末化する第3の熱履歴工程と、
それら熱履歴が3通りに異なる前記第1の熱履歴工程で得た前記キノコ類ガラと、前記第2の熱履歴工程で得た前記キノコ類だし抽出液と、前記第3の熱履歴工程で得た鰹節粉末とを混合して粉末化する粉末化工程を備え、
それら熱履歴が3通りに異なり、かつ、前記キノコ類と、前記鰹節という異種の原材料同士を混合して一体化することにより、だしの重層性を奏出せしめた複合粉末だし取り用調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海草系、魚節貝類系、キノコ系、薬膳植物系などの各種素材を用いて複合的で風味豊かな旨みを持つだし取り用調味料およびその製造方法に関する。特に、天然素材を重視し、天然素材を用いただし取り用調味料でありながら、複合的な旨みを濃く引き出すことができるだし取り用調味料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品産業の発達とともに様々なだしが開発されているが、旨みや食の安全性の観点から天然素材を用いてだしを取る、いわゆる天然だしが安定した人気を得ている。天然だしは、削り節、煮干し等の魚介類、干し昆布などの海草類などが原料となる。
【0003】
しかし、削り節、煮干し、干し昆布などをそのまま用いてだしを取ることは、だしを取るための使用量、水の量、抽出方法、煮る場合は煮炊きの温度と時間、冷まし方などの作り方のコツを習得する必要があるため、敬遠されることも多い。天然素材を用いて十分に旨みと風味豊かなだしを取ろうとすると、水への漬け置きなど1日以上要するケースも多い。だしを取るために1日以上を要してしまうことは一般家庭においては困難と言わざるを得ない。
さらに、それら天然素材の保管、だしを取った後のだしガラの処理などが手間であった。
そこで、それらだし取り用の天然素材を適量に小分けしてパックにした、いわゆるだし取り用の調味料パックが重宝されている。
【0004】
一方、これら天然だしと同等の風味と味を有するだし汁を短時間で作ることができるという触れ込みで、顆粒状や液体状の「だしの素」が多数販売されている。これら「だしの素」は、風味原料,エキス類,食塩,糖類,化学調味料等が配合されており、顆粒状にする場合には賦型剤を配合して造粒機或いは押し出し式造粒機等で顆粒状に製造され、液状にする場合には、原汁に醤油,砂糖,食塩,グルタミン酸ナトリウム等の調味料を適宜混合して瓶や袋などに充填して製造されている。
このだしの素は、手軽で扱いやすいというメリットはあるものの、やはり、天然素材を用いて取った天然だしの方が風味や旨みに優れており、人工のだしの素に見られるような化学調味料や人工甘味料から来るエグ味がない。
【0005】
天然素材を用いて抽出した天然だしが即座に引き出せるように工夫しただしの素として、特開2004−166609号公報が知られている。特開2004−166609号公報は、畜肉および畜骨からなる原料を加圧下で熱水加熱抽出して抽出エキスと抽出オイルと抽出残さとに分離し、抽出エキスを濃縮して得た濃縮エキスを、抽出残さをミンチすることによって得たミンチ状残さに混合した後に成形して成形体を得て、この成形体を凍結乾燥するだしの素の製造方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−166609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
天然だしは上記の通り、安定した人気があり、安全安心の調味料として好ましいものであるが、以下の問題があった。
第1は、既に上記で述べた点であるが、天然素材ごとにだしの取り方のコツがあり、その習得が必要となる点である。
天然素材ごとに作り方のコツが違い、だしを取るための使用量、水の量、抽出方法、煮る場合は煮炊きの温度と時間、冷まし方などを間違えないようにしなければならない。
【0008】
第2は、抽出時間とだし味の濃さである。
天然だしは非常に旨みと風味が豊かであるが、十分に濃いだしを取るためには天然素材の量を多くし、かつ、抽出時間を長くかける必要がある。手短な時間で濃いだしを取ることは困難とされている。
【0009】
第3は、複合だしを得るための手数である。
天然だしには魚節、貝類、昆布類、キノコ類など、多種多様の素材があり、それぞれから独特の旨みと風味を持っただしが得られるが、それらを複数組み合わせた複合だしも魅力が大きい。単体の天然素材から醸し出される旨みと風味が複数組み合わさると一層深みとコクが生まれ、重奏的な旨みと風味が得られる。複合だしの素材を一度に使用してだしを取ろうとすると、天然素材ごとに適しただしの抽出方法ではないため、すべての天然素材から適切な旨みと風味を得ることは困難である。一般的には、天然素材ごとにだしを取り、それを合わせるという方法となるが、一般利用者にとって手間がかかり、難しいものと言わざるを得ないという問題があった。
【0010】
ここで、上記特許文献1は、天然素材から天然だしを抽出し、単純に天然だし取り後のガラのミンチに加え戻したものであり、利用者の手元での煮立ちによって内部に含ませた天然だしが即座に引き出せるよう工夫したものである。ガラはだし取りで煮崩れているため、いわゆる“鬆(す)”が多数入った状態となっている。そのミンチに天然だしを含ませるため、即座に天然だしが溶け出すことができる。しかし、実際にはだし取りしたガラをミンチにしたものでは結着性が十分に担保できないため、人工的な結着剤を添加する必要がある場合も考えられる。さらに、天然素材から天然だしを抽出し、単純に天然だし取り後のガラのミンチに加え戻すため、複数の天然素材を用いた複合だしの製造にはそのままでは適用が困難であった。
【0011】
そこで、上記問題に鑑み、本発明は、複数の天然素材を用いた複合的な天然だしを得ることができる複合粉末だし取り用調味料であり、利用者は1回のだし取り作業にて天然素材を複数組み合わせた天然の複合だしを短い抽出時間で十分に濃いだしが得られるという、優れた複合粉末だし取り用調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の複合粉末だし取り用調味料は、目的とする味や成分のだしを取り出すために任意に取り揃えただし取り用素材を、海草系、魚節貝類系、キノコ系、薬膳植物系の系統別および抽出方法別に分類してグルーピング化する第1の工程と、前記第1の工程でグループ化された各グループに対して、当該グループごとの素材に適しただし取り製法でだし取り処理をして、だしエキスとガラを得る第2の工程と、前記第2の工程で得られた前記グループごとに、前記ガラを加工したガラ粉末と、だし取り未処理素材から加工した非ガラ粉末とを、前記だしエキスに加えてペーストにしたのち粒状に乾燥させた、だしエキス混合粒を得る第3の工程と、前記第3の工程で製造された各々のグループの前記だしエキス混合粒を所定割合で混合する第4の工程により製造された複合粉末だし取り用調味料である。
なお、前記第3の工程において、前記グループのうち少なくとも1つのグループについては、前記非ガラ粉末の前記だし取り未処理素材が前記ガラ粉末の素材とは異種の素材であり、異種同士の前記非ガラ粉末と前記ガラ粉末の混合により前記ペーストを得ることが可能である。
また、前記第3の工程において、前記グループのうち少なくとも1つのグループについては、前記非ガラ粉末の前記だし取り未処理素材が前記ガラ粉末の素材とは異系統の素材であり、異系統同士の前記非ガラ粉末と前記ガラ粉末の混合により前記ペーストを得ることが可能である。
【0013】
例えば、だしエキス混合粒の破砕粉末を紙パックなどに充填した形で提供することができる。
なお、上記製造工程において、第2の工程と第3の工程の間に、だしエキスを濃縮、調整するだしエキス濃縮調整工程を伴うものでも良い。
第2の工程では最適な濃さのだしが得られたとしても、利用者が煮出す際により濃いだしがでるようにエキス濃縮して調整しておいた方が良い場合もあり得るからである。
【0014】
目的の味を醸し出すための天然素材としては、特に限定されないが、第1の工程におけるグルーピング化する素材の系統としては、海草系、魚節貝類系、キノコ系、薬膳植物系などを取り揃えても良い。また、取り揃える天然素材としては、これら系統のいずれかの組み合わせであり、必ずしもすべての系統の天然素材を取り揃える必要はない。また、上記例示の系統のいずれにも該当しないものを加えても良い。
【0015】
例えば、海草系の素材としては昆布を含むものがある。
例えば、魚節貝類系の素材としては鰹や宗田鰹を含み、さらに干しあさり、ホタテ貝柱、いわし、あご、マグロのいずれかを任意で含むものがある。
例えば、キノコ系の素材としては、しいたけを含み、えのき、しめじ、舞茸のいずれかを任意で含むものがある。
例えば、薬膳植物系の素材としては、植物系として、例えば、茶(ほうじ茶やむぎ茶などの焙煎茶、緑茶などの非発酵茶、ウーロン茶などの発酵茶など)、人参、牛蒡、ほうれん草、リンゴ、ナツメ、玉ねぎのいずれかまたはその組み合わせを含む。他の植物も含まれ得る。また、薬膳系としては、甘草、はと麦、ドクダミをはじめ、その他の薬膳類も含まれ得る。なお、薬膳系の甘草、はと麦、ドクダミに関しては、煎じた後に抽出液を得て、当該抽出液を利用することが好ましい。なお、薬膳植物系の素材は、複合だしの素材として必須ではなく、含めるか否かは商品コンセプトに応じて決めれば良い。
【0016】
ここで、第2の工程として、第1の工程でグループ化された素材ごと、各々のグループに適した方法でだし取り作業を行う。
例えば、下記のグループに大別して行う。順不同であるが、1つ目が海草系の素材のグループに対しては海草系だし取り製法でだしを取り、だしとガラを得る海草系工程、2つ目が魚節貝類系の素材のグループに対して魚節貝類系だし取り製法でだしを取り、だしとガラを得る魚節貝類系工程、3つ目がキノコ系の素材のグループに対してキノコ系だし取り製法でだしを取り、だしとガラを得る魚節貝類系工程、4つ目が薬膳植物系の素材のグループに対して薬膳植物系だし取り製法でだしを取り、だしとガラを得る薬膳植物系工程がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の複合粉末だし取り用調味料によれば、利用者は、一回の煮出し作業のみで、それぞれの天然素材のガラに吸着させた天然だしエキスが即座に煮出るため、十分に濃いだしが即座に得られることとなる。その煮出ただしエキスは第1の工程および第2の工程でそれぞれの天然素材から得られた天然だし由来のものであるため“天然だし”そのものであることに相違ない。
所定割合で組み合わせた天然素材のガラそれぞれから得られる天然だしエキスが自然と溶け出して混ざり合うため、一度の煮出し作業で自然と複合だしが形成される。
また、素材の系統ごとにガラのみでなく、だし取り素材とは異種の天然素材を粉砕などして加工した粉末も天然だしに加えてペースト化するため、利用者が煮出しする際、ベースとなる天然だしに対して異系統または異種素材から新たに供給されるだし成分が追加されるため重層化された旨みと風味が醸し出されることとなる。さらに、複数の系統を所定割合で混合した粉末とするので、さらに重層化された旨みと風味が醸し出されることとなる。
ガラ粉末(一度だし取りで煮炊きしたガラ)に対して異系統、異種素材の非ガラ粉末(一度も煮炊きしていない素材の粉末)を混ぜてからエキス混合粒を製造するため粒の結着性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の複合粉末だし取り用調味料の実施形態を説明する。ただし、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に示した具体的な用途や形状・寸法などには限定されない。
【実施例1】
【0019】
実施例1は、本発明の複合粉末だし取り用調味料およびその製造工程を示す実施例である。
図1は本発明の複合粉末だし取り用調味料100の製造工程を簡単に示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の複合粉末だし取り用調味料100の製造工程は、第1工程(S101)、第2工程(S102)、第3工程(S103)、第4工程(S104)の4つの工程を備えている。
なお、第1工程から第4の工程まで一気通貫に行っても良いし、第1工程(S101)から第3工程(S103)まで行ってだしエキス混合粒を製造しておき、必要に応じて第4工程(S104)を随時行うことも可能である。ただし、天然だしであるため、風味の劣化などを考慮すれば、第1工程から第4の工程まで一気通貫に行うことが好ましい。
【0020】
第1工程(S101)を説明する。
第1工程(S101)は、目的とする味や成分のだしを製造するために取り揃えた素材を、素材の系統、抽出方法の別にグルーピング化する工程である。グルーピング化の一例としては、海草系、魚節貝類系、キノコ系、薬膳植物系などがある。
目的とする味や成分のだしは、多種多様であり、様々な天然素材の組み合わせにより目的とする味や成分のだしを製造する。本発明では、それら天然素材は単品ではなく、複数種類の組み合わせが前提となる。その目的とする味や成分のだしを製造するため取り揃えた素材をグルーピングする。
【0021】
海草系の素材としては昆布がある。昆布類としては、例えば、真昆布、利尻昆布、日高昆布、ラウス昆布、三石昆布などがあげられる。上記のものは単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。その他の海草類を加えて良く、本発明は昆布以外の海草を排除するものではない。
魚節貝類系の素材としては、まず、鰹節、宗田鰹節、さらに、配合によっては鯖節(サバ)、鮪節(マグロ)、室節(アジ)、うるめ節(ウルメいわし)などの節類、また、いわし(いりこ)、あごなどの煮干しなどもある。
また、貝類として、ホタテ貝柱、さらに、ホタテ干しヒモ(外套膜)、あさり、しじみ、はまぐり、牡蠣などの干し貝肉などがある。
キノコ系の素材としては、干し椎茸、さらに、えのき、しめじ、舞茸、平茸、なめこ、松茸、きくらげなどがあげられる。
薬膳植物系素材としては、甘草、はと麦、ドクダミなどの薬膳類、人参、牛蒡、ほうれん草、玉ねぎなどの野菜類、リンゴ、ナツメなどの果実類、さらに、いわゆる漢方薬の素材などもあり得る。
上記は例示であり、海草系、魚節貝類系、キノコ系、薬膳植物系には他にも様々な素材を採用し得る。
【0022】
なお、上記の系統のうち、さらに細かく、下位概念の系統に分けても良い。例えば、魚節貝類系を、魚節類系と貝類系に分化しても良い。
この第1工程(S101)を経て、素材のグルーピングが行われる。
【0023】
第2工程(S102)および第3工程を説明する。
第2工程(S102)は、第1工程(S101)でグルーピングされた各々のグループに対して、当該グループごとの素材に適しただし取り製法でだしを取り、だしエキスとガラを得る工程である。
この第2工程には様々なレシピがあり得る。本発明ではこの第2工程(S102)のだし取り製法のレシピを限定するものではない。製造者が適していると判断するレシピを用いれば良い。
【0024】
また、第3工程(S103)は、第2工程(S102)で抽出された各々のグループのだしエキスに対して各々のグループごとに用意したガラ粉末、非ガラ粉末を加えてだしエキス混合粒を得る工程である。
以下に系統別のだし取り工程となる第2工程(S102)とその後に続く、だしエキス混合粒を得る第3工程(S103)を併せて示す。第2工程(S102)と第3工程(S103)を別々に説明しても良いが、この2つの工程を併せて説明する方が分かりやすい場合もあるので、両工程を併せて説明する。
以下は一例であり、レシピのバリエーションはあり得る。
【0025】
[海草系グループの素材の第2工程(S102)および第3工程(S103)]
図2は、海草系グループの素材の第2工程(S102)および第3工程(S103)を示すフローチャートと、だし取り工程の様子を示す図である。
(ステップS102A1)
昆布を適量、鍋の水に入れて半日から一日程度漬け込む。
(ステップS102A2)
昆布を漬け込んだ鍋をそのまま煮炊きする。中の昆布ガラを取り出し、昆布ガラと煮汁を得る。
(ステップS102A3)
煮汁に対して適量の鰹節を入れて半日から一日程度漬け込む。
このステップS102A3で、第2工程が終わり昆布の煮汁とガラに取り分けられる。
【0026】
(ステップS103A4)
第2工程を終え、第3工程に入る。
昆布ガラを破砕してペースト状に加工する。
(ステップS103A5)
次に、当該昆布ガラペーストを煮汁に対して入れ、昆布ガラペーストと煮汁の混合により全体がペースト状になるまで昆布ガラペーストを投入して撹拌する。
(ステップS103A6)
ガラペーストと煮汁混合物を半日から一日寝かせ、その後、乾燥機を用いて低温(60℃程度)で乾燥し、粉砕機で適度な粒度となるよう粉砕して粉末を得る。
このステップS103A3で第3工程が終了する。
【0027】
[魚節貝類系グループの素材の第2工程(S102)および第3工程(S103)]
図3は、魚節貝類系グループの素材の第2工程(S102)および第3工程(S103)を示すフローチャートと、だし取り工程の様子を示す図である。
この例では、だし取り素材は鰹節、煮干とし、異系統異種素材は昆布や椎茸とした例となっている。
(ステップS102B1)
先に鍋の水を沸騰させ、その中に適量の鰹節などの魚節やあご等の煮干し、さらに干し貝柱やあさりの干し貝肉などを投入し、だしを抽出しながら半日から一日程度漬け込む。
(ステップS102B2)
漬け込みが終了すると、だしの抽出液と魚節貝類のガラが得られる。
(ステップS102B3)
なお、適宜、抽出汁に対してはさらに適量の鰹節を追加しても良い。
このステップS102B1で、第2工程が終わり魚節貝類の抽出汁とガラに取り分けられる。
【0028】
(ステップS103B4)
第2工程を終え、第3工程に入る。
魚節貝類ガラから加工したガラペースト、さらに、昆布や椎茸を加工した非ガラペーストを加工しておく。
(ステップS103B5)
抽出汁に対して全体がペースト状になるまでガラペースト、非ガラペーストを投入して撹拌する。必要に応じて魚醤などの天然調味料を添加することもあり得る。
(ステップS103B6)
ペースト混合物を半日から一日寝かせ、その後、乾燥機を用いて低温(60℃程度)で乾燥し、粉砕機で適度な粒度となるよう粉砕して粉末を得る。
このステップS103B3で第3工程が終了する。
【0029】
[キノコ系グループの素材の第2工程(S102)および第3工程(S103)]
図4は、キノコ系グループの素材の第2工程(S102)および第3工程(S103)を示すフローチャートと、だし取り工程の様子を示す図である。
この例では、だし取り用素材は、乾燥椎茸、乾燥しめじ、乾燥えのき、乾燥舞茸などの乾燥キノコ類であり、異種素材は、魚節貝類系の鰹節とする。
(ステップS102C1)
乾燥椎茸、乾燥しめじ、乾燥えのき、乾燥舞茸などの乾燥キノコ類を適量、鍋の水に入れて半日から一日程度漬け込む。
(ステップS102C2)
乾燥キノコ類を漬け込んだ鍋をそのまま一時間程度煮炊きする。
(ステップS102C3)
中のキノコガラを取り出し、煮汁をさらに二時間程度、中火で煮炊きを続け、煮汁を濃縮する。
このステップS103C3において第2工程が終わり、キノコ濃縮煮汁とキノコガラに取り分けられる。
【0030】
(ステップS103C4)
キノコガラを破砕してペースト状にする。
(ステップS103C5)
当該キノコガラペーストをキノコ濃縮煮汁に対して入れ、さらに鰹節粉末を加え、全体がペースト状になるまでキノコガラペーストを投入して撹拌する。
(ステップS103C6)
ステップS103C5で生成したペーストを半日から一日寝かせ、その後、乾燥機を用いて低温(60℃程度)で乾燥し、粉砕機で適度な粒度となるよう粉砕して粉末を得る。
このステップS103C6で第3工程が終了する。
【0031】
[薬膳植物系グループの素材の第2工程(S102)および第3工程(S103)]
図5は、薬膳植物系グループの素材の第2工程(S102)および第3工程(S103)を示すフローチャートと、だし取り工程の様子を示す図である。
この例では、だし取り用素材は、甘草、はと麦、ドクダミの薬膳であり、異種素材は、野菜系の人参、牛蒡、ほうれん草とする。
(ステップS102D1)
あらかじめ、人参、牛蒡、ほうれん草などの野菜をペースト状にすりつぶし、野菜ペーストを中火で約1時間程度炒める。
(ステップS102D2)
甘草、はと麦、ドクダミなどの薬膳類を煎じて薬膳煎汁を抽出する。
(ステップS102D3)
薬膳ガラと薬膳煎汁とに取り分ける。
このステップS102D2において第2工程が終わり、薬膳煎汁と薬膳ガラに取り分けられる。
【0032】
(ステップS103D4)
次に、第3工程として、薬膳ガラを破砕してペースト状にし、当該薬膳ガラペーストを得る。
(ステップS103D5)
薬膳煎汁に対して、野菜ペースト、薬膳ガラペーストを加え、撹拌して全体を馴染ませる。
(ステップS103D3)
魚醤などの天然調味料で味を整え、中火で沸騰直前まで煮た後火を止め、半日から一日寝かせて熟成させる。
(ステップS103D4)
乾燥機を用いて生成ペーストを低温(60℃程度)で乾燥し、粉砕機で適度な粒度となるよう粉砕して粉末を得る。
【0033】
以上、それぞれの系統の素材に応じた適切なだしの取り方にてそれぞれの系統の素材からだし取り工程となる第2工程(S102)とその後に続く、だしエキス混合粒を得る第3工程(S103)が終了する。
次に、第4工程(S104)を説明する。
第4工程(S104)は、前記第3の工程で製造された各々のグループのだしエキス混合粒を所定割合で混合して複合粉末だし取り用調味料を製造する工程である。
目的とする味や成分のだしとなるよう第3工程で得られただしエキス混合粒を所定割合で混合・配合し、複合粉末だし取り用調味料を製造する。
混合・配合する所定割合は特に限定されないが、例えば、海草系だしエキス混合粒:魚節貝類系だしエキス混合粒:キノコ系だしエキス混合粒:薬膳植物系だしエキス混合粒を、a:b:c:dの割合で混ぜるものとする。
図6は、複合粉末だし取り用調味料を封入しただしパックの様子を簡単に示す図である。このパックの中にはそれぞれのだしエキス混合粒がa:b:c:dの割合で配合されている。
【0034】
次に、利用者が各家庭などにおいて本発明の複合粉末だし取り用調味料を用いてだしを取る段階を説明する。
本発明の複合粉末だし取り用調味料を所定量の水を張った鍋に入れ、軽く煮て煮汁を取る。その際、各々の海草系だしエキス混合粒、魚節貝類系だしエキス混合粒、キノコ系だしエキス混合粒、薬膳植物系だしエキス混合粒からだしエキスが煮出てくる。このだしエキスは第2工程で好適に作成されただしエキスであり、濃く抽出されただしであるため、素早く十分の量のだしを煮出すことができる。
【0035】
本発明の複合粉末だし取り用調味料を用いれば、天然素材からなる複合だしを得ることができ、かつ、利用者は、天然素材ごとのだしの取り方のコツを知らなくとも旨みと風味が豊かな複合だしを取ることができる。
また、利用者は、本来なら天然素材から1日以上かかる天然だし取り作業が不要となり、ひと煮立ちするだけで旨みと風味が豊かな複合だしを取ることができる。また、天然だしは短い時間で濃くだし取りすることが難しいが、本発明の複合粉末だし取り用調味料を用いれば十分に濃いだしを取ることができる。
また、本来は多くの手間と手数がかかる複合だし取りに関して、ひと煮立ちするという簡単なレシピだけで旨みと風味が豊かな複合だしを取ることができる。
【0036】
以上、本発明の机における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、天然素材を用いた天然だしを取るだし取り用調味料として広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の複合粉末だし取り用調味料100の製造工程を簡単に示すフローチャートである。
図2】海草系グループの素材の第2工程および第3工程を示すフローチャートと、だし取り工程の様子を示す図である。
図3】魚節貝類系グループの素材の第2工程および第3工程を示すフローチャートと、だし取り工程の様子を示す図である。
図4】キノコ系グループの素材の第2工程および第3工程を示すフローチャートと、だし取り工程の様子を示す図である。
図5】薬膳植物系グループの素材の第2工程および第3工程を示すフローチャートと、だし取り工程の様子を示す図である。
図6】第4の工程および複合粉末だし取り用調味料を封入しただしパックの様子を簡単に示す図である。
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図6