(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フードは、前記ロックレバーを周方向に挟む前記フードの部分をつなぐ架橋部を、前記ロックレバーよりもメスコネクタが挿入される側に備える請求項6に記載のロック機構付きオスコネクタ。
前記フードのメスコネクタが挿入される側の端縁に前記オス部材と平行な方向に沿って延びた一対の切り欠きが形成されており、前記一対の切り欠きは前記オス部材を挟んで互いに対向する請求項1〜7のいずれかに記載のロック機構付きオスコネクタ。
【背景技術】
【0002】
患者に輸液や輸血を行ったり、手術において体外血液循環を行ったりする場合に、薬液や血液などの液体を輸送するための経路(輸送ライン)を形成する必要がある。輸送ラインは、一般に、容器や各種器具、送液チューブなどを接続することによって形成される。また、患者に投与する薬液を薬液バッグ(容器)に注入する際には、薬液バッグとシリンジ等とを接続する必要がある。このように、異なる部材を着脱可能に相互接続するためにオスコネクタ及びメスコネクタが使用される。
【0003】
このような用途に使用されるメスコネクタの一例として、中央部に直線状のスリット(切り込み)が形成されたゴム等の弾性材料からなる円板状の隔壁部材(以下、「セプタム」という)を備えたニードルレスポートが知られている(例えば特許文献1参照)。セプタムのスリットに、注射針等の鋭利な金属針が付いていない筒状のオスルアー(オス部材)を挿入することにより、ニードルレスポートとオスルアーとが連通する。ニードルレスポートからオスルアーを抜き去るとセプタムのスリットは直ちに閉じる。
【0004】
薬液の中には、例えば一部の抗がん剤のように劇薬に指定された薬剤を含む場合がある。また、血液は病原体等を含む場合がある。従って、接続中のオスコネクタとメスコネクタとが意図せずに分離して、その結果、薬液や血液などの液体が漏れ出して作業者の指などに付着したり、その蒸気を作業者が吸引したりする事態は回避しなければならない。
【0005】
そこで、
図12A及び
図12Bに示すように、ニードルレスポートにオスルアー910を接続した状態を維持するためのロック機構をオスルアー910に設けたロック機構付きのオスコネクタ900が提案されている(例えば特許文献2〜4参照)。このロック機構は、オスルアー910と略平行に、オスルアー910を挟んで配置された一対のロックレバー930を備える。各ロックレバー930は、その長手方向の略中央位置に設けられた支持片931を介してオスルアー910の基端部分919と接続されている。ロックレバー930の一端の、オスルアーに対向する側の面には、ニードルレスポートに係合する爪934が形成されている。ロックレバー930の爪934が形成されていない側の端部は、ロックレバーを操作するための操作部935である。一対のロックレバー930の操作部935を、互いに接近する向きに把持すると、支持片931が弾性変形して、爪934がオスルアー910から離れる向きにロックレバー930が変位する。920はオスルアー910を取り囲む略円筒形状のフードであり、基端部分919に固定されている。フード920に設けられた切り欠き内に、一対のロックレバー930が配置されている。915はオスルアー910に連通した筒状部であり、柔軟性を有するチューブ(図示せず)が接続される。
【0006】
図13に示すように、オスルアー910をニードルレスポート950のセプタム951に挿入し、一対のロックレバー930の先端に設けられた爪934をニードルレスポート950の外周面の段差に係合させる。これにより、ニードルレスポート950とオスルアー910との接続状態がロックされる。オスコネクタ900とニードルレスポート950とを、互いに離れる向きに引っ張っても、ロックレバー930の爪934がニードルレスポート950に係合しているので、オスコネクタ900とニードルレスポート950とを分離することはできない。オスコネクタ900とニードルレスポート950との分離は、一対のロックレバー930の操作部935に互いに接近する向きの力F1を印加して、ロックレバー930を変位させ、ロックレバー930の爪934とニードルレスポート950との係合を解除することにより可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のロック機構付きオスコネクタは、メスコネクタに挿入される棒状のオス部材と、前記オス部材が前記メスコネクタに挿入された状態を維持するためのロック機構とを備える。前記ロック機構は、前記オス部材の周囲を取り囲むように配置され且つ前記メスコネクタが挿入されるフードと、弾性的に変位可能な片持ち支持構造の単一のロックレバーとを備える。前記ロックレバーは、その自由端を前記オス部材の先端側にし且つその固定端を前記オス部材の基端側にして、その長手方向が前記オス部材と略平行になるように配置されている。前記ロックレバーは、前記メスコネクタに係合する爪を備える。操作アームが、前記ロックレバーの前記オス部材とは反対側の面から突出し、前記固定端側に延びている。前記操作アームの先端に前記オス部材に向かう向きの押力を印加すると、前記爪が前記オス部材から離れるように前記ロックレバーが弾性的に変位する。
【0015】
上記の本発明のロック機構付きオスコネクタにおいて、前記爪が前記ロックレバーの前記自由端に設けられていることが好ましい。これにより、ロックレバーが変位したときの爪の変位量を大きくすることができる。従って、操作アームの先端(操作部)に印加する押力が小さくてもロック状態の解除を行うことが可能になり、操作性の向上に有利である。
【0016】
前記操作アームの基端を除いて、前記操作アームは前記ロックレバーから離間していることが好ましい。これは、操作アームの先端(操作部)に押力を印加したときに、爪がオス部材から離れるようにロックレバーを変位させるのに有利である。
【0017】
前記操作アームは、前記オス部材の長手方向において、前記ロックレバーの前記固定端を越えて延びていることが好ましい。これは、操作アームの先端(操作部)に押力を印加したときに、爪がオス部材から離れるようにロックレバーを変位させるのに有利である。
【0018】
前記操作アームの基端は、前記ロックレバーの前記固定端よりも前記自由端側の位置に設けられていることが好ましい。これにより、操作アームの基端とロックレバーの固定端との間に、弾性的に曲げ変形可能な弾性部を確保することができる。これは、ロックレバーを弾性的に変位させるのに有利である。
【0019】
前記フードに略「U」字状のスリットが形成されていることが好ましい。この場合、前記ロックレバーは前記スリットに囲まれていることが好ましい。これにより、ロックレバーをフードの外に配置する必要がなくなるので、ロックレバーの、フードの外周面からの突出量を抑えることができる。従って、外径が小さなオスコネクタを実現できる。
【0020】
上記において、前記フードは、前記ロックレバーを周方向に挟む前記フードの部分をつなぐ架橋部を、前記ロックレバーよりもメスコネクタが挿入される側に備えることが好ましい。これにより、オスコネクタに接続され且つロックされたメスコネクタに外力が作用しても、メスコネクタの傾きや移動を抑えることができる。その結果、ロック状態が意図せずに解除されたり、フードが破壊されたりする可能性を低減することができる。
【0021】
前記フードのメスコネクタが挿入される側の端縁に前記オス部材と平行な方向に沿って延びた一対の切り欠きが形成されていることが好ましい。この場合、前記一対の切り欠きは前記オス部材を挟んで互いに対向することが好ましい。これにより、チューブの途中に設けられた混注ポートに接続可能なオスコネクタを実現できる。
【0022】
前記オス部材内に流路が形成されており、前記流路と連通した横孔が前記オス部材の外周面に開口していることが好ましい。これにより、メスコネクタに挿入されたオス部材をメスコネクタから引き抜く際に、メスコネクタが横孔の開口の周辺に付着する液体を剥ぎ取るので、メスコネクタから引き抜いた後に横孔の開口の周辺に残存する液体量を少なくすることができる。
【0023】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、以下の各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるロック機構付きオスコネクタ(以下、単に「オスコネクタ」という)1の斜視図である。
図2Aはオスコネクタ1の平面図、
図2Bはオスコネクタ1の側面図である。更に、
図3はオスコネクタ1の断面斜視図である。
【0025】
本実施形態1のオスコネクタ1は、オス部材として棒状のオスルアー10を備えている。
図3において、10aはオスルアー10の中心軸である。以下の説明の便宜のため、オスルアー10の長手方向(中心軸10aと平行な方向)を「上下方向」と呼び、オスルアー10の長手方向と直交する方向を「水平方向」と呼ぶ。また、上下方向において、基台19に近い側を「下側」、遠い側を「上側」又は「先端側」と呼ぶ。但し、この「上下方向」及び「水平方向」は、オスコネクタ1の実際の使用時での向きを意味するものではない。更に、オスルアー10の中心軸10aに直交する直線の方向を「半径方向」、中心軸10aの回りを回転する方向を「周方向」という。
【0026】
図3に示されているように、オスルアー10は、基台19から突出した棒状の部材である。その外周面(即ち、側面)は、本実施形態1では基台19から離れるにしたがって外径がわずかに小さくなるテーパ面である。但し、オスルアー10の外周面の形状は、これに限定されず、任意に選択することができる。例えば、上下方向において外径が一定である円筒面であってもよい。
【0027】
オスルアー10内には、その長手方向に沿って流路11が形成されている。流路11はオスルアー10の先端面10tには開口していない。その代わりに、オスルアー10の先端の近傍に、流路11と連通する横孔12が形成されている。横孔12は、半径方向にオスルアー10を貫通し、オスルアー10の外周面上の2カ所で開口している。なお、横孔12は、オスルアー10を貫通せずに、オスルアー10の外周面上の1カ所のみで開口していてもよい。
【0028】
基台19のオスルアー10とは反対側には、流路11と連通した流路を備えた筒状部15が形成されている。筒状部15の内周面は、基台19から離れるにしたがって内径が大きくなるテーパ面である。筒状部15の外周面には、雄ねじが形成されている。筒状部15は例えばISO594−2に準拠して構成することができる。筒状部15には、例えばシリンジ等を接続することができる。但し、基台19のオスルアー10とは反対側の構成は任意であり、筒状部15以外の構成を備えていてもよい。
【0029】
オスルアー10を取り囲むように、フード20が基台19から、オスルアー10と同じ側に立設されている。フード20は、オスルアー10と同軸の中空の円筒形状を有し、その高さ(上下方向寸法)は、オスルアー10の高さより高い。フード20の内周面(オスルアー10に対向する面)は、本実施形態1のオスコネクタ1が接続されるメスコネクタの外径とほぼ同じかこれよりわずかに大きな内径を有する円筒面である。
【0030】
片持ち支持構造のロックレバー30がオスルアー10に対向している。ロックレバー30は、その長手方向がオスルアー10の中心軸10aと略平行な薄板形状(短冊形状)を有している。ロックレバー30の長手方向における一方の端部は自由端30aであり、オスルアー10の先端側に配置されている。ロックレバー30の長手方向における他方の端部は固定端30bであり、オスルアー10の基端側(即ち、基台19側)に配置されている。ロックレバー30は、オスルアー10の中心軸10aを含む面内において、弾性的に曲げ変形可能である。
【0031】
片持ち支持構造のロックレバー30は、フード20に、フード20を貫通する略「U」字状のスリット21を形成することにより形成されている。換言すれば、ロックレバー30はスリット21に囲まれている。その結果、ロックレバー30の自由端30aよりも上側(基端19から遠い側)に、ロックレバー30を周方向に挟むフード20の部分をつなぐ架橋部22が存在している。フード20の上側の端縁20aは円形の平面視形状を有し、同一高さで周方向に連続している。
【0032】
図3に示されているように、ロックレバー30の自由端30aのオスルアー10に対向する側の面には、オスルアー10に向かって突出した爪34が形成されている。爪34は、傾斜面34aと、係合面34bとを備える。傾斜面34aは、基台19から離れるにしたがってオスルアー10から遠ざかるように傾斜している。係合面34bは、傾斜面34aよりも基台19側に配置され、水平方向に略平行な平面である。
図2Aに示されているように、爪34の頂部(オスルアー10に最も近い部分)は、フード20の内周面よりもオスルアー10側に突出している。
【0033】
操作アーム35が、ロックレバー30のオスルアー10とは反対側の面から外側(オスルアー10とは反対側)に突出している。操作アーム35の、ロックレバー30に接続されている部分を基端35bという。操作アーム35は、その基端35bから、ロックレバー30に対して離間しながら、固定端30b側(即ち、下側)に湾曲して延びている。上下方向において、操作アーム35は、ロックレバー30の固定端30bよりも下側にまで(本実施形態1では基台19とほぼ同じ位置まで)延びている。操作アーム35の先端には操作部35aが設けられている。操作アーム35は、実質的に剛体と見なしうる程度の機械的強度を有している。
【0034】
操作部35aに指を押し当てて、オスルアー10(即ち、フード20)に向かう向きの力Fを操作部35aに印加すると、
図4に示すように、ロックレバー30の固定端30bと操作アーム35の基端35bとの間の部分(弾性部31)が弾性的に曲げ変形し、爪34が略半径方向に沿ってオスルアー10から離れる向きに変位する。
【0035】
爪34が上述したように変位するためには、操作アーム35は、ロックレバー30の固定端30bから離間していることが好ましい。また、操作アーム35はロックレバー30の固定端30bを越えて下側(筒状部15側)に延び、操作部35aは固定端30bよりも下側(筒状部15側)に位置していることが好ましい。更に、操作アーム35の基端35bは、ロックレバー30の固定端30bよりも自由端30a側に位置している(基端35bが固定端30bにある場合を含まない)ことが好ましい。
【0036】
上述したフード20、及び、操作アーム35付きのロックレバー30が、本実施形態1のオスコネクタ1のロック機構を構成する。
【0037】
オスルアー10、基台19、フード20、ロックレバー30、及び、操作アーム35は、硬質の材料からなることが好ましい。具体的には、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いて、オスルアー10、基台19、フード20、ロックレバー30、及び、操作アーム35を一体成形等の方法で作成することができる。
【0038】
以上のように構成された本実施形態1のオスコネクタ1の使用方法及び作用を説明する。
【0039】
図5は、接続する直前の、オスコネクタ1とメスコネクタとしてのニードルレスポート100とを示した斜視図である。
図6は、接続する直前のオスコネクタ1及びニードルレスポート100の断面図である。
【0040】
ニードルレスポート100は、中央部に直線状のスリット(切り込み)102が形成されたゴム等の弾性材料からなる円板状の隔壁部材(セプタム)101を備える。筒状の基部110の先端にセプタム101を載置し、キャップ130をかぶせる。基部110の外周面に形成された係止爪115に、キャップ130の周囲の円筒部133を切り欠くことで形成された係止爪135を係合させて、キャップ130を基部110に固定する。これにより、セプタム101は、基部110とキャップ130との間に挟持される。キャップ130の中央には開口131が形成されており、開口131内にセプタム101のスリット102が露出している。基部110のセプタム101とは反対側の外周面には、キャップ130の円筒部133と略同一の円筒面を形成するように突出した凸部112が形成されている。凸部112は、基部110の周方向に連続している。基部110とは反対側には、テーパ状の外周面を備えたオスルアー120と、オスルアー120と同軸の雌ねじ122とが設けられている。但し、ニードルレスポート100の基部110とは反対側の部分の構成は、これに限定されず、任意である。
【0041】
図5及び
図6に示すように、ニードルレスポート100にオスコネクタ1を対向させる。そして、ニードルレスポート100のキャップ130をオスコネクタ1のフード20内に挿入し、更にニードルレスポート100をオスコネクタ1に向かって押し込む。オスルアー10の先端が、キャップ130の開口131内に露出したセプタム101に当接し、スリット102内に進入する。これと並行して、ロックレバー30の爪34の傾斜面34aがキャップ130の外側の端縁130aに当接する。キャップ130の端縁130aは、傾斜面34a上を摺動しながら、弾性部31を弾性的に曲げ変形させて、爪34がオスルアー10から離れる向きにロックレバー30を変位させる。ニードルレスポート100がフード20内に進入するにしたがって、爪34は、キャップ130の円筒部133及び凸部112上を順に摺動する。そして、爪34が凸部112を通過し終えると、弾性部31が弾性回復し、爪34と凸部112とが係合する(ロック状態)。
【0042】
図7は、接続されロック状態にあるオスコネクタ1及びニードルレスポート100を示した斜視図である。
図8は、接続されロック状態にあるオスコネクタ1及びニードルレスポート100を示した断面図である。
【0043】
ロックレバー30は、初期状態(
図1、
図2A、
図2B、
図3参照)とほぼ同じ位置にあり、その爪34(特にその係合面34b(
図3参照))がニードルレスポート100の凸部112に係合している。オスルアー10がセプタム101のスリット102を貫通し、これによりセプタム101は大きく弾性変形している。オスルアー10の横孔12の開口は、基部110の内腔内に露出している。この状態で、流路11及び横孔12を介して、オスルアー10とニードルレスポート100との間で液体を流通させることができる。
【0044】
オスコネクタ1とニードルレスポート100との分離は、ロックレバー30の操作部35aに指を当てて、爪34がオスルアー10から離れる向きにロックレバー30を変位させることにより可能である(
図4参照)。これにより、爪34と凸部112との係合が解除される。これと並行して、ニードルレスポート100とオスコネクタ1とを互いに離れる向きに引っ張れば、オスコネクタ1とニードルレスポート100とを分離することができる。セプタム101は、オスルアー10が抜き去られると直ちに弾性回復し、スリット102は閉じられる。
【0045】
以上のように、本実施形態1によれば、オスルアー10がセプタム101を貫通した状態で、オスコネクタ1の爪34がニードルレスポート100の凸部112に係合する。従って、オスルアー10がセプタム101から意図せずに抜けてしまうのが防止される。
【0046】
本実施形態1のオスコネクタ1は、ニードルレスポート100の凸部112に対して1つの爪34のみで係合している。操作部35aに押力Fを印加して爪34を変位させるとき、ニードルレスポート100はフード20で保持されているので、ほとんど移動しない。従って、操作部35aに押力Fを印加して爪34を変位させるだけで、爪34と凸部112との係合を確実に解除することができる。
【0047】
上述したように、従来の一対のロックレバー930を備えたオスコネクタ900(
図13参照)では、2つの爪934がニードルレスポート900に係合するので、ロック状態を解除するためには、2つの爪934の係合を1つずつ順に解除しなければならない場合があった。これに対して、本実施形態1では、ニードルレスポート100に係合する爪34の数が1つのみであるので、単に操作部35aに押力F(
図4参照)を印加してロックレバー30を変位させるだけでロック状態の解除を行うことができる。従って、ロック状態の解除動作が簡単であり、操作性が向上している。
【0048】
また、本実施形態1では、爪34と凸部112との係合(ロック状態)を解除するためには、操作部35aをフード20に近づくように押力を印加すればよい。この操作は、一方の手の1本の指のみで行うことができる。従って、当該一方の手の残りの指及び手のひらでフード20を又は筒状部15に接続された部材を安定的に保持することが可能である。例えば、筒状部15にシリンジの外筒の先端(いわゆる口部)を接続した場合には、一方の手でシリンジの外筒を保持しながら、当該手の親指又は人差し指で操作部35aを押せばよい。
【0049】
従来の一対のロックレバー930を備えたオスコネクタ900(
図13参照)では、ロック状態を解除するためには例えば一方の手の親指と人差し指で2つの操作部935を挟む必要があった。このときオスコネクタ900は2つの操作部935に添えられた2本の指のみで保持されることになる。したがって、ロック状態の解除動作が不安定になるという問題があった。これに対して、本実施形態1では、フード20を又はオスコネクタ1に一体的に接続された部材を保持しながら1本の指のみでロック状態の解除を行うことができる。従って、ロック状態の解除を、オスコネクタ1を安定的に保持しながら1本指のみで行うことができる。
【0050】
爪34を、ロックレバー30の固定端30bからより遠い位置、好ましくは自由端30aに配置することにより、爪34の変位量を大きくすることができる。従って、操作部35aに印加する押力Fが小さくてもロック状態の解除を行うことが可能になり、操作性の向上に有利である。
【0051】
爪34の基台19とは反対側に傾斜面34aが形成されているので、オスコネクタ1とニードルレスポート100とを接続する工程では、作業者は、ロックレバー30に手を触れる必要はなく、単にニードルレスポート100をフード20内に押し込むだけで、爪34と凸部112とを係合させることができる。従って、接続操作性が良好である。
【0052】
フード20がオスルアー10を取り囲むので、作業者がオスルアー10に誤って手を触れる可能性を低減している。これは、危険な薬液や血液から作業者を隔離するのに有利である。
【0053】
更に、フード20は、ニードルレスポート100を水平面内で位置決めするのにも貢献する。即ち、フード20は、オスルアー10が、キャップ130の開口131内に露出したセプタム101のスリット102に正確に挿入されるように、オスルアー10に対してニードルレスポート100を位置決めする。また、フード20は、爪34が凸部112に確実に係合するように、また、爪34と凸部112との係合が確実に解除されるように、ロックレバー30に対してニードルレスポート100を位置決めする。
【0054】
フード20に略「U」字状のスリット21が形成され、ロックレバー30は当該スリット21に囲まれている。これにより、フード20の円筒面にほぼ沿ったロックレバー30を形成することができるので、フード20の外周面より外側(オスルアー10とは反対側)にロックレバーを配置した場合に比べて、ロックレバー30のフード20の外周面からの突出量を抑えることができる。従って、外径が小さな小型のオスコネクタ1を実現できる。
【0055】
フード20に形成されたスリット21は、フード20の上端にまで及んでいない。フード20は、スリット21よりも上に架橋部22を備える。その結果、フード20の上側の端縁20aは同一高さで周方向に連続している。これは、フード20の上側の端縁20aの強度を向上させる。これにより、ロック状態(
図7、
図8)にあるニードルレスポート100に水平方向の外力が作用した場合に、フード20がニードルレスポート100の傾きや移動を抑える。従って、ニードルレスポート100の傾きや移動によって爪34と凸部112との係合が外れるのが防止されるので、ロック状態が意図せずに解除される可能性が低減し、安全性が向上する。また、ニードルレスポート100の傾きや移動によってフード20が破壊されるのを防ぐことができる。
【0056】
オスルアー10の流路11は、オスルアー10の先端面10tには開口しておらず、流路11に連通した横孔12がオスルアー10の外周面に開口している。これは、セプタム101を貫通したオスルアー10を、その後セプタム101から引き抜く際に、横孔12の開口の周辺に付着する液体を、セプタム101のスリット102の端縁で剥ぎ取りやすくなるので、セプタム101から引き抜いた後に横孔12の開口の周辺に残存する液体量を少なくするのに有利である。
【0057】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2にかかるロック機構付きオスコネクタ(以下、単に「オスコネクタ」という)2の斜視図である。本実施形態2のオスコネクタ2は、フード20に、その上側の端縁20aからオスルアー10と平行に基台19に向かって延びる一対の切り欠き23が形成されている点で、実施形態1のオスコネクタ1と異なる。一対の切り欠き23は、オスルアー10を挟んで対向し、一対の切り欠き23が対向する方向は、ロックレバー30とオスルアー10とが対向する方向と略直交する。
【0058】
以上のように構成された本実施形態2のオスコネクタ2の使用方法及び作用を説明する。
【0059】
図10は、接続する直前の、オスコネクタ2とメスコネクタとしてのニードルレスポート200とを示した斜視図である。本実施形態2では、ニードルレスポート200は、柔軟なチューブ230の途中に設けられており、いわゆる混注ポート(例えば特許文献1参照)として機能する。ニードルレスポート200の構成は、実施形態1のニードルレスポート100と概略同じである。実施形態1のニードルレスポート100には、周方向に連続した凸部112が形成されていたが、本実施形態2のニードルレスポート200には、周方向の一部のみに凸部212が形成されている。この凸部212にロックレバー30に形成された爪34が係合する。
【0060】
図10に示すように、ニードルレスポート200にオスコネクタ2を対向させる。そして、ニードルレスポート200のキャップ130をオスコネクタ2のフード20内に挿入し、更にニードルレスポート200をオスコネクタ2に向かって押し込む。
【0061】
図11は、接続されロック状態にあるオスコネクタ2及びニードルレスポート200を示した斜視図である。フード20に形成された切り欠き23内に、ニードルレスポート200の外周面に接続されたチューブ230が嵌入している。
【0062】
本実施形態2のオスコネクタ2は、フード20に切り欠き23が形成されているので、フード20がチューブ230に干渉することなく、混注ポートに接続することができる。
【0063】
上記を除いて、本実施形態2は実施形態1と同じである。実施形態1の説明は、本実施形態1にも適用される。本実施形態2を示す図面において、実施形態1で説明した部材と同じ部材には同一の符号が付されており、それらについての説明を省略する。
【0064】
上記の実施形態1,2は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態1,2に限定されず、適宜変更することができる。
【0065】
ロックレバー30は、ニードルレスポートに係合する爪を備え、且つ、弾性変位可能な片持ち支持構造を有していれば、その形状は任意に変更することができる。例えば、上記の実施形態1,2のロックレバー30は、フード20に略「U」字状のスリット21を形成することにより形成したが、例えば、ロックレバーをフード20よりも外側(オスルアー10から遠い側)に、フード20から離間して設けてもよい。このとき、ロックレバーの固定端はフード20の外周面に、または、フード20からはみ出させた基台19に、設けることができる。ロックレバーの爪は、フードに形成した開口を介して、または、フードの上側の端縁20aよりも上側においてニードルレスポートに係合させることができる。
【0066】
上記の実施形態1,2では、爪34は、ニードルレスポート100の凸部112,212に係合したが、爪34が係合するニードルレスポートの部分は、ニードルレスポートの構成に応じて適宜変更してよい。ニードルレスポートに係合する部分に応じて、爪34の形状や位置を変更することができる。
【0067】
操作アーム35の形状も、任意に変更することができる。操作アーム35の操作部35aは、上下方向において、ロックレバー30の固定端30bよりも下側に、固定端30bから離れるにしたがって、ロックレバー30を変位させるために必要な力Fを小さくすることができる。操作アーム35の基端35bは、基端35bと固定端30bとの間のロックレバー30の領域を弾性部31として確保できるように、固定端30bから離れた位置に設けることが好ましい。但し、基端35bを自由端30aに近づけると、操作アーム35を長くする必要があり、操作アーム35の機械的強度が低下する。一般には、上記の実施形態1,2のように、固定端30bと自由端30aとのほぼ中間位置に操作アーム35の基端35bを設けることが好ましい。
【0068】
上記の実施形態1,2では、オスルアー10の横孔12は、中心軸10aに直交する直線(即ち半径方向)に沿って延びていたが、本発明はこれに限定されず、中心軸10aに対して直角以外の角度で交差する直線に沿って延びていてもよい。横孔12の数も上記の実施形態に限定されず、任意に変更することができる。また、横孔12を形成せずに、オスルアー10の先端面10aに流路11が開口していてもよい。
【0069】
上記の実施形態1,2では、メスコネクタが、セプタム101を備えたニードルレスポートであったが、本発明はこれ以外のメスコネクタにロック接続可能なオスコネクタに適用することができる。例えば、メスコネクタが、バイアル瓶の口を封止するゴム栓であってもよい。この場合、オス部材は、上記のオスルアー10に代えて、鋭利な先端を有し、互いに独立した液流路と空気流路とが形成された樹脂針に変更される。また、ロックレバー30の爪34は、バイアル瓶の口に形成されたくびれに係合するように変更される。
【0070】
メスコネクタと非接続時にオス部材の流路の先端側の開口が露出しないように、オス部材にカバーを取り付けてもよい。このカバーは、ゴム弾性を有する柔軟な材料からなり、オス部材をメスコネクタに接続する場合にはオス部材によって貫通されて弾性的に圧縮変形する(特許文献3,4参照)。
【0071】
本発明のロック機構付きオスコネクタは任意の用途に使用することができる。バイアル瓶と、薬液バッグと、更にこれらの間で液体を移動させるためのシリンジとが接続されるコネクタ(例えば、特許文献3,4参照)に設けられる、薬液バッグ及び/又はバイアル瓶に接続されるオスコネクタとして本発明を適用することができる。あるいは、薬液や血液などの液体を輸送するための輸送ライン上に設けられた混注ポートに薬液等の注入を行うためのオスコネクタとして本発明を適用することができる。